JP2022182886A - ボルト締付装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボルトの回転角に対する引張荷重の変化率における折れ点の検出精度を向上させて、ボルトの軸力を目標軸力値に近づけるボルト締付装置を提供する。【解決手段】引張荷重Pを与えた状態でボルト10を締め付けるボルト締付装置30は、(a)ボルト10を回転させることにより引張荷重Pを変化させた場合に、レンチホルダ46の回転角θwに対する引張荷重Pの変化率Rにおける高変動領域と低変動領域との間の変化点である折れ点(例えば、折れ点O2)を検出し、(b)その折れ点におけるレンチホルダ46の回転角θwと、その折れ点の検出時点及びボルト10の締め付け時点におけるそれぞれのボルト10の回転方向の関係により定められる所定の補正回転角である変化量A1と、に基づいて、ボルト10の締め付けを終了させる目標締付回転角θtを推定し、(c)ボルト10の締め付けを目標締付回転角θtで終了させる。【選択図】図4

Description

本発明は、被締結体にボルトを締め付けるボルト締付装置に関する。
ボルトの一部に所定の引張荷重を与えた状態で、ナット又はボルトを回転させて締付力(=軸力)を付与し、締付力の増加に伴ってボルトの引張荷重が下降する場合であって、ナット又はボルトの回転角に対するボルトの引張荷重の変化率について、この変化率の経時変化における高変動領域とその高変動領域よりも変動が小さい低変動領域との間の変化点である折れ点を検出したタイミング以降において、ナット又はボルトの締め付けを終了させるボルト締付装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のボルト締付装置がそれである。
特開2020-93323
特許文献1に記載のボルト締付装置によれば、ナット又はボルトの回転角に対する引張荷重の変化率の経時変化における折れ点が検出され、この検出された折れ点でボルトの締め付けが終了させられることでボルトの軸力が目標軸力値とされる。しかし、実際には、荷重センサの検出感度、ナットを回転させて被締結体を締め付ける部材であるナットランナーの軸線方向の長さに応じた軸線周りの捻れ、ボルトのフランジと被締結体との接触面における摩擦変化などの影響を受けるため、前述した折れ点を正確に検出することは難しい。また、前述した折れ点の検出の遅れやボルトの締め付けを終了させるとの判断時点から実際に締め付けが終了する時点までの時間的なずれ(タイムラグ)により、真の折れ点でボルトの締め付けを終了させることは困難である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ボルトの回転角に対する引張荷重の変化率における折れ点でボルトを締め付ける精度を向上させて、ボルトの軸力を目標軸力値に近づけるボルト締付装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、ボルトに引張荷重を与えた状態で前記ボルトを締め付けるボルト締付装置であって、(a)前記ボルトを回転させることにより前記引張荷重を変化させた場合に、前記ボルトを締め付ける回転制御部材の回転角に対する前記引張荷重の変化率における高変動領域と前記高変動領域よりも変動が小さい低変動領域との間の変化点である折れ点を検出し、(b)前記折れ点における前記回転制御部材の回転角と、前記折れ点の検出時点及び前記ボルトの締め付け時点におけるそれぞれの前記ボルトの回転方向の関係により定められる所定の補正回転角と、に基づいて、前記ボルトの締め付けを終了させる目標締付回転角を推定し、(c)前記ボルトの締め付けを前記目標締付回転角で終了させることにある。
第1発明のボルト締付装置によれば、(a)前記ボルトが回転させられることにより前記引張荷重が変化させられた場合に、前記ボルトを締め付ける回転制御部材の回転角に対する前記引張荷重の変化率における高変動領域と前記高変動領域よりも変動が小さい低変動領域との間の変化点である折れ点が検出され、(b)前記折れ点における前記回転制御部材の回転角と、前記折れ点の検出時点及び前記ボルトの締め付け時点におけるそれぞれの前記ボルトの回転方向の関係により定められる所定の補正回転角と、に基づいて、前記ボルトの締め付けを終了させる目標締付回転角が推定され、(c)前記ボルトの締め付けが前記目標締付回転角で終了させられる。検出された折れ点における回転制御部材の回転角及び所定の補正回転角に基づいて予め推定された目標締付回転角でボルトの締め付けが終了させられるため、折れ点が検出されてからボルトの締め付けが終了させられる場合に比較して、真の折れ点の近くにボルトを締め付けることができる(すなわち、変化率における折れ点でボルトを締め付ける精度が向上させられる)。これにより、ボルトの軸力を目標軸力値に近づけられる。
第2発明のボルト締付装置によれば、第1発明において、前記折れ点には、前記ボルトが所定の正回転方向に回転させられることにより前記引張荷重が第1の所定値まで下降させられた場合での前記変化率における前記低変動領域から前記高変動領域に変化する第1の折れ点及び前記ボルトが前記正回転方向とは反対向きの所定の逆回転方向に回転させられることにより前記引張荷重が第2の所定値まで上昇させられた場合での前記変化率における前記高変動領域から前記低変動領域に変化する第2の折れ点の少なくとも一方が含まれる。このように、ボルトが正回転方向に回転させられることにより引張荷重が第1の所定値まで下降させられた場合での変化率における第1の折れ点が検出されたり、ボルトが逆回転方向に回転させられることにより引張荷重が第2の所定値まで上昇させられた場合での変化率における第2の折れ点が検出されたりして、第1の折れ点及び第2の折れ点の少なくとも一方に基づいて、目標締付回転角が推定される。これにより、推定された目標締付回転角でボルトの締め付けが終了させられるため、真の折れ点の近くにボルトを締め付けることができ、ボルトの軸力を目標軸力値に近づけられる。
