JP2624906B2 - 沸騰水型原子炉の封じ込め系の応力腐蝕割れを低減させるための方法 - Google Patents
沸騰水型原子炉の封じ込め系の応力腐蝕割れを低減させるための方法Info
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Description
の改善に関する。特に本発明は、沸騰水型原子炉の部材
または高温の水を収容する他の原子炉もしくは原子炉部
材の応力腐蝕割れの低減を容易にすることによって、原
子炉の部材の耐用寿命を延ばすことに関する。
起こすことが知られている。応力腐蝕割れは主として、
高温の、したがって高圧の水にさらされる装置で見られ
る現象である。また応力腐蝕割れは低めの温度でも起こ
る。応力は熱膨張の差、封じ込めに必要な高圧などが原
因となって生じ、さらに溶接、冷間加工、その他の対称
でない処理による残留応力などがある。この応力に加え
て、金属と水の化学の鋭敏化を始めとする他の条件が応
力腐蝕割れ(SCC)に対する感受性に影響を与える。
このタイプの腐蝕は広く研究されて来ており、関連する
論文もたくさんある。
プライド・サイエンス・パブリッシャ―ズ(Applied Sci
ence Publishers)刊、パ―キンス(R.N. Parkins)編、腐
蝕過程(Corrosion Process)、第271頁、フォ―ド
(F.P. Ford)著、「応力腐蝕割れ(Stress Corrosion Cr
acking)」。
モンテレ―(Monterey)、原子力発電所システム−水炉に
おける物質の環境劣化に関する第二回国際会議議事録(P
roc.2nd Int. Conf. on Environmental Degradation of
Materials in Nuclear Power Systems--Water Reactor
s)、第211頁、カス(J.N. Kass)およびコワン(R.L.
Cowan)著、「BWR(沸騰水型原子炉)に対する水素
水化学技術(HydrogenWater ChemistryTechnology for B
WRs)」。
モンテレ―(Monterey)、原子力発電所システム−水炉に
おける物質の環境劣化に関する第二回国際会議議事録(P
roc.2nd Int. Conf. on Environmental Degradation of
Materials in Nuclear Power Systems--Water Reactor
s)、第411頁、インディグ(M.E. Indig)、ゴ―ドン
(B.M. Gordon) 、デ―ビス(R.B. Davis)およびウェ―バ
―(J.E. Weber)著、「原子炉内粒間応力の評価(Evaluat
ion of In-Reactor Intergranular Stress)」。
42巻、第263頁、リュングベルグ(L.G. Ljungber
g)、キュビキオッティ(D. Cubicciotti)およびトロ―ル
(M. Trolle)著、「リンガルス−1沸騰水型原子炉での
交互(水素)水化学における物質挙動(Materials Behav
ior in Alternate (Hydrogen) Water Chemistry in the
Ringhals-1 Boiling Water Reactor)」。
42巻、第12号、第696頁、ニ―ドラッハ(L.W. Ni
edrach)およびストッダ―ド(W.H. Stoddard)著、「水
素と酸素が両方とも溶解している高温水中におけるAI
SI304ステンレス鋼の腐蝕電位および金属腐蝕性(C
orrosion Potentials and Corrosion Behavior of AISI
304 Stainless Steel In High Temperature Water Cont
aining Both Dissolve d Hydrogen and Oxygen)」。
酸素の濃度が高いと速い速度で起こることは文献で充分
に証明されている。
いるように、水素の注入により、放射線分解の結果とし
て冷却水中に通常存在する水素より高い水素濃度にして
冷却水中の酸素レベルを下げることによって、沸騰水型
