JP2718112B2 - 複屈折回折格子型偏光子およびその製造方法 - Google Patents

複屈折回折格子型偏光子およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、半導体レーザを利用した各種光装置に使用
する複屈折偏光板、特に偏光方向によって回折効率の異
なる格子型偏光板およびその製造方法に関する。
〔従来の技術〕
偏光素子特に偏光ビームスプリッタは、直交する偏光
間での光の伝搬方向を異ならしめることによって特定の
偏光を得る素子である。このような素子は、光ファイバ
通信用光源モジュールや光ディスク用光ヘッドなどに、
光アイソレータや光サーキュレータを構成する部品とし
て使われている。
従来、偏光ビームスプリッタとしては、グラントムソ
ンプリズムやロッションプリズムなど、複屈折の大きな
結晶の光反射面における偏光による透過ないしは全反射
の違いを利用し光路を分離するもの、またはガラスなど
の等方性光学媒質でできた全反射プリズム反射面に誘電
体多層膜を設け、この誘電体を多層膜の偏光による屈折
率の違いを利用して、光を全反射ないしは透過させるも
のが多く使用されている。しかしながら、これらの素子
は大型であること、生産性が低いこと、値段が高いこと
などの欠点がある。
一方、近年小型で生産性が高いことを特徴とする偏光
素子として、特願昭61−300783号、特願昭61−300784号
および特願昭62−007805号に記載されている複屈折回折
格子型偏光板が知られている。第5図は前記記載の複屈
折回折格子型偏光板の構成を示す斜視図であり、第6図
から第8図は断面図である。複屈折回折格子型偏光板
は、ニオブ酸リチウム基板1の主面に周期的なイオン交
換領域8の光学的回折格子を設け、かつイオン交換を施
した領域と施していない領域の間で常光線が受ける位相
変化を相殺する手段を設けたものであり、偏光による回
折効率の違いを利用して光路を分離するものである。前
記の常光線が受ける位相変化を相殺する手段としては、
第6図の断面図に示すようにイオン交換を施していない
領域の表面を所望の深さだけ削ったもの、第7図の断面
図に示すようにイオン交換を施した領域8上に誘電体膜
9を形成したもの、または第8図の断面図に示すように
イオン交換を施した領域8上では厚くイオン交換を施し
ていない領域上では薄く誘電体膜9を形成したもの等が
ある。例えば、ニオブ酸リチウムの主面に周期的にプロ
トンイオン交換を施すと、プロトンイオン交換を施した
領域では波長1.3μmの異常光線に対する屈折率が約0.1
増加し、常光線に対する屈折率が約0.04減少する。従っ
て、プロトンイオン交換を施した領域の誘電体膜厚を、
プロトンイオン交換を施していない領域の誘電体膜厚に
比べて厚くし、プロトンイオン交換を施した領域の常光
線に対する屈折率の減少を相殺することによって、常光
線の1次以上の回折効率及び異常光線の0次の回折効率
を共に零にすることができ、偏光子になる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、以上述べた構造においては、光学的回
折格子の形成にイオン交換が用いられている。従って、
イオンの横方向への拡散などの影響で、イオン交換され
た領域8の幅とされていない領域の幅を正確に1対1に
することは困難であり、この幅が1対1からずれると偏
光子の消光比の劣化や損失の増加が生じる。また、イオ
ン交換領域8の上に誘電体膜9を形成する際、またはイ
オン交換されていない領域を削る際に、イオン交換領域
8と誘電体膜9の間、またはイオン交換されていない領
域と削る領域の間の位置合わせを正確に行うことも困難
であり、この位置合わせのずれも偏光子の消光比の劣化
や損失の増加の原因になる。さらに、イオン交換を行う
と結晶の格子定数に変化が生じ、基板表面が荒れて散乱
損失が増加したり、結晶内を通過した直線偏光の光が楕
円偏光化するなどの問題点がある。