第3発明のボルト締付装置によれば、第2発明において、前記ボルトが前記正回転方向に回転させられる開始時点から前記引張荷重の下降の開始時点までの前記回転制御部材の回転角の変化量が考慮されて前記第1の折れ点が検出され、又は、前記ボルトが前記逆回転方向に回転させられる開始時点から前記引張荷重の上昇の開始時点までの前記回転制御部材の回転角の変化量が考慮されて前記第2の折れ点が検出される。第1の折れ点の検出や第2の折れ点の検出において、ボルトが正回転方向に回転させられる開始時点から引張荷重の下降の開始時点までの回転制御部材の回転角の変化量が考慮されたり、ボルトが逆回転方向に回転させられる開始時点から引張荷重の上昇の開始時点までの回転制御部材の回転角の変化量が考慮されたりすることで、考慮されない場合に比較して、第1の折れ点や第2の折れ点の検出精度が向上させられる。これにより、目標締付回転角の推定精度が向上させられることで真の折れ点の近くにボルトを締め付けることができ、ボルトの軸力を目標軸力値にする正確性が向上させられる。
本発明の実施例に係るボルト締付装置が用いられて、被締結体にボルトが締め付けられた状態を説明する図である。 本発明の実施例に係るボルト締付装置の概略構成図であるとともに、ボルト締付装置における電子制御装置の制御機能の要部を表す機能ブロック図である。 図2に示すボルト締付装置の動作を説明する図である。 図2に示す電子制御装置の制御作動を説明するタイムチャートの一例である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の実施例に係るボルト締付装置30が用いられて、被締結体20にボルト10が締め付けられた状態を説明する図である。軸線CLは、後述するボルト10(軸部12、頭部14のフランジ14a、差し込み穴14cなど)、第1被締結部材22に設けられた貫通孔22a、及び第2被締結部材24における雌ネジ24aが形成された締結穴、に共通する中心線である。
ボルト10は、軸部12及び頭部14を備える。軸部12は、軸線CL方向に延びる円柱状である。軸部12の外周部には、雄ネジ12aが形成されている。頭部14は、軸線CL方向における軸部12の一端部側に設けられている。頭部14は、フランジ14a、雄ネジ14b、及び差し込み穴14cを有する。フランジ14aは、頭部14における軸線CL方向の軸部12側に設けられた鍔状の部分であって、軸部12よりも径が大きい。雄ネジ14bは、頭部14の外周部に形成されている。差し込み穴14cは、頭部14における軸線CL方向での軸部12とは反対側の端面14tに設けられた多角柱状、例えば六角柱状の穴部である。
被締結体20は、ボルト10によって締結される対象物であり、例えば第1被締結部材22及び第2被締結部材24を重ねたものである。被締結体20のうち、軸線CL方向のボルト10のフランジ14a側にある第1被締結部材22には、軸線CL方向に延びる貫通孔22aが設けられている。貫通孔22aは、ボルト10の軸部12が挿通可能であって、その径は軸部12の径よりも大きく且つフランジ14aの径よりも小さい。被締結体20のうち、軸線CL方向のボルト10の頭部14とは反対側にある第2被締結部材24には、軸線CL方向に延びる締結穴が設けられ、その締結穴の内周部には、雌ネジ24aが形成されている。ボルト10の軸部12に形成された雄ネジ12aと、第2被締結部材24に形成された雌ネジ24aと、は螺合可能となっている。螺合とは、雌ネジに対して雄ネジを相対的にねじって回転させることでこれらを結合させることである。
図1に白抜き矢印で示す軸力F[N]によって、被締結体20(第1被締結部材22及び第2被締結部材24)が締結されている。なお、軸力Fとは、ボルト10が軸線CL方向に伸びたり縮んだりする変形に抵抗する力のことである。本実施例では、軸力Fは、ボルト10が軸線CL方向に伸ばされた変形に対して縮もうとする力である。軸力Fが低すぎると、ボルト10による第1被締結部材22及び第2被締結部材24の締付力が不足した状態となるおそれがあり、一方、軸力Fが高すぎると、雄ネジ12a及び雌ネジ24aが塑性変形してしまうおそれがある。
図2は、本発明の実施例に係るボルト締付装置30の概略構成図であるとともに、ボルト締付装置30における電子制御装置90の制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
ボルト締付装置30は、非回転部材の筐体であるケース80を備える。ボルト締付装置30は、例えばケース80内に第1モータM1及び第2モータM2を備えるとともに、レンチ40、レンチホルダ46、引張部材50、第1ギヤ54、第2ギヤ56、反力押え部材60、ベアリング70、荷重センサ72、角度センサ74、及び電子制御装置90を備える。
第1モータM1及び第2モータM2は、それぞれ独立して回転角(=回転位置)が制御可能な電動機であり、電子制御装置90によって回転制御される。例えば、第1モータM1及び第2モータM2は、周知のステッピングモータである。
レンチ40は、軸部42及び頭部44を備える。軸部42は、軸線CL方向に延び、その先端部がボルト10の差し込み穴14cに係合可能な形状である。例えば、軸部42は、軸線CL方向に延びる六角柱状の形状である。頭部44は、軸線CL方向における軸部42の一端部側に設けられ、軸部42よりも大径である。レンチ40の軸部42の先端部が差し込み穴14cに係合されると、レンチ40とボルト10とは軸線CL周りに相対回転不能な状態となる。なお、厳密には、後述する回転角Y[deg]により限定的に相対回転可能である。
レンチホルダ46は、ボルト締付装置30によるボルト10の締め付け時において、電子制御装置90により回転制御される回転制御部材である。すなわち、レンチホルダ46は、レンチ40を介してボルト10を締め付ける回転制御部材であって、レンチホルダ46の回転角θw[deg]は、電子制御装置90により制御される。レンチホルダ46は、本発明における「回転制御部材」に相当する。レンチホルダ46は、例えば軸線CL方向に延びる円筒状である。レンチホルダ46の一端側(図2の紙面上側)は、第1モータM1に連結されている。レンチホルダ46の他端側(図2の紙面下側)における内周部と、レンチ40の頭部44の外周部と、は、例えばスプライン嵌合されており、レンチ40は、レンチホルダ46に対して軸線CL周りに相対回転不能且つ軸線CL方向に移動可能となっている。レンチ40は、スプリング48によりケース80の内部から外部に向かう方向(図2における紙面下向き)に付勢されている。第1モータM1の動力がレンチホルダ46及びレンチ40を順次介してボルト10の頭部14に伝達されることで、ボルト10は軸線CL周りに回転制御される。すなわち、ボルト10の回転角θb[deg]は、第1モータM1により制御される。
