JP2696860B2 - 放射線検出素子 - Google Patents
放射線検出素子Info
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、X線CT装置に使用される放射線検出素子に
関し、特に、放射線入射位置による検出感度のバラツキ
が少く、高SN比で検出感度が高く、実装が容易な放射線
検出素子に関する。 〔従来技術〕 従来、代表的なX線CT装置用固体検出素子としては、
シンチレータとフォトダイオードとを組み合わせたもの
がある。 また、フォトダイオードについては近年、非晶質材料
の応用研究の進歩により、例えば、“集積化アモルファ
スX線センサー,魏 光晋、岡本博明、浜川圭弘、谷口
正克、前畑英彦、大工博之共著,応用物理学会誌,第55
巻,1986年,第824頁〜829頁”に記載されているよう
に、フォトダイオードとして非晶質シリコンフォトダイ
オードを用いることが可能になりつつある。 なお、この種の方法として関連するものには、例え
ば、特開昭62−71881号、および特開昭62−43585号が挙
げられる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 上記従来技術では、非晶質シリコン(以下a−Siと略
す)フォトダイオードに関し、非晶質太陽電池の開発
や、ファクシミリ用一次元ラインセンサに用いる非晶質
フォトダイオードの開発で培われた技術を応用すること
ができる。 しかし、X線CT装置に使用される放射線検出素子と、
これらの技術分野で開発されたフォトダイオードとは応
用目的が異なるため、必ずしも最適ではない。 例えば、フォトダイオードの空乏層厚さについては、
フォトダイオードの構造がpin構造の場合、空乏層厚さ
はi層膜厚により決まる。 さらに、この膜厚は光検出感度、つまり、検出信号電
流が最大となるように設定される。 一般に、短波長の光に対しては膜厚を薄くするに従っ
て光感度は高くなる。例えば、ZnS:NiやZnS等、発光波
長が500nm〜600nmの範囲のシンチレータに対しては、pi
n構造フォトダイオードのi層膜厚は0.5μm程度に設定
さる。 一方、X線CT装置用検出素子として最も重要な性能
は、検出素子に起因するノイズがX線量子ノイズに比べ
て十分、小さいことである。 しかし、従来のa−Siフォトダイオードの性能は、こ
の点に関して満足できるものではなかった。 本発明の目的は、このような問題点を改善し、X線CT
装置用検出素子として十分なノイズ特性を有する放射線
検出素子を提供することにある。 〔問題を解決するための手段〕 上記目的を達成するため、本発明の放射線検出素子
は、放射線を光に変換するシンチレータと、該シンチレ
ータからの発光を電気信号に変換する非晶質シリコンフ
ォトダイオード、および非晶質シリコンフォトダイオー
ドが発生する電気信号を検出する電子回路を備えた放射
線検出素子において、pin構造の非晶質シリコンフォト
ダイオードでは、光感度とi層膜厚dの関係、および検
出素子ノイズとi層膜厚dの関係を測定し、それらの関
係から、最終的に得られる検出電気信号のSN比が主に入
射放射線の量子ノイズに起因するように、従来よりもi
層膜厚dを厚く、ε、SA、dをMKS単位系として、2.6×
10-3εSAd8.6×10-3εSA(ε:i層の比誘電率,SA:
非晶質シリコンフォトダイオードの面積(m2))の範囲
に設定したことに特徴がある。 〔作用〕 本発明においては、a−Si pinフォトダイオードの
i層膜厚dを設定する場合、光検知感度のi層膜厚依存
性と、検出素子ノイズのi層膜厚依存性とから、検出系
のSN比を求め、その値に基づいてi層膜厚dを最適化す
る。 つまり、フォトダイオードの空乏層を厚くすることに
より、検出信号ノイズは大幅に減少するため、空乏層を
厚くしたことにより、光検出電流が減少するにも拘ら
ず、検出信号のSN比は大幅に向上する。 なお、従来は光検知感度のi層膜厚依存性のみを考慮
して空乏層厚さを設定していた。 〔実施例〕 以下、本発明の一実施例を図面により説明する。 第3図は、本発明の一実施例における放射線検出回路
の構成図である。 本実施例の放射線検出回路は、放射線検出素子31、お
よびオペアンプ32を備え、放射線をシンチレータにより
光に変換し、さらにa−Si pinフォトダイオードによ
り電気信号に変換して、オぺアンプ32を介し、その電圧
信号を検出する。また、a−Si pinフォトダイオード
のi層膜厚dについては、従来方法と異なり、光検知感
度との関係の他に、検出素子ノイズとの関係を考慮して
設定している。 まず、本実施例におけるこのa−Si pinフォトダイ
オードのi層膜厚dの設定方法について述べる。 第1図は、本発明の一実施例における放射線検出素子
のi層膜厚d(μm)と検出信号のSN比との関係を示す
説明図、第4図はa−Si pinフォトダイオードを用い
た場合の出力ノイズと入力容量との関係を示す説明図、
第5図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場合の
出力ノイズ電圧とi層膜厚d(μm)との関係を示す説
明図、第6図はa−Si pinフォトダイオードを用いた
場合の出力電圧とi層膜厚d(μm)との関係を示す説
明図である。 一般に、検出信号のノイズ電圧VNは、次の式で示され
る。 (1)VN 2=VX 2+VD 2 但し、VXはX線量子ノイズ電圧、VDは検出素子ノイズ
電圧である。 従って、検出信号電圧をVSとすると、次の式が得られ
る。 (2)(S/N)2=VS 2/VN 2=VS 2/(VX 2+VD 2) また、本実施例における放射線検出回路と同様に、オ
ペアンプを含む検出回路により、放射線検出を行う場
合、検出信号電圧VSは次の式で示される。 (3)VS=iSRf=eXpq(d)Rf 但し、iSは信号電流、Rfはフィードバック抵抗、eは
電気素量、Xは検出素子シンチレータのX線吸収量(X
−photon数/素子・秒)、pは蛍光体のX線光子から可
視光子への変換量子効率、q(d)はa−Siフォトダイ
オードの空乏層厚さdに依存する光電変換量子効率であ
る。 すなわち、VSは空乏層厚さd(μm)の関数であり、
通常はVSが最大となるようにi層膜厚d(μm)を設定
している。なお、pin構造フォトダイオードでは空乏層
