JP2682038B2 - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

複合半透膜およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、液状混合物の成分を選択透過分離するため
の複合半透膜およびその製造方法に関するものであり、
特に半導体の製造などに用いられる超純水の製造や、ま
たカン水の脱塩化や、さらには、染色排水、電着塗料排
水等の公害発生原因である汚水等から、その中に含まれ
る汚染あるいは有効物質を選択的に除去または回収し、
ひいては排水のクローズド化に寄与することがえきる、
高性能複合半透膜に関するものである。
〔従来技術〕
現在、微多孔性支持膜上に直接活性層を被覆した複合
膜の中には、酢酸セルロース膜を上回る脱塩性能を有す
る複合半透膜が出現しており、特に殺菌に用いられる塩
素、過酸化水素に対する耐久性も向上されつつあり用途
が広がってきている段階にある。しかしながら、この型
の膜は、平膜状の複合膜の場合には、スパイラル、プレ
ートアンドフレーム型のエレメントとして使用するにあ
たり、エレメント製造時の作業中に表面超薄膜(活性
層)に傷がつき、膜本来の脱塩性能に対してエレメント
の脱塩性能が低下する現象がしばしば生じた。また、合
成複合膜の表面は多くの場合架電を持っており、膜の汚
れを促進する場合があるといった問題点を有していた。
これらの活性層の傷、および膜の汚れの問題点を解決す
る手段として、活性層上に、保護膜を被覆する方法が提
案され、例えば、特開昭56−15804号公報において、ポ
リビニルアルコールからなる保護膜が、また特開昭62−
216604号公報においてポリジメチルアクリルアミドから
なる保護膜が提案されている。
しかしながらこの方法においては、熱架橋(必要に応
じて触媒存在下)することが必要である。これは製膜工
程に熱処理が含まれていない、熱遍歴を経ず製膜される
複合膜においては過度に乾燥されることになり、脱塩
率、水透過速度の低下を回避できないといった問題点を
有していた。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、超薄膜の傷を防止することにより膜塩性能
の低下を押え、同時に複合半透膜の性能を損うことなく
表面の性質をコントロールすることができる、複合半透
膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
上記課題を解決するため本発明は下記の構成から成
る。
「(1)微多孔性支持膜と該支持膜を被覆する超薄膜か
らなる複合半透膜において、さらに該超薄膜上に、少な
くとも2つの官能基を有する水溶性ポリマを、多官能酸
ハライドで架橋することにより得られる超薄膜を有する
ことを特徴とする複合半透膜。
(2)微多孔性支持膜上にイン サイチュー界面重縮合
反応によって超薄膜を被覆した後、少なくとも2つの官
能基を有する水溶性ポリマを含有する水溶液を塗布し、
超薄膜形成時に未反応で残っている多官能酸ハライドと
反応させることにより得られる超薄膜で被覆することを
特徴とする複合半透膜の製造方法。」 本発明において、微多孔性支持握を実質的には分離性
能を有さない層であり、実質的に分離性能を有する超薄
膜層(活性層)に強度を与えるために用いられるもので
あり、均一な微細な孔あるいは片面からもう一方の面ま
で徐々に大きな微細な孔をもっていて、その微細孔の大
きさはその片面の表面が100nm以下であるような構造の
支持膜が好ましい。その素材にはポリスルホン、酢酸セ
ルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル等のホモポ
リマーあるいはブレンドしたものが通常使用されるが、
化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使
用するのが好ましく、例えば、ポリスルホンのジメチル
ホルムアミド(DMF)溶液を密に織ったポリエステル布
あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それをドデ
