JP2980004B2 - バーリング加工性および打ち抜き加工性に優れた冷延鋼板とその製法 - Google Patents
バーリング加工性および打ち抜き加工性に優れた冷延鋼板とその製法Info
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Description
グ加工、打ち抜き加工などに優れた冷延鋼板とその製法
に関するものであり、この冷延鋼板は、上記の様に複雑
な成形加工部位を有するたとえば家電製品や自動車等の
素材として有効に活用することができる。
の外板材等を始めとして広く実用化されているが、夫々
の用途に応じて種々の特性が要求される。たとえば家電
製品のVTR用シャーシやコンピューターケースなどと
して適用する場合には、打ち抜き加工が施されて摺動部
分に適用されることも多いので、打ち抜き加工した後の
端面に生じる「バリ」が一定高さ以上にならず、寸法精
度を悪化させないことが望まれる。また、打ち抜き加工
された中間品として積層されて保管もしくは搬送される
ことも多いため、突出した該「バリ」の部分で被積層板
の表面を傷付けたり摩耗粉の発生によって電気回路等へ
の悪影響を生じさせないことも重要となる。
途には、従来より主として低炭素Alキルド鋼が使用さ
れてきた。しかして低炭素Alキルド鋼は、Cが脆弱な
セメンタイトとして結晶粒界に粗大に析出し、このセメ
ンタイトが打ち抜き加工時の亀裂発生の起点として有効
に作用するため、バリの発生が少なく且つ型摩耗も少な
く、剪断荷重も少なく抑えられるからである。MnS析
出物にも同様の亀裂発生起点としての作用があり、同様
の効果を奏することが確認されている。
物は、鋼の極限変形能を支配する冶金学的因子であり、
亀裂発生の起点となるこれら第2相の存在は、極限変形
能に起因する伸びフランジ成形性やバーリング成形性を
劣化させるという問題を惹起する。そのため、通常の低
炭素Alキルド鋼板は、打ち抜き加工性は優れているも
のの、該打ち抜き端面が更に二次加工される伸びフラン
ジ加工やバーリング加工には適用し難いという欠点が指
摘される。
レス工程の省略化や軽量化の要請から部品形状は益々複
雑化する傾向があり、かかる用途には極低炭素鋼に炭窒
化物形成元素であるTiやNbを添加し、CやNを固定
した所謂IF系薄鋼板の利用頻度が増大している。しか
してIF系薄鋼板は伸びや降伏応力が低く、また冷延鋼
板では極めて高いr値を示す等、深絞り成形やバーリン
グ成形の如く様々の加工性が非常に良好であり、自動車
車体等の難加工部品としても優れた適性を有しているか
らである。
は優れたものであるものの、低炭素アルミキルド冷延鋼
板に比べると打ち抜き加工性が悪く、つまり打ち抜き加
工後の端面のバリ高さが大きくなり、たとえば家電製品
のVTR用シャーシ部品等として用いたときに、該バリ
の部分で電着塗料が付着不良となって耐食性に悪影響を
与えたり、あるいは打ち抜き加工板を積層して搬送する
ときに該バリの磨耗によって金属粉が発生したり相互に
表面傷を付ける原因となる。
るため、後述する様な方法を採用することも可能である
が、現実に打ち抜き加工が行なわれる部分は鋼板の極一
部分であるにも関わらず、その僅かな部分の打ち抜き加
工性を高めるためにその他の部分の機械的性質やバーリ
ング加工性を犠牲にすることになり、実用に即した方法
とは言い難い。
加工技術面からは、クリアランスの適正化やポンチ・ダ
イス形状の工夫等が試みられており、また被加工材であ
る鋼板については、例えば鋼板自体を硬質化し或は鋼板
表面を硬質化することが提案されている。前者の具体法
としては、P等の固溶強化元素を添加する方法があり、
また後者の具体的方法としては、焼鈍後の鋼板に圧延等