厚さdはi層膜厚にはほぼ等しい。 また、シンチレータ発光波長の典型例として緑色光を
選び、緑色光に対するVSの測定を行った場合、第6図の
ような測定結果が得られる。 なお、この測定では、Gd2O2S:Pr,Ce,Fシンチレータに
i層膜厚0.35μmのa−Si pinフォトダイオードを密
着した放射線検出部に、管電圧120kVのX線を1μR/1ms
で照射したときの出力電流を、ナショナルセミコンダク
タ社製オペアンプLF356Hにフィードバック抵抗5MΩを接
続した電流・電圧変換回路の出力電圧として測定し、8m
Vの出力を得た。 また、i層膜厚0.68μm、1.0μm、2.2μm、および
2.6μmのPINフォトダイオードについても同様に出力電
圧を測定し、第4図(□印、■印、△印、▲印、▽
印)、および第6図(○印)に測定値を示した。 従って、第6図より、d〜0.5μmで検出信号電圧VS
が最大となることが示される。これはi層膜厚dが0.5
μm以上、厚くなると短波長光感度が低下するという従
来の知見と一致する。また、現実に太陽電池用a−Si
pinフォトダイオードで用いられるi層膜厚(〜0.5μ
m)とも一致している。 さらに、ノイズについて述べる。 まず、X線量子ノイズ電圧VXについては、次の式で示
される。 但し、tはX線照射時間である。 また、診断用X線CT装置では、例えば1プロファイル
データ当り、1ms間にX線管電圧120kVのX線を1mR照射
する。このX線は人体腹部を透過すると、約1/1000に減
衰する。このため、検出素子に吸収されるX線数Xtは、
シンチレータのX線吸収率を0.9、シンチレータのX線
入射面積を20mm2とすると、 (5)1(mR)×20(mm2)×6.67×1011(X−photon/ mR・mm2)×10-3×0.9=1.2×104(X−photon/素子) となる。 従って、(3)〜(5)式により、X線量子ノイズに
起因する(S/N)Xは次の式で示す程度となる。 また、検出系のノイズについては、本実施例における
放射線検出回路と同様に、a−Siフォトダイオードとオ
ペアンプとから構成された検出系では通常、電流性ノイ
ズと電圧性ノイズとである。 しかし、a−Siフォトダイオードでは、材料自身の抵
抗が高く、リーク電流が例えば10〜20pAと極めて小さい
ため、電流性ノイズは無視することができる。 一方、電圧性ノイズは主に抵抗性熱雑音、およびオペ
アンプのノイズである。 このオペアンプのノイズは、a−Siフォトダイオード
に付随する入力容量Ciの増加とともに増える。なお、第
3図では入力容量Ciは点線で示される。 また、a−Siフォトダイオードでは結晶Siフォトダイ
オードに比べて空乏層厚さdが通常、0.3μm〜0.7μm
と薄いため、一般に容量が大きくなる。 本実施例におけるX線CT装置用の放射線検出素子で
は、システムの要求によりa−Siフォトダイオード面積
(SA)は通常、20〜30mm2と大きいため、特に容量が大
きくなり、アンプノイズは著しく増培される。 そこで、入力容量Ciが大きい場合の容量とノイズの関
係を調べる。 まず、帰還抵抗Rfから生じる抵抗性熱雑音eiRは次の
式で示される。 但し、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Bは帯域
幅である。 また、この出力換算ノイズeoRは、次の式で示され
る。 (8)eoR=eiR/(1+SCfRf) 但し、Cfは帰還容量、Sは周波数である。また、この
eoRは入力容量Ciに依存しない。 さらに、アンプノイズen1の出力換算ノイズをeonとす
ると、アンプノイズen1の伝送特性eon/en1は、次の式で
示される。なお、市販の低雑音アンプではオプアンプの
en1の値は 程度である。 (9)eon/en1=−(K+1)G(S)/(K+1+G(S)) (10)K=SCiRf/(1+SCiRi)/(1+SCfRf) 但し、G(S)はアンプの電圧利得、Riは入力抵抗で
ある。 また、検出素子ノイズ電圧VDは、(8)、(9)式で
与えられるeon、およびeoRを用いて、次の式で示すこと
ができる。 但し、S1、およびS2は検出回路の周波数帯域の下限、
および上限である。 さらに、(9)(10)および(11)式により、VDはCi
の関数であることがわかる。 また、本実施例と同様の検出回路において、例えばRf
=5MΩ、Cf=40pFである場合、入力容量Ciと検出素子ノ
イズ電圧VDとの関係は測定値から第4図のように示され
る。 なお、この測定では、Gd2O2S:Pr,Ce,Fシンチレータに
i層膜厚0.35μmのa−Si pinフォトダイオードを密
着した放射線検出部の出力信号を、ナショナルセミコン
ダクタ社製オペアンプLE356Hにフィードバック抵抗5MΩ
を接続した電流・電圧変換回路の出力電圧として検出し
た。 この結果、放射線を入射しないときの出力ノイズ電圧
を測定すると、380μVrmsであった。 また、i層膜厚1.0μmのフォトダイオードを同様の
検出回路に接続した場合のノイズ電圧は、30μVrmsであ
った。同様に、I層膜厚0.68μm、2.2μm、および2.6
μmのPINフォトダイオードについても検出素子ノイズ
電圧(出力ノイズ)を測定して、□印、■印、△印、▲
印、および▽印で示した。 なお、この測定ではフォトダイオードへの印加電圧を
0Vとしているが、逆バイアス電圧を1Vまで印加してもノ
イズ電圧は増加しなかった。 この第4図より、VDのCi依存性については、Ci=1500
pF以上では、 であることがわかる。 一方、Ciについては、主にa−Si pinフォトダイオ
ードの容量Cで決まり、それらの関係は次の式で示され
る。 (12)Ci〜C=εε0SA/d 但し、εはa−Siの比誘電率、ε0は真空誘電定数、
SAはa−Siフォトダイオードの面積、dは空乏層(i
層)膜厚であり、(12)式では、MKS単位系を使用して
おり、(12)式では、SAはm2、dはmの単位で表され
る。 なお、εは材料固有の値であり、a−Si:Hでは14程度
である。また、面積SAはCT画像の画素サイズやスライス
厚さで決まる。 例えば、幅が約1mm、スライス方向長さが25mmであれ
ば、SAは25mm2であり、この値は容易に変更できない。 この条件下で、a−Si pinフォトダイオードとして
従来、用いられているi層膜厚を適用すると、例えば0.