引張部材50は、ボルト10に後述の引張荷重P(軸線CL方向における引き抜き方向の荷重)を与える部材である。引張部材50は、例えば軸線CL方向に延びる円筒状である。引張部材50における軸線CL方向のボルト10側の内周部には、ボルト10の雄ネジ14bに螺合可能な雌ネジ50aが形成されている。本実施例では、ボルト10の雄ネジ14b(及び引張部材50の雌ネジ50a)と前述したボルト10の雄ネジ12a(及び第2被締結部材24の雌ネジ24a)とは、リード(雌ネジに対し雄ネジを1回転させた場合の軸線方向の移動量)が同一である。第2モータM2の動力が第2モータM2のロータ軸52、第1ギヤ54、及び第2ギヤ56を順次介して引張部材50に伝達されることで、引張部材50は、軸線CL周りに回転制御される。すなわち、引張部材50の回転角θp[deg]は、第2モータM2により制御される。
反力押え部材60は、引張部材50の被締結体20への接近に制限を加えるとともに、引張荷重Pを検出するための荷重センサ72が取り付けられる部材である。反力押え部材60は、例えば軸線CL方向に延びる円筒状である。反力押え部材60の内径は、ボルト10のフランジ14aの径や引張部材50における雌ネジ50aが形成されている部分の外径よりも大きい。反力押え部材60における軸線CL方向の一端側(図2の紙面上側)は、ケース80内に収容され、ベアリング70を介して引張部材50で支持されている。反力押え部材60における軸線CL方向の他端側(図2の紙面下側)は、ケース80外に突出している。反力押え部材60のケース80内の部分には、ボルト10に作用する引張荷重Pを検出する荷重センサ72(例えば、歪センサ)が取り付けられている。
角度センサ74は、レンチホルダ46の回転角θwを検出するセンサである。差し込み穴14cにレンチ40が差し込まれた状態では、ボルト10の回転角θbとレンチホルダ46の回転角θwとは、略同値である。差し込み穴14cに係合されたレンチ40が回転してボルト10が締め付けられている場合、レンチホルダ46とボルト10との間にあるレンチ40は軸線CL周りに捻じられる。そのため、ボルト10の回転角θbは、レンチホルダ46の回転角θwに対してレンチ40の捻れ分だけ遅れて変化する。
電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
電子制御装置90には、各種センサ等(例えば、荷重センサ72、角度センサ74など)による検出値に基づく各種信号等(例えば、引張荷重P[N]、レンチホルダ46の回転角θw[deg]など)が、それぞれ入力される。
電子制御装置90からは、ボルト締付装置30に備えられた各モータ(例えば第1モータM1、第2モータM2など)に各種指令信号(例えば第1モータM1を回転制御するための第1モータ制御信号Sm1、第2モータM2を回転制御するための第2モータ制御信号Sm2など)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、第1モータ制御部90a、第2モータ制御部90b、着座検出部90c、折れ点検出部90d、及び締付回転角算出部90eを機能的に備える。
図3は、図2に示すボルト締付装置30の動作を説明する図である。以下、図3を用いながら、図1に示すボルト締付装置30における電子制御装置90の制御機能の要部を表す機能ブロックについて説明する。
図3(a)は、ボルト10が被締結体20に仮止めされた状態である。仮止め状態では、ボルト10のフランジ14aは被締結体20から離間した位置にある。また、レンチ40の軸部42は、ボルト10の差し込み穴14cに差し込まれている。
図3(a)の状態において、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を所定の正回転方向(図に示す回転方向r1)に回転させる。第1モータM1の回転により、レンチホルダ46、レンチ40、及びレンチ40が差し込み穴14cに差し込まれたボルト10も、正回転方向に回転する。なお、所定の正回転方向とは、ボルト10の軸部12が回転しながらボルト10を被締結体20に締め付ける回転方向(本実施例では、ボルト10の被締結体20への螺合が促進される回転方向)である。ボルト締付装置30は、軸線CL方向において被締結体20に対して相対移動可能に構成されているため、第1モータM1を正回転方向に回転させながら、ボルト締付装置30全体が被締結体20に接近する方向に移動させられる。ボルト10の被締結体20への螺合が促進されることにより、ボルト10のフランジ14aが被締結体20の端面に着座(=接触)して、図3(b)の状態となる。
図3(b)の状態になると、第1モータM1が受ける第1モータM1を回転させようとする力が急激に増大し、帰還トルクが急激に増大する。着座検出部90cは、第1モータM1の帰還トルクの急激な増大に基づいてフランジ14aが着座したことを検出する。着座検出部90cによりフランジ14aが着座したことが検出されると、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転を停止させる。
第1モータM1の回転の停止後、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を所定の逆回転方向(図に示す回転方向r2)に回転させてボルト10のフランジ14aを被締結体20の端面からわずかに離間した位置とする。これにより、図3(c)の状態となる。なお、所定の逆回転方向とは、所定の正回転方向とは反対向きの方向、すなわちボルト10の軸部12が回転しながらボルト10の被締結体20への締め付けが緩められる回転方向(本実施例では、ボルト10の被締結体20への螺合が解放される回転方向)である。
