JP2662227B2 - 歯周病原性菌検査薬 - Google Patents
歯周病原性菌検査薬Info
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- JP2662227B2 JP2662227B2 JP30167587A JP30167587A JP2662227B2 JP 2662227 B2 JP2662227 B2 JP 2662227B2 JP 30167587 A JP30167587 A JP 30167587A JP 30167587 A JP30167587 A JP 30167587A JP 2662227 B2 JP2662227 B2 JP 2662227B2
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Description
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は歯周病原性菌検査薬、さらに詳しくは、歯周
病巣から採取した検体中の歯周病原性菌である、バクテ
ロイデス・ジンジバリスを特異的に、かつ、簡便、迅速
に検出できる検査薬に関する。 従来の技術および問題点 近年、歯周疾患に関する細菌学的研究が進み、歯周疾
患病巣部に多くのスピロヘータが検出され、種々の臨床
的指標と高い相関性を示すことが判明している。また、
嫌気性のグラム陰性桿菌が主要な歯周疾患の原因菌であ
ることも判明しており、その中でも特に、バクテロイデ
ス・シンジバリス(Bacteroides gingivalis)などの
黒色色素産生バクテロイデス(Black−pigmented Bacte
roides)が注目され、その病原性について多数の報告が
なされている。 そこで、口腔内におけるこれらの原因菌の存在を検知
し、歯周疾患の罹患や進行を診断あるいは予測し、歯周
疾患の治療、予防に、臨床的に応用する試みがなされて
いる。 しかしながら、細菌学的方法によるこれらの原因菌の
検知には、暗視野顕微鏡の使用、嫌気性菌の取扱という
高度な技術、特殊の設備等を必要とし、操作が煩雑で、
培養や結果の判断にも長い時間や熟練を要するという欠
点があり、臨床的に実用化するには困難な点が多い。ま
た、免疫学的な面から、これらの原因菌に対する液性免
疫である血中の抗体価を測定したり、細胞性免疫である
リンパ球幼若化反応を測定し、原因菌の存在を検知する
試みもなされているが、検体試料の調整に煩雑な操作を
必要とする問題があり、やはり、実用化はなかなか困難
である。 このような事情にかんがみ、本発明者らは、臨床的に
実用化できる歯周疾患原因菌の検知を可能とすべく鋭意
研究を重ねた。その結果、バクテロイデス・ジンジバリ
スが非常に特異的なペプチダーゼ様酵素活性を有し、あ
る種の基質に用い、これにチオール化合物およびジイソ
プロピルフルオルリン酸を添加することにより、この酵
素活性を特異的に、かつ、簡便、迅速に検出することを
見出した。 これまで、口腔内のスピロヘータやバクテロイデス・
ジンジバリスがトリプシン様酵素やフィブリン分解酵素
を産生することは知られているが[ジャーナル・オブ・
クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of Clini
cal Microbiology),97〜102,1982年1月;マイクロバ
イオス・レターズ(Microbios Letters),25,157〜16
0,1984年;ジャーナル・オブ・ペリオドンタル・リサー
チ(Journal of Periodontal Research),21,95〜100,
1986年]、臨床症状との相関性や検出の特異性の点でこ
れらの酵素を指標とすることは困難である。 問題点を解決するための手段 本発明は、液体中のペプチダーゼ様酵素活性を測定す
ることにより、歯周病原性菌を検出するための検査薬で
あって、 式:X−Arg−Y [1] [式中、Argはアルギニン残基、Xはフェニル骨格を持
つアミノ酸保護基、Yはアルギニン残基のC末端に結合
する発色基を意味する] で示される化合物を該酵素の基質とし、これにチオール
化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を添加して
なることを特徴とする歯周病原性菌検査薬を提供するも
のである。 本発明の検査薬を用いれば、唾液、歯垢、歯肉溝浸出
液などのような検体を、好ましくは、pH6.9〜9.0の条件
下、式[1]の基質と反応させ、その水解活性の強弱を
発色反応により測定することにより、簡便かつ迅速に、
歯周病原性菌を検出することができる。 基質として用いる式[1]の化合物は公知であるか、
少なくとも、公知のペプチド合成法によって容易に製造
できるものであり、式[1]のX基で示されるアミノ基
保護基はペプチド合成に用いられる公知のアミノ基保護
基のうちでフェニル骨格を持つものであればいずれのも
のでもよく、例えば、ベンゾイル基、カルボベンゾキシ
基、p−トルエンスルホニル、p−メトキシベンゾイル
オキシカルボニ基などが挙げられる。 Y基の発色基は、発色による酵素活性の測定(紫外
線、可視部、赤外線の吸収、蛍光の測定によるものを包
含する)に用いられるものいずれでもよく、例えば、β
−ナフチルアミン、4−メトキシ−2−ナフツルアミ
ン、p−ニトロアニリン、p−ニトロフェノール、7−
アミノ−4−メトキシクマリン、5−アミノイソフタル
酸ジメチルエステル、7−アミノ−4−トリフルオロメ
チルクマリンなどから由来する基が挙げられる。特に、
適当な発色試薬により、肉眼的に判定可能な発色を示す
β−ナフチルアミン、4−メトキシ−2−ナフチルアミ
ン、p−ニトロアニリン、p−ニトロフェノール由来の
基が好ましい。 添加剤として用いるチオール化合物としては、分子構
造中に、チオール基を有するものであればいずれのもの
でもよいが、好ましくは、システイン、ジチオスレイト