本発明の目的は、このような従来の問題点を除去し、
高消光比かつ低損失で生産性の高い複屈折回折格子型偏
光子およびその製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、光学的異方性を持つ結晶基板の主面に、周
期的な溝を有し、かつこの溝が誘電体で埋められている
ことを特徴とした複屈折回折格子型偏光子である。この
偏光子は、基板に溝を形成した後、この溝内に誘電体を
堆積することで作製できる。
〔作用〕
前記のように、従来の複屈折回折格子型偏光板におけ
る問題点はイオン交換に起因するものである。そこで本
発明においては、結晶基板に周期的な溝を形成し、その
溝を誘電体膜で埋めることによって、回折格子を形成し
ており、従来の複屈折回折格子型偏光板のようにイオン
交換を用いていない。従って、前記のイオンの横拡散に
よる消光比の劣化や損失の増加および結晶の格子定数の
変化よる透過光の楕円偏光化を防止することができる。
さらに、周期的な溝を形成する際のマスクをそのまま誘
電体膜で溝を埋める際のマスクとして使用することがで
きるので、パターニングが1回ですみ、従来のように誘
電体膜をパターニングする際のマスクの位置合わせの必
要がない。従って、イオン交換領域と誘電体膜の位置ず
れによる消光比の劣化や損失の増加がなくなり、かつ高
い生産性が得られる。これらのことにより、従来と比べ
て高消光比で低損失かつ低価格な複屈折回折格子型偏光
子が得られる。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。第1図から第3図は本発明の複屈折回折格子型偏光
子の実施例の斜視図である。1は光学的異方性を持つ結
晶基板であり、本実施例ではニオブ酸リチウムのY板を
用いている。この結晶基板1の表面には、周期的な溝2
が形成されており、さらにこの溝2は誘電体膜3で埋め
られている。入射光4は結晶基板1に垂直な方向から入
射し、偏光方向によって直線光5または回折光6となっ
て出射される。
第1図または第2図に示された回折格子の0次の回折
光効率(すなわち直進光強度)は、COS2{π[(n−
nd)t+(n−1)(d−t)]/λ}で与えられる。
但し、λは入射光4の波長、ndは溝2を埋めている誘電
体3の屈折率、tは溝2を埋めている誘電体3の厚さ、
dは溝2の深さである。また、nはニオブ酸リチウム基
板1の屈折率で入射光4の偏光方向によって、異常光線
の屈折率neまたは常光線の屈折率n0のどちらかをとる。
この回折格子を偏光子として動作させるためには、常光
線または異常光線のどちらか一方の0次の回折効率を0
にし、かつ他方の0次の回折効率を1にすればよい。こ
のような回折状態は、溝2の深さをd=λ/[2|n0−ne
|]、誘電体3の厚さをt=(n−1)/(nd−1)d
とすることによって得られる。但し、n=n0の場合は常
光線のみを直進させる偏光子として働き、n=neの場合
は異常光線だけを直進させる偏光子として働く。また誘
電体3の屈折率ndが結晶基板1の屈折率nよりも大きい
場合には第1図に示すように溝2が誘電体3で途中まで
埋められた構成になり、誘電体3の屈折率ndが結晶基板
1の屈折率nと等しい場合には、第2図のように誘電体
3が溝2を完全に埋めた構成になり、逆に誘電体3の屈
折率ndが結晶基板1の屈折率nよりも小さい場合には第
3図に示すように溝2が誘電体3で完全に埋められたさ
らに誘電体3の表面が結晶基板1の表面よりも高くなっ
た構成になる。
例えば光の波長をλ=1.3μmとすると、ニオブ酸リ
チウムの異常光線及び常光線に対する屈折率はそれぞれ
ne=2.15及びn0=2.23である。従って、溝2の深さdは
約8.1μmとなる。誘電体3として屈折率がnd=2.3の酸
化ニオブ(Nb2O5)を用いるとすれば、偏光子の構成は
第1図のようになり、誘電体3の厚さtが約7.2μmの
とき異常光線だけを直進させる偏光子として働き、誘電
体3の厚さtが約7.7μmのとき常光線だけを直進させ
