JP2673142B2 - 高耐熱高強度アルミナシリカ質繊維 - Google Patents

高耐熱高強度アルミナシリカ質繊維

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は主成分がアルミナ及びシリカからなるアルミ
ナシリカ質繊維に関する。
[従来の技術] 従来、この種のアルミナシリカ質繊維は大量に生産さ
れ、各種の用途に用いられている。
一般のアルミナシリカ質繊維は、アルミナ含有率が40
〜65%で、シリカ含有率が60〜35%である。このような
基本組成を基本にして、さらに酸化クロム、酸化ジルコ
ニウム、酸化硼素などの副成分が十数%ないし数%添加
されて、耐熱性の向上や繊維化の容易さについて改善が
なされることもある。
アルミナシリカ質繊維を製造する際には、通例、原料
を電気炉で溶融し、その溶融物を細い流れにして炉外に
導き繊維化する。
繊維化の1つの方法として、溶融物の細い流れに高速
のガス体を当てて引伸ばす方法がある。この方法はブロ
ーイング法といわれている。
また、別の方法として、溶融物を高速で回転する回転
体に当て、遠心力で引伸しながら繊維化する方法があ
る。この方法はスピニング法といわれている。
ブローイング法及びスピニング法のいずれの方法によ
っても、得られる繊維は50〜100ミリメートルの平均繊
維長を持つ。このような短い繊維を一般に短繊維と呼ん
でいる。
いずれの方法においても、高温の溶融状態から急冷し
ながら繊維状に引き伸ばすので、得られる繊維は室温で
は非晶質である。
ここで非晶質とは結晶質ではないという意味で用いて
おり、ガラス質と言いかえてもよい。もっと具体的にい
えば、非晶質とはX線に対して結晶の回折を示さないこ
とを意味している。
非晶質の繊維も、ほぼ1000℃以上で使用されると急激
に結晶質に転移する。
このような非晶質のアルミナシリカ質繊維は、高温に
おける加熱収縮率が比較的小さい。また、耐熱性が高
い。そのため、この種の繊維は、ブランケットやフェル
トに加工されて、一般工業炉の断熱材として広く用いら
れている。
また、最近では、アルミナシリカ質繊維は金属、プラ
スチック、その他の材料等と組合せて複合材として用い
られている。こういった断熱材以外の用途では、単なる
充填材に止どまらず、補強繊維としても使用されるよう
になってきた。
[発明が解決しようとする課題] 補強繊維として使用されているアルミナシリカ質繊維
は断熱材として使用されているアルミナシリカ質繊維を
そのまま流用するに過ぎなかったため、補強繊維として
要請されている特性を十分満足しているとは言えなかっ
た。例えば、断熱性と強度に欠点があった。とくに高温
における強度が不十分であった。
さらに、非弾性率も不十分であった。例えば、アルミ
ナシリカ質繊維をアルミニウムやアルミニウム合金など
の金属に混ぜて補強材として用いる場合、この種の繊維
のもつ特性を十分に生かせなかった。
従来のアルミナシリカ質繊維は、それが溶融アルミニ
ウムと接触する場合、約750℃の温度に加熱されるが、
その際、このような温度でも繊維の特性が劣化し、強度
が低下した。
また、従来のアルミナシリカ質繊維をクロスやロープ
として用いた場合、高温での強度低下が著しいので、用
途の拡大が著しく制限されていた。
上記欠点を克服すべく、本発明は耐熱性を改善し、か
つ高温でっ強度が低下しないアルミナシリカ質繊維を提
供することを目的としている。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するために、請求項1の発明は、アル
ミナの含有料が40〜65重量%で、非晶質で、かつ1300℃
−8時間の熱処理によってもクリストバライトのX線解
析強度のピーク高さがゼロであるアルミナシリカ質繊維
からなり、この繊維中のNa及びKの合計が250ppm以下の
範囲としている高耐熱高強度アルミナシリカ質繊維であ
る。
Naの混入は十分な配慮の下では最低限に押さえられる
が、一定量を越えると好ましくない。Kも同様である。
本発明の繊維中に許容できるNa及びKの合計含有量の範
囲は重量分析値に250ppm以下の範囲である。但し、10pp
