JP2639782B2 - イルソグラジンおよびその酸付加塩の製造法 - Google Patents

イルソグラジンおよびその酸付加塩の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗潰瘍剤として有用な
2,4−ジアミノ−6−(2,5−ジクロロフェニル)−
s−トリアジンおよびその酸付加塩の改良製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】2,4−ジアミノ−6−(2,5−ジクロ
ロフェニル)−s−トリアジン(以下、「イルソグラジ
ン」という)は、次の式(I)
【化3】 で表される化合物であり、そのマレイン酸塩は、防御因
子増強型抗潰瘍剤として既に上市されているものであ
る。このイルソグラジンの製造方法としては、2,5−
ジクロロ安息香酸誘導体とビグアナイドを反応させる方
法(特公昭52−46955号)、2,5−ジクロロベ
ンズニトリルとジシアンジアミドを反応させる方法(特
公昭55−4751号)、ジクロロトリアジン類とアン
モニアを反応させる方法(特公昭55−4752号)等
の方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方
法のうち、特公昭52−46955号に記載の方法は、
収率が悪いという欠点があり、また、特公昭55−47
51号に記載の方法は、原料である2,5−ジクロロベ
ンズニトリルが高価であり、かつ、入手が困難であると
いう問題があった。 更に、特公昭55−4752号に
記載の方法には、原料であるジクロロトリアジン類の合
成に非常に手間がかかるという問題があった。
【0004】このように、従来のイルソグラジンの製造
方法は、いずれも工業的に十分に満足いく方法とはいい
難く、更に優れたイルソグラジンの製造方法の開発が求
められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、比較的容易
に入手できる原料を用い、経済的にイルソグラジンを製
造する方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、次の式
【化4】 に従い、2,5−ジクロロ安息香酸から容易に導かれる
N−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−シアノグアニジ
ンを原料とし、これにシアナミドを作用させ、環化、加
水分解および脱炭酸せしめれば工業的に満足の行く収率
でイルソグラジンが得られることを見出した。
【0006】従って、本発明は、次の式(II)
【化5】 で表されるN−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−シア
ノグアニジンにシアナミドを作用させて環化した後、加
熱し、所望により薬学的に許容される酸を作用させるこ
とを特徴とする次の式(I)
【化6】 で表されるイルソグラジンまたはその酸付加塩の製造法
である。
【0007】本発明方法は、N−2,5−ジクロロベン
ゾイル−N'−シアノグアニジン(以下、「シアノグア
ニジン」と略称することがある)とシアナミドとを水等
の溶媒中で加熱還流させることにより実施される。
【0008】出発原料である、シアノグアニジンは、
2,5−ジクロロ安息香酸を必要に応じてその反応性誘
導体に変えた後、ジシアンジアミドと作用させることに
より容易に製造することができる化合物である。具体的
には、例えば塩化チオニル等のハロゲン化剤で2,5−
ジクロロ安息香酸をそのハロゲニドに変え、アルカリの
存在下、アセトン等の溶媒中でジシアンジアミドと反応
させれば良い。
【0009】シアノグアニジンとシアナミドの反応は、
シアノグアニジン1モルに対し、1〜2モル程度のシア
ナミドを用いれば良く、加熱、還流は、8〜16時間程
度行えば良い。
【0010】反応生成物中から、目的のイルソグラジン
を得るには、再結晶、カラムクロマトグラフィー等公知
の精製手段を単独又は組合せて採用すれば良い。
【0011】かくして得られたイルソグラジンは、更に
必要に応じ、薬学的に許容される有機酸又は無機酸を作
用させることにより、その酸付加塩とすることができ
る。酸付加塩の例としては、マレイン酸塩、フマル酸
塩、過塩素酸塩等が挙げられる。
【0012】
【作用】本発明方法の反応機構は、シアノグアニジンと
シアナミドの反応により、次の式(III)
【化7】 で表される化合物が生成し、当該化合物は加熱により環
化されて次の式(IV)
【化8】 で表されるN−シアノジアミノ−s−トリアジンとな
り、更にこの化合物が加水分解反応および脱炭酸反応を
受けて前記式(I)で表されるイルソグラジンが得られ
るものと推定されている。
【0013】
【実施例】次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明