ール、メルカプトエタノールなどが挙げられる。また、
他の添加剤として、ジイソプロピルフルオルリン酸を用
いる。 本発明の検査薬は、式[1]の化合物が検体由来のペ
プチダーゼ様酵素の基質として反応できる形態のもので
あればいずれでもよく、もっとも基本的には、式[1]
の化合物の水溶液にオチール化合物およびジイソプロピ
ルフルオルリン酸を添加したものでよく、好ましくは、
測定時、pH6.0〜9.0となるように緩衝剤を含有させる。
用いる緩衝剤は通常用いられるものであればいずれでも
よく、例えば、トリス塩酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ
酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤、HEPES緩衝剤などを用い
ることができる。該水溶液は式[1]の化合物、チオー
ル化合物およびジイソプロピルフルオルソン酸、およ
び、所望により、緩衝剤を蒸留水に溶解するような公知
の方法で製造することができ、要すれば、さらに、防腐
剤、坑生物質などの他の添加物を適宜配合することがで
きる。 式[1]の化合物の最終濃度100nM〜100mMの範囲、チ
オール化合物の最終濃度1mM〜100mM、ジイソプロピルフ
ルオルリン酸の最終濃度0.1mM〜20mM、また、緩衝剤は
最終濃度1mM〜1Mの範囲で使用することが好ましく、前
記の水溶液は、これらの濃度の式[1]の化合物、チオ
ール化合物、ジイソプロピルフルオルリン酸および所望
により緩衝剤を含有し、そのまま直接、検査に供するこ
とのできる形態にすることができ、あるいは、使用時、
適宜蒸留水で所望の濃度に希釈する濃厚液の形態とする
ことができる。 本発明の検査薬には、これらの水溶液の形態のもの
を、さらに、公知の方法により乾燥粉末化、顆粒化した
もののごとき固形の形態のもの、粉末成分を混合した粉
末、その顆粒化物のごとき固形の形態のもの、あるい
は、液状の形態のものをろ紙、ペーパーディスク、スポ
ンジ、高分子物などの担体に含浸させるものも包含され
る。 さらに、本発明の検査薬には、式[1]の化合物、チ
オール化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を含
有する試薬と、緩衝剤、発色試薬などの他の試薬を組合
わせてなるキットも包含される。 発色試薬は、式[1]の化合物におけるY基に応じて
適宜選択でき、Yがβ−ナフチルアミン、4−メトキシ
−2−ナフチルアミン、p−ニトロアニリン、p−ニト
ロフェノール由来の基の場合、例えば、ファーストガー
ネットGBCやファーストブルーBBあるいはこれらのジア
ゾニム塩や塩化亜鉛との塩のごとき塩などを、水エタノ
ール、酢酸緩衝液、2−メトキシエタノールあるいはこ
れらの混合溶液などに0.01〜5重量%の濃度で溶解した
溶液や、0.5〜5Mの水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、酢酸などの水溶液が用いられる。これらの溶液また
はその濃厚液、さらには固形化物を式[1]の化合物、
チオール化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を
含有する試薬と組合わせてキットとして用いることがで
きる。 本発明の検査薬を用いて検査を行なうには、まず、検
体を採取する。検体の採取は公知の方法で行なってもよ
く、例えば、歯肉溝浸出液や唾液はろ紙、キャピラリ
ー、ペーパーポイントなどで採取でき、歯垢は綿棒、キ
ュレット、スケラーなどで採取できる。 ついで、式[1]の化合物最終混合濃度100nM〜100m
M,チオール化合物の最終濃度1mM〜100mMおよびジイソプ
ロピルフルオルリン酸の最終濃度0.1mM〜20mMに調整し
た本発明の検査薬と検体を、例えば、試験薬、マイクロ
タイタープレート、セル、バイアル瓶、プラスチック・
キュベットなどの中で接触させ、好ましくは、pH6.9〜
9.0で水解反応を行なわせる。この反応は、通常25〜45
℃でおこなわれ、反応時間は検体や反応温度により異な
るが、37℃で15分〜72時間程度の反応が好ましい。 反応終了後、必要であれば、発色試薬を添加し、発色
の有無・強弱を肉眼あるいは分光光度計や蛍光光度計で
判定し、これにより、検体中のペプチダーゼ様酵素活性
の有無・強弱を判断し、歯周疾患の罹患や進行を診断あ
るいは予測する。 実験および実施例 つぎに、実験および好ましい実施例を挙げて本発明を
さらに詳しく説明する。 実験1 格種口腔内嫌気性細菌のペプチダーゼ様酵素活性 口腔内の嫌気性細菌であるトレポネーマ・デンティコ
ーラ(Treponema denticola)4株、バクテロイデス・
ジンジバリス5株、バクテロイデス・インターミーディ
アス(Bacteroides intermedius)3株、バクテロイデ
ス・コーポリス(Bacteroides corporis)2株、バクテ
ロイデス・メラニノジェニカス(Bacteroides melanino
genicus)3株、バクテロイデス・デンティコーラ(Bac
teroides denticola)2株、アクチノマイセス・イスラ
エリー(Actinomyces isralli)2株、アクチノバチル
ス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus a
ctinomycetemcomitans)4株およびフソバクテリウム・
ヌクレータム(Fusobacterium nucleatum)3株のペプ
チダーゼ様酵素基質に対する水解活性をつぎのとおり測
定した。 トレポネーマ属の細菌はTYGVS培地を用い、37℃で7
日間、他の細菌はブレイン・ハート・インフュージョン
・ブロスを用い、37℃で48〜72時間嫌気的に培養し、培
養液を希釈して、各々、660nmにおける吸光度が1.0の細
菌懸濁液を調製した。 種々の発色基を有するペプチダーゼ様酵素の基質化合
