JP2711298B2 - 構造物の振動抑制装置 - Google Patents

構造物の振動抑制装置

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    • F16F7/104Vibration-dampers; Shock-absorbers using inertia effect the inertia member being resiliently mounted
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、構造物に外力が作用した際に生ずる構造物
の振動を抑制する構造物の振動抑制装置に係り、特に、
強風等の中小外力に対し有効に振動抑制を行いうる構造
物の振動抑制装置に関するものである。
「従来の技術」 最近、米国の高層ビルにおいて、強風時に生ずる建築
物の振動によって窓ガラスが破損する等の事故が発生し
ている。このため、強風時における建築物の振動を抑制
する装置が開発、適用されている。このような振動抑制
装置の一例としては、油圧式静圧軸受支持による慣性質
量方式制振装置があり、一応の効果が確認されている。
一方、我国の建築物、特に高層ビルは、厳しい耐震規
定によって設計されるため、米国における同規模の建築
物に比べてその剛性が高い。特に、数多くの耐震壁が建
築物内に取り付けられるため、初期剛性が著しく高くな
る、という特徴がある。従って、従来の我国の建築物に
おいては、強風時の建築物の振動が社会的に問題になっ
たことは皆無に等しい。
「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、最近、ホテルや住宅といった人間が常
時居住又は生活する空間の高層化が進み、既に30階建を
越えるホテルやアパートが次々に建築されている。ま
た、それまで比較的低層階の建築物が主に建築されてい
た軟弱地盤にも、高層ビルが積極的に建築されている。
この軟弱地盤は、地震時に長周期成分が卓越するであろ
うと考えられるため、通常の耐震設計では防ぎにくい振
動が生起するおそれがある。さらに、建築生産の工業化
の進展に伴い高強度の新材料が開発され、このような新
材料の応用により建築物の軽量化が促進されることで、
建築物はますます風により振動し易くなる。
そのような社会的趨勢から見て、近い将来我国におい
ても、建築物、特に高層ビルの強風時の振動が社会的な
問題になることが予測される。まず第一に懸念されるこ
とは、高層ホテルや高層アパート等の居住者が、強風時
の建築物の振動によって不快感や恐怖感を抱くことであ
る。実際、すでに高層ビル内の居住者が船酔い症状を訴
えている例もある。従って、今後計画・設計される高層
ビルにおいては、建築物の用途、規模、構造、地盤条件
等を考慮し、強風等による建築物の振動に伴うトラブル
が予想される場合には、これに振動抑制装置を設置する
ことが必要となる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、省
スペース、ローコストを図ることで一般の高層ビルにも
適用可能で、かつ、大地震等における安全性を十分に満
足しうる構造物の振動抑制装置の提供を目的としてい
る。
「課題を解決するための手段」 そこで本発明は、前記課題を解決するための手段とし
て、複数の積層ゴムが板体を挟んで多層に積層されて構
成された水平変形部と、構造物上の所定位置に設置され
た複数の水平変形部によって下方から支持されて構造物
の固有振動周期と同一の振動周期を与えられた慣性質量
体と、この慣性質量体が所定量以上水平変位した段階で
作動して慣性質量体の水平移動を抑制する制動装置とを
備えてなる振動抑制装置を採用する。そしてこの制動装
置は、慣性質量体の周囲に複数設置され、慣性質量体が
所定量以上水平変位した段階で作動するリミットスイッ
チと、リミットスイッチの作動により慣性質量体の下部
に設置されたエアシリンダに圧搾空気を供給してピスト
ンを構造物の上面に対して垂直に突出させ、このピスト
ンの先端に設けられた制動部材を構造物に圧接させるこ
とによって慣性質量体の制動を図るエアブレーキとを備
える。
さらにこの振動抑制装置には、慣性質量体が水平面内
の全方向に所定量以上水平変位した段階で慣性質量体に
当接する位置に、慣性質量体の周囲を取り囲む環状の弾
性体からなる緩衝体を設置する。
「実施例」 以下、本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。
第1図ないし第2図は、本発明の一実施例である構造
物の振動抑制装置を示す図である。図において、符号1
