JP2713692B2 - イオン打込み装置 - Google Patents

イオン打込み装置

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JP2713692B2 JP6214114A JP21411494A JP2713692B2 JP 2713692 B2 JP2713692 B2 JP 2713692B2 JP 6214114 A JP6214114 A JP 6214114A JP 21411494 A JP21411494 A JP 21411494A JP 2713692 B2 JP2713692 B2 JP 2713692B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、MeV領域の高エネル
ギーイオン打込み装置に利用される高周波四重極加速器
(以下ではRFQ(Radio Frequency Quadrupole)加速
器と呼ぶ)に係り、特に、ミリアンペアオーダの大電流
イオンビームを効率よく発生させることに好適なRFQ
加速器及びそれを使用したイオン打込み装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のRFQ加速器を使用したイオン打
込み装置としては、特開昭60−121656号公報記
載の例がある。この従来例は、基本的には、図3に示す
ように、イオン源1から出射したイオンを、質量分離器
2および磁気四重極レンズ3を通過させ、RFQ加速器
4で加速し、最後に、RFQ加速器4から出射された高
エネルギーイオンビームを打込み室5へと導くものであ
る。このような従来例では、RFQ加速器4で加速する
のは、通常、一種類のイオン種だけである。
【0003】一方、正イオン及び負イオンを同時にRF
Q加速器へ入射させる従来例が、特開平1−22734
5号公報に記載されている。これは、半導体基板への打
込みに際し、正負両電荷のイオンを供給することで、基
板表面上の絶縁破壊を防止するために行なわれるもので
ある。この従来例は、図4に示すように、正イオン源1
および負イオン源6から出射される正イオンおよび負イ
オンを、質量分離器2を通して、RFQ加速器4へ導き
少なくとも正イオンを加速して、正イオンおよび負イオ
ンを同時に、打込み室5へ導くものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術で
は、RFQ加速器へ入射するイオンビームの電流値がミ
リアンペアオーダの大電流になった場合、RFQ加速器
内では、空間電荷効果の増大によりイオンビームが発散
し、効率的な加速が行なえないという問題がある。
【0005】例えば、上記前者の従来例では、大電流の
高エネルギーイオンビームの発散、特に、RFQ加速器
内での空間電荷効果による発散を押さえるという点につ
いて、積極的な考慮がなされていない。RFQ加速器
は、元来、その四重極電極の形状において、イオンビー
ムを加速する電場だけでなく、イオンビームの収束を行
なうための電場が、両者共同時に発生する構成を有して
いる。ところが、従来技術の四重極電極の形状は、イオ
ンビームの電流量が小さい場合にだけ有効であり、大電
流領域では有効ではないということが観測されている。
【0006】例えば、現在、RFQ加速器の透過率は、
マイクロアンペアオーダの小電流の場合には、95%以
上という高い値を達成しているが、ミリアンペアオーダ
の大電流領域では、この値を達成することができないと
いう問題がある。
【0007】また、上記後者の従来例では、正イオン及
び負イオンを同時にRFQ加速器に入射しており、結果
として、RFQ加速器内のイオンビームにおける空間電
荷効果を減少させている。しかし、現在知られている技
術では、種々のイオン種ごとに、正イオンビームと等量
の負イオンビームを発生させることが困難である。この
ため、負イオンを同時に使用した場合でも、イオンビー
ムの空間電荷を完全に中和することはできない。
【0008】本発明の目的は、種々のイオン種を用いた
ミリアンペアオーダの大電流領域での、イオンビームの
発散を抑制し、より効率的にイオンビームを加速するこ
とができるイオン打ち込み装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、正イオンを
発生し前記正イオンをイオンビームとして出射するイオ
ン発生源と、前記イオン発生源から出射された前記イオ
