JP2697272B2 - 電気粘性流体封入式防振装置 - Google Patents

電気粘性流体封入式防振装置

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JP2697272B2
JP2697272B2 JP2245423A JP24542390A JP2697272B2 JP 2697272 B2 JP2697272 B2 JP 2697272B2 JP 2245423 A JP2245423 A JP 2245423A JP 24542390 A JP24542390 A JP 24542390A JP 2697272 B2 JP2697272 B2 JP 2697272B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は電圧を印加することにより粘度が変化する電
気粘性流体を用いた防振装置に関するものである。
[従来の技術] 従来、この種の防振装置として実開平1−69932号公
報に開示されたものは、電気粘性流体が封入された主流
体室と副流体室とが連通部を介して連通されている。連
通部は、前記両流体室を結ぶ方向に互いに離間配置され
た複数枚の電極板と、同電極板を離間状態に保持する絶
縁体とからなり、隣接する電極板間には前記主流体室及
び副流体室に連通する間隙が形成されている。この装置
では、電極板間に選択的に電圧を印加し間隙内の電気粘
性流体の粘度を増加させて流路を形成することにより、
同流路内の流体の共振周波数を可変とし、もって複数の
周波数領域で振動減衰を行うようにしている。
[発明が解決しようとする課題] ところが前記従来の防振装置では、第26図(a)の弾
性特性(ハッチング部分が調整可能領域)と、第26図
(b)の減衰特性(ハッチング部分が調整可能領域)に
示すように、アイドリング振動、エンジンシェイク、変
速時のショック等の低周波領域(50Hz以下)における防
振特性しか調整することができず、エンジンノイズ、こ
もり音等の高周波領域(50〜500Hz)における防振特性
を最適の状態にすることが困難である。
つまり、流路内の流体の共振周波数ωは同流路の長
さLと断面積Sとによって決定されるが、前記防振装置
では断面積Sを変えることだけによって防振特性を得よ
うとしている。そのため、電気粘性流体の共振周波数ω
は得られるものの、1つの共振周波数ωに対し減衰
係数C及び動ばね定数Kdが1つしか得られず、最適な防
振特性が得られないという問題があった。
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであり、
その目的は共振周波数とともに減衰係数及び動ばね定数
も可変とすることができ、広範囲の周波数領域にわたり
最適な防振特性を得ることのできる電気粘性流体封入式
防振装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するために本発明は、電気粘性流体が
封入された第1の流体室及び第2の流体室を連通部を介
して連通させ、同連通部には複数の電極を離間配置し、
前記電極間に選択的に電圧を印加して両電極間の電気粘
性流体の粘度を増加させることにより防振特性を可変と
した電気粘性流体封入式防振装置において、前記連通部
には、所定方向へ複数の電極が互いに離間配置されるこ
とにより構成された電極群を複数群設け、それら各電極
群を前記電極群における各電極の離間配置方向と交差す
る方向へ互いに離間させて積層するように配設してい
る。
[作用] 第1又は第2の流体室に振動が加わると、同流体室内
の電気粘性流体は連通部を介して第2又は第1の流体室
へ移動しようとする。このとき、連通部には各電極群毎
に複数の電極が離間配置され、これに選択的に電圧を印
加することにより両電極間の電気粘性流体の粘度が増加
されている。これにより連通部内の電気粘性流体のう