全体で示されるものは、本発明の一実施例である構造物
の振動抑制装置(以下、単に振動抑制装置と称する)で
あり、この振動抑制装置1は、第1図ないし第3図に示
すように、建築物(構造物)2の屋上付近の床面F上に
取付板3を介して設けられている。
この振動抑制装置1は、正方形の四隅に配置された4
個の水平変形部4、4、…により下方から支持された質
量体5と、この質量体5が所定量以上水平変位した段階
でその水平移動を抑制する制動装置6と、前記質量体5
がさらに所定質量以上水平変位した段階で当接する位置
に付設された緩衝体7とから概略構成されている。
水平変形部4は、正方形の四隅に配置された積層ゴム
41、41、…が平面視矩形状の鋼板製のスタビライザー
(板体)42を挟んで多層に積層されて構成され、鋼製の
支持部材43を介して前記質量体5をその下面から支持し
ている。この積層ゴム41は、例えば鋼板とシート状のゴ
ムとが多層に積層され、その上下に取付板が設けられた
ような構成であり、水平方式の荷重に対する変位が許容
され、かつ、垂直方向の荷重に対する変位が拘束される
ものである。この積層ゴム41、…の規模及び積層数は、
前記質量体5を含めた系の固有振動周期が建築物2の一
次の固有振動周期と等しくなるように設定されている。
また、質量体5は、外形箱状の収納体51中に板状の質
量部材52、52、…が収納されて構成されている。この質
量部材52には、例えば鋼材、鉛、コンクリート等が用い
られ、質量体5全体としての重量が、建築物2の総重量
の1/150〜1/600の範囲内となるように、枚数及び材質が
設定されている。
さらに、制動装置6は、前記水平変位部3の上端及び
下端のスタビライザー42、42間に挟まれたリミットスイ
ッチ61、61、…と、シリンダ62を介して前記収納体51下
面から突設されたエアブレーキ63と、このエアブレーキ
63に相対向されて配設され、前記取付板3上面に設けら
れた摩擦板64と、前記リミットスイッチ61、…の作動に
より前記エアブレーキ63にエアホース65を介して圧搾空
気を供給する空気供給機構(図示略)とから構成されて
いる。また、エアブレーキ63は、前記シリンダ62に取り
付けられたエアブレーキシリンダ66と、その軸方向に摺
動自在に設けられたピストン67と、このピストン67先端
に設けられた圧接板(制動部材)68と、下方のシリンダ
室内に設けられたスプリング69とから構成されている。
前記リミットスイッチ61、…は、前記質量体5が所定
量以上水平移動した際に作動するように設定されてい
る。このリミットスイッチ61、…の作動する際の質量体
5の水平変位(以下、これを制御変位と称する)は、地
盤条件や建築物2の構造等によって決定されるものであ
り、一例として、建築物2の固有周期が1秒の場合に約
30cm、5秒の場合に約70cm程度とされる。これは、ちょ
うど震度V(地表面加速度で80ガル程度)以上の地震が
建築物2に作用した場合に相当する。従って、前記圧接
板68は、通常の状態、すなわち震度IV(東京では数年に
一度起こる最大級の地震で、地表面加速度で80ガル程
度)以下の地震では、スプリング69の弾性力により前記
摩擦板64から離間された状態にあるため、前記質量体5
は水平方向に移動自在な状態にある。しかし、震度V以
上の地震が発生して、質量体5が制御変位以上水平移動
した際には、リミットスイッチ61、…の作動により圧接
板68は摩擦板64に押圧され、質量体5の水平移動がこれ
ら圧接板68と摩擦板64との間の摩擦力により制動され
る。この圧接板68の押圧力は、前記空気供給機構により
供給される圧搾空気の空気圧により任意に調節可能であ
る。
また、緩衝体7は、断面中空矩形状のゴム等の弾性体
がリング状に形成されて構成され、前記取付板3上面に
突設された円筒状の囲繞部材71内面に設けられている。
この緩衝体7は、前記制動装置6のシリンダ62側面に相
対向する位置に設けられ、これらの間の距離は、前記制
御変位の1.3〜2.0倍程度まで質量体5が水平移動した場
合(以下、これを限界変位と称する)、シリンダ62側面
が緩衝体7側面に当接するような距離に設定されてい
る。この緩衝体7は、前記制動装置6の故障又は予期し
ない事態の発生に備えて設けられたもので、質量体5の
振動方向が不定であることから、全方向に均しく設置さ
れている。
次に、第1図ないし第4図を参照して、本発明の一実
施例である構造物の振動抑制装置の作用について説明す
る。
振動抑制装置1が屋上付近に設置された建築物2に強
風が作用すると、質量体5は建築物2と半周期遅れで振
動を開始する。従って、第4図に示すように、建築物2
と質量体5の水平移動方向が逆位相となることで、建築
物2の振動が質量体5の振動で打ち消され、これによ