シル硫酸ソーダ0.5重量%およびDMF2重量%を含む水溶
液中で湿式凝固させることによって得られる、表面の大
部分に直径数十nm以下の微細な孔を窮する微多孔性支持
膜を用いることができる。上記の微多孔性支持膜として
は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP"(商品
名)や、東洋ろ紙社製“ウルトラフィルターUK"10(商
品名)のような各種市販材料から選択して、用いること
ができるが、通常は、“オフィス・オブ・セイリーン・
ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・
プログレス・レポート"No.359(1968)に記載された方
法に従って製造したものを用いることができる。
本発明においては水溶性ポリマとして、少なくとも2
つの官能基を有し、実質的に水に可溶であるポリマを使
用し、多官能試薬と反応し水不溶性の架橋ポリマを形成
するものであればいずれでもよい。官能基としては、水
酸基、アミノ基などが挙げられ、水酸基を有するものと
しては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニ
ルの部分ケン化物(以上2つをPVAと略す)が、アミノ
基を有するものとしては、ポリアリルアミン、ポリエチ
レンイミン、アミン変性ポリエピハロヒドリン、ポリ
[1−(1−ピペラジニルカルボニル)エチレン]など
が挙げられる。実質的に分離性能を有する超薄膜の保護
あるいは表面改質と言った目的に応じて使いわけること
ができる。
また、多官能酸ハライドとしては、芳香族系であって
も、脂肪族系であってもよいが、芳香族系の多官能酸ハ
ライドの具体例としては、トリメシン酸ハライド、ベン
ゾフェノンテトラカルボン酸ハライド、トリメット酸ハ
ライド、ピロメット酸ハライド、イソフタル酸ハライ
ド、テレフタル酸ハライド、ナフタレンジカルボン酸ハ
ライド、ジフェニルジカルボン酸ハライド、ピリジンジ
カルボン酸ハライド、ベンゼンジスルホン酸ハライド、
クロロスルホニルイソフタル酸ハライドなどが挙げられ
るが、製膜溶媒に対する溶解性及び複合半透膜の性能を
考慮するとイソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロ
ライド、トリメシン酸クロライド、及びこれらの混合物
が好ましい。また、脂肪族系の多官能酸ハライドの具体
例としては、シクロヘキサントリカルボン酸ハライド、
シクロヘキサンジカルボン酸ハライドなどが挙げられ
る。これらがPVAの水酸基と反応すればエステル結合で
架橋された水不溶性PVAとなり、ポリアリルアミン、ポ
リエチレンイミンのアミノ基と反応すればアミド結合で
架橋された構造の超薄膜が得られる。
水溶性ポリマを架橋させて成る超薄膜の厚みは、複合
半透膜の水透過性の面から、1μm以下が好ましい、こ
れより厚くなると水透過性が低くなる恐れがあり好まし
くない。また、水溶性ポリマを架橋させて成る超薄膜は
必要な効果が得られれば、完全に均一に複合半透膜を被
覆していなくとも良いが、実質的に分離性能を有する超
薄膜の被覆面積の、少なくとも90%以上は被覆している
ことが好ましい。
次に製造方法について述べる。
最初に、微多孔性支持膜上に反応性アミノ基を2つ以
上持つ化合物(以下アミノ化合物と略す)を含む水溶液
(以下組成物という)を被覆する。
本発明において、反応性アミノ基を2つ以上持つ化合
物とは多官能試薬と反応して架橋ポリマを形成するもの
であればモノマ、ポリマ、混合物、いずれであっても構
わないが、膜性能、溶解性などの面から例えば、ピペラ
ジン、ジアミノベンゼン、トリアミノベンゼン、1,3−
ビス(4−ピペリジル)プロパンなどが挙げられる。こ
れらのアミノ化合物の濃度は0.5重量%から10重量%が
好ましくこれより低いと安定した性能を得ることが難し
く、高いとコスト的に不利になり、通常1〜2重量%で
用いられることが多い。また、界面反応を促進するため
に該組成物中にNa2CO3、NaOH、Na3PO4などのアルカリ性
金属化合物を添加しても良い。
組成物の被覆方法としては、微多孔性支持膜上にコー
ティングする方法あるいは微多孔性支持膜を組成物中に
