JP2672751B2 - 打抜き加工性、成形性に優れた冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

打抜き加工性、成形性に優れた冷延鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、打抜き加工性、成形
性に優れた冷延鋼板の製造方法に関し、特に良好な打抜
き性及び成形性を兼ね備える冷延鋼板を容易かつ安価に
得ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】従来、オーディオ機器のスピーカーネッ
ト等、お椀状の張出し成形を行った後蜂の巣状の微細な
精密打抜きを行うような用途に供せられる鋼板として
は、SPCD又はSPCEグレードの低炭箱焼鈍材が充当されて
きた。
【0003】一般に、打抜き加工に用いられる材料に
は、打抜き時のバリが少ないこと及び連続打抜き時の型
摩耗が少ないこと等が要求されるが、低炭箱焼鈍材は数
十時間にわたる焼鈍過程においてCが脆いセメンタイト
として結晶粒界や粒内に粗大に析出し、このセメンタイ
トが打抜き加工時に鉄−フェライト粒の連続せん断を分
断すると共に脆く破壊することから、バリの発生量が少
なく、また型摩耗も小さく、しかもせん断荷重も小さく
なることが知られている。さらに成形性については、焼
鈍温度のアップ等によって、打抜き性を維持したまま容
易に向上させることができる。
【0004】しかし、焼鈍工程における生産性向上及び
品質向上を目的として、従来の箱焼鈍法から高温短時間
焼鈍の連続焼鈍法への移行が急速に進みつつある現在、
短時間焼鈍であるが故に粗大なセメンタイトの生成が困
難な連続焼鈍法を用いた場合においても、打抜き加工性
と良好な成形性を兼備した鋼板の開発が急務となってい
る。
【0005】連続焼鈍材の打抜き性改善方法としては、
Mn, Sを添加することによってMnS析出物を多量に生成
する方法(特開平1−230748号公報)や、P等の固溶強
化元素を添加し鋼板を硬質にする方法等が知られてい
る。しかしながら、前者のMnS析出鋼では、打抜き性は
改善されるものの、成形性に対してはこのMnSが有害で
あることから、良好な成形性が得られず、他方後者の硬
質化鋼についても、打抜き性は向上するけれども、逆に
成形性は大幅に劣化するため、打抜き性と良好な成形性
を兼備させることは困難であった。
【0006】この点、両特性を兼備するものとして、成
形性の良い鋼板の表層組織のみを硬化させる方法(特開
平3-56644号、同3−226526号、同3−277739号、同4
-32538号、同3−202442号及び同3−199343号各公報)
が提案されたが、この方法は複雑な製造工程を必要と
し、コストアップが免れ得ない不利があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したとおり、従来
から知られている箱焼鈍材におけるセメンタイトの代替
としてMnS析出物を多量に含有させる方法や、鋼板を硬
質にする方法では、打抜き性の向上に伴って機械的性質
が大幅に劣化するという問題があった。また発明者ら
は、従来の低炭箱焼鈍材を含め数種の冷延鋼板を用いて
円板状の打抜きサンプルを作製し、円周方向にわたるバ
リの発生形態について調査したところ、いずれの材料に
もバリ高さに異方性があること、そしてこのバリ高さの
異方性と機械的性質の異方性とは相関を有していること
も併せて究明した。ここに、打抜き加工に使用される材
料には、バリ高さは勿論のこと機械的性質に関し、でき
る限り異方性が小さいことが望まれる。
【0008】この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、連続焼鈍材の打抜き性改善方法として基本的に
は析出物を多量に生成させる方法をとるものの、極低炭
素鋼をベースとして析出物を材質劣化の少ないTi系析出
物主体に構成し、さらにNb,B等を適量添加して異方性
を低減することにより、打抜き加工性及び成形性に優れ
た冷延鋼板を容易かつ安価に得ることができる製造方法
を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上のような観点より、
この発明では、その鋼種を極低炭IF鋼とし、しかも良
好な打抜き性と成形性を付与するために、特定の成分系
と熱処理方法を効果的に組み合わせたものである。
【0010】すなわちこの発明は、 C:0.005 wt%(以下単に%で示す)以下、 Si:0.5 %以下、 Mn:1.0 %以下、 P:0.1 %以下、 S:0.02〜0.10%、 Al:0.01〜0.08%、 N:0.005 %以下及び Nb:0.003 〜0.030 % を、次式の範囲を満足するTi (48/12×C% + 48/14×N%) + 0.03(%)≦Ti≦0.10