図3(c)の状態において、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転を停止状態(すなわち回転位置を固定した状態)とし、第2モータ制御部90bは、第2モータM2を正回転方向に回転させ、且つ、ボルト締付装置30全体は、軸線CL方向において被締結体20に接近するように移動させられる。第1モータM1の回転が停止状態であるため、軸線CL方向での被締結体20に対するボルト10の相対的な位置は変化しない。ボルト締付装置30全体が被締結体20に接近する方向へ移動させられることにより、引張部材50及び反力押え部材60は、被締結体20に接近する方向へ移動させられる。この移動において第2モータM2が正回転方向に回転しているため、引張部材50の雌ネジ50aとボルト10の雄ネジ14bとが螺合した状態とされる。反力押え部材60の先端部が被締結体20に接触すると、ボルト締付装置30全体が被締結体20へ接近する移動は停止し、図3(d)の状態となる。
図3(d)の状態において、第2モータM2が正回転方向に回転して引張部材50が正回転方向に回転しても、反力押え部材60の先端部が被締結体20に接触しているため、引張部材50は、被締結体20に向かう方向に移動させられない。ボルト10の差し込み穴14cに差し込まれたレンチ40によりボルト10は回転できない状態とされているため、ボルト10には引張部材50の回転により軸線CL方向における引き抜き方向(図3の紙面上向き)の荷重である引張荷重が作用することとなる。このボルト10に作用する引張荷重と同等の力が、引張部材50と第1被締結部材22との間に配設されたベアリング70(図2参照)及び反力押え部材60に作用する。反力押え部材60に作用する力は、引張荷重Pとして荷重センサ72(図2参照)で検出することができる。
荷重センサ72で検出された引張荷重Pが所定の目標荷重値Ptgt[N]に到達すると、第2モータ制御部90bは、第2モータM2の回転を停止させる。所定の目標荷重値Ptgtは予め定められた荷重値であって、ボルト10の目標軸力値Ftgt[N]でもある。例えば、所定の目標荷重値Ptgt(=Ftgt)は、ボルト10の雄ネジ12a及び第2被締結部材24の雌ネジ24aが塑性変形しない範囲で可能な限り高い値に設定される。
引張荷重Pが所定の目標荷重値Ptgtに維持された状態で、第2モータ制御部90bは、第2モータM2の回転を停止状態とし、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を再び正回転方向に回転させてボルト10のフランジ14aを被締結体20に着座させる。ボルト10のフランジ14aが被締結体20に着座した状態では、引張部材50の雌ネジ50aとボルト10の雄ネジ14bとが螺合した状態が維持されている。本実施例では、前述したようにボルト10の雄ネジ14bと雄ネジ12aとが同一のリードであるため、ボルト10が正回転方向に回転して軸線CL方向の被締結体20側に移動しても、引張部材50は軸線CL方向に移動しない。軸線CL方向において引張部材50が被締結体20に対して相対移動しないため、ボルト10に作用する引張荷重Pは、所定の目標荷重値Ptgtが維持される。なお、ボルト10の雄ネジ14bと雄ネジ12aとが異なるリードである場合には、第1モータM1によりボルト10を被締結体20側に移動させる場合に、軸線CL方向において引張部材50が被締結体20に対して相対移動しないように第2モータM2により引張部材50を回転させることでボルト10に作用する引張荷重Pを所定の目標荷重値Ptgtに維持することができる。
図3(e)は、ボルト10のフランジ14aが被締結体20に着座した状態である。図3(e)の状態において、第2モータ制御部90bは、第2モータM2の回転を停止状態とし、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を正回転方向に回転させる。第1モータ制御部90aによる第1モータM1の正回転方向の回転により、ボルト10は正回転方向に回転させられる。ボルト10の正回転方向の回転により荷重センサ72で検出される引張荷重Pが下降し始め、引張荷重Pが下降した分に応じてボルト10の軸力Fが上昇する。厳密には、図3(e)においてボルト10のフランジ14aが被締結体20に着座した後にボルト10が正回転方向に回転させられると、荷重センサ72は、ボルト10の頭部14における軸線CL方向の荷重を検出する。ボルト10の頭部14における軸線CL方向の荷重と、ボルト10に作用する引張荷重P(フランジ14aと軸部12との間に与えられる引張荷重)と、の関係は、ボルト10の材質や形状に基づいて、予め実験的に或いは設計的に定められるため、発明の理解を容易にするため、以下、荷重センサ72においてボルト10に作用する引張荷重Pが検出されるものとして説明する。これにより、螺合する雄ネジ12a及び雌ネジ24aの各ネジ山は、図3(e)の拡大図に示す状態となる。この状態は、被締結体20にボルト10が締め付けられた図1に示した状態と同じである。
ここで、変化率R[N/deg]を、レンチホルダ46の回転角θwに対する引張荷重Pの変化率と定義する。言い換えれば、変化率Rは、レンチホルダ46の回転角θw及び引張荷重Pのそれぞれを座標軸とした座標系において、回転角θwに対する引張荷重Pの微分係数、すなわちレンチホルダ46の回転角θwの微小変化量dθwに対する引張荷重Pの微小変化量dPの比(=dP/dθw)である。なお、前述したように、ボルト10の回転角θbは、レンチホルダ46の回転角θwに対してレンチ40の捻れ分だけ遅れて変化するが、ボルト10の回転角θbとレンチホルダ46の回転角θwとは相対回転不能となっている。したがって、変化率Rは、ボルト10の回転角θbに対する引張荷重Pの変化率でもある。
レンチホルダ46が正回転方向に回転した場合には回転角θwが増加し、レンチホルダ46が逆回転方向に回転した場合には回転角θwが減少するものとする。レンチホルダ46が正回転方向に回転して回転角θwが増加すると引張荷重Pが減少し、レンチホルダ46が逆回転方向に回転して回転角θwが減少すると引張荷重Pが増加するため、変化率Rは負の値となる(図4参照)。
