JP2697351B2 - 電解処理絶縁被膜を有する電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

電解処理絶縁被膜を有する電磁鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、絶縁性、打ち抜き
性、耐熱性、耐食性、溶接性および塗料密着性に優れた
電解処理絶縁被膜を有する電磁鋼板およびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電磁鋼板は、モータやトランス等の電気
機器用鉄芯材として広く使用されている。このような鉄
芯材として使用される電磁鋼板の表面上には、通常、渦
電流損失を低減するために、絶縁被膜が形成されてい
る。この絶縁被膜には、絶縁性は勿論、打ち抜き性、耐
熱性、耐食性、溶接性および塗料密着性に優れているこ
とが要求されている。
【0003】電磁鋼板の絶縁被膜は、無機系被膜、無機
・有機系被膜、および、有機系被膜に大別され、これら
の絶縁被膜に関して、従来から多くの提案がなされてい
るが、上述した性能をすべて満足し得るものはない。
【0004】無機系絶縁被膜は、リン酸塩化合物、クロ
ム酸塩化合物および酸化物ゾルの少なくとも1つを含有
する処理液を、電磁鋼板の表面上に塗布し、次いで、30
0 〜600 ℃の比較的高い温度によって焼き付けることに
より形成される。
【0005】無機・有機系絶縁被膜は、リン酸塩化合
物、クロム酸塩化合物および酸化物ゾルの少なくとも1
つからなる無機系水溶液と、水性有機樹脂との混合処理
液を、電磁鋼板の表面上に塗布し次いでこれを焼き付け
ることにより形成され、打ち抜き性に優れた絶縁被膜と
して、広く実用化されている。
【0006】有機系被膜は、有機系塗料を、電磁鋼板の
表面状上に塗布し次いでこれを焼き付けることにより形
成され、長期間にわたる高い層間絶縁抵抗を必要とする
大型発電機等において、鉄芯加工の前後に、いわゆるワ
ニス処理として形成される場合が多い。場合によって
は、上述した無機系被膜や無機・有機系被膜が形成され
た電磁鋼板の前記被膜を、グラインダー等で研削して除
去した後に、この有機系被膜を形成することもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】無機系絶縁被膜は、耐
熱性および溶接性に優れてはいるが、硬くそして脆いた
めに、打ち抜き性に劣っている。従って、特に、被膜が
厚い場合には、打ち抜き加工時に、被膜が鋼板の表面か
ら剥離または破損する。そして、このような剥離または
破損によって生じた被膜粉が、打ち抜き金型のポンチと
タイスとの間に詰まる結果、ばりが発生する。
【0008】無機・有機系絶縁被膜は、上述した無機系
絶縁被膜の欠点を解決し、打ち抜き性が優れている。し
かしながら、その反面、有機樹脂が含有されていること
により、耐熱性および溶接性の低下が避けられない。鉄
芯用の電磁鋼板に対しては、鉄芯としての成形加工時ま
たは成形加工後に、発生した加工歪みを除去して磁気特
性を向上させるための歪み取り焼鈍が施される場合が多
い。このような歪み取り焼鈍のために、電磁鋼板は、約
700 〜800 ℃の温度で加熱される。このとき、無機・有
機系絶縁被膜は、上述したように、耐熱性が低いので、
被膜中の有機樹脂が熱分解し、その一部がガス化する。
その結果、被膜がポーラスになり、その絶縁性、密着性
および耐食性が大きく低下する。また、溶接時において
も、溶接熱によって、上記と同様に、被膜中の有機樹脂
が熱分解し、その一部がガス化する結果、溶接ビード部
にブローホールが生じて、溶接強度が低下する。
【0009】有機系被膜には、鋼板の表面に対する被膜
の密着性が悪く、従って、塗布前の鋼板表面の清浄性に
起因した塗布ムラやハジキが生じやすい問題がある。
【0010】一方、上述した絶縁被膜の形成は、従来、
処理液を電磁鋼板の表面上に塗布し次いで焼き付けるこ
とからなる、いわゆる塗布・焼き付け法によって、行わ
れている。しかしながら、従来の塗布・焼き付け法に
は、実操業上、次のような、多くの問題がある。即ち、
高速で走行する電磁鋼ストリップに連続的に処理液を塗
布する手段として、通常、絞りロールや3ロールコータ
が使用されているが、鋼ストリップの表面上に、その長
手方向および幅方向に均一な厚さの薄い塗膜を形成する
ためには、上記ロールと鋼ストリップまたは上記ロール