物を、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)に20mMの濃度で
溶解し、基質溶液を調製した。 この基質溶液1.5mlに、前記の細菌懸濁液0.5mlを加
え、37℃で60分間反応させた。反応終了後、β−ナフチ
ルアミン由来の発色基を有する基質には、発色試薬(10
%ツィーン20を含有するIM酢酸緩衝液(pH4.2)にジア
ゾニウム塩ガーネットGBCを0.5mg/mlの濃度で溶解して
調整)0.6mlを加え、15分後に525nmにおける吸光度を分
光光度計にて測定した。また、パラニトロアニリン由来
の発色基を有する基質は、そのままの状態で410nmにお
ける吸光度を分光光度計にて測定した。 水解活性は、各細菌のβ−ナフチルアミン遊離量およ
びパラニトロアニリン遊離量の平均値に基づき、つぎの
とおり表示した。 −:遊離量<5ナノモル/ml ±:遊離量5〜<10ナノモル/ml +:遊離量10〜<20ナノモル/ml ++:遊離量20〜<40ナノモル/ml +++:遊離量40〜<80ナノモル/ml ++++:遊離量80ナノモル/ml以上 結果を第1表に示す。第1表中、基質化合物の略号は
つぎのとおりである。 BzAβna:ベンゾイル−アルギニン−β−ナフチルアミド CxAβNA:N−カルボベンゾキシ−アルギニン−β−ナフ
チルアミド BzApNA:ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリド CxApNA:N−カルボベンゾキシ−p−ニトロアニリド BzApNP:ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロフェノー
ル CzApNP:N−カルボベンゾキシ−p−ニトロフェノール 第1表に示すごとく、口腔内嫌気性細菌のうち、歯周
疾患原因菌であるスピロヘータ(トレポネーマ・デンテ
ィコーラ)およびバクテロイデス・ジンジバリスが特異
的にペプチダーゼ様酵素活性を示し、式[1]で示され
る化合物を特異的に水解する。 実験2 バクテロイデス・ジンジバリスおよびトレポネーマ・デ
ンティコーラの各種添加剤存在下での、ベンゾイル−ア
ルギニン−p−ニトロアニリド水解活性−1 歯周病原性菌であるバクテロイデス・ジンジバリス5
株およびトレポネーマ・デンティコーラ4株を用い、各
種添加剤存在下での、ベンゾイル−アルギニン−p−ニ
トロアニリド水解活性を測定した。 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリドを0.1M
トリス塩酸緩衝液(pH7.0)に10mMの濃度で溶解し、基
質溶液を調製した。 添加剤は、10mMシステイン塩酸塩、2mMジイソプロピ
ルフルオルリン酸および10mMシステイン塩酸塩と2mMジ
イソプロピルフルオルリン酸を混合したものを調製し、
基質溶液1.5mlに対して、添加剤0.5mlおよび菌懸濁液0.
5mlを加えた後、37℃で24時間反応させた。該菌懸濁液
は、菌数をそれぞれ2.5、5.0、7.5、10.0×106個/50μ
に調製したものを用いた。反応終了後、反応液の410n
mにおける吸光度を分光光度にて測定した。 結果を第1図に示す。図中の添加剤の略号はつぎのと
おりである。 n0:添加剤無添加 Cys:システイン塩酸塩 DFP:ジイソプロピルフルオルリン酸 第1図に示すごとく、ある種の添加剤を加えることに
より、バクテロイデス・ジンジバリスを特異的に検出す
ることができる。 実験3 バクテロイデス・ジンジバリスおよびトレポネーマ・デ
ンティコーラの各種添加剤存在下での、ベンゾイル−ア
ルギニン−p−ニトロアニリド水分解活性−2 実験2と同様の反応系を用いて、添加剤の種類を変え
て、各種添加剤存在下での、ベンゾイル−アルギニン−
p−ニトロアニリド水分解活性を測定した。 水解活性は、各細菌のパラニトロアニリン遊離量の平
均値に基づき、つぎのとおり表示した。 −:遊離量<5ナノモル/ml ±:遊離量5〜<10ナノモル/ml −:遊離量10〜<20ナノモル/ml ++:遊離量20〜<40ナノモル/ml +++:遊離量40〜<80ナノモル/ml 結果を第2表に示す。表中の添加剤の略号はつぎのと
おりである。 n0:添加剤無添加 Cys:システイン塩酸塩 DTT:ジチオスレイトール ME:2−メルカプトエタノール DFP:ジイソプロピルフルオルリン酸 第2表に示すごとく、チオール化合物とジイソプロピ
ルフルオルリン酸を併用することにより、バクテロイデ
ス・ジンジバリスを特異的に検出することができる。 実験4 臨床所見との相関−1 臨床所見上、健常であると認められる者15名および歯
周炎患者20名から、各々、滅菌スケーラーにより歯肉縁
下歯垢検体を採取し、リンガー液1.5mlに分散し菌懸濁
液を調製した。この菌懸濁液10μをスライドガラス上
におき、自然乾燥させたものをPBSにて材料表面を湿ら
せた後、FITC(蛍光色素)を結合させたウサギ抗バクテ
ロイデス・ジンジバリス381血清10μをのせ、1時間
室温でインキュベートした。その後、glycerol−PBS液
をおき、カバーガラスをのせ蛍光顕微鏡により発色する
バクテロイデス・ジンジバリス菌を10視野数え測定し
た。また、このリンガー液0.5mlを、実験2と同様の反
応系を用い、同様にして水解活性を測定した。 添加剤としては、システイン塩酸塩とジイソプロピル
フルオルリン酸との混合物を実験2と同様の濃度で用い
た。 結果を第2図に示す。 第2図に示すごとく、水解活性は添加剤を加えること
により、バクテロイデス・ジンジバリス量、臨床所見と
相関する。 実施例1 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリンの20mM
蒸留水溶液を調製し、基質溶液とした。 0.2Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)を調整し、緩衝液
