JP2620479B2 - 豚成長ホルモンのポリペプチドおよびその製造方法 - Google Patents

豚成長ホルモンのポリペプチドおよびその製造方法

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JP2620479B2 JP5004198A JP419893A JP2620479B2 JP 2620479 B2 JP2620479 B2 JP 2620479B2 JP 5004198 A JP5004198 A JP 5004198A JP 419893 A JP419893 A JP 419893A JP 2620479 B2 JP2620479 B2 JP 2620479B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、豚成長ホルモンおよび
豚成長ホルモン様ポリペプチドを生産するためのDNA
配列、組換DNA分子およびその生産方法に関するもの
である。さらに詳細には、本発明は適当な宿主において
発現されるDNA配列およびその発現により生成される
生産物に関するものである。本発明のDNA配列および
組換DNA分子は、豚成長ホルモンの成長促進性生物学
的活性を有するポリペプチドを暗号化することを特徴と
する。以下の記載から判るように、本発明のDNA配
列、組換DNA分子および方法は、豚における一般的同
化作用剤として有用なポリペプチドの生産において、特
にこれら動物の成長速度、体重増加および肉生産を増大
させるために使用することができる。
【0002】
【従来の技術】豚成長ホルモン(「SGH」)は、脳下
垂体の前葉で合成され、そこから分泌されるポリペプチ
ドホルモンである。SGHは、先駆蛋白質(豚前成長ホ
ルモン)として合成されかつホルモンが血流中へ分泌さ
れかつ放出される際に豚成長ホルモンまで成熟すると信
じられる。豚成長ホルモンの部分的アミノ酸配列は既に
報告されている[ジェー・ビー・ミルス等、「豚成長ホ
ルモンの臭化シアノーゲン開裂および部分的アミノ酸配
列」、ジャーナル・バイオロジカル・ケミストリー、第
245巻、第3407−15頁(1970);エー・イ
ー・ウイルヘルムおよびジェー・ビー・ミルス、「豚成
長ホルモンの主構造に関する研究」、グロース・アンド
・グロースホルモン、エー・ペシルおよびイー・イー・
ミュラー編、アムステルダム、エクセルプダメジカ・フ
ァンデーション(1972)、第38−41頁、インタ
ーナショナル・コングレス・シリーズ 第244号]。
【0003】成長ホルモンは、一般に生命サイクル全体
にわたって生産されるが、明らかに成体前の期間におい
て多量に生産される。これらホルモンは骨格の成長、窒
素保持、蛋白質合成を促進し、さらにグルコースおよび
脂質の代謝に影響を与えることが知られている。したが
って、成長ホルモンは一般的な同化作用剤として認識さ
れている。
【0004】成長ホルモンは、若干特異的な種類のもの
である。しかしながら、或る種の動物からの成長ホルモ
ンは、他の種類の動物において発生規模に関し生物学的
に活性が低いことがある。成長ホルモン活性のメカニズ
ムは充分には理解されていないが、成長ホルモンの投与
は動物の成長速度、体重増加および肉生産を著しく増大
させることが示されている。たとえば、或る試験におい
て、精製豚成長ホルモンを毎日注射した豚における体重
増加の平均速度は1日当たり2.26ポンドであった
(これは比較豚における2.19ポンド/日の平均体重
増加に対比される)。より重要なことに、処理された豚
は比較豚よりも1日当りの餌消費量が著しく少ない
(8.40ポンドに比較して7.03ポンド)。さら
に、処理した豚は死体品質における著しい改善を示し
た。成長ホルモンで処理した豚の死体は平均して30.
