JP2647427B2 - 被検者の病態の判定のための検出方法、モノクロ−ナル抗体および検出キット - Google Patents

被検者の病態の判定のための検出方法、モノクロ−ナル抗体および検出キット

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の技術分野 本発明は被検者の体液中の抗腫瘍壊死因子抗体−反応
性物質の検出による被検者の病態の判定のための検出方
法、その検出方法に使用することが可能なモノクローナ
ル抗体および病態を判定するための検出キットに関す
る。更に詳しく説明すると、被検者の体液中の腫瘍壊死
因子(TNF)を、それに対する抗体を用いて検出し、そ
の病態の進行の判定を行う検出方法、その抗体として使
用することができる抗TNFモノクローナル抗体および、
前記検出方法に用いられる検出キットに関する。
従来技術 腫瘍壊死因子(TNF)はCD−1 SwissマウスにBacillus
Calmette−Guerin(BCG)菌を投与し、その2週間後に
細菌内毒素(エンドトキシン)を投与した際に血中に現
われる生理活性物質として発見され、1975年にCarswell
らが報告[E.A.Carswellら,Proc.Nat1.Acad,Sci.,USA,7
2,3666(1975)]した生理活性蛋白質で、そのアミノ酸
配列は1985年にAggarwalら[B.B.Aggarwalら,J.Biol.Ch
em.260,2345(1985)]により明らかにされている。
またPennica et al,Shirai et alおよびWang et alに
よって、ヒトTNFのアミノ酸配列および遺伝子配列が明
らかにされた[Pennica et al Nature 312,724(198
5),Shirai et al Nature 313,803(1985),Wang et al
Sience 228,149(1985)]。当初その抗腫瘍活性か
ら、癌治療薬としての開発が進められているTNFは、最
近種々の生理活性が明らかにされ、生体内での諸機能が
解明されつつある。
例えば、細菌感染によるエンドトキシンショックの生
体内のメディエイターとしての活性[B.BeutlerらScien
ce,229,869(1985)],血管内皮細胞への炎症反応の惹
起[J.R.Gambleら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,8667
(1985)],発熱作用[C.A.DinarelloらJ.Exp.Med.16
3,1443,(1986)],炎症の起因物質のひとつであるイ
ンターリウキン1[PP.NawrothらJ.Exp.Med.,163,1363,
(1986)]やプロスタグランジン類[P.R.Backwichら,B
iochem.Biophys.Res.Comm.136,94(1986)]の産生誘導
などが挙げられる。
このような多くの研究結果が明らかになるにつれ、TN
Fは、種々の生理作用を促す生体内の情報伝達物質とし
て、ホルモン様の作用を有すると考えられる。その結果
本発明者らはTNFの生体内における異常亢進,減少など
の量的変化は、多くの疾患の病態と関連する可能性が示
唆され、血液などの体液中のTNFの存在およびその量を
測定することは、多くの疾患のモニターリングに有益で
あると推察するに至った。
一方本発明者らの研究によれば、或る種の病気の患者
の体液中には、TNFが含まれており、そのTNFの含有量と
その患者の病態の進行には深い関係があること、従って
体液中のTNFの含有量を正確に検出しその量的変化を測
定することにより病態の変化、殊に悪化を或る程度予測
できること、そのような変化や悪化になる前に予防また
は治療手段を講じることにより、患者の病気の亢進を阻
止でき、時には回復させることができることがわかっ
た。
殊に本発明者らの研究によれば、後述するように病気
の判定およびその進行のチェックが極めて困難である川
崎病や、細菌感染症の患者の体液中にはTNFが健常人よ
りも多量に含まれており、そのTNF量およびその変化
は、これら病態の進行に密接に関係していることが判っ
た。従って、これら病気の患者の体液中のTNFの含有量
を正確に且つ早く測定することはこれら患者の病態の進
行をチェックする上極めて重要である。
川崎病(急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群;Infantile
acute febrile mucocutaneous−lymphnode−syndrome;
MCLS)は、1967年に川崎が報告[T.川崎,“アレルギ
ー",16,178(1967)]した小児に好発する原因不明の疾
患で、5日以上続く発熱、手足の硬性浮腫,掌蹠ないし
は指趾先端の紅班,回復期の指先からの模様落屑,口唇
の乾燥,紅顔,亀裂,イチゴ舌,口腔粘膜の発赤,体幹
の発振,眼球結膜の充血,頚部リン節腫張などの症状の
多くを伴うことを特徴とする疾患である。
川崎病の診断は、[T.川崎,“小児科”26,985(198
5)]を基準にして行なわれるが、病因が不明な上に、
主要症状の組合せにより診断される疾患である為、確定
診断することが、極めて難しい疾患である。とりわけ本
疾患における冠動脈瘤の形成は、本疾患における死因の
主たるもので、川崎病の進行に伴なう冠動脈瘤の形成を
事前に予測しうるような病態の指標を見い出すことは、