として用いた。 20mMシステムイン塩酸塩と4mMジイソプロピルフルオ
ルリン酸を含有する蒸留水溶液を調製し、添加剤溶液と
した。 これらを組合せて、本発明の歯周病原性菌検査薬キッ
トとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の診断ある
いは予測に用いることができる。 被検者の歯肉溝にペーパーポイントを30秒間挿入して
検体を採取する。基質溶液0.1mlおよび緩衝液0.9mlを混
合し、これに検体を添加剤溶液で懸濁し20分間放置した
ものを1ml加え、37℃で一昼夜反応させる。。反応終了
後、色調を肉眼観察する。検体を添加しない対照と比較
し、褐色の強弱を判定する。黄色の呈色はバクテロイデ
ス・ジンジバリスの感染を意味する。 実施例2 N−ベンゾイル−アルギニン−4−メトキシ−2−ナ
フチルアミド5ミリモルをペーパーティスク(径0.6c
m)に含浸させて基質試薬を調整した。 0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を調整し、緩衝液として
用いた。 10%ツィーン20を含有する1M酢酸緩衝液(pH4.0)に
ジアゾニウム塩ガーネットGBCを0.5mg/mlの濃度で溶解
し、発生試薬とした。 これらと、実施例1におけると同様に調製した添加剤
溶液を組合せて、本発明の歯周病原性菌検査薬キットと
した。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 緩衝液400μと添加剤溶液400μをバイアル瓶に入
れ、これに被検者から採取した混合唾液100μを加
え、さらに基質試薬のペーパーディスクを加え、37℃で
4時間反応させる。反応終了後、発色試薬を加え、実施
例1と同様に肉眼観察して判定する。赤色の呈色はバク
テロイデス・ジンジバリスの感染を意味する。 実施例3 N−カルボベンゾキシ−アルギニン−β−ナフチルア
ミド5ミリモルをアンプル(内径5mm、長さ3cm)内で凍
結乾燥させて基質試薬とした。 0.05Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)を調製し、緩衝液
とした。 10%ツィーン20を含有する1M酢酸緩衝液(pH4.2)に
ジアゾニウム塩ファーストブルーBを1mg/mlの濃度で溶
解し、発色試薬とした。これらと実施例1におけると同
様に調製した添加剤溶液を組合せて、本発明の歯周病原
性菌検査薬キットとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 被検者の歯肉溝にペーパーストリップを30秒間挿入し
て検体を採取する。緩衝液1mlを基質含有アンプルに入
れ基質を溶解させる。これに検体を添加剤溶液で懸濁し
20分間放置したもをを1ml加え、37℃で一昼夜反応させ
る。反応終了後、発色試薬0.8mlを加え、実施例2と同
様に肉眼観察して判定する。 実施例4 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロフェノールを0.
05Mリン酸緩衝液(pH7.2)で200ナノモル/mlとなるよう
に調整し、これに添加剤として200ナノモル2−メルカ
プトエタノールおよび40ナノモルジイソプロピルフルオ
ルリン酸を加え、その100μを円形ろ紙(径1cm)に含
浸乾燥させ、キュベット(内径1cm)底に挿入したもの
を、本発明の歯周病原性菌検査薬キットとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 被検者から採取した混合唾液100μをキュベットに
加え、37℃で4時間反応させる。反応終了後、実施例1
と同様に肉眼観察して判定する。 発明の効果 本発明の検査薬を用いれば、特殊な設備や高度な技術
を必要とせずに、簡便かつ迅速に歯周疾患の罹患や進行
を観客的に診断あるいは予測することができ、これによ
り、歯周疾患の治療や予防を適切に行なうことができ
る。
病巣から採取した検体中の歯周病原性菌である、バクテ
ロイデス・ジンジバリスを特異的に、かつ、簡便、迅速
に検出できる検査薬に関する。 従来の技術および問題点 近年、歯周疾患に関する細菌学的研究が進み、歯周疾
患病巣部に多くのスピロヘータが検出され、種々の臨床
的指標と高い相関性を示すことが判明している。また、
嫌気性のグラム陰性桿菌が主要な歯周疾患の原因菌であ
ることも判明しており、その中でも特に、バクテロイデ
ス・シンジバリス(Bacteroides gingivalis)などの
黒色色素産生バクテロイデス(Black−pigmented Bacte
roides)が注目され、その病原性について多数の報告が
なされている。 そこで、口腔内におけるこれらの原因菌の存在を検知
し、歯周疾患の罹患や進行を診断あるいは予測し、歯周
疾患の治療、予防に、臨床的に応用する試みがなされて
いる。 しかしながら、細菌学的方法によるこれらの原因菌の
検知には、暗視野顕微鏡の使用、嫌気性菌の取扱という
高度な技術、特殊の設備等を必要とし、操作が煩雑で、
培養や結果の判断にも長い時間や熟練を要するという欠
点があり、臨床的に実用化するには困難な点が多い。ま
た、免疫学的な面から、これらの原因菌に対する液性免
疫である血中の抗体価を測定したり、細胞性免疫である
リンパ球幼若化反応を測定し、原因菌の存在を検知する
試みもなされているが、検体試料の調整に煩雑な操作を
必要とする問題があり、やはり、実用化はなかなか困難
である。 このような事情にかんがみ、本発明者らは、臨床的に
実用化できる歯周疾患原因菌の検知を可能とすべく鋭意
研究を重ねた。その結果、バクテロイデス・ジンジバリ
スが非常に特異的なペプチダーゼ様酵素活性を有し、あ
る種の基質に用い、これにチオール化合物およびジイソ
プロピルフルオルリン酸を添加することにより、この酵
素活性を特異的に、かつ、簡便、迅速に検出することを
