JP2699957B2 - パルス管冷凍機 - Google Patents

パルス管冷凍機

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JP2699957B2 JP7285360A JP28536095A JP2699957B2 JP 2699957 B2 JP2699957 B2 JP 2699957B2 JP 7285360 A JP7285360 A JP 7285360A JP 28536095 A JP28536095 A JP 28536095A JP 2699957 B2 JP2699957 B2 JP 2699957B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルス管冷凍機に
関するもので、超伝導素子、赤外線素子等の冷却に用い
て有効である。
【0002】
【従来の技術】パルス管冷凍機は、例えば、特開平5−
106926号公報に記載のように、メッシュ状のステ
ンレスやブロンズ、無数の小球等からなる熱容量の大き
い蓄冷器と、この蓄冷器の端部に形成される冷却部と、
この冷却部に接続したパルス管と、蓄冷器、冷却部およ
びパルス管内に充填された作動流体(具体的には、ヘリ
ウム、アルゴン、窒素等)に流体変位を与えるピストン
型の圧縮機とから構成されている。そして、前記圧縮機
によって作動流体に流体変位を与えることにより前記冷
却部で低温を生成するものである。
【0003】上述のように、パルス管冷凍機は機器構成
が単純であり、かつ、冷却部での機械的振動がないの
で、信頼性が高く長時間霧保守運転が可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、パルス管冷凍
機の作動(冷却)原理は、現在、未だ完全には解明され
ておらず、パルス管冷凍機の設計にあたっては、未だ試
行錯誤的要素が大きいというのが現実である。そこで、
発明者等は種々の試験検討を行い、パルス管冷凍機の作
動原理について考察した。以下にその考察に基づいてパ
ルス管冷凍機の作動原理について説明を試みる。
【0005】パルス管冷凍機では、低温部から高温部へ
の熱の移送の大部分に蓄冷器が関与しており、その移送
方法は、スポンジ(作動流体に相等)でバケツAの水
(熱に相当)をバケツBに移送するようなものである。
すなわち、スポンジで水を運ぶ場合には、先ずスポンジ
を圧縮し、その状態でバケツAの水の中に浸す。そし
て、水の中でスポンジを膨張させてスポンジに水を吸収
させる。次に、その水を吸収したスポンジをバケツBま
で運び、そこで再度圧縮する。このようにしてバケツA
の水をバケツBまで移送するものである。次に、実際の
パルス管冷凍機に則して作動原理を説明する。
【0006】先ず、この熱移送の作動を説明するにあた
って、次の用語を定義するとともに、以下の2つの仮定
を行う。 A)定在波:パルス管冷凍機内の流体変位のうち、圧力
と同位相成分の流体変位(圧縮膨張に関与する流体変
位)をいう。 B)進行波:パルス管冷凍機内の流体変位のうち、圧縮
膨張に関与しない流体変位をいう。 a)蓄冷器内での流体の圧縮は等温圧縮であり、圧縮の
際に発生する熱は全て蓄冷器に吸収される。 b)蓄冷器内での作動流体の膨張は等温膨張であり、作
動流体は膨張の際に蓄冷器より熱を吸収する。
【0007】なお、以下のパルス管冷凍機の作動原理の
考察においては、蓄冷器内作動流体の微小部分の変位と
は、定在波による変位および進行波による変位の両者を
含む意味である。また、本考察では、説明を容易にする
ために、作動流体の変位は蓄冷器の軸方向変位(1次元
モデル)のみを考慮し、蓄冷器の熱容量は十分大きく、
作動流体との間で熱の授受による温度変化は無視するこ
とができ、かつ、蓄冷器の温度分布は均一であると考え
る。
【0008】図2、3は蓄冷器内作動流体の微小部分に
着目して、圧縮膨張を1周期とした場合の圧力と変位と
