JP2671600B2 - 繊維強化プラスチックの成型方法 - Google Patents

繊維強化プラスチックの成型方法

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JP2671600B2
JP2671600B2 JP2307979A JP30797990A JP2671600B2 JP 2671600 B2 JP2671600 B2 JP 2671600B2 JP 2307979 A JP2307979 A JP 2307979A JP 30797990 A JP30797990 A JP 30797990A JP 2671600 B2 JP2671600 B2 JP 2671600B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,ガラス繊維,炭素繊維などの繊維により強
化したプラスチック製品を成型する方法に関し,特に外
型と芯型を用いて中空構造の繊維強化プラスチック製品
を成型する方法に関する。
〔従来の技術〕
複数の型を用いて製品の厚さを規制する成型方法に
は,プリフォームマッチドダイ法,コールドプレス法,
レジンインジェクション法,シートモールディング法な
どがある。
本発明はこのうち,成型温度,成型圧力が低くても良
いコールドプレス法,レジンインジェクション法に特に
適した成型方法である。以下の説明では本発明をレジイ
ンジェクション法に例をとって説明するが,その適用は
成型法の名前により決められるべきものではなく,成型
条件が明細書記載の条件を満たせば他の成型法にも適用
可能であることは言うまでもない。
レジンインジェクション法は繊維強化プラスチック
(以下,FRPという)製品の成型方法の一種で,その特徴
は,保温性の優れた樹脂型を用い,樹脂の反応熱を利用
し,低圧で成型することにあり,設備が他の機械成型に
比較して安価であるので,多品種少量或いは中量生産の
大型FRP成型品やインサートのある成型品の製造に適し
ている。
その成型法の概要は,まず雄型(芯型)と雌型(外
型)の間の空隙の所定の位置に補強用繊維からなるクロ
ス,マット,プリフォームなどを置き,型を閉め,エポ
キシ樹脂,常温硬化不飽和ポリエステル樹脂等の液状樹
脂を樹脂注入口から注入し,該樹脂が硬化した後,型か
ら取り出し製品とするものである。
このように成型するのであるが,雄型の脱型の困難な
もの,例えば配管用管継手,環状パイプなどを製造する
時は,柔軟性の無いFRPの雄型を使ってこれらの中空製
品を作ることは困難であり,その解決策として種々の方
法が考えられている。
代表的な例として,FRPの芯型の代わりに発泡硬質ウレ
タン樹脂の芯型を使い,補強用繊維層をその上に被せ,
雌型中に入れて樹脂を注入し,硬化後発泡硬質ウレタン
樹脂の芯型は除去せずそのまま成型体中に埋め込んでし
まう方法,及び,特公昭64−2048号公報に開示してある
ように芯型としてゴム状弾性体の中空体(ゴム芯型)を
使い,そのゴム芯型の内部に加圧流体を供給し中空部を
一定の圧に保持し,その状態で外型とゴム芯型との間の
空隙に液状樹脂を注入し,補強用繊維層と樹脂とを一体
化し,硬化させた後に,ゴム芯型の中空部内の圧力を常
圧若しくは負圧として成型品から除去する方法がある。
発泡硬質ウレタン樹脂の芯型を用いた場合,軽く,硬
いので補強用の繊維材料をその回りに固定する作業が楽
であり,また,芯型を成型体中に残したままで良いので
芯型を取り除く必要がなく,作業性が良い等の利点があ
る。
ところが,この方法には次のような問題があった。す
なわち,近年,高強度の補強繊維が数多く開発され,FRP
層の肉厚を薄くし,繊維含有率をあげることにより強度
をだし,構造物全体を軽くすることが行われるようにな
ってきたが,このためには,芯型と外型との間の空隙の
厚さを薄くし,しかもそこに入れなくてはならない補強
用繊維の量を多くしなければならず,その結果,外型と
芯型との間に補強用繊維層を取付ける作業が極めて困難
となった。すなわち,第12図に示すように,芯型30の周
囲に補強用繊維層31を取付け,それを外型の下型32内に
入れ,次いで上型33をかぶせるが,その際,補強用繊維
