JP2722846B2 - 電子楽器 - Google Patents

電子楽器

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JP2722846B2
JP2722846B2 JP3093327A JP9332791A JP2722846B2 JP 2722846 B2 JP2722846 B2 JP 2722846B2 JP 3093327 A JP3093327 A JP 3093327A JP 9332791 A JP9332791 A JP 9332791A JP 2722846 B2 JP2722846 B2 JP 2722846B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自然楽器の発音機構
をシミュレートすることによって楽音を合成し、自然楽
器特有の演奏法による楽音を発音する電子楽器に関す
る。
【0002】
【従来の技術】リップリード、シングルリード等の複数
モードで発音可能なVOP物理モデルにおいて、音高
これらのモデルの線形部(主にディレイ長や各種フィル
タの係数)と非線形部(主にリード、唇を記述したフィ
ルタ)で決定される。従来は、音高が指定されると、テ
ーブルや演算などで、一意にディレイ長や各種フィルタ
の係数(線形部)および発音モード(線形部または非線
形部)を指定していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来の電子楽器では、例えば、レジスタチューブ付きのシ
ングルリードモデルの場合、近接した音で、例えばトリ
ルなどの早いパッセージを行なった場合や、スラーによ
って前の音から次の音へ滑らかに推移させる場合には、
これらの音が、同じモードならば問題ないが、発音モー
ドが違うと、ディレイ長が大きく変ってしまい、音のつ
ながりが不自然になるという問題を生じる。
【0004】これに対して、リップリードモデルの場合
には、高次のモードまで発音が可能なので、バイパス管
の長さを変えずに、発音モードを変えるだけで(リップ
リードモデルでは唇を記述した、Qの大きいフィルタの
共振周波数を変えるだけで)、近接した音に自然に移行
することができる(リップスラー、リップトリル、シェ
イクおよびグリッサンド等の演奏に対応)。しかしなが
ら、低次のモードでは、シングルリードと同様の問題が
生じる。この発明は上述した事情に鑑みてなされたもの
で、楽音を順次連続して発音する奏法において、異なる
発音モードにおいても、音のつながりがスムーズな楽音
を発音できる電子楽器を提供することを目的としてい
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述した問題点を解決す
るために、この発明では、定の音高を有する楽音の発
音を実現するためのパラメータの組を各音高毎に複数記
憶する記憶手段と、発音すべき楽音の音高を指定する
高指定手段と、該音高指定手段により前回指定された音
高と今回指定された音高とに応じて前記複数のパラメー
タ組の中から1つのパラメータ組を選択する選択手段
と、前記選択された1つのパラメータ組に基づいて楽音
を生成する物理モデル音源と、を具備することを特徴と
る。
【0006】本発明の実施態様は以下のとおりである。
請求項1記載の電子楽器において、楽音を順次連続して
発音する奏法に係り、直前に発音した楽音のディレイ長
に最も近い値のディレイ長を有する前記パラメータの組
を次の楽音のパラメータとして用いることを特徴とす
る。
【0007】請求項1記載の電子楽器において、前記音
源は、楽音の発音を停止させる演奏情報が所定の期間、
前記音源に供給されると、前記記憶手段に格納されてい
るパラメータの組の中で、最も優先順位が高いパラメー
タの組に基づいて楽音を生成することを特徴とする。
【0008】請求項1記載の電子楽器において、リップ
トリル、シェイクの奏法に係り、該演奏開始に当って所
定の制御信号を出力する操作子と、前記制御信号を授受
すると、その後、初めて供給される音高を示す演奏情報
に対応したディレイ長と共振周波数を、一度だけ前記音
源へ出力し、前記制御信号が再び無効になるまで、前記
演奏情報の後に順次供給される演奏情報に対応した共振
周波数だけを前記音源へ出力しつづけ、それに対応する
ディレイ長は無視して出力しない音源制御手段とを具備
することを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明によれば、音高指定手段により前回指定
された音高と今回指定された音高とに応じて、複数のパ
ラメータ組の中から1つのパラメータ組が選択される。
そして、該選択された1つのパラメータの組に基づい