m未満の範囲は、原料の価格が高くなりすぎ、また製造
に手間がかかり過ぎるので好ましくない。250ppmを越え
ると耐熱性及び高温時の引張強度が低下する。特に耐熱
性に影響する。
また、請求項2の発明は、アルミナの含有率が40〜65
重量%で、非晶質で、かつ1300℃−8時間の熱処理によ
ってもクリストバライトのX線解析強度のピーク高さが
ゼロであるアルミナシリカ質繊維からなり、この繊維中
のNa及びKの合計が250ppm以下の範囲で、かつこの繊維
に含まれるFeが500ppm以下である高耐熱高強度アルミナ
シリカ質繊維である。
Feの混入は十分な配慮の下では最低限に押さえられる
が、一定量を越えると好ましくない。本発明の繊維中で
推奨出来るFeの範囲は500ppm以下であり、500ppmを越え
ると耐熱性及び高温時の引張強度が低下しやくすなる。
特に引張強度が影響をうける。
要するに、本発明に係る繊維は、従来のアルミナシリ
カ質繊維に比べ、Na及びKの合計含有量及びFe含有量が
著しく少ないことに特徴がある。本発明におけるNa及び
Kの合計含有量及びFe含有量は従来品に比べ約1/10以下
である。
本発明のアルミナシリカ質繊維は、アルミナ原料とシ
リカ原料を混合してから溶融し、その溶融物を急冷しな
がら短時間で繊維化したものである。
なお、本発明において、副成分として酸化クロムや酸
化ジルコニウム、酸化硼素が少量含まれていてもよい。
[実施例] 本発明によるアルミナシリカ質繊維の製造に当たり、
高純度のアルミナ原料及びシリカ原料を使用するのが望
ましい。その他に、高純度のアルミナシリカ化合物を使
用することも出来る。
従来の非晶質アルミナシリカ質繊維でも、窯業原料と
しては比較的純度の高いものが使用されてきた。例え
ば、アルミナ原料としては比較的純度の高いバイヤー法
アルミナを使用し、シリカ原料としては外国産の純度の
高い硅砂等を使用してきた。
このような原料においては、いずれも比較的不純物が
少ないものの、Na、K、Feの酸化物がそれぞれ0.01〜0.
2%の範囲で含まれている。
このような範囲で不純物を含む原料は本発明に係る繊
維を製造する原料としては好ましくない。本発明に係る
繊維を製造する原料としては、さらにアルカリ金属酸化
物及びFeの酸化物の含有量の低いものが望まれる。
後述するように、現在の技術では不純物の少ない原料
を用いても、製造段階で新たに混入する不純物をゼロに
することは困難である。
製造段階での不純物混入を考慮したうえで、前述のよ
うな厳しい要求を満たす原料を天然原料中に見出だすこ
とは困難である。
したがって、通常はアルミナ原料およびシリカ原料の
いずれも、合成原料を使用する。
アルミナ原料としては従来バイヤー法の合成アルミナ
を使用していたが、バイヤー法のアルミナには、製法
上、Na2Oが0.1〜0.2含まれてしまう。
従って本発明で使用するアルミナ原料は普通のバイヤ
ー法以外の製造によるものが好ましい。例えば、アンモ
ニウムミョウバン法や有機金属加水分解法等によって得
たアルミナを使用するのが好ましい。
しかし、不純物の多い原料の使用を全く否定するもの
ではない。不純物の多い原料を用いても、不純物を除去
する工程を適用すれば、本発明の繊維は製造することが
可能である。
シリカ原料についても、天然硅砂は、不純物含有量、
特にアルカリ金属の酸化物の含有量が多いので、本発明
では使用しにくい。
したがって、本発明ではシリカ原料として合成原料の
使用が好ましい。このような原料として四塩化ケイ素や
各種アルキルシリケートを出発原料とした合成シリカが
挙げられる。
本発明で用いられる原料の例を第1表に示す。比較の
ために、従来より多く用いられているバイヤー法アルミ
ナ及び天然硅砂(フラタリーサンド)の不純物分析値を
示す。
第1表のACL−27、CAH−501はいずれも高純度アルミ
ナ原料の例である。これらのアルミナは不純物含有量が
いずれの元素についても原料で100ppm以下である。この
程度の純度であれば、本発明で使用しうる。P−3は高
純度シリカ原料の例で、不純物元素はほとんどゼロに近
い。これも本発明で使用しうる。
A−Hは従来から多量に用いられているバイヤー法の
