JP2675809B2 - 被記録材及びそれを用いた記録方法 - Google Patents

被記録材及びそれを用いた記録方法

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JP2675809B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はインクジエツト記録方法に好適に用いられる
被記録材に関し、特に水系インクの吸収性,発色性に優
れ、得られる記録画像の鮮明性に優れた被記録材に関す
る。
更に本発明は画像の室内変色等が少なく保存性に優れ
た記録画像を提供する被記録材と上記の記録画像を提供
する記録方法に関する。
〔従来の技術〕
従来インクジエツト用の被記録材としては、 (1)パルプを主成分とした一般の紙を低サイズ度とな
るように抄紙して、ろ紙や吸取紙のようにしたもの、 (2)特開昭56−148585号公報にあるように基板上にシ
リカやゼオライトのような多孔質で吸油量が大きくイン
ク中の着色成分を吸着する顔料を用いて塗布層を設けた
もの、 等が知られている。
被記録材(1)は低コストで作れる反面、インク吸収
性は優れるもののインクが紙の繊維層に深く浸み込んで
しまうためインク中の色剤の発色性が悪く、またインク
が紙表面の繊維に沿って吸収されるためフエザリングと
呼ばれる現象が生じてドツトが円形にならずギザギザに
なる現象や解像度の低下をきたし良質な画像が得られな
いという欠点があった。
このため、もっぱらこのようなノンコートタイプの紙
は、モノクロ記録やパソコンの端末等の比較的解像度が
低く高濃度の画像を必ずしも必要としない用途に用いら
れてきた。
被記録材(2)ではインク吸収層が多孔質で均一にな
っているため、適度なインク吸収性とドツト形状や解像
度に優れたものが得られる。
しかしながら、より高品位で高解像度のカラー画像を
必要とする記録方式に於いては被記録材の側にも、更に
重ねて、 (1) 多色のインク滴が同じスポツトに重ねて付着し
てもドツトが流れ出さず且つ必要以上に拡がらないよう
なインク吸収容量をもつこと。
(2) 付着したインク滴が直後にこすられても滲まな
いようなインク吸収速度,インク定着性を有すること。
(3) インク吸収層に受容されたインク中の記録剤の
発色性が優れていること。
(4) 付着したインクドツトの周辺がなめらかであ
り、形状が真円に近いこと。
などが要求されるほか、得られた記録画像の耐水性,耐
光性などの保存性も必要とされる。
特開昭59−185690号公報や特開昭59−230787号公報に
は、より優れた染料の発色性を得るためインク吸収層の
顔料物性に着目し、200m2/g以上の比表面積を有するシ
リカや240mg・mol/kg以上の酸価を有するシリカを用い
た被記録材が紹介されている。
又、特開昭56−84992号公報には、インクジエツト記
録画象の耐水性を強化する方法としてポリカチオン高分
子電解質をインク吸収層に含有させた記録媒体に酸性/
直接性染料で記録し、記録画像を水中に浸漬させたとき
にもインク吸収層に付着したこれらの染料が流れ出さな
いようにする方法が述べられている。
画像の耐光性は染料の光分解による記録画像の変褪色
の問題であり、今までは記録剤である染料自体の問題と
考えられていたが、前記のような耐水化剤、特にポリカ
チオン物質が染料の光分解を促進していることが知られ
るようになり、例えば特開昭60−11389号公報や特開昭6
0−49990号公報には染料の光分解の促進の少ないポリカ
チオンを含有する被記録材が、又特開昭60−72785号公
報にはポリカチオンと紫外線吸収剤や酸化防止剤を含有
する被記録材が紹介されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら最近になって、このような耐水性,耐光
性以外にも記録画像の室内変色という画像の保存性に関
する新たな問題がクローズアツプされてきた。室内変色
の問題も染料の分解により生じる問題と考えられている
が、従来知られた被記録材では解決されない。
従来、問題とされてきた画像の褪色は可視光,紫外光
により記録画像内の染料が分解しておこる現像で直射日
光のあたらない部分では発生しない。また日光のあたる
ところでは、いわゆる一般のppc用紙や前記(1),
(2)のどのタイプの被記録材に記録した画像にも褪色
が起こり、被記録材がポリカチオン物質を含有する場
合、促進されることが知られている。
一方、本発明で言う室内変色は、直射日光があたらな
くても進行し、一般紙やノンコート紙に記録した画像に