り、強風時における建築物2の振動抑制が行われる。こ
の動作は、建築物2に震度IV程度の地震が作用するまで
行われており、従って、本振動抑制装置1は、地震に対
する振動抑制装置としても作用する。
次に、建築物2に震度V以上の地震が作用する等し
て、質量体5が制御変位以上に水平移動すると、制動装
置6のリミットスイッチ61、…が作動して、図示されな
い空気供給機構により圧搾空気がエアブレーキ63に供給
されることで、その圧接板68が摩擦板64に押し付けら
る。よって、質量体5の水平移動が制動され、地震によ
り質量体5が過大振幅で振動することが抑制される。
さらに、制動装置6の故障又は予期しない事態の発生
により、質量体5が限界変位以上に水平移動すると、そ
の下面にあるシリンダ62側面が緩衝体7側面に当接する
ことで、質量体5の限界変位以上の過大変位を防止する
ことができる。また、この緩衝体7は中空弾性体を構成
要素としており、弾性バネ特性を持っているので、質量
体5が緩衝体7に当接する質量体5を含めた系の固有周
期が変化し、それによって質量体5の応答変位を抑制す
る効果をも兼ね備えている。しかも緩衝体は環状である
ので、質量体が水平面内のいずれの方向に振動したとし
てもその前後に位置して緩衝機能を果たす。
以上説明した作用により、建築物2の強風時の振動を
抑制することができる。ここで、本実施例の振動抑制装
置1は、質量体5を下方から水平移動可能な水平変位部
4、4、…で支持した倒立振子系をその主要構成要素と
しているので、前記従来の油圧式静圧軸受支持による振
動抑制装置に比較して、質量体5周辺の余分なスペース
が不必要であるため省スペース化を図れ、しかも油圧の
ようなメンテナンスが必要な要素を含んでおらず、メン
テナンスフリー、ローコストを図ることができる。これ
により、ホテルや住宅といった、人間が常時居住又は生
活する一般の建築物にも十分に適用可能となる。
しかも、震度Vといった大地震が建築物2に作用して
も、制動装置6の作用により質量体5の過大振幅を抑制
することができると共に、万一の場合にも緩衝体7の存
在により質量体5が限界変位以上の水平移動をすること
がなく、従って、地震時の安全対策が万全となり、世界
有数の地震国である我国において大変好ましい装置であ
る。
さらには、水平変位部4、…に積層ゴム41、…を使用
していることから、質量体5の水平移動はゴムの剪断変
形により行われ、従って、前記従来の油圧式静圧軸受支
持の如く摩擦により慣性質量を支持する方式に比較し
て、質量体5の水平移動時の騒音が少なく、かつ、風等
の小さな振動であっても有孔な振動抑制効果を得ること
ができる、といった利点もある。特に、本実施例では、
積層ゴム41、…を多段に積層して水平変位部4を構成し
ているので、質量体5をより大きく水平変位させること
が可能であり、従って、小形の装置でも大きな振動抑制
効果を得ることができる。また、振幅の大きな振動に対
しても振動抑制効果を得ることができることに加え、複
数の積層ゴムを備えることで水平変形部はより大重量の
慣性質量体を支持することが可能なので、巨大建築物や
高層建築物に採用されることで特に有効な振動抑制効果
を発揮することができる。
なお、以下に本発明者が行った本発明の振動抑制装置
の効果確認実験について、第5図ないし第6図を参照し
て説明する。
第5図は、有効質量比(振動抑制装置の質量体の重量
と建築物の有効重量との比)を0.01とした場合、建築物
の自由振動波形について、振動抑制装置がない場合とあ
る場合との計算値を比較したものである。この図からわ
かるように、本発明の振動抑制装置を取り付けることに
より、建築物の振動減衰性能が著しく向上し、建築物の
振動が抑制される。
また、第6図は、変位応答倍率(建築物の基礎に振幅
1.0なる正弦波が入力したときの建築物の応答変位振
幅)について、振動抑制装置がない場合とある場合との
計算値を比較したものである。この図から、本発明の振
動抑制装置(有効質量比0.01)を取り付けることによ
り、建築物の応答変位振幅が約1/5になることが理解で
きる。一般に、有効質量比を大きくする(振動抑制装置
の質量体を大きくする)ほど振動抑制効果は大きくなる
が、実際の建築物では質量体の大きさに限界があり、実
用的には有効質量比が0.020〜0.005の範囲で用いられ
る。
なお、本発明の構造物の振動抑制装置は、その細部が
前記実施例に限定されず、種々の変形例が可能である。
一例として、第7図に示すように、変形吸収部4を平面
視三角形状に形成し、積層ゴム42、42、…をその三角形
の頂点に位置するように配置したような構成であっても
よい。この場合、振動抑制装置1全体の平面寸法が前記