アルミナの例である。この例では、Na及びFeの含有量が
高い。フラタリーサンドはFe、Na、Kがかなり少ない
が、P−3に較べれば著しく多い。
不純物の多い原料を多量に使用することはできない
が、それを高純度の原料に混ぜて使用することは可能で
ある。
本発明に係る繊維を製造するには、まず高純度の原料
を所定の配合比で配合し、それを電気炉で溶融する。溶
融に使用する電気炉の型式はいずれの形式であってもか
まわないが、いずれの型式であっても原料以外の部分か
ら不必要な不純物が溶融物に混入するのを極力避けなけ
ればならない。不純物の混入源は原料及び溶湯に直接接
触する物体の全てに及ぶ。例えば、原料貯蔵タンク、原
料混合機、原料輸送系、炉穀、オリフィス、電極、高速
ガス体、集綿質等である。
好ましくない不純物として、Na、Kの酸化物だけでな
く、さらにFeの酸化物を挙げることができる。これらの
不純物は出来るだけ少ないほうが望ましい。
最終的に繊維中に取込まれる不純物には、上述のよう
に、原料から入ってくるものと、それ以外のルートから
入ってくるものに分かれる。
後者のような不純物の例としては、Feまたはその酸化
物が特に顕著である。Na及びその酸化物の多くも後者の
ルートで入ってくる。
NaやFeの混入は十分な配慮の下で最低限に押さえる必
要がある。
[実験例] 以下、実験例を示して、さらに詳細に説明する。
第1表に示した高純度アルミナ及び高純度シリカを所
定の比率で配合した。配合物をアーク式電気炉で溶融
し、その溶融物を炉外へ細い流れとして導いた。この細
い流れに高速空気を当てて繊維化した。
目標の配合組成を第2表に示す。第2表の実験例1−
aではアルミナ原料ACL−27とし、シリカ原料をP−3
とした。
実験例3−aでは、アルミナ原料をCAH−501とし、シ
リカ原料をP−3とした。
実験例2−aでは、アルミナ原料をACL−27とCAH−50
1を50%ずつ混合して用い、シリカ原料をP−3とし
た。
比較例1−aでは、アルミナ原料をA−Hとし、シリ
カ原料をフラタリ−サンドとして繊維化した。
得られた繊維中の不純物の化学分析値を第3表に示
す。
第3表によれば、いずれの繊維も、原料の配合組成か
ら予想される量よりも多い不純物が認められた。特にN
a、Feの増加が著しい。
第3表に示した繊維について引張強度試験を行った。
試験条件は、常温で引張試験を行う場合と、予め800℃
で30分熱処理を施して引張試験を行う場合の2種類に分
けた。試験方法はJIS R7601に準じて行なった。1試料
につき50本の繊維について、チャック間距離25mm、引張
速度2mm/分で試験した。繊維径は破断部分について顕微
鏡測定を行って求めた。その結果を第4表に示す。
第4表によれば、熱処理をしない場合の引張強度は実
験例1−a、2−a、3−aの方が比較例1−aに比べ
てわずかに大きいか、または同程度である。引張弾性率
についてもほぼ同様のことがいえる。しかし、800℃で
熱処理した繊維の引張強度は、本発明の各実験例では平
均170Kg/mm2を維持するが、比較例1−aでは96Kg/mm2
と低下している。
引張弾性率を比べると、本発明の各実験例の場合は、
熱処理によって全く低下しておらず、約13000Kg/mm2
維持している。本発明の各実験例の繊維は、熱処理によ
り引張強度と引張弾性率があまり低下していないのであ
る。これに比べ、比較例1−aの弾性率は熱処理によっ
て約7000Kg/mm2に低下した。すなわち、比較例1−aの
方は熱処理によって引張強度と引張弾性率の両方が著し
く低下した。
次に第3表に示した繊維について耐熱試験を行った。
まず第3表に示した繊維から試験試料を作成した。試料
の作成方法について述べると、繊維を通常の水道水を満
たした水槽にいれ、繊維200grに対して陽極デンプン6gr
の割合で繊維に陽極デンプンを添加して良く撹拌したあ
と、縦横100x100mm、厚さ20mmに真空成形した。真空成
形品を十分に乾燥してから加熱試験に供した。加熱試験
は電気炉を使い、試料の縦横の寸法について加熱前後の
変化から線収縮率を求めた。
耐熱試験の結果を第6表に示す。
耐熱試験に用いた成形体の一部を1000℃で仮焼してデ