は起こらない。また、前述のような耐光性に影響の少な
いポリカチオンを用いたり、紫外線吸収剤等を含有させ
てもさしたる効果がなく画像の変色が起こる。
なお、ここで言う褪色とは印字物の彩度が低下する現
象を言い、変色とはむしろ彩度は低下せず色相の変化を
主体とする現象を言う。
以上のように本発明で言う室内変色の問題は、インク
吸収層を有するコート紙特有の現象であるがその明確な
原因も対策も未だ知られていない。
更にこのようなコート紙では、未印字のコート紙をポ
リプロピレンやポリエチレン製のバインダーに入れて、
1〜数カ月間保存した際に、紙の周囲が黄変したり、粘
着テープあるいはプリンターのゴムローラーなどに接触
させると、接触部分のまわりが黄色く着色することがわ
かり、問題となっている。
このような黄変の問題も室内変色の問題同様にノンコ
ート紙には発生しないコート紙特有の問題であり、未だ
解決手段のみつからない問題である。
そこで本発明の目的は、インク吸収性,染料の発色性
に優れ、高品位で高解像度の画像が得られる被記録材を
提供することにある。
また本発明の目的は記録画像の保存性、特に室内変色
による劣化の少ない記録画像を与える被記録材、および
このような画像を形成する記録方法を提供することにあ
る。
更に本発明の目的は、、耐汚染性に優れ、特にフアイ
ル,バインダー等での保存時に、黄変等を生じない被記
録材を提供することにある。
上記およびその他の本発明の目的は以下の本発明によ
って達成される。
〔問題点を解決するための手段および作用〕
すなわち本発明は、基材と基材上に設けられた、顔料
を含む塗工層を備えた被記録材において、該塗工層中
に、平均粒子径が0.5〜10μmの範囲にあり、且つBET比
表面積が5〜100m2/gの範囲にある、表面をカチオン化
処理された顔料を含むことを特徴とする被記録材及びそ
れを用いた記録方法である。
本発明者らは、室内変色がノンコート紙には発生せず
コート紙のみに発生する現象であることから、塗工層
(コート層)を形成する顔料と室内変色の関係につい
て、検討した結果、塗工層中の特に染料を捕捉する記録
面を形成する顔料として、特定の顔料を用いた場合に、
室内変色が生じにくいことを知見して本発明に至った。
本発明の被記録材の少なくとも記録面を構成する層
(以下、記録層という)は、水系バインダーと、前記
の、平均粒子径が0.5〜10μmの範囲にあり、且つBET比
表面積が5〜100m2/gの範囲にある、表面をカチオン化
処理された顔料を主体として形成される。
なお、本発明で言う記録層とは、必ずしも最表層であ
る必要はなく、最表層の塗工層が微量であり、記録面に
最表層とその下層の形状が表われる場合には両方含むも
のとする。
本発明者の知見によれば、室内変色は染料の酸化分解
であり、染料が被記録材の表面でサイロイド(商品名、
富士デヴィソン製)に代表されるような比表面積の高い
シリカ(顔料)に捕捉された場合、空気との接触面積が
大きくなり、更に高比表面積のシリカは強い表面活性を
もっており、染料の分解に際して強い触媒作用を示し、
このため室内変色が促進されると考えられる。
したがって、本発明に於いては、平均粒子径が0.5〜1
0μmの範囲にあり、且つBET比表面積が5〜100m2/gの
範囲にある顔料が必須であり、より好ましくはこの顔料
が含ケイ素系顔料、更に好ましくは合成シリカを使用す
ることが必須である。顔料として含ケイ素系の顔料を用
いた方が、染料の発色性やインク吸収性に優れるため好
ましい。
従来は、たとえば特開昭59−185690号公報にあるよう
に、染料の発色性を向上させるため、インクジエツトコ
ート紙用の顔料としては、比表面積200m2/g以上の高い
比表面積を有するシリカを用いてきたが、特に上記のシ
リカを記録面に有するコート紙は室内変色が著しい問題
があり、本発明は比表面積200m2/g以下の顔料を用いた
場合の優れた室内変色の抑制力を保持しながら、これら
の顔料を用いた場合の色剤発色性の低下を改善するもの
である。
このため、より十分な室内変色の抑制力を有するため
に、本発明に好適な顔料はBET比表面積5〜100m2/g、よ
り好ましいものは5〜50m2/gの顔料である。
本発明の第1の特徴は、上記の如き平均粒子径が0.5
〜10μmの範囲にあり、且つBET比表面積が5〜100m2/g
の範囲にある顔料、好ましくはこの顔料が含ケイ素系顔
料であり、より好ましくは合成シリカであり、この顔料
の表面をカチオン化処理して用いることである。すなわ
ち上記のような、比表面積の低い顔料は、従来インクジ
エツト用紙に用いられてきた高い比表面積を有するシリ
カと比較して、染料吸着性の面では劣るが、その分を表