の関係を示したグラフで、横軸は変位を示し、縦軸は圧
力を示している。図2は、蓄冷器内作動流体の微小部分
のうち定在波の節(変位が0の点)における微小部分に
ついて、進行波が存在しない場合の変位と圧力との関係
を示している。図1より、微小部分は、時間の進行とと
もに圧縮されて圧力が上昇するが、先の仮定aより等温
圧縮するので、圧縮の際に発生する熱は全て蓄冷器に吸
収される(図2のO点からA点に向かう変化)。
【0009】そして、さらに時間が進むと膨張過程に移
行して圧力が減少するが、先の仮定bより微小部分は等
温膨張するので、膨張にともなって作動流体は蓄冷器よ
り熱を吸収する(図2のA点からB点に向かう変化)。
さらに時間が進と再び圧縮過程に移行して等温圧縮する
(図2のB点からO点に向かう変化)。したがって、進
行波が存在しない場合は、変位0の状態で作動流体と蓄
冷器との間で熱の授受が行われるのみであるので、熱の
移送が行われない。
【0010】因みに、定在波の節近傍の微小部分におい
ては、その微小部分の定在波の変位とともに圧力が変化
するので、図3に示すように、変位と圧力とが線形的に
変化する。つまり、上述の如く、O点からA点に時間が
進むに連れて等温圧縮が進み、A点からB点に時間が進
むに連れて等温膨張が進む。さらに、B点からO点に時
間がさらに進むに連れて再び等温圧縮する。
【0011】以上の考察より明らかなように、圧力と変
位との変化を示す軌跡が直線状の場合は、熱の移送(熱
移動)が行われない。次に、定在波とともに進行波が混
在する場合について考察する。なお、考察を容易にする
ために圧力振幅の変動をsin波と仮定し、進行波をc
os波と仮定した。
【0012】定在波の節における圧力と変位との変化を
示す軌跡は、圧力振幅の変動と進行波による変位と合成
すればよく、具体的には図4に示すように円軌道を描
く。すなわち、A点からB点に時間が進むに連れて変位
とともに等温圧縮が進むので、その際に発生する熱は全
て蓄冷器に吸収される。そして、B点より膨張過程に移
行し、C点、D点と時間が進に連れて変位とともに等温
膨張が進むので、作動流体は蓄冷器より熱を吸収する。
さらに、時間が進むと圧縮過程に移行し、再び等温圧縮
する。なお、図4では、圧力振幅は−sinとした。
【0013】因みに、定在波の節近傍の微小部分におい
ては、その微小部分の定在波の変位とともに圧力が変化
するので、図5に示すように、変位と圧力との軌跡は楕
円状になる。つまり、A点からB点に時間が進むに連れ
て等温圧縮が進み、B点からC点、D点に時間が進むに
連れて等温膨張が進む。さらに、D点からA点に時間が
さらに進むに連れて再び等温圧縮する。
【0014】したがって、進行波が存在する場合には、
膨張過程で蓄冷器より吸収した熱が放熱される圧縮過程
の変位(位置)と、膨張過程で蓄冷器より熱を吸収した
変位(位置)とが違うので、熱は膨張過程の変位(位
置)から圧縮過程の変位(位置)に移動したことにな
る。なお、具体的に熱移動を図4に準じて言えば、熱は
右から左に移動したことになる。
【0015】そして、上記作動は蓄冷器内全域で行われ
ているので、熱は蓄冷器内全域にわたって同方向に次々
に移動することとなり、熱移動の起点(熱移動元)で
は、熱が放熱移動のみとなるので、熱移動元、すなわち
蓄冷器で言えば蓄冷器端部が冷却されていく。次に、上
述の作動原理を踏まえて、パルス管冷凍機の冷凍能力の
向上について考える。
【0016】パルス管冷凍機の冷凍能力の向上とは、上
述のスポンジと水との例で言えば、水の移送能力の向上
となる。したがって、水の移送能力の向上を向上させる
には以下の手段が考えられる。すなわち、一回当たりの
水の移送量を増やせばよく、具体的には、スポンジに吸
収される水の量を増やせばよい。このためには、スポン
ジを水に対して静止した状態で膨張させればよい。
【0017】また、移送した水と移送していない水とが