緊急かつ重要な課題であった。
本発明者らは、川崎病患者の体液(例えば血清)を測
定したところ、冠動脈瘤形成に至るかも知れないような
比較的重い症状の川崎病患者において、その血清中にTN
Fが顕著に検出されることが見出された。
さらに、本発明者らは、細菌感染症患者の体液(例え
ば血清)を測定したところ、その中の白血球数,血小
板,C反応性蛋白質の量の変化とよく対応し、TNFが検出
されること、従って細菌感染症の症状の診断において、
体液中のTNFの測定を行なうことはその診断、病態の進
行の判断に極めて有意義であることが判った。
発明の構成 本発明は、前記した新しい知見に基いて到達されたも
のであって、抗腫瘍壊死因子抗体を用い免疫学的測定法
により、被検者から採取した体液中の抗腫瘍壊死因子抗
体−反応性物質を検出することを特徴とする被検者の体
液中の抗腫瘍壊死因子抗体−反応性物質の検出による被
検者の病態の判定のための検出方法である。
かくして本発明によれば、病気にかかった患者または
その疑いのある被検者の体液を採取し、その中に含まれ
る抗腫瘍壊死因子抗体−反応性物質、具体的には腫瘍壊
死因子(TNF)の含有量を測定し、その含有量またはそ
の変化を検知し、病態の進行を判断することができる。
殊に本発明は、前述したように川崎病および細菌感染
症の患者の病態の判定に有利に用いられる。
本発明は、被検者の体液を採取してその中の抗腫瘍壊
死因子−反応性物質を抗腫瘍壊死因子抗体を用いて免疫
学的測定法により検知するのであるが、体液としては、
ヒト体内にある液性成分で採取の可能なものであればよ
く、血液成分である血清もしくは血漿が、利用しやすく
特に望ましい。しかしながら、血液成分以外でも、炎症
部位における滲出液,リンパ液,関節液等でもよく、ま
た患部及び近傍の血液成分でもよい。頻回測定によるTN
F量の変化をみる場合には、通常の採取方法による末梢
血の血液成分を利用するとが望ましいが、特にこれに限
定されるものではない。
本発明に従って、被検者の体液中の抗腫瘍壊死因子−
反応性物質を免疫学的測定法によって測定するには、抗
腫瘍壊死因子抵抗が用いられるが、その抗体としては腫
瘍壊死因子(TNF)に対する抗血清またはモノクローナ
ル抗体が使用される。かかる免疫学的測定法としては、
それ自体通常知られたサンドウィッチ法が有利に用いら
れる。サンドウィッチ法による免疫学的測定法において
は、通常2種類の抗体が用いられるが、本発明の検出方
法を実施する場合においいても、2種類の抗体のうち一
方の抗体は抗腫瘍壊死因子モノクローナル抗体、殊に抗
ヒト腫瘍壊死因子モノクローナル抗体を用いるのが、TN
Fを正確に且つ早く検出できるので好ましい。
本発明の免疫学的測定法として有利に使用されるサン
ドウィッチ法は、その方法自体は抗体を用いて微量の特
定の蛋白を検出するために度々採用される知られた方法
であり、例えば下記文献に記載されている。
Langone,J.J.and van Vunakis,H.,(eds.):Methods
in Enzymology.Vol.73,Immunochemical Techniques Par
tB,Academic Press,New York,1981 Nakamura,R.M.Dito,W.R.and Tucker,E.S.,III(ed
s.):Immunoassays in the Clinical Laboratory.Alan
R.Less,New York,1979 Ishikawa,E.,Kawai,T.and Miyai,K.(eds.):Enzyme
Immunoassay Igaku−Shoin,Tokyo,1981 前述した様に本発明は、被検者の体液中に含まれる抗
腫瘍壊死因子−反応性物質を免疫学的測定法により検出
することによって、被検者の病態を判断するのであり、
病状またはその疑いのある病気としては、抗腫瘍壊死因
子−反応性物質、具体的にはTNFが液体中に病気の結果
として健常人に含まれる値よりも多量含まれる病気であ
ればよい。川崎病または細菌感染症は、その代表的病気
であり、被検者の体液中のTNFの含有量およびその変化
がその病態の判断に重要な基準となる。しかしながら、
川崎病や細菌感染症以外の病気であっても、TNFの含有
量が病気の病態の判断に、関係している病気であれば、
本発明の検出方法、検出キットは同様に使用される。
前記細菌感染症としては、細菌が生体内に侵入して増
殖し、それが原因でその生体が、病的状態を呈する疾患
のことをいい、極めて多様な疾患及び病態の総称であ
る。例えば敗血症などの全身性感染症,尿路感染症,呼
吸器感染症,耳鼻科感染症,消化器感染症などの局所性
感染症という分類もされるが、実際には同一の病原菌で
種々の病像を呈することがしばしばあるので、区分は困
難である。これら細菌感染症の症状は非常に多種多様で
あり、重篤な状態に陥る場合も多い。その場合多くは、
悪感戦慄,発熱を伴ない関節痛,筋肉痛,発汗,嘔吐,
下痢,発疹,紅斑などの症状も認められ、低血圧,ショ
ック症状,寒栓症状,出血傾向等の症状がみられること
もあるが、特異的な症状がない場合が多く、病態の重篤
度の診断が困難な場合もあった。
これら細菌感染症は、その病態によって体液中におけ
るTNFの含有量を測定することに有意義である限りその
病態のモニタリングに本発明は役立つ。
従って本発明は川崎病および細菌感染症以外にも病気
の結果として、病態の変化により体液中のTNFの量に異