原子炉の配管の応力腐蝕割れを減らすための努力が続け
られて来ている。高温高圧の水中でSCCからの保護に
必要な臨界電位を達成し、これを確実に維持するのに充
分な程度まで酸素レベルを下げるために必要とされる水
素の量がいろいろに変化することが判明している。した
がって、沸騰水型原子炉の配管を始めとするステンレス
鋼製部材の応力腐蝕割れの問題は相変わらず重大な問題
となっている。本発明は、必要とされるH2 の量を減じ
ること、ならびに、腐蝕電位を、文献3および4に示さ
れているようにSCCが大きく低下するかまたは消失さ
えするような臨界値以下、すなわち標準の水素電極(S
HE)に対して−230〜−300mV以下に確実・容
易に維持できるようにすることを目的としている。
造物上に貴金属の皮膜(deposit)を形成するという別の
論文が2つある。
Films)、第171巻、第323〜334頁、オッケン
(H. Ocken)、リン(C.C. Lin)およびリスタ―(D.H. List
er)著、「オ―ステナイト系ステンレス鋼中に放射性核
種が混入するのを防ぐ薄膜(Thin Films to Impede the
Incorporation of Radio Nucleids in Austenetic Stai nless Steels)」。
(英語翻訳版)、第17巻、第406頁、シェルノバ
(G.P. Chernova)、フェドセバ(T.A. Fedosceva)、コル
ニエンコ(L.P. Kornienko)およびトマショフ(N.D. Toma
shov)著、「表面のパラジウム合金化によるステンレス
鋼の不動態化能および耐食性の強化(Increasing Passiv
ation Ability and Corrosion Resistance of Stainles
s Steel by Surface All oying with Palladium)」。
皮膜ならびにその他の処理および皮膜を使用して、原子
炉の循環系で冷却材と接触している部材中に放射能が蓄
積されるのを低減させるものである。
ステンレス鋼の電気化学的挙動および応力腐蝕割れとは
異なる一般的な耐食性に関するものである。
再循環する給水中への水素の注入によって沸騰水型原子
炉の応力腐蝕割れを減らすための方法を改善することで
ある。
が低い沸騰水型原子炉を提供することである。
い、沸騰水型原子炉用ステンレス鋼製封じ込め部材を提
供することである。
低下しており高温高圧の沸騰水を保持することができる
ステンレス鋼製配管構造物を提供することである。
かであるし、一部は以下の説明中で指摘する。
明の目的は、原子炉の水中に水素と酸素が存在するよう
な沸騰水型原子炉構造体を提供するによって達成するこ
とができる。沸騰水にさらされる封じ込め系の表面上に
貴金属の薄膜を形成する。この貴金属はパラジウム、白
金または白金族の他の金属の1種とすることができ、反
応性が低くて水素と酸素の化合反応に対する触媒活性が
高いものである。単独でまたは合金として貴金属の皮膜
を封じ込め部材用金属上に形成するには、無電解メッ
キ、電気メッキ、スパッタリング、置換反応、蒸着、化
学蒸着、イオン注入、その他類似の方法を使用できる。
さらに、原子炉の水中に別に水素を注入して、前記の沸
騰水にさらされるステンレス鋼の電気化学電位を標準の
水素電極に対して−230〜−300mV未満とする。
に白金族金属を確実に存在させるための別の方法は、そ
の構造体の金属自身の中に直接白金族金属を配合するこ
とである。これは、構造体の生成時にその金属中に白金
族金属を合金化することによって行なうことができる。
語は当業界、特に触媒業界における通常の意味をもつも
のとする。これにはオスミウム、ルテニウム、イリジウ
ム、ロジウム、白金およびパラジウムが包含される。こ
れら白金族金属は白金族金属の1種と他のものとの合金
として使用することもできる。また、白金族金属の1種
をステンレス鋼などのような別の金属中に合金化しても
よい。オスミウムは揮発性の化合物を形成するので表面
層として含ませるのは好ましくないが、他の白金族金属
または本方法によって保護しようとする基体金属と配合
して合金化すると好ましい。