て、音源によって楽音が生成される。
【0010】本発明の第1の実施態様によれば、請求項
1記載の電子楽器において、楽音を順次連続して発音す
る奏法に係り、直前に発音した楽音のディレイ長に最も
近い値のディレイ長を有する記憶手段に記憶されたパラ
メータの組を次の楽音のパラメータとして用いる。
【0011】本発明の第2の実施態様によれば、請求項
1記載の電子楽器において、楽音の発音を停止させる演
奏情報が所定の期間、前記音源に供給されると、前記記
憶手段に格納されているパラメータの組の中で、最も優
先順位が高いパラメータの組に基づいて音源によて楽音
が生成される。
【0012】本発明の第3の実施態様によれば、請求項
1記載の電子楽器において、音源制御手段は、演奏開始
に当たって操作子から出力された制御信号を授受する
と、その後、初めて供給される音高を示す演奏情報に対
応したディレイ長と共振周波数を、一度だけ音源へ出力
する。そして、制御信号が再び無効になるまで、順次供
給される演奏情報に対応した共振周波数だけを音源へ出
力しつづけ、それに対応するディレイ長は無視して出力
しない。
【0013】
【実施例】次に図面を参照してこの発明の実施例につい
て説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブ
ロック図である。この図において、CPU1は、ROM
2に記憶されたプログラムに従って、装置全体の動作の
管理を行う。ROM2には、プログラム以外にも、後述
する音源回路の各種パラメータが記憶されている。RA
M3は、自然楽器の発音をシミュレートする際の遅延回
路を実現するために遅延素子として、また、上記CPU
1の動作に伴うデータなどの記憶領域としても用いられ
る。
【0014】次に、管型操作子4は、実際の自然楽器に
外見上似せて作られており、音高を変えるためのトーン
ホール(または、それを開閉するキー)の状態、演奏者
の吹奏息圧およびリードのくわえ方を示すアンブシュア
等の演奏情報を検出し、所定の信号に変換した後、共通
バスを介してCPU1へ供給する。例えば、キーが押下
されると、キーオン信号KONを出力し、反対にキーが
離されると、キーオフ信号KOFFを出力する。また、
キーの操作状況に応じて、その音高を示すキーコードK
Cが出力される。
【0015】また、息圧はマウスピース内に設けられた
圧力センサによって検出され、アンブシュアは同マウス
ピース内に設けられたカンチレバーによって検出され
る。次に、音源回路5は、上記各種演奏情報に基づいて
楽音波形信号WSを生成し、サウンドシステム6へ出力
する。サウンドシステム6は、楽音波形信号WSをアナ
ログ信号に変換し、別途設けられたスピーカSPによっ
て発音する。
【0016】次に、上述した音源回路5の詳細につい
て、図2に示すブロック図を参照して説明する。この図
において、音源回路5は、励振回路10、ジャンクショ
ン22および管体形成回路20から構成されている。励
振回路10は、アパチュア変換テーブル10a,スリッ
ト関数発生器10b,グレアム関数発生器10c,リップ
フィルタ10d,アベレージャ10e,乗算器10f,1
0g,10jおよび加算器10h,10iからなり、管楽
器のマウスピース部をシミュレートする。また、ジャン
クション22は、加算器22a,22bからなり、共鳴
管のマウスピース側の端部における空気圧力波の散乱を
シミュレートする。管体形成回路20は、上記共鳴管に
おける空気圧力波の伝播遅延をシミュレートする。な
お、この管体形成回路20の詳細は後述する。
【0017】加算器10iには、吹奏圧に相当する息圧
データPが一方の入力端に供給されるとともに、加算器
22bが出力する帰還データ(このデータは、共鳴管の
終端部で反射されてマウスピース側に戻ってくる空気圧
力波に相当する)が他方の入力端に供給される。この加
算器10iでは、上記帰還データから息圧データPを減
算し、マウスピースとリードとの間隙における空気圧に
相当するデータを求め、これをアベレージャ10eへ供
給する。アベレージャ10eは、上記空気圧に相当する
データを平均化し、リップフィルタ10dおよびグレア
ム関数発生器10cへ供給する。リップフィルタ10d
(デジタルフィルタ)は、リードの動きをシミュレート
するものである。該リップフィルタ10dには、アンブ
シュアに基づいた共振周波数fcおよびQが供給されて
おり、これらに応じてフィルタ特性が設定される。
【0018】上記共振周波数fcおよびQは、各々、独
立に制御することもでき、例えば、共振周波数fcを変
えることによって、発音モードが変更できる。このリッ
プフィルタ10dは、入力されたデータを帯域制限して
乗算器10gへ出力する。乗算器10gには、所定のゲ
