JP2726078B2 - 近赤外線吸収フィルターガラス - Google Patents

近赤外線吸収フィルターガラス

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はカラーVTRカメラの色補正等に用いて好適な
弗燐酸塩ベースの近赤外線吸収フィルターガラスに関す
る。
[背景技術] 一般にカラーVTRカメラに使用されている撮像管の光
の分光感度は、可視域から近赤外域950nmまで伸びてい
るため、この近赤外域をフィルターによりカットし、分
光感度を人間の視感度に近似させてやらなければ、画像
が赤味を帯び、良好な色再現を得ることができない。ま
た一方で、用いられるフィルターの紫外側の吸収が可視
域までおよぶと、今度は画像が暗くなってしまうことに
なる。したがってこの種のフィルターには、400〜520nm
の光の透過率が可能な限り高く、550〜950nmの光を可能
な限り多く吸収する特性が必要とされる。従来よりこの
種の近赤外線吸収フィルターとしては、燐酸塩ガラスに
CuOを添加したガラスが用いられている。
しかしながら、燐酸塩ガラスは、元々耐候性が悪いこ
とから、それを実用に耐え得るまで向上させるには、例
えば特公昭62−128943号公報に開示されているように比
較的多量のAl2O3の添加を必要とする。その結果、溶融
温度が上昇し、その温度が高いほど銅は還元されやすい
傾向にあるので、近赤外域に吸収をもつガラス成分中の
銅の2価のイオンCu2+が還元され、紫外域に吸収をもつ
1価のイオンCu+に変化し可視域の透過率が低くなり、
赤外域の透過率が高くなるという特性劣化の傾向が生じ
ていた。一方、透過率特性を向上させようとすると、ガ
ラス成分中の銅の2価のイオンCu2+が還元されて1価の
イオンCu+にならないようにアルカリ添加等で溶融温度
を下げることになるが、これは同時にガラスそのものの
耐候性をさらに劣化させることになる。したがって燐酸
塩ガラスでこの種の近赤外線吸収フィルターを製作する
場合には、相反する関係の透過率特性と耐候性との妥協
点をみつけて実用に提供してきたのが実状であり、優れ
た透過率特性と優れた耐候性とを同時に満足することは
従来不可能であった。
これらの事情に鑑み、本発明者は、カラーVTRカメラ
用フィルターに要求される透過率特性と耐候性を同時に
満足するガラスとして、弗燐酸塩ガラスにCuOを添加し
て成る近赤外線吸収フィルターガラスを見い出し、この
近赤外線吸収フィルターガラスについて特許出願してい
る(特開平1−219037号)。このCuO−弗燐酸塩系ガラ
スは、従来の燐酸塩系ガラスに比べてはるかに優れた透
過率特性と耐候性を有する有用なガラスであり、充分に
実用に供し得る。
[発明が解決しようとする課題] しかしながらこのCuO−弗燐酸塩系ガラスは従来の燐
酸塩ガラスと同様、熔融工程上の温度や雰囲気等の熔融
条件の変動により400〜520nmの透過率が変化する傾向が
有り、場合によっては所望の高透過率が得られない欠点
が有る。
[課題を解決するための手段] そこで熔融条件の変動による透過率のバラツキを少な
くし、かつ400〜520nmにおける透過率をより一層向上さ
せることを目的として鋭意研究した結果、CuO−弗燐酸
塩系基礎ガラスに、有効量のAs2O3,Sb2O3、CeO2を加え
ることによって、上記目的が達成されることを見い出
し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の近赤外線吸収フィルターガラスは、Cu
O−弗燐酸塩系基礎ガラスに、As2O3,Sb2O3及びCeO2
らなる群から選ばれる少なくとも1種を有効量含有させ
たことを特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の近赤外線吸収フィルターガラスにおいて用い
られるCuO−弗燐酸塩系基礎ガラスとしては、ガラスの
熔融性、耐失透性、耐候性等を考慮し、所望の分光透過
率を得るために、出願人の先願に係る特許願63−47118
号明細書に記載のCuO−弗燐酸塩系ガラスを用いるのが
好ましい。
このCuO−弗燐酸塩系ガラスは、重量基準で5〜45%