する。なお、以下の実施例において、融点は、ヤナコミ
クロ融点測定装置(柳本製作所製)を用い、IRスペク
トルは日本分光FT/IR 7000型を使用した。ま
た、1H−NMRスペクトルは、日本電子EX−90型
を使用し、テトラメチルシランを内部基準として化学シ
フトδはppmで示した。
【0014】実 施 例 1 N−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−シアノグアニジ
ンの合成:塩化チオニル 22mlとN,N−ジメチルホ
ルムアミド 0.2mlの溶液に2,5−ジクロロ安息香
酸 10.0gを加え、室温で1時間撹拌後、40℃で4
0分間撹拌した。 反応終了後、減圧濃縮すると黄緑色
の油状物を得た。 次いで、20%水酸化ナトリウム水
溶液 30mlとアセトン 20ml中にジシアンジアミ
ド 7.48gを懸濁させ、氷冷下、先に得られた油状物
のアセトン 30ml溶液をゆっくり滴下し同温で30
分間撹拌した後、室温で30分間撹拌した。反応液を氷
冷し、酢酸でpHを5〜6にすると結晶が析出した。結
晶物を濾取し、少量の水で洗った後、減圧下乾燥すると
淡褐色の結晶として表題化合物 9.42gを得た(収率
70.0%)。このものは、これ以上精製することなく
次の反応に用いた。
【0015】1H−NMR(CDCl3+CD3OD)
δ:7.4〜7.6(m,3H). IR ν max(KBr)cm-1:3354, 316
4, 2204, 1707, 1661, 1603,147
0,1282, 1131, 1027.
【0016】実 施 例 2 2,4−ジアミノ−6−(2,5−ジクロロフェニル)−
S−トリアジンマレート(マレイン酸イルソグラジン)
の合成:N−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−シアノ
グアニジン 9.42gをシアナミド 2.32gの水溶液
113mlに懸濁させ、100℃で12時間加熱還流
した。 放冷後、結晶を濾取し、水洗後減圧乾燥して淡
黄色の結晶 8.64gを得た。
【0017】次いで、これを2−メトキシエタノール
225mlに加えた後、活性炭 900mgを加え、室
温で1時間攪拌した。 吸引濾過後、氷冷下、濾液に水
450mlを加え、析出した結晶を濾取し、50℃で減
圧乾燥すると、白色結晶としてフリー体 6.28gを得
た。その結晶を2−メトキシエタノール 156mlに
溶解させた後、氷冷下、マレイン酸 2.85gの水溶液
95mlを滴下したのち、室温で攪拌した。 更に、水
を215ml追加し、氷冷下で1時間攪拌した。 析出
した結晶を濾取し、50℃で減圧乾燥すると、白色結晶
としてマレイン酸イルソグラジン 8.85gを得た(収
率65.0%)。
【0018】融 点: 181〜183℃(分解)1 H−NMR(DMSO−d6)δ:6.25(s,2
H),7.00(brs,4H),7.54(s,2H),7.
61(m,1H). IR ν max(KBr)cm-1:3426, 305
4, 2534, 1665, 1615, 1524, 135
7861, 652.
【0019】
【発明の効果】本発明方法によれば、2,5−ジクロロ
安息香酸という比較的安価で入手の容易な化合物から簡
便な操作により、工業的に満足の行く収率でイルソグラ
ジンおよびその酸付加塩を製造することが可能である。
従って、本発明方法は経済的に有利なイルソグラジンお
よびその酸付加塩の製造法として利用しうるものであ
る。 以 上

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の式(II) 【化1】 で表されるN−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−シア
    ノグアニジンにシアナミドを作用させた後、加熱し、所
    望により薬学的に許容される酸を作用させることを特徴
    とする次の式(I) 【化2】 で表される2,4−ジアミノ−6−(2,5−ジクロロフ
    ェニル)−s−トリアジンまたはその酸付加塩の製造
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の製造法において、作用
    させる薬学的に許容される酸がマレイン酸である2,4
    −ジアミノ−6−(2,5−ジクロロフェニル)−s−
    トリアジン マレイン酸塩の製造法。
  3. 【請求項3】 N−2,5−ジクロロベンゾイル−N'−
    シアノグアニジンが、2,5−ジクロロ安息香酸または
    その反応性誘導体にジシアンジアミドを作用させること
    により製造されたものである請求項1記載の2,4−ジ
    アミノ−6−(2,5−ジクロロフェニル)−s−トリ
    アジンまたはその酸付加塩の製造法。
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