混合しないように、スポンジを膨張(水を吸収)させる
場所と圧縮(水を放出)させる場所を完全に分離する。
以上のスポンジと水の例をパルス管冷凍機に則して言え
ば次のようになる。すなわち、作動流体が膨張圧縮する
際に蓄冷器との間で、できるだけ多くの熱を授受するこ
とができるように、換言すれば、蓄冷器と作動流体とが
同一部分でできるだけ長時間接触し続けるように作動流
体の流速を小さくする。
【0018】また、同一位置で蓄冷器と作動流体との間
ので熱が授受されないように、作動流体が圧縮される位
置と膨張される位置とを明確に分離する必要がある。本
発明は、上記のパルス管冷凍機に関する考察に基づい
て、パルス管冷凍機の冷凍能力の向上を図ることを目的
とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1に
記載の発明では、蓄冷器(2)内の作動流体に圧力およ
び変位を与える流体駆動装置(1、4、5、6、7、
8)は、蓄冷器(2)内の作動流体が変位しないで膨張
圧縮する状態と、蓄冷器(2)内の動流体が膨張圧縮し
ないで作動流体が変位する状態との2つの状態を設定す
ることを特徴とする。
【0020】なお、ここで変位とは、上述の進行波の変
位を示しており、以後、進行波の変位を単に変位と呼
ぶ。請求項2に記載の発明では、蓄冷器(2)と連通し
て、蓄冷器(2)内の作動流体に圧力および変位を与え
る流体駆動装置(1)と、パルス管(3)内から変位し
た作動流体を蓄えるバッファタンク(4)と、バッファ
タンク(4)とパルス管(3)との間に配置され、バッ
ファタンク(4)とパルス管(3)との連通状態を制御
する流体変位制御弁装置(5、6)とを備えている。そ
して、流体変位制御弁装置(5、6)は、バッファタン
ク(4)とパルス管(3)との圧力差が所定値に達した
とき開くように構成されており、流体変位制御弁装置
(5、6)が閉じているときは、蓄冷器(2)内の作動
流体が変位しないで圧縮膨張し、流体変位制御弁装置
(5、6)が開いているときは、蓄冷器(2)内の作動
流体が圧縮膨張しないで変位することを特徴とする。
【0021】請求項3に記載の発明では、請求項2に記
載のパルス管冷凍機において、流体駆動装置(1)によ
って作動流体に与えられた圧力を蓄冷器(2)をバイパ
スして流体変位制御弁装置(5、6)側からパルス管
(3)内に入力させる管(7)と、その管(7)の連通
状態を制御する流体圧縮制御弁装置(8)とを有してい
る。そして、流体圧縮制御弁装置(8)は、流体変位制
御弁装置(5、6)が閉じているときには開き、かつ、
流体変位制御弁装置(5、6)が開いているときには閉
じることを特徴とする。
【0022】請求項4に記載の発明では、請求項2に記
載のパルス管冷凍機において、流体駆動装置(1)によ
って作動流体に与えられた圧力を蓄冷器(2)をバイパ
スして流体変位制御弁装置(5、6)側からパルス管
(3)内に入力させる管(7)と、その管(7)内の作
動流体の流れを絞るオリフィス(12)とを有すること
を特徴とする。
【0023】次に、作用効果を述べる。請求項1〜4に
記載の発明によれば、蓄冷器(2)内の作動流体に圧力
および変位を与える流体駆動装置(1、4、5、6、
7、8)は、蓄冷器(2)内の作動流体が変位しないで
膨張圧縮する状態と、蓄冷器(2)内の動流体が膨張圧
縮しないで作動流体が変位する状態との2つの状態を設
定することができるので、作動流体が圧縮膨張している
ときの流速が小さくするこができるとともに、作動流体
が圧縮する位置と膨張する位置とを明確に分離すること
ができる。したがって、パルス管冷凍機の冷凍能力の向
上を図ることができる。
【0024】また、作動流体が圧縮する位置と膨張する
位置とを明確に分離された状態で進行波が矩形状に変化
するので、cos波のような交流波を進行波とするもの
に比べて、1周期当たりの熱移動量を大きくするこがで
