JP2716807B2 - 高強度低合金耐熱鋼 - Google Patents

高強度低合金耐熱鋼

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は高強度低合金耐熱鋼に関し、例えば発電用ボ
イラーや化学プラントの熱交換器、配管等の鋼管材、高
温耐圧バルブ等の鋳鍛鋼品、高温で使用される吊金具、
支持材等の丸鋼、形鋼、鋼板等に適用される高強度低合
金耐熱鋼にに関する。
〔従来の技術〕
従来、耐熱鋼としてはオーステナイト系ステンレス
鋼、9Cr鋼、12Cr鋼、1〜2 1/4Cr鋼及び1.0%未満のCr
を含有する低合金鋼等がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記の従来の耐熱鋼の場合、約600℃までの高温で使
用することを条件とすると次のような問題点がある。
1) オーステナイト系ステンレス鋼:高温強度、靭
性、加工性は良好であるが、使用環境によっては応力腐
食割れ、粒界腐食が生じる欠点がある。また、材料価格
が高い。
2) 9Cr鋼及び12Cr鋼:種々の鋼種があるが、STBA26
(9Cr−1Mo鋼)やDIN規格X20CrMoV121(12Cr−1Mo−V
鋼)はC量が約0.13〜0.25wt%と高いために、溶接割れ
が発生しやすく、また加工性が劣る。最近開発された低
C系で、V及びNbを添加した9Cr鋼及び12Cr鋼は上記の
高C系の鋼種に比べ、溶接性及び高温強度とも改善され
ているが、2 1/4Cr−1Mo鋼などの低合金鋼に比べ、熱伝
導率が低く、全般に溶接作業性が劣る。
3) 1〜2 1/4Cr鋼:この鋼は約600℃まで使用できる
耐酸化性があり、STBA26を含めた低合金鋼の中では最も
高温強度が優れ、溶接性及び加工性が良好がある。しか
し、最近開発された高強度の9Cr鋼及び12Cr鋼やオース
テナイト系ステンレス鋼に比べ、高温強度が劣るため、
本鋼を使用する場合、600℃付近の設計温度では極厚と
なり、配管等の大径管では大きな熱応力が発生すること
になる。
4) 1.0%未満のCrを含有する低合金鋼:1〜2 1/4Cr鋼
に比べて高温強度が低く、耐酸化性が劣るため、使用限
界温度が低い欠点がある。
本発明は、上記のような従来鋼種の欠点をなくし、約
600℃までの温度域で使用される安価な高強度鋼で、基
本的には従来の1〜2 1/4Cr鋼の高温強度を大幅に改善
し、約600℃までオーステナイト系ステンレス鋼及び高
強度9Cr鋼や12Cr鋼に代えて使用できる高強度低合金耐
熱鋼を提供しようとするものである。また、1〜2 1/4C
r系鋼で本発明鋼と同様にMo,W,V,Nbを含む場合にも高温
強度の大幅な改善が可能であるが、Mo及びWの添加量に
よっては長時間側のクリープ破断強度が十分ではないこ
とがある。従って、本発明では特に、長時間側(104h以
上)のクリープ破断強度が安定して高く、600℃で104h
クリープ破断強度が13kgf/mm2以上の鋼を提供すること
を目標とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、重量%でC:0.03〜0.12%、Si≦1%、Mn:
0.2〜1%、P≦0.03%、Si≦0.03%、Ni≦0.8%、Cr:
0.7〜3%、Mo:0.3〜0.7%、W:0.6〜2.4%、V:0.03〜0.