のP2O5;1〜35%のAlF3;10〜75%のRF2(RはBa,Sr,Ca,M
g,Zn及びPbからなる群から選ばれる少なくとも1種の2
価金属である);0〜40%のR′F(R′はLi,Na及びK
からなる群から選ばれる少なくとも1種の1価金属であ
る);及び0〜15%のR″Fm(R″はLa,Y,Gd,Si,B,Zr
及びTaからなる群から選ばれる少なくとも1種の3〜5
価金属であり、mは前記金属R″の原子価に相当する数
である)を含み(但し、前記金属弗化物はその70重量%
までを金属酸化物に置換可能である)、さらに前記のP2
O5と、金属弗化物と、場合により置換された金属酸化物
との総合計重量に対して0.2〜15%のCuOを含むものであ
る。
しかし本発明において用いられるCuO−弗燐酸塩系基
礎ガラスは、前記特願昭63−47118号明細書に記載のも
のに限定されるものではない。
本発明の近赤外線吸収フィルターガラスは、CuO−弗
燐酸塩系基礎ガラスに、Al2O3,Sb2O3及びCeO2からなる
群から選ばれる少なくとも1種を有効量含有させたもの
である。ここに「有効量」とは、上記As2O3,Sb2O3,Ce
O2が、これらの添加による悪影響を生ずることなく、透
過率変動抑制と透過率向上に寄与し得る量を意味し、こ
れらを単独で用いた場合の有効量としては、CuO−弗燐
酸塩系基礎ガラス100重量部に対し、As2O3の場合、0.00
5〜5重量部、Sb2O3の場合、0.005〜3重量部、CeO2
場合0.01〜1重量部とするのが好ましい。その理由は、
As2O3,Sb2O3,CeO2がそれぞれ0.005重量部,0.005重量
部,0.01重量部未満であると、透過率変動抑制と400〜52
0nmにおける透過率向上に対する効果をほとんど示さ
ず、一方、As2O3,Sb2O3はそれぞれ5重量部及び3重量
部を超えるとガラス中に未熔解物が発生し易くなり、ま
た、CeO2は1重量部を超えるとCeO2自身の紫外域の吸収
の効果が強くなり400〜520nmの透過率向上が不可能にな
るからである。後掲の図面、特に第2図より明らかなよ
うに本発明の近赤外線吸収フィルターガラスは波長400
〜520nmにおける光の透過率が65%以上であるのが好ま
しい。
しかしAs2O3,Sb2O3,CeO2の上述の添加量範囲は一応
の基準であり、CuO−弗燐酸塩系基礎ガラスの組成等に
より、上記添加量範囲外のAs2O3,Sb2O3,CeO2を添加し
た場合にも本発明の目的を達成し得ることがある。
As2O3,Sb2O3,CeO2の効果は、As2O3が最も高く、次
いでSb2O3、CeO2の順で減少する。
またAs2O3,Sb2O3,CeO2は2種以上の混合物を0.005
〜5重量部の範囲内で使用することもできる。
本発明の近赤外線吸収フィルターガラスは通常用いら
れる。酸化物、燐酸塩、炭酸塩、弗化物等の原料を所定
量混合し、白金製るつぼ中で蓋をして800〜1000℃で熔
融し、撹拌して脱泡、均質化を行なった後、予熱した金
型に鋳込み、徐冷することによって得られる。
[実施例] 以下、実施例により本発明を更に説明する。
実施例1 重量基準でP2O527.8%,AlF3;8.2%,MgF25.3%,CaF
210.4%,SrF219.4%,BaF215.0%,Al2O37.9%,Li2O
6.0%を含み、上記成分の合計重量基準でCuOを1.4%含
むCuO−弗燐酸塩系基礎ガラス(表1中の組成No.Aに対
応)に、この基礎ガラス100重量部に対してそれぞれAs2
O31重量部、Sb2O31重量部、CeO20.2重量部を添加した
3種の組成物(表1中の組成No.1,2,3に対応)を850℃
で35分間熔融して得たガラスをガラス厚1.0mmに研磨し
た、組成No.1,2,3のガラス試料について分光透過率を測
定した結果を組成No.Aの基礎ガラスの分光透過率ととも
に第1図に示す。
第1図より、組成No.1,2,3のガラス試料は組成No.Aの
基礎ガラスよりも400〜520nmの透過率が向上しており、
As2O3,Sb2O3,CeO2の添加による効果が認められた。
実施例2 重量基準でP2O523.0%,AlF38.9%,MgF24.0%,CaF2
