JP2686108B2 - 微生物の流加培養方法及び装置 - Google Patents

微生物の流加培養方法及び装置

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JP2686108B2 JP63251763A JP25176388A JP2686108B2 JP 2686108 B2 JP2686108 B2 JP 2686108B2 JP 63251763 A JP63251763 A JP 63251763A JP 25176388 A JP25176388 A JP 25176388A JP 2686108 B2 JP2686108 B2 JP 2686108B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は微生物とくに遺伝子組換え菌を用いて有用物
質を生産させるに際し、菌体の高密度培養と遺伝子の高
効率発現が可能となる流加培養方法及び装置に関するも
のである。
〔従来の技術〕
微生物の培養は大部分が、培養前に基質を加えただけ
の回分培養であり、生産性が低かつた。しかし、培養途
中に基質を加える流加培養は、菌体に好適な濃度で基質
を供給できるので、菌体を高密度に培養できるものとし
て注目されている。
従来、基質の流加時期や流加方法として、炭素源が有
機酸である場合にpHを指標とする方法(公開特許公報特
開昭48−36389号)や溶存酸素濃度又はpH調整剤の添加
量を指標とした基質流加方法(J.Chemical Engineering
of Japan.12,p313〜319,1979.公開特許公報特公昭60−
18392号)などが提案されている。しかし、以上述べた
方法により、有機酸を生成しその有機酸の蓄積により増
殖阻害を受ける微生物を培養した場合は、菌体増殖が途
中で停止し高菌体濃度を得ることは困難である。
阻害物質を生成する微生物としてはエタノールを生成
する酵母が知られており、呼吸商を指標とした流加方法
(公開特許公報、特開昭52−125686号)などが提案され
ているが、これは菌体の生産に関するものであり、物質
生産を目的としたものとは異なる。また、培地交換によ
り阻害物質を除去する方法(公開特許公報、特開昭53−
29985号)があるが、装置や操作が複雑になる問題があ
つた。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術は阻害物質について配慮されてなかつた
り複雑な技術を必要としており、菌体の高密度化や効率
的な代謝物生産が困難であつた。
本発明の目的は増殖に伴つて生成される有機酸とくに
酢酸により増殖を阻害される微生物とくに大腸菌又は組
換え遺伝子を保持する大腸菌を培養しその代謝物を生産
させるに際し、有機酸による阻害を受けないように、pH
を指標にして基質を流加することを特徴とした新しい流
加培養方法及び装置を提供することにある。
更に、本願の第2の目的は酢酸を生成しその酢酸によ
り増殖を阻害される微産物とくに大腸菌又は遺伝子組換
え大腸菌を培養し、その代謝物を生産させるに際し、酢
酸による阻害を受けないようにpHと酢酸濃度を指標とし
て基質を流加することを特徴とした流加培養方法及び装
置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記第1の目的は、培養液のpHが設定値より低下した
時基質流加を停止又は基質流加量を減少させ、pHが設定
値より上昇した時、基質流加を開始又は基質流加量を増
加させることにより、達成される。
本発明にあたり使用した菌株を示す。使用した菌株は
trp(トリプトフアン)プロモータにβ−gal(β−ガラ
クトシダーゼ)遺伝子を連結した複合プラスミドpTREZ
1を保持する大腸菌HB101(微生物受記番号:微工研
菌寄第8136号)である。複合プラスミドpTREZ 1のtrpプ
ロモータ部分は大腸菌のtrpオペロンのプロモーター、t
rpL(リーダペプチド)及びtrpE(アントラニール酸合
成酵素)の先端部分の一部を含む約500bp(base pairs,
塩基対)のDNA断片であり、pBR322プラスミドのEocR 1
部位に挿入した。一方、β−gal遺伝子はpMC1403(J.Ba
cteriol.143,p971〜980,1980)より切り出した6.2kbpの