きる。したがって、パルス管冷凍機の冷凍能力のより一
層向上を図ることができる。請求項2に記載の発明によ
れば、流体変位制御弁装置(5、6)は、バッファタン
ク(4)とパルス管(3)との圧力差が所定値に達した
とき開くように構成されているので、流体変位制御弁装
置(5、6)が閉じているときは作動流体が圧縮膨張
し、流体変位制御弁装置(5、6)が開いているときは
作動流体が変位する。したがって、蓄冷器(2)内の作
動流体に圧力および変位を与える流体駆動装置(1、
4、5、6、7、8)は、蓄冷器(2)内の作動流体が
変位しないで膨張圧縮する状態と、蓄冷器(2)内の動
流体が膨張圧縮しないで作動流体が変位する状態との2
つの状態を設定することができる。延いては、パルス管
冷凍機の冷凍能力の向上を図ることができる。
【0025】ところで、蓄冷器(2)側およびパルス管
(3)側の両方に流体駆動装置(1)が設けられた所謂
ダブルピストン型のパルス管冷凍機で上述の作動を実現
する場合には、流体駆動装置(1)の作動を矩形波状に
制御しなければならない。しかし、流体駆動装置(1)
の稼働部の慣性のために、流体駆動装置(1)の作動を
矩形波状に制御することは現実には困難である。
【0026】ところが、本発明によれば、流体駆動装置
(1)の作動を矩形波状に制御する必要がないので、流
体駆動装置(1)の制御が容易になり、パルス管冷凍機
の制作が容易になる。因みに、バッファタンクとパルス
管との中間部位に固定絞りを配置した所謂ダブルインレ
ット型のパルス管冷凍機では、固定絞りは常時開いてい
るので、蓄冷器(2)内の作動流体は常時変位可能とな
る。つまり、作動流体が圧縮する位置と膨張する位置と
を明確に分離することができない。したがって、本発明
に係るパルス管冷凍機は、ダブルインレット型のパルス
管冷凍機に比べて、冷凍能力の向上を容易に図ることが
できる。
【0027】請求項3に記載の発明では、管(7)が設
けられているので、蓄冷器(2)内の作動流体には、流
体駆動装置(1)側とパルス管(3)側との両側から圧
縮力(膨張力)が作用するので、定在波の節の位置を冷
却部(2a)の近傍に設定することができる。したがっ
て、パルス管冷凍機の冷凍能力の向上をより一層図るこ
とができる。
【0028】また、管(7)に設けられた流体圧縮制御
弁装置(8)は、流体変位制御弁装置(5、6)が閉じ
ているときには開き、かつ、流体変位制御弁装置(5、
6)が開いているときには閉じるので、作動流体が変位
しているときに、流体駆動装置(1)によって発生した
圧力が作動流体がパルス管(3)内に入力しない。した
がって、作動流体が変位しているときに、作動流体が膨
張圧縮することを防止するこができるので、上記効果と
相まってパルス管冷凍機の冷凍能力の向上をさらに図る
ことができる。
【0029】請求項4に記載の発明によれば、適当なオ
リフィス(12)を選定することにより、請求項3に記
載の発明と同様な効果を得ることができる。したがっ
て、安価な機器構成で、パルス管冷凍機の冷凍能力の向
上を図ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示す実施の形
態について説明する。 (第1実施形態)図1は本発明に係るパルス管冷凍機の
実施形態を示すものである。1はピストン型の圧縮機
(流体駆動装置)で、この圧縮機1のピストン1aを往
復運動させることにより作動流体(具体的には、He、
2 、H2 、Ar、Ne等)を膨張圧縮(定在波成分を
発生)させるとともに、作動流体に変位(進行波成分)
を与えるものである。
【0031】2は作動流体との間で熱の授受を行う蓄冷
器で、この蓄冷器2はステンレス、銅、銅合金等からな
る金属網状体(金属メッシュ)を積層するか、もしくは
ステンレス・鉛等の金属球等を密閉容器内に封入したも
のである。そして、その内部を流通する作動流体の圧縮
時の熱を速やかに吸収するとともに、膨張時には作動流