ンビームを加速する粒子加速装置とを有するイオン打込
み装置において、前記粒子加速装置内を通る前記イオン
ビームの通過している領域の少なくとも一部に、電子を
供給する電子供給手段を有することを特徴とするイオン
打込み装置により達成できる。
【0010】上記目的は、また、イオンを加速する四重
極電極を有する高周波四重極粒子加速器において、前記
四重極電極は、予め定めた高周波電圧が印加されること
で、前記イオンを加速するための電場を主に形成し、前
記イオンのビームを収束させるための収束電場はほとん
ど形成しない電極形状を有することを特徴とする高周波
四重極粒子加速器により達成できる。
【0011】上記目的は、また、粒子加速装置を用いて
正イオンを加速する正イオン加速方法において、前記粒
子加速装置内で加速される前記正イオンビームの通過し
ている領域の少なくとも一部に電子を供給することで、
前記正イオンビームの空間電荷効果を減少させることを
特徴とするイオン加速方法により達成できる。
【0012】
【作用】本発明においては、RFQ加速器等の粒子加速
装置内の正イオンの通過領域の一部または全部に、電子
を供給して、正イオンのビームの空間電荷効果による発
散を抑制する。具体的には、例えば、前記粒子加速装置
内のイオンビーム軌道に沿って、電子が移動するよう
に、電子を供給する。このような構成によれば、イオン
ビーム自身の空間電荷による発散を押さえることができ
る。
【0013】以下にこの理由を説明する。イオンのよう
に同一の電荷(この場合には正の電荷)を有する粒子の
集合体(ビーム)は、各イオンの持つ電荷のため、それ
ぞれの粒子が互いに反発し合う。このため、イオンビー
ムは発散してしまうのである。これは、ミリアンペアオ
ーダの大電流イオンビームの場合に、特に顕著である。
このような場合に、異種符号である負の電荷を持つ電子
を、イオンビーム中に取り込むことで、空間電荷効果を
軽減し、イオンビームの発散を抑えることができる。
【0014】更に、イオンビームに含まれる正イオンの
電荷量と、等しい電荷量の電子を供給することで、イオ
ンビームを電気的に中和することができる。
【0015】負の電荷を持つものには、電子の他に負イ
オンがあるが、負イオンは、ミリアンペアオーダで正イ
オンと等しい量を得るのが非常に難しく、種々のイオン
に対応することができない。
【0016】これに対し、電子の発生は容易であり、そ
の発生量もアンペアのオーダまで容易に可能である。こ
のため、ミリアンペアオーダの種々の正イオンビームと
常に等しい量の供給が容易にでき、イオンビームを構成
するイオン種によらず、そのイオンビームを完全に中和
することができる。
【0017】本発明により、粒子加速装置内でのイオン
ビームの空間電荷を中和できれば、イオンビームをより
効率的に加速することができる。従来、空間電荷効果に
よる発散のために低下していた透過率を、原理的には、
低電流領域でのイオンビームにより達成される透過率の
値まで増大することが可能となる。
【0018】本発明のイオン打ち込み装置においての粒
子加速装置としては、エネルギー固定型のRFQ加速
器、もしくは、エネルギー可変型のRFQ加速器等を用
いることができる。
【0019】特に、エネルギー可変型のRFQ加速器を
用いることにより、種々のエネルギーの大電流MeVイ
オン加速を効率よく行えるようになる。さらに、このR
FQ加速器をイオン打込み装置に使用することによっ
て、半導体等の材料へ数10ミリアンペアの大電流イオ
ンビームの打込み可能となり、高スループット用の大電
流MeVイオン打込み装置を実現することができる。
【0020】
【実施例】本発明を適用したイオン打込み装置の一実施
例を、図1、図5、図6、および、図7を用いて説明す
る。
【0021】本実施例は、図1に示すように、正イオン
を発生し前記正イオンをイオンビーム9として出射する
イオン源1と、イオン源1から出射されたイオンビーム
9を偏向して前記正イオンの質量分離する質量分離器2
と、質量分離されたイオンビーム9を収束する磁気四重
極レンズ3と、収束されたイオンビーム9を受け入れて
所定のエネルギーまで加速するRFQ加速器4と、RF
Q加速器4から出射された高エネルギーイオンビーム9
を導入する打ち込み室5とを有する。
【0022】打ち込み室5には、処理対象である半導体
部材等のターゲット材料5aが、導入された高エネルギ
ーイオンビーム9により照射されるような所定の位置に