5μmの厚さでは、容量Cは(12)式より6200pFと非常
に大きくなり、検出素子ノイズ電圧VDが極めて大きくな
る。 このため、従来は光検知感度が最高となるように設定
していたi層膜厚dを、検出素子ノイズを考慮して再設
定することが必要である。 先に述べたように、(11)式より、VDはCiの関数であ
り、また、(12)式より、Ciは空乏層膜厚dの関数であ
るため、VDはdの関数であると言える。 従って、検出信号ノイズ電圧VNが検出素子ノイズ電圧
VDのみに起因するならば、VNは次の式で示される。 (13)VN=VN(Ci)=VN(Ci(d))=VN(d) また、この場合の検出素子ノイズ電圧VD(出力ノイズ
電圧)とi層膜厚dの関係は第5図に示される。 この第5図より、i層膜厚dを大きくすると、検出素
子ノイズ電圧VDが急激に減少することがわかる。特に、
0<d<1μmの範囲では、dが増加するとVDが急激に
減少する。 これらの測定結果から、本実施例では検出素子ノイズ
のi層膜厚依存性が極めて大きいことを考慮し、従来、
光検知感度を最大とするように設定していたi層膜厚d
について、検出系のS/Nを測定し、その値に基づいてi
層膜厚dを最適化する。 例えば、第4図に示された検出素子ノイズのi層膜厚
依存性、および第6図に示された光検知感度のi層膜厚
依存性から、放射線検出素子のS/N((S/N)D)を算出
し、第1図に○印で示す。 この第1図より、(S/N)DはI層膜厚d〜1.7μmで
最大となる。 すなわち、d1.7μmではdが大きくなるに従い、
ノイズが減少するため、(S/N)Dは向上するが、d
1.7μmではdの増大に伴うノイズの減少効果より、信
号量の減少が著しく、(S/N)Dは低下する。 また、d0.9μmでは(S/N)Dは220以下に低下
し、0.9μmd3.0μmでは(S/N)Dは220以上の良
好な値を示す。 特に、この範囲(0.9μmd3.0μm)ではX線量
子ノイズの(S/N)Xに対して、検出系の(S/N)Dは約
2培以上大きいため、CT画像情報を殆ど劣化することな
く、電気信号に変換することができる。 また、1.25μm<d<2.45μmでは、S/N比〜300以上
と極めて質の高い信号検出を行うことができる。 これにより、従来の方法、つまり、光検知感度を最大
にするようにi層膜厚dを設定する方法では得られなか
った高いS/Nの信号を検出することができる。 さらに、検出系ノイズとX線量子ノイズとの関係につ
いて述べる。 (1)式より、VN 2=VX 2+VD 2である。 X線CTシステムとして検出信号ノイズ電圧VNがX線量
子ノイズ電圧VXの何倍まで許容されるかについては、撮
影部位や診断対象によって異なるが、通常VNがVXの1.1
倍程度までは許容できると考えられる。 例えば、VN≦1.1VXをシステムの要求仕様とすると、V
Dの要求仕様は、(1)式より、VD≦0.46VXとなる。 これにより、次の式が得られる。 (14)(S/N)D≧(S/N)X/0.46=2.2S(S/N)X 例えば、第1図の結果では、(14)式を満たすi層膜
厚は、(S/N)X=110のとき、(S/N)D=220であるた
め、0.9μm以上となる。 このように、本実施例におけるi層膜厚dの設定方法
では、CT用放射線検出器において、最終的に得られる信
号のS/Nを、主に入射X線の量子ノイズに起因させるた
め、非晶質Siフォトダイオードの空乏層厚さを通常の設
定値に比べて厚い0.9μm〜3.0μmに設定し、検出器ノ
イズを小さくする。 さらに、本実施例では実際のCT用検出器の使用条件に
より評価した結果を用いているが、利用状況の変更等に
おいては、本実施例に含まれる各パラメータを変更する
ことにより、最適なi層膜厚が得られる。 例えば、面積SAやεが異なる場合には、(12)式を考
慮して要求仕様を求める。 この場合、(12)式と同様に、SA、d、εをMKS単位
系として、2.6×10-3εSAd8.6×10-3εSAという要
求仕様になる。 本実施例では比誘電率εは14程度、面積SA=25×10-6
(単位、m2)であり、0.9×10-6(=dmin、(単位、
m))≦d(単位、m)3.0×10-6(=dmax、(単位、
m))の条件は、(12)式で示される容量Cの関係で示
すと、Cmin≦C≦Cmaxとなり、Cmax(単位、F/m)=14
ε0×(25×10-6)/(0.9×10-6)、Cmin(単位、F/
m)=14ε0×(25×10-6)/(3.0×10-6)である。従
って、面積SA、比誘電率εが異なる場合には、Cmin≦C
≦Cmaxを満足させるためには、dmin=εε0SA/Cmax=ε
ε0SA×(0.9×10-6)/{14ε0×(25×10-6)}=k1
εSA(ここで、k1(単位、m-1)=(0.9×10-6)/{14
×(25×10-6)}=2.6×10-3である)、dmax=εε0SA
/Cmin=εε0SA×(3.0×10-6)/{14ε0×(25×10
-6)}=k2εSA(ここで、k2(単位、m-1)=(3.0×10
-6)/{14×(25×10-6)}=8.6×10-3である)とす