浸漬する方法がある。
組成物を微多孔性支持膜に被覆した後、余分な組成物
を除去するために液切り工程を設けるのが一般的であ
り、液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保
持して自然流下させる方法などがある。
充分に液切りを行った後、多官能試薬の有機溶媒溶液
を被覆し、イン サイチュー界面重縮合反応によって超
薄膜を被覆する。有機溶媒溶液の被覆方法は上記に示し
た組成物の被覆方法と同様である。また、有機溶媒と
は、水と非混和性であり、かつ多官能試薬を溶解し、微
多孔性支持膜を破壊しないことが必要である。具体的に
は、炭化水素化合物、シクロヘキサン、トリクロロトリ
フロロエタンなどが挙げられるが、反応速度、溶媒の揮
発性から、好ましくはn−ヘキサン、トリクロロトリフ
ロロエタンが挙げられ、引火性という安全上の問題を考
慮するとさらに好ましくはトリクロロトリフロロエタン
が挙げられる。
多官能試薬の濃度は特に限定されるものではないが、
少なすぎると活性層である超薄膜の形勢が不十分となり
欠点になる可能性があり、多いとコスト面から不利にな
るため、0.1〜1.0重量%程度が好ましい。
過剰な多官能試薬の有機溶媒溶液は液切り工程により
除去され、この間有機溶媒は揮発する。このとき、多官
能酸ハライドは完全に膜面から除去されず、一部膜面に
残る。さらに風などをあて積極的に有機溶媒を揮発させ
ることにより、塗布する溶液の濃度にも依存するが0.01
〜0.1g/m2の多官能酸ハライドを膜面に残すことが可能
である。本発明の製造方法の特徴はこの残存多官能試薬
を利用することにある。また、多官能酸化ハライドの官
能基の一部が反応せずに残っていることも考えられ、こ
れを利用することも本発明に含まれる。次いで、水溶性
ポリマを含む水溶液を被覆し、イン サイチュー界面反
応によってさらに超薄膜を被覆し、液切りを行い、目的
の従来の超薄膜上に、さらにもう一層の超薄膜を有する
複合半透膜を得ることができる。また、この水溶液ポリ
マを含む水溶液にも反応を促進するため、Na2CO3、NaO
H、Na3PO4などのアルカリ性金属化合物を添加しても良
い。
上記のようにして得られた複合半透膜はこのままでも
使用できるが、水洗などによって未反応残存物を取り除
くことが好ましい。
〔実施例〕
以下の実施例において、選択分離能として、塩排除率
は電気伝導度の測定による通常の手段によって決定され
た。
また、透過性能として、水透過速度(造水量)は単位
面積、単位時間当たりの水の透過量で決定した。
参考例 タテ30cmヨコ20cmの大きさのポリエステル繊維からな
るタフタ(タテ糸、ヨコ糸とも150デニールのマルチフ
ィラメント糸、織密度タテ90本/インチ、ヨコ67本/イ
ンチ、厚さ160μ)をガラス板上に固定し、その上にポ
リスルホン(ユニオン・カーバイト社製のUdel−P350
0)の16重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200
μの厚みで室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中
に浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリス
ルホン支持膜(以下FR−PS支持膜と略す)を作製する。
このようにして得られたFR−PS支持膜(厚さ210〜215
μ)の純水透過係数は、圧力1kg/cm2、温度25℃で測定
して0.005〜0.01g/cm2・sec・atmであった。
実施例1 FR−PS支持膜をメタフェニレンジアミン2重量%水溶
液中に1分間浸漬した。該支持膜を垂直方向にゆっくり
と引上げ、支持膜表面から余分な水溶液を取除いた後、
トリメシン酸クロライド0.1重量%を含有するトリクロ
ロトリフルオロエタン溶液を表面が完全に濡れるように
塗布した。次に膜を垂直にして余分な溶液を液切りして
除去し、トリクロロトリフルオロエタンを揮発させた
後、分子量10000のポリアリルアミン塩酸塩(日東紡績
社製)0.25重量%、炭酸ナトリウム1.0重量%を含有す