保持されている。
【0023】本実施例は、さらに、本発明の特徴である
電子供給手段として、電子を発生すると共に前記電子を
電子ビーム10として予め定めた引出電圧で引き出す電
子銃7と、前記電子ビーム10をイオンビーム9に沿っ
て、RFQ加速器4内に共に導入するための、イオンビ
ーム9の軌道を変化させない程度の弱い磁場を発生する
偏向電磁石8とを有する。
【0024】イオン源1には、例えば、マイクロ波放電
型イオン源、フィラメント型イオン源を用いることがで
きる。イオン源1は、予め定めた種の正イオンを発生さ
せ、20〜60kV程度の引出電圧で、イオンビーム9
を引出す。
【0025】質量分離器2は、1対の扇型電磁石を有す
るものであり、ミリアンペア程度の大電流イオンビーム
9を通過させるために、イオンビーム9が通過する領域
にあたる磁極間のギャップ長を、例えば、60mm以上
と、広くしている。
【0026】磁気四重極レンズ3は、質量分離されたイ
オンビーム9を収束させるものであり、例えば、三段型
の磁気四重極レンズを用いる。
【0027】RFQ加速器4は、磁気四重極レンズ3で
収束されたイオンビーム9を受け入れ、そのイオンビー
ム9を所定のエネルギーまで加速して、打ち込み室5へ
出射するものである。
【0028】本実施例において、RFQ加速器4は、加
速されたイオンの出射エネルギーが可変である、エネル
ギー可変型のRFQ加速器である。このRFQ加速器4
は、図5に示すように、対向する電極面が互いに波打っ
た形状を構成する2対の電極からなる四重極電極を有す
るRFQ電極部41と、インダクタンスを変化すること
ができるLC共振回路部42と、RFQ電極部41の電
極に高周波電圧を供給するためのRF給電部43とを有
する。
【0029】本実施例のRFQ加速器4では、LC共振
回路部42のインダクタンスを変えることで、RFQ電
極部41内で加速される荷電粒子の加速エネルギーを変
えることができる構成となっている。
【0030】LC共振回路部42は、図6に示すよう
に、RFQ電極部41に含まれる2対の電極411、4
12のうちの、一方の対の電極のそれぞれに接続された
2つの導電板420と、2つの導電板420のそれぞれ
に電気的に接続された、それぞれが複数の棒状導体から
構成される上側導体部421および下側導体部422
と、これら上側導体部421と下側導体部422とを短
絡する可動短絡板423とを有する。
【0031】可動短絡板423は、上側導体部421と
下側導体部422との短絡位置を変化することができる
構成となっている。この短絡位置を変えることで、RF
Q加速器4のインダクタンスを変化させることができ
る。
【0032】LC共振回路部42としては、本実施例の
ようなインダクタンス可変型のものに限定されず、他
に、電気容量可変型の共振回路、または、インダクタン
スおよび電気容量を変化させることができる共振回路を
有するものでもよい。
【0033】電子銃7には、生成したプラズマから電子
を引き出す、プラズマ電子銃を用いることができる。こ
こで、電子銃7における電子の引出電圧、すなわち、電
子ビーム10のエネルギーは、前記エネルギーにおける
電子の速度が、イオンビーム9のイオンの速度と同程度
となるようにする。
【0034】具体的には、上記で説明したような、数1
0kVの引出電圧を有するイオン源1から出射されるイ
オンビーム9に対しては、引き出されたイオン種にもよ
るが、100V程度の引出電圧が好適である。
【0035】プラズマ電子銃は、その基本的構成とし
て、図7に示すように、電子を発生させるためのプラズ
マ74をその内部空間で発生させる円筒状のウェネルト
電極71と、プラズマ74の電子を電子ビーム10とし
て引き出す陽極73と、ウェネルト電極71を覆うよう
に配置されるシールド電極72とを有する。なお、陽極
73とシールド電極72とは、同じ電位とされ、ウェネ
ルト電極71との間に直流の高電圧75が印加される。
【0036】また、本実施例において、電子銃7として
用いることができるのは、上記プラズマ電子銃に限らな
い。上記プラズマ電子銃と同様に、充分な電子を発生
し、100V程度の引出電圧で電子ビームを引きだすこ
とができるものであれば、他のタイプの電子発生源、例
えば、熱フィラメントからの電子を加速するタイプの電
子銃を用いることができる。
【0037】偏向電磁石8は、電子銃7で発生された電
子ビーム10を、イオンビーム9に沿って、イオンビー
