JP2659815B2 - 転炉内用金属固着防止剤 - Google Patents

転炉内用金属固着防止剤

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は転炉内用金属固着防止剤に係り、特に転炉内
の溶融金属内に挿入されるランス等に溶融金属が付着し
て固化するのを有効に防止する転炉内用金属固着防止剤
に関する。
〔従来の技術〕
一般に、転炉には内部に酸素を吸込むためのメインラ
ンスと、溶鋼からなる溶融金属中の酸素濃度を測定する
ためのサブランスとが、所定のランス挿入孔より挿入、
引出し自在にして設けられている。一方のサブランスに
おいては、下端部に酸素濃度測定用の酸素濃度センサが
着脱自在に装着されるようになっており、その酸素濃度
センサを転炉内の溶融金属中に浸漬させて酸素濃度を定
期的もしくは必要に応じて計測している。この酸素濃度
センサは、測定時に溶融金属中に浸漬されるため、再使
用できなくなるので、次回の測定のためにサブランスを
転炉外へ引抜いた後に新たなものと交換される。
ところが、これらのランスには吹き上げられた溶融金
属飛沫が付着して固化したり、サブランスのように溶融
金属中へ浸漬されるため必然的に溶融金属が付着して固
化する。このようにしてランスの外面に金属が固着され
ると、酸素濃度センサの交換が不可能となったり、ラン
ス挿入口よりランスを転炉外へ引出すことが不可能とな
ったりする。
そのため、従来から、サブランスの酸素濃度センサの
装着部および溶融金属中への浸漬部分や、メインランス
の下方部分等に、転炉内への挿入前に離型剤を予め塗布
しておき、付着した溶融金属を剥離し易い状態にしてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、従来の離型剤は金属が強固にランス等
に固着するのを防止できるが、固着した金属を極めて簡
単に剥離させることができず、剥離性の優れた転炉内用
金属固着防止剤の開発が望まれていた。
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、剥
離性に優れており、金属の固着を完全に阻止して、サブ
ランスへの酸素濃度センサの交換を極めて容易とした
り、メインランスの健全性を確保することのできる転炉
内用金属固着防止剤を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の転炉内用金属固着防止剤は、転炉内で使用さ
れる部材の表面に塗布するものであって、黒鉛粉末と、
有機成分を含有する結合剤とを有し、他を水とした糊状
を呈することを特徴とする。
また、請求項第2項によれば、結合剤の有機成分は、
でんぷんからなることを特徴としている。
また、請求項3によれば、黒鉛粉末を20〜60重量部、
結合剤としてのでんぷん糊を10〜40重量部および他を水
としたことを特徴とする。
〔作用〕
本発明によれば、糊状を呈しているのでランス等に簡
単に塗布することができる。また、転炉内用金属固着防
止剤内に含まれている黒鉛粉末が溶融金属に触れること
により激しく酸化されて二酸化炭素となるため、ランス
に付着した金属とランスの外面との間に空隙が形成され
る。この空隙が付着した金属の簡単な剥離を可能とさ
せ、剥離性能が大きく向上される。
更に、結合剤中にでんぷん等の有機成分を有するため
に、その有機成分も激しく酸化されて、前記空隙形成を
助長し、剥離性を一層向上させることとなる。
また、黒鉛粉末を20〜60重量部、結合剤としてのでん
ぷん糊を10〜40重量部および他を水とすることにより、
塗布しやすい糊状となり、サブランスの酸素濃度センサ
の装着部に塗布して用いれば、溶融金属は全く固着され
ず、極めて剥離性の優れたものとなる。
〔実施例〕
本発明の転炉内用金属固着防止剤は、黒鉛粉末とこの
粉末を連結して全体を糊状とする結合剤とを主成分とし
ている。
本発明の転炉内用金属固着防止剤は、糊状であるた
め、簡単にランス等の必要箇所に塗布することができる
とともに、その塗布厚を自由に調整することができる。
また、転炉内で高温の溶融金属が本発明の転炉内用金属
固着防止剤の外側に付着すると、黒鉛粉末は転炉内雰囲
気中の酸素により激しい酸化を受けて二酸化炭素とな
り、付着した溶融金属とランスの外周面とに空隙を形成
し、溶融金属が直接ランスの外周面に固着するのを確実
に阻止し、溶融金属は極めて簡単に剥離される。
また、前記結合剤の一部としてでんぷん等の有機物を
含有させているために、有機物が同様にして激しい酸化
を受け、一部は二酸化炭素となって黒鉛粉末による空隙
生成を更に助長し、一部は水となって結晶層間のすべり
を良好とさせ、付着した溶融金属の剥離を一層容易とさ
せ、一部は炭化して衝撃に対してもろくなり、一層剥離
を容易とさせる。
本発明の転炉内用金属固着防止剤は、前記作用を満す
ものであれば、どのような組成のものでもよく、本実施
例においては、黒鉛粉末を20〜60重量部、でんぷん糊を
10〜40重量部および他を水とした組成を混合して糊状と
して、サブランスの酸素濃度センサの装着部に塗布して
用いたところ、溶融金属は全く固着されず、極めて剥離
性の優れたものであった。
また、結合剤としては黒鉛粉末を混合して糊状とされ
るものであればよい。
また、でんぷん糊としては、水に溶解したときにでん
ぷん糊状を呈するものをいい、通常のでんぷん類の他
に、CMC(カルボキシメチルセルロース)やアルギン酸
ソーダ等も含まれる。また、けい酸アルミニウム、エチ
レングリコールを、糊に延展性や付着性を付与するため
に添加したり、界面活性剤や防腐剤を添加してもよい。
また、水の量はランス等への塗布性を勘案して、適量を
配合するとよい。
次に、本発明の転炉内用金属固着防止剤を転炉のサブ