大きさのもので、trpプロモーターのEcoR 1部位とpBR32
2のSal 1部位間に挿入した。このように複合プラスミド
pTREZ1のβ−gal遺伝子はtrpプロモーターの制御下にあ
る。
trpプロモーターを有する複合プラスミドはIA(3−
β−インドールアクリル酸)により遺伝子の発現を誘導
されることが知られている(Nature,291,p503〜506,198
1)。
大腸菌が有機酸を生成することは一般に知られている
が、本発明者らは上記遺伝子組換え菌HB101[pTREZ1]
を溶いて検討した結果、有機酸の中でも特に酢酸が多量
に生成され増殖が阻害されることを明らかにした。第1
図に溶存酵素濃度を指標として溶存酵素濃度が急上昇し
た時点で基質を添加した流加培養の結果を示す。菌体は
基質中のグルコースを炭素源として増殖しながら酢酸を
生成した。酢酸濃度が約15g/となつた培養14時間目以
降は、グルコースが消費されるにも拘らず菌体増殖は停
止した。一方、酢酸は生成され続けた。このように酢酸
が一定濃度以上、培養液中に蓄積されると菌体増殖が停
止し、菌体の高密度化を防げることが分つた。そこで、
遺伝子組換え大腸菌の増殖活性に対する酢酸の影響につ
いて検討した。その結果を第2図に示す。菌体の比増殖
速度は酢酸濃度が15g/以上で著しく低下しており、遺
伝子の発現も酢酸濃度15g/以上で著しく阻害された。
これにより、効率的に遺伝子産物を代謝生産させるため
には、酢酸濃度を15g/以下、好ましくは5g/以下に
抑制すべきことが分つた。
菌体により生成された酢酸を除去する方法として酢酸
を菌体自体に資化させることを考え、その可能性を検討
するために、酢酸を含む培地に菌体を接種し、坂口フラ
スコを用いて振とう培養した。培養液中の酢酸濃度の経
時変化を第3図に、その時の菌体濃度の経時変化を第4
図に示す。第3図に示すように、培養開始時にグルコー
スを1g/添加しているので培養2時間目まで酢酸濃度
は上昇したが、その後酢酸濃度は減少していつた。ま
た、第4図からどの酢酸濃度においても菌体が増殖し、
酢酸を添加しない場合に比べて菌体濃度が高くなること
が分つた。したがつて、菌体は酢酸を資化することがで
きた。これにより、酢酸濃度を指標として基質を流加す
る方法が考えられるが、酢酸濃度の測定にはガスクロマ
トグラフなどの分析機器及び相当の分析時間が必要であ
る。
ところで、酢酸の生成と資化による培養液中のpH変化
と酢酸濃度の関係を考えると、酢酸濃度はpHに比例する
筈である。そこで、後述する実施例1に示した培地組成
と同じ培地に酢酸を添加したときの酢酸濃度とpHの変化
を第5図に示す。図から、酢酸濃度とpHは相関関係にあ
ることが分つた。また、培地の種類や培養条件が異なつ
ても両者には相関が成立つと考えられた。したがつて、
培養液のpHの指標として基質流加制御を行えば、培養液
中の酢酸濃度を制御できる。
さらに、大腸菌が酢酸を生成しないように基質を流加
するこが菌体増殖を最適な状態に維持することになると
考えられる。よつて、pHを一定範囲内に維持するように
基質流加を行えば培養液中への酢酸の蓄積をなくすこと
ができると考えた。
以上の結果、本発明者らは培養液のpHが低下した場合
基質流加を停止又は基質流加量を減少させて菌体に酢酸
を資化させ、pHが上昇した場合基質流加を開始又は基質
流加量を増加させることを特徴とする流加培養方法を発
明するに至つた。
本発明において、酢又はアルカリ性物質などのpH調整
剤を添加してpHを制御する場合、その設定値は基質流加
のためのpHの設定値より広い範囲にする必要がある。
本発明において基質中に含まれる糖として、例えば、
グルコース、マンニトールソルビトール、サツカロース
などがある。また、使用できる細胞をしては前記遺伝子
組換え大腸菌以外にも、例えば酵母、枯草菌、放線菌及
び動植物細胞などについても有機酸を生成及び資化する
ことが可能であり、その有機酸により増殖が阻害される
場合には本発明が適用可能である。
本発明の基本的な装置の一例を第6図に示す。培養槽
1に種菌と培養基質を入れ培養を開始すると菌体が有機
酸を生成することにより培養液のpHは低下する。このpH
の変化量をpHセンサー2により感知しpH計3から制御器
4へ信号を出力する。制御器4はpHが設定値より低くな