によって表層部に塑性歪みを導入する方法あるいは表面
を窒化処理或は浸炭処理することにより硬質化する方法
(特開平1−255626号公報、同2−133561
号公報、同3−199343号公報、同3−20244
2号公報)等が知られている。ところが前者の方法で
は、打ち抜き加工性の改善効果の割には伸びやr値な
ど、鋼板本来の要求特性である機械的特性の劣化が大き
く、後者の方法では、窒化処理や浸炭処理のために特別
の設備が必要となる。更にMnやSを添加することによ
ってMnS析出物を多量生成させる方法(特開平1−2
30748号公報、同6−73457号公報)も提案さ
れているが、これらの方法で鋼中のS量を増大させる
と、熱間割れが生じ易くなるばかりでなくブローホール
やブリスターと呼ばれる点状欠陥やスリバーと呼ばれる
と表面欠陥が頻発するという新たな問題が生じてくる。
ち抜き加工に際しては端面のバリ高さを可及的に低く抑
えることができ、またバーリング加工の如く打ち抜き端
面の二次加工性にも優れており、更に全体として優れた
成形性を示す様な冷延鋼板の開発が熱望されている。
情に着目してなされたものであって、その目的は、鋼材
の化学成分をうまく調整することにより、従来のIF系
冷延鋼板で得られる様な優れた成形性と機械的特性を確
保しつつ、打ち抜き加工性やその後のバーリング加工性
に優れ、且つ全体としての成形性も良好で家電製品や自
動車用部品等の素材としても有効に活用し得る様な冷延
鋼板、並びにその製法を確立しようとするものである。
とのできた本発明に係る冷延鋼板の構成は、mass%
で 0.0010%≦C≦0.010% Si≦0.25% 0.20%≦Mn≦1.0% P≦0.05% 0.010≦S<0.025% N≦0.01% Ti≦0.15% の要件を満たし、あるいは更に他の元素としてB:0.
0002〜0.0050%を含み、且つ (Ti*/48)/(C/12+S/32)=0.8〜
4.0 但し、Ti*=Ti−(48/14)Nを満足すると共
に、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、内部に
Ti4 C 2 S2 及びTiSを主体とするサイズ1,00
0〜10,000Åの析出物が1×104 〜5×105
個/mm2 存在するものであるところに要旨が存在す
る。
組成の要件を満足する鋼よりなるスラブを1,100〜
1,200℃の温度範囲で加熱した後、(Ar3 変態温
度+80℃)〜(Ar3 変態温度−40℃)の温度範囲
で熱間圧延を終了し、次いで600〜700℃の温度範
囲で巻き取り、次いで冷間圧延を行ってから焼鈍するこ
とにより、内部にTi4 C2 S2 及びTiSを主体とす
るサイズ1,000〜10,000Åの析出物を1×1
04 〜5×105 個/mm2 生成させるところに要旨が
あり、それにより、バーリング加工性や打ち抜き加工性
を同時に満足させることに成功したものである。
は、鋼材の成分組成を特定すると共に、殊にその中にT
i4 C2 S2 を主体とする特定サイズの析出物を特定量
存在せしめたものであり、それにより、基本的には従来
の極低炭素IF鋼板と類似の組成とすることによって優
れたプレス成形性等を確保しつつ、打ち抜き加工性やバ
ーリング加工性を大幅に改善することに成功したもので
ある。
ング加工性を改善するために必要最小限のSを含有せし
めると共に、SをTi4 C2 S2 及びTiS主体の析出
物として生成せしめ、且つそのサイズと量を制御するこ
とにより、前記従来例で指摘した様な欠点を伴うことな
く、優れた成形性と打ち抜き加工性、バーリング加工性
を同時に満足する冷延鋼板を得ることに成功した。
と、ポンチと鋼板の接触以降ポンチの下降に伴ってまず
鋼板の表裏面に剪断破面が形成され、該破面への応力集