見出した。 これまで、口腔内のスピロヘータやバクテロイデス・
ジンジバリスがトリプシン様酵素やフィブリン分解酵素
を産生することは知られているが[ジャーナル・オブ・
クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of Clini
cal Microbiology),97〜102,1982年1月;マイクロバ
イオス・レターズ(Microbios Letters),25,157〜16
0,1984年;ジャーナル・オブ・ペリオドンタル・リサー
チ(Journal of Periodontal Research),21,95〜100,
1986年]、臨床症状との相関性や検出の特異性の点でこ
れらの酵素を指標とすることは困難である。 問題点を解決するための手段 本発明は、液体中のペプチダーゼ様酵素活性を測定す
ることにより、歯周病原性菌を検出するための検査薬で
あって、 式:X−Arg−Y [1] [式中、Argはアルギニン残基、Xはフェニル骨格を持
つアミノ酸保護基、Yはアルギニン残基のC末端に結合
する発色基を意味する] で示される化合物を該酵素の基質とし、これにチオール
化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を添加して
なることを特徴とする歯周病原性菌検査薬を提供するも
のである。 本発明の検査薬を用いれば、唾液、歯垢、歯肉溝浸出
液などのような検体を、好ましくは、pH6.9〜9.0の条件
下、式[1]の基質と反応させ、その水解活性の強弱を
発色反応により測定することにより、簡便かつ迅速に、
歯周病原性菌を検出することができる。 基質として用いる式[1]の化合物は公知であるか、
少なくとも、公知のペプチド合成法によって容易に製造
できるものであり、式[1]のX基で示されるアミノ基
保護基はペプチド合成に用いられる公知のアミノ基保護
基のうちでフェニル骨格を持つものであればいずれのも
のでもよく、例えば、ベンゾイル基、カルボベンゾキシ
基、p−トルエンスルホニル、p−メトキシベンゾイル
オキシカルボニ基などが挙げられる。 Y基の発色基は、発色による酵素活性の測定(紫外
線、可視部、赤外線の吸収、蛍光の測定によるものを包
含する)に用いられるものいずれでもよく、例えば、β
−ナフチルアミン、4−メトキシ−2−ナフツルアミ
ン、p−ニトロアニリン、p−ニトロフェノール、7−
アミノ−4−メトキシクマリン、5−アミノイソフタル
酸ジメチルエステル、7−アミノ−4−トリフルオロメ
チルクマリンなどから由来する基が挙げられる。特に、
適当な発色試薬により、肉眼的に判定可能な発色を示す
β−ナフチルアミン、4−メトキシ−2−ナフチルアミ
ン、p−ニトロアニリン、p−ニトロフェノール由来の
基が好ましい。 添加剤として用いるチオール化合物としては、分子構
造中に、チオール基を有するものであればいずれのもの
でもよいが、好ましくは、システイン、ジチオスレイト
ール、メルカプトエタノールなどが挙げられる。また、
他の添加剤として、ジイソプロピルフルオルリン酸を用
いる。 本発明の検査薬は、式[1]の化合物が検体由来のペ
プチダーゼ様酵素の基質として反応できる形態のもので
あればいずれでもよく、もっとも基本的には、式[1]
の化合物の水溶液にオチール化合物およびジイソプロピ
ルフルオルリン酸を添加したものでよく、好ましくは、
測定時、pH6.0〜9.0となるように緩衝剤を含有させる。
用いる緩衝剤は通常用いられるものであればいずれでも
よく、例えば、トリス塩酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ
酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤、HEPES緩衝剤などを用い
ることができる。該水溶液は式[1]の化合物、チオー
ル化合物およびジイソプロピルフルオルソン酸、およ
び、所望により、緩衝剤を蒸留水に溶解するような公知
の方法で製造することができ、要すれば、さらに、防腐
剤、坑生物質などの他の添加物を適宜配合することがで
きる。 式[1]の化合物の最終濃度100nM〜100mMの範囲、チ
オール化合物の最終濃度1mM〜100mM、ジイソプロピルフ
ルオルリン酸の最終濃度0.1mM〜20mM、また、緩衝剤は
最終濃度1mM〜1Mの範囲で使用することが好ましく、前
記の水溶液は、これらの濃度の式[1]の化合物、チオ
ール化合物、ジイソプロピルフルオルリン酸および所望
により緩衝剤を含有し、そのまま直接、検査に供するこ
とのできる形態にすることができ、あるいは、使用時、
適宜蒸留水で所望の濃度に希釈する濃厚液の形態とする
ことができる。 本発明の検査薬には、これらの水溶液の形態のもの
を、さらに、公知の方法により乾燥粉末化、顆粒化した
もののごとき固形の形態のもの、粉末成分を混合した粉
末、その顆粒化物のごとき固形の形態のもの、あるい
は、液状の形態のものをろ紙、ペーパーディスク、スポ
ンジ、高分子物などの担体に含浸させるものも包含され
る。 さらに、本発明の検査薬には、式[1]の化合物、チ
オール化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を含
有する試薬と、緩衝剤、発色試薬などの他の試薬を組合
わせてなるキットも包含される。 発色試薬は、式[1]の化合物におけるY基に応じて
適宜選択でき、Yがβ−ナフチルアミン、4−メトキシ
−2−ナフチルアミン、p−ニトロアニリン、p−ニト
ロフェノール由来の基の場合、例えば、ファーストガー
ネットGBCやファーストブルーBBあるいはこれらのジア
ゾニム塩や塩化亜鉛との塩のごとき塩などを、水エタノ
ール、酢酸緩衝液、2−メトキシエタノールあるいはこ
れらの混合溶液などに0.01〜5重量%の濃度で溶解した
溶液や、0.5〜5Mの水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、酢酸などの水溶液が用いられる。これらの溶液また