つたと判断した時基質流加を停止又は基質流加量を減少
させる信号を定量ポンプ5に出力する。菌体は培養液中
の酢酸を資化し始め培養液のpHは上昇し、pH変化量がpH
センサー2及びpH計3から制御器4へ入力される。pHが
設定値より高くなった時、制御器4は定量ポンプ5に基
質流加の開始又は基質流加量の増加を指示する信号を出
力する。以上の操作を繰り返すことにより本発明を実施
することができる。
上記第2の目的は、迅速に測定される培養液のpHを指
標とした基質流加制御方法と定期的又は随時測定される
培養液中の酢酸濃度を指標とした基質流加制御方法を組
合せた制御方法により達成される。
制御方法を示すフローチヤートの一例を第8図に示
す。培養液中の酢酸濃度が未測定の場合で培養液のpHが
低下した時は基質流加量を減少させ、上昇した時は基質
流加量を増加させる。また、培養液中の酢酸濃度を測定
した時に酢酸濃度が設定値より高い場合は基質流加量を
減少させ、低い場合は基質流加量が増加させることによ
り、迅速かつ確実に好適な基質流加を行える。
本願の第2の発明にあたり使用した菌株は、trp(ト
リプトフアン)プロモータにβ−gal(β−ガラクトシ
ダーゼ)遺伝子を連結した場合プラスミドpTREZ 1を保
持する大腸菌HB101[pTREZ 1](微工研菌寄第8136号)
である。複合プラスミドpTREZ1のTRPプロモータ部分は
大腸菌のtrpオペロンのプロモータ、trpL(リーダペプ
チド)及びtrpE(アントラニル酸合成酵素)の先端部分
の一部を含む約500bp(base Pairs,塩基対)のDNA断片
であり、pBR322プラスミドのEcoR1部位に挿入した。一
方、β−gal遺伝子はpMC1403(J.Bacteriol.143,P971〜
980,1980)より切り出した6.2kbpの大きさであり、trp
プロモータのEcoR 1部位とpBR322のSal1部位間に挿入し
た。このように複合プラスミドpTREZ 1のβ−gal遺伝子
はtrpプロモータの制御下にある。trpプロモータを有す
る複合プラスミドはIA(3−β−インドールアクリル
酸)により遺伝子の発現を誘導されることが知られてい
る(Nature,291,p503〜506,1981)。
大腸菌が有機酸を生成することは一般に知られている
が、本発明者らが上記遺伝子組換え菌HB101[pTREZ 1]
を用いて検討した結果、有機酸の中でも酢酸が多量に生
成されていた。そこで、菌体の増殖活性に対する酢酸濃
度の影響について検討した。その結果を第9図に示す。
菌体の比増殖速度は酢酸濃度15g/以上で著しく低下し
ており、遺伝子の発現も15g/以上で著しく阻害され、
β−galはほとんど生成されなかつた。以上の結果か
ら、効率的に菌体を増殖させ、かつ、遺伝子産物を生産
させるには、酢酸濃度を15g/以下好ましくは5g/以
下に抑制すべきことが分つた。
酢酸濃度を一定範囲に抑制するには酢酸を除去しなけ
ればならない。そこで、その方法として菌体に酢酸を資
化させることを考え、可能性を検討した。結果を第10図
に示す。培養開始時にグルコースを1g/添加している
ので、培養初期に酢酸濃度が上昇したが、その後酢酸濃
度は減少した。この時の菌体濃度の経時変化を第11図に
示す。酢酸を添加しなかつた場合に比べて、すべて菌体
濃度が高くなつた。したがつて、菌体は酢酸を資化でき
るといえる。
これにより、酢酸濃度を指標とした基質流加制御方法
が考えられるが、ガスクロマトグラフや細管式等速電気
泳動装置などによる酢酸濃度の測定には十数分の分析時
間を必要とするために、菌体の生理活性に応じた基質流
加制御を行うには時間遅れが問題となる。
そこで、連続的に測定でき、かつ、感度の高いpHと酢
酸濃度の関係を考えると、pHは酢酸濃度の変化に影響さ
れる筈である。そこで、後述する実施例1の培地に酢酸
を添加した場合のpH変化量と酢酸濃度の関係を第12図に
示す。図から明らかなように、酢酸濃度とpHは相関関係
にある。したがつて、酢酸が生成されている時pHは低下
し、資化されている時pHは上昇することになる。
以上の結果から、pHの変化により感度良く迅速に基質
流加を制御できることが分つた。しかし、培養中には酢
酸以外の有機酸の生成やpH調整剤の添加によるpHの変化
が考えられる。そこで、定期的又は随時測定した酢酸濃