ム9と共にRFQ加速器4へ入射させるためのものであ
る。偏向電磁石8は、電子ビーム10の軌道を変えるた
めの、ごく弱い磁場を発生させる1対の扇形の電磁石
と、磁場発生のために電磁石へ電力を供給する給電制御
装置とを有する。
【0038】磁束密度Bの磁場中の荷電粒子(質量:
m、電荷:q、加速電圧:V)の円軌道半径をrとする
と、次式の関係が成り立つことが知られている。
【0039】(rB)2 ∝ (m/q)・V 上記関係式から、本実施例において、この偏向電磁石8
を通過するイオンに対する影響を考えてみる。例えば、
RFQ加速器4に入射するイオンビーム9が、40ke
Vの31P(リン)の1価イオンから構成されており、電
子銃7から引き出された電子ビーム10を構成するのが
100eVの電子の場合には、上記関係式から、前記イ
オンの軌道半径は、電子の軌道半径の約4800倍にも
なる。
【0040】すなわち、電子銃7で発生され引き出され
た電子ビーム10の軌道を90度偏向して、イオンビー
ム9の軌道に重ねるために、例えば、軌道半径10cm
で電子ビーム10を偏向させるような磁場を、偏向電磁
石8が発生したとすると、その磁場中を通るイオンビー
ム9の軌道半径は、約480mとなる。
【0041】したがって、偏向電磁石8の発生する磁場
は、電子ビーム10を充分に小さい半径で偏向させるこ
とが可能であると同時に、イオンビーム9の軌道には影
響しないものである。偏向電磁石8が発生する磁場強度
は、具体的には、上記関係式にも示されているように、
電子銃7から発生され引き出された電子ビーム10とイ
オンビーム9との相対角度、イオンの質量、イオンの電
荷量、イオンのエネルギー、および、電子のエネルギー
から決定する。
【0042】次に、本実施例の作用を、図1を用いて説
明する。
【0043】本実施例において、イオン源1から出射し
たイオンビーム9は、質量分離器2で偏向され、質量分
離される。質量分離されたイオンビーム9は、三段型の
磁気四重極レンズ3で収束された後、上記のようにごく
弱い磁場を発生させる偏向電磁石8を通過してRFQ加
速器4に入射する。
【0044】RFQ加速器4には、また、電子銃7から
出射され偏向電磁石8により軌道が偏向された電子ビー
ム10が、イオンビーム9と重なるようにして入射され
る。ここで、イオンビーム9と同じ電流量の電子ビーム
10を供給することで、RFQ加速器4に入射するイオ
ンビーム9の空間電荷が中和される。
【0045】このため、RFQ加速器4内におけるイオ
ンビーム9の通過領域において、イオンビーム9の空間
電荷効果による発散を抑制する。その結果、RFQ加速
器4におけるイオンビーム9の透過率が増加するため、
ミリアンペア程度の大電流、高エネルギーのイオンビー
ム9を容易に得ることができる。
【0046】最後に、RFQ加速器4から出射されたイ
オンビーム9は、打込み室5に設置された、処理対象と
なるターゲット材料5aへ打込まれる。
【0047】本実施例によれば、RFQ加速器4内での
イオンビーム9の空間電荷効果による発散が抑制できる
ため、ミリアンペア以上の大電流領域で、数百keVか
ら数MeVまでの任意のエネルギーの高エネルギーイオ
ンビームをターゲット材料5aへ打ち込むことが可能
な、効率的にイオンを加速できるイオン打込み装置を提
供することができる。
【0048】さらに、本実施例を利用することで、装置
寸法制約の厳しい半導体製造工場の大量生産工程に、大
電流MeVイオンビ−ムが利用できるようになるばかり
ではなく、金属、セラミックス等の材料表層改質を短時
間で行える大量生産用イオン処理装置が実現できる。
【0049】また、本実施例の構成に加えて、RFQ加
速器4と打込み室5との間に磁場型或いは静電型のイオ
ン偏向器を設けて、RFQ加速器4を通過してきた電子
を打込み室5へは導かずに、加速されたイオンのみを、
打ち込み室5のターゲット材料5aへ照射する構成とし
てもよい。
【0050】また、本実施例においては、従来のエネル
ギー可変型のRFQ加速器を粒子加速装置として用いた
が、本発明において粒子加速装置は、これに限定される
ものではない。粒子加速装置としては、例えば、エネル
ギー固定型のRFQ加速器や、RFQ加速器を含む複数
の加速器からなる粒子加速装置であってもよい。
【0051】また、RFQ加速器の四重極電極の代わり
に、六極以上の偶数極を持つ多重極電極を有する粒子加
速装置に、本発明を適用した場合にも同等の効果があ