ボルト10が正回転方向に回転させられる場合、変化率Rは、雄ネジ12a及び雌ネジ24aの弾性変形によって零値から負の値へ低下して大きく変動し、弾性限界に近づくにつれて変動しにくくなる。また、変化率Rは、ボルト10が逆回転方向に回転させられる場合、雄ネジ12a及び雌ネジ24aの弾性限界の近傍では変動しにくく、弾性限界から離れると弾性変形によって負の値から零値へ増加して大きく変動するようになる。つまり、変化率Rは、比較的変動が大きい高変動領域と、高変動領域に比べて比較的変動が小さい低変動領域と、がある(図4参照)。
折れ点検出部90dは、レンチホルダ46の回転角θw及び引張荷重Pに基づいて変化率Rを逐次算出し、変化率Rが低変動領域から高変動領域に変化する変化点である折れ点O1を検出する。また、折れ点検出部90dは、折れ点O1を検出した時点におけるレンチホルダ46の回転角θwである回転角度値θ1[deg]及び引張荷重Pの荷重値P3も検出する。折れ点検出部90dにより折れ点O1が検出された後に、引張荷重Pが例えば零又は零近傍の荷重値P1[N]に到達すると、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転を停止させる。荷重値P1は、折れ点O1よりも引張荷重Pが低くなるように予め実験的に或いは設計的に定められた値である。なお、荷重値P1は、本発明における「第1の所定値」に相当する。
次に、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を逆回転方向に回転させる。第1モータ制御部90aによる第1モータM1の逆回転方向の回転により、ボルト10は逆回転方向に回転させられる。ボルト10の逆回転方向の回転により荷重センサ72で検出される引張荷重Pが上昇し始め、引張荷重Pが上昇した分に応じてボルト10の軸力Fが下降する。具体的には、第1モータM1の逆回転方向の回転が開始された後に、後述する変化量A[deg]だけレンチホルダ46の回転角θwが減少すると、引張荷重Pが上昇し始める。なお、変化量Aは、本発明における「前記ボルトを前記逆回転方向に回転させる開始時点から前記引張荷重の上昇の開始時点までの前記回転制御部材の回転角の変化量」に相当する。
折れ点検出部90dは、ボルト10が逆回転方向に回転させられた開始時点から引張荷重Pの上昇開始時点までのレンチホルダ46の回転角θwの変化量Aを検出する。変化量Aは、ボルト締付装置30におけるバックラッシュ(ガタ)G[deg]に応じた回転角Xと、ボルト締付装置30によるボルト10の締め付け時において回転角θwが制御されるレンチホルダ46とボルト10との間にある部材(本実施例では、レンチ40)の捻れ(以下、「ロッド捻れ」と記す。)に起因した回転角Y[deg]と、の合計量である。例えば、回転角Xは、レンチホルダ46及びレンチ40がスプライン嵌合された嵌合部におけるバックラッシュの軸線CL周りの回転角である。回転角Xは、例えばバックラッシュGの大きさに基づいて、予め設計的に求めることができる。例えば、回転角Yは、引張部材50によりボルト10に引張荷重Pを作用させている状態で第1モータM1によりボルト10を回転させた場合において、レンチ40が弾性変形で軸線CL周りに捻られる軸線CL周りの回転角である。回転角Yは、例えばレンチ40の材質や形状及びレンチホルダ46からレンチ40に加えられるトルクの大きさ(すなわち、レンチ40に加えられるトルクの大きさに応じて定まる引張荷重Pの大きさ)に基づいて、予め設計的に求めることができる。引張荷重Pの大きさによって回転角Yの大きさが異なるため、変化量Aも引張荷重Pの大きさによって異なる。なお、ボルト10が逆回転方向に回転させられた開始時点付近では、荷重センサ72で検出される引張荷重Pが低い状態(すなわちレンチ40に加えられるトルクが高トルク状態)であるため、ロッド捻れに起因した回転角Yは、回転角Xに対して無視できないほど大きい。
折れ点検出部90dは、変化率Rを逐次算出し、変化率Rが高変動領域から低変動領域に変化する変化点である折れ点O2を検出する。また、折れ点検出部90dは、折れ点O2を検出した時点におけるレンチホルダ46の回転角θwである回転角度値θ2[deg]及び引張荷重Pの荷重値P3も検出する。折れ点検出部90dにより折れ点O2が検出された後に、引張荷重Pが例えば目標荷重値Ptgt又は目標荷重値Ptgt近傍の荷重値P2[N]に到達すると、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転を停止させる。荷重値P2は、折れ点O2よりも引張荷重Pが高くなるように予め実験的に或いは設計的に定められた値である。なお、折れ点O2は、本発明における「折れ点」及び「第2の折れ点」に相当し、荷重値P2は、本発明における「第2の所定値」に相当する。
次に、第1モータ制御部90aは、第1モータM1を正回転方向に回転させる。第1モータ制御部90aによる第1モータM1の正回転方向の回転により、引張荷重Pが下降し始め、引張荷重Pが下降した分に応じてボルト10の軸力Fが上昇する。具体的には、第1モータM1の正回転方向の回転が開始された後に、後述する変化量B[deg]だけレンチホルダ46の回転角θwが増加すると、引張荷重Pが下降し始める。なお、変化量Bは、本発明における「前記ボルトを前記正回転方向に回転させる開始時点から前記引張荷重の下降の開始時点までの前記回転制御部材の回転角の変化量」に相当する。
折れ点検出部90dは、ボルト10が正回転方向に回転させられた開始時点から引張荷重Pの下降開始時点までのレンチホルダ46の回転角θwの変化量Bを検出する。変化量Bは、前述したボルト締付装置30におけるバックラッシュGに応じた回転角Xと略等しい。「略等しい」としているのは、ボルト10が正回転方向に回転させられた開始時点付近では、前述のボルト10が逆回転方向に回転させられた開始時点付近の場合に比較して荷重センサ72で検出される引張荷重Pが高い状態(すなわちレンチ40に加えられるトルクが低トルク状態)であるため、ロッド捻れに起因した回転角Yが、回転角Xに比べて十分小さいからである。