(%) と共に含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる極
低炭素鋼スラブを、スラブ加熱温度:1300℃以下、仕上
げ温度 : 850〜950 ℃、巻取り温度 : 500〜750℃の条
件で熱間圧延し、ついで50%以上の圧下率で冷間圧延し
た後、再結晶温度以上 900℃以下の温度範囲で連続焼鈍
を施すことからなる打抜き加工性、成形性に優れた冷延
鋼板の製造方法(第1発明)である。
【0011】またこの発明は、上記の第1発明におい
て、さらに副成分として B:0.0003〜0.0030% を含有させた打抜き加工性、成形性に優れた冷延鋼板の
製造方法(第2発明)である。
【0012】
【作用】まず、この発明において素材の成分組成を上記
の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.005 %以下 Cは、0.005 %を超えて含有すると延性及びr値が低下
し、成形性が劣化するだけでなく、Cを固定するための
必要Ti量が多くなり経済的にも不利となるので、上限を
0.005%とした。
【0013】Si:0.5 %以下 Siは、0.5 %を超えて含有すると成形性が劣化すると共
に、熱間圧延時のスケールが剥離し難くなるので、上限
を 0.5%とした。
【0014】Mn:1.0 %以下 Mnは、1.0 %を超えて含有すると成形性が劣化するた
め、上限を 1.0%とした。
【0015】P:0.1 %以下 Pは、0.1 %を超えて含有すると鋼板の伸びが劣化する
ため、上限を 0.1%とした。
【0016】さてこの発明では、打抜き性の改善を図り
つつ、これに伴う材質劣化を極力抑制する必要があり、
ここに打抜き性向上のために鋼板に含有させる析出物と
してはTiSを用いることにした。TiSを用いる利点は、
次のとおりである。 i) Tiは、C,N,Sとの結合力が強いため、Tiの添加
量をC,N,Sの含有量とほぼ当量に制御することによ
って、固溶状態で残留し材質に悪影響を及ぼす過剰添加
分を抑制することができる。なおこれまでのTi系極低炭
IF鋼の実績では、TiがC,N,Sの含有量に対し0.05
%程度までであれば過剰に添加されても大きな材質劣化
は生じない。 ii) Ti系析出物としては、TiC, TiN及びTiSが結合力
の強い析出物として知られているが、これらの析出物の
大きさを比較するとTiSが最も大きい。従って、同じ打
抜き性改善効果を得るために必要なTi量はTiSの場合に
最小となり、経済的、材質的にとりわけ有利である。
【0017】S:0.02〜0.10% 上記の観点に基づき、Sについては、打抜き性を改善す
るために0.02%以上が必要なため0.02%を下限とし、一
方0.10%を超えて添加すると成形性が劣化するため上限
を0.10%とした。
【0018】(48/12×C% + 48/14×N%) + 0.03
(%)≦Ti≦0.10(%) またTiは、C,N並びに下限量である0.02%分のSが固
定可能な(48/12×C%+48/14 N%)+0.03%を下限と
し、一方0.10%を超えて添加すると成形性が劣化するた
め上限を0.10%とした。
【0019】Al:0.01〜0.08% Alは、Alキルドを得るために必要な量として0.01〜0.08
%の範囲とした。
【0020】N:0.005 %以下 Nは、Cと同様、良好な成形性を得るためには低い方が
好ましことから、上限を 0.005%とした。
【0021】Nb:0.003 〜0.030 % Nbは、熱延板組織を細粒化し異方性の低減に有効な元素
である。ここに異方性を低減するためには少なくとも
0.003%のNbが必要であり、一方 0.030%を超えて添加
すると組織が細粒になり過ぎて成形性が劣化するため、
0.003〜0.030 %の範囲とした。
【0022】B:0.0003〜0.0030% Bは、微量の添加で圧延方向の伸びやr値を幾分低下さ
せ、異方性の低減に有効に寄与するので、この発明で
は、成形性を劣化させることなく異方性改善に有効な量
として、必要に応じ0.0003〜0.0030%の範囲で含有させ
るものとした。
【0023】次に、この発明に従う製造工程について説
明する。まず製鋼工程については、極低炭素材を製造す
るための常法に従えばよい。熱間圧延工程では、スラブ
加熱温度が1300℃を超えると、スラブ段階で粗大に析出
していたTiSが完全に再固溶し、後工程において粗大な
TiSの析出物を得ることが困難となるので、1300℃を上
限とした。