面をカチオン処理して、染料の酸性基と吸着させること
で補い、付着したインク滴中の染料をより被記録材の表
層に、より多くトラツプして優れた画像濃度を得ようと
するものである。
なお、ここで言うカチオン性とは、使用されるインク
中の酸性および/または直接染料分子の有するスルホン
基やカルボキシル基等の酸性の官能基と結合を形成しう
る塩基性の性状を有するものである。
上記の顔料の表面をカチオン化処理する方法として
は、以下のような方法があげられる。
(1)いわゆる耐水化剤(染料固着剤)として、知られ
るカチオン樹脂を表面に吸着/反応させる方法。これら
は分子内の主鎖または側鎖に1〜3級アミン乃至4級化
アンモニウム塩基を有する樹脂であり、そのうちのいく
つかのものが市販されている。本発明に於いては、塗工
工程で表面のカチオン性樹脂が離脱しないために、これ
らの中でも特に親水性且つ水不溶性のものが好ましい。
(2)カチオン性のシランカツプリング剤を表面に反応
させて、カチオン化する方法。この一例としては、1〜
3級アミン乃至4級化アンモニウム塩基を分子構造内に
有するシランカツプリング剤で処理することがあげら
れ、このようなシランカツプリング剤の具体例として
は、 N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメト
キシシラン N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジ
メトキシシラン γ−アミノプロピルトリメトキシシラン γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]−アミノプロピ
ルトリエトキシシラン ヘキサメチルジシラザン γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プ
ロピル]アンモニウムクロライド N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン 塩酸塩 SH−6026,SZ−6050(トーレ・シリコン製)の商品名で
市販されている特殊アミノシラン等があげられる。
上記のシランカツプリング剤分子中のシリル基はシリ
カ等の無機顔料表面の水酸基と結合を形成するため表面
に1〜3級アミン乃至4級化アンモニウム塩基を有する
顔料が得られる。
もちろん、本発明に於いて、顔料の表面をカチオン化
処理する方法としては、上記の方法に限定されるわけで
はなく、例えばアルミニウム・アルコラート,アルミニ
ウムモレート化剤,水溶性のアルミニウム塩やアルミニ
ウム石鹸を用いて、顔料の表面をアルミニウム処理する
方法、あるいは同様に、分子中にカチオン性基を有する
チタネート系のカツプリング剤により処理する方法、ま
たアルミナやCaO,MgO等の塩基性/両性の金属酸化物を
用いて表面処理する方法、アミン系以外のカチオン(塩
基性)樹脂やシランカツプリング剤を用いる方法や、そ
の他の方法が考えられ、本件の要件を満たすものであれ
ば、いずれの方法を用いてもよい。
顔料表面のカチオン性物質と顔料との間の結合力は強
固であるほど良く、この点から考えるとシランカツプリ
ング剤により処理する方法が最も良好である。
このような処理剤を用いて顔料表面を処理する方法と
しては、顔料に直接スプレー等を利用して、処理剤溶液
を噴霧する乾式法や顔料を任意の分散媒中に分散させ、
撹拌しながらこれに処理剤を添加し混合した後、脱水乾
燥したり、あるいは顔料の製造工程上で得られた顔料の
分散液に同様に、これらの処理剤を添加する湿式法があ
げられる。
この場合、処理剤と顔料の使用割合は、顔料に対して
処理剤が固型分比で0.1〜20重量%、より好適には0.5〜
5重量%である。
記録面を構成する層の顔料とバインダーの好適な使用
割合は1/3〜5/1、より好ましくは1/2〜3/1の割合であ
り、その表面が多孔質となる範囲である。
1/3よりバインダー量が多いと多孔性が低下して、イ
ンク吸収性が低下し、5/1より顔料が多いと塗工層の粉
落ちが激しくなるほか、前記の通り低比表面積の顔料を
用いた場合でも、室内変色や黄変の問題が顕著になる場
合がある。
本発明に使用可能なバインダーとしては、デンプン,
ゼラチン,カゼイン,アラビアゴム、アルギン酸ソー
ダ,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシメチルセ
ルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコー
ル,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ソーダ他の
アクリル系樹脂等の親水性高分子;SBRラテツクス,MBRラ
テツクス,酢ビエマルジヨン,アクリル型エマルジヨン
等の水分散型高分子等があげられる。
本発明において、使用可能な顔料は従来公知の顔料、
たとえばクレー,タルク,カオリナイト,酸化チタン,
酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウムの他、微粉ケ
イ酸,合成ケイ酸塩等をカチオン化処理したものが使用
できるが、好ましくは含ケイ素系顔料、より好ましくは
合成シリカである。もちろん本発明の目的を妨げない範
囲において、カチオン化処理していない顔料を併用する
ことができる。
これらの顔料の好適な(平均)粒子径は0.5〜10μ
m、より好適には1〜5μmである。粒径が大きすぎる
と、付着したインク滴が星型ににじみ、ドツト形状が悪
く、記録面が不均一となるためザラツキ感のある画像と
なる。粒径が小さい場合には、良好な塗層強度を得るた
めに多量のバインダー量を必要とするためインク吸収性
の低下をきたす。
更に、本発明の被記録材はより高精細な画像と、優れ
たインク吸収性を提供するための塗工層が2層以上の層
構成を有して成り、上記の顔料より、平均粒子径の大き
な顔料を主体として形成されるインク保持層を含んで成
る被記録材であることが好ましい。
インク保持層は、好ましくは5〜30μmの(平均)粒
子径を有する顔料、更に好ましくは含ケイ素系の顔料、
より好ましくは合成シリカを主体として形成され、前述
の記録層の下方に配置される。
本発明の上記の好ましい態様に於いては、インク保持
層として粒径の大きい顔料を用いて、その表面の細かい
凹凸を記録層の粒径の小さな顔料で埋めることにより、
大きな顔料を用いた場合の優れたインク吸収性を保持す
る利点を活かし、粉落ちを生じることなく、更にドツト
形状が良好でザラツキ感のない画像が得られる。
インク保持層を形成する顔料の比表面積は、記録層を
形成する顔料以上、より好ましくは200m2/g以上であっ
た方が、インク吸収性の面からも好ましい。
発色性,インク吸収性の面では、記録層のインク吸収
速度が表面に付着したインク滴が適当な大きさに滲む程
度に遅く、且つインク保持層のインク吸収性が大である
構成が好ましく、このため記録層に於ける顔料とバイン
ダーの使用割合が1/3〜5/1、より好適には1/2〜3/1、コ
ート層トータルとして1/1〜10/1の範囲が好適で4あ
る。
塗工層が、前述の如く2層以上で構成されているため
記録層の塗工量は1〜20g/m2、より好適には5〜15g/
m2、インク受容層トータルとして2〜50g/m2、より好適
には8〜30g/m2となる範囲内で、インク保持層の塗工量
が記録層より大なることが好ましい。
記録層の塗工量が1g/m2以下では設けない場合に比べ
てさしたる効果がなく、20g/m2以上だとインク保持層の
効果が低くなり、染料発色性やインク吸収速度等が低下
する。
更に、被記録材のインク吸収性をより良好とするため
に、好ましくはインク保持層を形成する顔料として、特
開昭62−183382号公報に開示されている様な、球状の粒
子形状を有する多孔質のシリカ粒子を用いることができ
る。
特に5〜30μmの(平均)粒子径を有する前記球状シ
リカをインク保持層に用いた場合には、従来の不定形顔
料に比べ空隙容量の高い塗工層を形成することができ、
優れたインク吸収性を有する被記録材を得ることができ
る。
このようにして得られる被記録材は、特にインク吸収
性と画像濃度に優れ、高精細な画像を提供するのに適し
た被記録材である。
以上のような、材料を用いて構成される本発明の被記
録材は、コート紙特有の室内変色の問題が発生せず、更
に優れたインク吸収性,画像濃度を提供しうるものであ
る。
更にこのような本発明の被記録材は、ポリプロピレ
ン,ポリエチレン等のフアイル、バインダー中に、1カ
月乃至数カ月間保存しても、従来のコート紙にみられる
様な白地部分の着色(黄変)がおこらないことが確認さ
れた。
これは、本発明者の想像するところであるが、コート
紙がこのように黄色く着色する原因は、ポリプロピレ
ン,ポリエチレン等に含まれる酸化防止剤が、シリカ等
の塗工層(コート層)を形成する多孔性顔料に吸着さ
れ、コート紙上で酸化されるため、塗工層が黄色く着色
するものと考えられる。ポリプロピレンやポリエチレン
などには、BET等分子構造内にフエノールを有する酸化
防止剤をねり込んでいるものが多く、これらのフエノー
ル系の酸化防止剤が酸化されると、黄色くなることはよ
く知られている。