度を用いて基質流加制御を行ない、pHを指標とした制御
方法を支援することにより、確実に酢酸濃度を一定範囲
内に維持するように基質流加を制御できると考え、pHと
酢酸濃度の2つを指標として基質流加制御を行うことを
特徴とする流加培養方法を発明するに至つた。
本発明において、pHの設定値は使用する微生物の至適
pH、例えば大腸菌の場合pH7もしくは、6.5〜7.5などの
ように設定することができる。また、酢酸濃度の設定値
は5g/以下もしくは1〜3g/などのように設定するこ
とができる。
本発明において基質中に含まれる糖として、例えば、
グルコース、マンニトール、ソルビトール、サツカロー
スなどがある。また、使用できる細胞としては前記遺伝
子組換え大腸菌以外にも例えば、酵母、枯草菌、放線菌
及び動植物細胞などの中で、酢酸を生成及び資化するこ
とが可能であり酢酸により増殖を阻害される細胞であれ
ば、本発明が適用可能である。
本発明の基本的な装置の一例を第13図に示す。
培養槽1には菌体と培地から成る培養液が仕込まれて
おり、培養液に接するようにpHセンサー2と培養液抜出
し用導管7が設置されている。pHセンサー2はpH計3に
接続されており、pH計3から制御器4へpH値が出力され
る。試料調整装置8は導管7を通つてきた培養液から菌
体を分離し、酢性溶液の試料に調整する。酢酸分析装置
7に例えばガスクロマトグラフが収納されている場合試
料は酸性溶液のまま使用される。酢酸分析装置9により
測定された酢酸濃度の値は制御器4へ出力される。制御
器4は入力されたpH値と酢酸濃度値を用いて前記第8図
に示すフローチヤートに従つて、定量ポンプ5に基質流
加を制御する信号を出力する。定量ポンプ5により基質
槽6から培養槽1へ基質が流加される。
〔作用〕
前記本願の第1の発明について: 菌体が増殖に伴つて有機酸を生成又はその有機酸を資
化する場合、培養液中の有機酸濃度はpHの変化に比例す
る。そこで、pHの変化に基づいて基質流加を制御するこ
とによつて培養液中の有機酸濃度を一定範囲内に保つこ
とが可能となるので、菌体の増殖阻害や遺伝子発現への
悪影響を防止できる。
前記本願の第2の発明について: 微生物が酢酸を生成又は資化する場合、培養液中の酢
酸濃度の変化とpHの変化は比例する。そこで、迅速に測
定できるpHの変化に基づして基質流加を精密制御するこ
とにより酢酸の蓄積を防止し、かつ、測定した培養液中
の酢酸濃度を用いて、pHを指標とした基質流加制御を支
援する。このように2つの制御指標を組合せることによ
り、迅速かつ確実に酢酸濃度を一定範囲内に保つことが
可能となるので、微生物の増殖阻害や遺伝子発現への悪
影響を防止できる。
〔実施例〕
以下、本願の第1の発明群に係わる一実施例を第7図
により説明するが、本発明はこれによりなんら限定され
るものではない。
実施例1 NH4Cl 1g、Na2HPO4 6g、KH2PO4 3g、NaCl 0.5g、
MgSO4・7H2O 0.5g、CaCl2・2H2O 0.015g、チアミン塩
酸塩0.1g、プロリン0.1g、トリプトフアン0.02g、グル
コース5g、カザミノ酸2.5g、酵母エキス1.5g、蒸溜水1
からなる培地を2NNaOH水溶液にてpH7に調整し、常法
により滅菌処理した。尚、培養前にアンピシリンを50mg
/となるように加えた。滅菌した500ml坂口フラスコに
上記培地を50ml加え、HB101[pTREZ 1]株(微工研条寄
第815号(FERM BP−815)を一白金耳接種し、37℃、振
幅7cm、115回/minの条件で一晩振とう培養したものを種
菌株とした。上記培地を滅菌済みの5培養槽に入れ、
種菌液200mlを接種し、初発液量2、37℃、通気量2
/minで培養を開始した。基質流加に用いる流加培地の
組成は、グルコース200g/、カザミノ酸100g/、酵母
エキス60g/、プロリン4g/、トリプトフアン0.4g/
、アンピシリン1g/とした。この流加培地を培養液
のpHが6.8より低くなつた時流加を停止し、pHが7.2より
高くなつた時に流加を開始して流加培養した結果が第7
図である。
培養6時間目以降、流加を停止すればpHが上昇し、開
始すればpHが低下する良好な相関が得られた。よつて、
酢酸濃度を0〜2g/の範囲に保つことができ、菌体は
酢酸による阻害を受けず培養26時間目には28g/に達し