11.4%,BaF234.4%,LiF5.3%,KF5.0%,Al2O35.0%,L
i2O3.0%を含み、上記成分の合計重量基準でCuOを5.1%
含むCuO−弗燐酸塩系基礎ガラス(表1中の組成No.Bに
対応)に、この基礎ガラス100重量部に対してそれぞれA
s2O31重量部、Sb2O31重量部、CeO20.2重量部を添加し
た3種の組成物(表1中の組成No.4,5,6に対応)を950
℃で35分間熔融して得たガラスをガラス厚0.3mmに研磨
した、組成No.4,5,6のガラス試料について分光透過率を
測定した結果を、組成No.Bの基礎ガラスの分光透過率と
ともに第2図に示す。
第2図より、組成No.4,5,6のガラス試料は組成No.Bの
基礎ガラスよりも400〜520nmの透過率が向上しており、
As2O3,Sb2O3,CeO2の添加による効果が認められた。
実施例3 熔融温度の影響を見るため、組成No.Aの基礎ガラス組
成物及びこれにAs2O3を添加した組成No.1の組成物につ
いて950℃で35分間熔融して得たガラスをガラス厚1.0mm
に研磨した試料の分光透過率を測定した。その結果は、
第3図より明らかなように、組成No.Aの場合、熔融温度
の上昇により透過率が大きく低下しているのに対し、組
成No.1の場合、熔融温度が上昇しても透過率は殆んど低
下せず、As2O3を添加すると熔融温度の変動による透過
率の変動が少ないことが明らかとなった。
実施例4 熔融雰囲気の影響を見るため、組成No.Aの基礎ガラス
組成物のBaF215.0重量部のうち6.0重量部をBaCO3に置換
した組成物(表1中の組成No.Cに対応)及びこの組成N
o.Cの組成物100重量部にAs2O31.0重量部を添加した組成
物(表1中の組成No.7に対応)について、850℃で35分
間熔融して得たガラスをガラス厚1.0mmに研磨した試料
の分光透過率を測定した。その結果は、第4図に示すよ
うに、組成No.Cの場合、炭酸ガス雰囲気となることによ
って透過率が大きく低下しているのに対し、組成No.7の
場合、炭酸ガスによる透過率の低下は殆んどみられず、
As2O3を添加すると熔融雰囲気の変動による透過率の変
動が少ないことが明らかとなった。
実施例5 組成No.Aの基礎ガラス組成物100重量部にAs2O30.2重
量部及びSb2O30.01重量部を添加した組成物について、
実施例1と同様の条件で熔融して得たガラスをガラス厚
1.0mmに研磨した試料の分光透過率を測定した結果、実
施例1と同様に400〜520nmにおける透過率の向上が認め
られた。
[発明の効果] 以上述べた通り、所定量のAs2O3,Sb2O3,CeO2を含有
させたCuO−弗燐酸塩系ガラスからなる本発明の近赤外
線吸収フィルターガラスは400〜520nmにおいて一段と高
い透過率を有し、かつ、熔融工程上の条件変動にも左右
され難い安定した特性を得ることができ、カラーVTRカ
メラ用としてのみならず、カラープリント用フィルター
等にも有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図、第3図及び第4図は、本発明の近赤外
線吸収フィルターガラスの分光透過率を示すグラフであ
る。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】CuO−弗燐酸塩系基礎ガラスに、As2O3、Sb
    2O3及びCeO2からなる群から選ばれる少なくとも1種を
    有効量含有させたことを特徴とする近赤外線吸収フィル
    ターガラス。
  2. 【請求項2】波長400〜520nmにおける光の透過率が65%
    以上である請求項1に記載の近赤外線吸収フィルターガ
    ラス。
  3. 【請求項3】前記基礎ガラス100重量部に対し、As2O3
    独の場合0.005〜5重量部、Sb2O3単独の場合0.005〜3
    重量部、CeO2単独の場合0.01〜1重量部含有されている
    請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルターガラ
    ス。
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