体に熱を速やかに与えるものである。したがって、蓄冷
器2の材質としては、作動流体より十分熱容量が大き
く、かつ熱伝導率の比較的高い材料が望ましい。
【0032】しかし、圧縮機1から蓄冷器2を経て後述
する冷却部2aに熱が伝導すると、冷却部2aの冷却能
力が低下するので、蓄冷器2での熱伝導を極力抑制する
必要がある。このため、蓄冷器2を金属網状体の積層方
向を作動流体の変位方向(蓄冷器2の軸方向)に設定す
ることが好ましい。また、蓄冷器2の端部には被冷却体
(超伝導体等)を直接接触させて冷却する冷却部2aが
設けられており、この冷却部2aは、銅、インジウム等
の熱伝導率の高い金属にて形成されている。
【0033】3は冷却部2aに隣接して蓄冷器2内空間
と連通するように配置されたパルス管で、このパルス管
3はステンレス、チタン、チタン合金等からなる薄肉金
属パイプで構成されている。4はパルス管3内から変位
した作動流体を一時的に蓄えるバッファタンクで、この
バッファタンク4とパルス管3との間には、パルス管3
とバッファタンク4との圧力差が所定値に達したとき開
くように構成された第1リリーフバルブ5および第2リ
リーフバルブ6(流体変位制御弁装置)が配置されてい
る。さらに、第1リリーフバルブ5はパルス管3からバ
ッファタンク4へと変位する作動流体を閉止するように
構成されており、第2リリーフバルブ6はバッファタン
ク4からパルス管3へと変位する作動流体を閉止するよ
うに構成されている。
【0034】なお、圧縮機1、蓄冷器2、冷却部2a、
パルス管3、両リリーフバルブ5、6およびバッファタ
ンク4は、(一次元モデルにおいて)作動流体の変位方
向に直列に配置されており、蓄冷器2、冷却部2aおよ
びパルス管3(図1の2点鎖線で囲まれて構成部)は、
外部との断熱のため、図示しない真空容器の内部に配設
されている。
【0035】7は蓄冷器2をバイパスしてパルス管3の
バッファタンク4側と圧縮機1とを結ぶダブルインレッ
トパイプ(管)で、このダブルインレットパイプ7によ
り圧縮機1によって作動流体に与えられた圧力は、パル
ス管3のバッファタンク4側からパルス管3内に入力さ
れる。また、ダブルインレットパイプ7には電磁弁(流
体圧縮制御弁装置)8が配置されており、この電磁弁8
を開閉することによりダブルインレットパイプ7の連通
状態を制御している。
【0036】ところで、圧縮機1は、ピストン1a、シ
リンダ1b、連接棒(コンロッド)1cおよびクランク
1dとから構成されており、この圧縮機1はサーボモー
タ9により駆動されている。このサーボモータ9は、モ
ータ部9a、エンコーダ部9b、モータドライバ部9c
とから構成されており、マイクロコンピュータを有する
コントローラ10によって制御されている。さらに、こ
のコントローラ10はエンコーダ部9bからの信号に基
づいて、バルブドライバ11を介して電磁弁8の開閉を
制御している。
【0037】次に、本実施形態の作動を図6および図7
を用いて述べる。図6はピストン1a、パルス管3とバ
ッファタンク4との圧力差、第1および第2リリーフバ
ルブ5、6および電磁弁8の作動状態を示すタイムチャ
ートであり、説明上、ピストン1aが下死点(ピストン
1aおよびシリンダ1bによって形成される空間の容積
が最大となる時のピストン1aの位置)を時刻0(時間
の起算点)とする。また、図7は蓄冷器2内作動流体の
微小部分の体積変化および変位を示す模式図である。
【0038】図6において、ピストン1aが下死点(タ
イミングT0)に位置するときは、第1および第2リリ
ーフバルブは閉じており、電磁弁8は開いている。この
状態でピストン1aが上死点(ピストン1aおよびシリ
ンダ1bによって形成される空間の容積が最小となる時
のピストン1aの位置)方向に移動して圧縮過程に移行
すると、蓄冷器2内の作動流体が圧縮され始める(図7
のAの状態からBの状態に移行)。
【0039】なお、この圧縮過程は、圧縮機1側から直