層31は芯型30外周に取付けただけの状態では嵩張り,外
型と芯型との間隙よりも厚くなっているので,上型33を
閉じる際に補強用繊維が上型33と下型32との合わせ面に
挟まれやすくなり,それを防ぐには芯型上に繊維を密着
して取付けなくてはならず,その作業が大変手間のかか
るものとなっていた。しかも,注意して型締めを行って
も,依然として上型33と下型32との合わせ面に補強用繊
維が挟み込まれてしまい,その部分は成型体のバリとな
るので脱型後切断除去するため,補強用繊維が切断さ
れ,補強効果が低下する。また,型の中に占める繊維の
体積量が大きいので,型内に注入される樹脂の流動抵抗
が大きくなり,まんべんなく行き渡り難いという問題も
発生した。
また,発泡硬質ウレタン樹脂による芯型を作るための
型が必要であること,発泡が発熱反応によるので内部応
力が残留しており,時間の経過につれてフォームは収縮
し,寸法精度にばらつきが起こり,歪みにより型が変形
するので大型なもの,長いもの,複雑な形状をしている
物を作るとき問題となること,発泡硬質ウレタン樹脂の
原料が高価であるという以前からの欠点も解決されてい
ない。
特公昭64−2048号公報に開示のゴム芯型を使用する方
法は,高価なウレタン樹脂を使用しないでよいこと,芯
型が弾性体であるので変形させることにより成型体中か
ら除去でき,繰り返し使用可能であること等の利点を有
している。しかしながら,この方法で使用するゴム芯型
も外力を加えると変形可能ではあるが,力が除かれると
もとの形状に復元するので,このゴム芯型の周囲に補強
用繊維層を取付け,下型内に入れ,上型をかぶせやすく
するため手で押して内方へ変形させておいても,手を離
して上型を閉じる際には元の形状に戻ってしまい,第12
図で説明したように,補強用繊維が外型の合わせ面より
はみ出し易く,やはり発泡硬質ウレタン樹脂の芯型を用
いた場合と同様に芯型及び補強用繊維層を外型にセット
する作業が困難であるという問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもの
で,繊維強化プラスチック製品の部材の厚さを外型と芯
型によって規制する成型方法において,発泡硬質ウレタ
ン樹脂の芯型や中空弾性体の芯型を用いないで,経済的
にかつ効率的に,肉厚の薄い軽量な且つ繊維含有率の高
い繊維強化プラスチック成型体を作ることの可能な成型
方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は,プラスチックフイルムで形成された中空構
造の芯型の周囲に補強用繊維層を取付け,その補強用繊
維層を有する芯型を,内部に流体圧を作用させない状態
で,外型内の所定位置にセットし,該芯型内に流体圧を
作用させて芯型の変形を修正し,次いで外型と芯型の間
に樹脂を注入し,樹脂を硬化させて成型体を形成し,そ
の後,外型を除去し,中空の芯型を成型体中に放置した
まま製品とすることを特徴とする繊維強化プラスチック
の成型方法を要旨とする。
ここで,前記芯型を伸びやすいプラスチックフイルム
で構成しておき,前記外型と芯型間に樹脂を注入する時
の前記芯型内部の流体圧力を,樹脂注入後から注入樹脂
の硬化完了までの前記芯型内部流体の保持圧力よりも低
くすることが好ましい。
〔作用〕
本発明は上記したように,プラスチックフイルムから
なる中空構造の芯型を使用するので,芯型を容易に変形
させることができ且つ変形させた後,力を抜いても変形
した状態に保つことができる。このため,この芯型及び
その外側に取り付けた補強用繊維層を外型内に取付ける
際には,芯型を内部に流体圧力が作用しない状態として
変形させることによって,補強用繊維が外型の外にはみ
ださないように容易に外型内に取付けることができ,ま
た,外型を閉じる際に補強用繊維が外型の合わせ面には
さみ付けられることもない。かくして,芯型及び補強用
繊維層の外型に対するセット作業が極めて容易となる。
芯型及び補強用繊維層を外型内にセットした後,その
芯型に流体圧を作用させることにより,芯型が膨らん
で,芯型の取付時の変形が修正され,芯型として必要な
形状となる。この後,樹脂の注入,硬化を行うことによ
り,所望形状の繊維強化樹脂成型体が形成される。芯型
