JP2703631B2 - 鉄芯の冷却方法 - Google Patents

鉄芯の冷却方法

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、パルス回路に使用される可飽和リアクト
ル、チョークコイル、変圧器などに使用される磁性薄帯
からなる鉄芯の温度上昇を抑制するための冷却方法に関
するものである。主な用途は、最近特に開発が急がれ
て、高繰り返し運転が要求されているエキシマレーザや
銅蒸気レーザそして自由電子レーザなどの電源部のパル
ス回路に用いられる。
従来の技術 上述の各種レーザに使用されるパルス電源のパルス幅
は、通常10-8〜10-5秒と言うきわめて時間幅の短い放電
が行われ、かつ出力容量を上げるために高繰り返し運転
が必要である。これらの回路に使われるパルス変圧器や
可飽和リアクトルの鉄芯には、種々の磁性材料の中で
も、鉄損の比較的少なくて、高周波特性の優れた珪素鋼
や、非晶質の磁性薄帯を多数回巻いた鉄芯が多く使われ
ている。これらを用いたパルス磁気圧縮回路の実施例を
第6図に示す。同図において、充電電源(図示せず)よ
りコンデンサ1を充電し、その電圧が最大値に達した付
近で、スイッチ2を閉じて、パルス変圧器4のリーケー
ジインダクタンスと回路に既成するインダクタンス3を
介して、パルス変圧器により所定の電圧まで昇圧して、
コンデンサ5を充電する。
コンデンサ5への充電時間T1は、主に前記コンデンサ
1、5とインダクタンス3とによって決まり、その間可
飽和リアクトル6は、チョークコイルとして働いて、高
いインピーダンス値を有していたが、最大値付近に達す
ると、磁気飽和をおこすように設計してあるため、イン
ピーダンスは急激に低下して、スイッチング作用をす
る。そのため、コンデンサ5の電荷は可飽和リアクトル
6を介してコンデンサ7に移送される。コンデンサ7へ
の充電時間T2は、主にコンデンサ5、7と可飽和リアク
トル6の飽和後のインダクタンスで決まり、その間可飽
和リアクトル8は、チョークコイルとして働いて高いイ
ンピーダンス値を有していたが、最大値付近に達すると
磁気飽和をおこすように設計してあるため、インピーダ
ンスは急激に低下して、スイッチングの作用をする。そ
のため、コンデンサ7の電荷は、可飽和リアクトル8を
介してレーザなどの発振部、すなわち負荷9に供給され
る。負荷9への充電時間T3は主にコンデンサ7と可飽和
リアクトルの飽和後のインダクタンスおよび負荷9が有
しているインピーダンスの値で決まる。ここでこのよう
に複数のスイッチングの作用をさせる理由は、充電時間
T1≫T2≫T3とパルス幅を段階的に圧縮して行き、所定の
パルス幅を得たいためである。すなわち、可飽和リアク
トル6、8は前段のコンデンサ5および7にそれそれ充
電される電圧と充電時間の積とに、みあった磁気容量を
持つものとするため、(インダクタンス3の値)≫(可
飽和リアクトル6の飽和後のインダクタンスの値)≫
(可飽和リアクトル8の飽和後のインダクタンスの値)
と段階的にインダクタンスの小さくしていくことにな
る。必要によっては、4〜5段の例も見られる。
さて、このようなパルス回路で使われるパルス変圧器
4や可飽和リアクトル6、8は充電時間、すなわち放電
周期が短いため、鉄芯の高周波領域における鉄損が大き
くて、発熱が高い。したがって、繰り返し運転するに
は、油、ガスなどの冷媒を用いて、冷却しながら使用し
ている。最も単純な従来例を第7図に示す。これは第6
図に示した1ターン巻きの可飽和リアクトル8の具体的
な構造例で、金属導体の円筒容器10と絶縁板11とが気密
に保持された容器内に複数に分割された鉄芯12が鉄芯保
持具13に保持されている。鉄芯保持具13は、端子14と絶
縁板11とにより図示しない方法で気密に保持されてい
る。
さて、電気的には鉄心保持具13を金属導体にするか、
又は絶縁物にした場合はこの中に金属導体を通して、端