ればよい。 特に、3.6×10-3εSAd7.0×10-3εSAでは、(S/
N)Dは極めて高くなり、CT画像の画質はほぼ入射X線
の量子ノイズのみ、つまり(S/N)Xで決まるため、高
画質のCT画像の提供が可能である。 第2図は、本発明の一実施例における放射線検出素子
の構成図である。 本実施例の放射線検出素子は、透明電極54、p型水素
化シリコン55、i型水素化シリコン56、n型水素化シリ
コン57、および電極58をから構成されたa−Si pinフ
ォトダイオード59、透明膜53、シンチレータ51、および
光反射膜52を備える。 このシンチレータ51は、例えば熱間静水圧加圧法によ
り作成したGd2O2S:Pr,Ce,Fであり、厚さは1.5mm、X線
受光面の大きさは1.2mm×30mmである。また、上面、お
よび下面は鏡面研磨を施されている。 下面には、蛍光を反射するための光反射膜52として、
例えばAl蒸着膜を形成する。なお、必要に応じてシンチ
レータとAl蒸着膜の間に透明膜を配置することもでき
る。 また、上面には透明膜53を配置する。この透明膜53に
は、例えばSiO2、SiN4、Ta2O5等を用い、厚さは1μm
とする。 さらに、この透明膜53上にa−Siフォトダイオード59
を形成する。 すなわち、まず、ITO、SnO2、SnO2/ITO2層膜等の透明
電極54を形成する。 次に、p型、i型、n型の順に水素化非晶質シリコン
55〜57を形成する。なお、膜厚はp層0.01μm、i層1.
2μm、n層0.03μmである。 さらに、n層の上に電極58としてAl蒸着膜を形成す
る。なお、Al蒸着膜の大きさは1mm×25mmとする。 また、電極58の取り出しは透明電極とAl電極から行
い、出力信号は低雑音オペアンプを用いて電流・電圧変
換する。 なお、本実施例ではシンチレータの上にa−Siフォト
ダイオード1素子を形成したが、必要に応じて、1シン
チレータ上に多素子のフォトダイオードを形成すること
もできる。 例えば、30mm×20.8mmのシンチレータ上に30mm×1.2m
mのフォトダイオードを100μmの間隔で並列に16チャン
ネル形成することもできる。この場合、多素子がブロッ
ク化され、CT装置への実装が容易になる。 〔発明の効果〕 本発明によれば、シンチレータと非晶質シリコンフォ
トダイオード、および検出回路から構成されたX線CT装
置用の放射線検出素子において、検出器のS/N比を高く
することができる。 この結果、検出信号のSN比がほぼ入射X線の量子ノイ
ズによってのみ決まるため、その検出素子を用いたX線
CT装置においては、入射X線の量子ノイズのみのSN比を
もつ理想的なCT画像を得ることができる。 さらに、X線CT装置に限らず、他の放射線検出装置に
も固体検出素子のSN比向上方法として利用することが可
能である。
関し、特に、放射線入射位置による検出感度のバラツキ
が少く、高SN比で検出感度が高く、実装が容易な放射線
検出素子に関する。 〔従来技術〕 従来、代表的なX線CT装置用固体検出素子としては、
シンチレータとフォトダイオードとを組み合わせたもの
がある。 また、フォトダイオードについては近年、非晶質材料
の応用研究の進歩により、例えば、“集積化アモルファ
スX線センサー,魏 光晋、岡本博明、浜川圭弘、谷口
正克、前畑英彦、大工博之共著,応用物理学会誌,第55
巻,1986年,第824頁〜829頁”に記載されているよう
に、フォトダイオードとして非晶質シリコンフォトダイ
オードを用いることが可能になりつつある。 なお、この種の方法として関連するものには、例え
ば、特開昭62−71881号、および特開昭62−43585号が挙
げられる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 上記従来技術では、非晶質シリコン(以下a−Siと略
す)フォトダイオードに関し、非晶質太陽電池の開発
や、ファクシミリ用一次元ラインセンサに用いる非晶質
フォトダイオードの開発で培われた技術を応用すること
ができる。 しかし、X線CT装置に使用される放射線検出素子と、
これらの技術分野で開発されたフォトダイオードとは応
用目的が異なるため、必ずしも最適ではない。 例えば、フォトダイオードの空乏層厚さについては、
フォトダイオードの構造がpin構造の場合、空乏層厚さ
はi層膜厚により決まる。 さらに、この膜厚は光検出感度、つまり、検出信号電
流が最大となるように設定される。 一般に、短波長の光に対しては膜厚を薄くするに従っ
て光感度は高くなる。例えば、ZnS:NiやZnS等、発光波
長が500nm〜600nmの範囲のシンチレータに対しては、pi
n構造フォトダイオードのi層膜厚は0.5μm程度に設定
さる。 一方、X線CT装置用検出素子として最も重要な性能
は、検出素子に起因するノイズがX線量子ノイズに比べ
て十分、小さいことである。 しかし、従来のa−Siフォトダイオードの性能は、こ
の点に関して満足できるものではなかった。 本発明の目的は、このような問題点を改善し、X線CT
装置用検出素子として十分なノイズ特性を有する放射線
