JP2712459B2 - スピーカ用振動板 - Google Patents

スピーカ用振動板

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は音響出力機器等に用いられるスピーカ用振動
板に関するものである。
従来の技術 近年、スピーカにはその音響特性の向上のため、ハニ
カム構造体等複合構造物による振動板が用いられるよう
になってきている。
以下にこの種の従来のスピーカについて説明する。第
5図は従来のスピーカの概略断面図を示すものである。
同図において、1はプレート、2はプレート1と共に磁
気回路を形成するマグネット、3は入力信号に応じて振
動するボイスコイル、4はスピーカのフレーム、5は一
端がフレーム4に固定されボイスコイル3を振動自由に
平衡支持するダンパである。6は音波を発生するハニカ
ム構造の平板振動板、7は平板振動板6の周縁部に設け
られ弾性力をもってその平板振動板6を支持するエッ
ジ、8はエッジ7をフレーム4に固定するガスケット、
9はボイスコイル3の振動を平板振動板6に伝達するカ
ップリングコーンである。
以上のように構成されたスピーカについて、第5図を
用いて以下その動作を説明する。
まず、ボイスコイル3に電気信号を通電すると、その
向きに応じて所定方向の磁界が発生し、磁気回路に対し
て斥力または引力が生じる。その結果、ダンパ5によっ
て支持されながらボイスコイル3は磁気回路のギャップ
内を矢線A方向に振動する。
そしてカップリングコーン9がこの振動を平板振動板
6に伝達し、平板振動板6はこの振動に応じた音波を発
生する。従ってこの種のスピーカに用いられる平板振動
板6は軽くて高剛性のものが望まれる。
次に、こうしたスピーカに利用される平板振動板6に
ついて、第6図を用いてその製造工程を説明する。
同図のハニカムコア部材15の製造工程において、ま
ず、第6図aに示すロール状のアルミ箔10を所定形状に
断裁したのち、第6図bに示すように接着剤11を一定間
隙ごとに塗布して接着剤塗布箔12を得る。次に、第6図
cに示すように接着剤塗布箔12を多数枚積層して積層ブ
ロック13を形成する。そして、第6図dに示すように積
層ブロック13を所定幅で断裁してスライスブロック14を
得る。最後に、第6図eに示すようにスライスブロック
14をその上下方向に展張してハニカムコア部材15を作成
する。
同第6図のスキン部材19の製造工程において、まず、
第6図fに示すようにロール状のアルミ箔16を所定形状
に断裁したのち、第6図gに示すように接着剤17を全面
に塗布して接着剤塗布膜18を得る。そして第6図hに示
すようにハニカムコア部材15に対応した形状に断裁して
スキン部材19を作成する。平板振動板6の最終工程にお
いて第6図iに示すようにハニカムコア部材15の表面に
スキン部材19の接着面を接着しその裏面に対しても同様
に接着する(以後、裏面側のスキン部材19を裏スキン部
材19bと称する)。この際、接着剤を早急に凝固させる
ために、接着面を高温に維持しながら接着して第6図j
に示すような平板振動板6を得ている。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、かかる構成によれば原材料のアルミ箔
自体の厚さが20〜30μmと薄く、ハニカムコア部材15の
多くの工程で変形を生じ易いという第1の欠点を有して
いた。
また、表裏スキン部材19a,19bの接着作業に際し、溶
剤系接着剤を使用するとハニカムコア部材15に封じられ
た溶剤が熱膨張し、表裏スキン部材19a,19bの表面が凸
凹形状となりやすいという第2の欠点を有していた。
以上のように、アルミハニカムはその構造が複雑で、
組立にも高度の技術を要し製造効率が低いという欠点を
持っている。
さらに、スピーカの振動板は使用する周波数帯域にわ
たってピストン運動することが理想とされるが、振動中
に振動板が変形したり分割振動が生ずると音圧−周波数
特性、歪率、位相特性等が劣化し、高忠実度再生の妨げ