中によって強剪断変形が生じてボイドが発生し、これが
クラックとなって表裏面からクラックが進展し、該クラ
ックが合体して打ち抜き状態が得られるものと思われ
る。従って、打ち抜き加工後のバリを小さくするには、
前述のボイドの形成とクラックの進展を促進することが
有効と思われるが、上記Ti4 C2 S2 及びTiSは比
較的大きな析出物であるため、鋼板が強剪断変形を受け
たときに該析出物の近傍におけるボイドおよびクラック
の形成とその進展が促進され、打ち抜き加工端面に生じ
るバリが可及的に小さく抑えられるものと思われる。
等によって形成された穴部端面を、円柱状あるいは円錐
形のポンチによって押し広げる様にフランジアップさせ
る加工をいい、成形限界は、打ち抜き加工部の端面に生
成したボイドが連結・合体してクラックとなり、板厚を
貫通する時点である。従って、ボイドの形成やクラック
進展の原因となる介在物や析出物は極力少ないことが望
まれる。
工性に及ぼす介在物や析出物のサイズの影響は異なり、
両者には相反する傾向があるが、本発明者らの研究した
ところによると、以下に詳述する如く、種々の介在物や
析出物のうち特にTi4 C2S2 及びTiSのサイズを
1,000〜10,000Åの範囲に制御すると共に、
該析出物の分散量を1×104 〜5×105 個/mm2
の範囲にコントロールしてやれば、打ち抜き加工性とバ
ーリング加工性を共に両立せしめ得ることが確認され
た。
物や介在物には、通常の鋼に含まれるMnSやAl2 O
3 以外に、Ti添加鋼ではTiC,Ti4 C2 S2 ,T
iS,TiN,FeTiP,Ti2 Oなど、またNb添
加鋼ではNb(C,N)などがあり、夫々のサイズや分
布状態には特徴があるが、それらが冷延鋼板の成形性、
打ち抜き加工性、バーリング加工性に与える影響につい
て検討を重ねたところ、下記の様な事実が確認された。
サイズは1,000〜10,000Åであり、その量が
1×104 〜5×105 個/mm2 の範囲であれば、切
削性や打ち抜き加工性の向上に有効に作用するばかりで
なく、他の析出物の様なバーリング加工など成形性への
悪影響が殆んど認められない。そして、該Ti4 C2S2
主体の析出物は、後で詳述する様な成分組成の要件を
満足する鋼よりなるスラブを1,100〜1,200℃
の温度範囲で加熱した後、(Ar3 変態温度+80℃)
〜(Ar3 変態温度−40℃)の温度範囲で熱間圧延を
終了し、次いで600〜700℃の温度範囲で巻き取
り、次いで冷間圧延してから焼鈍を行うことにより、効
率よく生成することが確認された。そして上記要件のい
ずれかを外れると、TiCやMnS主体の析出物が生成
し、満足のいく成形性や打ち抜き加工性が得られなくな
る。尚、上記Ti4 C2 S2 析出物の析出末期には若干
量のTiSの析出が見られ、該TiS析出物のサイズは
Ti4 C2 S2 析出物よりも若干大きく、熱延のままで
は表面欠陥の原因になることがある。しかしこのTiS
析出物は、その後の冷延工程で破砕され、且つその後の
焼鈍工程でも殆ど成長しないので、上記Ti4 C2 S2
析出物と同様に表面欠陥を生じることなく打ち抜き加工
性を高める作用を発揮する。
ズが上記範囲に入り且つTi4 C2S2 とTiSの総析
出量が上記好適範囲に納まるものが、本発明の目的に叶
う特性を示すものとなる。
サイズが約100Åで微細に過ぎるため、成形性に悪影
響を及ぼすばかりでなく、バーリング加工性や打ち抜き
加工性改善効果も乏しくなる。極低炭素IF鋼板のうち
成形性と打ち抜き加工性の改善された冷延鋼板として、
鋼中にTiとNbを複合添加する方法(特開平6−73
457号公報)が知られているが、本発明者らが検討を
行ったところによると、鋼中にNbを0.003〜0.