子14と接続すれば、端子14と負荷9と円筒容器10とで構
成される回路は、鉄芯12に対し、1ターン巻きの可飽和
リアクトルとしての形状をなす。さて、こういった可飽
和リアクトルがパルス運転を繰り返すと、鉄芯12が鉄損
により温度上昇するために、注入口15より油やガスなど
の冷媒16を円筒容器10内に送り込み、注出口17より外へ
循環して熱変換するサイクルを繰り返して鉄芯を冷却し
ていた。
発明が解決しようとする問題点 前述の通り、従来の冷却方法を用いた鉄芯を繰り返し
運転の多いパルス回路、例えば1秒間に千回もの運転を
行う回路に用いた場合、その鉄芯はやむおえぬ事である
が、鉄損により異常に高い温度上昇を示し、そのために
鉄芯の磁気特性を悪くし、時には鉄芯の磁気特性を局部
的に大きく劣化させて冷却後も、初期特性にもどらない
などの問題があった。特に鉄芯の材質が非晶質磁性薄帯
である場合にその劣化現象は顕著である。
第6図に示した従来方式による鉄芯の冷却方法では、
いくら鉄芯の外円周面を積極的に冷却しても、その巻鉄
芯は例えば20μmの磁性薄帯が数百回から数千回をも各
層間が絶縁され巻上げられているため、外円周面への熱
伝導は悪く、かつ熱伝導の良い巻鉄芯の幅方向の端面
は、複数個の鉄芯により分割して、構成されているた
め、その間に存在する熱せられた冷媒はよどみ流れず、
内・外の熱勾配を大きくして放熱効果に乏しかった。
問題点を解決するための手段 本発明は、鉄芯すなわち磁性薄帯を巻き上げた巻鉄芯
又は絶縁耐圧を考慮して各層間に絶縁テープを入れた
り、磁性薄帯に絶縁コーティングを施して巻き上げた巻
鉄芯の放熱効果の良い幅方向、すなわち端面を冷媒によ
る流れを作って、積極的に冷却する事により、温度上昇
を抑制し、異常な磁気特性の発生を防止しようとするも
のである。
すなわち、 磁性薄帯を巻き回してなる鉄芯を複数個に分割して所
定の間隔を設けて鉄芯保持具または鉄芯保持具片に保持
し、上記鉄芯保持具または鉄芯保持具片に設けた複数個
の冷媒通過口により冷媒を通過させて、鉄芯の幅方向の
端面を冷却する事を特徴とする鉄芯の冷却方法。
鉄芯が非晶質磁性薄帯である事を特徴とする上記項
記載の鉄芯の冷却方法である。
作用 上述の鉄芯保持具または鉄芯保持具片に設けた冷媒通
過口より冷媒を通過させ、複数個に分割した鉄芯の幅方
向の端面を冷却するので、鉄芯の温度上昇を抑制し、パ
ルス幅の短いかつ高繰り返し放電が可能となる。
実施例 第1図に前述した第7図に相当する可飽和リアクトル
の一実施例を示す。
同一機能については、同一記号を付してあるため、そ
の説明を省略する。鉄芯保持具13aは中に空間を設けた
形状をなし、パイプや板等を使って製作して、この上に
複数の鉄芯12をそれぞれ必要な所定の間隙を開けて、図
示しない方法で保持する。そして、鉄芯保持具13aの外
周上に任意の形状の孔またはスリットを必要個数開け
て、その鉄芯の所定の間隙を冷媒16が通過出来るように
冷媒通過口18を設ける。また鉄芯保持具13aには冷媒16
の注入口15aを設ける。
さて、このようにして構成された可飽和リアクトルの
鉄芯12は次のようにして冷却される。冷媒16は図示しな
い外部の冷媒循環系が注入口15aに接続され、鉄芯保持
具13aの中に圧入される。そして鉄芯保持具13aの外周上
に設けられた冷媒通過口18を通って、鉄芯12の端面を矢
印の方向へ熱を奪いながら放射状に通過して、注出口17
へと放出され、図示しない熱変換器とポンプとにより構
成される冷媒循環系により冷媒16の温度が下げられて、
更に注入口15aへと循環させる。
なお、冷媒16の循環経路は前述と全く逆に注出口17よ
り注入し、注入口15aより注出しても同様の効果があ
る。
鉄芯12の温度上昇を効果的に熱放散させるためには、
巻鉄芯の端面より熱を奪う冷却方法が最も良く、本発明
によれば、冷媒16が鉄芯保持具13aより、いずれの鉄芯1