材)と接触する熱水中に酸素が存在すると、酸素がほと
んどまたはまったく存在しない熱水と比較して、前記要
素の応力腐蝕速度が速いということが観察されている。
高温高圧の水用の封じ込め系の応力腐蝕割れの速度は、
そのような封じ込め系の暴露されているステンレス鋼の
電気化学電位が標準水素電極(SHE)を基準にして−
230〜−300mVという一定範囲の臨界電位値より
高いか低いかによって変化し得るということも観察され
ている。応力腐蝕割れの進行は、前記電気化学電位が前
記臨界範囲の値より高い系では促進され、電気化学電位
が前記臨界範囲の値より低い系ではかなり遅い。水が酸
素を含有していると電位が前記臨界範囲より高くなる傾
向があり、一方酸素がまったくまたはほとんど存在しな
い水では電位が臨界範囲より低くなる傾向がある。
ンレス鋼の腐蝕電位を臨界範囲以下に低下させることが
できるひとつの手段は水中に水素を注入することであ
り、通常は化学量論的にみて水中の酸素量を越える量で
注入する。これによって、水中に溶解している酸素の濃
度が低くなると共に金属の腐蝕電位も低くなる傾向があ
る。
の水中に水素を注入することは応力腐蝕を低減させるの
に有効であった。しかし、所望の低い電位を確実・有効
に達成するために必要になる水素の量は原子炉によって
いろいろと変化することが判明した。
は、沸騰水型原子炉のステンレス鋼製封じ込め系の内部
表面の水素‐水レドックス対に対する触媒活性を向上さ
せることによって確実・有効に腐蝕電位を臨界値以下に
下げられるように改善するために、前記内部表面を改変
することである。
水素を注入するとそのような高温高圧の水用の封じ込め
系の応力腐蝕割れを低減するのに有効であった。しかし
ながら、本発明者は、水素を含有する水にさらされる封
じ込め系の表面における触媒活性を高めると、いわゆる
「水素‐水化学」の有効性が改善されると考えた。した
がって、従来から認められている「水素‐水化学」と、
本発明で提案する触媒された「水素化学」との間には明
確な違いがある。従来の「水素‐水化学」という用語
は、通常150ppb 以上程度の水素を含有している水で
は、水素がそれより少ない水の場合とは異なる別の化学
が成立つということを意味している。この従来の水素‐
水化学が有効であるためには、水素は常に、存在する酸
素より化学量論的に過剰で存在しなければならず、この
ような場合、水素が存在する結果として応力腐蝕割れが
低減または抑制されているはずである。しかし、本発明
者は、高温高圧の水と接触している金属表面における触
媒活性を高めることによって、この応力腐蝕割れをさら
に大きく低下させることができると考えた。特に、本発
明者は、バルクな高温高圧の水にさらされる表面上に白
金族金属に属する少なくとも1種の金属のように触媒的
に活性な物質を少量付着(deposition)させると、化学量
論量未満の量の水素の存在下で、その表面における腐蝕
電位すなわち電気化学電位を下げるのに有効であり、し
たがってその表面から発生する応力腐蝕割れを低下させ
るのに有効であることを発見したのである。これを本発
明者は触媒された水素‐水化学とよぶ。
高めの濃度の水素を注入することが応力腐蝕割れを低減
するのに有効であり得ることを発見したのであるが、さ
らに、この役割における水素の有効性はステンレス鋼表
面上の水素‐水レドックス対の非可逆性によって制限さ
れるということも知見したのである。本発明者が提案
し、かつ触媒された水素‐水化学を通して実験的に立証
したことは、注入水素の濃度を減らし、かつ酸化された
ステンレス鋼表面における触媒活性を増大させ、したが
って、この触媒が存在しないときに許容することができ
る濃度より高い濃度の酸素が残留して存在する場合で
も、望ましい低めの腐蝕電位を容易に達成できるように
することによって、前記ステンレス鋼表面上の水素‐水
レドックス対の非可逆性を改善することができるという
ことである。
化学を通して、この低めの電位が、触媒を使用しない従
来技術の水素‐水化学において必要とされ使用されてい
た濃度より低い水素濃度で達成することができることを
知見した。すなわち、本発明者の認識によると、従来の
水素‐水化学における応力腐蝕割れを低下させるための