はこの成型体内にそのまま残す。このため,除去作業が
不要であり,成型工程を簡略化できる。また,その芯型
はプラスチックフイルム製であるので安価であり,成型
体内に残してもさほどコストアップとはならない。更
に,外型と芯型との間への補強繊維層の取付に当たっ
て,まず芯型の周囲に補強用繊維層を取付け,次いでそ
れを外型内にセットする方法を採用したことにより,芯
型の周囲に補強用繊維層を継目のない形態で取り付ける
ことができ,また,補強用繊維として連続繊維材を使用
することも可能であり,補強効果の高いFRP製品を得る
ことができる。
ここで,樹脂の注入時及び硬化時において芯型内に流
体圧力を作用させるに際し,樹脂注入時の芯型内の流体
圧力を低くしておくと,樹脂注入が容易となり空隙のす
みずみにまで樹脂を行き渡らせることができ,注入後か
ら硬化完了までの芯型の流体圧力を注入時よりも高い値
に保持しておくと,外型と芯型の間隙を小さくでき,肉
厚の薄い,繊維含有率の高い軽量なFRP製品を得ること
ができる。その際,芯型として伸びやすいフイルムを用
いると,芯型内の圧力増加に応じて芯型を確実に膨張さ
せることができ,好ましい。
〔実施例〕
以下,第10図,第11図に示す形状の成型体を本発明方
法によって成型する場合を例にとって,本発明を更に詳
細に説明する。
第10図,第11図に示す成型体1は,例えばハンドルと
して使用されるもので,全体がほぼ一定の肉厚となった
中空構造の繊維強化樹脂成型体であり,内面にプラスチ
ックフイルム4を有している。
第1図はこの成型品1の成型に使用する芯型3を示す
概略斜視図,第2図はそのII−II矢視断面図である。こ
の芯型3はプラスチックフイルム4で形成された中空構
造のものであり,その一端に流体供給口5が取付けられ
ている。このような芯型3は,1枚或いは複数枚のプラス
チックフイルム4を流体漏れのないように接合して袋状
とし,かつ不要部分を取り除くことにより,容易に作る
ことができる。芯型3を形成する袋状物の形状は,その
中に流体,例えば空気を入れて膨らませた時に,所定形
状の芯型となるように定められる。ただし,芯型3を単
独で膨らませた時の形状は,必ずしも成型体1の内面形
状に一致した形状とする必要はなく,その円周長さが成
型体1の内周長さにほぼ等しくなっておればよい。なぜ
なら,このプラスチックフイルム4で構成される芯型3
は,後述するように補強用繊維層とともに外型内にセッ
トしその位置で流体圧を作用させて膨らませた時,その
外型内面に補強用繊維層を介して沿った形状に変形しう
るからである。
芯型3を形成する袋状物を作成するに際し,プラスチ
ックフイルムの接合には,熱融着,接着剤による接着等
公知の接合技術を利用できるが,熱融着が簡便で且つ確
実な接合が可能であるので,好ましい。熱融着には,公
知の例えば高周波融着機,ヒートシール用器具,プラス
チックフイルム製袋機など適当なものを使用できる。な
お,芯型3の形状は第1図に示すものに限らず,第3図
に示すように変形可能である。第3図の芯型3は,適当
な位置に切れ目6を形成している以外は第1図のものと
同様である。
芯型に使用するプラスチックフイルムの材質は,熱融
着可能なものが好ましく,例えば,ポリエチレン,ポリ
エステル,ポリアミド,塩ビなどのフイルムを用いるこ
とが好ましい。
フイルムの厚さは次のように定められる。すなわち,
外型内にセットする際に容易に変形させることができる
が,内部に空気等を入れて膨らませた時には元の形状に
戻ったり,外型の内面に沿った形状に変形でき,しか
も,成型作業に耐え流体もれを起こさないような強度を
有するように定められ,具体的には,フイルムの材質に
よっても異なるが,通常,10μm〜75μm程度に定めら
れる。
フイルム4は2軸延伸フイルム等の伸びにくい材料を
用いてもよいが,無延伸フイルム,1軸延伸フイルムなど
の伸びやすいものを用いることが好ましい。このような
伸びやすいフイルムを用いた芯型は,内部に高い流体圧
を作用させることにより,芯型の外形を容易に且つ均一
に大きくでき,このため外型と芯型との間に樹脂を注入
した後,芯型の外形を大きくすることにより,外型との
間の間隙を薄くし,肉厚の薄い,繊維含有率の高い成型