常を示す限り、他の病気にも適用され、その他の病気と
しては、例えば全身性エリスマトーデス,関節リウマチ
などの自己免疫疾患,サルコイドーシス,潰瘍性大腸
炎,クローン病などの慢性炎症性疾患,先天性及び後天
性の免疫不全症,GVHD(graft versus bost disease)な
どの移植にともなう免疫拒絶症その他広汎性血管内凝固
(dessemiuated intravascular coagulation)など血管
炎をともなう疾患などを挙げることができる。
本発明によれば、被検者の体液中の抗腫瘍壊死因子−
反応性物質を、抗腫瘍壊死因子抗体を用いて、免疫学的
測定法により、正確に且つ迅速に検出する方法およびそ
のためのキットが提供される。
被検者のTNF含有量を正確に検出することは、病態の
正確な判断のために必要であり、また検出が遅くなる
と、病状の進行に従って、検出結果を病状の進行の阻止
や治療に役立たせる時間を失う恐れがある。
従って本発明の抗腫瘍壊死因子抗体としては、抗腫瘍
壊死因子モノクローナル抗体が上記目的のために使用さ
れる。
抗腫瘍壊死因子モノクローナル抗体の一種は日本特許
公開昭60−208924号の公報に記載され公知であり、この
公報に記載されたモノクローナル抗体は、ヒトTNFと結
合しその活性を阻害することに特徴があるが、ヒトTNF
の如何なる部位に結合するかは、同公報には何等説明さ
れていない。
本発明者らの研究によれば、本発明の検出方法に下記
(a)〜(c)によって特徴付けられる抗ヒト腫瘍壊死
因子モノクローナル抗体を用いると、被検者の体液中の
TNFが正確且つ迅速に検出できることが判った。
(a)ヒト腫瘍壊死因子のL929細胞への殺細胞効果及び
脂肪酸代謝抑制効果を中和する能力を有し、 (b)ヒト腫瘍壊死因子のアミノ酸配列の68番目(Gl
y)から97番目(Ile)に含まれる部位を認識し、且つ (c)腫瘍壊死因子リセプターに対するヒト腫瘍壊死因
子の結合を特異的に阻害する。
この(a)〜(c)によって特徴付けられる抗ヒト腫
瘍壊死因子モノクローナル抗体は、本発明者らの知る限
り、新規であり、本発明において初めて提供されたもの
である(以下このモノクローナル抗体を“MCA−A"と略
称することがある)。
また、本発明によればヒト腫瘍壊死因子(ヒトTNF)
のアミノ酸配列7番目(Thr)から37番目(Leu)に含ま
れる部位を認識する抗ヒトTNFモノクローナル抗体もま
た提供される(以下この抗体を“MCA−B"と略称するこ
とがある)。このMCA−BはヒトTNFのL929細胞への殺細
胞効果を中和せず。
且つヒトTNFの脂肪酸代謝抑制効果もまた中和しない
特性を有している。
さらに本発明によれば、ヒト腫瘍壊死因子(ヒトTN
F)のアミノ酸配列98番目(Lys)から127番目(Glu)に
含まれる部位を認識する抗ヒトTNFモノクローナル抗体
も提供される(以下この抗体を“MCA−C"と略称するこ
とがある)。このMCA−Cは、ヒトTNFのL929細胞への殺
細胞効果を中和しない且つヒトTNFの脂肪酸代謝抑制効
果も中和しない特性を有しており、またTNFリセプター
に対するヒトTNFの結合を阻害することはない。
前記したMCA−A,MCA−BおよびMCA−Cは、いずれも
新規なヒトTNFに対するモノクローナル抗体であって、
本発明の検出方法および検出のためのキットにおける抗
TNF抗体の少くとも一種として使用できるが、特にMCA−
Aが就中、結合性の点から最も望ましい。
以下本発明の前記ヒトTNFに対するモノクローナル抗
体の調整法および検出のためのキットについて説明す
る。
《抗TNF抗体の調製》 (1) 抗TNF抗体産生細胞の調製 抗体産生細胞の調製は常法に準じて行えばよい。すな
わち、抗原である、ヒトTNFで動物を免疫し、その動物
抗体産生細胞を取得する方法によればよい。
動物としては、マウス、ラット、ウサギ、モルモッ
ト、ヒツジ、ウマ、ウシなどが例示され、抗体産生細胞
としては脾細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞などが使用
される。
(2) 骨髄腫細胞の調製 細胞融合方法において使用される骨髄腫細胞には特に
限定はなく、多くのマウス、ラット、ウサギ、ヒトなど
の動物の細胞株が適用できる。使用する細胞株は好まし
くは薬剤抵抗性のものであって、未融合の骨髄腫細胞が
選択培地で生存できず、雑種細胞のみが増殖するように
すべきである。最も普通に用いられるものは、8−アザ
グアニン抵抗性の細胞株で、これはヒポキサンチン・グ
アニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼを欠損
し、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HA
T)培地中では生育できない性質を有する。また、使用
する細胞株はいわゆる「非分泌型」のものであることが
好ましい。たとえば、マウス骨髄腫株MOPC−21由来のP3
/X63−Ag8U1(P3U1)、P3/X63−Ag・6・5・3、P3/NS
1−1−Ag4−1、Sp2/O−Ag14、ラット骨髄腫細胞210RC
Y3・Ag1・2・3などが好適に用いることができる。
(3) 細胞融合 通常イーグル最小基本培地(MEM)、ローズウエル・
パーク・メモリアル・インスティテュート(RRMI)1640