03%の範囲で添加すると、Nb(C,N)が生成して
鋼中のCが消費され、打ち抜き加工性の向上に有効なT
i4 C2 S2 が生成されなくなる結果、本発明の目的を
達成できなくなることが確認された。
4 C2 S2 と同程度であり、打ち抜き加工性の向上に有
効に作用するが、結晶粒界にフィルム状に析出して成形
性を著しく悪化させる。
2 S2 より若干大きい程度であり、サイズ的には同等の
改質効果を発揮し得るかの様に思われるが、実際は軟質
に過ぎるため、打ち抜き加工性改善効果が殆んど発揮さ
れない。また実用鋼中のN量の制御は至難であり、従っ
てこれらのTi化合物を打ち抜き加工性やバーリング加
工性等の改善に活用することは容易でない。
C2 S2 よりも一桁大きく、打ち抜き加工性およびバー
リング加工性改善効果が乏しく、しかも表面欠陥の原因
になるため好ましくない。
があり、前者はミクロン単位、後者はその1/10の大
きさである。S量が多くなると介在物としての量が増大
して打ち抜き加工性向上に寄与するが、前記特開平6−
73457号公報にも示されている様に、打ち抜き加工
性の向上には0.02%程度以上のSが必要であり、多
量のSによって成形性が損なわればかりでなく表面欠陥
の原因となる。
に生成し得る介在物や析出物としては様々の化合物が考
えられるが、それらのうち1,000〜10,000Å
の析出物サイズを有するTi4 C2 S2 及びTiSは、
成形性やバーリング加工性に悪影響を及ぼすことなく打
ち抜き加工性に好影響を及ぼすこと、しかも該Ti4C2
S2 及びTiS主体の析出物の存在量が1×104 〜
5×105 個/mm2の範囲となる様に、鋼材の成分組
成や加工条件を適正に調節してやれば、その特長が極め
て効果的に発揮される、という新たな知見を基に、本願
発明の完成を見たものである。
めた理由を明確にする。Cは、後述する如くTiと結合
してTi4 C2 S2 を生成させるうえで欠くことのでき
ない元素であり、少なくとも0.0010%以上含有さ
せなければならない。しかしながらC量が多くなり過ぎ
ると、TiCの生成量が増大して伸びが低下すると共
に、降伏応力が上昇して成形性やバーリング加工性を悪
化させるので、上限を0.010%と定めた。
高める有効な元素であるが、多過ぎると焼鈍時に生成す
る酸化皮膜が増大し、その後に行なわれることの多い化
成処理に悪影響を及ぼしたり、また電気めっきを行なう
ときはめっき厚が不均一となってめっきムラを生じ、更
には化成処理性にも悪影響を及ぼすので、Si量は0.
25%以下に抑えるべきである。殊に、該冷延鋼板を合
金化溶融亜鉛めっきする場合は、上記酸化皮膜の形成に
よって不めっき部が生じ易くなるので、好ましくはSi
量を0.20%以下に抑えることが望まれる。
に補助的に作用する元素であり、その効果を有効に発揮
させるには0.20%以上含有させなければならない
が、多過ぎるとバーリング加工性に悪影響を及ぼす様に
なるので1.0%以下に抑えなければならない。
の析出物を形成する場合があり、前者の場合は強化元素
として作用し成形性にはかえって悪影響を及ぼし、また
後者の様な析出物の形態になると、ある程度の打ち抜き
加工性向上効果は認められるが、成形性やバーリング加
工性に及ぼす悪影響が顕著に現れてくるので、0.05
%以下に抑えなければならない。
C2 S2 及びTiS主体の析出物を生成するために必須
の元素であり、その析出による打ち抜き加工性とバーリ
ング加工性改善効果を有効に発揮させるには、鋼中に1
×104 個/mm2 以上のTi4 C2 S2 及びTiS系
析出物を生成させることが必要であり、そのためにはS
を0.010%以上含有させなければならない。しかし
それらの効果は約0.025%で飽和し、過度に含有さ
せるとバーリング加工性やプレス成形性を却って悪化さ
せる他、表面欠陥を増大させる原因にもなってくるの
で、0.025%を上限とする。