体を得ることが可能となる。また,その際1軸延伸フイ
ルムを用いると,伸び方向を特定できるので,伸びの必
要な方向のみを伸びさせることができ好ましい。
流体供給口5は,フイルム4で形成された袋状物の口
に挿入される矩形部とそれに接続された管状部からなっ
ており,その矩形部の外周にフイルム4が流体漏れのな
いように,針金,糸,接着など公知の方法により接続さ
れている。
第4図は成型品1の製造に使用する外型10を示す概略
断面図,第5図はその外型10を構成する下型の平面図,
第6図は第4図のVI−VI矢視断面図である。この外型10
としては,公知のレジンインジェクション用のものを使
用でき,この例では上型11と下型12とからなる二つの割
構造のものが使用されている。なお,本発明に使用する
外型は必ずしも二つの割構造に限るものではなく,成型
品の形状に応じて適宜変更可能である。
外型10は,芯型3を収容し且つ樹脂を充填するための
キャビティ13及び流体供給口5を貫通させる凹み14を備
えており,かつ上型11と下型12の合わせ面の一方(図面
では下型12の合わせ面)にはキャビティ13に沿って厚さ
1〜10mm程度の耐薬品性のあるゴム状弾性体15が配置さ
れ,他方にはそのゴム状弾性体15に圧着可能な突起16が
形成されている。また,芯型3の流体供給口5を通すた
めの凹み14には,流体供給口の周囲からの樹脂流出防止
用に耐薬品性のあるゴム状弾性体17が円周方向に配置さ
れている。なおこのゴム状弾性体17は外型10に取付ける
代わりに,流体供給口5の外周に取付けてもよく,或い
は双方に設けてもよい。
上型11には樹脂注入口18が形成されている。樹脂注入
口18は1個に限らず複数個設けても良いし,また,上型
11に設ける場合に限らず,下型12に設けたり,双方に設
けるようにしてもよい。外型10には必要に応じ,適当な
場所に空気排出口(図示せず)が形成され,また,型加
熱用のヒーター(図示せず)も内蔵されている。
次に,以上に述べた芯型3及び外型10を用いた本発明
方法による成型方法を説明する。
まず,外型10と芯型3との間に補強用繊維層を配置す
る。補強用繊維としては,ガラス繊維,炭素繊維などか
らできたストランド,チョップドストランドマット,編
組スリーブ,テープ,布などFRPの製造に使用すること
のできるものを適宜使用可能である。これらのものは取
り扱いやすいよう,予め酢酸ビニル樹脂,エポキシ樹脂
などのエマルジョンを含浸し,乾燥しておいてもよい。
補強用繊維層を配置する動作は,芯型3の外周に補強用
繊維層を取付け,それを外型10内にセットする方法を用
いる。
芯型3に補強用繊維層を取り付けるには,まず芯型3
内に流体供給口5から空気等の流体を入れ,流体圧を作
用させて芯型3を膨らませる。これにより,プラスチッ
クフイルム4によって形成されている芯型3が,流体圧
を作用させない状態では例えば偏平な形状であっても,
所定形状に膨らみ,且つその形状を保つ保形性が与えら
れる。なお,芯型3が強度の大きいプラスチックフイル
ムで形成され,流体圧を作用させない状態でも芯型とし
て必要な形状を保っている場合には,流体圧を作用させ
る必要はない。
芯型3を所定形状に膨らませ,保形性を与えた後,そ
の周囲に補強用繊維からなる編組スリーブ,テープ,布
などを設計に従って積層し,補強用繊維層を形成し,必
要であれば糸などによって巻き締め,或いは接着剤など
によって仮止めする。なお,補強用繊維層の形成に編組
スリーブを用いる場合には,その編組スリーブを芯型の
一端から差し込む必要があるので,芯型の全体に編組ス
リーブを差し込むことができるよう,第3図に示す切れ
目6を備えた芯型3を用いる。
次に,第7図に示すように,周囲に補強用繊維層20を
取付けた芯型3を下型12のキャビティ13内に入れ,芯型
3に作用させていた流体圧を除去し,補強用繊維層20及
び芯型3を変形させて,上型11を閉じる際に補強用繊維
層20が上型11と下型12との合わせ面の間にはさみ込まれ
ないような形に整え,その後,上型11を閉じて型締めす
る。これにより,補強用繊維を上型11と下型12との合わ
せ面にはさみ込むことなく,芯型3及び補強用繊維層20
を外型10内にセットできる。なお,型の形状により,こ