培地などの培地中で1〜5×107個の骨髄腫細胞と抗体
産生細胞1〜5×108個を混合(混合比は通常1:4〜1:1
0)、細胞融合が行われる。融合促進剤としては、平均
分子量1000〜6000のポリエチレングリコール(PEG)が
好ましいが、他にウイルスなども使用できる。PEGの使
用濃度は通常30〜50%である。
(4) 雑種細胞の選択的増殖 細胞融合を終えた細胞は、10%ウシ胎児血清含有RRMI
1640培地などで適当に希釈し、マイクロタイタープレー
トに105程度に植えつける。各ウエルに選択培地(たと
えばHAT培地)を加え、以後適当に選択培地の交換を行
ない、培養する。骨髄腫細胞として8−アザグアニン抵
抗性株を用いれば、未融合の骨髄腫細胞はHAT培地中で
は10日間ぐらいまでに全部死滅し、また抗体産生細胞は
正常細胞なのでインビトロ(in vitro)では長時間生育
できない。したがって、培養10〜14日ぐらいから生育し
てくるものはすべて雑種細胞である。
(5) 抗体産生雑種細胞の検索 雑種細胞のスクリーニングは常法によればよく、特に
限定はない。たとえば、雑種細胞の増殖したウエルの上
清の一部を採取し、ヒトTNF又は固定化ヒトTNFと反応さ
せたのち、酵素、ラジオアイソトープ、螢光物質、発光
物質で標識した第2抗体と反応によって、標識量を測定
し、抗ヒトTNF抗体の存在を検定することができる。
(6) クローニング 各ウエル中には2種以上の雑種細胞が生育している可
能性があるので、限界希釈法などにより、クローニング
を行ない、モノクロナル抗体産生雑種細胞を取得する。
(7) 抗体取得 最も純粋なモノクロナル抗体は、所望の雑種細胞を10
%程度のウシ胎児血清を含むRPMI1640培地などの適当な
培養液で培養し、その培養上清から得ることができる。
一方、さらに大量の抗体を取得するためには、骨髄腫
細胞の由来動物と同系の動物にプリスタン(2,6,10,14
−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投
与し、その後雑種細胞を投与することにより、インビボ
(in vlvo)で雑種細胞を大量に増殖させればよい。こ
の場合、10〜18日位で腹水腫瘍を形成し、血清および腹
水中に高濃度の抗体が生ずる。
《ヒトTNF検出のためのキットおよびその調製》 前記の如くして得られたTNFに対するモノクローナル
抗体は、本発明の検出方法および検出キットにおける抗
TNF抗体の少なくとも一部として利用される。
免疫学的測定法、特にサンドウィッチ法においては、
一般的に目的とする抗原(例えば蛋白)に対して結合性
を有する2種の抗体が使用されるが、本発明において
も、同様に2種の抗体が用いられ、その少なくとも1種
として前記ヒトTNFに対するモノクローナル抗体が使用
される。2種の抗体がいずれもヒトTNFに対する異なる
部位を認識するモノクローナル抗体であってもよいが、
1種がヒトTNFに対するモノクローナル抗体であり他の
抗体がヒトTNFに対する抗血清であることもできる。
次に、2種のヒトTNFに対する抗体を用いたキットに
ついて説明すると、ヒトTNFに対する抗体(第1抗体)
を適当な不溶性固体担体(例えばプラスチック容器)に
固定化する(以下これを“固定化抗体”という)。つい
で不溶性固体担体と測定しようとする血清等体液試料、
すなわち検体試料との非特異的結合を避けるために適当
な物質(例えば牛血清アルブミン)で不溶性固体担体の
表面を被覆する。
このようにして得られた第1抗体が固定化された不溶
性固体担体を検体試料と一定時間及び温度で接触させ反
応させる。この間に固定化抗体(第1抗体)と検体試料
中のTNFが結合する。ついで適当な洗浄液で洗った後、
適当な標識物質で標識したヒトTNFに対する抗体(第2
抗体)溶液(例えば水溶液)を、不溶性固体担体におけ
る固体化抗体に結合したTNFと一定時間及び温度で接触
させ第2抗体と反応させる。これを適当な洗浄液で洗
い、次いで不溶性固体担体上に存在する第2抗体に標識
された標識物質の量を測定する。かくしてその価から検
体試料中のTNF量を算出することができる。
かくして本発明の検出キットは、第1抗体が不溶性固
体担体に結合した固定化抗体と標識化された第2抗体と
より主として構成される。このキットを能率よく且つ簡
便に利用するために、これら抗体以外に種々の補助剤を
含めてキットを形成することがてきる。かかる補助剤と
しては、例えば固体状の試薬を溶解させるための溶解
剤,不溶化固体担体を洗浄するために使用される洗浄
剤,抗体の標識物質として酵素を使用した場合、酵素活
性を測定するための基質、その反応停止剤などの免疫学
的測定試薬のキットとして通常使用されるものが挙げら
れる。
本発明の検出キットに使用される不溶性固体担体とし
ては、例えばポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピ
レン,ポリエステル,ポリアクリルニトリル,弗素樹
脂,架橋デキストラン,ポリサッカライドなどの高分
子、その他紙,ガラス,金属,アガロース及びこれらの
組合せなどを例示することができる。
また不溶性固体担体の形状としては、例えばトレイ
状,球状,繊維状,棒状,盤状,容器状,セル,試験管
などの種々の形状であることができる。
また標識物質としては放出性物質,酵素又は螢光物質
を使用するのが有利である。放射性物質としては125I,
131I,14C,3Hなどを、酵素としてアルカリ性フォスファ