る水溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。同様に
膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去した後、蒸
溜水で水洗した。
このようにして得られた複合半透膜をpH6.5に調整し
た1500ppm食塩水を原水とし、15Kg/cm2、25℃の条件下
で逆浸透テストを行った。
その結果、脱塩率99.4%、水透過速度1.10m3/m2・日
の性能を示した。また逆浸透テスト後、複合膜の表面を
FTIRで測定した結果、ポリアリルアミンが残存している
ことが判明した。
実施例2 実施例1においてポリアリルアミン塩酸塩の代わりに
PVA(日本合成化学社製NM−14)を0.25重量%他は実施
例1と同様に製膜、逆浸透テストを行った。また、同様
にPVAを0.5重量%用いた場合についても実施した。その
結果、脱塩率はそれぞれ99.5%、99.6%、水透過速度は
ともに1.00m3/m2・日の性能を示した。また逆浸透テス
ト後、複合膜の表面をFTIRで測定した結果、PVAが残存
していることが判明した。
比較例1 実施例1において、分子量10000のポリアリルアミン
塩酸塩と、炭酸ナトリウムを含有する水溶液を塗布しな
い以外は、実施例1と同様に製膜し、逆浸透テストを行
った。その結果、脱塩率99.2%、水透過速度1.00m3/m2
・日の性能を示した。
実施例3 実施例1で得られた複合膜を逆浸透テストした後、原
水にFeCl3を10ppm添加し、テストを継続した。さらに20
時間後と60時間後にFeCl3を10ppm添加した。FeCl3添加
前後の性能は、脱塩率がそれぞれ99。5%と99.2%、水
透過速度が1.10m3/m2・日と1.10m3/m2・日であり、性
能はほとんど変化しなかった。
実施例4 実施例2で得られた複合膜(PVA0.25重量%使用)を
用い実施例3と同様のテストを行った。FeCl3添加前後
の性能は、脱塩率99.5%が99.4%、水透過速度1.07m3
m2・日が1.00m3/m2・日と性能はほとんど変化しなかっ
た。
比較例2 比較例1で得られた複合膜を用い実施例3と同様のテ
ストを行った。FeCl3添加前後の性能は、脱塩率99.2%
が98.8%、水透過速度1.00m3/m2・日が0.73m3/m2・日
と水透過速度の低下が大きいことが判明した。
比較例3 FR−PS支持膜をメタフェニレンジアミン2重量%水溶
液中に1分間浸漬した。該支持膜を垂直方向にゆっくり
と引上げ、支持膜表面から余分な水溶液を取除いた後、
トリメシン酸クロライド0.1重量%を含有するトリクロ
ロトリフルオロエタン溶液を表面が完全に濡れるように
塗布した。次に膜を垂直にして余分な溶液を液切りして
除去し、トリクロロトリフルオロエタンを揮発させた
後、蒸溜水で水洗し、完全にトリメシン酸クロライドを
除去した。次にPVA(日本合成化学社製NM−14)0.25重
量%、炭酸ナトリウム1.0重量%を含有する水溶液を表
面が完全に濡れるように塗布し、100℃で5分間乾燥し
た。実施例1と同様に逆浸透テストを行った結果、脱塩
率98.2%、水透過速度0.43m3/m2・日の性能を示した。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微多孔性支持膜と該支持膜を被覆する超薄
    膜からなる複合半透膜において、さらに該超薄膜上に、
    少なくとも2つの官能基を有する水溶性ポリマを、多官
    能酸ハライドで架橋することにより得られる超薄膜を有
    することを特徴とする複合半透膜。
  2. 【請求項2】微多孔性支持膜上にイン サイチュー界面
    重縮合反応によって超薄膜を被覆した後、少なくとも2
    つの官能基を有する水溶性ポリマを含有する水溶液を塗
    布し、該超薄膜形成時に未反応で残っている多官能酸ハ
    ライドと反応させることにより得られる超薄膜で被覆す
    ることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
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