折れ点検出部90dにより折れ点O2及び変化量Bが検出されると、締付回転角算出部90eは、折れ点O2及び変化量Aに基づいて、目標締付回転角θt[deg]を算出する(推定する)。目標締付回転角θtは、ボルト10の締め付けを終了させる時のレンチホルダ46の回転角θwの目標値である。目標締付回転角θtの具体的な算出方法については、後述の図4のタイムチャートにおいて説明する。
締付回転角算出部90eにより目標締付回転角θtが算出されると、第1モータ制御部90aは、レンチホルダ46の回転角θwが目標締付回転角θtに到達するまでボルト10を締め付ける。(レンチホルダ46の回転角θwが目標締付回転角θtに到達すると、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転を終了させる)。
次に、第1モータ制御部90aは、第1モータM1の回転の停止状態を維持し、第2モータ制御部90bは、第2モータM2を逆回転方向に回転させ、且つ、ボルト締付装置30全体が被締結体20から離間するように移動させられることにより、ボルト締付装置30をボルト10及び被締結体20から取り外す。これにより、図3(f)の状態となる。図3(f)の状態では、ボルト10の軸力Fは目標軸力値Ftgtに近い値となる。
図4は、図2に示す電子制御装置90の制御作動を説明するタイムチャートの一例である。図4の横軸は、時間t[ms]である。なお、時点t1から時点t12までの間の期間は、ボルト10に引張荷重Pが与えられた状態である。
時点t1以前は、前述した第1モータM1が正回転方向に回転させられてボルト10のフランジ14aが被締結体20に着座した図3(e)の状態になった後において、ボルト10が正回転方向に回転させられているが、荷重センサ72で検出された引張荷重Pの下降は未だ開始されていない。
時点t1において、ボルト10が正回転方向に回転させられることで、レンチホルダ46の回転角θwの増加に応じて引張荷重Pが下降し始める。
時点t2(>t1)において、レンチホルダ46の回転角θwが更に増加させられて変化率Rが低変動領域から高変動領域に変化する折れ点O1が検出される。折れ点O1が検出された時点t2では、レンチホルダ46の回転角θwは回転角度値θ1であり、引張荷重Pは荷重値P3である。
時点t3(>t2)において、引張荷重Pが荷重値P1に到達し、ボルト10の正回転方向の回転が停止される。すなわち、ボルト10の被締結体20への螺合の促進が停止される。
時点t4(>t3)において、ボルト10の逆回転方向の回転が開始されるが、引張荷重Pの上昇はすぐには開始されない。なお、時点t4は、本発明における「前記ボルトを前記逆回転方向に回転させる開始時点」に相当する。
時点t5(>t4)において、ボルト10が逆回転方向に回転させられることで、レンチホルダ46の回転角θwの減少に応じて引張荷重Pが上昇し始める。なお、時点t5は、本発明における「前記引張荷重の上昇の開始時点」に相当する。時点t4から時点t5までの間におけるレンチホルダ46の回転角θwの変化量は、前述した変化量Aである。
時点t7(>t5)において、レンチホルダ46の回転角θwの減少に応じて変化率Rが高変動領域から低変動領域に変化する折れ点O2が検出される。折れ点O2が検出された時点t7では、レンチホルダ46の回転角θwは回転角度値θ2であり、引張荷重Pは荷重値P3(厳密には、検出精度により時点t2で検出された荷重値P3とは異なり得る)である。なお、折れ点O1の検出時と折れ点O2の検出時とでは、レンチホルダ46がレンチ40を介してボルト10を回転させる方向と、ロッド捻れの方向と、が両方とも異なる。そのため、回転角度値θ1と回転角度値θ2との差(=|θ1-θ2|)は、変化量Aと略等しい。「略等しい」としているのは、変化量Aの検出時と、折れ点O1及び折れ点O2が検出される時と、では荷重センサ72で検出される引張荷重P(レンチ40に加えられるトルク状態)が少し異なるため、ロッド捻れに起因した回転角Yも少し異なるためである。
時点t7における折れ点O2の検出では、変化量Aが考慮される。折れ点O2の検出にあたって、レンチホルダ46の回転角θwが回転角度値θ1となる時点t6から、レンチホルダ46の回転角θwが変化量Aだけ減少した時点の辺りで折れ点O2が現れると推定される。「辺り」としているのは、検出された回転角度値θ1に誤差が含まれ得ること、及び、回転角度値θ1と回転角度値θ2との差が時点t5で検出された変化量Aと引張荷重Pの大きさに応じて少し異なること、による。そのため、折れ点O2が現れると推定される辺り{=(θ1-A)近傍の所定の範囲内}では、変化率Rの算出頻度を増加させたり、ボルト10の回転速度を低速化したりすることで、検出時間の増加を抑制しつつ折れ点O2の検出精度を向上させることができる。
時点t8(>t7)において、引張荷重Pが荷重値P2に到達し、ボルト10の逆回転方向の回転が停止される。すなわち、ボルト10の被締結体20への螺合の解放が停止される。
時点t9(>t8)において、ボルト10の正回転方向の回転が開始されるが、引張荷重Pの下降はすぐには開始されない。なお、時点t9は、本発明における「前記ボルトを前記正回転方向に回転させる開始時点」に相当する。
時点t10(>t9)において、ボルト10が正回転方向に回転させられることで、レンチホルダ46の回転角θwの増加に応じて引張荷重Pが下降し始める。なお、時点t10は、本発明における「前記引張荷重の下降の開始時点」に相当する。時点t9から時点t10までの間におけるレンチホルダ46の回転角θwの変化量は、前述した変化量Bである。そして、折れ点O2及び変化量Aに基づいて、目標締付回転角θtが算出される。具体的には、変化量Aが検出された時点t4から時点t5までの間における引張荷重Pの大きさ(荷重値P1)と、折れ点O2近傍である時点t6から時点t7までの間における引張荷重Pの大きさ(荷重値P3)と、の差ΔP(=|P3-P1|)に応じて、差ΔPが大きいほどロッド捻れに起因した回転角Yが小さくなる。そのため、変化量Aが差ΔPに応じて荷重値P3における変化量A1に補正され、折れ点O2における回転角度値θ2と変化量A1との加算値(=θ2+A1)が目標締付回転角θtとして算出される。変化量Aから変化量A1への補正は、例えば変化量A及び差ΔPと、変化量A1と、の間の予め実験的に或いは設計的に定められたマップに基づいて行われる。