35%、Nb:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.05%を含み、残部F
e及び不可避の不純物からなり、かつMoとWの含有量に
対して0.8%≦Mo+W/2≦1.5%及びW>Moを満足させ、6
00℃、104hのクリープ強度が13kgf/mm2以上であること
を特徴とする高強度低合金耐熱鋼である。
本発明鋼の金属組織はフェライト+ベーナイトあるい
はフェライト+パーライトであり、通常の1〜2 1/4Cr
鋼に比べフェライトの量が多い。このフェライト相内に
は微細なVN析出物が生成する。
また、本発明鋼における成分範囲の限定理由は次の通
りである。
1) CはCr,Mo,W,V,Nbとともに炭化物を形成し、クリ
ープ強度を上昇させる。しかし、0.12wt%を越えると溶
接割れが生じやすく、また、却ってクリープ強度を低下
させることになる。一方、クリープ強度上昇のために
は、0.03wt%以上が必要であり、これを下廻るとクリー
プ強度が低下する。従って0.03〜0.12wt%とした。好ま
しくは0.05〜0.09wt%である。
2) Si脱酸剤として用いられ、強度上昇、耐酸化性向
上に寄与するが、1wt%を越えて添加すると靭性が低下
し、クリープ延性を低下させるので、1wt%以下とし
た。好ましくは0.2wt%以下である。
3) MnはSiと同様に脱酸剤としての効果を有し、焼入
れ性を向上させるが、0.2wt%未満ではその効果が少な
く、また、1wt%を越えて添加すると脆化しやすいの
で、0.2〜1wt%とした。好ましくは0.4〜0.6wt%であ
る。
4) P及びSは不純物元素として靭性を低下させ、機
械的性質を劣化させるので、ともに0.03wt%以下とし
た。好ましくはPは0.01wt%以下、Sは0.005wt%であ
る。
5) Niは焼入れ性を向上させ、靭性を改善する元素で
あるが、0.8wt%を越えて添加すると硬化性が大きくな
り、溶接性が低下すると同時にクリープ破断強度を低下
させるので、0.8wt%以下とした。好ましくは0.4wt%以
下である。
6) Crは耐酸化性を高め、適性な量であれば炭化物形
成元素としてクリープ破断強度を高めるが、添加量が多
くなると熱伝導率が小さくなるとともに却ってクリープ
破断強度を低下させる。また、0.7wt%を下廻る量では
耐酸化性の面から約600℃まで使用することは困難にな
り、クリープ破断強度も低下する。そこで、下限を0.7w
t%、上限を3wt%とした。但し、好ましくは0.9〜2.4wt
%である。
7) Moは母地に固溶するとともに炭化物等の析出物を
形成してクリープ破断強度を高めるが、0.3wt%未満で
は不十分であり、後述のWと組み合せて添加する場合、
0.7wt%を越えて添加してもその効果は飽和し、逆に長
時間側のクリープ破断強度が低下する。従ってMoの添加
量は0.3〜0.7wt%としたが、Wとともに次式を満足する
場合に最も安定した高いクリープ破断強度が得られる。
0.8wt%<Mo+W/21.5wt% 8) WはMoと同様に母地に固溶してクリープ破断強度
を高めるが、Moを0.3〜0.7wt%とした場合、0.6wt%未
満ではその効果は十分ではなく、また2.4wt%を越えて
添加した場合、熱間加工性を阻害し、靭性が低下する。
すなわち、WはMoとともに次式を満足する場合に最も安
定した高いクリープ破断強度が得られる。
0.8wt%Mo+W/21.5wt% 9) Vは炭化物を生成するとともにNと化合してVNが
フェライト地中に析出し、クリープ破断強度を著しく高
める効果がある。その効果は0.05wt%以上で現われ、0.