2に対しても、各巻鉄芯の間隙を放射状に通過しながら
熱を奪って行くため、これは理想的な冷却方法と言え
る。
第2図に、可飽和リアクトルの他の実施例を示す。
第1図と同一機能のものについては同一記号を付して
あるため、その説明を省略する。第2図は鉄芯12を保持
する鉄芯保持具13bと電気を通す金属導体19とに、それ
ぞれの機能毎に部品を分離したもので、絶縁板11と鉄芯
保持具13bと端子14と金属導体19とが図示しない方法で
気密に保持されている。
金属導体19には、鉄芯保持具13bとの間に設けた空間
に通じる孔をあけて、その端部に注入口15aを設けてい
る。冷媒16は、注入口15aより金属導体19の中を通過し
て鉄芯保持具13bとの間に設けた空間に達し、冷媒通過
口18より鉄芯12の端面へ放出され以後は、第1図と同一
作用になる。
第3図に他の実施例を示す。この場合は、鉄芯12の外
周面を鉄芯保持具20で保持した例である。
この保持具にも冷媒通過口18が設けられている。
そして数ターンを鉄芯12に巻きつける事が必要な可飽
和リアクトルや、変圧器として構成する場合に比較的扱
い易い。電極21と絶縁板11と端子14とが図示しない方法
で気密に保持されている。電極21と鉄芯12に数ターン巻
いたコイル23の一端とが電気的に接続され、他端は電極
22とが同様接続されて、可飽和リアクトルを形成してい
る。
コイル23が鉄心保持具20を通過する部分には、孔また
はスリットを設け、この中を通した後の隙間は冷媒通過
口18の孔に比べて充分小さな面積であれば特にその隙間
をうめる必要はない。冷媒16は電極21に設けられた注入
口15bと、その孔の中を通過して注入される。その後、
各鉄芯12の所定の間隙を放射状に巻鉄芯を冷却しながら
冷媒通過口18を通って、円筒容器10と鉄心保持具20との
間の空間にぬけ、注出口17を通って排出される。効果
は、第1図と同様である。また冷媒16の循環方向を逆に
しても、同一効果が得られる。
以上の通り、本発明によれば比較的単純な方法で効果
的成果を得る事が出来る。
さて、鉄芯保持具に設けた冷媒通過口18の位置と形状
について、その実施例を第4図に示す。(a)は冷媒通
過口18の位置を効果的に分割された鉄芯12の所定の間隙
部のみに設けた例である。また、(b)は任意の位置に
設けた場合で、鉄芯12により冷媒通過口18の一部がふさ
がれても良いように、ランダムな位置に多くの孔を設け
たものである。(c)は(b)と同様、鉄芯12により一
部の冷媒通過口18がふさがれても良いようにスリット
(長孔)を形成した例である。即ち、冷媒通過口18は、
円でも長孔でも菱形でも任意の形状で良く、その大きさ
と数量は放熱に必要な流量と、鉄芯保持具の機械的強度
を加味して決定する。
さて、前述の内容を応用すると種々の構造が考えられ
るが、鉄芯保持具を分割して設けた他の実施例を第5図
に示す。鉄芯が重い事や各鉄芯間に設ける所定の間隙を
確実に保持する事など考えると、この方法は有益であ
る。
(a)図は第2図の実施例を(b)図は第3図の実施
例をそのまま応用したもので、鉄芯保持具のみを分割り
して鉄芯保持具片23または24を用いたものである。鉄芯
12と鉄芯保持具片23また24とは交互にカセット式に挿入
して固定されるもので、その接触面の気密性は、それ程
重要でない。
冷媒16による鉄芯12の冷却方法とその効果は第2図、
第3図と同一であるので説明を省略する。第5図(c)
または(d)は、第5図(a)または(b)の各々鉄芯
保持具片23または24の具体的構造例である。いずれも所
定の間隙部より冷媒16を通過させるための冷媒通過口18
を有し、鉄芯12をはさみ込むための段差をもうけてい
る。冷媒通過口18の形状は前述の如く、丸、スリットな
ど冷媒を必要量通し得るならば任意の形状で良い。従っ
て、鉄芯12と鉄芯保持具片23または24との接触面に部分
的隙間を設けてもよい。
なお、本発明に於ける鉄芯12は簡単な例として、円筒