る。
【0052】また、本実施例で用いられていた従来のR
FQ加速器の代わりに、従来とは異なる電極形状を有す
るRFQ加速器を用いることもできる。
【0053】RFQ加速器の四重極電極は、従来、予め
定めた高周波電圧が印加されることにより、RFQ加速
器内でのイオンビームの発散を抑えイオンビームを収束
させるための半径方向の収束用電場と、イオンビームを
加速するための軸方向の加速用電場とを生成するような
形状を有している。
【0054】本発明では、RFQ加速器内におけるイオ
ンビームの発散を抑えることができるため、収束用電場
を従来型のものに比べ大きく軽減するような、RFQ加
速器の四重極電極の形状としてもよい。このような形状
によれば、RFQ加速器から出射されるイオンビームの
発散量を最小限に留めることが可能となる。この結果、
収束用電場の生成に使用されていた電力を、軸方向の加
速用電場への生成に寄与する電力として利用できるた
め、省エネルギー・省電力型の高エネルギーイオン打ち
込み装置が提供できる。
【0055】本発明を適用したイオン打込み装置の他の
実施例を、図2を用いて説明する。
【0056】本実施例は、上記実施例において電子ビー
ム軌道を偏向する偏向電磁石8を取り除き、RFQ加速
器4の後に設置したイオン偏向器11を電子偏向にも利
用したものである。なお、本実施例に関する以下の説明
においては、上記実施例における構成要素と同じ構成要
素については、上記実施例と同じ符号を付し、その構成
および作用についての説明を省略する。
【0057】本実施例は、図2に示すように、イオン源
1と、質量分離器2と、磁気四重極レンズ3と、RFQ
加速器4と、RFQ加速器4から出射された高エネルギ
ーイオンビーム9の軌道を所定の角度だけ偏向させるイ
オン偏向器11と、偏向されたイオンビーム9を導入す
る打ち込み室5とを有する。
【0058】イオン偏向器11は、イオンビーム9の軌
道を偏向するためのもので、予め定めた強度の磁場を発
生する1対の偏向電磁石と、磁場発生のための電力を供
給する給電制御装置とを有する。
【0059】イオン偏向器11には、RFQ加速器4か
ら出射されたイオンビーム9が入射するイオン入射口1
1aと、イオンビーム9が出射するイオン出射口11b
と、以下に説明する電子銃7からの電子ビーム10が入
射する電子入射口11cとが設けられている。
【0060】本実施例は、さらに、本発明の特徴である
電子供給手段として、イオン偏向器11の所定の位置に
取付けられた、電子を発生する電子銃7を有する。
【0061】イオンと電子とは、その電荷が互いに逆で
あるため、磁場中でその進行方向に対して、逆方向の力
を受ける。本実施例では、電子銃7で発生した電子ビー
ム10を、図2に示すように、イオン偏向器11のイオ
ン入射口11aとは逆の方向に設けられた電子入射口1
1cから入射させる。
【0062】ここで、電子入射口11cの位置は、電子
入射口11cから入射した電子ビーム10が、イオン偏
向器11の発生する磁場により偏向しイオン入射口11
aから出射して、RFQ加速器4内のイオンビーム9の
通過領域へ、イオンビーム9とは逆方向から導入される
ような位置である。このような構成によれば、RFQ加
速器4内で、電子ビーム10とイオンビーム9とが重な
り、イオンビーム9の空間電荷効果による発散を抑制す
ることができる。
【0063】イオン偏向器11の磁場強度は、RFQ加
速器4から出射された高エネルギーのイオンビーム9を
偏向させるためのものである。このような磁場中では、
上記実施例のような低いエネルギーの電子ビームの軌道
半径は、イオンビーム9の軌道半径に比べ非常に小さな
ものとなる。
【0064】このため、本実施例では、上記実施例より
も高いエネルギーの電子ビーム10を、電子銃7で発生
させて、その電子ビーム10の軌道を、イオン偏向器1
1による磁場で偏向させるものとする。例えば、1Me
Vの11B(ホウ素)の1価イオンと、100keVの電
子との場合には、電子の軌道半径はイオンの軌道半径の
約1/450になる。
【0065】イオン偏向器11における、具体的な、電
子入射口11cの位置、イオン出射口11bの位置、お
よび、イオン入射口11aの位置のそれぞれは、イオン
ビーム9を構成するイオン種、イオンビーム9の出射エ
ネルギー、イオンビーム9の偏向角の大きさ、イオン偏
向器11の発生する磁場の強度および断面積、電子ビー
ム10のエネルギー等により決定される。