はその濃厚液、さらには固形化物を式[1]の化合物、
チオール化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を
含有する試薬と組合わせてキットとして用いることがで
きる。 本発明の検査薬を用いて検査を行なうには、まず、検
体を採取する。検体の採取は公知の方法で行なってもよ
く、例えば、歯肉溝浸出液や唾液はろ紙、キャピラリ
ー、ペーパーポイントなどで採取でき、歯垢は綿棒、キ
ュレット、スケラーなどで採取できる。 ついで、式[1]の化合物最終混合濃度100nM〜100m
M,チオール化合物の最終濃度1mM〜100mMおよびジイソプ
ロピルフルオルリン酸の最終濃度0.1mM〜20mMに調整し
た本発明の検査薬と検体を、例えば、試験薬、マイクロ
タイタープレート、セル、バイアル瓶、プラスチック・
キュベットなどの中で接触させ、好ましくは、pH6.9〜
9.0で水解反応を行なわせる。この反応は、通常25〜45
℃でおこなわれ、反応時間は検体や反応温度により異な
るが、37℃で15分〜72時間程度の反応が好ましい。 反応終了後、必要であれば、発色試薬を添加し、発色
の有無・強弱を肉眼あるいは分光光度計や蛍光光度計で
判定し、これにより、検体中のペプチダーゼ様酵素活性
の有無・強弱を判断し、歯周疾患の罹患や進行を診断あ
るいは予測する。 実験および実施例 つぎに、実験および好ましい実施例を挙げて本発明を
さらに詳しく説明する。 実験1 格種口腔内嫌気性細菌のペプチダーゼ様酵素活性 口腔内の嫌気性細菌であるトレポネーマ・デンティコ
ーラ(Treponema denticola)4株、バクテロイデス・
ジンジバリス5株、バクテロイデス・インターミーディ
アス(Bacteroides intermedius)3株、バクテロイデ
ス・コーポリス(Bacteroides corporis)2株、バクテ
ロイデス・メラニノジェニカス(Bacteroides melanino
genicus)3株、バクテロイデス・デンティコーラ(Bac
teroides denticola)2株、アクチノマイセス・イスラ
エリー(Actinomyces isralli)2株、アクチノバチル
ス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus a
ctinomycetemcomitans)4株およびフソバクテリウム・
ヌクレータム(Fusobacterium nucleatum)3株のペプ
チダーゼ様酵素基質に対する水解活性をつぎのとおり測
定した。 トレポネーマ属の細菌はTYGVS培地を用い、37℃で7
日間、他の細菌はブレイン・ハート・インフュージョン
・ブロスを用い、37℃で48〜72時間嫌気的に培養し、培
養液を希釈して、各々、660nmにおける吸光度が1.0の細
菌懸濁液を調製した。 種々の発色基を有するペプチダーゼ様酵素の基質化合
物を、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)に20mMの濃度で
溶解し、基質溶液を調製した。 この基質溶液1.5mlに、前記の細菌懸濁液0.5mlを加
え、37℃で60分間反応させた。反応終了後、β−ナフチ
ルアミン由来の発色基を有する基質には、発色試薬(10
%ツィーン20を含有するIM酢酸緩衝液(pH4.2)にジア
ゾニウム塩ガーネットGBCを0.5mg/mlの濃度で溶解して
調整)0.6mlを加え、15分後に525nmにおける吸光度を分
光光度計にて測定した。また、パラニトロアニリン由来
の発色基を有する基質は、そのままの状態で410nmにお
ける吸光度を分光光度計にて測定した。 水解活性は、各細菌のβ−ナフチルアミン遊離量およ
びパラニトロアニリン遊離量の平均値に基づき、つぎの
とおり表示した。 −:遊離量<5ナノモル/ml ±:遊離量5〜<10ナノモル/ml +:遊離量10〜<20ナノモル/ml ++:遊離量20〜<40ナノモル/ml +++:遊離量40〜<80ナノモル/ml ++++:遊離量80ナノモル/ml以上 結果を第1表に示す。第1表中、基質化合物の略号は
つぎのとおりである。 BzAβna:ベンゾイル−アルギニン−β−ナフチルアミド CxAβNA:N−カルボベンゾキシ−アルギニン−β−ナフ
チルアミド BzApNA:ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリド CxApNA:N−カルボベンゾキシ−p−ニトロアニリド BzApNP:ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロフェノー
ル CzApNP:N−カルボベンゾキシ−p−ニトロフェノール 第1表に示すごとく、口腔内嫌気性細菌のうち、歯周
疾患原因菌であるスピロヘータ(トレポネーマ・デンテ
ィコーラ)およびバクテロイデス・ジンジバリスが特異
的にペプチダーゼ様酵素活性を示し、式[1]で示され
る化合物を特異的に水解する。 実験2 バクテロイデス・ジンジバリスおよびトレポネーマ・デ
ンティコーラの各種添加剤存在下での、ベンゾイル−ア
ルギニン−p−ニトロアニリド水解活性−1 歯周病原性菌であるバクテロイデス・ジンジバリス5
株およびトレポネーマ・デンティコーラ4株を用い、各
種添加剤存在下での、ベンゾイル−アルギニン−p−ニ
トロアニリド水解活性を測定した。 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリドを0.1M
トリス塩酸緩衝液(pH7.0)に10mMの濃度で溶解し、基
質溶液を調製した。 添加剤は、10mMシステイン塩酸塩、2mMジイソプロピ
ルフルオルリン酸および10mMシステイン塩酸塩と2mMジ
イソプロピルフルオルリン酸を混合したものを調製し、
基質溶液1.5mlに対して、添加剤0.5mlおよび菌懸濁液0.
