JP2667551B2 - ナトリウム―硫黄電池に用いられる高抵抗層の形成方法 - Google Patents

ナトリウム―硫黄電池に用いられる高抵抗層の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ナトリウム−硫黄電池に用いられる高抵抗
層の形成方法に関するものである。
(従来の技術) ナトリウム−硫黄電池は負極活物質であるナトリウム
と正極活物質である硫黄とをβ−アルミナ、β″−アル
ミナなどのナトリウムイオン伝導性固体電解質により分
離し、300〜350℃の高温で作動させる密閉型高温二次電
池である。
この電池においては電池放電時には負極活物質である
ナトリウムがナトリウムイオンとなって外部回路に電子
を放出し、それと同時にナトリウムイオンが固体電解質
を通って移動して正極活物質の硫黄と反応、多硫化ナト
リウムが形成される。電池充電時には放電時と逆の過程
を経て正極側から電子が放出され、外部回路より印加さ
れる電圧により固体電解質管を通って正極側から負極側
へ流入するナトリウムイオンを中性化することにより、
電気エネルギーが化学エネルギーに変換される。
そこで、上記の電池放電時、または充電時に行われる
電池反応において、正極での硫黄原子あるいは多硫化ナ
トリウムと外部回路との電子の交換を円滑に行うことは
正極における内部抵抗を低く抑えるために考慮すべき問
題点である。そのため、ナトリウム−硫黄電池において
は従来より、正極室に黒鉛や炭化フエルト等の硫黄や多
硫化物に対する耐腐食性が高く、かつ電子伝導性の良好
な多孔性電子伝導材を配し、これを集電体として正極活
物質との接触面積を大きくし、かつ接触抵抗を小さくす
ることで内部抵抗の低減を図っている。
第5図はこのナトリウム−硫黄電池の従来構造を示す
図で、この図において固体電解質管(1)の内側はナト
リウムの充填された負極室(3)で外側はグラファイト
などの多孔性電子伝導材(5)に含浸された硫黄が充填
された正極室(4)である。固体電解質管(1)の上端
にはα−アルミナ製の絶縁体リング(2)がガラス半田
により接合されて、正極室(4)と負極室(3)との絶
縁を行っている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、上記従来の正極室の構造では固体電解
質管(1)の表面と多孔性電子伝導材(5)とが接触し
ているため、充填時に固体電解質管(1)の表面に絶縁
性の硫黄原子が析出し、多硫化ナトリウムの硫黄モル比
が5.5以上となるまで充電を行えず、充電回復性が低下
するという問題点があった。この問題点は多孔性電子伝
導材(5)と多硫化ナトリウムの濡れ性が十分に大きく
ない場合や、高率充放電時にはとくに顕著であり、活物
質の利用効率に制限を与えることになる。
本発明は上記の点に鑑み、充電時における固体電解質
付近の硫黄原子の析出を抑制して正極活物質の充電回復
性を高め、さらに充電により正極活物質の体積が減少し
ても固体電解質管の上方にまで均一、かつスムーズに正
極活物質がゆきわたり、固体電解質管にひずみがかから
ないようにするナトリウム−硫黄電池に用いられる高抵
抗層の形成方法を提供するためになされたものである。
(課題を解決するための手段) 上記の課題を解決するためになされた第1の発明のナ
トリウム−硫黄電池に用いられる高抵抗層の形成方法
は、正極活物質を含浸、固化した多孔性電子伝導材で、
正極室の形状に合致した円筒を縦割り数分割した形状の
ものを作成しておき、その凹部表面に凸状ノズルを用い
て一方向に絶縁性の短繊維を含有した溶融活物質を塗布
することにより、高抵抗層を直接多孔性電子伝導材に形
成することを特徴とするものである。
また第2の発明のナトリウム−硫黄電池に用いられる
高抵抗層の形成方法は、巾の広いノズル先端部を用いて
一方向に絶縁性の短繊維が配向するシート状の高抵抗層
をまず形成し、この高抵抗層を固体電解質管に巻回して
正極室内に組み込むことにより、固体電解質管側ほど密
で外側ほど粗な高抵抗層を形成することを特徴とするも
のである。
なお第1及び第2の発明において、絶縁性の短繊維や
粉末だけでなく導電性の短繊維や粉末などを適量混入し
て抵抗値を調整するようにしてもよい。
(実施例) 以下、本発明を図面を参照しつつ説明する。
第1図は本発明の方法により形成された高抵抗層を持
つナトリウム−硫黄電池の断面図、第2図は第1図の要
部拡大図で第5図と同一部材は同一符号で示されてい
る。
この第1図及び第2図において、固体電解質管(1)
の正極室側表面と、多孔性電子伝導材(5)との間の符
号(6)で示す層はガラスやアルミナなどの絶縁性短繊
維が正極活物質と混合されて形成された高抵抗層で、こ
の層内部で絶縁性短繊維は固体電解質管(1)の長さ方