た。培地中にトリプトフアンを入れることでトリプトフ
アンプロモーターの働きを抑制していたので培養22時間
目まではβ−gal生産を抑えることができた。培養22時
間目以降、トリプトフアン濃度の低下によると考えられ
る脱抑制が起こり、β−galは培養26時間目に62U/mlに
達した。本実施例ではトリプトフアン濃度の低下により
脱抑制が起こりβ−galが生産されたが、誘導剤であるI
Aの添加によつてもβ−gal生産を開始することができ
る。
以上、pHの変化に基づいて基質を流加することによ
り、菌体濃度は28g/の高密度に達し、菌体収率も0.57
g・cell/g・glncoseの高い値に維持できた。また、β−
gal生産量が62U/mlとなつたことから、遺伝子発現も十
分に行われた。
以下、本願の第2の発明の一実施例を第14図により説
明するが、本発明はこれによりなんら限定されるもので
はない。
実施例2 使用した菌株はHB101[pTREZ 1](微工研条寄第815
号(FERM BP−815))であり、本菌株が保持するβ−ga
l遺伝子はtrpプロモータの制御下にあるので、培養前半
はβ−gal生産を抑制するために基質中にトリプトフア
ンを加え、培養後半は脱抑制させるためにトリプトフア
ンを含まない基質を流加した。酢酸濃度の測定にはガス
クロマトグラフを用い、分離カラムはPEG6000+FlusinP
(ガスクロ工業製)を使用した。
初発培地 NH4Cl 1g/、Na2HPO4 6g/、KH2PO4 3g/、NaC
l 0.5g/、MgSO4・7H2O 0.5g/、CaCl2・2H2O 0.0
15g/、チアミン塩酸塩0.1g/、プロリン0.1g/、ト
リプトフアン0.02g/、グルコース5g/、カザミノ酸
2.5g/、酵母エキス1.5g/、アンピシリン0.05g/、
pH7。
流加培地 A:グルコース200g/、カザミノ酸100g/、酵母エキス
60g/、プロリン4g/、トリプトフアン0.4g/、アン
ピシリン1g/、pH7。
B:グルコース200g/、カザミノ酸100g/、プロリン4g
/、アンピシリン1g/、pH7。
培養条件 種培養:500ml坂口フラスコに初発培地50mlを加え、菌体
を一白金耳接種したものを37℃、振幅7cm、115回/minの
条件で一晩振とう培養した。
本培養:上記種培養液200mlを初発培地の入つた5槽
に接種し、初発液量2で37℃、通気量2/min、撹拌
数400〜1000rpmの条件で培養を開始した。培養12時間目
までの基質流加には流加培地Aを、それ以降は流加培地
Bを用いた。流加制御の設定値は培養12時間目得までpH
は6.8〜7.2の反幾、酢酸濃度は0.8g/以下とし、培養1
2時間目以降、酢酸濃度は2g/以下とした。
結果:培養期間を通して培養液中の酢酸濃度は2g/以
下に押えることができ、菌体は培養終了時まで順調に増
殖し、菌体濃度は培養18時間目に19.3g/に達した。ま
た、流加培地をAからBへ切り換えることで、β−gal
生産を開始させることができ、4.3U/mg・drycellという
良好な遺伝子発現がなされた。菌体収率は、0.54g・cel
l/g・glncoseの高い値に維持でき、好適な基質流加を行
うことができた。
〔発明の効果〕
本願の第1の発明によれば、培養液中の酢酸濃度を低
濃度に保つことができるので、増殖阻害を防止し、容易
に25g/以上の高密度培養、0.5g・cell/g・glncose以
上の高菌体収率及び50U/ml以上のβ−gal生産が行える
効果がある。また、pH調整剤が不要又は使用量の低減が
可能なので、培養装置を簡略化及び経費を節約する効果
がある。
本願の第2の発明によれば、培養液中の酢酸濃度を低
濃度に保ちながら基質を供給することができるので、増
殖阻害を防止し容易に19g/以上の高密度培養、0.5g・
cell/g・glncose以上の高菌体収率及びβ−gal生産性が
4U/mg以上の高効率発現が行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は溶存酸素濃度を指標とした流加培養の一例を表
わす図、第2図は培養液中の酢酸濃度と比増殖速度及び
β−gal生産量の一例を表わす図、第3図は遺伝子組換
え大腸菌による酢酸資化の一例を表わす図、第4図は酢
酸資化時の菌体濃度の経時変化の一例を表わす図、第5