コート紙の黄変も室内変色と同様に、コート紙のみに
起こる現象であり、室内変色と同じく塗工層上での塗工
層を触媒とする反応であると考えられる。
このため本発明のように、特殊な塗工層を有する被記
録材では、黄変もおこりにくいことがわかった。
上記のような材料を用いて調整される本発明の塗工液
は公知の方法、例えばロールコーター法,ブレードコー
ター法,エアーナイフコーター法,ゲートロールコータ
ー法,サイズプレス法等により塗工する。
また顔料とバインダーからなる水系塗工液を基材上に
塗布した後は、従来公知の乾燥方法、例えば、熱風乾燥
炉,熱ドラム等を用いて乾燥した本発明の被記録材が得
られる。
又、塗工層表面を平滑化するため、或いは塗工層の表
面強度を上げるために工程上スーパーカレンダーを用い
てもよい。
更に本発明においては塗工層に必要に応じて染色固着
剤(耐水化剤),蛍光増白剤,界面活性剤,消泡剤,pH
調整剤,防かび剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤等を含有
させてもよい。
特に、チオエーテル系の従来公知の酸化防止剤は室内
変色を抑制し、且つ塗工層上での黄変を発生しない傾向
があり、これらを塗工層が着色したり塗工層強度が低下
しない範囲で含有してもよい。
以上のような構成の被記録材にインクジエツト記録方
式を用いて、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン
(C),ブラツク(BK)等、多色の水系インクで記録す
る記録方法によれば得られる画像には室内変色がおこら
ず、保存性に優れた記録画像が得られる。
本発明方法において、上記の如き特定の被記録材にイ
ンクジエツト記録方法により付与するインクそれ自体は
公知のものでよく、例えば直接染料,酸性染料,塩基性
染料,反応性染料,食用色素等に代表される水溶性染料
であり、特にインクジエツト記録方式のインクとして好
適であり、上記の被記録材との組合せで定着性,発色
性,鮮明性,安定性,耐光性その他の要求される性能を
満たす画像を与えるものとして好ましいものは、例え
ば、 C.I.ダイレクトブラツク17,19,32,51,71,108,146 C.I.ダイレクトブルー6,22,25,71,86,90,106,199 C.I.ダイレクトレツド1,4,17,28,83 C.I.ダイレクトイエロー12,24,26,86,98,142 C.I.ダイレクトオレンジ34,39,44,46,60 C.I.ダイレクトバイオレツト47,48 C.I.ダイレクトブラウン109 C.I.ダイレクトグリーン59 等の直接染料、 C.I.アシツドブラツク2,7,24,26,31,52,63,112,118 C.I.アシツドブルー9,22,40,59,93,102,104,113,117,12
0,167,229,234 C.I.アシツドレツド1,6,32,37,51,52,80,85,87,92,94,1
15,180,256,317,315 C.I.アシツドイエロー11,17,23,25,29,42,61,71 C.I.アシツドオレンジ7,19 C.I.アシツドバイオレツト49 等の酸性染料が好ましく、その他、 C.I.ベーシツクブラツク2 C.I.ベーシツクブルー1,3,5,7,9,24,25,26,28,29 C.I.ベーシツクレツド1,2,9,12,13,14,37 C.I.ベーシツクバイオレツト7,14,27 C.I.フードブラツク1,2 等も使用できる。
上記の染料の例は本発明の記録方法に適用できるイン
クに対して特に好ましいものであり、本発明に使用する
インク用の染料はこれらの染料に限定されるものではな
い。
このような水溶性染料は、従来のインク中において一
般には約0.1〜20重量%を占める割合で使用されてお
り、本発明においてもこの割合と同様でよい。
本発明に用いる水系インクに使用する溶媒は、水また
は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であり、特に好適な
ものは水と水溶性有機溶剤と混合溶媒であって、水溶性
有機溶剤としてインクの乾燥防止効果を有する多価アル
コールを含有するものである。また水としては種々のイ
オンを含有する一般の水でなく、脱イオン水を使用する
のが好ましい。
インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはイン
クの全重量に対して重量%で0〜95重量%、好ましくは
10〜80重量%、より好ましくは15〜50重量%の範囲であ
る。
また本発明に用いるインクは上記の成分の外に必要に