インが供給されており、上記帯域制限されたデータP1
は、該ゲインに応じて乗算された後、加算器10hの一
方の入力端に供給される。この加算器10hの他方の入
力端には、アパチュア変換テーブル10aが出力するパ
ラメータが供給される。このパラメータは、マウスピー
スとリードとの開口部の広さ(アパチャア)をアパチュ
ア変換テーブル10aによって所定の次元に変化したも
のである。
【0019】これを加算器10hにおいて上記ゲイン調
整されたデータP1に加算することによって実際にリー
ドに加えられる圧力に相当するデータP2が求められ
る。このデータP2は、スリット関数発生器10bに供
給される。スリット関数発生器10bは、例えばROM
(Read Only Memory)等からなり、上記データP2を、
マウスピースとリードとの間隙を通過する空気流の流速
に相当するデータFLに変換し、乗算器10fの一方の
入力端に供給する。
【0020】一方、グレアム関数発生器10cは、前述
したマウスピースとリードとの間隙における空気圧に相
当するデータが入力されると、それを飽和特性を有する
空気流速に相当するデータに変換して乗算器10fの他
方の入力端に供給する。これは、上記マウスピースとリ
ードとの間隙部分における空気流の流速が、その空気圧
に応じて変化するとともに、流速がある速度に達する
と、上記変化が飽和してしまう。このため、前述したデ
ータFLを補正する。したがって、上述したグレアム関
数発生器10cは、上記飽和特性をシミュレートするた
めの非線形特性を有している。
【0021】そして、乗算器10fでは、データFLと
上記空気流速とが乗算され、この結果、間隙部分におけ
る真の空気流速を表すデータfが求められる。このデー
タfは、乗算器10jに供給され、定数Zが乗じられ
る。この定数Zは、管楽器のリード取付け部附近の管径
に応じて設定され、空気の通りにくさ、すなわち空気流
に対する管のインピーダンスに相当するものである。こ
の乗算により、管内における空気圧に相当するデータが
得られ、このデータは、ジャンクション22の加算器2
2aを介して管体形成回路20に供給される。そして、
管体形成回路20の出力データがジャンクション22の
加算器22bを介して加算器10iに供給され、再び前
述した処理と同様の信号処理が行われる。
【0022】ここで、管体形成回路20の構成につい
て、図3に示すブロック図を参照して説明する。この図
において、管体形成回路20は、シフトレジスタ20
a,20a,……,20a、ジャンクション20b,20
b,……,20b、ローパスフィルタ20cおよび乗算器
20dから構成されている。シフトレジスタ20a,2
0a,……,20aは、共鳴管における空気圧力波の伝播
遅延をシミュレートする遅延手段であり、各レジスタに
はそれぞれディレイ長d1〜dnが供給される。このデ
ィレイ長d1〜dnに応じてシフトレジスタの段数が設
定され、所定の伝播遅延をシミュレートする。ジャンク
ション20b,20b,……,20bは、上記レジスタ間
に介挿されており、共鳴管において管径が変化している
箇所で発生する空気圧力波の散乱をシミュレートする。
【0023】これらジャンクション20b,20b,…
…,20bには、各々、所定の乗算係数(以下、ジャン
クション係数という)k1,k2,……,kn-1が供給され
る。ローパスフィルタ20cには、フィルタリング特性
を決定するためのフィルタ係数FC.Lが供給される。乗算
器20dは、空気圧力波の管端での反射をシミュレート
する。なお、図示のディレイ長d1〜dn、ジャンクシ
ョン係数k1,k2,……,kn-1およびフィルタ係数FC.L
は、前述したキーコード、アンブシュアデータEおよび
息圧データPに基づいて演算が行われた結果、CPU1
によって与えられる。
【0024】このように構成された音源回路5と実際の
管楽器との対応を図4に示す概念図を参照して説明す
る。音源回路5の励振回路10は図示の唇Lに相当し、
ジャンクション22は同図の管体TAと唇Lとの接続部
分、および管体形成回路20は管体TA,TB,TCの
部分に相当する。このように、この音源回路5では、ウ
エーブガイドによってリップリードアルゴリズムの線形
部のシミュレートを実現している。この場合、管体が発
音する楽音の音高は、該管体のディレイ長と共振周波数
とによって決る。ディレイ長と共振周波数との組合せ
は、1つに限らず、複数存在し、また、その組合せに応
じて音色も変化する。本実施例では、上記ディレイ長と
共振周波数とを音色決定のパラメータとしている。
【0025】ここで、楽音の音色を決定するディレイ長
と共振周波数との関係を図5に示す管体モデルを用いて
説明する。図5において、音高は管体TBの部分の長さ
TL2を変えることによって変化させる。ここで、管体