のような操作が必要ない場合には,補強用繊維層を取付
けた芯型を外型のキャビティに入れ,そのまま型締めす
ればよい。
外型10を型締めした後,再び芯型3に流体圧を作用さ
せて第8図に示すように芯型3を膨らませ,芯型3及び
補強用繊維層20の変形を修正し,かつ芯型3を,外型10
の内面に適当な間隙を開けて沿った形状となるように変
形させる。この際,芯型3の外周には均一に補強用繊維
層20が取付けられているので,芯型3と外型10内面との
間隙は均一となっている。次いで,第9図において,樹
脂注入口18から成型樹脂,例えば,エポキシ樹脂,常温
硬化型不飽和ポリエステル樹脂などの液状の樹脂22を,
外型10と芯型3との間の空隙に注入し,補強用繊維層20
と一体化し硬化させる。
この樹脂注入及び硬化時,芯型3内には常時流体圧を
作用させた状態としてもよいし,或いは流体供給口5を
閉じて内部に流体を封入した状態としてもよいし,更に
は,芯型3が強度を持っている場合には流体圧を解除し
た状態としてもよい。芯型3内に流体圧を作用させる場
合,その圧力は樹脂注入時及び硬化時を通して常時一定
でもよいが,樹脂注入時には芯型3内の圧力を低くする
か或いは無しとし,樹脂注入完了後,芯型3内の圧力を
高めることが好ましい。樹脂注入時に芯型3内の圧力を
低くするか或いは無しとすると,外型10と芯型3の間が
広くなり樹脂の注入が容易となり,樹脂の行き渡らない
ところができにくい。また,樹脂注入後,芯型3内の圧
力を高めると,芯型3の外形が大きくなり,外型10と芯
型3との間隙が小さくなる。このため,一旦この間隙に
注入された樹脂が押し出され,成型体の厚みが薄くな
り,樹脂成型体中の繊維含有率が増加して軽くて強いFR
Pを得ることができる。この際,芯型3を構成するフイ
ルム4として,1軸延伸フイルム等の伸びやすいものを使
用すると,芯型3内の圧力増加による外形の増大が顕著
に且つ均一に生じるので,好ましい。芯型3に加える圧
力としては,通常0.1〜1kg/cm2程度が使用されるが,外
型10を補強するか或いは金型等の剛性の大きいものを用
いると,圧力を更に上げることができ,更に成型体の肉
厚を薄くして,繊維含有率を増加させることができる。
外型10内に注入する樹脂の圧力は,芯型3内の圧力,
芯型3の強度,樹脂の粘度などを考慮し,型内の空隙の
隅々にまで樹脂が行き渡るように設定されるが,通常0.
5〜1.5kg/cm2程度とすることが多い。
外型10と芯型3との間に樹脂を注入し硬化させた後,
外型10を外して成型品を取り出す。その成型品には,芯
型3のフイルム4が内部に接着した状態で残っている
が,そのフイルム4は極めて軽量であり,製品重量に対
して微小量であるので,流体供給口5の部分のみを切断
して除去し,フイルム4は取り除かずにそのまま残して
おく。以上のようにして第10図に示す形状の成型品1が
製造される。
上記の操作において,芯型3内に供給する流体として
は,空気,水,オイル等などがあり,必要に応じ温度調
節したものを用いるが,圧縮空気が取り扱いに便利であ
る。
次に,本発明の具体的な実施例を説明する。
実施例1 第10図に示す成型品1(寸法A=25mm,B=60mm,C=15
0mm,D=80mm)を製造すべく,第3図に示す形状の芯型
3及び第4図,第5図に示す外型10を準備した。外型10
に形成したキャビティ13は,成型品1の外形と同等の形
状,寸法のものである。また,この外型10の上型11,下
型12は共に型加熱用のヒータを内蔵しており,型の表面
温度は双方ともに45度に調節されている。
芯型3はプラスチックフイルム4によって構成される
が,そのフイルム4としては,厚み31.75μmの一軸延
伸ポリアミドフイルム(商品名CAPRAN ER−20,Allied
Chemical Corp.製)を用い,その延伸方向が中空部分の
長手方向になるように配置した。芯型3の外形寸法は,
この芯型3をフイルム4がほとんど伸びない程度に膨ら
ませて外型10のキャビティ13内に入れたとき,外型との
間に3mmの間隙が生じるように設定した。
この芯型3に0.2kg/cm2の空気圧を作用させて膨らま
せ,その周囲に炭素繊維編組スリーブを6層積層した。
その炭素繊維編組スリーブの仕様は次の通りである。
