JP2702994B2 - 熱収縮性多層ポリウレタンフィルム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、各種物品の収縮用包材として極めて好適な
突刺、衝撃などの強度と緊縛性に優れた熱収縮性多層ポ
リウレタンフィルムに関する。

〔従来の技術〕

従来より、収縮包装用フィルムとしては、ポリ塩化ビ
ニル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系などの熱収
縮性フィルムが知られ、それぞれの特徴を活した分野で
広く利用されている。

しかしながら、これらのうちポリ塩化ビニル系熱収縮
フィルムは、低温収縮性に優れる反面、熱シールの際に
塩素ガスが発生したり、あるいは可塑剤等の移行による
衛生上の問題に加えて、引張、引裂、突刺、衝撃などの
機械的強度並びに緊縛性等に乏しいといった数多くの欠
点を有している。一方、ポリプロピレン系及びポリエチ
レン系熱収縮フィルムは、コストが安く汎用されている
ものの、収縮温度が比較的高く、しかもこの場合も突
刺、衝撃などの強度並びに緊縛性等に問題を有するな
ど、これら既存の収縮包装用フィルムは、そのいずれを
とってみても突刺、衝撃などに対する抵抗性と緊縛性等
の点で決して満足できるものではなかったのである。

〔発明が解決しようとする課題〕

本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、そ
の目的とするところは突刺、衝撃などの外力に対して優
れた抵抗性を有すると共に、経時による緊縛性の低下が
少い、収縮用包材として好適な熱収縮性多層ポリウレタ
ンフィルムを提供する点にある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明者等は、前記目的を達成するために、シール強
度が強く、しかも柔軟性、弾力性、及び応力緩和等に独
特の優れた性質を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂（以
下、ポリウレタン樹脂と称す）に着目し、該ポリウレタ
ン樹脂ベースの熱収縮性フィルムについて鋭意検討の結
果、特定硬度のポリウレタン樹脂を多層構造となしたフ
ィルムが、熱収縮性に優れ、しかも従来のこの種の熱収
縮性フィルムには見られなかった優れた突刺、衝撃など
の強度と緊縛性等を兼備し得ることを見い出し、本発明
を完成させた。

即ち、本発明は、相隣接する層が熱可塑性ポリウレタ
ン樹脂で構成されてなる多層フィルムにおいて、該熱可
塑性ポリウレタン樹脂の硬度がJIS硬度で50乃至95Hsで
あり、且つ多層フィルムの120℃グリセリン浴中におけ
る熱収縮率が長さ及び幅方向の少なくとも何れか一方に
20％以上であることを特徴とする熱収縮性多層ポリウレ
タンフィルムに係るものである。

以下、本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィルムに
ついて詳しく説明する。

本発明において、ポリウレタン樹脂とは二官能性ポリ
オールとジイソシアネート及びグリコールを主原料とし
てなる分子構造中にウレタン基を含有するゴム状弾性高
分子のうち、熱可塑性を有するものを総称し、具体的に
は使用される前記ポリオール等の原料の種類によって区
別されるところのアジペートエステル系、ポリエーテル
系、カプロラクトンエステル系、ポリ炭酸エステル系等
のポリウレタン樹脂の一種又は二種以上からなるもので
あって、且つその硬度がJIS硬度で50乃至95Hs、好まし
くは60乃至90Hsのものである。

ポリウレタン樹脂の硬度が50Hs未満の場合は、強度が
弱くなるために突刺、衝撃などの強度が弱くなるのに対
し、硬度が95Hsより高くなると、柔軟性と弾力性の低下
が著しくなって緊縛性が悪化するなど、ポリウレタン樹
脂の硬度が前記範囲から逸脱すると、本発明の目的とす
るような熱収縮性フィルムが得られない。

本発明の熱収縮性フィルムは、かかるポリウレタン樹
脂の突刺、衝撃などの強度と緊縛性等に関する特性を、
熱収縮性を低下させることなく更に優れたものにするた
めに、ポリウレタン樹脂よりなる層を少なくとも二層以
上組合せて、多層構造となした点に極めて重要な意義が
ある。