る偏光子として働く。また、誘電体3として屈折率がnd
=2.0の酸化亜鉛(ZnO)を用いるとすれば、偏光子の構
成は第3図のようになり、誘電体3の厚さtが約9.3μ
mのとき異常光線だけを直進させる偏光子として働き、
誘電体3の厚さtが約10.0μmのとき常光線だけを直進
させる偏光子として働く。また酸化ニオブ酸(Nb2O5
は反応性スパッタリング法によって堆積させる場合、酸
素の分圧等を調整することによって、屈折率を2.1から
2.3程度まで変化させられることが知られている。そこ
で誘電体3として酸化ニオブを用い、その屈折率を結晶
基板1の常光線の屈折率(n0=2.23)または異常光線の
屈折率(ne=2.15)に等しくなるようにし、第2図のよ
うな構成にすることによっても、常光線または異常光線
だけを直進させる偏光子として働く。
次に本偏光子の製造方法を説明する。第4図は本偏光
子の製造方法の実施例を示す工程図である。本偏光子
は、まず通常のリソグラフィ技術などによって結晶基板
1上にストライプ状のマスク7を形成し(第4図
(a))、次にプラズマイオンエッチング法や反応性イ
オエッチング法などのドライエッチングプロセスを用い
て溝2を形成し(第4図(b))、スパッタリングやCV
D法を用いて溝2を誘電体3で埋め(第4図(c))、
最後に溶剤などでマスク7を溶解してマスク7およびそ
の上の誘電体膜を除去する(第4図(d))ことによっ
て得られる。従って本偏光子の製造方法では、溝2を形
成する際のマスク7をそのまま誘電体膜3で溝2を埋め
る際のマスクとして使用することができるので、パター
ニングが1回ですみ、従来のように誘電体膜をパターニ
ングする際のマスクの位置合わせが必要ない。従って、
イオン交換領域と誘電体膜の位置ずれによる消光比の劣
化や損失の増加がなくなり、かつ高い生産性が得られ
る。
本偏光子は薄いニオブ酸リチウム結晶板にバッチプロ
セスによって大量に形成できるため、薄型で安価な偏光
子を得ることができる。
〔発明の効果〕
以上に述べたように、本発明によれば高消光比低挿入
損失の薄型偏光素子を得ることができ、さらにはバッチ
処理により大量安価は偏光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図,第2図,第3図は本発明の複屈折回折格子型偏
光子の実施例の斜視図であり、第4図はその製造方法の
実施例を示す工程図である。第5図は従来の複屈折回折
格子型偏光子の斜視図であり、第6図,第7図,第8図
はその断面図である。 1……ニオブ酸リチウム結晶基板、2……溝、3……誘
電体膜、4……入射光、5……直進光、6……回折光、
7……マスク、8……イオン交換領域、9……誘電体
膜。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光学的異方性を持つ結晶基板の主面に設け
    た周期的な溝の底面上に、屈折率が前記結晶基板の屈折
    率よりも大きい誘導体を前記溝の途中まで形成、また
    は、屈折率が前記結晶基板の屈折率よりも小さい誘電体
    を前記溝を完全に埋めて更に前記基板主面を覆うことな
    く誘導体表面が基板主面より上に突出して形成し、常光
    線、異常光線のいずれか一方の光線の0次の回折効率を
    1にし、他方の光線の0次の回折効率を0にしたことを
    特徴とする複屈折回折格子型偏光子。
  2. 【請求項2】光学的異方性を持つ結晶基板の主面にスト
    ライプ状のマスクを形成し、前記結晶基板をエッチング
    して前記結晶基板に周期的な溝を形成した後、前記マス
    クを前記結晶基板上に残したまま前記溝の底面に誘電体
    を形成する工程と、誘電体形成後、前記マスクを除去す
    る工程とを有することを特徴とした複屈折回折格子型偏
    光子の製造方法。
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