検出素子を提供することにある。 〔問題を解決するための手段〕 上記目的を達成するため、本発明の放射線検出素子
は、放射線を光に変換するシンチレータと、該シンチレ
ータからの発光を電気信号に変換する非晶質シリコンフ
ォトダイオード、および非晶質シリコンフォトダイオー
ドが発生する電気信号を検出する電子回路を備えた放射
線検出素子において、pin構造の非晶質シリコンフォト
ダイオードでは、光感度とi層膜厚dの関係、および検
出素子ノイズとi層膜厚dの関係を測定し、それらの関
係から、最終的に得られる検出電気信号のSN比が主に入
射放射線の量子ノイズに起因するように、従来よりもi
層膜厚dを厚く、ε、SA、dをMKS単位系として、2.6×
10-3εSAd8.6×10-3εSA(ε:i層の比誘電率,SA:
非晶質シリコンフォトダイオードの面積(m2))の範囲
に設定したことに特徴がある。 〔作用〕 本発明においては、a−Si pinフォトダイオードの
i層膜厚dを設定する場合、光検知感度のi層膜厚依存
性と、検出素子ノイズのi層膜厚依存性とから、検出系
のSN比を求め、その値に基づいてi層膜厚dを最適化す
る。 つまり、フォトダイオードの空乏層を厚くすることに
より、検出信号ノイズは大幅に減少するため、空乏層を
厚くしたことにより、光検出電流が減少するにも拘ら
ず、検出信号のSN比は大幅に向上する。 なお、従来は光検知感度のi層膜厚依存性のみを考慮
して空乏層厚さを設定していた。 〔実施例〕 以下、本発明の一実施例を図面により説明する。 第3図は、本発明の一実施例における放射線検出回路
の構成図である。 本実施例の放射線検出回路は、放射線検出素子31、お
よびオペアンプ32を備え、放射線をシンチレータにより
光に変換し、さらにa−Si pinフォトダイオードによ
り電気信号に変換して、オぺアンプ32を介し、その電圧
信号を検出する。また、a−Si pinフォトダイオード
のi層膜厚dについては、従来方法と異なり、光検知感
度との関係の他に、検出素子ノイズとの関係を考慮して
設定している。 まず、本実施例におけるこのa−Si pinフォトダイ
オードのi層膜厚dの設定方法について述べる。 第1図は、本発明の一実施例における放射線検出素子
のi層膜厚d(μm)と検出信号のSN比との関係を示す
説明図、第4図はa−Si pinフォトダイオードを用い
た場合の出力ノイズと入力容量との関係を示す説明図、
第5図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場合の
出力ノイズ電圧とi層膜厚d(μm)との関係を示す説
明図、第6図はa−Si pinフォトダイオードを用いた
場合の出力電圧とi層膜厚d(μm)との関係を示す説
明図である。 一般に、検出信号のノイズ電圧VNは、次の式で示され
る。 (1)VN 2=VX 2+VD 2 但し、VXはX線量子ノイズ電圧、VDは検出素子ノイズ
電圧である。 従って、検出信号電圧をVSとすると、次の式が得られ
る。 (2)(S/N)2=VS 2/VN 2=VS 2/(VX 2+VD 2) また、本実施例における放射線検出回路と同様に、オ
ペアンプを含む検出回路により、放射線検出を行う場
合、検出信号電圧VSは次の式で示される。 (3)VS=iSRf=eXpq(d)Rf 但し、iSは信号電流、Rfはフィードバック抵抗、eは
電気素量、Xは検出素子シンチレータのX線吸収量(X
−photon数/素子・秒)、pは蛍光体のX線光子から可
視光子への変換量子効率、q(d)はa−Siフォトダイ
オードの空乏層厚さdに依存する光電変換量子効率であ
る。 すなわち、VSは空乏層厚さd(μm)の関数であり、
通常はVSが最大となるようにi層膜厚d(μm)を設定
している。なお、pin構造フォトダイオードでは空乏層
厚さdはi層膜厚にはほぼ等しい。 また、シンチレータ発光波長の典型例として緑色光を
選び、緑色光に対するVSの測定を行った場合、第6図の
ような測定結果が得られる。 なお、この測定では、Gd2O2S:Pr,Ce,Fシンチレータに
i層膜厚0.35μmのa−Si pinフォトダイオードを密
着した放射線検出部に、管電圧120kVのX線を1μR/1ms
で照射したときの出力電流を、ナショナルセミコンダク
タ社製オペアンプLF356Hにフィードバック抵抗5MΩを接
続した電流・電圧変換回路の出力電圧として測定し、8m
Vの出力を得た。 また、i層膜厚0.68μm、1.0μm、2.2μm、および
2.6μmのPINフォトダイオードについても同様に出力電
圧を測定し、第4図(□印、■印、△印、▲印、▽
印)、および第6図(○印)に測定値を示した。 従って、第6図より、d〜0.5μmで検出信号電圧VS
が最大となることが示される。これはi層膜厚dが0.5
μm以上、厚くなると短波長光感度が低下するという従
来の知見と一致する。また、現実に太陽電池用a−Si
pinフォトダイオードで用いられるi層膜厚(〜0.5μ
m)とも一致している。 さらに、ノイズについて述べる。 まず、X線量子ノイズ電圧VXについては、次の式で示