ンプンを消失させた後、化学分析を行った。その結果を
第5表に示す。
また、耐熱試験を行った後の試料についてX線回折試
験をした。試料中に検出されたムライト結晶(3Al2O3
2SiO2)とクリストバライト結晶(SiO2)の回折ピーク
強度を第7表に示す。
ここで、第3表〜第5表の各実験例と比較例の対応関
係について説明する。
第3表の実験例1−a、2−a、3−aから作成した
成形体の分析値及び加熱試験結果が第5表、第6表、第
7表の実験例1−d、2−d、3−dに対応し、同様に
第3表の比較例1−aの成形体の分析値及び加熱試験結
果は第5表、第6表、第7表の比較例1−dに対応す
る。
第5表の成形品の分析値と第3表に示した元の繊維の
分析値を比較すると、Naの含有量に著しい違いが認めら
れる。第3表の実験例1−a、2−a、3−aにおける
Naの値は18〜67ppmである。
この値は、Na2O%の表示に換算すると、0.024〜0.009
%に相当する。同様に第3表の比較例1−aのNaの値を
Na2O%に換算すると、それは0.15%に相当する。
これに対し、第5表のNa2O%は実験例1−d、2−
d、3−dの成形体で0.12〜0.17%である。
また、比較例1−dは0.18%である。Na2O%について
第3表と第5表を比較すると、各実験例と比較例のいず
れも第5表で大幅に増えている。つまり成形加工を受け
る段階で第3表の繊維は著しく不純物に汚染されたこと
を示す。
このように不純物に汚染された第5表の成形体につい
ては、各実験例と比較例の分析値は、それぞれの成分に
ついてほとんど同じである。
しかし、第5表に対応する成形体の耐熱試験の結果で
は明確に差が出ている。すなわち第6表において実験例
1−d、2−d、3−dは1300℃と1400℃のいずれかの
試験温度でも比較例1−dより加熱収縮率が小さかっ
た。
1300℃で加熱した時の加熱時間に応じた試料中の結晶
量は第7表に示されている。第7表によれば、各実験例
は比較例に比べてクリストバライトの析出量が極端に少
ない。この差が収縮率の差となっていると考えられる。
なお、微量成分の分析には各種の方法が適用できる
が、本発明の試験では炎光光度法を採用した。他にイオ
ンクロマト法も可能である。
[発明の効果] 前述のように、本発明に係るアルミナシリカ質繊維は
高温下におかれても引張強度や引張弾性率の低下が少な
く、また1300℃以上の温度に長時間さらされても収縮率
が小さい。このような効果は成形に際して不純物に汚染
されても維持される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 幹也 千葉県成田市吾妻2丁目2番地(19棟 305号) (72)発明者 三須 安雄 千葉県成田市加良部2丁目1番地(3棟 506号) (72)発明者 遠藤 茂男 千葉県成田市玉造1丁目17番地の2 (72)発明者 平田 公男 千葉県香取郡神崎町大貫1010番地 (56)参考文献 特開 昭55−22092(JP,A) 特開 平4−108116(JP,A) 特開 昭63−60130(JP,A) 特開 昭63−50526(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナの含有率が40〜65重量%で、非晶
    質で、かつ1300℃−8時間の熱処理によってもクリスト
    バライトのX線解析強度のピーク高さがゼロであるアル
    ミナシリカ質繊維からなり、この繊維に含まれるNa及び
    Kの合計が250ppm以下の範囲である高耐熱高強度アルミ
    ナシリカ質繊維。
  2. 【請求項2】アルミナの含有率が40〜65重量%で、非晶
    質で、かつ1300℃−8時間の熱処理によってもクリスト
    バライトのX線解析い強度のピーク高さがゼロであるア
    ルミナシリカ質繊維からなり、この繊維に含まれるNa及
    びKの合計が250ppm以下の範囲で、かつこの繊維に含ま
    れるFeが500ppm以下である高耐熱高強度アルミナシリカ
    質繊維。
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