ターゼ、パーオキシターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ
など、また螢光物質としてはフルオレッセインソチオシ
アネート,テトラメチルローダミンイソチオシアネート
などを使用することができるが、これらは例示したもの
に限らず、免疫学的測定方法に使用し得るものであれ
ば、他のものでも使用できる。さらに標識物質の感度を
高めるための補助剤を用いることもできる。
本発明の検出方法およびキットにおいては、前記抗TN
F抗体を第1抗体及び第2抗体に使用する。すなわち、
前記方法により作成した複数のモノクローナル抗体のう
ち、定量的測定系として良い結果を与える2種類のモノ
クロナル抗体を選択し第1抗体及び第2抗体として使用
する。もしくは、第1抗体或いは第2抗体のいずれか一
方に、抗ヒトTNF抗血清を温血動物を用いて常法により
得て、これを用いることもできる。
以下、実施例を掲げて、本発明について詳細に説明す
るが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
実施例1(抗ヒトTNFモノクロナル抗体の作成) 抗原の精製 本発明に用いたヒトTNFの製造方法については、先に
出願された特許(特開昭62−248498号:昭和61年4月21
日出願:発明の名称“新規生理活性ポリペプチド”)に
記載の方法を使用した。
すなわちヒトTNF遺伝子発現ベクターを導入した大腸
菌の培養を行ない、ヒトTNF蛋白質の産生を促した。集
菌後大腸菌を超音波を用いて破砕し、得らた懸濁液より
Shiraiら[T.ShiraiらNature,313,830(1985)]の方法
に従い、DEAE Sepharoseカラムクロマトグラフィーによ
り精製した。本粗精製品中のTNF含量は約30%であっ
た。
ヒトTNFによるマウスの免疫 雄Balb/cマウスにフロイントの完全アジュバントでエ
マルジョンにした前記TNF分画(50〜100μg)を皮下に
2週間の間隔を置いて投与した。最終免疫の4日後に脾
臓を摘出し、細胞融合に用いた。
細胞融合 細胞融合は常法に従って行なった。すなわち、無菌的
に取り出した脾臓からメッシュを通して細胞懸濁液を作
成しRPMI1640培地で3回洗浄したのち、マウス骨髄腫細
胞であるP3−X63−Ag8−U1細胞(P3U1と略記することも
ある)[D.E.YeltonらCurrent Topics in Microbiology
and Immunolgy,81,1(1978)参照]と、約1:1〜5:1の
割合で混合、遠心後ペレットに50%ポリエチレングリコ
ール1540,RPMI−1640溶液1mlを徐々に加え、1分間遠心
管をゆっくりかきまぜて細胞融合を行なった。さらにRP
MI−1640培地を徐々に時間をかけて加えて、最終的に10
mlとした。遠心後ペレットを10%ウシ胎児血清含有RPMI
1640培地に骨髄腫細胞として5〜10×104個/0.1mlにな
るように懸濁し、96ウエルマイクロプレート(Costar)
に0.1mlづつ播種した。
1日後にHAT培地を各ウエルに0.1mlづつ添加し、以後
半分量をHAT培地で交換することを適当な日間隔で実施
したところ、5日目ぐらいからいくつかのウエルで雑種
細胞の生育が認められ、2週間後にはほぼ全ウエルで雑
種細胞が増殖した。
抗体産生細胞の検索とクローニング 雑種細胞の生育してきたウエルの培養上清0.1mlをと
り、イムノアッセイプレート(タイターテック)上に固
定したヒトTNFとインキュベーションし、これと結合す
るものを探したところ、約40%の確立でヒトTNFに対し
て結合能をもつ抗体を分泌しているウエルを認めること
ができた。結合能の高いものを一部のみ選択し、96ウエ
ルマイクロプレートに1個/ウエルの密度で細胞を植え
る限界希釈法によりクローニングを行なった。得られた
クローンのうちの一部、93個を選択し、10%ウシ胎児血
清含有RPMI−1640培地を用いて96ウエルプレート→24ウ
エルプレート→6ウエルプレート→25cm2フラスコと順
次スケールアップして培養し、培養上清を集めた。
各上清を、1000単位/mlのヒトTNF溶液と混合し1時間
37℃でインキュベートしたのち、L−929細胞を用いるT
NF活性評価を行なって、TNFの活性を中和する能力の高
い11クローン(9C4G5,8E6B6,10B7E11,11D7G4,8E6C6,2B2
H10,9C4A9,8E6D7,1G7D3,8E6G4,10B7C6)と、中和する能
力はほとんどなく、TNFとの結合能力の高い5クローン
(9E8G7,1A10D4,1F12A7,1F12A9,P4B4D5)とを選択し
た。
モノクローナル抗体の精製 次に前記16クローンの細胞の培養を10%ウシ胎児血清
含有RPMI1640培地を用いてさらにスケールアップし、50
0ml〜10程度の培養上清を集めた。この培養上清を50
%飽和硫安で4℃約1時間撹拌したのち、10,000×Gで
30分間の遠心分離を行なった。ペレットを少量の純水で
溶解し、0.1Mリン酸バッファーpH8.0に対して透析し
た。この溶液をプロテインAセファロース(ファルマシ
ア)のカラムにかけたのち、pH5.0あるいはpH3.0の0.1M
クエン酸バッファーで吸着したモノクロナル抗体を溶
出、NaOHで中和したのちメンブレンフィルター(アミコ
ンYM−10)を用いて濃縮し、0.1Mリン酸バッファーpH8.