なお、変化量A1は、本発明における「所定の補正回転角」に相当する。所定の補正回転角は、目標締付回転角θtの推定に用いられる折れ点の検出時点におけるボルト10の回転方向と、ボルト10の締め付け時点におけるボルト10の回転方向と、の関係(すなわち、同一か異なるかの関係)により定められるボルト10の回転角θbに対するレンチホルダ46の回転角θwの回転角差を補正する回転角である。なお、目標締付回転角θtの推定に用いられる折れ点の検出時点におけるボルト10の回転方向と、ボルト10の締め付け時点におけるボルト10の回転方向と、が同一である場合にはボルト10の回転角θbに対するレンチホルダ46の回転角θwの回転角差が発生しないため、所定の補正回転角は零値である。本実施例の場合、目標締付回転角θtの推定に用いられる折れ点O2の検出時点におけるボルト10の回転方向(=逆回転方向)と、ボルト10の締め付け時点におけるボルト10の回転方向(=正回転方向)と、が異なるため、所定の補正回転角は、ボルト10の回転方向の相違に起因した折れ点O2及び後述する折れ点Oeでのレンチホルダ46の回転角θwの回転角差である。例えば、所定の補正回転角は、ボルト締付装置30におけるバックラッシュGに応じた回転角Xと、引張荷重Pに応じて定められるロッド捻れに起因した回転角Yと、の合計量である。なお、所定の補正回転角は、本実施例のように検出値として求められても良いし、後述するように予め設計的に求められても良い。
時点t12(>t10)において、レンチホルダ46の回転角θwが目標締付回転角θt(=θ2+A1)に到達し、ボルト10の正回転方向の回転が終了させられる。このボルト10の正回転方向の回転が終了させられる時点t12は、レンチホルダ46の回転角θwの増加に応じて変化率Rが低変動領域から高変動領域に変化する変化点である折れ点Oeである。
本実施例によれば、(a)ボルト10が正回転方向に回転させられることにより引張荷重Pが荷重値P1まで下降させられた場合でのレンチホルダ46の回転角θwに対する引張荷重Pの変化率Rにおける低変動領域から高変動領域に変化する折れ点O1が検出され、(b)ボルト10が逆回転方向に回転させられることにより引張荷重Pが荷重値P2まで上昇させられた場合での変化率Rにおける高変動領域から低変動領域に変化する折れ点O2が検出され、(c)折れ点O2及び変化量A1に基づいて、ボルト10の締め付けを終了させる時の目標締付回転角θtが推定され、(d)ボルト10の締め付けは、レンチホルダ46の回転角θwが目標締付回転角θtで終了させられる。検出された折れ点O2及び変化量A1に基づいて推定された目標締付回転角θt(=θ2+A1)でボルト10の締め付けが終了させられるため、折れ点が検出されてからボルト10の締め付けが終了させられる場合に比較して、真の折れ点の近くにボルト10を締め付けることができる(すなわち、変化率Rにおける折れ点でボルト10を締め付ける精度が向上させられる)。これにより、ボルト10の軸力Fを目標軸力値Ftgtに近づけられる。例えば、ボルト10が予め推定された目標締付回転角θtに締め付けられることで、折れ点を検出しながらボルト10の締め付けを終了する場合に発生する折れ点の検出の遅れやボルト10の締め付けを終了させるとの判断時点から実際に締め付けが終了する時点までのタイムラグが低減されやすく、真の折れ点の近くにボルト10を締め付けることができる。また、ボルト10の軸力Fが目標軸力値Ftgtに近づけられることにより、ボルト10の軸力Fが目標軸力値Ftgtよりも低い場合に比較して、被締結体20に締め付けられるボルト10の個数を減らすことができ、ボルト10が締め付けられる製品のコスト低減や軽量化が図られる。
本実施例によれば、ボルト10が逆回転方向に回転させられる開始時点である時点t4から引張荷重Pの上昇の開始時点である時点t5までのレンチホルダ46の回転角θwの変化量Aが考慮されて折れ点O2が検出される。折れ点O2の検出において、変化量Aが考慮されることで、考慮されない場合に比較して、折れ点O2の検出精度が向上させられる。これにより、目標締付回転角θtの推定精度が向上させられることで真の折れ点の近くにボルト10を締め付けることができ、ボルト10の軸力Fを目標軸力値Ftgtにする正確性が向上させられる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、被締結体20が第1被締結部材22及び第2被締結部材24によって構成されていたが、3つ以上の被締結部材が重ねられた被締結体にも本発明は適用可能である。
前述の実施例では、ボルト10の差し込み穴14cとボルト締付装置30のレンチ40の軸部42の先端部とが係合することによりボルト10が回転させられる構造であったが、本発明はこれに限るものではなく、例えばボルト10の頭部14に設けられた凸部とボルト締付装置30に設けられた凹部とが係合することによりボルト10が回転させられる構造であっても良い。この構造では、ボルト締付装置30に設けられた凹部を有する部材が、ボルト締付装置30によるボルト10の締め付け時において回転角が制御される回転制御部材とボルト10との間にある部材である。
前述の実施例では、検出された折れ点O2及び検出された変化量Aに基づいて、「θ2+A1」が目標締付回転角θtとして算出されたが、本発明はこの態様に限らない。
例えば、検出された折れ点O2、検出された変化量A、及び検出された変化量Bに基づいて、「θ2+B+Y1」が目標締付回転角θtとして算出される態様であっても良い。回転角Y1は、検出された変化量Aと検出された変化量Bとの差(=A-B)に基づいて算出された回転角Yに略等しい回転角が、荷重値P3におけるロッド捻れに起因した回転角として補正されたものである。この態様の場合には、検出された変化量Bと回転角Y1との合計量(=B+Y1)は、本発明における「所定の補正回転角」に相当する。