が、該TiNには打ち抜き加工性を高める作用は殆んど
なく、Cと同様にバーリング加工性やプレス成形性に悪
影響を及ぼすので、こうした欠点を生じさせないため上
限を0.010%と定めた。
及びTiS主体の析出物を生成させて打ち抜き加工性と
バーリング加工性を高める上で最も重要な元素である
が、TiはC,S以外にもTiNとしてNとも結合する
ので、上記範囲のNを完全に固定し、更に成形性や耐時
効性を確保するには、TiCとしてCを固定することも
必要となる。従ってその量を決めるに当たっては、それ
らの効果も考慮し鋼中のC,SおよびNの含有量に応じ
て下記(1)式の要件を満たす量を含有させることが必
須となる。 (Ti*/48)/(C/12+S/32)=0.8〜4.0……(1) 但し、Ti*=Ti−(48/14)N
C,Sと結合するTi量が不十分となって、打ち抜き加
工性の向上に寄与するに足る量のTi4 C2 S2 やTi
Sが生成せず、また4.0を超えると、C量が過剰の場
合は固溶Cの増大によって、またS量が過剰である場合
はMnSの生成によって、いずれの場合も延びが劣化し
て満足な成形性やバーリング加工性が得られなくなる。
くる元素であるが、多過ぎるとAl 2 O3 系の非金属系
介在物の生成源となって機械的性質や加工性に悪影響を
及ぼす様になるので、0.1%以下に抑えることが望ま
しい。
iNとして固定されるため、BN等の析出物を生成する
ことなく固溶状態で存在する。従ってB自体が打ち抜き
加工時に生じるバリ高さを抑制する効果はほとんどな
く、こうした意味からすると必須成分とはいえないが、
0.0002%以上含有させると該Bの効果が有効に発
揮され、バーリング加工性が更に高められる。しかしそ
の効果は約0.0050%で飽和するばかりでなく、深
絞り性を却って悪化させる傾向が生じてくる。
してのサイズが1,000〜10,000Åの範囲にあ
るTi4 C2 S2 及びTiS主体の析出物を、鋼中に1
×104 〜5×105 個/mm2 の範囲で生成させるこ
とによって、打ち抜き加工性やバーリング加工性等を高
めたものであるが、この様なTi4 C2 S2 及びTiS
主体の析出物を鋼中に適正量生成させるには、熱延鋼板
の製造条件(熱間圧延温度や巻き取り条件など)が重要
となる。そして目的達成のためには、前記成分組成の要
件を満足する鋼よりなるスラブを1,100〜1,20
0℃の温度範囲で加熱した後、(Ar3 変態温度+80
℃)〜(Ar3 変態温度−40℃)の温度範囲で熱間圧
延を終了し、次いで600〜700℃の温度範囲で巻き
取り、次いで冷間圧延してから焼鈍すればよいことが確
認された。
は、極めて微細なTiSの生成量が増大して粗大なTi
SやTi4 C2 S2 系析出物の量が不十分となり、また
1,200℃を超える高温になると析出物はMnSとな
り、適正量のTi4 C2 S2 及びTiS系析出物が得ら
れなくなる。また熱間圧延後の巻き取り温度が700℃
を超える高温になると、Ti4 C2 S2 及びTiS系析
出物がFeTiP系析出物に変化するし、600℃未満
の温度ではTi系の析出物が生成せず、せいぜいTiC
が生成する程度であってTi4 C2 S2 系の析出物が生
成せず、本発明で意図する様な打ち抜き加工性やバーリ
ング加工性の改善効果が得られなくなる。
態温度+80℃)〜(Ar3 変態温度−40℃)の範囲
に設定すべきであり、該熱間仕上げ温度が低過ぎる場合
はFeTiPが生成し、それ自身及び固溶Cの存在によ
って打ち抜き加工性が劣化し、逆に高過ぎる場合は、M
nSの生成量が増大して満足なバーリング加工性が得ら
れなくなるからである。
焼鈍の条件は特に限定されないが、、熱間圧延工程で生
成した適正なサイズと分散量のTi4 C2 S2 系析出物
の前記作用効果を有効に持続させると共に、優れた深絞
り性を確保し、且つ粗大化し過ぎたTiSを冷延工程で
破砕して表面欠陥への悪影響を回避するには、冷間圧延