57インチの長さを示し、かつ背脂肪の厚さは1.40
インチを有したのに対し、比較豚のそれは平均して2
9.33インチの長さおよび1.77インチの背脂肪を
有した。可食肉の化学組成も成長ホルモン処理した動物
において著しく改善され、すなわち蛋白質13.50
%、水分49.13%および脂肪36.76%であるの
に対し、比較群においては蛋白質10.8%、水分3
9.43%および脂肪49.27%であった[イー・ジ
ェー・ターマン、「豚に対する脳下垂体前葉成長ホルモ
ンの効果」、論文;プルジュ大学(1953年4
月)]。残念ながら、豚成長ホルモンを使用する豚にお
ける前記の改善された成長および肉生産は、SGHの入
手が不充分であるため広く実現化することができない。
今日、SGHは豚の脳下垂体腺から抽出される。要する
に、この原料は、SGHの必要とされる産業的量を与え
るには殆ど不充分である。
【0005】分子生物学における最近の進歩は、特異的
な非細菌性蛋白質を暗号化するDNAを細菌細胞中へ導
入することを可能にした。一般に、化学合成で製造され
るもの以外のDNAを用いるこの種の組換DNA分子の
作成は、所望蛋白質を暗号化するメッセンジャRNA
(mRNA)の単一鎖DNAコピー(cDNA)を生成
させ、このcDNAを二重鎖DNAに変換し、この二重
鎖cDNAを適当なクローン化ベヒクルにおける適当な
部位に結合させて組換DNA分子を生成させ、かつこの
組換DNA分子により適当な宿主を形質転換させる工程
からなっている。かくして、形質転換宿主の培養は、こ
の宿主がDNA配列を発現しかつ所望蛋白質を生産する
ことを可能にする。
【0006】組換DNA技術を用いる幾つかの非細菌性
蛋白質の生産が報告されている。これらには、牛前成長
ホルモン[たとえば、ダブリュー・エル・ミラー等、
「牛成長ホルモンmRNAに対して相補的なDNAの分
子クローン化」、ジャーナル・バイオロジカル・ケミス
トリー、第255巻、第7521−24頁(198
0)、ヨーロッパ特許出願第47600号および英国特
許出願第2073245A号]およびひと前成長ホルモ
ン[たとえば、ジェー・エー・マーシャル等、「ひと成
長ホルモン:細菌における補完的DNAクローン化およ
び発現」、サイエンス誌、第205巻、第602−06
頁(1979)およびヨーロッパ特許出願第20147
号]が包含される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
組換DNAはいずれも本発明におけるような豚成長ホル
モンのポリペプチドもしくは豚成長ホルモン様ポリペプ
チド或いはこれら豚成長ホルモンもしくは豚成長ホルモ
ン様ポリペプチドが産業的量で入手し得れば達成される
ような肉生産における著しい改善に関するものでない。
【0008】本発明は、SGHまたはSGH様ポリペプ
チドを暗号化するDNA配列を単離しかつこれら配列を
適当な宿主中で発現されてSGHの成長促進性生物学的
活性を示すポリペプチドを生産させることにより上記の
問題を解決する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、豚の成
長速度および肉生産を増大させる種々の用途に使用する
ため、SGHの活性を示すポリペプチドを産業的量で得
ることが初めて可能になった。
【0010】以下の記載から判るように、本発明のDN
A配列および組換DNA分子は、適当な宿主における豚
成長ホルモンまたは豚成長様ポリペプチド、すなわちS
GHの成長促進性生物学的活性を示すポリペプチドの生
産を可能にする。本発明のポリペプチドは、宿主中で生
産されたままの形態において、或いは組成および豚にお
ける成長速度および肉生産の改善方法を改変した後に使
用することができる。
【0011】したがって、上記から判るように、本発明
の基本的面は、SGHの成長促進性生物学的活性を示す
ポリペプチドを暗号化することを特徴とするDNA配列
の製造である。この種のDNA配列はpBR322(P