となる。アルミハニカムの振動板は、その振動板材料の
持つE/ρ(ただし、E:弾性率、ρ:密度)は高く、高域
共振周波数もある程度高いものであるが、材料のアルミ
の持つ内部損失係数tanδが低いため、音声信号を入力
したときの再生音は、金属的なくせのある音がしやすい
という欠点があった。
これらの問題点はすべて音響特性の劣化につながって
しまう。
第1の問題点の解決策として、ハニカムコア部材15の
替わりに樹脂の発泡体を利用することが考えられるが、
耐熱性、耐溶剤性に欠けるばかりか剛性が低下するとい
う新たな問題を生じてしまう。
また、第2の問題点の解決策として、溶剤を含有しな
い無溶剤タイプのホットメルトフィルムを用いて熱圧着
することが考えられるが、アルミ箔が変形しないように
その圧力は低圧(200〜300g/cm2)で注意しながら熱圧
着しなければならず、製造効率が低下するという新たな
問題を生じてしまう。
本発明は上記問題点に鑑み、組立が容易で製造工程に
おける種々の変形等を防止し、製造効率が高く、耐熱
性、耐溶剤性、及び剛性を向上させ、振動中に振動板が
変形したり分割振動を生ぜず、高域周波数が高く優れた
音響特性を実現することのできるスピーカ用振動板を提
供することを目的とする。
課題を解決するための手段 この課題を解決するために本発明のスピーカ用振動板
は、鱗片状マイカと合成樹脂の複合物を成形したコア部
材の表裏面の少なくとも一方にスキン材としてフィルム
を窒素雰囲気中にて表裏から加圧しつつ800〜1200℃で
熱処理し、さらに2000〜3000℃で焼成したグラファイト
を用いたものである。
作用 本発明は、上記した構成により、非常に弾性率が高
く、これを振動板として用いた場合、振動板の曲げ剛性
が非常に大きく、振動中に振動板が変形したり分割振動
が生じない。また、スキン材として上述の処理を施した
グラファイトを用いているため、比弾性率E/ρ(但し、
E:弾性率、ρ:密度)が大きく、これを振動板として用
いた場合、スピーカの再生帯域がのびる。コア材として
鱗片状マイカと合成樹脂の複合物を用いた成形物を用
い、スキン材として上述のグラファイトを用いているた
め内部損失も高く、このため、振動中に振動板が変形し
たり分割振動が生ぜず、金属的なくせのある音を持た
ず、優れた音圧−周波数特性、歪率、位相特性を持つス
ピーカを得ることができる。
さらに、この振動板のコア材には鱗片状マイカと合成
樹脂の複合物を成形して用いているため、組立が容易で
製造効率を向上させることができる。
実施例 以下本発明の一実施例のスピーカ用振動板について、
図面を参照しながら説明する。
第1図は本発明の一実施例におけるスピーカの概略構
成断面図を示すものである。
同図において、21は鱗片状マイカと合成樹脂の複合物
を成形したコア部材、22a,22bはコア部材を表裏から接
着するグラファイトからなるグラファイトスキン材であ
る。
コア部材21の製造工程を説明すると、鱗片状マイカを
水中にて、分散、浮遊させ、紙を抄くのと同様の要領で
抄造し、熱風乾燥の後、エポキシ樹脂と硬化剤の混合物
の10〜20wt%トルエン溶液をシャワー含浸し、40〜50℃
で温風乾燥してプリプレグを形成する。これを凹凸金型
中で厚みを約20μmに規制しながら、150〜180℃で10〜
40分硬化させ、高さ約1mmのコア部材を成形する。本発
明の一実施例のコア部材21を第2図に示す。本例では、
中心から放射状にコルゲーションを有する形状とした
(以下、マイカコア部材と記載)。
次に、スキン剤22a,22bの製造工程を説明すると、ま
ず、ポリイミド樹脂やポリオキサジアゾール樹脂を原料
とした厚さ20〜100μmのフィルムを形成する。次に、
窒素雰囲気中にて800〜1200℃で熱処理をし、有機物を
分解ガスとして放出させる。この際分解ガスの放出によ
りフィルムが発泡、膨張するのを防ぐため、フィルムの
表裏面から加圧を行い、フィルムの厚さを10〜20μmに
なるように規制しながら行う。そして、2000〜3000℃に
て焼成すると、第2図に示す通り、その成分である炭素