間のニップ厚や、ロールの周速比等の条件の、微妙な調
整を必要とする。従って、鋼ストリップの幅や板厚が変
わる度に、上記条件を設定しなければならず、そのため
に多くの時間を要する。
【0011】また、連続的な処理液の塗布により、上記
ロールが摩耗して、ロールの表面形状や品質が変動する
結果、鋼ストリップに対する処理液の塗布量や塗膜の外
観が変動する。従って、定期的なロール交換が必要にな
り、そのために、多大の労力を必要とする。
【0012】更に、鋼ストリップの表面上に塗布された
処理液が、ロールと鋼板またはロール間において発泡し
て、塗膜に泡が巻き込まれる。その結果、塗膜の焼き付
け時に、塗膜中の水分が急速に蒸発して塗膜に微小なピ
ンホールが生じ、耐食性の低下等の品質欠陥が生ずる。
【0013】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、絶縁性、打ち抜き性、耐熱性、耐食性および
塗料密着性に優れた絶縁被膜を有する、その製造が容易
で且つ安価な電磁鋼板およびその製造方法を提供するこ
とにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、電磁鋼
板の少なくとも1つ表面上に、所定量のクロム水和酸化
物および/またはクロム酸化物と、所定量のAl酸化物、
Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少なくとも
1つとからなる絶縁皮膜を、陰極電解処理によって形成
すれば、絶縁性、打ち抜き性、耐熱性、耐食性および塗
料密着性に優れた絶縁被膜を有する電磁鋼板を、容易に
且つ安価に製造し得ることを知見した。
【0015】この発明は、上述した知見に基いてなされ
たものであって、この発明は、電磁鋼板の少なくとも1
つの表面上に、クロム水和酸化物および/またはクロム
酸化物と、Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化
物のうちの少なくとも1つとからなる電解処理絶縁皮膜
が形成されており、前記クロム水和酸化物および/また
はクロム酸化物の量は、クロム換算で5〜50mg/m2 の範
囲内であり、そして、前記Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化
物およびZr酸化物のうちの少なくとも1つの総量は、A
l,Si,TiおよびZr換算で前記クロム水和酸化物および
/またはクロム酸化物の前記クロム換算量の、0.1 〜10
倍の範囲内であるとに特徴を有するものである。
【0016】
【作用】この発明において、電磁鋼板の少なくとも1つ
の表面上に、電解処理によって形成された、クロム水和
酸化物および/またはクロム酸化物と、Al酸化物、Si酸
化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少なくとも1つ
とからなる絶縁皮膜は、クロム水和酸化物および/また
はクロム酸化物が非電気伝導性を有しており、そして、
Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物の少なく
とも1つは、耐熱性および非電気伝導性を有しているの
で、電磁鋼板に、高い絶縁性、耐熱性および耐食性を付
与する。従って、歪み取り焼鈍等の加熱処理が施され、
被膜中のクロム水和酸化物の大部分がクロム酸化物に変
質しても、絶縁性および耐食性が劣化することはない。
【0017】前述したように、従来の塗布・焼き付け法
による被膜の形成のためには、300〜600 ℃の比較的高
温での焼き付け処理が必要である。従って鋼板が熱膨張
した状態で被膜の硬化が行われるので、常温下における
被膜に大きな内部応力が存在する。その結果、打ち抜き
加工時に、被膜が鋼板表面から剥離または破損し、これ
によって生じた被膜粉が、打ち抜き金型のポンチとタイ
スとの間に詰まって、ばりが発生する。これに対して、
本発明においては、電解処理による、約40〜60℃の低い
温度で被膜が形成されるので、被膜に存在する内部応力
は小さく、且つ、電解処理の特徴である優れた密着性を
有しているので、無機系皮膜であっても、その打ち抜き
性は良好である。
【0018】また、Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およ
びZr酸化物のうちの少なくとも1つによって、絶縁被膜