0に置換して精製モノクローナル抗体溶液とした。
実施例2(TNF特異的認識能の確認) 上記粗精製TNF及び精製TNFをSDS−PAG PLATE10/20
(第1化学(株))にて電気泳動を行なった後、ブロッ
ティングバッファー(20mMトリス,150mMグリシン,20%
メタノール)中にて、ニトロセルロースフィルターにブ
ロッティングした。ニトロセルロースフィルターを3%
ゼラチンを含むバッファー(20mMトリス,500mM NaCl)
中にて室温で1〜2時間振とうした後、精製抗体2μg/
ml及び1%ゼラチンを含むバッファーに変え、室温で一
晩振とうした。洗浄液(20mMトリス,500mM NaCl,0.05
%Tween 20)でニトロセルロースフィルターを3回洗浄
した後、ヤギ抗マウスIgG,HRP複合体(BIO−RAD社)
を、1%ゼラチンを含むバッファーにて、メーカーの指
定する希釈倍率に希釈し、この中でニトロセルロースフ
ィルターを室温で1〜2時間振とうした。前記洗浄液で
3回,及びTween20を含まない洗浄液で洗浄した後、HRP
Development Reagent(BIO−RAD社)にて、発色させ
た。精製抗体として、1F12A7を用いた例を第1図に示
す。この図より明らかな様に粗精製TNF,精製TNFいずれ
も、1F12A7は結合し、TNFに対する特異的結合能を有す
ることが確認された。同様に9C4G5,8E6B6,10B7E11,11D7
G4,8E6C6,2B2H10,9C4A9,8E6D7,1G7D3,8E6G4,10B7C6,9E8
G7,1A10D4,1F12A9,P4B4D5の各抗体でもこの方法によりT
NFに対する特異的結合能を有することが確認された。
実施例3(脂肪酸代謝抑制効果中和能の検討) マウス線維芽細胞3T3−L1をconfluentに増殖させた
後、115μg/mlのMIX(3−isobutyl−methyl−xan thin
e),395ng/mlのDEX(dexamethasone),10μg/mlのINS
(bovineinsulin)を含む10%ウシ胎児血清含有LMDMEM
培地で、分化誘導を2日間行ない、脂肪細胞へと分化さ
せた。誘導2日後に、分化維持培地(50ng/mlのINSを含
む10%ウシ胎児血清含有LMDMEM培地)におきかえ、1〜
2時間後にサンプルを加えた。サンプルとしては、最終
濃度47ng/mlとなるようにTNFを加えたもの、およびTNF
と抗TNF抗体をモル比で1:1となるように混合し、室温
で、1時間インキュベーションした後、TNF濃度として4
7ng/mlとなるように加えたものを用いた。サンプル添加
後、37℃で4時間インキュベーションした後、最終濃度
10U/mlとなるようにヘパリンを加え、さらに1時間イン
キュベーションした。インキュベーション後、上清を採
取し、上清中に含まれるLipoprotein Lipase活性を3Hで
標識したトリオレインを基質とした反応により測定し
た。結果は、下記表1に示すように、L929に対するTNF
の殺細胞効果を中和しうる抗TNF抗体は、TNFによる3T3
−L1脂肪細胞の脂肪酸代謝抑制作用をも、中和すること
が明らかとなった。
また、L929に対するTNFの殺細胞効果を中和しない抗T
NF抗体は、TNFによる3T3−L1脂肪細胞の脂肪酸代謝抑制
作用をも、中和しないことが明らかとなった。
実施例4(特異的認識部位の同定) 公知のTNFアミノ酸配列に基づいて表2に記したTNFの
アミノ酸配列を有する断片ペプチドを多種、Applied Bi
o System社のペプチドシンセサイザー430Aを用いて合成
した。合成後フッ化水素処理により支持樹脂体より解離
したペプチドは逆相カラムクロマトグラフィーにより、
純度検定及び必要に応じて精製を行ない、充分な精製度
が得られたものを実験に用いた。
精製ペプチド断片(0.5〜1mg/ml)を、それぞれイム
ノアッセイプレート(タイターテック)上に4℃で一晩
放置し、固定化した。0.5%牛血清アルブミンを含む洗
浄液(20mMリン酸バッファー,0.135M NaCl,0.05%Twee
n20,0.2%NaN3)で3回洗浄した後、1%牛血清アルブ
ミンを含むバッファー(20mMリン酸バッファー,0.135M
NaCl,0.2%NaN3)を加えて、室温で1〜2時間、放置
した。前記洗浄液で3回、洗浄した後、精製した抗TNF
抗体を加え、室温で1〜2時間反応させた。さらに前
記、洗浄液で、3回洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−ア
ルカリフォスファターゼ複合体を加え、さらに室温で1
〜2時間放置した。前記洗浄液で洗浄後、アルカリ性フ
ォスファターゼの基質、p−Nitrophenyl Phosphate,Di
sodiumを1mg/mlの濃度で加え、ELISA ANALYZER(東洋
測器(株)ETY−96)で405nmの波長における1分間当た
りの吸光度変化を測定した。種々のペプチドに対する反
応性を上記の方法を用いて調べたところ各抗体は表3に
示すような結合性を示した。その結果TNF活性を中和し
うる抗体は下記に示すTNFの68番目から97番目のアミノ
酸配列を有するペプチドに対して特異的な結合を示すこ
とがわかった。