ち、両電極間に電圧が印加された部分は高粘度の壁とな
り、それ以外は低粘度のままである。
つまり、高粘度の壁によって、前記第1又は第2の流
体室から第2又は第1の流体室へ移動する電気粘性流体
の流路が形成される。そのため、前記連通部内の電気粘
性流体のうちの可動部分が入力振動と共振して、同入力
振動を打ち消そうとするので、前記第1又は第2の流体
室から第2又は第1の流体室への振動伝達が抑制され
る。
特に、本発明では前記連通部に、所定方向へ複数の電
極が互いに離間配置されることにより構成された電極群
を複数群設け、それら各電極群を前記電極群における各
電極の離間配置方向と交差する方向へ互いに離間させて
積層するように配設している。このため、電極を適宜選
択して電圧を印加することにより、流路の断面積及び長
さをそれぞれ調節することが可能となる。そして、前記
流路の断面積及び長さの調節により、連通部内の電気粘
性流体の共振周波数を変化させるとともに、減衰係数及
び動ばね定数を変化させることが可能となる。
[第1実施例] 以下、本発明をエンジンマウントに具体化した第1実
施例を第1〜18図に従って説明する。
第1図はエンジンマウント1の概略構成を示す図であ
る。エンジンマウント1は、エンジンに対しボルト2に
よって装着されるブラケット3と、自動車ボディに対し
ボルト4によって装着される本体ケース5とを備えてい
る。前記本体ケース5とブラケット3との間には緩衝用
上部ゴム体6が固着されており、この上部ゴム体6によ
って本体ケース5の上部開口が塞がれている。
前記本体ケース5の内底部には薄板状の下部ゴム体7
が張設され、この下部ゴム体7よりも下側の空間は大気
と連通した空気室8とになっている。また、本体ケース
5内において上下両ゴム体6,7間には連通部9が設けら
れており、この連通部9によって上下両ゴム体6,7間の
空間が、第1の流体室10及び第2の流体室11に区画され
ている。そして、前記両流体室10,11内に電気粘性流体
(以下、単に流体という)Lが封入されている。流体L
は通常状態では一般の水溶液と同様の挙動を示すが、電
圧を印加すると粘度が増加するという特性(電気粘性効
果)を有する液体である。
前記連通部9は第2,3図に示すように多数本の棒状電
極を備え、同棒状電極は互いに離間した状態で前後方向
(第2図において上下方向、第3図において紙面と直交
する方向)へ延びるように配設されている。また、棒状
電極は第1〜第6の電極群A1〜A6に区分でき、各電極群
A1〜A6は第1及び第2の流体室10,11を結ぶ方向(第3
図の上下方向)に対し、互いに離間した状態で積層配置
されている。そして、これらの棒状電極のうち半数が正
電極Bで、残りの半数が負電極Gとなっており、これら
の正・負両電極B,Gは互い違いに配置されている。
従って、左右方向には正電極Bと負電極Gとが交互に
並べられ、上下方向には同一種類の電極が並べられてい
ることになる。ここで、同一電極群A1〜A6における複数
本の正電極Bを互いに区別するために、図の左端の正電
極を基準、つまりB1とし、その右隣の正電極をB2、その
右隣の正電極をB3、以下同様に数字が順に大きくなるよ
うに番号を付す。なお、前記負電極Gはいずれもアース
されている。
前記各電極群A1〜A6の正電極B1〜B7には、第1図に示
すように分配器12が接続されている。また、分配器12に
はトランス13を介してバッテリ14が接続されている。よ
って、バッテリ14の電圧がトランス13にて昇圧され、そ
の昇圧された電圧が分配器12に供給される。そして、分
配器12の分配動作により、昇圧された電圧がいずれかの
正電極B1〜B7に供給される。また、コントローラ15には
車速センサ16及び回転数センサ17が接続されている。
コントローラ15はエンジン運転時に発生する各種振動
を、第4図に示す5つの領域a〜eに区分する。すなわ