図は酢酸濃度とpHの関係の一例を表わす図、第6図は培
養装置の一実施例の概略を表わす図、第7図は本発明の
一実施例の培養結果を表わす図である。第8図は基質流
加制御方法を表わすフロチヤート、第9図は培養液中の
酢酸濃度と比増殖速度及びβ−gal生産量の一例を表わ
す図、第10図は遺伝子組換え大腸菌による酢酸資化の一
例を表わす図、第11図は酢酸資化時の菌体濃度の経時変
化の一例を表わす図、第12図は酢酸濃度とpHの関係の一
例を表わす図、第13図は培養装置の一実施例の概略を表
わす図、第14図は本発明の一実施例の培養結果を表わす
図である。 1……培養槽、2……pHセンター、3……pH計、4……
制御器、5……定量ポンプ、6……基質槽、7……培養
液抜き出し用導管、8……試料調整装置、9……酢酸分
析装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西村 信子 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所基礎研究所内 (72)発明者 緒田原 蓉二 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所基礎研究所内 (56)参考文献 特開 昭58−98085(JP,A) 特開 昭63−233780(JP,A)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも有機酸を生成する微生物を培養
    する過程において培養液のpHが設定値より低下した時、
    基質流加を停止するか又は基質流加量を減ずること、設
    定値より上昇した時、基質流加を開始するか又は基質流
    加量を増やすことを特徴とする微生物の流加培養方法。
  2. 【請求項2】該微生物が大腸菌とくに組換え遺伝子を保
    持する大腸菌であることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の微生物の流加培養方法。
  3. 【請求項3】該基質中の炭素源として糖を含むことを特
    徴とする特許請求の範囲第1及び2項のいずれかに記載
    の微生物の流加培養方法。
  4. 【請求項4】該有機酸が酢酸であることを特徴とする特
    許請求の範囲第1、2及び3項のいずれかに記載の微生
    物の流加培養方法。
  5. 【請求項5】該遺伝子組換え菌が保持する発現ベクター
    がトリプトフアンプロモータを含有していることを特徴
    とする特許請求の範囲第1、2、3及び4項のいずれか
    に記載の微生物の流加培養方法。
  6. 【請求項6】所定の微生物培養槽と、当該微生物培養槽
    中の培養液のpHを測定するための測定手段と、培養基質
    流加を実施せしむる定量ポンプと、前記pHを測定するた
    めの測定手段よりも信号に基づいて培養液のpHを所定値
    と比較し、当該pHが所定値より低下もしくは増大した
    時、基質流加を制御する手段を少なくとも有することを
    特徴とする微生物の流加培養装置。
  7. 【請求項7】少なくとも酢酸を生成し、該酢酸により増
    殖を阻害される微生物の培養に際し、培養液のpHが設定
    値より低下した場合は基質流加量を減少し、設定値より
    上昇した場合は基質流加量を増加すること、または酢酸
    濃度が設定値より低い場合は基質流加を開始又は基質流
    加量を増加し、設定値より高い場合は基質流加を停止又
    は基質流加量を減少することを特徴とする流加制御方
    法。
  8. 【請求項8】該微生物が大腸菌とくに遺伝子組換え大腸
    菌であることを特徴とする特許請求の範囲第7項記載の
    流加制御方法。
  9. 【請求項9】該基質中の炭素源として糖を含むことを特
    徴とする特許請求の範囲第7及び8項のいずれかに記載
    の流加制御方法。
  10. 【請求項10】該遺伝子組換え大腸菌が保持する発現ベ
    クターがトリプトフアンプロモータを含有していること
    を特徴とする特許請求の範囲第7、8及び9項のいずれ
    かに記載の流加制御方法。
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