NH2−Gly Cys Pro Ser Thr Val Leu Leu Thr His Thr I
le Ser Arg Ile Ala Val Ser Tyr Gln Thr Lys Val Asn
Leu Leu Ser Ala Ile−COOH またTNFの活性を中和する能力のない1クローン(1A1
0D4)の抗体は、下記に示すTNFの7番目から37番目のア
ミノ酸配列を有するペプチドに対して特異的な結合を示
した。
NH2−Thr Pro Ser Asp Lys Pro Val Ala His Val Val A
la Asn Pro Gln Ala Glu Gly Gln Leu Gln Trp Leu Asn
Arg Arg Ala Asn Ala Leu Leu−COOH 次に抗体がTNFと結合する部位を明らかにするために
以下の実験を行なった。
精製TNF(1μg/ml)をイムノアッセイプレート(タ
イターテック)上に4℃で一晩放置し、固定した。0.5
%牛血清アルブミンを含む洗浄液(20mMリン酸バッファ
ー,0.135M NaCl,0.05%Tween20,0.2%NaN3)で3回洗
浄した後、1%牛血清アルブミンを含むバッファー(20
mMリン酸バッファー,0.135M NaCl,0.2%NaN3)を加え
て、室温で1〜2時間、放置した。前記洗浄液で3回、
洗浄した後、精製した抗TNF抗体と合成ペプチドをあら
かじめ37℃で1時間プリインキュベーションしておいた
混合物を加え、室温で1〜2時間反応させた。さらに前
記、洗浄液で、3回洗浄した後、ヤギ抗マウス IgG−
アルカリフォスターゼ複合体を加え、さらに室温で1〜
2時間放置した。前記洗浄液で洗浄後、アルカリ性フォ
スファターゼの基質、p−Nitrophenyl Phphate,Disodi
umを1mg/mlの濃度で加え、ELISA ANALYZER(東洋測器
(株)製ETY−96)で405nmの波長における1分間当たり
の吸光度変化を測定した。
第2図は、モノクローナル抗体1F12A7のTNFとの結合
に対して合成ペプチドD(表2参照)が用量依存的に阻
害することを示したものである。合成ペプチドを加えな
い場合の抗体のTNFとの結合量を100%としてペプチド添
加時の抗体のTNFとの結合を割合で示した。この結果か
らモノクローナル抗体1F12A7は98番目Lysから127番目Gl
uに含まれる部分を結合部位としてTNFと結合しているこ
とがわかった。
実施例5(TNFのTNFリセプター結合に対する抗体の影
響) Enzymobeads(BIO−RAD社)により125Iを導入したTNF
(放射比活性1.2×1010cpm/mg protein)を用い、L929
細胞上のTNFリセプターに対する125I−TNF結合への抗TN
F抗体の影響を調べた。L929細胞を5×106cellsとなる
ようにディッシュに播種し、37℃で4時間インキュベー
ションした後、上清を捨て125I−TNF(51ng/ml)もしく
は、125I−TNF(51ng/ml)と抗TNF抗体(5.1μg/ml)を
室温、1時間プレインキュベーションしたサンプルを細
胞に加えた。一方リセプターに対する特異的結合である
ことを確認するためにそれぞれのサンプルに100倍量の
非標識TNFを加えたものについても、同様にL929細胞に
加えた。4℃で5時間インキュベーションした後、スク
レーパーにより細胞を集め、培地(5%牛胎児血清を含
むイーグル培地)で遠心操作により2回洗った後の細胞
中に含まれる125Iのカウントを計測した。結果の一例と
して、TNFの活性を中和する抗TNF抗体11D7G4を用いた場
合の結果を下記表4に示す。この結果よりTNFの抗体11D
7G4はTNFのTNFリセプターに対する結合を阻害すること
が明らかである。
またTNFの活性を中和する能力のない4クローン(1F1
2A7,1F12A9,9E8G7,1A10D4)のうちの1F12A7を用いた場
合の結果、及びTNFのTNFリセプターへの結合を阻害する
型の活性中和型抗体10B7E11を用いた場合の結果も同様
に下記表4に示す。この結果よりTNFのアミノ酸配列113
番目から、127番目を含む部位を認識する抗TNF抗体1F12
A7は、TNFのリセプターに対する結合を全く阻害しない
ことが明らかである。
実施例6(検量線の作成) 本実施例で使用した抗体は前記実施例1記載のクロー
ンの産生するモノクロナル抗体のうち“11D7G4"を下記
の如く不溶性担体(イムノアッセイプレート)に固定し
て用いた。また“9C4G5"をウシ膵臓由来のアルカリ生フ
ァスファターゼ(シグマ)で標識して2次抗体として用
いた。
濃度15μg/mlのモノクロナル抗体(11D7G4)をイムノ
アッセイプレート(タイターテック)上に4℃で一晩放
置し固定化した。0.5%牛血清アルブミンを含む洗浄液
(20mMリン酸バッファー,0.135M NaCl,0.05%Tween20
0.2%NaN3)で3回洗浄したのち、1%牛血清アルブ
ミンを含むバッファー(20mMリン酸バッファー0.135M
NaCl,0.2%NaN3)を加えて室温で1時間放置した。前記
洗浄液で、3回洗浄したのち、種々の濃度のヒトTNFを
加え室温で1時間反応させた。さらに前記洗浄液で3回
洗浄したのち、アルカリ性ファスファターゼで標識した
2次抗体(9C4G5)を加え、室温で1時間反応させた。