ち、コントローラ15は回転数センサ17及び車速センサ16
からの信号を入力してエンジン回転数及び車速を検知
し、アイドリング振動領域aと、シェイク領域bと、ク
ランキング領域cと、中速こもり音領域dと、高速こも
り音領域eのいずれに属するかを判断する。そして、コ
ントローラ15はこれらのデータをもとにして前記分配器
12を制御して、昇圧されたバッテリ電圧をいずれかの正
電極B1〜B7に印加するようになっている。
次に、前記のように構成されたエンジンマウント1の
作用について説明する。
自動車運転時にエンジンからエンジンマウント1に振
動が加わると、上部ゴム体6が変形し第1の流体室10の
容積が変化する。すると、第1の流体室10内の流体L
は、連通部9を介して第2の流体室11へ移動しようとす
る。
一方、コントローラ15は車速センサ16及び回転数セン
サ17からの信号を入力して車速及びエンジン回転数を検
知し、そのときのエンジン振動が前記した5つの領域a
〜eのうちのどの領域に属するかを判断する。そして、
コントローラ15は前記領域a〜eに応じて分配器12を制
御し、トランス13によって昇圧されたバッテリ電圧を正
電極B1〜B7に選択的に印加する。
すると、例えば第5図に示すように、正電極B1〜B7と
負電極Gとの間に電界が発生し流体Lの粘度が増加す
る。これにより連通部9内の流体Lのうち電圧が印加さ
れた部分は高粘度の壁Wとなり、それ以外は低粘度のま
まである。つまり、前記壁Wによって、第1の流体室10
から第2の流体室11へ移動する流体Lの流路Rが形成さ
れる。そして、前記連通部9内の流体Lのうちの可動部
分が入力振動と共振してこれを打ち消そうとし、前記第
1の流体室10から第2の流体室11への振動伝達が抑制さ
れる。
次に、各振動領域a〜e毎にエンジンマウント1の防
振特性を説明する。
第5図は、前記車速センサ16及び回転数センサ17から
の信号に基づきコントローラ15が、アイドリング振動領
域aにあると判断したときの電圧印加状態を示してお
り、第1電極群A1及び第3電極群A3においては正電極B1
〜B6に電圧が印加され、第2電極群A2においては正電極
B3〜B7に電圧が印加されている。他の電極群A4〜A6の正
電極B1〜B7にはいずれも電圧が印加されていない。
この状態では電圧が印加された正電極B1〜B7と、その
正電極B1〜B7の隣接の負電極Gとの間に流体Lによる高
粘度の壁Wができる。すなわち、第1電極群A1及び第3
電極群A3においては右端部を除く部分に壁Wが生じ、第
2電極群A2においては左端部を除く部分に壁Wが生じ、
これらの壁Wによって流路Rが形成される。
そのため、第1の流体室10内の流体Lは、矢印で示す
ように、第1電極群A1の右端部から連通部9内へ入り込
み、同第1電極群A1内の壁Wと第2電極群A2内の壁Wと
の間を通って左方へ流れる。この流体Lは第2電極群A2
の左端部へ至ると下方へ向きが変えられる。向きが変え
られた流体Lは第2電極群A2の壁Wと第3電極群A3の壁
Wとの間を通って右方へ流れ、第3電極群A3の右端部に
至ると下方へ向きが変えられる。そして、第4〜6電極
群A4〜A6では壁Wが形成されていないので、前記流体L
は下方へ向けて流れる。
このときに壁Wによって形成される流路は断面積Sが
120mm2と小さく、長さLが40mmと長い。そして、第6図
に示すように動ばね定数Kdが30Hz前後で低くなる。従っ
て、エンジンマウント1の防振特性は低周波域でソフト
となり、アイドリング振動を吸収することが可能とな
る。
第7図は、コントローラ15がシェイク領域bにあると
判断したときの電圧印加状態を示しており、奇数番目の
電極群A1,A3,A5においては正電極B1〜B6に電圧が印加さ
れ、偶数番目の電極群A2,A4,A6においては正電極B3〜B7
に電圧が印加されている。この電圧印加により、奇数番
目の電極群A1,A3,A5においては右端部を除く部分に高粘