努力目標である低い腐蝕電位は、水中に低めの濃度の水
素を存在させると共に金属表面における触媒活性を増大
させることによって、より確実に、しかも比較的高濃度
の残留酸素の存在下で達成することができるのである。
本発明者は、このより低い腐蝕電位が、より効率的に、
しかも触媒が存在しない場合よりも少ない水素で達成す
ることが可能であることを発見したのである。
金族金属の可溶性塩の極めて稀薄な溶液を反応容器およ
び配管中に循環させることによって、金属表面における
触媒活性を改良することを提案するものである。この方
法で、ステンレス鋼成分の置換反応によって、または適
当な無電解還元剤の助けによって、白金族金属の微細な
皮膜(deposition)が表面上に形成される。あるいは、交
換部品、たとえばノズルや循環用配管を原子炉に設置す
る前に触媒皮膜で被覆してもよい。
素‐水化学の有益な結果のいくつかが明らかとなろう。実施例1 試験用に316ステンレス鋼のク―ポン(研摩金属
片)を2個製造した。これらのク―ポンはいずれも長さ
が2″、幅が3/8″、厚さが1/8″であった。これ
らのク―ポンの表面を微細なアルミナ粉末でグリットブ
ラストすることによって清浄にした後、メッキ操作の直
前に1:1HCl中で1分間エッチングした。使用した
メッキ操作は、グリットブラストしたク―ポン上に無電
解メッキ処理によってパラジウムのメッキ皮膜を形成す
るように設定した。使用した無電解メッキ工程は、「フ
ァ―スト・チョイス(First Choice)」無電解パラジウム
P−83という米国ペンシルベニア州キャラリ―(Calle
ry)のキャラリ―・ケミカル社(Callery Chemical Comp
any)の工業的手法である。
めコナックス(Conax)フィッティングに取付け、残りの
ク―ポンは自由にしておいた。無電解メッキ処理は両方
のク―ポンに対して同時に行ない、同じ浴中で一緒にメ
ッキした。自由なサンプルの重量変化が4.9ミリグラ
ムであったので、取付けなかったサンプルの膜厚は0.
4μmと見積られた。この皮膜の厚みは両方のサンプル
で同じであると仮定した。この厚みは無電解パラジウム
メッキプロセスで予想された範囲内である。しかし、ク
―ポンサンブル上のパラジウムコ―ティングの厚さをさ
らに正確に決定するために、この目的で市場に供給され
ているセイコ―(Seiko)製のX線厚み計を用いて厚さの
測定試験を行なった。厚みは0.79μm(マイクロメ
―トル)であった。
取付けたサンプルを直接、一連の水化学研究用にセット
してあるテストル―プに移した。このル―プは、高温高
圧に維持された水が試験片上を通過するようになってい
るオ―トクレ―ブに水を循環させるためのポンプを備え
た閉回路である。このオ―トクレ―ブに、コナックス(C
onax)に取付けたク―ポンを、初期の試験で使用した第
二の同等ではあるがパラジウム皮膜をもたないサンプル
および白金黒付白金電極と共に入れた。この系を280
〜285℃の温度にし、150ppb の水素が溶解してい
る水を毎分200ミリリットルの流速で循環させて試験
用ク―ポン上に通した。このようにして一日経過した後
供給水中に酸素ガスも導入し、その酸素ガスの濃度を数
日にわたり次第に増大させた。
h)とストッダ―ド(N.H. Stoddard)が「腐蝕(Corrosio
n)」、第41巻、第1号、第45頁に記載したジルコ
ニア参照電極を使用して電気的測定を行なった。得られ
たデ―タを図1に示すようなグラフにプロットした。図
1は、試験水中の酸素濃度(ppb)に対して電位をプロッ
トしたグラフである。2種の試験片と白金電極のSHE
(標準水素電極)スケ―ルに変換した電位を、図1で3
つの異なる試験片を表わす3つの別々のプロット上に点
1〜5として示す。凡例に示してあるように、白丸はパ
ラジウム皮膜のないステンレス鋼サンプルの電位に対応
し、黒丸は白金参照電極に、そして三角はパラジウム皮
膜を有するステンレス鋼サンプルに対応する。点5の
後、この試験系には問題が生じたため、約1カ月の間試
験を停止する必要があった。
の水化学をシミュレ―トした条件下で作動させた。この
通常の水化学条件は、溶解している酸素が200〜30
0ppb で水素が添加されてない状態に相当する。このよ