5mlを加えた後、37℃で24時間反応させた。該菌懸濁液
は、菌数をそれぞれ2.5、5.0、7.5、10.0×106個/50μ
に調製したものを用いた。反応終了後、反応液の410n
mにおける吸光度を分光光度にて測定した。 結果を第1図に示す。図中の添加剤の略号はつぎのと
おりである。 n0:添加剤無添加 Cys:システイン塩酸塩 DFP:ジイソプロピルフルオルリン酸 第1図に示すごとく、ある種の添加剤を加えることに
より、バクテロイデス・ジンジバリスを特異的に検出す
ることができる。 実験3 バクテロイデス・ジンジバリスおよびトレポネーマ・デ
ンティコーラの各種添加剤存在下での、ベンゾイル−ア
ルギニン−p−ニトロアニリド水分解活性−2 実験2と同様の反応系を用いて、添加剤の種類を変え
て、各種添加剤存在下での、ベンゾイル−アルギニン−
p−ニトロアニリド水分解活性を測定した。 水解活性は、各細菌のパラニトロアニリン遊離量の平
均値に基づき、つぎのとおり表示した。 −:遊離量<5ナノモル/ml ±:遊離量5〜<10ナノモル/ml −:遊離量10〜<20ナノモル/ml ++:遊離量20〜<40ナノモル/ml +++:遊離量40〜<80ナノモル/ml 結果を第2表に示す。表中の添加剤の略号はつぎのと
おりである。 n0:添加剤無添加 Cys:システイン塩酸塩 DTT:ジチオスレイトール ME:2−メルカプトエタノール DFP:ジイソプロピルフルオルリン酸 第2表に示すごとく、チオール化合物とジイソプロピ
ルフルオルリン酸を併用することにより、バクテロイデ
ス・ジンジバリスを特異的に検出することができる。 実験4 臨床所見との相関−1 臨床所見上、健常であると認められる者15名および歯
周炎患者20名から、各々、滅菌スケーラーにより歯肉縁
下歯垢検体を採取し、リンガー液1.5mlに分散し菌懸濁
液を調製した。この菌懸濁液10μをスライドガラス上
におき、自然乾燥させたものをPBSにて材料表面を湿ら
せた後、FITC(蛍光色素)を結合させたウサギ抗バクテ
ロイデス・ジンジバリス381血清10μをのせ、1時間
室温でインキュベートした。その後、glycerol−PBS液
をおき、カバーガラスをのせ蛍光顕微鏡により発色する
バクテロイデス・ジンジバリス菌を10視野数え測定し
た。また、このリンガー液0.5mlを、実験2と同様の反
応系を用い、同様にして水解活性を測定した。 添加剤としては、システイン塩酸塩とジイソプロピル
フルオルリン酸との混合物を実験2と同様の濃度で用い
た。 結果を第2図に示す。 第2図に示すごとく、水解活性は添加剤を加えること
により、バクテロイデス・ジンジバリス量、臨床所見と
相関する。 実施例1 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロアニリンの20mM
蒸留水溶液を調製し、基質溶液とした。 0.2Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)を調整し、緩衝液
として用いた。 20mMシステムイン塩酸塩と4mMジイソプロピルフルオ
ルリン酸を含有する蒸留水溶液を調製し、添加剤溶液と
した。 これらを組合せて、本発明の歯周病原性菌検査薬キッ
トとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の診断ある
いは予測に用いることができる。 被検者の歯肉溝にペーパーポイントを30秒間挿入して
検体を採取する。基質溶液0.1mlおよび緩衝液0.9mlを混
合し、これに検体を添加剤溶液で懸濁し20分間放置した
ものを1ml加え、37℃で一昼夜反応させる。。反応終了
後、色調を肉眼観察する。検体を添加しない対照と比較
し、褐色の強弱を判定する。黄色の呈色はバクテロイデ
ス・ジンジバリスの感染を意味する。 実施例2 N−ベンゾイル−アルギニン−4−メトキシ−2−ナ
フチルアミド5ミリモルをペーパーティスク(径0.6c
m)に含浸させて基質試薬を調整した。 0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)を調整し、緩衝液として
用いた。 10%ツィーン20を含有する1M酢酸緩衝液(pH4.0)に
ジアゾニウム塩ガーネットGBCを0.5mg/mlの濃度で溶解
し、発生試薬とした。 これらと、実施例1におけると同様に調製した添加剤
溶液を組合せて、本発明の歯周病原性菌検査薬キットと
した。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 緩衝液400μと添加剤溶液400μをバイアル瓶に入
れ、これに被検者から採取した混合唾液100μを加
え、さらに基質試薬のペーパーディスクを加え、37℃で
4時間反応させる。反応終了後、発色試薬を加え、実施
例1と同様に肉眼観察して判定する。赤色の呈色はバク
テロイデス・ジンジバリスの感染を意味する。 実施例3 N−カルボベンゾキシ−アルギニン−β−ナフチルア
ミド5ミリモルをアンプル(内径5mm、長さ3cm)内で凍
結乾燥させて基質試薬とした。 0.05Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)を調製し、緩衝液
とした。 10%ツィーン20を含有する1M酢酸緩衝液(pH4.2)に