度の壁Wが生じ、偶数番目の電極群A2,A4,A6においては
左端部を除く部分に壁Wが生じ、これらの壁Wによって
流路Rが形成される。
そのため、第1の流体室10内の流体Lは、矢印で示す
ように、前述したアイドリング振動領域aの場合と同様
に、第1〜3電極群A1〜A3間の流路Rを通過した後、第
3電極群A3の壁Wと第4電極群A4の壁Wとの間を通って
左方へ流れる。この流体Lは第4電極群A4の左端部へ至
ると下方へ向きが変えられた後、同第4電極群A4の壁W
と第5電極群A5の壁Wとの間を通って右方へ流れ、第5
電極群A5の右端部に至ると下方へ向きが変えられる。前
記流体Lはさらに第5電極群A5の壁Wと第6電極群A6の
壁Wとの間を通って左方へ流れ、左端部に至ると下方へ
向きを変えられる。
このときに壁Wによって形成される流路は断面積Sが
前記アイドリング振動領域aと同程度に小さく(120m
m2)、長さLが同アイドリング振動領域aに比較し200m
mと長い。そして、第8図に示すように動ばね定数Kd
び減衰係数Cは20Hz前後の低周波域で共に高くなる。従
って、エンジンマウント1の防振特性は低周波域でハー
ドとなり、シェイクを吸収することが可能となる。
第9図はコントローラ15がクランキング領域cにある
と判断したときの電圧印加状態を示しており、各電極群
A1〜A6における正電極B2〜B7に電圧が印加され、各電極
群A1〜A6の左端部を除く部分に壁Wが生じ、これらの壁
Wによって縦に細長い流路Rが形成されている。
そのため、第1流体室10内の流体Lは、矢印で示すよ
うに、連通部9の左端部を通って真っ直ぐ下方へ流れ、
第2の流体室11内へ入り込む。このときに壁Wによって
形成される流路Rは、断面積Sが30mm2と小さく、長さ
Lが12mmと短い。そして、第10図に示すように減衰係数
Cは低周波域で高くなる。従って、エンジンマウント1
の防振特性は低周波域で非常にハードとなり、クランキ
ング振動を吸収可能な状態となる。
第11図はコントローラ15が中速こもり音領域dにある
と判断したときの電圧印加状態を示しており、全電極群
A1〜A6におけるそれぞれの正電極B1〜B3に電圧が印加さ
れている。この状態では各電極群A1〜A6の左側部に流体
Lによる壁Wができる。そのため第1の流体室10内の流
体Lは、矢印で示すように第1電極群A1の右側部から連
通部9内へ入り込み、各電極群A1〜A6の右側部を通って
下方へ流れる。
このときに壁Wによって形成される流路Rは断面積S
が480mm2と大きく、長さLが12mmと短い。そして、第12
図に示すように動ばね定数Kdが100〜200Hz前後の高周波
域で低く、防振特性は中速走行時にソフトとなり、中速
こもり音を吸収可能な状態となる。
13図はコントローラ15が高速こもり音領域eにあると
判断したときの電圧印加状態を示しており、いずれの正
電極B1〜B7にも電圧が印加されていない。そのため第1
の流体室10内の流体Lは、矢印で示すように、第1電極
群A1から第6電極群A6に向けて流れる。
このとき、流路Rの断面積Sが750mm2と非常に大き
く、長さLが12mmと短い。そして、第14図に示すように
動ばね定数Kdは、中速こもり音領域dの場合と同様に高
周波域で低く、防振特性は高周波域でソフトとなり、高
速こもり音を吸収可能となる。
さらに、前記流路Rの断面積S及び長さLと、動ばね
定数Kd及び減衰係数Cとの関係を調べるために、以下の
ようなシュミレーションを行った。
第15図は流路Rの長さLを一定(10mm)にし、断面積
Sを10〜400mm2の範囲で変化させたときの減衰係数C及
び動ばね定数Kdを示すグラフである。この際、断面積S
が400mm2で長さLが10mmの場合に、共振周波数ωが15
0Hzとなるように設定されている。
このグラフより、断面積Sが400mm2のときには動ばね
定数Kdの最大値と最小値との差が大きいが、この差は断