TBの長さTL2を調節して、最もその楽器の理想的な
音色を有する楽音が発音される長さを調べ、それをC0
とする。一般に、音高が滑らかに変化するのを、C0+
ΔL(ΔLmin≦ΔL≦ΔLmax、ΔLmin<0、ΔLmax
>0、−ΔLmin≒ΔLmax)の範囲であるとし、この範
囲を越えるような音高変化の場合には、なるべく理想的
な音色が得られるように、複数のパラメータセットの中
から適切なパラメータの組合せを選択するようにする。
【0026】ここで、上述した構成による楽音合成のメ
カニズムについて説明する。まず、ディレイ長が極端に
変化することによる音のつながりの不自然さの改善手段
について述べる。前述したROM2には、複数の発音モ
ードに対するパラメータとして、図6に示す共振周波数
fとオフセットディレイ長δ(補正用)からなる複数の
セットが予め記憶されている。本実施例では、図示のよ
うに、1つの音名に対して複数の発音状態(複数のパラ
メータ)を備えていることを特徴としている。
【0027】例えば、発音モードを変化させずに、周波
数を2倍にすると(オクターブの跳躍)、管長をいっき
に1/2にしなければならない。しかし、発音モードを
変化させて、管の中に高次モードの定在波を発生させる
と管長をそれほど変化させずにオクターブの跳躍を行な
うことができる。ただし、余り大きくないピッチの跳躍
では、単純に別の発音モードに移行すると、却って管長
の変化が大きくなる。
【0028】したがって、本実施例においては、跳躍時
に、管長を急激に変えることなく、最もディレイ長の変
化の小さいところに跳躍することによって、出力楽音の
音質の均一化と、なめらかな楽音の生成をはかってい
る。また、そのような手段だけでは、楽音が半音階で上
昇したときなど、極端に音質が劣化することが考えられ
るので、各モードにおける発音可能な領域を予め決定
し、これらをテーブルの情報として記憶しておく。ま
た、息圧が「0」になったときなどは、現在の発音状態
にかかわらず、さらに、よい音質で発音可能な状態に切
換えることによって、上述したような不都合を排除す
る。
【0029】例えば、図7に示すような、サキソフォー
ン等のシングルリードモデルでの音高がある音高T1から
T2へ変化する場合を考える。このモデルでは、レジスタ
チューブの開閉により、基本モードM1と、2次モードM2
の2種類のモードで共鳴する。音高T1についてのモード
とディレイ長の考えられる組合せとして、いま、音高T1
については、T1[1];(モードM1,ディレイ長D1a)と、T1
[2];(モードM2,ディレイ長D1b)、また、音高T2について
は、T2[1];(モードM1,ディレイ長D2a)と、T2[2];(モー
ドM2,ディレイ長D2b)があるとする。なお、ここで、D1a
<<D1b,D2a<<D2bとする。
【0030】これらは、前述したように、音高につい
て、2次元(モード、ディレイ長)のテーブルに格納さ
れる。格納の仕方は、ディレイ長が比較しやすいよう
に、ディレイ長の短い(または、長い)順とする。この
とき、ある音高T1(モードM1,ディレイ長D1a)=T1[1]か
音高T2に移行する場合を考えると、T1[1]→T2[1],T1
[1]→T2[2]の2種類の移りかたがある。
【0031】前者では、ディレイ長はD1a→D2a,後者で
はD1a→D2bと変化するが、|D1a-D2a|<|D1a-D2b|で
あるので、前者はディレイ長変化が少なく滑らかに音高
が推移するのに対して、後者はこれとは逆にディレイ長
変化が大きく、音高は滑らかに推移しない。
【0032】したがって、滑らかに音高を推移させる手
順として、本実施例では、 推移前の音高T1のディレイ長を調べ、 次に、これから発音させようとする音高T2のディレ
イ長の候補を全て調べ(T2についてテーブルを引き)、 上記の候補の中から1)のディレイ長に最も近い
ものを選び、 上記のディレイ長と組になっているモードを選択
する。
【0033】次に、モードを変えるタイミングについて
図8に示す概念図を参照して説明する。例えば、リップ
リードモデルに対して、スラー時に前述した手順〜
を適用し、近接した音高に順次上がって(あるいは下が
って)いく場合を考えると、前述したオフセットディレ
イ長の絶対値|ΔL|が次第に大きくなり、音質が不自
然になるので、適当なところでモードを変え、|ΔL|
の小さい音に推移させる必要がある。この音の推移は、
スラー中に行なうと、|ΔL|が大きく変化し、大きな
不連続を生ずることになるので、モードを変えても音の
つながりに不連続が目立たない時、すなわち息圧が
「0」の期間が所定の期間以上のとき(音がある一定期
間出ていない状態の時)、次の音高を出すためのパラメ