ジアゾニウム塩ファーストブルーBを1mg/mlの濃度で溶
解し、発色試薬とした。これらと実施例1におけると同
様に調製した添加剤溶液を組合せて、本発明の歯周病原
性菌検査薬キットとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 被検者の歯肉溝にペーパーストリップを30秒間挿入し
て検体を採取する。緩衝液1mlを基質含有アンプルに入
れ基質を溶解させる。これに検体を添加剤溶液で懸濁し
20分間放置したもをを1ml加え、37℃で一昼夜反応させ
る。反応終了後、発色試薬0.8mlを加え、実施例2と同
様に肉眼観察して判定する。 実施例4 ベンゾイル−アルギニン−p−ニトロフェノールを0.
05Mリン酸緩衝液(pH7.2)で200ナノモル/mlとなるよう
に調整し、これに添加剤として200ナノモル2−メルカ
プトエタノールおよび40ナノモルジイソプロピルフルオ
ルリン酸を加え、その100μを円形ろ紙(径1cm)に含
浸乾燥させ、キュベット(内径1cm)底に挿入したもの
を、本発明の歯周病原性菌検査薬キットとした。 このキットは、つぎのようにして歯周疾患の検査ある
いは予測に用いることができる。 被検者から採取した混合唾液100μをキュベットに
加え、37℃で4時間反応させる。反応終了後、実施例1
と同様に肉眼観察して判定する。 発明の効果 本発明の検査薬を用いれば、特殊な設備や高度な技術
を必要とせずに、簡便かつ迅速に歯周疾患の罹患や進行
を観客的に診断あるいは予測することができ、これによ
り、歯周疾患の治療や予防を適切に行なうことができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、各種添加剤存在下でのベンゾイル−アルギニ
ル−p−ニトロフェノールの水解活性を測定した結果を
示すグラフ、第2図は、ベンゾイル−アルギニル−p−
ニトロフェノールの水解活性と細菌数の相関を示すグラ
フである。
ル−p−ニトロフェノールの水解活性を測定した結果を
示すグラフ、第2図は、ベンゾイル−アルギニル−p−
ニトロフェノールの水解活性と細菌数の相関を示すグラ
フである。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.検体中のペプチダーゼ様酵素活性を測定することに
より、歯周病原性菌を検出するための検査薬であって、 式:X−Arg−Y [1] [式中、Argはアルギニン残基、Xはフェニル骨格を持
つアミノ酸保護基、Yはアルギニン残基のC末端に結合
する発色基を意味する] で示される化合物を該酵素の基質とし、これにチオール
化合物およびジイソプロピルフルオルリン酸を添加して
なることを特徴とする歯周病原性菌検査薬。 2.該チオール化合物がシステイン、ジチオスレイトー
ルおよびメルカプトエタノールのうちから選ばれる1種
または2種以上である前記第(1)項の歯周病原性菌検
査薬。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30167587A JP2662227B2 (ja) | 1987-11-30 | 1987-11-30 | 歯周病原性菌検査薬 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP30167587A JP2662227B2 (ja) | 1987-11-30 | 1987-11-30 | 歯周病原性菌検査薬 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH01144997A JPH01144997A (ja) | 1989-06-07 |
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Family
ID=17899777
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP6449136B2 (ja) * | 2015-11-25 | 2019-01-09 | アドテック株式会社 | 歯周病原因菌の分析方法 |
US20220205011A1 (en) * | 2019-04-25 | 2022-06-30 | Adtec Co., Ltd. | Method for detecting periodontopathic bacteria |
CN114174528A (zh) * | 2019-08-07 | 2022-03-11 | 学校法人东京齿科大学 | 判别方法、荧光测定装置和检查剂 |
JP7430313B2 (ja) * | 2021-02-04 | 2024-02-13 | 学校法人東京歯科大学 | 歯周病の原因菌を判別する試薬、菌種判別方法、口臭リスク判定方法および蛍光測定装置 |
JP7479610B2 (ja) * | 2021-02-04 | 2024-05-09 | 学校法人東京歯科大学 | 判別方法および蛍光測定装置 |
-
1987
- 1987-11-30 JP JP30167587A patent/JP2662227B2/ja not_active Expired - Lifetime
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