商品名 トレカブレード T−6962(東レ(株)製) 40mm幅の時の糸角度:10度 重さ:400g/10m 使用糸:T300−6000 打ち込み本数:96本 繊維集束本数:300本 次に,炭素繊維編組スリーブを取付けた芯型3を,内
部の空気圧を解除した後,下型12のキャビティ13内に入
れ,その炭素繊維編組スリーブが上型11と下型12との合
わせ面の間にはさみ込まれないようにするため,やや内
側に入り込むように変形させ(第7図参照),その後,
上型11を閉じ,型締めした。芯型3を外型10にセットす
るのに要する時間は約1分であり,かつ上型11と下型12
との合わせ面に補強用繊維がはさみ込まれることは無か
った。
その後,芯型3に再び空気圧を作用させ,内部の圧力
を0.3kg/cm2に保ちながら,樹脂注入口18から,1.0kg/cm
2の圧力でエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製,エ
ピコート802)を注入し,その状態で樹脂を硬化させ
た。硬化後,その成型品を外型10から取り出し,流体供
給口5を切断除去し,第10図の成型品1を得た。
その成型品1の肉厚,繊維含有率を測定した結果を第
1表に示す。
上記と同様の成型操作を,樹脂注入及び硬化時の芯型
3内の圧力のみを0.4,0.6kg/cm2に代えて行い,成型品
を得た。この成型品の肉厚,繊維含有率を測定した結果
も第1表に示す。
第1表より明らかなように,芯型3内の圧力を上げる
ことにより,成型品の肉厚を薄くし,繊維含有率を高め
ることができた。
実施例2 実施例1と同様にして,炭素繊維編組スリーブを取付
けた芯型3を外型10内にセットした。次いで,芯型3に
0.3kg/cm2の空気圧を作用させた状態で,樹脂注入口18
から,1.0kg/cm2の圧力でエポキシ樹脂(油化シェルエポ
キシ社製,エピコート802)を計算所要量より多めに注
入し,その後,芯型3の内部圧力を0.6kg/cm2に上げ,
その状態で樹脂を硬化させ,成型品を得た。この成型品
の肉厚,繊維含有率を測定した結果も第1表に示す。
実施例2でも,実施例1において0.6kg/cm2の圧力で
成型したものと同じ肉厚,繊維含有率の成型品を得るこ
とができた。しかも,実施例2では実施例1における最
初から0.6kg/cm2の圧力をかけた場合に比べて樹脂の注
入時間が短く,樹脂のまわりが良いという利点が得られ
た。
比較例 発泡硬質ウレタン樹脂で芯型を作った。この時の芯型
の寸法としては,外型10に入れた時外型との間に3mmの
クリアランスが生じるように定めた。この芯型の表面に
実施例1と同じトレカブレードを6枚重ねて取付けた。
この時,そのトレカブレードによる繊維層の厚さはその
ままの状態では4〜5mmとなっているので,これを手で
押えながら,下型11のキャビティ13内に入れ,更に,そ
れを押えながら上型12をかぶせた。この操作は極めて面
倒であるので,セットに長時間(約1時間)かかった。
しかも,上型11と下型12との合わせ面に補強用の繊維が
はさみ込まれていた。
次に,実施例1と同じエポキシ樹脂を同じ条件で注入
し,内部に発泡硬質ウレタン樹脂を埋め込んだ成型品を
得た。その成型品の肉厚と繊維含有率を第1表に示す。
比較例で得た成型品では,上型11と下型12との合わせ
面に挟まっていた補強用の繊維がバリとなって残るの
で,製品とする際これを切断するが,バリの切断によっ
て補強用繊維が切断されてしまい,この部分の補強効果
が低下するという欠点が生じた。
〔発明の効果〕 本発明はプラスチックフイルムによって芯型を作った
ので,特公昭64−2048号公報に示したようなゴム状弾性
体からなる芯型のような復元性がなく,内部に圧力をか
けない時には容易に変形しかつ変形した状態に保てるの
で,芯型の周囲の補強用繊維層を,外型を構成する複数
の割り型(例えば上型と下型)の合わせ目に挟み込むこ
とがないように小さく整形することができ,外型と補強
用繊維層と芯型とのセットが簡単となり,かつ補強用繊
維を外型の合わせ面間にはさみ込むということがない。
また,芯型を成型体から取り外す必要がないので,硬化
後の脱型作業が簡単となり,しかも,ゴム状弾性体から