ータの組合せとして、前述したように優先順位が最も高
い組合せを選択する。
【0034】このように、|ΔL|をなるべく小さくす
る優先処理は、どのような音高を発音する際でも、前述
したC0が中程度の長さに設定されるため、この音から
音高を順次下げる(または、上げる)ときの|ΔL|の
限界に達するまでの余裕を取れることを意味する。
【0035】もし、息圧がある一定期間以上に渡って
「0」であるとき、次の音高を出すための組合せを、前
述した手順にしたがって決定しまったとすると、直前の
音高のような|ΔL|が大きく、優先順位の低い不自然
な音を採用することになってしまい、また次の音高のデ
ィレイ長が|ΔL|の限界を越えやすく、すなわちスラ
ー中にモードを変えざるをえなくなる確率が高くなり、
音のつながりの不自然さを招く。
【0036】また、シングルリードアルゴリズム(特
に、管体が円錐管に近いもの)では、音高は主に円錐管
の長さを変化させて(フレア率は一定にして)実現して
いるが、短くすると音色がくすんできたり、アンブシュ
アを少し変化させただけで、音高が不必要に大きく変化
し、不自然な挙動が見られる。したがって、この領域で
は、高次モードを使用し(共振周波数を高くし)、さら
に管長を長くして所定の音高を実現する。高次モードを
誘発させるには、管体に、レジスタチューブをその音高
にとって最適な位置に取付け、それを開いたままにする
とよい。
【0037】また、逆に、高次モードでも管体が極端に
長すぎると、フレア率一定の条件では安定に発振できな
くなる。したがって、スラー演奏において、ある音か
ら、モードを変えずに順次音高を上下させるとき、音色
が不自然になる限界までのマージンを大きく取りたい場
合は、マージンが大きい順に優先順位を付けるのがよ
い。
【0038】次に、リップリードモデルについて、上述
した構成ならびに後述する[第2実施例]によるリップ
トリルまたはシェイクを含む動作を図9および図10に
示すフローチャートを参照して説明する。まず、電子楽
器の電源が投入されると、図9に示すフローチャートが
CPU1によって実行される。まず、ステップSA1に
おいて、各種レジスタ類を初期設定するイニシャライズ
が行なわれる。次に、ステップSA2に進み、管型操作
子4をスキャンし、キーの操作あるいは吹奏が行なわれ
たか否かを調べる。
【0039】そして、何等かの操作(イベント)が行な
われた場合には、ピッチベントセンサや圧力センサなど
から、アパチュア、息圧情報などの演奏情報を得て、音
源に対してリアルタイムに出力し、次のステップSA3
へ進む。ステップSA3では、図10に示す発音処理が
行なわれる。まず、ステップSB1において、イベント
が発生したか否かを判断する。ここで、イベントがなか
った場合には、ステップSB1における判断結果は「N
O」となり、当該処理を終了し、図9に示すメインルー
チンに戻り、繰返しステップSA2およびSA3を実行
する。
【0040】一方、イベントが生じた場合には、ステッ
プSB1における判断結果は「YES」となり、ステッ
プSB2へ進む。ステップSB2では、イベントが新た
なキーオンか否かが判断される。新たなキーオンの場合
には、ステップSB2の判断結果は「YES」となり、
ステップSB3へ進む。ステップSB3では、キーコー
ドKCに応じてROM2に記憶されたテーブルを参照す
る。
【0041】次に、ステップSB4へ進み、上記キーコ
ードKCに対応するパラメータが1つだけか否かを判断
する。そして、このステップSB4における判断結果が
「NO」の場合には、ステップSB5へ進み、オフセッ
トディレイ長δの絶対値が最小のパラメータを選択す
る。
【0042】一方、ステップSB4における判断結果が
「YES」の場合、または上述したステップSB5が終
了した場合にはステップSB6へ進む。ステップSB6
では、奏法フラグがセットされているか否かを判断す
る。奏法フラグは、リップトリルやシェイク等の演奏時
に「1」にセットされ、それ以外の時には、「0」とな
る。そして、奏法フラグが「1」の場合、すなわち、ス
テップSB6における判断結果が「YES」の場合に
は、ステップSB7へ進む。ステップSB7では、現在
のディレイ長d1〜dnおよびジャンクション係数k1,
k2,……,kn-1を所定のレジスタへ退避する。
【0043】そして、上記ステップSB6における判断
結果が「NO」の場合、すなわち奏法フラグが「0」の
場合、または上記ステップSB7が終了した場合には、
ステップSB8へ進む。ステップSB8では、選択され
たパラメータに応じて、ディレイ長d1〜dnおよびジ
ャンクション係数k1,k2,……,kn-1を音源回路5へ
供給する。そして、ステップSB9において、リップフ
ィルタ10dに共振周波数fcを与える。