【0024】仕上げ温度は、低温仕上げによる材質劣化
を避けるため 850℃以上とし、逆に950 ℃を超える高温
では熱間圧延鋼板のフェライト粒が粗大化し冷延焼鈍後
の絞り性が劣化するので上限は 950℃とした。
【0025】巻取り温度は、高過ぎるとスケールの酸洗
性が低下するので750 ℃以下とし、一方 500℃に満たな
いと良好な成形性が得られないので下限は 500℃とし
た。
【0026】冷間圧延において、少なくとも50%の圧下
率がないと十分な加工性が得られないので、この発明で
は、冷間圧延における圧下率は50%以上とした。
【0027】冷間圧延後の連続焼鈍における焼鈍温度
は、通常のように再結晶温度以上であればよいが、とり
わけ望ましい範囲は(1次再結晶温度+30℃) 以上の温
度範囲である。一方、焼鈍温度が900 ℃を超えると粗大
な結晶粒となる危険性が高いので、上限は 900℃に定め
た。なお焼鈍後の調質圧延は、板形状矯正又は板面粗度
調整等を目的として通常の伸び率(板厚(mm)%程度)で
行うことができる。
【0028】
【実施例】表1に示す成分組成になる種々のスラブを、
表2に示す条件で熱間圧延−酸洗−冷間圧延−連続焼鈍
−調質圧延の各処理を施した。かくして得られた鋼板の
機械的性質及びバリ高さについて調査した結果を表3に
示す。ここにバリ高さは、鋼板を同一の打抜き試験器で
同時に 100φの円盤に打抜き、打抜きサンプルのバリ高
さを非接触式粗度計で測定した。またバリ高さは圧延方
向、圧延方向に対し45゜方向、圧延方向に対し直角方向
の3方向について測定しバリ高さの異方性についても評
価した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】表3から明らかなように、この発明法に従
って得られた鋼板は、比較法は勿論従来の箱焼鈍法で得
られた鋼板よりも、バリ高さ及びその異方性が小さく、
しかも機械的性質にも優れている。
【0033】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、打抜き加工
性と成形性の両者に優れた冷延鋼板を、容易かつ安価に
得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永村 徳浩 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.005 wt%以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.1 wt%以下、 S:0.02〜0.10wt%、 Al:0.01〜0.08wt%、 N:0.005 wt%以下及び Nb:0.003 〜0.030 wt% を、次式の範囲を満足するTi (48/12×C% + 48/14×N%) + 0.03(%)≦Ti≦0.10
    (%) と共に含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる極
    低炭素鋼スラブを、スラブ加熱温度:1300℃以下、仕上
    げ温度 : 850〜950 ℃、巻取り温度 : 500〜750℃の条
    件で熱間圧延し、ついで50%以上の圧下率で冷間圧延し
    た後、再結晶温度以上 900℃以下の温度範囲で連続焼鈍
    を施すことを特徴とする打抜き加工性、成形性に優れた
    冷延鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】C:0.005 wt%以下、 Si:0.5 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.1 wt%以下、 S:0.02〜0.10wt%、 Al:0.01〜0.08wt%、 N:0.005 wt%以下及び Nb:0.003 〜0.030 wt% を、次式の範囲を満足するTi (48/12×C% + 48/14×N%) + 0.03(%)≦Ti≦0.10
    (%) と共に含み、さらに B:0.0003〜0.0030wt% を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる極低炭
    素鋼スラブを、スラブ加熱温度:1300℃以下、仕上げ温
    度 : 850〜950 ℃、巻取り温度 : 500〜750 ℃の条件で
    熱間圧延し、ついで50%以上の圧下率で冷間圧延した
    後、再結晶温度以上900℃以下の温度範囲で連続焼鈍を
    施すことを特徴とする打抜き加工性、成形性に優れた冷
    延鋼板の製造方法。
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