接作用する圧縮力と、ダブルインレットパイプ7から流
入する流体による圧縮力とが同時に作用している。そし
て、圧縮過程が進み、蓄冷器2内とバッファタンク4内
との圧力差が第2リリーフバルブ6の開放圧力(リリー
フ圧力)まで達すると、第2リリーフバルブ6が開くと
ともに電磁弁8が閉じる(タイミングT1)。これによ
り、蓄冷器2内の圧力上昇が停止するとともに、作動流
体がバッファタンク4内に流入(変位)し始める。した
がって、蓄冷器2内の作動流体は所定の圧力(リリーフ
圧力)を保った状態で、作動流体はパルス管3方向に変
位する(図7のBの状態からCの状態に移行)。
【0040】そして、さらに圧縮過程が進み、ピストン
1aが上死点に達すると膨張過程に移行すると、作動流
体の変位方向が逆転するので第2リリーフバルブ6が閉
じる。そして、第2リリーフバルブ6が閉じるとともに
(タイミングT2)、電磁弁8を開く。これにより、蓄
冷器2内の作動流体は膨張し始める(図7のCの状態か
らDの状態に移行)。
【0041】そして、膨張工程がさらに進むと、蓄冷器
2内とバッファタンク4内との圧力差が第1リリーフバ
ルブ5の開放圧力(リリーフ圧力)まで達すると、第1
リリーフバルブ5が開くとともに電磁弁8が閉じる(タ
イミング3)。これにより、蓄冷器2内の作動流体の膨
張が停止するとともに、バッファタンク4内に蓄えられ
た作動流体が流出(変位)し始める。したがって、蓄冷
器2内の作動流体は所定の圧力(リリーフ圧力)を保っ
た状態で、作動流体は圧縮機1方向に変位する(図7の
Dの状態からA2の状態に移行)。
【0042】そして、さらに膨張過程が進み、ピストン
1aが下死点に達すると(タイミングT4)、圧縮過程
に移行して作動流体の変位方向が逆転するので第1リリ
ーフバルブ5が閉じるとともに電磁弁8が開く。以上に
述べた作動を1周期として、その後、上記作動が繰り返
される。なお、上記作動はコントローラ10にて、ピス
トン1aの位置を監視しながら、第1および第2リリー
フバルブ5、6の作動タイミングを算出して、電磁弁8
の開閉制御を行っている。
【0043】次に、蓄冷器2内の作動流体の定在波の節
において、前述の図4の如く、圧力と変位とについての
軌跡を描けば図8のようになる。なお、図8の変位は、
蓄冷器2から見てパルス管3側方向の変位を正の向きと
した。すなわち、圧縮過程では作動流体の変位がないの
で、図8のA点からB点の軌跡に示されるように、圧力
軸(縦軸)に平行(図6のタイミングT0〜T1に相
当)に状態が変化する。そして、この圧縮状態(圧力)
を維持した状態で作動流体はパルス管3側に変位するの
で、B点からC点の軌跡は変位軸(横軸)に平行(図6
のタイミングT1〜T2に相当)になる。
【0044】次に、変位がない状態で膨張過程に移行す
るので、圧縮過程と同様にC点からD点の軌跡に示され
るように、圧力軸(縦軸)に平行(図6のタイミングT
2〜T3に相当)に状態が変化する。そして、この圧縮
状態(圧力)を維持した状態で作動流体は圧縮機1側に
変位するので、D点からA点の軌跡は変位軸(横軸)に
平行(図6のタイミングT3〜T4に相当)になる。
【0045】したがって、熱は図8おいては右から左へ
と、すなわち蓄冷器2のパルス管3側端部から圧縮機1
側端部へと、次々に移動することとなり、熱移動の起点
(蓄冷器2のパルス管3側端部)では、熱が放熱移動の
みとなるので、蓄冷器2端部が冷却されていくととも
に、蓄冷器2端部に形成された冷却部2aが冷却されて
いく。なお、蓄冷器2の圧縮機1側端部まで移動した熱
は、圧縮機1のシリンダ1bまたは図示されていない放
熱器より大気中に放熱される。
【0046】次に、本実施形態の効果を述べる。上述の
作動の説明からも明らかなように、蓄冷器2内の作動流
体が膨張圧縮するときには、作動流体は変位せず、ま
た、蓄冷器2内の作動流体が膨張圧縮しないときには、
作動流体は変位するので、作動流体が圧縮膨張している