うに通常の水化学条件下で系を2日間作動させた後、ふ
たたび150ppb の溶解水素を供給水中に導入した。こ
の水素を導入する前の系は、図1で3つの試験片に対し
て点6として示す。
ppb まで減らした。この酸素の段階的低下は、図1で3
種の試験片に対して点7〜13として表わされている。
この期間の途中で一回だけ中間段階として通常の水化学
状態に戻した。この段階は図で3つの試験片の各々に対
して点9として示されている。
で、溶解酸素濃度をふたたび256ppb まで増大した。
この変化に対応する点は3種の試験片の各々に対して図
の点14〜16として示す。このような変化の後、この
系をふたたび8日間にわたって通常の水条件に戻して、
この通常の水条件がパラジウムで処理してあるサンプル
に対して有害な影響を及ぼすかどうか判定した。この時
点で、条件をふたたび水素‐水化学状態、すなわち水中
に水素が150ppb で酸素が325ppb の状態に戻し
た。これらの条件下で、パラジウムで処理したク―ポン
の電位は基本的に白金電極の電位と同等であり、図1の
パラジウム処理ク―ポンに対する三角の点18で表わさ
れるように電位は低い値であるが、未処理のステンレス
鋼ク―ポン(白丸の点18)は低い電位を示さなかっ
た。
から、パラジウムで処理したサンプルは、触媒された水
素‐水化学条件下で低い電位に達し、しかも白金電極の
電位とほぼ同等な電位を示すことが明らかとなった。こ
れらはどちらも、応力腐蝕割れを防ぐ臨界電位範囲であ
る−230〜−300mV以下であった。これと同じ期
間中、パラジウムをもたないサンプルは水素の存在下で
低濃度の酸素でもずっと高い正の電位に分極した。この
分極の大きさは、作動点が通常の水化学条件に近付いた
場合の方が、水素の存在下で酸素濃度が低い場合より大
きかった。
―タはパラジウム処理の有効性を如実に示している。パ
ラジウムによる処理は、白金族に属する任意の金属によ
る処理の代表例と考えられる。さらに、この試験で得ら
れたデ―タから、メッキ皮膜の厚さが0.79μm(7
900オングストロ―ム)より薄くても、高温高圧の水
にさらされるステンレス鋼製封じ込め系を、応力腐蝕割
れの程度を増大させる影響から保護するのに有効である
と判断される。50オングストロ―ム程度の薄い白金族
金属皮膜でも、溶解している酸素濃度より化学量論的に
みて過剰の水素の注入と組合せて使用すると、応力腐蝕
割れを大幅に低下させるのに有効であると考えられる。
系に対する試験法として本発明者の知る限りにおいて、
いかなる試験法でも、応力腐蝕割れを低下させるという
意味で本実施例で示された応答と同等な応答はいまだか
って達成されたことがない。本実施例から明らかなよう
に、パラジウム被膜を有するサンプルの電位は、供給水
中に300ppb を越す酸素が溶解している場合でも白金
黒付白金電極の電位と同等である。酸素300ppb は3
8ppb の水素と等価であり、したがって水素はやはり化
学量論的に過剰であるという点に注意されたい。実施例
2 図2には、パラジウム処理の効果を別の方法で示
す。これらのデ―タを得るために行なった試験では、実
施例1の場合とは逆に、一定量の酸素を含有する水に添
加した水素の量を増大させた。パラジウムメッキしてな
いサンプルでは電位の変化が少ししかなかったのに対し
て、表面にパラジウムメッキを有する場合には水素が約
24ppb のところで高い電位範囲から低い電位範囲へ大
きく変化する。水の生成に関して300ppb の酸素と化
学量論的に等価な水素濃度は37.5 ppb、すなわち測
定された量の1.56倍である。酸素と水素の再結合反
応は白金族金属層の表面のみで起こるので、水素に関し
て観察された低めの値は、水中での水素の拡散係数が酸
素の拡散係数よりかなり大きいという事実を反映してい
るものと思われる。その結果、本実施例における水素と
酸素は、バルクな水中での水素と酸素の比が化学量論量
より低いにもかかわらず、水の生成に必要な化学量論比
で電極表面に到達する。
は、電極表面への水素と酸素の流れの化学量論的なバラ
ンスがとれている点に対応しているようである。これら
のデ―タから、触媒された表面の場合、その電位は、こ