【0066】本実施例によれば、従来、中性粒子等をイ
オンビーム9から除くためのイオン偏向器11を、電子
偏向用に用いるため、新たに、電子導入のための電子偏
向用電磁石を備える必要が無い。さらに、イオン偏向器
11の発生する磁場強度が、上記実施例よりも強いた
め、よりエネルギーの高い電子ビーム10を導入するこ
とができる。このため、電子ビーム10により得られる
電流量が増加し、より大電流のイオンビームの中和を行
なうことが可能となり、大電流のMeVイオン打込み装
置を実現することができる。
【0067】また、本実施例のようにイオン偏向器11
を電子偏向用に用いるのではなく、上記実施例で示され
た偏向電磁石8を、RFQ加速器4の出射口側に設ける
構成としてもよい。このような構成では、電子偏向用の
前記偏向電磁石を通過するイオンビーム9のエネルギー
は高いため、前記偏向電磁石の発生磁場強度を強くして
も、イオンビーム9に対する影響は無視することができ
る。そのため、電子銃7の引出し電圧をより高くするこ
とが可能となり、本実施例と同様な効果を得ることがで
きる。
【0068】また、本実施例では、イオンを加速する粒
子加速装置として、上記実施例と同じRFQ加速器を用
いたが、本発明はこれに限定されるものではない。粒子
加速装置としては、例えば、高周波を用いた線形加速
器、コックフロフト型の静電加速器、および、これらの
うちの少なくとも1つを含む複数の加速器から構成され
る加速装置のうち、いずれでもよい。
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、大電流領域でのイオン
ビームの空間電荷効果による発散を抑制し、より効率的
にイオンビームを加速することができるイオン打ち込み
装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の他の実施例の構成を示す説明図であ
る。
【図3】従来のイオン打込み装置の構成の一例を示す上
面図である。
【図4】従来のイオン打込み装置の構成の他の例を示す
上面図である。
【図5】エネルギー可変型のRFQ加速器の構成例を示
すブロック図である。
【図6】図5のRFQ加速器の内部構造の一部を示す斜
視図である。
【図7】プラズマ電子銃の断面構造の一例を示す説明図
である。
【符号の説明】 1…イオン源、2…質量分離器、3…四重極レンズ、4
…RFQ加速器、5…打込み室、6…負イオン源、7…
電子銃、8…偏向電磁石、9…イオンビーム、10…電
子ビーム、11…イオン偏向器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 21/265 H05H 9/00 A H05H 9/00 H01L 21/265 D (72)発明者 作道 訓之 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (56)参考文献 特開 平5−287525(JP,A) 特開 昭62−71153(JP,A) 特開 昭62−227086(JP,A)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】正イオンを発生し前記正イオンをイオンビ
    ームとして出射するイオン発生源と、前記イオン発生源
    から出射された前記イオンビームを加速する粒子加速装
    置とを有するイオン打込み装置において、 前記粒子加速装置内を通る加速途中の前記イオンビーム
    通過している領域の少なくとも一部に、電子を供給す
    る電子供給手段を有することを特徴とするイオン打込み
    装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記電子供給手段は、前記イオンビームによる電流量と
    ほぼ同じ電流量の電子を発生する電子源と、発生された
    電子を前記加速途中の正イオンビームの通過している領
    域に導入する電子導入手段とを有することを特徴とする
    イオン打込み装置。
  3. 【請求項3】請求項2に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記電子供給手段は、前記粒子加速装置内で加速されて
    いる前記加速途中のイオンビームの軌道に沿って、電子
    を供給することを特徴とするイオン打込み装置。