される。 但し、tはX線照射時間である。 また、診断用X線CT装置では、例えば1プロファイル
データ当り、1ms間にX線管電圧120kVのX線を1mR照射
する。このX線は人体腹部を透過すると、約1/1000に減
衰する。このため、検出素子に吸収されるX線数Xtは、
シンチレータのX線吸収率を0.9、シンチレータのX線
入射面積を20mm2とすると、 (5)1(mR)×20(mm2)×6.67×1011(X−photon/ mR・mm2)×10-3×0.9=1.2×104(X−photon/素子) となる。 従って、(3)〜(5)式により、X線量子ノイズに
起因する(S/N)Xは次の式で示す程度となる。 また、検出系のノイズについては、本実施例における
放射線検出回路と同様に、a−Siフォトダイオードとオ
ペアンプとから構成された検出系では通常、電流性ノイ
ズと電圧性ノイズとである。 しかし、a−Siフォトダイオードでは、材料自身の抵
抗が高く、リーク電流が例えば10〜20pAと極めて小さい
ため、電流性ノイズは無視することができる。 一方、電圧性ノイズは主に抵抗性熱雑音、およびオペ
アンプのノイズである。 このオペアンプのノイズは、a−Siフォトダイオード
に付随する入力容量Ciの増加とともに増える。なお、第
3図では入力容量Ciは点線で示される。 また、a−Siフォトダイオードでは結晶Siフォトダイ
オードに比べて空乏層厚さdが通常、0.3μm〜0.7μm
と薄いため、一般に容量が大きくなる。 本実施例におけるX線CT装置用の放射線検出素子で
は、システムの要求によりa−Siフォトダイオード面積
(SA)は通常、20〜30mm2と大きいため、特に容量が大
きくなり、アンプノイズは著しく増培される。 そこで、入力容量Ciが大きい場合の容量とノイズの関
係を調べる。 まず、帰還抵抗Rfから生じる抵抗性熱雑音eiRは次の
式で示される。 但し、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Bは帯域
幅である。 また、この出力換算ノイズeoRは、次の式で示され
る。 (8)eoR=eiR/(1+SCfRf) 但し、Cfは帰還容量、Sは周波数である。また、この
eoRは入力容量Ciに依存しない。 さらに、アンプノイズen1の出力換算ノイズをeonとす
ると、アンプノイズen1の伝送特性eon/en1は、次の式で
示される。なお、市販の低雑音アンプではオプアンプの
en1の値は 程度である。 (9)eon/en1=−(K+1)G(S)/(K+1+G(S)) (10)K=SCiRf/(1+SCiRi)/(1+SCfRf) 但し、G(S)はアンプの電圧利得、Riは入力抵抗で
ある。 また、検出素子ノイズ電圧VDは、(8)、(9)式で
与えられるeon、およびeoRを用いて、次の式で示すこと
ができる。 但し、S1、およびS2は検出回路の周波数帯域の下限、
および上限である。 さらに、(9)(10)および(11)式により、VDはCi
の関数であることがわかる。 また、本実施例と同様の検出回路において、例えばRf
=5MΩ、Cf=40pFである場合、入力容量Ciと検出素子ノ
イズ電圧VDとの関係は測定値から第4図のように示され
る。 なお、この測定では、Gd2O2S:Pr,Ce,Fシンチレータに
i層膜厚0.35μmのa−Si pinフォトダイオードを密
着した放射線検出部の出力信号を、ナショナルセミコン
ダクタ社製オペアンプLE356Hにフィードバック抵抗5MΩ
を接続した電流・電圧変換回路の出力電圧として検出し
た。 この結果、放射線を入射しないときの出力ノイズ電圧
を測定すると、380μVrmsであった。 また、i層膜厚1.0μmのフォトダイオードを同様の
検出回路に接続した場合のノイズ電圧は、30μVrmsであ
った。同様に、I層膜厚0.68μm、2.2μm、および2.6
μmのPINフォトダイオードについても検出素子ノイズ
電圧(出力ノイズ)を測定して、□印、■印、△印、▲
印、および▽印で示した。 なお、この測定ではフォトダイオードへの印加電圧を
0Vとしているが、逆バイアス電圧を1Vまで印加してもノ
イズ電圧は増加しなかった。 この第4図より、VDのCi依存性については、Ci=1500
pF以上では、 であることがわかる。 一方、Ciについては、主にa−Si pinフォトダイオ
ードの容量Cで決まり、それらの関係は次の式で示され
る。 (12)Ci〜C=εε0SA/d 但し、εはa−Siの比誘電率、ε0は真空誘電定数、
SAはa−Siフォトダイオードの面積、dは空乏層(i
層)膜厚であり、(12)式では、MKS単位系を使用して
おり、(12)式では、SAはm2、dはmの単位で表され
る。 なお、εは材料固有の値であり、a−Si:Hでは14程度
である。また、面積SAはCT画像の画素サイズやスライス
厚さで決まる。 例えば、幅が約1mm、スライス方向長さが25mmであれ
ば、SAは25mm2であり、この値は容易に変更できない。 この条件下で、a−Si pinフォトダイオードとして
従来、用いられているi層膜厚を適用すると、例えば0.