【0044】音源回路5では、上記ディレイ長d1〜d
n、ジャンクション係数k1,k2,……,kn-1および共
振周波数fcなどに基づいて楽音波形信号WSが生成さ
れ、該楽音波形信号WSは、サウンドシステム6へ供給
されてアナログ信号に変換され、スピーカSPによって
発音される。
【0045】一方、ステップSB2における判断結果が
「NO」の場合、すなわちイベントが新たなキーオンK
ONでなかった場合には、ステップSB10へ進み、奏
法フラグがセットされているか否かを判断する。演奏フ
ラグが「0」の場合には、ステップSB10における判
断結果が「NO」となり、ステップSB11へ進む。ス
テップSB11では、キーコードKCに応じてROM2
に記憶されたテーブルを参照する。
【0046】次に、ステップSB12へ進み、上記キー
コードKCに対応するパラメータが1つだけか否かを判
断する。そして、このステップSB12における判断結
果が「NO」の場合には、ステップSB13へ進み、直
前に発音した楽音のディレイ長に対してオフセットディ
レイ長δの変化が最も少ないパラメータを選択する。
【0047】一方、ステップSB12における判断結果
が「YES」の場合、すなわちキーコードKCに対応す
るパラメータが1つだけの場合には、パラメータを変え
ることなくステップSB8へ進む。また、上記ステップ
SB13が終了した場合にも、上述したステップSB8
へ進む。ステップSB8およびSB9においては、上述
した処理と同様の処理が行なわれる。したがって、音源
回路5では、上記ディレイ長d1〜dn、ジャンクショ
ン係数k1,k2,……,kn-1および共振周波数fcなど
に基づいて楽音波形信号WSが生成され、該楽音波形信
号WSは、サウンドシステム6へ供給されてアナログ信
号に変換され、スピーカSPによって発音される。
【0048】一方、ステップSB10における判断結果
が「YES」の場合、すなわち奏法フラグが「1」の場
合には、ステップSB14へ進む。ステップSB14で
は、キーコードKCに応じてROM2に記憶されたテー
ブルを参照する。次に、ステップSB15へ進み、ディ
レイ長を変えずに発音可能なパラメータがあるか否かを
判断する。そして、ステップSB15における判断結果
が「YES」の場合には、ステップSB16へ進み、現
在の共振周波数fcをfc’として所定のレジスタへ保
管する。そして、ステップSB17へ進み、同一ディレ
イ長のパラメータからの共振周波数fcを得る。
【0049】次に、ステップSB18へ進み、所定の時
定数に応じて共振周波数をfc’からfcへスイープし
ていく。音源回路5では、上記fc’からfcへスイー
プしていく共振周波数に基づいて楽音波形信号WSが生
成され、該楽音波形信号WSは、サウンドシステム6へ
供給されてアナログ信号に変換され、スピーカSPによ
って発音される。
【0050】一方、ステップSB15における判断結果
が「NO」の場合、すなわちディレイ長を変えずに発音
可能なパラメータがない場合には、パラメータを変更せ
ずに、当該発音処理ルーチンを終了し、メインルーチン
へ戻る。また、上述したステップSB18が終了した場
合には、当該発音処理ルーチンを終了し、メインルーチ
ンへ戻る。メインルーチンでは、繰返しステップSA2
およびSA3を実行する。
【0051】このように、本実施例では、初めてくるキ
ーコードKCに対応したディレイ長と共振周波数とを一
度、音源回路5へ供給する。そして、操作子がオフにな
るまでは、その後続けてくるキーコードKCに対応した
共振周波数だけを音源回路5へ供給し、ディレイ長は供
給しない。
【0052】この結果、共振周波数のスイープ速度を、
時変動できるようにすれば、例えば、ある倍音列の間の
スラーにおいて、音と音とのつながり方をいろいろと制
御することができる。すなわち、このスラーの途中に1
つ以上の倍音が存在するとき、途中の不必要な倍音附近
は、スイープ速度を早くするという処理をすれば、滑ら
かなスラーが期待できる。もちろん、スイープ速度を一
定の遅めの値に設定して、故意に途中の倍音を効果的に
入れる奏法をも実現できる。また、奏法フラグが「1」
で発音可能な音がない場合には、発音しないように処理
したが、強制的に発音処理を行なうようにしてもよい。
【0053】[第2実施例]次に、本発明の第2実施例
について、図11に示すブロック図を参照して説明す
る。なお、この図において、図1に示す各部に対応する
部分については同一の符号を付けて説明を省略する。例
えば、図1に示す管体操作子4が出力するキーコードK
Cは、この図において、音源制御回路30へ供給され
る。この音源制御回路30には、フラグFが供給されて
おり、リップトリルまたはシェイク等の演奏時には、そ