向に配向している。
第1の発明によれば、このような高抵抗層(6)は、
第3図に示すように正極活物質を含浸、固化した多孔性
電子伝導材(5)で、正極室の形状に合致した円筒を縦
割り数分割した形状のものを作成しておき、その凹部表
面に凸状ノズルを用いて一方向に絶縁性の短繊維を含有
した溶融活物質を塗布することで、直接多孔性電子伝導
材(5)に形成することができる。
また第2の発明によれば、第4図に示すように巾の広
いノズル先端部を用いて一方向に絶縁性の短繊維が配向
するシート状の高抵抗層(6)をまず形成し、固体電解
質管(1)に巻回して正極室(4)内に組み込んでもよ
い。この第4図に示す手段によれば、高抵抗層(6)の
短繊維密度は内側、即ち固体電解室管(1)側ほど密
で、外側ほど粗となる。そして、本発明の高抵抗層
(6)に絶縁性の短繊維や粉末だけでなく導電性の短繊
維や粉末などを適量混入して抵抗値を調整することも可
能である。
なお、ナトリウム−硫黄電池の固体電解質管(1)の
内側が正極室、外側が負極室のタイプの電池では高抵抗
層(6)は固体電解質管(1)の内表面と多孔性電子伝
導材の間に形成すべきことは言うまでもない。
(作用及び効果) 本発明の方法により形成された高抵抗層(6)を持つ
ナトリウム−硫黄電池は、固体電解質管(1)と多孔性
電子伝導材(5)との間に上下方向に配向する絶縁性の
短繊維を含有する高抵抗層(6)を配しているので、固
体電解質管(1)の表面と電子伝導材(5)との間の電
子移動が遮断されてこの付近での充電反応による硫黄原
子の生成反応を抑制し、固体電解質管(1)の表面が絶
縁性の硫黄膜で覆われることなく充電が深く進行する。
そして、高抵抗層(6)の含有する短繊維が電池の上下
方向、即ち固体電解質管(1)の長さ方向に配向してい
るため充電により正極活物質の体積が減少しても固体電
解質管(1)上方まで均一、かつスムーズに正極活物質
がゆきわたるので、固体電解質管(1)に活物質の増減
によるひずみがかかることがない。さらに、このように
短繊維が配向していると高抵抗層(6)と固体電解質管
(1)との接触が密接になり、内部抵抗が低減するた
め、充放電特性が良好になる。
また、第4図に示したように高抵抗層(6)をあらか
じめシート状に形成し、固体電解質管(1)に巻回して
正極室(4)に組み込んだ場合には高抵抗層(6)の短
繊維密度が内側ほど密、外側ほど粗となって抵抗が外側
ほど小さくなるため、多孔性電子伝導材(5)との間の
界面分極抵抗係数を小さくしてこの界面での局所的な電
気化学反応の進行を抑制することができる。
以上に説明したとおり、本発明は充放電深度を向上
し、かつ固体電解質表面の活物質による浸潤を良好に保
つことのできるナトリウム−硫黄電池に用いられる高抵
抗層の形成方法として、産業の発展に寄与するところは
極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
第1図はナトリウム−硫黄電池の断面図、第2図は第1
図の要部拡大図、第3図及び第4図はそれぞれ本発明の
高抵抗層を形成する方法を説明するための図、第5図は
従来例であるナトリウム−硫黄電池の断面図である。 (1):固体電解質管、(3):負極室、(4):正極
室、(5):多孔性電子伝導材、(6):高抵抗層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】正極活物質を含浸、固化した多孔性電子伝
    導材(5)で、正極室(4)の形状に合致した円筒を縦
    割り数分割した形状のものを作成しておき、その凹部表
    面に凸状ノズルを用いて一方向に絶縁性の短繊維を含有
    した溶融活物質を塗布することにより、高抵抗層(6)
    を直接多孔性電子伝導材(5)に形成することを特徴と
    するナトリウム−硫黄電池に用いられる高抵抗層の形成
    方法。
  2. 【請求項2】巾の広いノズル先端部を用いて一方向に絶
    縁性の短繊維が配向するシート状の高抵抗層(6)をま
    ず形成し、この高抵抗層(6)を固体電解質管(1)に
    巻回して正極室(4)内に組み込むことにより、固体電
    解質管(1)側ほど密で外側ほど粗な高抵抗層(6)を
    形成することを特徴とするナトリウム−硫黄電池に用い
    られる高抵抗層の形成方法。
  3. 【請求項3】絶縁性の短繊維や粉末だけでなく導電性の
    短繊維や粉末などを適量混入して抵抗値を調整するよう
    にした特許請求の範囲第1項又は第2項記載のナトリウ
    ム−硫黄電池に用いられる高抵抗層の形成方法。
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