JP2728490B2 - ねじの塑性域締付方法 - Google Patents

ねじの塑性域締付方法

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JP2728490B2
JP2728490B2 JP1040707A JP4070789A JP2728490B2 JP 2728490 B2 JP2728490 B2 JP 2728490B2 JP 1040707 A JP1040707 A JP 1040707A JP 4070789 A JP4070789 A JP 4070789A JP 2728490 B2 JP2728490 B2 JP 2728490B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、機械部品をねじ止めするときなどにおける
ねじの塑性域締付方法に関するものである。
(従来の技術) 一般に、機械部品をねじ止めするときはねじ弾性域内
で締付けて行っており、この弾性域締付方法としては、
例えば特公昭60−14675号公報に開示されるように、予
め設定された設定トルクにまで締付けるトルク法、およ
び、特公昭61−5857号公報に開示されるように、予め設
定された設定回転角だけ締付ける角度法がよく知られて
いる。また、特開昭63−52976号公報には、ねじの締付
軸力を一定にするために、ねじの締付途中において締付
回転角増加分に対する締付トルク増加分の割合であるト
ルクレートを求め、このトルクレートが大きくなるほど
締付角度を小さくする弾性域締付方法が開示されてい
る。
また、近時、ねじの弾性限度を越えた塑性域の初期状
態にまでねじを締付ける塑性域締付方法が提案されてお
り、この塑性域締付方法としては、初めに所定のトルク
まで上記トルク法でねじを締付け、次いで上記角度法で
所定角度だけねじを締付ける方法等が知られている。塑
性域締付方法は、塑性域という締付回転角の増加に伴う
締付軸力の増加が比較的少ない領域で締付けを停止する
ので、上述のトルク法等の弾性域締付方法に比べて安定
した高い締付軸力が得られる。
(発明が解決しようとする課題) しかし、上記従来の塑性域締付方法においても、ねじ
の摩擦係数に基づいた降伏軸力差だけ締付軸力にばらつ
きが生じる。これは次のような理由による。
すなわち、一般に、ねじを締付けると引張応力と共に
捩り応力が働く。この場合、下記の(1)式に示すねじ
の破損法則により、捩り応力τが大きいほど低い軸力で
降伏し、また、その捩り応力τは、下記の(2)式に示
すようにねじの摩擦係数μが高くなるほど大きなものと
なる。従って、摩擦係数μが高くなるほどねじは低い軸
力で降伏することになる。
σ=(σt 2+3τ1/2 …(1) τ=16T/πds 3 =8Fd2(1.15μ+tan β)/πds 3 …(2) 但し、σV:ねじの単純引張破損等価応力、σt:ねじの
締付引張応力、T:締付トルク、dS:ねじの有効断面の直
径、F:締付軸力、d2:ねじの有効径、β:ねじのリード
角である。
第4図は摩擦係数μが異なる2種のねじ部材たるボル
ト、つまりμの高いAボルトと低いBボルトの締付回転
角θと締付軸力Fとの関係を示す相関図である。Aボル
トおよびBボルトは、弾性域においては共にF=kθの
関係で同じ勾配でもって立上がるが、これらの降伏軸力
Fa,Fbは摩擦係数μの違いにより異なる(Fb>Fa)。降
伏以後の塑性域での勾配は共になだらかになり、徐々に
軸力Fを増加しながら最大軸力に達していく。
従来の塑性域締結方法における締付軸力のばらつき
は、このような摩擦係数μの相違に基づく降伏軸力Fa,F
bの差異についての配慮が欠けていたものであり、その
ばらつきは、第4図中でF1にも達する。
ここで、締付軸力のばらつきをなくすためには、第4
図から判るように、摩擦係数μの高いもの(Aボルト)
ほど降伏以後の締付量を大きくすれば良いのであるが、
ねじの摩擦係数μおよび降伏軸力を直接検出することは
困難である。他方、ねじの締付軸力Fと締付回転角θと
の関係および締付トルクTと締付軸力Fとの関係から、
ねじの摩擦係数μと締付回転角θの増加分に対する締付
トルクTの増加分の割合であるトルクレートRTとの間に
は、次の関係式が成り立つ。
μ=m・RT−n …(3) 但し、m,nはねじの形状や被締付体の形状により求ま
る係数である。
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、そ