応じて、界面活性剤,粘度調整剤,表面張力調整剤等を
包含し得る。
本発明方法において、前記の特定の被記録材に上記の
インクを付与して記録を行うためのインクジエツト記録
方法は、インクをノズルより効果的に離脱させて、射程
体である被記録材にインクを付与し得る方式であればい
かなる方式でもよく、それらの方式の代表的なものは、
例えばアイイーイーイー トランス アクシヨンズ オ
ン インダストリー アプリケーシヨンズ(IEEE Tran
s actions on Industry Applications)Vol.JA−1
3、No.1(1977年2,3月号)、日経エレクトロニクスの19
76年4月19日号、1973年1月29日号および1974年5月6
日号に記載されている。これらに記載の方式は本発明の
方法に好適なものであり、その幾つかを説明すると先ず
静電吸引方式があり、この方式ではノズルとノズルの数
mm前方に置いた加速電極との間に強電界を与えて、ノズ
ルよりインクを粒子化して次々に引出し、引出したイン
クが偏向電極間を飛翔する間に情報信号を偏向電極に与
えて記録する方式と、インク粒子を偏向することなく情
報信号に対応してインク粒子を噴射する方式とがあり、
いずれも本発明の方法に有効である。
第2の方式としては小型ポンプでインクに高圧を加
え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることに
より強制的に微小インク粒子を噴射する方式があり、噴
射されたインク粒子は噴射と同時に情報信号に応じて帯
電させる。帯電したインク粒子は偏向電極板間を通過す
る際、帯電量に応じて偏向される。この方式を利用した
別の方式としてマイクロドツトインクジエツト方式と称
される方式もあり、この方式ではインク圧力,励振条件
をある範囲の適性値に保ち、ノズル先端より大小二種類
のインク液滴を発生し、この中小径液滴のみを記録によ
り利用するものである。この方式の特徴は、従来並みの
太いノズル口径でも微小液滴群を得ることができる。
第3の方式としてはピエゾ素子方式があり、この方式
ではインクに加える圧力手段として他方式の如くポンプ
の様な機械的手段でなく、ピエゾ素子を利用する。ピエ
ゾ素子に電気信号を与えて機械的変位を生じさせること
によりインクに圧力を加え、ノズルより噴出させる方式
である。
また特開昭54−59936号公報に記載されている方法
で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変
化を生じ、この状態変化による作用力によって、インク
をノズルから吐出させるインクジエツト方式も有効に使
用することができる。
〔発明の効果〕
本発明の被記録材は、染料捕捉能の高い顔料を表層に
多量に含有しているのでインク滴中の染料が顔料に捕捉
及び吸収される確率が高く、その為にインクの滲み及び
拡散が抑制され、その結果ドツト形状が改良されて優れ
たインク吸収性,解像度,発色性,発色濃度等を示す。
更に、本発明は上記に示すようなコート紙としてのイ
ンクジエツト記録適性、特に優れた画像濃度を示し、且
つコート紙特有の画像保存性の問題やフアイル,バイン
ダー等への保存時の黄変問題も少ない。すなわち、本発
明の被記録材と多色インクを用いたインクジエツト記録
方式による記録方法に於いては、得られた画像を1乃至
数ケ月、直射日光のあたらないオフイスの壁やひき出し
の中に保存しておいた際の室内変色の問題や、ポリプロ
ピレン,ポリエチレン等のフアイル、バインダーにコー
ト紙あるいは記録画像を1乃至数ケ月保存して入れてお
いた際の白地部分の着色(黄変)の問題を生じない。
〔実施例〕
次に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的
に説明する。なお文中、部または%とあるのは特に断り
のない限り重量基準である。
本発明に使用可能な比表面積が5〜100m2/gの範囲に
あり、平均粒子径が0.5〜10μmの範囲にあり、表面を
カチオン化処理した顔料として下記のものを調整した。
A.合成シリカ(フアインシールSP−20 BET比表面積18m
2/g、平均2次粒子径9.1μm、徳山曹達製)の20%スラ
リー100部に対して、塩化アルミニウムの2%水溶液20
部を加え、十分撹拌した後に、100℃で1時間乾燥し、
更に500℃で1時間熱処理して本発明に用いるカチオン
化処理した顔料を調整した。
B.同様に上記の合成シリカの20%スラリー100部に対し
て、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルト
