JP2625316B2 - 複合耐食材料及びその製造方法 - Google Patents

複合耐食材料及びその製造方法

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JP2625316B2
JP2625316B2 JP4117159A JP11715992A JP2625316B2 JP 2625316 B2 JP2625316 B2 JP 2625316B2 JP 4117159 A JP4117159 A JP 4117159A JP 11715992 A JP11715992 A JP 11715992A JP 2625316 B2 JP2625316 B2 JP 2625316B2
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常昭 林
修司 飛田
進 黒澤
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株式会社ライムズ
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属基材上に耐食性の
被膜を形成した複合耐食材料及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、チタンなどの耐食性金属上に貴金
属あるいは貴金属酸化物を被覆した電極が、塩化ナトリ
ウム水溶液電解のために工業的に用いられる。しかし、
これら電極は、例えば海水中で陽極として用いると、剥
離しやすく、また耐食性が低く寿命が短いなどの欠点が
ある。一方、耐食性金属上に貴金属酸化物を被覆した電
極も、使用中に酸化物が剥離したり、塩素イオンの酸化
と併せて酸素が比較的多量に発生して、エネルギー効率
が低いなどの欠点がある。更に、貴金属被覆電極,貴金
属酸化物被覆電極および非晶質白金族合金電極の共通の
問題点は、高価な貴金属を主原料とするためコスト高に
なることである。
【0003】上記問題点を解決のために、例えばNi,
Ta及び白金金属を必須成分とする特定組成の(通常は
固体状態では結晶化している)合金組成を限定して溶融
状態から超急冷凝固させることにより、アモルファス合
金を作成し、これを弗酸(HF)で表面活性化処理を行
い、表面に白金族元素を濃縮せしめた電極触媒活性を備
えせしめた材料が開発されている。この材料は、次亜塩
素酸ナトリウムを製造するための陽極として優れてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この溶融状態
からの超急冷凝固によるアモルファス合金材料では、そ
の手法から形状的に薄帯,細線,粉末等に制約されるた
め、目的とする電解電極材を製造するのに種々の制約,
経済コスト面での困難が予想される。
【0005】本発明は上記事情を鑑みてなされたもの
で、寿命が長く、エネルギー効率が高く、コスト低域を
なしえるとともに、種々の制約を回避しえる複合耐食材
料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した従来法の欠点を
解決するために、本発明者らは、先に、イオンビームミ
キシング法による成膜手法を提案したが、この発明はこ
れをさらに発展改良開発したものである。本発明に係わ
る複合耐食材料は、金属基材と、この金属基材上に被覆
された白金を10原子%以上含有するNi−Ta−Pt
系の第1被膜と、この第1被膜上に被覆され、白金を1
0原子%未満含有するNi−Ta−Pt系で、表面に白
金濃縮層を有する第2被膜とを具備したことを特徴とす
るものである。 本発明に係わる複合耐食材料の製造方法
は、金属基材上に白金を10原子%以上含有するNi−
Ta−Pt系層を、複数層、白金含有量を変えて積層す
るか又は連続的に白金含有量が変化するように積層して
第1被膜を形成する工程と、この第1被膜上に白金を1
0原子%未満含有せるNi−Ta−Pt系層を、複数
層、白金含有量を変えて積層するか又は連続的に白金含
有量が変化するように積層して第2被膜を形成し複合体
を形成する工程と、前記複合体表面を弗酸で処理する工
程とを具備することを特徴とするものである。
【0007】本発明者らの着眼点は電解電極材の触媒活
性のためには白金(Pt)成分が必要であること、バル
ク状の電極材では白金等の成分コストが高くなること、
を考え基材に耐食性金属(例えばTi)を使用し、この
表面に白金(Pt)の含む合金系の被膜を構成せしめる
この被覆膜の構造に工夫をし、新な構成を開発し、最終
の目標に達した。
【0008】白金が高価なため、なるべく白金含量を少
なくし、かつ弗酸(HF)による表面処理で、白金を表