5μmの厚さでは、容量Cは(12)式より6200pFと非常
に大きくなり、検出素子ノイズ電圧VDが極めて大きくな
る。 このため、従来は光検知感度が最高となるように設定
していたi層膜厚dを、検出素子ノイズを考慮して再設
定することが必要である。 先に述べたように、(11)式より、VDはCiの関数であ
り、また、(12)式より、Ciは空乏層膜厚dの関数であ
るため、VDはdの関数であると言える。 従って、検出信号ノイズ電圧VNが検出素子ノイズ電圧
VDのみに起因するならば、VNは次の式で示される。 (13)VN=VN(Ci)=VN(Ci(d))=VN(d) また、この場合の検出素子ノイズ電圧VD(出力ノイズ
電圧)とi層膜厚dの関係は第5図に示される。 この第5図より、i層膜厚dを大きくすると、検出素
子ノイズ電圧VDが急激に減少することがわかる。特に、
0<d<1μmの範囲では、dが増加するとVDが急激に
減少する。 これらの測定結果から、本実施例では検出素子ノイズ
のi層膜厚依存性が極めて大きいことを考慮し、従来、
光検知感度を最大とするように設定していたi層膜厚d
について、検出系のS/Nを測定し、その値に基づいてi
層膜厚dを最適化する。 例えば、第4図に示された検出素子ノイズのi層膜厚
依存性、および第6図に示された光検知感度のi層膜厚
依存性から、放射線検出素子のS/N((S/N)D)を算出
し、第1図に○印で示す。 この第1図より、(S/N)DはI層膜厚d〜1.7μmで
最大となる。 すなわち、d1.7μmではdが大きくなるに従い、
ノイズが減少するため、(S/N)Dは向上するが、d
1.7μmではdの増大に伴うノイズの減少効果より、信
号量の減少が著しく、(S/N)Dは低下する。 また、d0.9μmでは(S/N)Dは220以下に低下
し、0.9μmd3.0μmでは(S/N)Dは220以上の良
好な値を示す。 特に、この範囲(0.9μmd3.0μm)ではX線量
子ノイズの(S/N)Xに対して、検出系の(S/N)Dは約
2培以上大きいため、CT画像情報を殆ど劣化することな
く、電気信号に変換することができる。 また、1.25μm<d<2.45μmでは、S/N比〜300以上
と極めて質の高い信号検出を行うことができる。 これにより、従来の方法、つまり、光検知感度を最大
にするようにi層膜厚dを設定する方法では得られなか
った高いS/Nの信号を検出することができる。 さらに、検出系ノイズとX線量子ノイズとの関係につ
いて述べる。 (1)式より、VN 2=VX 2+VD 2である。 X線CTシステムとして検出信号ノイズ電圧VNがX線量
子ノイズ電圧VXの何倍まで許容されるかについては、撮
影部位や診断対象によって異なるが、通常VNがVXの1.1
倍程度までは許容できると考えられる。 例えば、VN≦1.1VXをシステムの要求仕様とすると、V
Dの要求仕様は、(1)式より、VD≦0.46VXとなる。 これにより、次の式が得られる。 (14)(S/N)D≧(S/N)X/0.46=2.2S(S/N)X 例えば、第1図の結果では、(14)式を満たすi層膜
厚は、(S/N)X=110のとき、(S/N)D=220であるた
め、0.9μm以上となる。 このように、本実施例におけるi層膜厚dの設定方法
では、CT用放射線検出器において、最終的に得られる信
号のS/Nを、主に入射X線の量子ノイズに起因させるた
め、非晶質Siフォトダイオードの空乏層厚さを通常の設
定値に比べて厚い0.9μm〜3.0μmに設定し、検出器ノ
イズを小さくする。 さらに、本実施例では実際のCT用検出器の使用条件に
より評価した結果を用いているが、利用状況の変更等に
おいては、本実施例に含まれる各パラメータを変更する
ことにより、最適なi層膜厚が得られる。 例えば、面積SAやεが異なる場合には、(12)式を考
慮して要求仕様を求める。 この場合、(12)式と同様に、SA、d、εをMKS単位
系として、2.6×10-3εSAd8.6×10-3εSAという要
求仕様になる。 本実施例では比誘電率εは14程度、面積SA=25×10-6
(単位、m2)であり、0.9×10-6(=dmin、(単位、
m))≦d(単位、m)3.0×10-6(=dmax、(単位、
m))の条件は、(12)式で示される容量Cの関係で示
すと、Cmin≦C≦Cmaxとなり、Cmax(単位、F/m)=14
ε0×(25×10-6)/(0.9×10-6)、Cmin(単位、F/
m)=14ε0×(25×10-6)/(3.0×10-6)である。従
って、面積SA、比誘電率εが異なる場合には、Cmin≦C
≦Cmaxを満足させるためには、dmin=εε0SA/Cmax=ε
ε0SA×(0.9×10-6)/{14ε0×(25×10-6)}=k1
εSA(ここで、k1(単位、m-1)=(0.9×10-6)/{14
×(25×10-6)}=2.6×10-3である)、dmax=εε0SA
/Cmin=εε0SA×(3.0×10-6)/{14ε0×(25×10
-6)}=k2εSA(ここで、k2(単位、m-1)=(3.0×10
-6)/{14×(25×10-6)}=8.6×10-3である)とす
ればよい。 特に、3.6×10-3εSAd7.0×10-3εSAでは、(S/
N)Dは極めて高くなり、CT画像の画質はほぼ入射X線
の量子ノイズのみ、つまり(S/N)Xで決まるため、高
画質のCT画像の提供が可能である。 第2図は、本発明の一実施例における放射線検出素子
の構成図である。 本実施例の放射線検出素子は、透明電極54、p型水素
化シリコン55、i型水素化シリコン56、n型水素化シリ
コン57、および電極58をから構成されたa−Si pinフ
ォトダイオード59、透明膜53、シンチレータ51、および
光反射膜52を備える。 このシンチレータ51は、例えば熱間静水圧加圧法によ
り作成したGd2O2S:Pr,Ce,Fであり、厚さは1.5mm、X線
受光面の大きさは1.2mm×30mmである。また、上面、お
よび下面は鏡面研磨を施されている。 下面には、蛍光を反射するための光反射膜52として、
例えばAl蒸着膜を形成する。なお、必要に応じてシンチ
レータとAl蒸着膜の間に透明膜を配置することもでき
る。 また、上面には透明膜53を配置する。この透明膜53に
は、例えばSiO2、SiN4、Ta2O5等を用い、厚さは1μm
とする。 さらに、この透明膜53上にa−Siフォトダイオード59
を形成する。 すなわち、まず、ITO、SnO2、SnO2/ITO2層膜等の透明
電極54を形成する。 次に、p型、i型、n型の順に水素化非晶質シリコン
55〜57を形成する。なお、膜厚はp層0.01μm、i層1.