状巻鉄芯で示したが、その他の形状としてレーストラッ
ク形や角形の巻鉄芯についても同様な効果がある。この
場合には、円筒容器10や鉄芯保持具もおのずから箱形形
状とするなどの工夫が必要となる。
第5図(g)は第5図(e)と(f)の鉄芯保持具片
25と26が交互に嵌合して冷媒通過口18を合わせて構成さ
れたもので、上述の同様な効果がある。第5図(e)お
よび(f)の冷媒通過口18は穴の代わりに切欠きにして
もよい。そして冷媒通過口18と別の位置に同様な貫通孔
を設けてボルト締めすれば複数個の鉄芯保持具片25、26
が一体に形成することもできる。また、磁性薄帯の材質
についてはパルス幅が10-8〜10-5秒、繰り返し運転頻度
が多い時で、104pps、電圧は数百kV以下程度のパルス回
路に挿入される可飽和リアクトルやパルス変圧器などに
使用されるため、その材質は高周波特性に優れている
事、そして鉄損の小さい事が必要である。今日までは主
に珪素鋼板の磁性薄帯で50μm程度の厚みのものが使わ
れて来たが鉄損が大きく、充分な繰り返し運転ができな
かった。しかし極く最近では、さらに高周波特性が優れ
た損失の小さい20μm程度の厚さを有する鉄系、コバル
ト系の非晶質磁性薄帯が開発されている。
中でも、コバルト系は、鉄系非晶質磁性薄帯に比べ、
はるかに鉄損は小さく、さらに他の磁性体に比べて飽和
特性も優れている事から可飽和リアクトルとしては理想
的な材料であり、従来のパルス回路の繰り返し運転頻度
に比べて1桁以上も向上したものの、これ以上の高繰り
返し運転は、やはり鉄損による発熱のため、限界を生じ
ていた。本考案による鉄芯の冷却方法を採用すれば、鉄
芯を有効に効率的に冷し、温度上昇をおさえ、さらに高
繰り返し運転が可能となった。
発明の効果 本発明によれば、鉄芯の鉄損により生じる温度上昇、
すなわち磁性薄帯を巻き上げた巻鉄芯の端面に、冷媒を
流す事によって従来の鉄損によって生じていた異常発熱
を効果的におさえ、熱を奪い、適正な温度上昇値とする
事が可能になった。特に繰り返し運転の厳しい環境で使
用される場合は、冷媒通過経路を太したり、冷媒の圧力
を上げたりして冷媒の流量を増すなどの調整をする事が
可能である。また、より厳しい運転モード例えば、数千
回/秒で使う場合は、鉄芯の幅を狭くして、鉄芯の分割
数を増し、放熱面積を増す工夫をする事によってより効
果を得る事ができた。本発明によるある実施例では従来
の冷却方式に比べ、10倍以上の高繰り返し運転が可能に
なった事、合わせて磁性特性の劣化は見られず、安定な
再現性が得られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る鉄芯−実施例の説明図、第2
図、第3図および第5図は本発明に係る鉄芯の他の実施
例の説明図、第4図(a)、(b)、(c)は本発明に
係る鉄芯保持具の各々異なる実施例の要部斜視図、第5
図(b)および(g)は、本発明に係る鉄芯のその他の
実施例の要部説明図、第5図(c)、(d)、(e)、
(f)は本発明に係る鉄芯保持具片の各々異なる実施例
の斜視図、第6図は本発明に係る鉄芯の応用パルス回路
例、第7図は従来の鉄芯の説明図である。 12:鉄芯、13、13a、13b、20:鉄芯保持具 16:冷媒、18:冷媒通過口 23、24、25、26:鉄芯保持具片

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁性薄帯を巻き回してなる鉄芯を複数個に
    分割して所定の間隔を設けて、鉄芯保持具または鉄芯保
    持具片に保持し、上記鉄芯保持具または鉄芯保持具片に
    設けた複数個の冷媒通過口より冷媒を通過させて鉄芯の
    幅方向の端面を冷却することを特徴とする鉄芯の冷却方
    法。
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