の直前から「1」にセットされ、それ以外の時には、
「0」となる。
【0054】音源制御回路30は、オフセットディレイ
長テーブル30a、オフセットディレイ長バッファ30
b、共振周波数テーブル30cおよび共振周波数バッフ
ァ30dから構成されている。上記キーコードKCは、
オフセットディレイ長テーブル30aおよび共振周波数
テーブル30cに供給される。オフセットディレイ長テ
ーブル30aには、キーコードKCに対応させたオフセ
ットディレイ長が記憶されており、上述したフラグFが
「0」の時には、供給されたキーコードKCに対応する
オフセットディレイ長をそのままオフセットディレイ長
バッファ30bへ供給する。オフセットディレイ長バッ
ファ30bは、オフセットディレイ値を一時的に保持し
た後、音源回路5の管体形成回路のディレイ値としてシ
フトレジスタ20a,20a,……,20aへ供給する。
【0055】また、共振周波数テーブル30cには、キ
ーコードKCに対応させた共振周波数が記憶されてお
り、供給されたキーコードKCに対応する共振周波数を
常時そのまま共振周波数バッファ30dへ供給する。共
振周波数バッファ30dは、共振周波数を一時的に保持
した後、音源回路5内の補間器5aへ出力する。この補
間器5aには、時定数Tが供給されており、音高T1か
音高T2へモードを変えて推移する場合、移行途中の
楽音を目立たなくする場合には上記時定数Tを小さく
し、移行途中の楽音を目立たせる場合には上記時定数T
を大きくする。補間器5aは、該時定数Tに応じて共振
周波数を補正した後、これを図2に示すリップフィルタ
10dの共振周波数fcとして供給する。音源回路5に
おいて生成された楽音信号は、サウンドシステム31へ
供給される。サウンドシステム31では楽音信号をアナ
ログ信号に変換して後段のスピーカ(図示略)へ出力
し、楽音信号は、該スピーカによって楽音として発音さ
れる。
【0056】上述した構成によれば、リップトリルまた
はシェイク等の演奏をする直前に、管型操作子4から出
力される所定のスイッチング情報(フラグF=1)を音
源制御部30に供給する。音源制御部30では、初めて
くるキーコードKCに対応した管体の長さに相当するデ
ィレイ長と共振周波数を、各々、オフセットディレイ長
テーブル30aおよび共振周波数テーブル30cから読
み出し、これらをバッファ30b、30dを介して音源
回路5へ供給する。その後、上記管型操作子4が操作さ
れフラグFが「0」になるまで、順次供給されるキーコ
ードに対応した共振周波数だけを音源回路5へ供給し、
対応するディレイ長は供給しない。このように、ディレ
イ長を一定にすれば、滑らかに音高が推移する。
【0057】この場合、共振周波数のスイープ速度を、
時変動させると、例えば、ある倍音列の間のスラーにお
ける音と音とのつながり方をさまざまに変化させること
ができる。すなわち、スラー演奏の途中に1つ以上の倍
音が存在するとき、途中の不必要な倍音附近ではスイー
プ速度を早くするという処理を行なうことによって、滑
らかなスラー演奏が実現できる。なお、スイープ速度を
遅めの一定の値に設定して、故意に途中の倍音を効果的
に入れるように制御してもよい。
【0058】なお、上述した実施例では、リップリード
による金管楽器タイプの実施例を示したが、リードによ
る木管楽器タイプのものに適用してもよい。この場合
は、トーンホールのシミュレートや、ある特定の遅延量
を持ったパスを管体シミュレート回路に接続することに
よって(レジスタチューブ)、特定倍音を共振させ、別
の発音モードに移行させるような処理を行なうととも
に、それに対応したテーブルを備えるようにする。
【0059】また、実施例の特殊奏法モードにおいて、
キーコードの変化を操作子の状態に関係なく、リップス
ラーなどで実現する例のみを示したが、実際の自然楽器
のように、アンブシュールによって別のモードに移行し
てしまうようにしてもよい。また、実施例におけるリッ
プスラーの時定数は、演奏者によって与えられるように
してもよいし、操作子の状態によって自動的に制御され
るようにしてもよい。
【0060】[第3実施例] 次に、本発明の第3実施例について、図12に示すブロ
ック図および図13に示すテーブルを参照して説明す
る。なお、これらの図において、図1に示す各部に対応
する部分については同一の符号を付けて説明を省略す
る。本実施例の特徴は、まず、図12において、管体形
成回路20の所定のジャンクション20bに、前述した
レジスタ・チューブRTに相当するループ回路32が設
けられたことにある。このループ回路32は、シフトレ
ジスタ32a,LPF32bおよび乗算器32cから構
成されており、乗算器32cには係数γRTが供給されて
いる。この係数γRTは、図13に示すように、レジスタ