すなわち、本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィル
ムにおいて、ポリウレタン樹脂を多層構造となすことに
よって奏し得られる効果は、まず第１に、ポリウレタン
樹脂の如き熱可塑性樹脂においては、押出しの際にダイ
リップを小さくして薄肉化するほど分子の方向性が二次
元化され、延伸過程での分子配向が進みやすくなるため
に、かかる薄肉層の組合せによって構成される多層フィ
ルムは、同一厚さの単層フィルムに比べて、低い延伸倍
率で高い熱収縮性が得られるという、熱収縮性フィルム
にとってとりわけ優れた効果が発揮されるのである。ま
た第２の効果は、本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフ
ィルムが、上記の如く比較的低い延伸倍率によって得ら
れるために、延伸後においてもなお優れた柔軟性と弾力
性が保持されるという利点から、突刺、衝撃などの強度
が強く、しかも優れた緊縛性を有するという、多層フィ
ルム特有の数々の特性が具備される点にある。

ここで、本発明の熱収縮性多層フィルムを構成するポ
リウレタン樹脂としては、基本的に各層が共に同一のも
のか、あるいは種類、硬度等の異なるものであってもよ
く、ポリウレタン樹脂であればいかなる組合せのものも
含有するが、中でも本願請求項２及び３に記載の如く、
何れか一方の面にポリエーテル系のポリウレタン樹脂を
配したり、あるいは結晶融解熱0.1乃至3.0cal/gの結晶
性ポリウレタン樹脂を配することによって、前者の場合
は耐水性、耐湿性、耐カビ性等を、また後者の場合は粘
着性、耐薬品性、耐熱性等をそれぞれ改善したものが得
られる。

また、本発明の多層フィルムを構成するポリウレタン
樹脂には、その性質を大きく変化させない範囲内で、他
の例えばポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹
脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル
系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂等
の樹脂、あるいは紫外線吸収剤、酸化防止剤、防カビ
剤、難燃剤、黄変防止剤、粘着防止剤、着色剤、滑剤等
の各種添加剤、フィラーを添加することによって、耐久
性、取扱い性、意匠性等を向上させることができる。

本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィルムはまた、
該フィルムの120℃グリセリン浴中での熱収縮率が、長
さ及び幅方向の少なくともいずれか一方に20％以上、好
ましくは30％以上である。

本発明において、多層フィルムの熱収縮率を120℃グ
リセリン浴中での値として表した理由は、収縮包装の際
に通常よく用いられる熱風あるいはスチーム等の熱媒に
比べて、グリセリン浴中の方がフィルムへの熱伝導が均
一で熱収縮率を正しく定量評価できるためであり、かか
る方法で測定した熱収縮率が長さ及び幅方向の両方向と
も20％未満の場合は、収縮不足となって包装後の仕上り
外観が悪くなると共に、優れた緊縛性が得られなくな
る。

尚、本発明においてかかる熱収縮性多層ポリウレタン
フィルムを製造する方法としては、共押出し延伸法が最
も一般的であるが、そのほか個々に製膜延伸した薄肉の
フィルムをドライラミネート等の方法で多層構造となし
たものでもよい。また本発明の熱収縮性多層ポリウレタ
ンフィルムの厚さは、その用途に応じて異なるため、一
概に限定できないが、フィルム強度、緊縛性、経済性、
更には内包される物品へのフィット感等を考慮した場
合、通常10乃至200μのものが好適である。

〔実施例〕

以下、本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィルムに
ついて、実施例により更に詳しく説明する。

尚、本発明において行った物性の測定法及び評価方法
は次の如くである。

（１） 熱収縮率 試料フィルムを120℃グリセリン浴中に10秒間浸漬
し、その間の熱収縮率を測定した。

（２） 突刺強度 直径75φの円筒状リングの断面に、試料フィルムを覆
せて固定した後、該円形フィルム面の中心に先端角53度
の円錐ヘッドを200mm/minの速度で突刺し、フィルムに
穴が開くまでの最大荷重（単位:g）を突刺強度とした。

（３） 衝撃強度 振子式衝撃試験機（東洋精機製作所製フィルムインパ
クトテスター）を用い、フルスケール30kg−cm、衝撃ヘ
ッド1/2インチの条件で衝撃強度（単位:kg−cm）を測定
した。