が焼結し、さらにグラファイト化したグラファイトスキ
ン材22a,22bが形成される。
また平板振動板20の最終製造工程を説明すると、マイ
カコア部材21の表裏面に対し、従来からのエポキシ樹脂
あるいは、ポリアミドフィルム等の無溶剤タイプの接着
剤を用い、グラファイトスキン部材22a,22bを熱圧着し
て第3図に示す平板振動板20を得る。
このように、本実施例によれば従来のように、溶剤タ
イプの接着剤を用いることなく熱圧着することができ
る。また、従来のハニカムコア部材に比べてマイカコア
部材21の接着面積が大きくとれるため、グラファイトス
キン部材22a,22bを強固に接着させることができる。
前記製造工程で得られた素材と従来の材料素材の物性
比較を第1表に示す。
第1表において特にグラファイトの比弾性率は従来の
アルミニウム、紙に比べ極めて高く、音の伝搬速度が速
いことを示している。
またマイカエポキシ複合材の弾性率はアルミニウムと
同等の高い値を示しており、振動板を構成したときに十
分な剛性が得られることを示している。
一方、内部損失の値はグラファイト、マイカエポキシ
複合材共にアルミニウムに比べ、1桁以上高い値を示し
ており、不必要な振動を吸収する能力が高いことを示し
ている。
次に、第4図を用いて本発明の平板振動板を用いたス
ピーカの周波数特性を説明する。
同図において、24は従来の平板状振動板スピーカの周
波数特性であり、23は本実施例の平板振動板スピーカの
周波数特性である。ここで、周波数に対する音圧レベル
23は略100dBを維持したまま、人間の可聴帯域の上限界
と言われる20kHzまで伸びており、従来の平板状振動板
を用いたものに対して高周波数領域の音質が向上してい
る。
なお本実施例では振動板形状はφ28mm、厚さ1.2mmの
円板状のものを用い、スピーカは、高音用のツイータと
した。また、マイカコア部材21の厚みを20μm、高さを
1mm、グラファイトスキン部材22の厚さを10〜20μmに
規制したが、これに近い大きさであれば同様な結果を得
られる。さらに、マイカコア部材21にグラファイトスキ
ン部材22を接着剤によって接着しているが、これを限定
するものではなく、本発明の精神に反することなく変更
することは当業者にとって容易である。
発明の効果 以上のように、本発明は、コア部材に鱗片状マイカと
合成樹脂の複合物を用い、スキン部材にフィルムを窒素
雰囲気中にて表裏から加圧しつつ800〜1200℃で熱処理
し、さらに2000〜3000℃で焼成したグラファイトを用い
たことによって、振動板の製造効率が向上し、製造工程
における種々の変形を防止し耐熱性、耐溶剤性、剛性、
内部損失が向上し、優れた音響特性を実現することがで
きるなど、数々の優れた効果を得ることのできる振動板
を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例によるスピーカ用振動板の概
略構成断面図、第2図は同分解斜視図、第3図は同斜視
図、第4図はそのスピーカ用振動板を用いたスピーカの
周波数特性図、第5図は従来の平板振動板を用いたスピ
ーカの概略断面図、第6図は従来の平板振動板の製造工
程図である。 21……コア部材、22a,22b……グラファイトスキン材。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鱗片状マイカと合成樹脂の複合物を整形し
    たコア部材と、前記コア部材の表裏面の少なくとも一方
    に設けたスキン材とを有し、前記スキン材にフィルムを
    窒素雰囲気中にて表裏から加圧しつつ800〜1200℃で熱
    処理し、さらに2000〜3000℃で焼成したグラファイトを
    用いることを特徴とするスピーカ用振動板。
  2. 【請求項2】グラファイトとして、高分子シートを単独
    で炭化・黒鉛化したものを用いた請求項1記載のスピー
    カ用振動板。
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