の塗料密着性が向上する。このように、絶縁被膜の塗料
密着性が向上するのは、Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物
およびZr酸化物のうちの少なくとも1つが、被膜の表面
上に粒状の突起物として存在し、これによって、塗料の
アンカー効果としての作用が生ずるためであると推定さ
れる。
【0019】絶縁被膜中の、クロム水和酸化物および/
またはクロム酸化物の含有量は、クロム換算で、5〜50
mg/m2 の範囲内とすべきである。クロム水和酸化物およ
び/またはクロム酸化物の含有量が、クロム換算で5mg
/m2 未満では、十分な耐食性および絶縁性が得られな
い。一方、その含有量が、クロム換算で50mg/m2 を超え
ると、打ち抜き性が劣化する。
【0020】絶縁被膜中の、Al酸化物、Si酸化物、Ti酸
化物およびZr酸化物のうちの少なくとも1つの総含有量
は、Al換算、Si換算、Ti換算およびZr換算で、クロム水
和酸化物および/またはクロム酸化物の前記クロム換算
量の0.1 〜10倍の範囲内とすべきである。その理由は、
次の通りである。即ち、上記各酸化物は、それ自体、電
解析出反応には寄与せず、電解析出するクロム水和酸化
物および/またはクロム酸化物の層中に分散して存在す
る。従って、クロム水和酸化物および/またはクロム酸
化物は、上記各酸化物の少なくとも1つを固定するバイ
ンダーとして作用する。その結果、上記各酸化物の少な
くとも1つの含有量が、Al換算、Si換算、Ti換算および
Zr換算で、クロム水和酸化物および/またはクロム酸化
物の少なくとも1つのクロム換算量の10倍を超えると、
上記各酸化物が剥離しやすくなり、その効果が逆に低下
する。一方、その含有量が0.1 倍未満では、上記効果が
得られない。
【0021】次ぎに、この発明の電磁鋼板の製造方法に
ついて述べる。電磁鋼板の少なくとも1つの表面上に形
成される上述した絶縁被膜は、無水クロム酸およびクロ
ム酸塩群の少なくとも1つと、Al酸化物、Si酸化物、Ti
酸化物およびZr酸化物のうちの少なくとも1つを含有す
る電解処理液中において、電磁鋼板に対し、陰極電解処
理を施すことにより形成される。
【0022】上述した電解処理が施される電磁鋼板の表
面は、清浄であることが望ましく、必要に応じ、アルカ
リ水溶液または酸水溶液によって、予め電磁鋼板を、ス
プレー洗浄または電解洗浄する。
【0023】電解処理液の組成としては、無水クロム酸
およびクロム酸塩群、即ち、無水クロム酸、クロム酸ア
ンモニウム、重クロム酸アンモニウム、クロム酸ナトリ
ウム、重クロム酸ナトリウム等の少なくとも1つと、Al
酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少
なくとも1つとを含有していれば、特に限定されるもの
ではない。なお、電解処理液中に、助剤として、硫酸ナ
トリウム等の電気伝導補助剤や、ホウ酸等のpH緩衝剤を
添加してもよい。
【0024】電解処理液中に添加させる、Al酸化物、Si
酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少なくとも1
つは、酸化物ゾル状または微粒子酸化物粉末状であるこ
とが好ましく、特に、粒径50 mμ以下の水性酸化物ゾル
状のものが、電解処理液中での分散安定性、および、被
膜中での均一分散性の点において効果的である。
【0025】電解処理液のpH値は、1〜5の範囲内とす
ることが好ましい。pH値が1未満では、クロム水和酸化
物および/またはクロム酸化物の析出効率が低い。一
方、pH値が5を超えると、クロム水和酸化物および/ま
たはクロム酸化物の、鋼板への密着性が低下する。水性
酸化物ゾルを使用する場合は、pH値が1〜5の範囲内で
良好な分散安定性が示される。
【0026】陰極電解条件は、通常のクロメート被膜の
形成のための、鋼板を陰極とする電解条件でよい。な
お、陰極電解処理の前後に、クロム水和酸化物および/
またはクロム酸化物の量を調整するために、電磁鋼板に
対し、鋼板を陽極とする陽極電解処理を施してもよい。
電解処理液の温度は40〜60℃の範囲内が好ましく、陰極
電流密度は5 〜80A/dm2 の範囲内が好ましく、そして、
陽極電解処理を施す場合の陽極電流密度は0.1 〜20A/dm
2 の範囲内が好ましい。
【0027】次に、この発明を、実施例により、比較例
と対比しながら更に詳述する。