（４） 収縮包装後の外観 収縮トンネル装置を用いて、試料フィルムが二軸収縮
性の場合（実施例１〜10、比較例１〜６）は三方シール
包装によって、また試料フィルムが一軸収縮性の場合
（実施例11〜13、比較例７）はスリーブシール包装によ
って、それぞれスプレー缶を収縮包装した。包装後の状
態を目視で評価し、外観が良好であったものを（○）、
収縮むらが認められたものを（×）とした。

（５） 緊縛性 上記収縮包装したスプレー缶を40℃雰囲気中に１ヵ月
間放置した時、フィルムの緩みがなく優れた緊縛性が持
続されたものを（○）、１ヵ月以内にフィルムに緩みが
生じたものを（×）とした。

（６） 総合評価 突刺強度、衝撃強度、収縮包装後の外観、及び緊縛性
などの結果をもとに総合評価したもので、収縮包装用フ
ィルムとして好適なものを（○）、不適当なものを
（×）とした。

実施例１〜５、比較例１〜４ 口径50φの三層押出機を用い、各押出機には硬度の種
々異なるアジペートエステル系のポリウレタン樹脂原料
をそれぞれ供給して溶融混練し、同一口金に通ずる三層
環状ダイスから押出した後、長さ及び幅方向に1.9乃至
2.2倍の割合でチューブラー延伸することによって熱収
縮率が長さ及び幅方向にいずれも50乃至60％で、各ポリ
ウレタン樹脂層の厚みが15μ（全厚さは45μ）の三層構
造よりなる熱収縮性多層ポリウレタンフィルムを作成し
た。これら多層フィルムについて、突刺、衝撃などの強
度と緊縛性を評価した結果を第１表に示した。同表よ
り、ポリウレタン樹脂の硬度が本発明の範囲にあるもの
は強度が強く、緊縛性に優れるなど、熱収縮性フィルム
として好適で、更にこれらの性質は参考例として示した
市販のポリ塩化ビニル製熱収縮フィルム（参考例１）及
びポリプロピレン製熱収縮フィルム（参考例２）に比べ
て、はるかに優れるものであることが確認された。

実施例６〜８、比較例５ 長さ及び幅方向の延伸倍率を変化させる以外は、上記
実施例３と同様の方法によって熱収縮率の種々異なる熱
収縮性多層ポリウレタンフィルムを作成した。

これら多層ポリウレタンフィルムについて突刺強度、
衝撃強度、収縮包装後の外観、緊縛性等を評価した結果
を第２表に示したが、同表より熱収縮率が本発明の範囲
にあるものは強度が強く、収縮包装後の外観及び緊縛性
等に優れることが確認された。

比較例６ 口径60φの押出機に硬度80Hsのアジペートエステル系
ポリウレタン樹脂原料を供給して環状ダイスから押出し
た後、長さ及び幅方向に2.5乃至2.7倍の割合でチューブ
ラー延伸する以外は実施例３と同様の方法によって、熱
収縮率が長さ及び幅方向に50乃至60％で、厚さ45μの熱
収縮性単層ポリウレタンフィルムを作成した。

この熱収縮性単層ポリウレタンフィルムは、収縮包装
後の外観と緊縛性に優れるが、下記の如く突刺、衝撃な
どの強度は前記実施例３に示した本発明の熱収縮性多層
ポリウレタンフィルムに比べて劣っていることから、ポ
リウレタン樹脂の種類と厚さ及び熱収縮率等を同一とし
て比較すると、多層フィルムの方が単層フィルムより優
れていることが確認された。

実施例９ 内層及び外層のアジペートエステル系ポリウレタン樹
脂原料の代りに、硬度80Hsのポリエーテル系ポリウレタ
ン樹脂原料を用いる以外は、実施例３と同様の方法によ
って、熱収縮率が長さ及び幅方向にいずれも50乃至60％
の三層構造よりなる熱収縮性多層ポリウレタンフィルム
を作成した。