ときの流速が小さくするこができるとともに、作動流体
が圧縮する位置と膨張する位置とを明確に分離すること
ができる。したがって、パルス管冷凍機の冷凍能力の向
上を図ることができる。
【0047】また、作動流体が圧縮する位置と膨張する
位置とを明確に分離された状態で進行波が矩形状に変化
するので、cos波のような交流波を進行波とするもの
に比べて、1周期当たりの熱移動量を大きくするこがで
きる。したがって、パルス管冷凍機の冷凍能力のより一
層向上を図ることができる。また、ダブルインレットパ
イプ7が設けられているので、蓄冷器2内の作動流体に
は、圧縮機1側とパルス管3側との両側から圧縮力(膨
張力)が作用するので、定在波の節の位置を冷却部2a
の近傍に設定することができる。したがって、パルス管
冷凍機の冷凍能力の向上をより一層図ることができる。
【0048】ところで、蓄冷器2側およびパルス管3側
の両方に圧縮機が設けられた所謂ダブルピストン型のパ
ルス管冷凍機で上述の作動を実現する場合には、ピスト
ンの動きを図6に示されるように矩形波状に制御しなけ
ればならない。しかし、ピストンおよびモータの慣性の
ために、現実には図7に示されるように矩形波状に制御
することは困難である。
【0049】ところが、本実施形態に係るパルス管冷凍
機によれば、ピストン1aは矩形波状に制御する必要が
ないので、圧縮機1の制御が容易になり、パルス管冷凍
機の制作が容易になる。因みに、バッファタンクとパル
ス管との中間部位に固定絞り(固定オリフィス)を配置
した所謂ダブルインレット型のパルス管冷凍機では、固
定絞りは常時開いているので、蓄冷器2内の作動流体は
常時変位可能となる。つまり、作動流体が圧縮する位置
と膨張する位置とを明確に分離することができない。し
たがって、本実施形態に係るパルス管冷凍機は、ダブル
インレット型のパルス管冷凍機に比べて、冷凍能力の向
上を容易に図ることができる。
【0050】(第2実施形態)本実施形態は、第1実施
形態においてダブルインレットパイプ7に設けられてい
た電磁弁8を、図9に示すように、固定オリフィス12
としたものである。適当な流量係数を有する固定オリフ
ィス12でダブルインレットパイプ7内を流れる作動流
体を絞ることにより、固定オリフィス12前後で作動流
体の位相のずれが発生し、電磁弁8と同様な効果を得る
ことができる。なお、第1および第2リリーフバルブ
5、6の作動は第1実施形態と同じである。
【0051】ところで、本発明は第1および第2リリー
フバルブ5、6に代えて1つの電磁弁を用いてもよい。
なお、電磁弁は、パルス管3とバッファタンク4との圧
力差が所定範囲(図5の△P)内の場合は電磁弁を閉
じ、所定範囲外の場合は電磁弁を開くようにすればよ
い。また、ダブルインレットパイプ7に設けられた電磁
弁8に代えて代えて、パルス管3とバッファタンク4と
の圧力差と連動して開閉する機械的バルブ装置を用いて
も本発を実施するこができる。
【0052】また、ダブルインレットパイプ7および電
磁弁8を省いても本発明を実施するこができる。なお、
第1および第2リリーフバルブ5、6および圧縮機1の
作動は上記実施形態と同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るパルス管冷凍機を示す模試
図である。
【図2】定在波の節における進行波が存在しない場合の
蓄冷器内の熱移動を説明する説明図である。
【図3】定在波の節近傍における進行波が存在しない場
合の蓄冷器内の熱移動を説明する説明図である。
【図4】定在波の節における進行波が存在する場合の蓄
冷器内の熱移動を説明する説明図である。
【図5】定在波の節近傍における進行波が存在しない場
合の蓄冷器内の熱移動を説明する説明図である。
【図6】実施形態に係るパルス管冷凍機の作動を示すタ
イムチャートである。
【図7】蓄冷器内作動流体の微小部分の体積変化および