面に濃縮し、活性を得ようとしている。しかし、被覆材
料では、弗酸処理による白金濃縮の過程で被覆中に孔食
状の腐食や割れ亀裂が見られ、膜中又は基材との界面で
の剥離が進行する場合が認められる。ところで、Ni−
Ta−Pt系でPtの含有量が10at%以下の場合、弗
酸による(白金濃縮→触媒活性)効果が認められるが、
Ptの含有量が10at%を超えると弗酸に対する耐食性
が表われる様になり(白金濃縮→触媒活性)効果が認め
難くなる。これにより白金を10原子%以上含有せるN
i−Ta−Pt系合金は、耐弗酸性を有することが判明
した。
【0009】このことから、金属基材表面にPtの含有
量が10at%以下のNi−Ta−Pt系合金が被覆され
た複合材料の中間層にPtの含有量が10at%以上のN
i−Ta−Pt系合金を構成せしめた複合被覆体は弗酸
処理によっても最上層のみが処理され白金濃縮が起り、
その下の層は孔食状腐食が生じることなく割れ、亀裂に
伴う剥離等の不具合は起きなく優れた構成体となること
が判明した。被覆層は積層又は連続的に組成変化する組
成傾斜型の構造であっても、同様の効果が期待される。
【0010】本発明において、金属基材の表面に被膜を
形成する手法としては、例えばイオンビームを用いたイ
オンビームスパッタ蒸着法が利用できる。Pt含有量1
0at%以下では、この手法で緻密なアモルファス膜が作
成でき、弗酸処理時に均一なPt濃縮が可能となる。ま
た、イオンビームスパッタ法では、例えば多元的なスパ
ッタターゲットを使用することにより、容易に積層構造
をえることが可能である。
【0011】一方、蒸着とイオンビーム照射を併用した
イオンビームミキシング法では、組成成分的に落差の大
きめの積層膜の場合利用することにより、界面での組成
のゆるやかな変化層が得られ、界面強度の向上が得られ
る。また、例えばEB蒸着によりEB条件を制御するこ
とにより良好な組成連続膜を得ることができる。その構
成により手法を適当に選び組合せることにより、最適な
膜構造を得ることができる。なお、Pt含有量が10at
%を超えると、合金相はアモルファスから結晶化へと進
み20at%Pt,40at%Pt組成でTaPt2 ,Ta
Pt3 の回折ピークが確認されている。
【0012】
【作用】本発明によれば、寿命が長く、エネルギー効率
が高く、コスト低域をなしえるとともに、種々の制約を
回避することができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図を参照し
て説明する。まず、図1のイオンビームミキシング蒸着
装置について説明する。
【0014】図中の1は、内部に基材ホルダー2、シャ
ッター3及びEBルツボ4が適宜配置された真空容器で
ある。前記基材ホルダー2には冷却水が送られ、基材ホ
ルダー2により支持された基材5が冷却されるようにな
っている。また、前記基材5の膜厚は、膜厚計6によっ
て測定される。前記EBルツボ4には、E.B.ガン7
が連結されている。前記真空容器1には、真空ポンプ8
が連通されている。
【0015】また、前記真空容器1には、イオンガン9
が連結されている。このイオンガン9には、水冷却系10
が接続され、またガスコントローラ11を介してガスボン
ベ12が連結されている。更に、前記イオンガン9には、
イオン加速用回路13を介して電源14が接続されている。
【0016】図2は、イオンビームスパッタ蒸着装置を
示す。なお、図1と同部材は同符号を付して説明を省略
する。図中の21は、真空容器1内に配置された多元ター
ゲットを示す。前記真空容器1には、イオンガン22,23
が夫々取り付けられている。また、前記真空容器1に
は、メカニカルポンプ24、クライオポンプ25が連結され
ている。 (実施例1)
【0017】前記基材5として20×20×2mmの寸法
のTi板を用意し、この片面を鏡面研磨し、超音波洗浄
を施した後、図2に示したイオンビームスパッタ蒸着装
置の基材ホルダー2に設置した。つづいて、前記真空容
器1を5×10-6Torr に真空引きした後、イオンガン
からArイオンを加速電圧5KeVの条件でTi板の鏡
面に5分間照射してNi−40at%Ta−5at%Pt又
はNi−40at%Ta−20at%Pt組成のターゲット
を用い、加速電圧3keV 、イオン電流1.5AのArイ
オンビームスパッタ蒸着を行なった。同時に、別のイオ
ンガンからNイオンを引きだし、加速電圧20keV ,イ
オン電流密度50μA/cm2 の条件でイオン照射して
厚さ3μmの前記ターゲットと同組成の合金層を被覆し
た複合耐食材料を製造した。Ptが5at%の組成のもの
はアモルファス相に、Ptが20at%の組成のものは結