面積Sが小さくなるに従い小さくなり、同断面積Sが10
mm2ではほぼ0、すなわち、特性がフラットとなる。ま
た、減衰係数Cは断面積Sが多少小さくなってもあまり
変化しない。
第16図は流路Rの断面積Sを一定(400mm2)にし、長
さLを10〜200mmの範囲で変化させたときの減衰係数C
及び動ばね定数Kdを示すグラフである。この測定でも、
断面積Sが400mm2で、長さLが10mmの場合に、共振周波
数ωが150Hzとなるように設定されている。
このグラフより、流路Rの長さLが10mmでは減衰係数
Cが小さいが、この長さLが長くなるに従って減衰係数
Cが次第に大きくなる。しかも、この減衰係数Cの変化
は、周波数の変化が50〜150Hzのわずか100Hzの帯域で見
られる。
従って、前記第15,16図より、流路Rの断面積Sを変
化させても減衰係数Cはほとんど変化しないが、長さL
を少し変化させるだけで減衰係数Cを効果的に変化させ
ることができる。
さらに、第17図は流路Rの断面積S及び長さLを共に
変化させたときの減衰係数C及び動ばね定数Kdを示すグ
ラフである。この際、断面積Sが400mm2で長さLが10mm
の場合に、共振周波数ωが150Hzとなるように設定さ
れている。このグラフより、断面積Sと長さLの値を適
宜組み合わせることにより、動ばね定数Kdの最小値をほ
ぼ0に制御することができる。
前記のように本実施例では流路Rの断面積Sと長さL
を調整することによって、動ばね定数Kd及び減衰係数C
を変化させることができるので、従来技術よりも広範囲
の周波数領域にたり最適な防振特性を得ることができ
る。第18図(a)にはエンジンの振動数と動弾性係数と
の関係を示し、図中ハッチング部分は調整可能な領域を
示す。また、第18図(b)はエンジンの振動数と減衰力
との関係を示し、図中ハッチング部分は調整可能な領域
を示す。これらの図から、450Hz以下の広範囲の周波数
領域にわたり動弾性係数及び減衰力を調整することが可
能となり、これらの領域で最適な防振特性を得ることが
できる。
ところで、前記のように各電極群A1〜A6の正電極B1〜
B7に対し選択的に電圧を印加し、流路Rの断面積S及び
長さLを可変とすることで、動ばね定数Kd及び減衰係数
Cを変化できるのは次のような理由によるものと考えら
れる。
すなわち、減衰係数Cが大きく動ばね定数Kdが小さく
なるときの共振周波数fnは、次式(1)から流体Lの共
振周波数ωによって決定される。
ω=2π・fn ……(1) また、前記共振周波数ωは、 ωn 2={S2(K1+K2)}/m ……(2) で表される。ここで、K1,K2は第1及び第2の流体室10,
11の上下ゴム体6,7の体積弾性係数である。また、mは
流路R内の流体Lの質量であり、 m=ρSL ……(3) で表される。なおρは密度である。従って、(3)式を
(2)式に代入すると次のようになる。
ωn 2={S2(K1+K2)}/ρSL =(S/L)・{(K1+K2)/ρ} ……(4) ここで、(K1+K2)/ρは定数であるから、ωは流
路Rの断面積Sと長さLとによって変化することがわか
る。
一方、減衰係数Cと断面積Sと長さLの関係は C∝(L3/2)/(S1/2) ……(5) で表される。(5)式より、減衰係数Cを大きくするに
は断面積Sを小さく、かつ長さLを長くする必要があ
る。
上記(4),(5)式より、長さLを一定にした状態
で断面積Sを小さくしていくと、共振周波数ωが小さ
くなりながら減衰係数Cが大きくなっていくことがわか
る。また、断面積Sを一定にした状態で長さLを長くし
ていくと、共振周波数ωが小さくなりながら減衰係数
Cが大きくなっていくことがわかる。このとき、(5)
式でのLのべき数がSのべき数よりも大きいため、減衰
係数Cの変化は断面積Sを変化させた場合よりも大き
い。さらに、断面積S及び長さLの両者が可変の場合に
は、共振周波数ωを変化させずに減衰係数Cを大きく