の目的とするところは、特に、上記の(3)式から判る
ようにトルクレートRTが大きくなるほどねじの摩擦係数
μが大きくなることに着目し、このトルクレートに基づ
いて、ねじの摩擦係数μの変動に拘らず非常に安定した
高い軸力が得られる塑性域締付方法を提供するものであ
る。
(課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明の解決手段は、ねじ
の塑性域締付方法として次のような構成にする。
すなわち、ねじの締付途中の弾性域において締付回転
角増加分に対する締付トルク増加分の割合であるトルク
レートを求めるとともに、このトルクレートに応じてト
ルクレートの勾配が大きくなる程大きくするように設定
された設定角度を求める。次に、横軸に締付回転角を、
縦軸に締結トルクを採った相関図において、弾性域での
トルクレート線と同じ勾配を持ちかつ横軸方向に上記設
定角度隔てた直線を定め、この直線と塑性域でのトルク
レート線とが交わる交点でねじの締付けを停止するもの
である。
(作用) 上記の構成により、本発明では、ねじの摩擦係数と比
例関係にあるトルクレートを求め、このトルクレートに
応じてトルクレートの勾配が大きくなる程大きく設定さ
れた角度分、降伏以後の塑性域でねじが締付けられるの
で、ねじの摩擦係数および降伏軸力を直接検知すること
なく、摩擦係数が高いものほど塑性域での締付量が増加
して締付軸力が均一化されることになる。
(実施例) 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第2図は本発明に係わるねじの塑性域締付方法に使用
するボルト締付装置の全体構成を示し、1はナットラン
ナであって、該ナットランナ1は、ボルト頭部に嵌合す
るソケット2と、該ソケット2を主軸(図示せず)を介
して回転駆動するモータ3と、主軸のトルクを検出する
トルクトランスデューサ4と、主軸の回転角を検出する
角度エンコーダ5とを備えている。
また、11はトルクT1を、12はトルクT2(但し、T1<T2
であって、T1およびT2は共に締付けられるボルトが弾性
域に留まる値である)を各々設定するトルク設定器、13
および14はコンパレータであって、該コンパレータ13,1
4は、それぞれ上記トルクトランスデューサ4が検出す
る締付トルクと、トルク設定器11,12が設定した設定ト
ルクT1,T2とを比較し、両者が一致したときにゲート15,
16を介してCPU17に信号を送るようになっている。18はC
PU17からの制御信号を受け、角度エンコーダ5で検出し
た回転角信号をCPU17に送る角度ゲート、19はナットラ
ンナ1のモータ3を駆動制御するサーボアンプである。
次に、上記ボルト締付装置を用いてねじ部材としての
ボルトを締付ける方法を第1図に示すフローチャートを
参照しつつ説明する。
第1図において、先ず、ステップS1で外部からのナッ
トランナスタート信号によりCPU17は、サーボアンプ19
を介してナットランナ1のモータ3を正回転させてボル
トを締付ける。
そして、ステップS2でトルクトランスデューサ4が検
出した締付トルクTとトルク設定器11が設定した設定ト
ルクT1とを比較し、締付トルクTが設定トルクT1に達し
ていないときは更にボルトの締付けを行い、締付トルク
Tが設定トルクT1と一致したときは、ステップS3で角度
ゲート18をオンする。
続いて、ステップS4でボルトの締付けを続行する一
方、ステップS5で締付トルクTと、トルク設定器12が設
定した設定トルクT2とを比較し、締付トルクTが設定ト
ルクT2に達していないときは更にボルトの締付けを行
い、締付トルクTが設定トルクT2と一致したときは、ス
テップS6で角度ゲート18をオフした後、ステップS7で締
付回転角増加分Δθを演算する。この締付回転角増加分
Δθは、角度ゲートのオンからオフまでの間、つまり締
付トルクTがT1からT2に増加するまでの間のものであ
る。
そして、ステップS8において、CPU17は、先ず、締付
回転角増加分に対する締付トルク増加分の割合であるト
ルクレートRTを求めるとともに、このトルクレートTRに
応じて決まる設定角度θαを求める。ここで、トルクレ
ートRTおよび設定角度θαは、下記の式により求める。
RT=(T2−T1)/Δθ θα=RT・K 但し、Kはボルト形状、ボルトの引張強さおよび被締
付体の形状等によって決まる係数である。