st)/SGH−9D、pSGH−△7、pSGH−
(Met−Phe)のDNA挿入物、これら挿入物にヒ
ブリド化しかつSGH様ポリペプチドを暗号化するDN
A配列ならびに前記DNA配列もしくは挿入物のいずれ
かにより発現の際に暗号化されたポリペプチドを発現に
際し暗号化するDNA配列よりなる群から選択される。
【0012】
【実施例】本発明を一層よく理解するよう、以下詳細に
説明する。以下の説明において、次の用語を使用する。
【0013】ヌクレオチド:糖成分(ペントース)と燐
酸と含窒素複素環塩基とよりなるDNAもしくはRNA
のモノマー単位。この塩基はグリコシド炭素(ペントー
スの1′炭素)を介して糖成分に結合される。塩基と糖
との組合せをヌクレオチドと呼ぶ。各ヌクレオチドはそ
の塩基により特性化される。4種のDNA塩基はアデニ
ン(「A」)、グアニン(「G」)、シトシン
(「C」)およびチミン(「T」)である。4種のRN
A塩基は、A、G、Cおよびウラシル(「U」)であ
る。
【0014】DNA配列:隣接ペントースと3′炭素と
5′炭素との間でホスホジエステル結合により互いに結
合されたヌクレオチドの線状列。
【0015】コドン:mRNAを介してアミノ酸、翻訳
開始信号または翻訳停止信号を暗号化する3個のヌクレ
オチド(トリプレット)のDNA配列。たとえば、ヌク
レオチドトリプレットTTA、TTG、CTT、CT
C、CTAおよびCTGはアミノ酸ロイシン(「Le
u」)を暗号化し、TAG、TAAおよびTGAは翻訳
停止信号であり、またATGは翻訳開始信号である。
【0016】読枠:mRNAをアミノ酸配列まで翻訳す
る際のコドンのグループ化。翻訳の際、適正な読枠を維
持しなければならない。たとえば、配列GCTGGTT
GTAAGは3つの読枠もしくは相で翻訳することがで
きる。これら相のそれぞれは次の異なるアミノ酸配列を
与える:GCT GGT TGT AAG −− Ala−Gl
y−Cys−Lys G CTG GTT GTA AG −− Leu−V
al−Val GC TGG TTG TAA G −− Trp−L
eu−(停止)
【0017】ポリペプチド:隣接アミノ酸のα−アミノ
基とカルボキシ基との間でペプチド結合により互いに接
続されたアミノ酸の線状列。
【0018】ゲノム:細胞またはウイルスの全DNA。
これは特に物質のポリペプチドを暗号化する遺伝子、な
らびにオペレータ、プロモータおよびリボソーム結合か
つ相互作用配列を包含し、たとえばシャイン−ダルガル
ノ配列のような配列をも含む。
【0019】遺伝子:雛型またはメッセンジャーRNA
(「mRNA」)を介して特定のポリペプチドに特性的
なアミノ酸の配列を暗号化するDNA配列。
【0020】転写:遺伝子からmRNAを生産する過
程。
【0021】翻訳:mRNAからポリペプチドを生産す
る過程。
【0022】発現:DNA配列もしくは遺伝子によりポ
リペプチドを生産するために受ける過程。これは転写と
翻訳との組合せである。
【0023】プラスミド:プラスミドが宿主細胞で複製
されるような完全「レプリコン」からなる非染色体二重
鎖DNA配列。プラスミドを単細胞生物内に挿入する
と、この生物の特性はプラスミドのDNAの結果として
変化し、或いは形質転換することができる。たとえば、
テトラサイクリン耐性(TetR )に対する遺伝子を有
するプラスミドは、予めテトラサイクリンに対し感受性
の細胞をテトラサイクリンに対し耐性の細胞まで形質転
換することができる。プラスミドにより形質転換された
細胞を「形質転換体」と呼ぶ。
【0024】ファージまたはバクテリオファージ:細菌
性ウイルスであって、その多くは蛋白質エンベロプまた
はコート(「カプシド」)にカプセル化されたDNA配
列よりなっている。
【0025】クローン化ベヒクル:宿主細胞において複
製しうるプラスミド、ファージDNAまたはその他のD
NA配列であって、これはDNAの本質的生物学機能、
たとえば複製、コート蛋白質の生成の喪失を伴わずに、