条件を60〜85%に設定すると共に、これら析出物の
再固溶を防止しつつ再配列、再凝固によって優れた打ち
抜き加工性や深絞り性を得るには焼鈍条件を700℃以
上、Ac3温度以下に設定することが望ましい。
のままで商品化することも勿論可能であるが、防錆など
を目的として電気めっきや溶融亜鉛めっき、あるいはり
ん酸塩処理やクロメート処理等の化成処理を施したり、
更には有機樹脂塗装処理等の表面処理を施すこと勿論有
効である。
用効果を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実
施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣
旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施すること
も可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含
まれる。
後、熱延終了温度を約920℃、巻き取り温度を680
℃に設定して熱間圧延を行ない、厚さ3.2mmの熱延
鋼板を得た。次いでこの熱延鋼板を厚さ0.8mmにま
で冷間圧延し、800℃で1分間の連続焼鈍を行った
後、1%の調質圧延を行なった。得られた各冷延鋼板に
ついて、下記の方法で鋼板中の析出物の種類と量を調べ
ると共に、引張特性と打ち抜き加工性およびバーリング
加工性を調べた。
法による透過型電子顕微鏡観察。即ち、1万倍の倍率で
約0.015mm2の視野内における前記サイズの析出
物の個数を求め、これを1mm2内の数に換算して求め
る。打ち抜き加工性 :各供試板を、クリアランス約12%で
直径30mmの円形に打ち抜き加工し、打ち抜き端面に
生じるバリの高さを測定して評価。
mの穴を打抜き、該打抜き穴(di:mm)を、頂角3
0度の円錐形ポンチにより割れが板厚を貫通するまで押
し拡げ、そのときの穴径(df:mm)から下記式によ
って穴拡げ率を求め、バーリング性を評価。 穴拡げ率=[(df−di)/di]×100(%) 結果を表2に示す。
る。鋼種A、B、Cは軟鋼系、鋼種Dは高強度鋼系で本
発明の規定要件を満足する実施例であり、いずれも優れ
た引張特性を有すると共に、打ち抜き加工性、バーリン
グ加工性のいずれにおいても優れた性能を有している。
量が不足するため、バーリング加工性と打ち抜き加工性
のどちらかが悪く、その上鋼種EはC量も多過ぎてTi
Cが生成するため引張特性(特にr値)が悪く、鋼種I
は、P量が多過ぎるため硬質化し、打ち抜き加工性とバ
ーリング加工性のいずれも不良となっている。また鋼種
FはSi量が多過ぎるため、鋼材が硬質化して特にバー
リング加工性が悪化しており、また表2には示していな
いが電気亜鉛めっき時にSi酸化物系皮膜によるめっき
ムラの発生が見られる他、溶融亜鉛めっき時のめっき密
着性も悪かった。鋼種K,Lは、S量が多過ぎるため、
打ち抜き加工性はそれほど悪くないが、r値と伸びが悪
く、またTi4 C2 S2 及びTiSの析出個数も多過ぎ
るためバーリング加工性も悪く且つ圧延後の鋼板表面に
ブリスターやスリバー等の表面欠陥を生じることが確認
された。更に鋼種Mは、Ti量と(C+S)量のバラン
スが悪く前記(1)式の要件を満たしていないため、r
値が低く且つバーリング加工性も悪い。
し、熱間圧延時の加熱温度、熱延仕上げ温度および巻き
取り温度を表3に示す様に変更した以外は、前記実施例
1と同様にして熱間圧延を行ない、引き続いて同じ条件
で冷間圧延と連続焼鈍を行って厚さ0.8mmの冷延鋼
板を製造し、夫々について実施例1と全く同様にして析
出物の種類と数を調べると共に、引張特性、打ち抜き加
工性、バーリング加工性を調べた。結果を表4に示す。
圧延時の仕上げ温度と巻き取り温度をいずれも適正な温
度範囲とし、特に加熱温度の影響を調べたものであり、
加熱温度を1,100〜1,200℃の適正な範囲で行