実施例より小形化できて好ましい。このように、振動抑
制装置1を構成する要素の形状等は任意であり、施工条
件等に応じて適宜変更可能である。
「発明の効果」 以上詳細に説明したように本発明によれば、構造物の
所定位置に配設され、多段積層ゴムにより構造物の固有
振動周期と同一の振動周期となるように下方から支持さ
れた慣性質量体と、この慣性質量体が所定量以上水平変
位した段階でその水平移動を抑制する制動装置とからな
る構造物の振動抑制装置を構成したので、従来の油圧式
静圧軸受支持による振動抑制装置に比較して、質量体周
辺の余分なスペースが不必要であるため省スペース化を
図れ、しかも油圧のようなメンテナンスが必要な要素を
含んでおらず、メンテナンスフリー、ローコストを図る
ことができる。これにより、ホテルや住宅といった、人
間が常時居住又は生活する一般の建築物にも十分に適用
可能となる。
また、複数の積層ゴムが板体を挟んで多層に積層され
て構成された水平変形部で慣性質量体を支持することで
慣性質量体の水平変位量が大きくなり、これによって振
幅の大きな振動に対しても振動抑制効果を得ることがで
きることに加え、複数の積層ゴムを備えることで水平変
形部はより大重量の慣性質量体を支持することが可能な
ので、巨大建築物や高層建築物に採用されることで特に
有効な振動抑制効果を発揮することができる。
しかも、大地震当の大外力が建築物に作用しても、慣
性質量体に設置されたエアシリンダからピストンと突出
させその先端に設けられた制動部材を構造物に圧接させ
ることで、慣性質量体のあらゆる方向への過大振幅を抑
制することができる。
また、環状の弾性体からなる緩衝体を取り付けておけ
ば、緩衝体が弾性バネ特性を備えているので、衝突の衝
撃を和らげる緩衝体としての機能に加え、質量体が当接
すると質量体を含めた振動系の固有周期を変化させ、そ
れによって質量体の応答変位を抑制する効果をも発揮す
ることができる。しかも緩衝体は環状であるので、質量
体が水平面内のいずれの方向に振動したとしてもその前
後に位置して緩衝機能を果たすことができる。したがっ
て、万一の場合にも緩衝体の存在により質量体が限界変
位以上の水平移動をすることがなく、前述した地震時の
安全対策が更に万全となる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第4図は、本発明の一実施例である構造物
の振動抑制装置を示す図であって、第1図は要部を切欠
した状態を示す平面図、第2図は同要部を切欠した状態
を示す正面図、第3図は建築物に設置された状態を示す
概略正面図、第4図は振動抑制装置の作用を示す図、第
5図は振動抑制装置がある場合とない場合との建築物の
自由振動波形を示す図、第6図は振動抑制装置がある場
合とない場合との建築物の変位応答倍率を示す図、第7
図はこの発明の振動抑制装置の他の実施例を示す平面図
である。 1……振動抑制装置、2……建築物(構造物)、4……
水平変位部、5……慣性質量体、6……制動装置、7…
…緩衝体。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の積層ゴムが板体を挟んで多層に積層
    されて構成された水平変形部と、構造物上の所定位置に
    設置された複数の水平変形部によって下方から支持され
    て構造物の固有振動周期と同一の振動周期を与えられた
    慣性質量体と、この慣性質量体が所定量以上水平変位し
    た段階で作動して慣性質量体の水平移動を抑制する制動
    装置とを備えてなり、該制動装置は、慣性質量体の周囲
    に複数設置され、慣性質量体が所定量以上水平変位した
    段階で作動するリミットスイッチと、リミットスイッチ
    の作動により慣性質量体の下部に設置されたエアシリン
    ダに圧搾空気を供給し、該エアシリンダから構造物の上
    面に対してピストンを垂直に突出させ、該ピストンの先
    端に設けられた制動部材を構造物に圧接させることによ
    って慣性質量体の制動を図るエアブレーキとを備えるこ
    とを特徴とする構造物の振動抑制装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の構造物の振動抑制装置にお
    いて、前記慣性質量体が水平面内の全方向に所定量以上
    水平変位した段階で該慣性質量体に当接する位置に、慣
    性質量体の周囲を取り囲む環状の弾性体からなる緩衝体
    が設置されていることを特徴とする構造物の振動抑制装
    置。
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