或いはプロモータもしくは結合部位の喪失を伴わずに決
定可能に前記DNA配列を切断することができ、かつ形
質転換の同定に使用するのに適する標識、たとえばテト
ラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性を有する1個
もしくは少数のエンドヌクレアーゼ認識部位を特徴とす
る。クローン化ベヒクルはしばしばベクターと呼ばれ
る。
【0026】クローン化:前記1種の生物もしくは配列
から誘導される生物またはDNA配列の集落を無性繁殖
によって得る過程。
【0027】組換DNA分子またはヒブリドDNA:生
細胞の外部で端部結合されておりかつ或る種の宿主細胞
に感染してそこに維持される能力を有する異なるゲノム
からのDNA断片よりなる分子。
【0028】発現制御配列:DNA配列もしくは遺伝子
の発現を、これら配列に作用結合された際、制御かつ調
整するヌクレオチドの配列。これらはファージλのla
c系、trp系、主オペレータおよびプロモータ領域、
fdコート蛋白質の制御領域、ならびに原始核もしくは
成熟核細胞およびそのウイルスの遺伝子の発現を制御す
ることが知られたその他の配列またはそれらの組合せを
包含する。
【0029】SGH:豚成長ホルモン。
【0030】SGH様ポリペプチド:SGHの成長促進
性生物学的活性を示すポリペプチド。
【0031】図1は、組換DNA分子の混合物を製造す
るための方法の一具体例の略図であり、これら組換DN
A分子の幾つかはSGHまたはSGH様ポリペプチドを
暗号化する挿入DNA配列を特徴とする。
【0032】ポリA+ RNA含有の豚成長ホルモンmR
NA(SGH−mRNA)の製造 ドライアイス中で凍結させた4〜6gの豚脳下垂体前葉
腺(ペルフリーズ社、アーカンサス州)を、5Mのチオ
シアン酸グアニジウムと50mMのクエン酸ナトリウム
と、0.5%のナトリウムラウリルサルコシルと0.1
Mのβ−メルカプトエタノールとからなる溶液へ加えた
(10ml/g脳下垂体腺)[ジェー・エム・チャーグ
ウイン等、バイオケミストリー、第18巻、第5294
−99頁(1979)]。次いで、これらの脳下垂体腺
をその溶液中で4℃まで解凍させ、かつこの混合物を2
0秒間6回破裂させてホモジナイズした(ポリトロ
ン)。このホモジナイズ物を遠心分離した後(ソルバー
ル型遠心分離器、6000rpm、5min、室温)、
7.0mlの核酸含有上澄液を2.5mlのCsCl
(0.1MのEDTA中0.5M)の上に層状化させ、
これをパラフィン油で覆った。次いで、この試験管を遠
心分離して(SW41型、30000rpm、18時
間、20℃)RNA含有フラクションをペレット化させ
た。
【0033】上澄液を捨てかつRNA含有ペレットを全
部水中へ再懸濁させた後、水溶液を同容量のフェノール
−クロロホルム(1:1)で2回および同容量のエーテ
ルで2回それぞれ抽出した。次いで、RNAを3倍容量
のエタノールで水相から沈澱させ、生じた沈澱物を遠心
分離により回収した。全RNAの収量:8mg
【0034】上記の全RNA4mgを1mlのトリス−
HCl(10mM、pH7.5)−EDTA(1mM)
(「TE緩衝液」)に再懸濁し、そしてこの溶液を65
℃にて10分間加熱した。2MのKClを0.5Mの最
終濃度まで加えた後、この混合物をオリゴ−dT−セル
ロースカラムに加え、そしてこのカラムを0.5MのK
Clで洗浄してリボソームRNAの全部を除去した。最
後に、カラムに結合したポリA+ RNAを10mMのト
リス−HCl(pH7.5)にて室温で溶出させ、この
ポリA+ RNA含有フラクションを貯蔵した。上記のよ
うに結合したフラクションからRNAを、エタノールお
よび塩での沈澱、遠心分離および水中への再懸濁によっ
て回収した。ポリA+ RNAの収量:200μg。
【0035】単離したポリA+ RNAの活性を検査する
ため、2μgのこのポリA+ RNAをうさぎ網様細胞溶
解物S35−メチオニン無細胞系(NEN)を用いて試験