【実施例】Siを0.4 wt.%含有する厚さ0.5mm の電磁鋼板
を、公知の方法により脱脂し次いで酸洗して、その両表
面を清浄にした。次いで、以下に示す(A) 〜(D) の処理
条件により陰極電解処理を施して、電磁鋼板の両表面上
に絶縁被膜を形成し、かくして、本発明鋼板No. 1〜4
を調製した。
【0028】(A) 処理 電解処理液: 重クロム酸ナトリウム:30g/l 無水クロム酸 : 5g/l シリカゾル :50g/l ( 固形分20%) 処理温度 : 45℃ 処理方法 : 鋼板を陰極として、10A/dm2 の電流密度
で1.4 秒間電解した後、直ちに、水洗しそして乾燥し
た。
【0029】(B) 処理 電解処理液: 無水クロム酸 :60g/l 重クロム酸ナトリウム:10g/l チタニアゾル :30g/l ( 固形分10%) 処理温度 : 45℃ 処理方法 : 鋼板を陰極として、50A/dm2 の電流密度
で0.8 秒間電解した後、直ちに、水洗しそして乾燥し
た。
【0030】(C) 処理 電解処理液: 重クロム酸ナトリウム:30 g/l 硫酸ナトリウム :10g/l ホウ酸 :20g/l アルミナゾル :50g/l ( 固形分20% ) 処理温度 : 45℃ 処理方法 : 鋼板を陰極として、20A/dm2 の電流密度
で1.4 秒間電解した後、直ちに、水洗しそして乾燥し
た。
【0031】(D) 処理 電解処理液: 重クロム酸アンモニウム:20g/l ホウ酸 :20g/l シリカゾル :30g/l ( 固形分20% ) ジルコニアゾル :10g/l ( 固形分10% ) 処理温度 : 45℃ 処理方法 : 鋼板を陰極として、30A/dm2 の電流密度
で1.4 秒間電解した後、直ちに、水洗しそして乾燥し
た。
【0032】比較のために、上述した電磁鋼板に対し、
下記、EおよびFによる処理を施して、比較鋼板No. 1
および2を調製した。 (E) 処理 塗布液 : 第一リン酸マグネシウム:150 g/l 重クロム酸カルシウム : 20 g/l シリカゾル : 25 g/l ( 固形分20% ) ホウ酸 : 15 g/l 処理方法 : 電磁鋼板の表面上に、上記塗布液を、3
ロールコータによって塗布し、次いで、これを、焼き付
け炉内において、到達板温450 ℃により焼き付け処理を
施して、0.3 μm の厚さの無機系絶縁被膜を形成した。
【0033】(F) 処理 塗布液 : 重クロム酸マグネシウム:130 g/l ホウ酸 : 25 g/l エチレングリコール : 25 g/l アクリル系樹脂エマルジョン:30 g/l ( 固形分として) 処理方法 : 電磁鋼板の表面上に、上記塗布液を、3
ロールコータによって塗布し、次いで、これを、焼き付
け炉内において、到達板温290 ℃により焼き付け処理を
施して、0.3 μm の厚さの無機・有機系絶縁被膜を形成
した。
【0034】このようにして調製した本発明鋼板および
比較鋼板の各々の、絶縁被膜中のCr,Al,Si,Tiおよび
Zrの含有量を、蛍光X線分析装置(FX)またはX線マイ
クロアナライザー(EPMA)による定量分析によって調べ
た。更に、本発明鋼板および比較鋼板の各々の、打ち抜
き性、溶接性、塗料密着性、歪み取り焼鈍前後の層間絶
縁抵抗値および耐食性を以下に述べる方法によって調べ
た。なお、歪み取り焼鈍は、試験片を、窒素雰囲気中に
おいて750 ℃の温度で、2時間加熱することにより行っ
た。
【0035】(1) 打ち抜き性 試験片を、下記条件で連続打ち抜きしたときの、ブラン
クのかえり高さを調べ、それによって評価した。 打ち抜き形状:直径10mmの丸型、 打ち抜き回数:20万回、 金型の材質 :SKD-11、 打ち抜き油 :使用。
【0036】(2) 溶接性 積層した複数枚の電磁鋼板を、下記条件でTIG溶接し
たときの、ビード部にブローホールが発生しない最大溶
接速度によって評価した。 コア締め付け圧:60Kg/cm2 溶接電流 :100A
【0037】(3) 塗料密着性 試験片の表面上に、エポキシ系塗料による30μm の厚さ
のカチオン電着塗装を施し、次いで、これを沸水中に2
時間浸漬し、このような処理の施された試験片に対しゴ
バン目テープテストを施したときの、塗膜の剥離面積を
調べ、これによって評価した。
【0038】(4) 層間絶縁抵抗値 JIS C 2550 第2法に基づいて調べた。 (5) 耐食性 試験片を、温度50℃、相対湿度80% の恒温恒湿の試験槽
内に20日間放置した後の、試験片の発錆面積(%) を調