前記洗浄液で洗浄後、アルカリ性フォスファターゼの基
質p−Nitrophenyl Phosphate,Disodiumを1mg/mlの濃度
で加えELISA ANALYZER(東洋測器(株)製ETY−96)
で、405nmの波長における1分間当りの吸光度変化を測
定した。その結果を添付図面第3図に示した。この図面
から、ヒトTNFを特異的に認識するモノクロナル抗体を
用いたサンドイッチ法の酵素抗体免疫測定法によってヒ
トTNFの量を容易に測定することができる。
実施例7(川崎病患者血清中のTNFの測定) 川崎病患者血清及び、対照として健常人及び他疾患患
者血清をリン酸バッファー(20mMリン酸バッファー,0.1
35M NaCl pH7.2)で、2〜10倍に希釈し、抗原として
実施例6記載のサンドウィッチ法で、TNF量を測定し
た。検量線は、同時に同一の条件で、作成したものを用
いた。
結果をまとめて添付図面第4図に示した。川崎病30例
中12例(40%)に血清中のTNFが検出された。このTNFの
検出と冠動脈病変の出現とは添付図面第5図に示した如
く有意に関連があった。また添付図面第6図に示した如
く、TNFは症状の激しい患者において、急性期において
よく認められた。本発明による測定キットを用いてTNF
量を測定することは、川崎病の診断及び病態の解析、と
りわけ冠動脈病変の出現の事前診断に極めて有効であ
る。
実施例8(細菌感染症患者血清中のTNFの測定) 細菌感染症としてクレブラシェラ菌敗血症患者血清及
び、対照として健常人及び他疾患患者血清をリン酸バッ
ファー(20mMリン酸バッフアー,0.135M NaCl pH7.2)
で、2〜10倍に希釈し、抗原として実施例6記載のサン
ドウィッチ法で、TNF量を測定した。検量線は、同時に
同一の条件で作成したものを用いた。結果をまとめて下
記表5に示した。
下記表5より患者血清中のTNF量は、同血中の白血球
数,血小板数,C反応性蛋白質の量の変化と極めてよく対
応し、感染症の症状の重篤度とTNF量とは関連が高いこ
とがわかる。したがって本発明による測定キットを用い
てTNF量を測定することは、細菌感染症の診断及び病態
の解析に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
第1図は抗TNFモノクローナル抗体のTNFの結合性を示し
たものである。第2図はモノクローナル抗体1F12A7のTN
Fとの結合に対する合成ペプチドD(表2参照)の阻害
効果を示すものである。 第3図は本発明によるヒトTNF測定の検量線図を示すも
のである。第4図は本発明による川崎病患者及び対照ヒ
ト血清中のTNF量の測定結果を示すものである。第5図
はTNFの血清中濃度と冠動脈病変の出現との関係を示
し、第6図はある川崎病患者における熱型パターン,白
血球数(WBC),血小板数(PLT)及びTNF含有量の変化
と冠動脈病変の出現を経時的に示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願昭62−268219 (32)優先日 昭62(1987)10月26日 (33)優先権主張国 日本(JP) 前置審査 (72)発明者 加藤 革 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝 人株式会社生物工学研究所内 (72)発明者 中村 聡 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝 人株式会社生物工学研究所内 (72)発明者 柵木 津希夫 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝 人株式会社生物工学研究所内 (72)発明者 北井 一男 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝 人株式会社生物工学研究所内 (72)発明者 市川 弥太郎 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝 人株式会社生物工学研究所内 (56)参考文献 特開 昭62−129300(JP,A) 欧州公開218868(EP,A1)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】抗腫瘍壊死因子抗体を用い、被検者から採
    取した体液中に存在する抗腫瘍壊死因子抗体に反応性の
    物質を免疫学的測定法により検出することを特徴とす
    る、川崎病の病態判定のための検出方法。
  2. 【請求項2】第1の抗腫瘍壊死因子抗体、第2の抗腫瘍
    壊死因子抗体、および不溶性固定担体よりなり、該固体
    担体には前記抗体のいずれか一方の抗体が固定化されて
    いる、被検者の体液中に存在する抗腫瘍壊死因子抗体に
    反応性の物質を検出し、被検者の川崎病の病態を判定す
    るための検出キット。
JP63100186A 1987-04-24 1988-04-25 被検者の病態の判定のための検出方法、モノクロ−ナル抗体および検出キット Expired - Fee Related JP2647427B2 (ja)

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