の触媒が存在しないときに必要とされるよりもはるかに
少ない水素によって所望のレベルまで低下させることが
可能であるということが分かる。これは、水中の水素濃
度が低いと揮発性の窒素含有分子種の発生が減るという
確かな証拠があるので、タ―ビン建造物における窒素の
影響の抑制という観点から有益であるはずであら。実施例3 図1と図2のデ―タに類似する別のデ―タを2つ、図
3と図4に示す。これらは、316SS−CONT−P
dというサンプルを全部で13カ月試験した後に得られ
たデ―タであり、パラジウムメッキによって生ずる挙動
が長期間にわたって保持されることを示している。
最右欄の値から明らかなようにパラジウムの損失はほん
の少しだけだったようである。
料学会(Am. Soc. for Testing Materials)刊、ディ―ン
(S.W. Dean)ら編、エ―・エス・ティ―・エム規格(AST
M STP)第821、第271頁、アンドレ―ゼン(P.L. An
dresen)著、「環境感受性破断、試験法の評価と比較(E
nvironment-Sensitive Fracture: Evaluation and Comp
arison of Test Methods)」という文献に以前記載され
たようにインストロン(Instron)1131型試験機と外
部銀/塩化銀参照電極を備えた小さいオ―トクレ―ブと
を使用して別の系で定伸長率(CERT)試験をいくつ
か実施した。このCERT試験を実施するために、直径
102ミリメ―トルでスケジュ―ル80(ヒート番号0
4836)の溶接AISI304ステンレス鋼を機械加
工してゲ―ジ直径が0.2″で長さが1″の円筒形引張
試験片を作成した。これらのパイプ状サンプルは以前ア
ンドレ―ゼン(Andresen)が文献中に報告した広範囲にわ
たる研究で使用された群の中からとった。この点につい
ては、アンドレ―ゼン(P.L. Andresen)著、電力研究学
会レポ―ト(EPRI Report)NP−2424−LD(19
82年6月)第3−3頁を参照されたい。
のアルゴン雰囲気中で24時間熱処理した。鋭敏化はシ
ュウ酸エッチング試験によって確認した。直接CERT
に使用する直前かまたは予備的にパラジウムメッキする
直前にサンプルを湿った600グリットペ―パ―で磨い
た。パラジウムメッキは実施例1に記載したようにして
行なったがメッキの時間と温度を変えた。
酸素の混合物で平衡化した。硫酸濃度は、一定の割合で
濃溶液を主流に注入することによって0.3×10-6モ
ルに維持した。この硫酸の供給により、オ―トクレ―ブ
に供給する水の電気伝導度が約0.3マイクロジ―メン
ス/cmになった。
位とオ―トクレ―ブの電位を参照電極に対してモニタ―
した。試験片に歪みを加える前に、試験片を酸素濃度1
00または200ppb の通常の水条件に約24時間さら
してから試験条件にした。試験条件は水中の酸素濃度を
同じとしたが水中に水素も存在させた。全試験を通じて
使用した歪み速度は1×10-6/sである。
およびそれと隣接する面を走査型電子顕微鏡で検査し
た。
す。CERTにはAISI304SSサンプルを使用し
たが、その電位は、類似の水化学条件下で電気化学的測
定に使用したAISI316旗型サンプルの電位と一致
していた。SCCからの保護に対する臨界電位との関係
を図5にさらに明確にして示す。ここで、注意しなけれ
ばならないのは、AISI316SSオ―トクレ―ブの
電位はすべての場合に臨界電位より高いままだったこと
である。これはパラジウムメッキしてなかったためであ
る。
度は、温水循環(HWC)を使用するBWR運転条件下
で受入れられると通常考えられる値よりずっと高い値に
維持した。また、パラジウムメッキしてない比較対照試
験を含む最初の二回の試験は水素/酸素の比を高くして
実施した点にも注意すべきである。残りの試験では、サ
ンプル表面における水素/酸素のモル比を、水素と酸素
の拡散係数の比1.83に基づいた水の生成に対する化
学量論値(2:1)に近い値に保持した。サンプル表面
でのモル比が>2.0の場合、パラジウムメッキしたサ
ンプルの電位は、パラジウムコ―ティングの厚みがたっ
た0.03μmでも臨界値よりずっと低かった。<2.