例えば、前述した図4のタイムチャートにおいて、時点t12以降において時点t2から時点t12までと同様のことが繰り返して実行される場合、時点t12での再度検出された折れ点(折れ点Oeとして示す点であって、本発明における「第1の折れ点」に相当)におけるレンチホルダ46の回転角θwの回転角度値が目標締付回転角θtとして算出される態様であっても良い。この態様においては、目標締付回転角θtの推定に用いられる時点t12で再度検出される折れ点の検出時点におけるボルト10の回転方向(=正回転方向)と、ボルト10の締め付け時点におけるボルト10の回転方向(=正回転方向)と、が同一であるため、本発明における「所定の補正回転角」は、零値である。好適には、時点t12で再度検出される折れ点の検出において変化量B及び前述の回転角Y1が考慮されることで、前述の折れ点O2の検出と同様に時点t12で検出される折れ点の検出精度が向上させられる。折れ点Oeが現れる時点t12は、レンチホルダ46の回転角θwが回転角度値θ2となる時点t11から、レンチホルダ46の回転角θwが変化量Bとロッド捻れに起因した回転角Y1との合計量(=B+Y1)だけ増加した時点の辺りで折れ点Oeが現れると推定されるからである。なお、折れ点Oeが現れる時点t12は、時点t11からレンチホルダ46の回転角θwが変化量Bだけ増加した時点から回転角Y1だけ増加した範囲内(θ2+B~θ2+B+Y1の範囲)の辺りに現れると推定されるため、時点t12で再度検出される折れ点の検出においては変化量Bのみが考慮されても良い。
また、折れ点O1や折れ点O2が検出されなかった場合には、前述した図4のタイムチャートにおいて、時点t12以降において時点t2から時点t12までと同様のことが1回又は複数回繰り返されることで、本発明における「第1の折れ点」や「第2の折れ点」の検出機会が増やされて「第1の折れ点」や「第2の折れ点」が検出されやすくなる。また、繰り返しによるレンチホルダ46の回転角θwが増加させられる互いに対応する期間や回転角θwが減少させられる互いに対応する期間における引張荷重Pの波形比較などが行われることで、本発明における「第1の折れ点」や「第2の折れ点」がどの辺りで現れるかが推定されやすくなる。また、ボルト10のフランジ14aと被締結体20との接触面や雄ネジ12aと雌ネジ24aとの接触面における動摩擦や静止摩擦などによるスティックスリップ現象によって、折れ点O1や折れ点O2が検出されにくい場合もあるが、繰り返しの際にレンチホルダ46の回転角θwの増加速度や減少速度を低下させることで本発明における「第1の折れ点」や「第2の折れ点」が検出されやすくなる。スティックスリップ現象とは、固体の摩擦面すなわち前述した接触面で付着(スティック)と滑り(スリップ)とが交互に起こって発生する自励振動現象である。
例えば、上記した種々の態様で算出された複数の目標締付回転角θtを平均化して目標締付回転角θtを算出する態様であっても良い。このように、本発明における目標締付回転角θtは、ボルト10を正回転方向に回転させることにより引張荷重Pを荷重値P1まで下降させた場合での変化率Rにおける折れ点(第1の折れ点)及びボルト10を逆回転方向に回転させることにより引張荷重Pを荷重値P2まで上昇させた場合での変化率Rにおける折れ点(第2の折れ点)の少なくとも一方と、所定の補正回転角と、に基づいて、様々な方法で算出することが可能である。
前述の実施例では、レンチホルダ46の回転角θwが推定された目標締付回転角θtに到達するまで、ボルト10が正回転方向に回転させられて締め付けを終了する態様であったが、本発明はこの態様に限らない。例えば、レンチホルダ46の回転角θwが推定された目標締付回転角θtに到達するまで、ボルト10が逆回転方向に回転させられて締め付けを終了する態様であっても良い。この態様では、ボルト10が正回転方向に回転させられて締め付けられる場合に比較して、目標締付回転角θtは、所定の補正回転角だけ低い値に算出される。
前述の実施例では、ナットがなくボルト10のみで被締結体20を締め付ける態様であったが、本発明はこの態様に限らない。例えば、第2被締結部材24には雌ネジ24aが形成された締結穴の替わりにボルト10の軸部12が挿通可能な貫通孔が設けられ、その貫通孔を挿通して第2被締結部材24から突出したボルト10の軸部12の先端部側にナットが螺合させられることにより被締結体20が締め付けられる態様であっても良い。すなわち、ボルトとナットとの組み合わせにより、被締結体が締め付けられる態様であっても良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:ボルト
30:ボルト締付装置
46:レンチホルダ(回転制御部材)
A:変化量(ボルトを逆回転方向に回転させる開始時点から引張荷重の上昇の開始時点までの回転制御部材の回転角の変化量)
A1:変化量(所定の補正回転角)
B:変化量(ボルトを正回転方向に回転させる開始時点から引張荷重の下降の開始時点までの回転制御部材の回転角の変化量)
O1:折れ点(折れ点、第1の折れ点)
O2:折れ点(折れ点、第2の折れ点)
P:引張荷重
P1:荷重値(第1の所定値)
P2:荷重値(第2の所定値)
R:変化率
r1:回転方向(正回転方向)
r2:回転方向(逆回転方向)
t4:時点(ボルトを逆回転方向に回転させる開始時点)
t5:時点(引張荷重の上昇の開始時点)
t9:時点(ボルトを正回転方向に回転させる開始時点)
t10:時点(引張荷重の下降の開始時点)
θt:目標締付回転角
θw:回転角(回転制御部材の回転角)

Claims (1)

  1. ボルトに引張荷重を与えた状態で前記ボルトを締め付けるボルト締付装置であって、
    前記ボルトを回転させることにより前記引張荷重を変化させた場合に、前記ボルトを締め付ける回転制御部材の回転角に対する前記引張荷重の変化率における高変動領域と前記高変動領域よりも変動が小さい低変動領域との間の変化点である折れ点を検出し、
    前記折れ点における前記回転制御部材の回転角と、前記折れ点の検出時点及び前記ボルトの締め付け時点におけるそれぞれの前記ボルトの回転方向の関係により定められる所定の補正回転角と、に基づいて、前記ボルトの締め付けを終了させる目標締付回転角を推定し、
    前記ボルトの締め付けを前記目標締付回転角で終了させる
    ことを特徴とするボルト締付装置。
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