晶相であることがX線回折により明らかとなった。
【0018】まず、5at%Pt組成(アモルファス)の
複合耐食材料をHF処理約30秒行ったところ表面が黒
色化し、組成の一部が溶解してPtの濃縮が認められ
た。一方、20at%Pt組成(結晶性)の複合耐食材料
はHF処理を約3min 行ったが表面は何等の変化なく膜
自身が耐食性に優れていることが判明した。 (実施例2〜6)
【0019】まず、20×20×2mmの寸法のTi又は
SUS板を用意し、実施例1と同様の前処理をして、実
施例2,3,5は図2に示したイオンビームスパッタ蒸
着装置で、多元ターゲットを利用して全体で夫々3μm
の積層被覆膜を作成した。スパッタ条件はArイオン照
射で加速電圧3keV ,イオン電流1.5Aの一定条件で
行った。同時に別のイオンガンからNイオンを引きだし
加速電圧20keV ,イオン電流密度50μA/cm2
条件でイオン照射した。
【0020】実施例4,6については、E.B.蒸着で
夫々E.B.パワーを適当に変化操作することにより、
連続又は積層膜を作成した。Nイオン照射は、イオンビ
ームスパッタ時と同様であった。夫々全体で3μmの膜
厚の被覆を作成した。 (比較例1,2)実施例と同様の処理をして、イオンビ
ームスパッタ法で下記「表1」に示す組成で、1層の被
覆膜を作成し、比較例とした。
【0021】
【表1】
【0022】全ての試料をHF処理し、電極測定を行っ
た。ここで、条件は実用電解条件である103 A/m2
の電流密度で定電流電解を行い、1000クーロン/l
(リットル)通電での塩素発生量をヨードメトリ法から
求め、塩素発生に対する電流効率を推定した、その結果
も上記「表1」に示した。
【0023】
【発明の効果】以下詳述した如く本発明によれば、寿命
が長く、エネルギー効率が高く、コスト低域をなしえる
とともに、種々の制約を回避しえる複合耐食材料及びそ
の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオンビームミキシング蒸着装置
の説明図。
【図2】本発明に係るイオンビームスパッタ蒸着装置の
説明図。
【符号の説明】
1…真空容器、2…基材ホルダー、3…シャッター、4
…EBルツボ、5…基材、6…膜厚計、7…E.B.ガ
ン、8…真空ポンプ、9…イオンガン、10…水冷却
系、11…ガスコントローラ、12…ガスボンベ、13
…イオン加速用回路、14…電源、21…多元ターゲッ
ト、22,23…イオンガン、24…メカニカルポン
プ、25…クライオポンプ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−88785(JP,A) 特開 昭62−33790(JP,A) 特開 昭61−281889(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基材と、この金属基材上に被覆され
    た白金を10原子%以上含有するNi−Ta−Pt系の
    第1被膜と、この第1被膜上に被覆され、白金を10原
    子%以下含有するNi−Ta−Pt系で、表面に白金濃
    縮層を有する第2被膜とを具備したことを特徴とする複
    合耐食材料。
  2. 【請求項2】 金属基材上に白金を10原子%以上含有
    するNi−Ta−Pt系層を、複数層、白金含有量を変
    えて積層するか又は連続的に白金含有量が変化するよう
    に積層して第1被膜を形成する工程と、この第1被膜上
    に白金を10原子%未満含有せるNi−Ta−Pt系層
    を、複数層、白金含有量を変えて積層するか又は連続的
    に白金含有量が変化するように積層して第2被膜を形成
    し複合体を形成する工程と、前記複合体表面を弗酸で処
    理する工程とを具備することを特徴とする複合耐食材料
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第1,第2被膜をイオンビームスパ
    ッタ蒸着又はイオンビームミキシング蒸着法で行なう請
    求項2記載の複合耐食材料の製造方法。
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JPS6233790A (ja) * 1985-08-02 1987-02-13 Koji Hashimoto 活性化非晶質合金電極
JPH0288785A (ja) * 1988-09-26 1990-03-28 Raimuzu:Kk 電解電極材の製造方法

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