ランスおよびメインランスに塗布した場合の金属固着防
止状態を第1図および第2図について説明する。
第1図は転炉の全体を略示している。転炉炉体1内底
部には溶鋼からなる溶融金属2が預留されている。この
転炉炉体1の上部開口3の上方には、排ガス回収用のOG
フード4が配設されており、このOGフード4の上壁部の
上部開口3の直上位置にはメインランス挿入口5および
サブランス挿入口6がそれぞれ開設されている。一方の
メインランス挿入口5より、メインランス7がOGフード
4および上部開口3を通して転炉炉体1内に挿入され、
酸素を溶融金属2に向けて吹込むようにされている。
他方のサブランス挿入口6より、下端に酸素濃度セン
サ9を装着されたサブランス8が同様にして転炉炉体1
内へ挿入され、酸素濃度センサ9を所定時間溶融金属2
内に浸漬させて、溶融金属2内の酸素濃度を測定するよ
うに形成されている。この酸素濃度センサ9は、第2図
に示すように、サブランス8の下端部に、嵌装もしくは
螺合により装着されるものであり、サブランス8の上下
動位置の近傍に配設されたセンサ自動交換機構10によっ
て自動的に交換される。このサブランス8に対する本発
明の転炉内用金属固着防止剤の塗布領域は、第2図に示
すように、サブランス8を転炉炉体1内に挿入した時に
溶融金属2が付着すると予測される上限位置より更に安
全率を見込んだ上限Aと、サブランス8への酸素濃度セ
ンサ9の装着部分であってセンサ自動交換機構10による
交換作業の支障にならない下限Bとの範囲である。この
塗布領域A−Bには、本発明の転炉内用金属固着防止剤
をはけ、こて、スプレー等によって塗布するものである
が、第1図においては、センサ自動交換機構10とOGフー
ド4との間に配設された金属固着防止剤塗布機構11によ
って、スプレー式に自動的に噴霧塗布されるようになっ
ている。メインランス7は溶融金属2内に浸漬されない
ので、下端部の溶融金属2の飛沫が付着すると予測され
る領域に本発明の転炉内用金属固着防止剤が塗布され
る。
この金属固着防止剤塗布機構11による塗布に用いられ
た本発明の転炉内用金属固着防止剤の組成は、前述した
ように、黒鉛粉末20〜60重量部、でんぷん糊10〜40重量
部その他は水としたものであり、塗布量100g/m2〜300g/
m2で塗布した。
このように本発明の転炉内用金属固着防止剤を塗布し
た後に、サブランス8を挿入して酸素濃度センサ9を転
炉炉体1の溶融金属2内に浸漬させて、溶融金属2内の
酸素濃度を測定した後に、サブランス8をサブランス挿
入口6からOGフード4外へ引出した。
このサブランス8の引出しの際において、サブランス
8の外周部に溶融金属2が多量に付着して固化すること
による引出し不能となることは皆無であった。
これは、本発明の転炉内用金属固着防止剤の黒鉛粉末
が激しく酸化されて二酸化炭素となり、溶融金属2が多
量にサブランス8に付着しようとすると、溶融金属2の
自重によりサブランス8から溶融金属2が剥離するよう
にして脱落するためである。
また、サブランス8の外周部に付着したまた引出され
た少量の溶融金属2は、冷却されて固化しているけれど
も、固化した金属とサブランス8との間には黒鉛粉末や
でんぷんが酸化して二酸化炭素となったことによる空隙
が形成されているとともに、剥離を容易とする水や炭化
物が介装されているので、固化した金属は極めて簡単に
サブランス8の外周部より剥離除去された。よって、セ
ンサ自動交換機構10による新たな酸素濃度センサ9との
交換作業が極めて円滑に行なわれた。
メインランス7についても、溶融金属2の飛沫が付着
しても、本発明の転炉内用金属固着防止剤により極めて
簡単にメインランス7の外周部より剥離除去され、従来
のような不都合は何ら発生しなかった。
なお、第1図および第2図に示す場合は、転炉の溶融
金属2がメインランス7およびサブランス8に固着する
のを防止するものであるが、本発明の転炉内用金属固着
防止剤は他の場合における溶融金属の付着、固化を防止
する場合にも同様にして用いることができる。
また、本発明は前記実施例に限定されるものではな
く、必要に応じて変更することができる。
〔発明の効果〕
このように本発明の転炉内用金属固着防止剤は、構成
され作用するものであるから、転炉内という極めて苛酷
な環境下においても剥離性に優れており、金属の固着を
完全に阻止して、サブランスへの酸素濃度センサの交換
を極めて容易としたり、メインランスの健全性を確保す
ることのできる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の転炉内用金属固着防止剤を塗布するラ
ンスが備えられている転炉の概略構成図、第2図はサブ
ランスの要部拡大図である。 1…転炉炉体、2…溶融金属、5…メインランス挿入
口、6…サブランス挿入口、7…メインランス、8…サ
ブランス、9…酸素濃度センサ、11…金属固着防止剤塗
布機構。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】転炉内で使用される部材の表面に塗布する
    ための転炉内用金属固着防止剤であって、黒鉛粉末と、
    有機成分を含有する結合剤とを有し、他を水とした糊状
    を呈する転炉内用金属固着防止剤。
  2. 【請求項2】有機成分はでんぷんからなることを特徴と
    する請求項第1項に記載の転炉内用金属固着防止剤。
  3. 【請求項3】黒鉛粉末を20〜60重量部、結合剤としての
    でんぷん糊を10〜40重量部および他を水としたことを特
    徴とする請求項第1項に記載の転炉内用金属固着防止
    剤。
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