CPU17は、次に、第3図に示すような横軸に示付回転
角θを、縦軸に締結トルクTを採った締付回転角θと締
付トルクTとの相関図において、弾性域でのトルクレー
ト線La,Lbと同じ勾配を持ちかつ横軸方向に上記設定角
度θα(図ではLaのときはθαa、Lbのときはθαbで
ある)だけ隔てた直線Ya,Ybを定める。この直線の関数
式T′は、 T′=f(θ) =RT・θ−RT2・K …(4) である。
このようなステップS8での演算が終了した後、ステッ
プS9でボルトの締付けを続ける一方、ステップS10で現
時点での実際のボルトの締付トルクTを読込み、ステッ
プS11でこの締付トルクTと、現時点での締付回転角θ
に対して上記(4)式より求まるT′とを比較する。そ
して、TとT′とが一致していないとき(このときはT
>T′)は更にボルトの締付けを行い、TとT′とが一
致したとき(T=T′)、つまり第3図において、直線
Ya,Ybとトルクレート線La,Lb線とが交わる交点Pa,Pbの
ときに、ナットランナ1の作動を停止してボルトの締付
け作業を終了する。
以上のような方法によってボルトを締付けた場合に
は、第3図から明らかなように、該ボルトのトルクレー
ト線La,Lbの勾配つまりトルクレートRTが大きいほど降
伏以後の塑性域でボルトがより多く回転せしめられ、そ
の締付回転角θが大きくなる。そして、上記トルクレー
トRTはボルトの摩擦係数μと比例関係にあるので、結
局、摩擦係数μの高いボルトほどの塑性域での締付量が
大きくなり、締付軸力が均一化される。このことは、第
4図に示すように、従来の塑性域締付方法の場合には、
摩擦係数μの高いAボルトと低いBボルトとの間での締
付軸力差F1がかなり大きなものであるにの対し、本発明
の塑性域締付方法の場合には、その締付軸力差F2が極僅
かなものとなることから判る。
その上、本発明の塑性域締付方法は、一般に検出が困
難とされるねじの摩擦係数μおよび降伏軸力を直接検出
するものではなく、単にねじの締付トルクTと締付回転
角θとを検出するにすぎないので、実施化を容易に図る
ことができる。
(発明の効果) 以上の如く、本発明におけるねじの塑性域締付方法に
よれば、ねじの摩擦係数と比例関係にあるトルクレート
を求め、このトレクレートに応じてトルクレートの勾配
が大きくなる程ねじの塑性域での締付量を大きくするよ
うに調整するので、ねじの摩擦係数の変動に拘らずその
締付軸力を確実に均一化することができる。しかも、検
出の困難なねじの摩擦係数および降伏軸力を直接検出す
るものでなく、実施化を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の実施例を示すもので、第1図は塑性域締
付方法のフローチャート図、第2図は上記締付方法に使
用する締付装置の全体構成図、第3図は締付回転角と締
付トルクとの相関図、第4図は締付回転角と締付軸力と
の相関図である。 1……ナットランナ、 4……トルクトランスデューサ、 5……角度エンコーダ、 11,12……トルク設定器、 13,14……コンパレータ、 17……CPU。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ねじの締付途中の弾性域において締付回転
    角増加分に対する締付トルク増加分の割合であるトルク
    レートを求めるとともに、このトルクレートに応じてト
    ルクレートの勾配が大きくなる程大きくするように設定
    された設定角度を求め、次に、横軸に締付回転角を、縦
    軸に締結トルクを採った相関図において、弾性域でのト
    ルクレート線と同じ勾配を持ちかつ横軸方向に上記設定
    角度隔てた直線を定め、この直線と塑性域でのトルクレ
    ート線とが交わる交点でねじの締付けを停止するねじの
    塑性域締付方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ZA774188B (en) * 1976-08-09 1979-05-30 Rockwell International Corp Tension control of fasteners
JP2619628B2 (ja) * 1986-08-23 1997-06-11 マツダ株式会社 ボルトの締付方法

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