なったもの(符号B2 ,B3)では、適正サイズのTi4
C2 S2 及びTiS系析出物が適正量生成しており、
引張特性、切削性、打ち抜き加工性のいずれにおいても
優れた特性を有しているのに対し、加熱温度が1,20
0℃を超える比較例(符号B1 )では、析出物がMnS
主体のものとなり、また加熱温度が1,100℃未満の
比較例(符号B 4 )では、析出物がTiSのみとなり、
いずれも打ち抜き加工性が悪い。
温度と巻き取り温度をいずれも適正な温度範囲とし、特
に熱延仕上げ温度の影響を調べたものであり、熱延仕上
げ温度を適正な範囲で行なったもの(符号B6 )では、
適正サイズのTi4 C2 S2及びTiS系析出物が適正
量生成しており、引張特性、打ち抜き加工性、バーリン
グ加工性のいずれにおいても優れた特性を有しているの
に対し、熱延仕上げ温度が高過ぎる比較例(符号B5 )
では、析出物がTiSのみとなり、また熱延仕上げ温度
が低過ぎる比較例(符号B7 )では、析出物がFeTi
P主体となり、いずれも成形性や打ち抜き加工性が不十
分である。
温度と熱延仕上げ温度をいずれも適正な温度範囲とし、
特に巻き取り温度の影響を調べたものであり、巻き取り
温度を適正な範囲で行なったもの(符号B9 )では、適
正サイズのTi4 C2 S2 系析出物が適正量生成してお
り、引張特性、打ち抜き加工性のいずれにおいても優れ
た特性を有しているのに対し、巻き取り温度が高過ぎる
比較例(符号B8 )では、析出物がFeTiP主体のも
のとなり、巻取り温度が低すぎる比較例(符号B10)で
はTi4 C2 S2 ,TiSの析出個数が不足し、いずれ
も満足のいく打ち抜き性,成形性が得られていない。
材の成分組成、殊にTi,S,Mn,Nなどの含有量を
規制すると共に、S,NおよびC量とTi量の関係を適
正にコントロールして鋼中に適正サイズのTi4 C2 S
2 及びTiS系析出物を適正量生成させることにより、
成形性や機械的特性を阻害することなく、打ち抜き加工
性とバーリング加工性の非常に優れた冷延鋼板を提供す
ることができ、また本発明の方法によれば、こうした特
徴を有する冷延鋼板を工業的に確実に製造し得ることに
なった。
Claims (3)
- 【請求項1】 mass%で 0.0010%≦C≦0.010% Si≦0.25% 0.20%≦Mn≦1.0% P≦0.05% 0.010≦S<0.025% N≦0.01% Ti≦0.15% の要件を満たし、且つ (Ti*/48)/(C/12+S/32)=0.8〜
4.0 但し、Ti*=Ti−(48/14)Nを満足すると共
に、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、内部に
Ti4 C 2 S2 及びTiSを主体とするサイズ1,00
0〜10,000Åの析出物が1×104 〜5×105
個/mm2 存在することを特徴とするバーリング加工性
および打ち抜き加工性に優れた冷延鋼板。 - 【請求項2】 更に他の元素としてB:0.0002〜
0.0050%を含有するものである請求項1に記載の
冷延鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載された成分組成
の要件を満足する鋼よりなるスラブを1,100〜1,
200℃の温度範囲で加熱した後、(Ar3変態温度+
80℃)〜(Ar3 変態温度−40℃)の温度範囲で熱
間圧延を終了し、次いで600〜700℃の温度範囲で
巻き取り、次いで冷間圧延を行ってから焼鈍することに
より、内部にTi4 C2 S2 及びTiSを主体とするサ
イズ1,000〜10,000Åの析出物を1×104
〜5×105 個/mm2 生成させることを特徴とするバ
ーリング加工性および打ち抜き加工性に優れた冷延鋼板
の製法。
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