することができる。
このように、本実施例では前記連通部9内において、
第1及び第2の流体室10,11を結ぶ方向に複数の正・負
電極B,Gを離間して配設するとともに、第1及び第2の
流体室10,11を結ぶ方向と交差する方向に複数の正・負
電極B,Gを離間して配設し、同連通部9内の正・負電極
B,G間に選択的に電圧を印加することにより流体Lの粘
度を増加させて、第1の流体室10から第2の流体室11へ
の振動伝達を抑制するようにした。このため、流体Rの
断面積Sのみを可変とした従来技術に加え、本実施例で
は長さLも可変となり、所定の共振周波数ωで減衰係
数Cを制御できるとともに、動ばね定数Kdを最小となる
ように制御することが可能となった。従って、共振周波
数ωはもちろんのこと、減衰係数C及び動ばね定数Kd
を制御することができる。
なお、本実施例では前記以外にも次のような作用及び
効果を奏する。
本実施例では正電極B1〜B7に対し、一定の大きさの電
圧を印加するか否かのオン・オフ制御を行うようにした
ので、電圧の大きさを制御する場合に比べ制御回路が簡
単となり、応答性が良いものとなる。
流体Lの粘度は電界強度(V/mm)、つまり、正・負電
極B,G間に印加される電圧と両電極B,G間の距離とによっ
て定まる。このことから、正電極Bと負電極Gとの間隔
を狭めれば、同一電界強度を得るのに必要な制御電圧を
低くすることができる。しかし、このように両電極B,G
間の間隔を狭めると、単位体積中の正電極B及び負電極
Gの数が多くなり、流路Rの断面積Sが小さくなってし
まう問題がある。
ところが、本実施例では断面積Sだけでなく長さLも
可変であるので、前記のように断面積Sが小さくなって
も長さLを調整することによって、防振特性を確保しつ
つ制御電圧を低下させることができる。
アイドリング時の振動を低減させることによりアイド
ル回転数を下げることができ、燃費の向上を図ることが
可能となる。
エンジンマウント1の防振特性を制御することにより
エンジンとボディとの干渉を防止できるので、各種スト
ッパが不要となり軽量化を図ることが可能となる。
[第2実施例] 次に、本発明の第2実施例を第19〜25図に従って説明
する。
本実施例では第19図に示すように各電極群A1〜A10を
同一電極B,Gによって構成し、上下に隣接する正・負電
極B,Gを左右にずらしている点が前記第1実施例と大き
く異なっている。以下に、これらの相違点について前記
第1実施例と対比しながら説明する。
前記第1実施例における理想的な共振周波数fnは前記
(1),(2)式から、 fn=(1/2π)・ω =(1/2π)・{S2(K1+K2)/m}1/2 ……(6) で表される。上記(6)式におけるmは、正・負両電極
B,G間の流体Lの質量である。ここで、第20図に示すよ
うに正電極B及び負電極G間の領域をZ0とすると、この
領域Z0内の流体Lの質量がmとなる。
ところが、前記第1実施例では正電極B及び負電極G
の左右の端部同士が上下に揃えられている。このため、
正電極B及び負電極G間に電圧が印加されていない場合
に、両電極B,G間に矢印で示す方向に流体Lが通過する
と、次のような現象が起こる。すなわち、前記流体Lの
流れに基づき生ずる慣性力により、前記領域Z0の上下に
繋がる領域Z1,Z2内の流体Lの慣性質量mcが前記質量m
に加わる。そのため、上式(6)におけるmは、実際に
は前記慣性質量mcが加わった分だけ大きな値となる。
従って、実際の共振周波数fn′は、 fn′=(1/2π){S2(K1+K2)/(m+2mc)}1/2 となり、この共振周波数fn′は、前記慣性質量mcが加わ
ったことにより前記共振周波数fnよりも小さくなり、実
際の共振点が低周波側へ移行してしまうという問題があ
る。
また、前記正電極Bと負電極Gを上下に揃えた状態で
配置した場合、流体Lが電圧印加により生じた高粘度の
壁Wに当たると、この壁Wが同流体Lの慣性力によって