なる芯型を用いた場合には厚いゴム芯型を取り出すため
に大きい口を必要とするが本発明ではこの必要がなく,
流体供給口は極めて小さいもの(例えば直径1〜2mm程
度)で良いので,強度的に欠陥の少ない製品とすること
ができる。
更に,本発明は保形性を調節できるプラスチックフイ
ルムの芯型を使用するので,発泡硬質ウレタン樹脂の芯
型とは異なり,外形を変形させて外型に入り易いように
整形でき,型へのセット時間がかからず,また,補強用
繊維が外型の合わせ目に挟まりにくい。
更に,本発明は外型と芯型との間への補強用繊維層の
取付に当たって,まず芯型の周囲に補強用繊維層を取付
け,次いでそれを外型内にセットする方法を採用したこ
とにより,芯型の周囲に補強用繊維層を継目のない形態
で取り付けることができ,また,補強用繊維として連続
繊維材を使用することも可能であり,補強硬化の高いFR
P製品を得ることができる。
また,芯型内部の圧力を変えることにより,芯型の外
形を調整できるので,樹脂注入時には芯型内部の圧力を
低くしておくことで,外型の芯型との間隙を大きくで
き,このため,補強用繊維層内への樹脂注入時の抵抗が
少なく,複雑形状のすみずみまで容易に樹脂を行き渡ら
せることができ,樹脂の注入後,芯型内部の圧力を高め
ることにより,芯型と外型との間の間隙を小さくし,そ
の部分の過剰な注入樹脂を追い出すと共に樹脂を移動さ
せて繊維間に確実に含浸させることができ,肉厚の薄
い,繊維含有率の高い,軽量,高強度の成型品を得るこ
とができる。
本発明の芯型はプラスチックフイルムを使用し,芯型
成型に型を使用しないので,芯型の形状の変更が容易で
あり,経済的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法に用いる芯型の1例を示す概略斜視
図,第2図はそのII−II矢視断面図,第3図は本発明方
法に用いる芯型の変形例を示す概略斜視図,第4図は本
発明方法に使用する外型の概略断面図,第5図はその外
型の一部を構成する下型の概略平面図,第6図は第4図
のIV−IV矢視断面図,第7図は下型内に,補強用繊維層
を取付けた芯型を収容する状態を示す第6図と同一部分
の概略断面図,第8図はその芯型を膨らませた状態を示
す第7図と同一部分の概略断面図,第9図は外型内に補
強用繊維層及び芯型をセットし,樹脂を注入する状態を
示す概略断面図,第10図は本発明方法によって成型した
成型体の1例を示す概略斜視図,第11図はそのXI−XI矢
視断面図,第12図は従来技術において補強用繊維層を取
付けた芯型を外型内に収容する状態を示す概略断面図で
ある。 1……成型体,3……芯型,4……プラスチックフイルム,5
……流体供給口,10……外型,11……上型,12……下型,13
……キャビティ,14……凹み,15……ゴム状弾性体,16…
…突起,17……ゴム状弾性体,18……樹脂注入口,20……
補強用繊維層,22……樹脂。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラスチックフイルムで形成された中空構
    造の芯型の周囲に補強用繊維層を取付け,その補強用繊
    維層を有する芯型を,内部に流体圧を作用させない状態
    で,外型内の所定位置にセットし,該芯型内に流体圧を
    作用させて芯型の変形を修正し,次いで外型と芯型の間
    に樹脂を注入し,樹脂を硬化させて成型体を形成し,そ
    の後,外型を除去し,中空の芯型を成型体中に放置した
    まま製品とすることを特徴とする繊維強化プラスチック
    の成型方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の繊維強化プラスチックの成
    型方法において,前記芯型を伸びやすいプラスチックフ
    イルムで構成しておき,前記外型と芯型間に樹脂を注入
    する時の前記芯型内部の流体圧力を,樹脂注入後から注
    入樹脂の硬化完了までの前記芯型内部流体の保持圧力よ
    りも低くすることを特徴とする繊維強化プラスチックの
    成型方法。
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