リメトキシシラン(信越シリコーンKBM−603信越化学工
業製)2%水溶液15部を加え、110℃で20分間乾燥させ
て本発明に用いる表面をカチオン化処理した顔料を調整
した。
C.合成シリカ(ミズカシルP−527 BET比表面積40m2/
g、平均2次粒子径1.8μm水沢化学製)をメタノールに
分散させた20%スラリー100部に対してオクタデシルジ
メチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモ
ニウムクロライド(AY43−006 トーレ・シリコーン
製)の1.5%メチルセロソルブ溶液20部を加え、110℃で
20分間乾燥させて、本発明に用いる表面をカチオン化処
理した顔料を調整した。
D.同様に上記の合成シリカをメタノールに分散させた20
%スラリー100部に対してカチオン樹脂(エレコンドPQ
−50B 綜研化学製)の5%エタノール溶液8部を加え
て十分に撹拌した後に100℃で15分間乾燥させて、本発
明に用いる表面をカチオン化処理した顔料を得た。
E.炭酸カルシウム(エスカロン#2000 BET比表面積2.1
m2/g平均粒子径1.1μm三共精粉製)をエタノールに分
散させた20%スラリー100部に対してカチオン樹脂(エ
レコンドPQ−50B綜研化学製)の5%エタノール溶液8
部を加えて十分撹拌した後に100℃で15分間乾燥させ
て、本発明に用いる表面をカチオン化処理した顔料を得
た。
比較用の顔料として次のものを用いた。
F.合成シリカ(サイロイド74 BET比表面積300m2/g平均
2次粒子径3.5μm富士デヴイソン製) G.合成シリカ(フアインシールX−37 BET比表面積260
m2/g平均2次粒子径27μm徳山曹達製) H,I,J,上記のA,C,Eの顔料を調整するために用いた顔料
を表面処理せずに用いた。
実施例1〜3、比較例1〜3 基材として一般に上質紙(銀環 山陽国策パルプ製)
を用い、下記の塗工液Iを用いて乾燥塗工量が18g/m2
なるようにバーコーター法により塗工し、110℃で5分
間乾燥して保持層を形成し、そのインク保持層上に下記
の塗工液IIに顔料それぞれA〜C,F〜Hを用いて乾燥塗
工量が8g/m2となるようにバーコーター法で塗工し、110
℃で3分間乾燥させて表面層を形成して本発明の被記録
材および比較用の被記録材を得た。
塗工液I組成 合成シリカ(球状シリカ BET比表面積700m2/g平均2次
粒子径25μm旭硝子製) 18部 ポリビニルアルコール(PVA−117/R−1130 クラレ製) 6部 水 76部 塗工液II組成 顔料 18部 ポリビニルアルコール(PVA−105/PVA−117 クラレ
製) 10部 水 82部 実施例4,5、比較例4,5 実施例1と同様の基紙上に、下記の塗工液IIIを用い
て乾燥塗工量が24g/m2となるようにバーコーター法によ
り塗工し、110℃で5分間乾燥してインク保持層を形成
し、そのインク保持層上に下記の塗工液IVに顔料とし
て、それぞれD〜E,I〜Jを用いて乾燥塗工量が5g/m2
なるようにバーコーター法で塗工し、110℃で3分間乾
燥させて表面層を形成して本発明の被記録材および比較
用の被記録材を得た。
塗工液III組成 合成シリカ(サイロイド620 BET比表面積300m2/g平均
2次粒子径12μm富士デヴイソン製) 20部 ポリビニルアルコール(PVA−117 クラレ製) 5部 水 75部 塗工液IV組成 顔料 15部 ポリビニルアルコール(PVA−110 クラレ製) 10部 水 85部 上記の被記録材のインクジエツト記録適性は、1mmに1
6本の割合のノズル間隔で128本のノズルを備えたインク
ジエツトヘツドをY,M,C,BKの4色分有するインクジエツ
トプリンター(a)と1mmに8本の間隔で24本のノズル
を4色分有するインクジエツトプリンター(b)とを用
い、下記組成のインクによりインクジエツト記録を行い
評価した。
◎インク組成(I) 染料 5部 エタノール 5部 ジエチレングリコール 15部 水 78部 ・染料(インクI) Y:C.I.ダイレクトイエロー86 M:C.I.アツシドレツド35 C:C.I.ダイレクトブルー199 BK:C.I.ダイレクトブラツク17 ◎インク組成(II) 染料 2部 ジエチレングリコール 20部 ポリエチレングリコール#200 15部 n−メチル−2−ピロリドン 10部 水 53部 ・染料(インクII) Y:C.I.アツシドイエロー42 M:C.I.アツシドレツド92 C:C.I.ダイレクトブルー86 BK:C.I.ダイレクトブラツク51 ◎インク組成(III) インク組成(II)に染料(インクIII)としてC.I.フ