この熱収縮性多層ポリウレタンフィルムは、突刺強度
1600g、衝撃強度17kg−cmと強度が強く、しかも緊縛性
に優れることが確認されたほか、更に該多層フィルムを
80℃温水中に浸漬して経時による強度変化を測定した結
果、浸漬１ヵ月後の強度保持率が約80％（実施例３の多
層フィルムでは強度保持率が40％に低下）と耐水性にも
優れていることが判った。

実施例10 内層のアジペートエステル系ポリウレタン樹脂原料の
代わりに、硬度85Hsで結晶融解熱1.5cal/gの結晶性ポリ
ウレタン樹脂原料を用いる以外は実施例３と同様の方法
によって、熱収縮率が長さ及び幅方向にいずれも45乃至
55％の三層構造よりなる熱収縮性多層ポリウレタンフィ
ルムを作成した。

この熱収縮性多層ポリウレタンフィルムは、突刺強度
1500g、衝撃強度15Kg−cmと強度が強く、しかも緊縛性
に優れるほか、更にフィルム同士の粘着性が少く、フィ
ルムの取扱い性及び収縮包装適性等にも優れることが確
認された。

実施例11〜13、比較例７ 口径50φの二層押出機を用い、外層を構成する第１の
押出機には硬度90Hsのカプロラクトンエステル系ポリウ
レタン樹脂原料を、また内層を構成する第２の押出機に
は硬度85Hsのアジペートエステル系ポリウレタン樹脂原
料をそれぞれ供給して溶融混練し、同一口金を有する二
層式Ｔダイから押出した。引続きこの多層フィルムをロ
ール延伸機を用いて、100℃の温度で長さ方向に種々の
倍率で一軸延伸することによって、外層10μ、内層40μ
（全厚さ50μ）の熱収縮性多層ポリウレタンフィルムを
作成した。

これら熱収縮性多層ポリウレタンフィルムについて、
突刺強度、衝撃強度、収縮包装後の外観、及び緊縛性等
を評価した結果を第３表に示した。同表より、多層ポリ
ウレタンフィルムの熱収縮率が本発明の範囲にあるもの
は、強度が強く、緊縛性に優れ、しかも収縮包装後の外
観が良好であるなど、熱収縮率フィルムとして好適であ
ることが確認された。

〔発明の効果〕 本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィルムは、以上
の如く特定硬度のポリウレタン樹脂で多層フィルムを構
成したものであるため、熱収縮性に優れるばかりか、該
ポリウレタン樹脂特有の柔軟性と弾力性によって、これ
までの熱収縮性フィルムでは到底持ち合わせることがで
きなかった極めてソフトな手触り感と、優れた突刺、衝
撃などの強度を有するものである。

また、本発明の熱収縮性多層ポリウレタンフィルム
は、ポリウレタン樹脂の優れた応力緩和現象によって経
時による緊縛性の持続効果が長期にわたって発揮される
という特筆すべき性質を有するほか、使用するポリウレ
タン樹脂の種類を適宜変えることにより耐水性、粘着
性、耐薬品性、耐熱性、収縮包装適性等の諸性質を更に
向上させることができるなど数々の特徴を兼備するた
め、収縮用包材あるいは一般産業用資材等として、極め
て利用価値の高いものである。

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】相隣接する層が熱可塑性ポリウレタン樹脂
   で構成されてなる多層フィルムにおいて、該熱可塑性ポ
   リウレタン樹脂の硬度がJIS硬度で50乃至95Hsであり、
   且つ多層フィルムの120℃グリセリン浴中における熱収
   縮率が長さ及び幅方向の少なくともいずれか一方に20％
   以上であることを特徴とする熱収縮性多層ポリウレタン
   フィルム。
2. 【請求項２】請求項１記載の多層フィルムにおいて、少
   なくとも一方の面がポリエーテル系の熱可塑性ポリウレ
   タン樹脂で構成されていることを特徴とする熱収縮性多
   層ポリウレタンフィルム。
3. 【請求項３】請求項１記載の多層フィルムにおいて、少
   なくとも一方の面が0.1乃至3.0cal/gの結晶融解熱を有
   する熱可塑性ポリウレタン樹脂で構成されていることを
   特徴とする熱収縮性多層ポリウレタンフィルム。