・チューブを開く場合には「−1」とし、逆に閉じる場
合には「+1」となるように、各音高毎に所定のテーブ
ルとして記憶されている。また、この係数γRTととも
に、管体形成回路20の全体のディレイ長も各音高毎に
記憶されている。
【0061】さらに、この例の場合、所定の音高を得る
ために、ディレイ長を次第に小さくしているが、このデ
ィレイ長の限界に達する前の音高b2において、レジス
タ・チューブを閉じ、再びディレイ長を大きくして、音
質が不自然になるのを防止している。ただし、音高b2
から音高2への音の推移を考えると、この部分でディ
レイ長が大きく変化してしまうので、音の繋がりが不自
然になる。そこで、本実施例では、2番目のセット
て、音高b2を境界にしてその前後にレジスタ・チュー
ブの開閉を逆にしてモードを変え、ディレイ長の大小を
逆転させたパラメータを記憶させている。
【0062】上述した構成において、例えば、次に示す
ような演奏を行なったとする。 D2→Eb2→E2→F2→(息つぎ)→E2→Eb2→D2 ここで、上記演奏において、最初の楽音D2から第4番
目の楽音F2までと、第5番目の楽音E2から第7番目の
楽音D2までは、スラー演奏とする。そして、2つのス
ラー演奏の間には、息つぎが一度、入っている。このよ
うな演奏が行なわれると、まず、第1番目の楽音D2の
パラメータとして、優先順位の高いセット1側の係数γ
RTとして”+1”と、ディレイ長として”116”を選
択し、音源回路5へ供給する。そして、第2番目の楽音
b2から楽音E2、F2までは、ディレイ長が大きく変化
しないようなパラメータを、図13に示すテーブルから
選択し、音源回路5へ供給する。
【0063】したがって、この場合には、楽音Eb2にお
いては、セット1から選択され、楽音E2、F2において
は、セット2から選択される。そして、息つぎに関する
演奏情報が供給されると、該息つぎの次の楽音E2にお
いては、優先順位の高いセット1のパラメータを選択
し、音源回路5へ供給する。その後、第6番目の楽音E
b2および第7番目の楽音D2においては、ディレイ長が
大きく変化しないようなパラメータを選択し、音源回路
5へ供給する。すなわち、この場合には、楽音Eb2およ
び楽音D2においては、セット2から選択される。
【0064】
【発明の効果】以上、説明したように、この発明によれ
、楽音を順次連続して発音する奏法において、異なる
発音モードにおいても、音のつながりがスムーズな楽音
を発音できるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例の構成を示すブロック図
である。
【図2】 本実施例の音源回路の詳細な構成を示すブロ
ック図である。
【図3】 同実施例の管体形成回路の構成を示すブロッ
ク図である。
【図4】 同実施例の音源回路と物理的な管体との機能
的な対応を説明するための概念図である。
【図5】 ディレイ長と共振周波数(モード)との関係
について説明するための概念図である。
【図6】 同実施例のROMに記憶されたパラメータを
説明するためのテーブルである。
【図7】 サキソフォーン等のシングルリードモデルで
音高がある音高T1からT2へ変化する場合を説明するた
めの概念図である。
【図8】 モードを変えるタイミングについて説明する
ための概念図である。
【図9】 同実施例のメインルーチンを示すフローチャ
ートである。
【図10】 同実施例の発音処理ルーチンを示すフロー
チャートである。
【図11】 第2実施例の構成を示すブロック図であ
る。
【図12】 第3実施例の構成を示すブロック図であ
る。
【図13】 第3実施例に用いられるパラメータを説明
するためのテーブルである。
【符号の説明】
1……CPU(選択手段)、2……ROM(記憶手
段)、3……RAM(記憶手段)、4……管体操作子
(操作子)、5……音源回路(音源)。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】定の音高を有する楽音の発音を実現す
    るためのパラメータの組を各音高毎に複数記憶する記憶
    手段と、発音すべき 楽音の音高を指定する音高指定手段と、 該音高指定手段により前回指定された音高と今回指定さ
    れた音高とに応じて前記複数のパラメータ組の中から1
    つのパラメータ組を選択する選択手段と、 前記選択された1つのパラメータ組に基づいて楽音を生
    成する物理モデル音源と、 を具備することを特徴とする電子楽器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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