ードブラツク2を用いた。
評価は次に示す項目について行った。結果は第2表に
示した。
(1)インク吸収性はインク(I)を用いたインクジエ
ツトプリンター(a)を用いて評価した。記録画像の2
色インクの混色部で単色部より線太りのひどいものを
×、ないものを○、わずかに発生するものを△とした。
更に3色の重ね部分でも発生しないものは◎とした。
(2)室内保存性(1)はインク(I),(II),プリ
ンター(a)を用いてカラー画像を形成し、オフイスの
壁にはって、6ケ月間放置した。同じ画像を同様に6ケ
月間クリアーポケツトフアイルの中に保存した画像と比
べて変色のみとめられないものを○、変色がはげしいも
のを×、その中位のものを△とした。
(3)室内保存性(2)は、インク(III),プリンタ
ー(b)を用いてBKのベタパターンを印字し、(2)と
同様にオフイスの壁にはって2ケ月間放置した。この画
像の色度と印字直後の画像の色度との鎖△Eabを求
め、室内変色性を評価した。
(4)色彩性は、インク(I),プリンター(a)を用
いてべた印字した印字物(Y,M,C)の彩度を高速カラー
アナライザーCA−35(村上色彩科学製)を用いて測定し
た。
(5)画像濃度はインク(III),プリンター(a)を
用いてベタ印字した印字物(BK)の光学濃度(0.D.)を
マスベク濃度計RD−914を用いて測定した。
(6)黄変は(2)でクリアーポケツトフアイル内に保
存した画像の周囲の白地部分に黄変を発生するものを
×、みとめられないものを○とした。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−204390(JP,A) 特開 昭59−192589(JP,A) 特開 昭62−282966(JP,A)

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材と基材上に設けられた、顔料を含む塗
    工層を備えた被記録材において、該塗工層中に、平均粒
    子径が0.5〜10μmの範囲にあり、且つBET比表面積が5
    〜100m2/gの範囲にある、表面をカチオン化処理された
    顔料を含むことを特徴とする被記録材。
  2. 【請求項2】前記顔料が含ケイ素系顔料である請求項1
    項に記載の被記録材。
  3. 【請求項3】前記顔料が合成シリカである請求項2に記
    載の被記録材。
  4. 【請求項4】前記顔料のBET比表面積が5〜50m2/gの範
    囲にある請求項1に記載の被記録材。
  5. 【請求項5】前記塗工層が、記録面を構成する記録層と
    インク保持層を含む請求項1に記載の被記録材。
  6. 【請求項6】前記記録層がカチオン化された顔料を含
    み、インク保持層がカチオン化された顔料より平均粒子
    径の大なる顔料を含む請求項5に記載の被記録材。
  7. 【請求項7】前記インク保持層に含まれる顔料の平均粒
    子径が5〜30μmの範囲にある請求項6に記載の被記録
    材。
  8. 【請求項8】前記顔料が含ケイ素系顔料である請求項7
    に記載の被記録材。
  9. 【請求項9】前記顔料が合成シリカである請求項8に記
    載の被記録材。
  10. 【請求項10】前記合成シリカが球状の多孔質シリカで
    ある請求項9に記載の被記録材。
  11. 【請求項11】前記顔料のBET比表面積が200m2/g以上で
    ある請求項6に記載の被記録材。
  12. 【請求項12】記録層の塗工量が1〜20g/m2の範囲にあ
    る請求項5に記載の被記録材。
  13. 【請求項13】インク保持層の塗工量が、記録層の塗工
    量より大である請求項5に記載の被記録材。
  14. 【請求項14】インクジェット記録用である請求項1乃
    至13のいずれかに記載の被記録材。
  15. 【請求項15】水系インクの小滴を被記録材に付与して
    記録を行う記録方法において、該水系インクが酸性染料
    又は直接染料を含有し、被記録材が請求項1乃至14のい
    ずれかに記載の被記録材であることを特徴とする記録方
    法。
  16. 【請求項16】インクの小滴をインクジェット方式によ
    り付与する請求項15に記載の記録方法。
  17. 【請求項17】前記インクジェット方式が、インクに熱
    エネルギーを付与してインクを吐出させる方式である請
    求項16に記載の記録方法。
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