  4. 【請求項4】請求項3に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記粒子加速装置は、静電型加速器、高周波線形加速
    器、出射エネルギーが固定である四重極電極を有する高
    周波四重極粒子加速器、および、出射エネルギーが可変
    である四重極電極を有する高周波四重極粒子加速器のう
    ちの、いずれか1つを少なくとも含むものであることを
    特徴とするイオン打込み装置。
  5. 【請求項5】請求項3に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記粒子加速装置は、出射エネルギーが固定である四重
    極電極を有する高周波四重極粒子加速器、および、前記
    出射エネルギーが可変である四重極電極を有する高周波
    四重極粒子加速器のうちの、いずれか1つを少なくとも
    含むものであり、 前記粒子加速装置に含まれる高周波四重極粒子加速器の
    四重極電極は、予め定めた高周波電圧が印加されること
    、前記イオンビームを加速するための電場を主に形成
    し、前記イオンビームを収束させるための収束電場
    とんど形成しない電極形状を有するものであることを特
    徴とするイオン打込み装置。
  6. 【請求項6】正イオンを発生し前記正イオンをイオンビ
    ームとして出射するイオン発生源と、前記イオン発生源
    から出射された前記イオンビームを加速する粒子加速装
    置とを有するイオン打込み装置において、 前記粒子加速装置内を通る前記イオンビームの通過して
    いる領域の少なくとも一部に、電子を供給する電子供給
    手段を有し、 前記電子供給手段は、前記イオンビームによる電流量と
    ほぼ同じ電流量の電子を発生する電子源と、発生された
    電子を前記正イオンビームの通過している領域に導入す
    る電子導入手段とを有し、 前記電子供給手段は、前記粒子加速装置内で加速されて
    いる前記イオンビームの軌道に沿って、電子を 前記粒子
    加速装置の出射口から供給することを特徴とするイオ
    ン打込み装置。
  7. 【請求項7】請求項6に記載のイオン打込み装置におい
    て、 予め定めた強度の磁場を発生することで、前記粒子加速
    装置から出射された前記イオンビームを所定の角度だけ
    偏向させるイオン偏向器をさらに有し、 前記電子導入手段は、前記イオン偏向器であり、前記電
    子源から発生された電子の軌道を偏向し、前記軌道が偏
    向された電子を、前記粒子加速装置の出射口へ導入する
    ことを特徴とするイオン打込み装置。
  8. 【請求項8】請求項3に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記電子導入手段は、前記電子を前記粒子加速装置の入
    射口から供給することを特徴とするイオン打込み装
    置。
  9. 【請求項9】請求項8に記載のイオン打込み装置におい
    て、 前記電子導入手段は、前記イオン発生系と前記粒子加速
    装置との間に設けられる、前記電子源で発生された電子
    の軌道を偏向し、前記粒子加速装置の入射口へ導入され
    るような磁場を発生する偏向電磁石であることを特徴と
    するイオン打込み装置。
  10. 【請求項10】イオンを加速する四重極電極を有する高
    周波四重極粒子加速器において、 前記四重極電極は、予め定めた高周波電圧が印加される
    ことで、前記イオンを加速するための電場を主に形成
    し、前記イオンビームを収束させるための収束電場
    とんど形成しない電極形状を有し、 前記四重極電極によって形成された電場領域のうち、加
    速途中の前記イオンビームが通過している領域の少なく
    とも一部に、外部から電子が供給されること を特徴とす
    る高周波四重極粒子加速器。
  11. 【請求項11】粒子加速装置を用いて正イオンを加速す
    る正イオン加速方法において、 前記粒子加速装置内における前記加速途中の正イオンビ
    ームの通過している領域の少なくとも一部に電子を供給
    することで、前記正イオンビームの空間電荷効果を減少
    させることを特徴とするイオン加速方法。
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