管中で翻訳し[エッチ・アール・ビー・ペルハムおよび
アール・ジェー・ジャクソン、ヨーロピアン・ジャーナ
ル・バイオケミストリー、第67巻、第247頁以降
(1976)]、そしてこの生成物をオートラジオグラ
フィーによりSDS/ポリアクリルアミドゲルで分析し
た。この分析は、単離したポリA+ RNAが翻訳されて
豚前成長ホルモンにつき予想される寸法(約24,00
0)に相当する分子量を有するポリペプチドを生産する
ことを示した。
【0036】勿論、ポリA+ RNAは多数の異なるRN
Aの混合物であることを理解すべきである(図1)。S
GHまたはSGH様ポリペプチドに対し特異的なmRN
Aを除いて、これらRNAは望ましくない不純物である
(図1)。残念ながら、これら不純RNAはクローン化
工程の残部においてSGH−mRNAと同様に挙動す
る。したがって、ポリA+ RNAにおけるその存在は多
数の無用のクローンを生ずると共に、正確なクローン、
すなわちSGHを暗号化するクローンを極めて多数の不
純物から選択するという複雑な選別問題を提起する。
【0037】SGH−cDNAを含有するcDNA混合物の合成 ポリA+ RNAに補完的な単一鎖DNAを調製するた
め、20μlのポリA+RNA(10μg、水中)と2
μlの0.15M CH3 Hgとを混合し、得られた溶
液を室温にて15分間静置した。次いで、この溶液へ1
0μlのオリゴdT(1μg/ml)と100μlのd
NTP(2.5mM、すなわち最終濃度0.5mMま
で)と20μlのα−P32−dATP(10mCi/m
l)50μlの逆転写酵素(16単位/ml、ライフ・
サイエンス社)と同容量の緩衝液(100mM トリス
−HCl(pH8.5)、20mM MgCl2 、14
0mMKCl、50mM DTT水中)とを加えた。溶
液の全容量は404.4μlであった。この溶液を42
℃にて90分間培養した後、これを100℃にて数分間
加熱し、そしてこれを遠心分離した(10000G、5
min.)。上澄液はポリA+ RNAに補完的な単一鎖
cDNAを含有した。cDNAの収量:1438μg
(少量のTCA沈澱による)。
【0038】ここでも、単一鎖cDNAは実際上ポリA
+ RNA混合物中に存在する対応のmRNAから転写さ
れた多数の異なるcDNAの複雑な混合物であることを
理解すべきである(図1)。他の因子も作用して、この
cDNA混合物を複雑化する。ポリA+ RNAの各mR
NA種は完全には転写することができない。寧ろ、各m
RNA種から多くの種類のcDNAが生成され得る(図
1に図示せず)。これら不完全cDNAのそれぞれは、
工程の残部において所望のcDNAと同様に挙動するの
で、cDNA混合物におけるその存在はさらに最終的ク
ローン選別工程を複雑化するだけである。
【0039】二重鎖cDNAの製造 上記で調製したcDNAを二重鎖cDNAまで変換する
ため、前記cDNAの1/2(0.7μg)を採取し、
そして50μlのクレノー(0.7単位/μl)と1.
5μgのMgCl2 (1M)と同容量のDNAポリメラ
ーゼ緩衝液(400mM トリス−HCl(pH6.
9)、150mM KCl、1mM dNTP、20m
M β−メルカプトエタノール)とを加え、そして混合
物を16℃にて17時間培養し、次いでさらに37℃に
て30分間培養した。次いで、1/8容量の2M酢酸ナ
トリウム(pH5.5)と2.5容量のエタノールとを
加えかつ−70℃まで15分間冷却することによりDN
Aを沈澱させた。遠心分離(10000G、10mi
n.)により沈澱物を回収した後、このペレットをエタ
ノールで洗浄し、これを水中に再懸濁させそしてこれを
セフアデックスG−75カラムに加えた。DNAを10
mM トリス−HCl−0.1mM EDTAによって
溶出させ、そしてDNA含有フラクションを貯蔵した。
DNA含有フラクションの全容量は377μlであっ
た。
【0040】貯蔵したDNA含有フラクションへ2M
NaCl、500mM 酢酸ナトリウム(pH4.