0の比では、厚み0.77μmの被膜を有するサンプル
の電位は臨界値より高かった。
したところ、パラジウムメッキしてない比較対照と試験
4(水素/酸素の比を化学量論比より低くして実施し
た)のパラジウムメッキしたサンプルのみが広い範囲で
粒間応力腐蝕割れを起こしていたことが判明した。この
どちらの場合においても、破断した近くの自由表面にも
いくつかの粒間割れが認められた。その他の試験ではい
ずれも、低電位での他の試験で広く観察されているよう
に、延性の破断が観察され、それに伴って破断面および
自由な表面に粒子内割れがいくらか見られた。
試験片の腐蝕電位より低い腐蝕電位、それどころか水中
の酸素濃度が比較的高くて水素濃度が低い場合でもSC
Cの防止に対する臨界値より低い腐蝕電位を容易に達成
できるようにするのに有効であったことが明らかであ
る。さらに、この挙動は、パラジウム被膜が0.03μ
m程度に薄い場合に達成され立証された。電位に関する
結果と一致して、故意に高い電位に保持した比較対照サ
ンプルおよびパラジウムメッキしたサンプル(サンプル
表面におけるH2 :O2 の比<2)は、明らかに粒間応
力腐蝕割れを示していたが、パラジウムメッキした残り
のサンプルでは割れは見られなかった。これは、明らか
に、注入した水素の存在とパラジウム被膜との組合せに
よって改良された挙動が達成できるということを立証し
ている。
と白金族金属との組合せが、長期にわたって低い電位を
容易に達成・維持する際に価値があることを明らかに立
証している。
ットしたグラフである。左の欄に示してあるデ―タは水
中に150ppb の水素も存在する状態で得られたもので
あり、右側の狭い欄に示してあるデ―タは水中に水素が
存在しない場合である(測定温度258℃)。
の水素濃度に対して電圧をプロットしたグラフである
(測定温度280−285℃)。
る状態で水中の酸素濃度に対して電圧をプロットしたグ
ラフであるが、図1の状態から数か月作動させた後のデ
―タである(測定温度280−285℃)。
ロットしてから数か月作動させた後に得られたデ―タで
ある(測定温度280−285℃)。
(SHE)に対する電圧をまとめて示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 沸騰水型原子炉の封じ込め系の応力腐蝕
割れを低減させるための方法であって、原子炉の運転に
先立って白金族金属に属する少なくとも1種の金属の少
なくとも0.03μmの薄い皮膜で前記封じ込め系の内
面を被覆し、そして前記沸騰水型原子炉の運転中に高温
高圧の水の中に水素ガスを溶解すること、からなる方
法。 - 【請求項2】 高温高圧の水中の水素の濃度が150pp
b 以下である、請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 皮膜が電気化学手段、化学蒸着、スパッ
タリング、化学的置換反応またはイオン注入によって形
成される、請求項1記載の方法。 - 【請求項4】 皮膜が、前記白金族金属源から金属を蒸
発させ、封じ込め系の内面上に凝縮させることによって
形成される、請求項1記載の方法。
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