べ、これによって評価した。
【0039】表1に、上記本発明鋼板および比較鋼板の
各々の絶縁被膜の組成、および、上述した、打ち抜き
性、溶接性、塗料密着性、歪み取り焼鈍前後の層間絶縁
抵抗値および耐食性の調査結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1から明らかなように、従来の塗布・焼
き付け法による無機系絶縁被膜を有する比較鋼板No. 1
は、打ち抜き性、塗料密着性、および、歪み取り焼鈍後
の層間絶縁抵抗値並びに耐食性が、何れも悪かった。ま
た、従来の塗布・焼き付け法による無機・有機系絶縁被
膜を有する比較鋼板No. 2は、溶接性、塗料密着性、お
よび、歪み取り焼鈍後の層間絶縁抵抗値並びに耐食性
が、何れも悪かった。
【0042】これに対し、本発明鋼板No. 1〜4は、打
ち抜き性、溶接性、塗料密着性、歪み取り焼鈍前後の層
間絶縁抵抗値および耐食性の何れにおいても優れてお
り、絶縁被膜の厚さは、鋼板の幅および長さ方向にわた
り均一であった。
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
絶縁性、打ち抜き性、耐熱性、耐食性および塗料密着性
に優れた絶縁被膜を有する電磁鋼板を、容易に且つ安価
に製造することができ、鋼板に歪み取り焼鈍等の加熱処
理が施されても、その熱によって、絶縁性、耐食性、塗
料密着性等が低下することはない。更に、高速で走行す
る電磁鋼ストリップに対する絶縁被膜の形成のために、
従来の絞りロールや3ロールコータを使用した塗布・焼
き付け法のように、摩耗による定期的なロール交換の必
要がなく、その長手方向および幅方向に均一な厚さの薄
い絶縁被膜を、容易に且つ短時間にそして経済的に形成
することができる等、多くの、工業上有用な効果がもた
らされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−2797(JP,A) 特開 昭48−240(JP,A) 特開 昭56−16697(JP,A) 特開 平2−145797(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電磁鋼板の少なくとも1つの表面上に、
    クロム水和酸化物および/またはクロム酸化物と、Al酸
    化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少な
    くとも1つとからなる電解処理絶縁皮膜が形成されてお
    り、前記クロム水和酸化物および/またはクロム酸化物
    の量は、クロム換算で5〜50mg/m2 の範囲内であり、そ
    して、前記Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化
    物のうちの少なくとも1つの総量は、Al,Si,Tiおよび
    Zr換算で前記クロム水和酸化物および/またはクロム酸
    化物の前記クロム換算量の0.1 〜10倍の範囲内であるこ
    とを特徴とする、電解処理絶縁被膜を有する電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 無水クロム酸およびクロム酸塩群の少な
    くとも1つと、Al酸化物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr
    酸化物のうちの少なくとも1つとを含有する電解処理液
    中において、電磁鋼板に陰極電解処理を施して、前記電
    磁鋼板の少なくとも1つの表面上に、クロム換算で5〜
    50mg/m2 の範囲内の量の、クロム水和酸化物および/ま
    たはクロム酸化物と、その総量が、Al,Si,TiおよびZr
    換算で前記クロム水和酸化物および/またはクロム酸化
    物の前記クロム換算量の0.1 〜10倍の範囲内の、Al酸化
    物、Si酸化物、Ti酸化物およびZr酸化物のうちの少なく
    とも1つとからなる絶縁皮膜を形成することを特徴とす
    る、電解処理絶縁被膜を有する電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電解処理液のpH値は、1〜5の範囲
    内である、請求項2記載の方法。
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