変位を示す模式図である。
【図8】実施形態に係るパルス管冷凍機の蓄冷器内の作
動流体の圧力と変位とを示す説明図である。
【図9】第2実施形態に係るパルス管冷凍機の模式図で
ある。
【符号の説明】
1…圧縮機(流体駆動装置)、2…蓄冷器、2a…冷却
部、3…パルス管、4…バッファタンク、5…第1リリ
ーフバルブ(流体変位制御弁装置)、6…第2リリーフ
バルブ(流体変位制御弁装置)、7…ダブルインレット
パイプ(管)、8…電磁弁(流体圧縮制御弁装置)、9
…サーボモータ、12…固定オリフィス。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 作動流体が充満し、作動流体との間で熱
    の授受を行う蓄冷器(2)と、 前記蓄冷器(2)の端部に形成され、被冷却体を冷却す
    る冷却部(2a)と、 前記冷却部(2a)に隣接して設けられ、前記蓄冷器
    (2)内空間と連通したパルス管(3)と、 前記蓄冷器(2)内の作動流体に圧力および変位を与え
    る流体駆動装置(1、4、5、6、7、8)とを有し、 前記流体駆動装置(1、4、5、6、7、8)は、前記
    蓄冷器(2)内の作動流体が変位しないで膨張圧縮する
    状態と、前記蓄冷器(2)内の動流体が膨張圧縮しない
    で作動流体が変位する状態との2つの状態を設定するこ
    とことを特徴とするパルス管冷凍機。
  2. 【請求項2】 作動流体が充満し、作動流体との間で熱
    の授受を行う蓄冷器(2)と、 前記蓄冷器(2)の一端側に形成され、被冷却体を冷却
    する冷却部(a)と、 前記冷却部(2a)に隣接して設けられ、前記蓄冷器
    (2)内空間と連通したパルス管(3)と、 前記蓄冷器(2)の他端側と連通し、前記蓄冷器(2)
    内の作動流体に圧力および変位を与える流体駆動装置
    (1)と、 前記パルス管(3)内から変位した作動流体を蓄えるバ
    ッファタンク(4)と、 前記バッファタンク(4)と前記パルス管(3)との間
    に配置され、前記バッファタンク(4)と前記パルス管
    (3)との連通状態を制御する流体変位制御弁装置
    (5、6)とを備え、 前記流体変位制御弁装置(5、6)は、前記バッファタ
    ンク(4)と前記パルス管(3)との圧力差が所定値に
    達したとき開くように構成されており、 前記流体変位制御弁装置(5、6)が閉じているとき
    は、前記蓄冷器(2)内の作動流体が変位しないで圧縮
    膨張し、前記流体変位制御弁装置(5、6)が開いてい
    るときは、前記蓄冷器(2)内の作動流体が圧縮膨張し
    ないで変位することを特徴とするパルス管冷凍機。
  3. 【請求項3】 前記蓄冷器(2)をバイパスして設けら
    れ、前記流体駆動装置(1)によって作動流体に与えら
    れた圧力を前記流体変位制御弁装置(5、6)側から前
    記パルス管(3)内に入力させる管(7)と、 前記管(7)に設けられ、前記管(7)の連通状態を制
    御する流体圧縮制御弁装置(8)とを有し、 前記流体圧縮制御弁装置(8)は、前記流体変位制御弁
    装置(5、6)が閉じているときには開き、かつ、前記
    流体変位制御弁装置(5、6)が開いているときには閉
    じることを特徴とする請求項2に記載のパルス管冷凍
    機。
  4. 【請求項4】 前記蓄冷器(2)をバイパスして設けら
    れ、前記流体駆動装置(1)によって作動流体に与えら
    れた圧力を前記流体変位制御弁装置(5、6)側から前
    記パルス管(3)内に入力させる管(7)と、 前記管(7)に設けられ、前記管(7)内の作動流体の
    流れを絞るオリフィス(12)とを有することを特徴と
    する請求項2に記載のパルス管冷凍機。
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