2μm、n層0.03μmである。 さらに、n層の上に電極58としてAl蒸着膜を形成す
る。なお、Al蒸着膜の大きさは1mm×25mmとする。 また、電極58の取り出しは透明電極とAl電極から行
い、出力信号は低雑音オペアンプを用いて電流・電圧変
換する。 なお、本実施例ではシンチレータの上にa−Siフォト
ダイオード1素子を形成したが、必要に応じて、1シン
チレータ上に多素子のフォトダイオードを形成すること
もできる。 例えば、30mm×20.8mmのシンチレータ上に30mm×1.2m
mのフォトダイオードを100μmの間隔で並列に16チャン
ネル形成することもできる。この場合、多素子がブロッ
ク化され、CT装置への実装が容易になる。 〔発明の効果〕 本発明によれば、シンチレータと非晶質シリコンフォ
トダイオード、および検出回路から構成されたX線CT装
置用の放射線検出素子において、検出器のS/N比を高く
することができる。 この結果、検出信号のSN比がほぼ入射X線の量子ノイ
ズによってのみ決まるため、その検出素子を用いたX線
CT装置においては、入射X線の量子ノイズのみのSN比を
もつ理想的なCT画像を得ることができる。 さらに、X線CT装置に限らず、他の放射線検出装置に
も固体検出素子のSN比向上方法として利用することが可
能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例における放射線検出素子のi
層膜厚dと検出信号のSN比との関係を示す説明図、第2
図は本発明の一実施例における放射線検出素子の構成
図、第3図は本発明の一実施例における放射線検出回路
の構成図、第4図はa−Si pinフォトダイオードを用
いた場合の出力ノイズと入力容量との関係を示す説明
図、第5図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場
合の出力ノイズ電圧とi層膜厚dとの関係を示す説明
図、第6図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場
合の出力電圧とi層膜厚dとの関係を示す説明図であ
る。 31:放射線検出素子,32:オペアンプ(OP),51:シンチレ
ータ,52:光反射膜,53:透明膜,54:透明電極,55:p型水素
化シリコン,56:i型水素化シリコン,57:n型水素化シリコ
ン,58:電極,59:a−Si pinフォトダイオード,C,Ci,Cf:
容量,Ri,Rf:抵抗,VS:検出信号電圧。
層膜厚dと検出信号のSN比との関係を示す説明図、第2
図は本発明の一実施例における放射線検出素子の構成
図、第3図は本発明の一実施例における放射線検出回路
の構成図、第4図はa−Si pinフォトダイオードを用
いた場合の出力ノイズと入力容量との関係を示す説明
図、第5図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場
合の出力ノイズ電圧とi層膜厚dとの関係を示す説明
図、第6図はa−Si pinフォトダイオードを用いた場
合の出力電圧とi層膜厚dとの関係を示す説明図であ
る。 31:放射線検出素子,32:オペアンプ(OP),51:シンチレ
ータ,52:光反射膜,53:透明膜,54:透明電極,55:p型水素
化シリコン,56:i型水素化シリコン,57:n型水素化シリコ
ン,58:電極,59:a−Si pinフォトダイオード,C,Ci,Cf:
容量,Ri,Rf:抵抗,VS:検出信号電圧。
フロントページの続き
(72)発明者 嶋田 寿一
東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地
株式会社日立製作所中央研究所内
(72)発明者 麻殖生 健二
東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地
株式会社日立製作所中央研究所内
(56)参考文献 特開 昭62−257030(JP,A)
特開 昭62−124484(JP,A)
特開 昭58−204088(JP,A)
特開 昭61−127670(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.放射線を光に変換するシンチレータと、前記光を電
気信号に変換するpin構造を有する非晶質シリコンフォ
トダイオードとを有する放射線検出素子において、前記
非晶質シリコンフォトダイオードのi層の厚さd(単
位、m)が、該i層の比誘電率をε、前記非晶質シリコ
ンフォトダイオードの面積をSA(単位、m2)、k1=2.6
×10-3(単位、m-1)、k2=8.6×10-3(単位、m-1)と
するとき、k1εSA≦d≦k2εSAであることを特徴とする
放射線検出素子。 2.特許請求の範囲第1項に記載の放射線検出素子にお
いて、前記非晶質シリコンフォトダイオードが前記シン
チレータの前記放射線の出射面に形成されたことを特徴
とする放射線検出素子。 3.特許請求の範囲第1項に記載の放射線検出素子にお
いて、前記非晶質シリコンフォトダイオードが前記シン
チレータの前記放射線の出射面に形成され、前記シンチ
レータが、熱間静水圧加圧法により形成されたGd2O2S:P
r,Ce,Feからなることを特徴とする放射線検出素子。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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- 1987-11-11 JP JP62283075A patent/JP2696860B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH01126583A (ja) | 1989-05-18 |
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