35wt%を越えると溶接割れ感受性を高め、溶接性が劣化
する。従って、0.05〜0.35wt%とした。好ましくは0.15
〜3wt%である。
10) Nbは炭窒化物を生成し、短時間側のクリープ破断
強度を高め、Vとの複合添加によって、炭窒化物を微細
に、また良好な分散状態で析出させる効果があり、その
効果は0.01wt%以上で現われる。また、0.12wt%を越え
て添加してもその効果は飽和し、却って長時間側のクリ
ープ破断強度を低下させる原因となる。また、多量添加
した場合には溶接性を低下させる。従って0.01〜0.12wt
%を成分範囲とした。好ましくは0.01〜0.05wt%であ
る。
11) NはCの代替元素としての役割りを果すととも
に、V及びNbなどと窒化物あるいは炭窒化物を形成し、
クリープ破断強度を著しく上昇させる。その効果は0.01
wt%未満では不十分であり、0.05wt%を越えて添加する
と焼入れ硬化性が高くなり、溶接性を阻害するので、範
囲を0.01〜0.05wt%とした。好ましくは0.01〜0.03wt%
である。
〔作 用〕
本発明において重要な点は長時間側のクリープ破断強
度を高めるためにMo及びW添加量について最適化を図っ
たことである。すなわち、Mo及びWの添加量はそれぞれ
0.3〜0.7wt%及び0.6〜2.4wt%であり、かつ、0.8wt%
Mo+W/21.5wt%を満足する必要がある。これを図示
すると、第1図のようになり、適性なMoとWの領域があ
る。
従来、MoとWを複合して添加する場合、相対的にMo添
加量を多くし、W添加量はMoと同量以下と少なくしてい
たが、この場合固溶強度が十分でなく、特に長時間側の
クリープ破断強度が十分ではなかった。これに対して、
本発明のようにW添加量をMoに対して相対的に多くした
場合、固溶強化が一層強まるとともに炭窒化物の析出形
態に影響を与え、長時間のクリープ破断強度の安定化に
寄与する。
〔実施例〕
下記表に示す供試材を作製した。その化学成分は次の
通りである。
また、供試材は大気中高周波溶解炉により各々50kg溶
製した後、950〜1100℃の範囲で熱間鍛造し、断面が40
×20mmの棒に仕上げた。
熱処理は1050℃AC+750℃ACとし、試験片は上記棒状
素材より鍛造方向に平行に採取し、600℃でクリープ破
断強度を実施した。
600℃クリープ破断強度は最長約8000hまでの試験結果
をもとに104h破断強度を求めた。第2図にMo及びWの添
加量と600℃、104hクリープ破断強度(kgf/mm2)を数字
で示したが、第1図に示した本発明のMo及びWの領域で
は13kgf/mm2以上のクリープ破断強度が得られたのに対
し、それ以外の領域のクリープ破断強度はそれを下廻る
ものであった。
第3図は本発明鋼と従来鋼の代表的クリープ破断時間
−応用線図を示したものである。これから明らかなよう
にMoが比較的多量に添加された従来鋼は数百時間以下の
短時間側では本発明鋼より高いクリープ破断強度を示し
たが、長時間側では曲線の傾きが大きいために、結局、
104hの強度は本発明鋼のそれを下廻るものであった。こ
のように本発明鋼は長時間側でも安定して高いクリープ
破断特性を有することが確かめられた。
〔発明の効果〕 以上の実施例からも明らかなように、本発明の効果に
より従来の高強度低合金耐熱鋼よりも長時間側で安定し
て高いクリープ破断強度を有する高強度低合金耐熱鋼が
提供された。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の高強度低合金耐熱鋼におけるMo及びW
の添加量の最適量的関係を示す図表、第2図は本発明の
範囲の成分を有する高強度低合金耐熱鋼は比較鋼のMO,W
量の添加量の相違に基づく600℃,104hクリープ破断強度
を示す図表、第3図は本発明高強度低合金耐熱鋼と従来
鋼のクリープ破断時間−応用線図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%でC:0.03〜0.12%、Si≦1%、Mn:
    0.2〜1%、P≦0.03%、Si≦0.03%、Ni≦0.8%、Cr:
    0.7〜3%、Mo:0.3〜0.7%、W:0.6〜2.4%、V:0.05〜0.
    35%、Nb:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.05%を含み、残部F
    e及び不可避の不純物からなり、かつMoとWの含有量に
    対して0.8%≦Mo+W/2≦1.5%及びW>Moを満足させ、6
    00℃、104hのクリープ強度が13kgf/mm2以上であること
    を特徴とする高強度低合金耐熱鋼。
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