破壊されるおそれがある。
そこで、本実施例では第19図に示すように電極群の数
を10とし、奇数番目の電極群A1,A3,A5,A7,A9をそれぞれ
複数本(4本)の薄板状負電極Gによって構成するとと
もに、偶数番目の電極群A2,A4,A6,A8,A10をそれぞれ複
数枚(5枚)の薄板状正電極B1〜B5によって構成してい
る。これらの正・負両電極G,B1〜B5は互いに同一形状を
なしている。
前記正・負両電極G,B1〜B5は、その両端が上下方向に
揃えられた状態で配置されているのではなく、左右にず
れた状態で配置されている。すなわち、正電極B1〜B5の
両端部は上下に隣接する両負電極G間の左右方向ほぼ中
央に位置している。そのため、左右に隣接する電極B1〜
B5,G間の間隙gの下方には必ず異極の電極G,B1〜B5が位
置していることになる。
従って、例えば第21図に示すように、正電極B2に電圧
が印加されていて、同正電極B1と負電極Gとの間に高粘
度の壁Wが生じている場合に、矢印で示すように、隣接
する負電極G間の間隙gを流体Lが下方へ向けて流れる
と、その流体Lは同間隙gの下方に位置する正電極B1に
衝突する。この衝突により流体Lは慣性力が低下された
状態で90゜向きを変えられ、右方へ流れる。そして、流
体Lは前記壁Wに衝突して90゜向きを変えられ、正電極
B1,B2間の間隙gを通って下方へ流れる。前記流体Lは
間隙gの下方の負極Gに衝突して向きを90゜変えられ、
左方へ流れる。そして、流体Lは負電極G間の間隙gを
通って下方へ流れる。
このように、流体Lの慣性力は同流体Lの正電極B1と
の衝突によって低下されるので、この慣性力にともなう
慣性質量mcが減少することになる。従って、このときの
共振周波数fnは前記した共振周波数fn′よりも高くな
る。
また本実施例では前述のように、流体Lが正・負電極
B1〜B5,Gに衝突することによって同流体Lの慣性力が低
下するので、同流体Lが高粘度の壁Wに衝突する際の衝
撃は、その慣性力低下の分だけ弱くなる。そのため、こ
の壁Wの破壊を未然に防止できる。
さらに、本実施例では電圧印加時に形成される流体L
の壁Wを保持するために、流体Lの流路Rでの慣性力
(動圧)を積極的に利用できる。すなわち、第22図にお
けるα−αでの圧力分布を第23図でLαで示すととも
に、第22図におけるβ−βでの圧力分布を第23図でLβ
で示す。これらの図から明らかなように、壁W1に加わる
剪断力τは、 τ=P−(P1+ΔP1) で表される。ここで、Pは第1の流体室10内の流体Lの
静圧、P1は流路R内の流体Lfの静圧、ΔP1は流体Lの流
路Rでの動圧である。なお、第1の流体室10内の流体Lf
の静圧Pが増加すると、流路Rでの流速が増加し上記Δ
P1も増加して剪断力τの増加を抑制する。
このように、流体Lの壁Wに加わる剪断力τは動圧Δ
P1分だけ小さくできる。よって、流体Lの慣性力(動
圧)を利用しない場合に比べ、低い印加電圧で壁Wを形
成しても同程度の強度を有することとなる。
なお、第24図にはアイドリング振動領域(a)での電
圧印加状態を、第25図にはシェイク領域(b)での電圧
印加状態を、第19図には高速こもり音領域(e)での電
圧印加状態(壁Wの形成状態)をそれぞれ示す。各状態
での防振特性は前記第1実施例と同様であるので、ここ
では詳しい説明を省略する。
本発明は前記実施例の構成に限定されるものではな
く、例えば以下のように発明の趣旨から逸脱しない範囲
で任意に変更してもよい。
(1)エンジンの運転状態を検出するセンサとして、前
記した車速センサ16及び回転数センサ17以外にも、スロ
ットルポジションセンサ、ステアリングセンサ、ストッ
プランプセンサ、スタータスイッチ等を用い、加速状
態、車両ロール状態、ブレーキ状態、クランキング等を
判断して、各種状態に応じて電圧の印加条件を変更する
ようにしてもよい。
(2)連通部9における電極群A1〜A10の数や、各電極
群A1〜A10中の正・負電極B,Gの数を適宜変更してもよ
い。
[発明の効果] 以上詳述したように、本発明の電気粘性流体封入式防
振装置では、第1の流体室及び第2の流体室を連通させ
る連通部に、所定方向へ複数の電極が互いに離間配置さ
れることにより構成された電極群を複数群設け、それら
各電極群を前記電極群における各電極の離間配置方向と
交差する方向へ互いに離間させて積層するように配設
し、前記電極間に選択的に電圧を印加して両電極間の電
気粘性流体の粘度を増加させることにより、電気粘性流
体の通過可能な流路の実質的な断面積及び長さを可変と
したので、共振周波数とともに減衰係数及び動ばね定数
も可変とすることができ、広範囲の周波数領域にわたり
最適な防振特性を得ることができるという優れた効果を
奏する。
【図面の簡単な説明】
第1〜18図は本発明をエンジンマウントに具体化した第
1実施例を示し、第1図はエンジンマウントの概略構成
を示す図、第2図は第1図のII−II線断面図、第3図は
連通部の縦断面図、第4図はエンジン振動の各種領域を
示すマップ、第5図はアイドリング振動領域における連
通部内の流路を示す図、第6図は同じくアイドリング振
動領域での防振特性を示すグラフ、第7図はシェイク領
域における連通部内の流路を示す図、第8図は同じくシ
ェイク領域での防振特性を示すグラフ、第9図はクラン
キング領域における連通部内の流路を示す図、第10図は
同じくクランキング領域での防振特性を示すグラフ、第
11図は中速こもり音領域における連通部内の流路を示す
図、第12図は同じく中速こもり音領域での防振特性を示
すグラフ、第13図は高速こもり音領域における連通部内
の流路を示す図、第14図は同じく高速こもり音領域での
防振特性を示すグラフ、第15図は流路の断面積を変化さ
せた場合の防振特性を示すグラフ、第16図は流路の長さ
を変化させた場合の防振特性を示すグラフ、第17図は流
路の断面積及び長さを共に変化させた場合のグラフ、第
18図(a)は振動数と動弾性係数との関係を示す図、第
18図(b)は振動数と減衰力との関係を示す図である。
また、第19〜25図は本発明の第2実施例を示し、第19図
は連通部の縦断面図、第20図は第1実施例での慣性質量
による共振を説明するための図、第21図は第2実施例で
の流体の慣性質量の共振を説明するための図、第22図は
流体の慣性力を壁の保持に利用した状態を説明するため
の図、第23図は第22図におけるα−α及びβ−βでの圧
力分布を示す図、第24図はシェイク領域における連通部
内の流路を示す図、第25図はアイドリング振動領域にお
ける連通部内の流路を示す図であり、第26図(a)は従
来技術における振動数と動弾性係数との関係を示す図、
第26図(b)は従来技術における振動数と減衰力との関
係を示す図である。 9……連通部、10……第1の流体室、11……第2の流体
室、B……正電極、G……負電極、L……電気粘性流
体。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気粘性流体が封入された第1の流体室及
    び第2の流体室を連通部を介して連通させ、同連通部に
    は複数の電極を離間配置し、前記電極間に選択的に電圧
    を印加して両電極間の電気粘性流体の粘度を増加させる
    ことにより防振特性を可変とした電気粘性流体封入式防
    振装置において、 前記連通部には、所定方向へ複数の電極が互いに離間配
    置されることにより構成された電極群を複数群設け、そ
    れら各電極群を前記電極群における各電極の離間配置方
    向と交差する方向へ互いに離間させて積層するように配
    設したことを特徴とする電気粘性流体封入式防振装置。
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