5)、10mM 硫酸亜塩および8μlSI(1000
単位/μl、ベーリンガーマンハイム社)よりなる溶液
42μlを加え、そしてこの溶液を30℃にて30分間
静置した。次いで、混合物を同容量のフェノールおよび
次いでエタノールで3回抽出し、得られた水相をセフア
テックス(登録商標)G−75カラムに加え、DNAを
5mMのKClで溶出させた。DNA含有フラクション
を貯蔵し、そしてこれを前記と同様にエタノールで沈澱
させた。
【0041】二重鎖DNAのクローン比 多種類の宿主/クローン化ベヒクル組合物を、二重鎖c
DNAのクローン比および発現に使用することができ
る。さらに、それぞれ特定のクローン化ベヒクルにおい
て、二重鎖cDNAを挿入するため種々の部位を選択す
ることができる。クローン化および発現の特定の選択
は、本発明の範囲を逸脱することなく当業者により容易
に行うことができる。
【0042】最初のクローン化において、細菌性プラス
ミドpBR322を選択した[エフ・ボリバール等、
「新規クローン化ベヒクルIIの作成および特定化。多目
的クローン化系」、ジーン誌、第95−113頁(19
77);ジェー・ジイー・サットクリフ、「DNA配列
から誘導されたpBR322 制御地図、長さ4361
ヌクレオチド対までの正確なDNA寸法標識」、ヌクレ
イック・アシッド・リサーチ、第5巻、第2721−2
8頁(1978)]、さらにそのPstI部位[エル・
ビラ−コマロフ等、「プロインシュリンを合成する細菌
クローン」、プロシーディング・ナショナル・アカデミ
ー・サイエンス・USA、第75巻、第3727−31
頁(1978)]、およびイー・コリK12 MC10
61[エム・カサダバンおよびエス・エヌ・コーヘン、
ジャーナル・モレキュラー・バイオロジー、第138
巻、第179−207頁(1980)]を選択した。
【0043】 1.PstI−開裂したdG−末端pBR322の製造 2回の連続するCsCl濃度勾配でプラスミドpBR3
22を精製し、かつその25μgを標準条件下でPst
Iエンドヌクレアーゼによって分解した(図1)。次い
で、Pst- I開裂したプラスミドへ50μlの水と3
μlのDTT(10mM)と1.5μlのdGTP(1
0mM)と10μlのゼラチン(1mg/ml)と10
μlの末端トランスフェラーゼ緩衝液[10mM Co
Cl2 、1.4Mカコジル酸カリウムおよび0.3Mト
リス−HCl(pH7.6)]と0.9μlの末端デオ
キシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(160単位/
ml、ラットクリフ・バイオケミカルス社)とを加え
た。この溶液を10℃にて13分間培養した後、5μl
のEDTA(250mM)を加え、そして得られた混合
物を同容量のフェノール−クロロホルム(1:1)で2
回および同容量のエーテルで3回抽出した。水相をdC
−末端二重鎖cDNAと後に組合せるため保存した。
【0044】2.dC−末端化cDNAの製造 前記のように調製したcDNAの約1/5(100μ
g)を25μlの水中に再懸濁し、50μlのH2 Oと
3μlのDTT(10mM)と1.5μlのdCTP
(10mM)と10μlのゼラチン(1mg/ml)と
10μlの末端トランスフェラーゼ緩衝液[10mM
CoCl2 、1.4Mカコジル酸カリウム、0.3Mト
リス−HCl(pH7.6)]と0.9μlの末端デオ
キシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(160単位/
ml、ラットクリフ・バイオケミカルス社)とを加える
ことにより二重鎖cDNAへdC末端を加えた(図
1)。この混合物を10℃にて13分間培養した後、5
μlのEDTA(250mM)を加え、そして得られた
混合物を同容量のフェノール−クロロホルム(1:1)
で2回および同容量のエ−テルで3回抽出した。ここで
も、水相をdG末端化されたPst−開裂pBR322
と組合せるために保存した。
【0045】 3.dG末端pBR322とdC末端cDNAの融合 dG末端Pst- I開裂pBR322(50μg)1μ
lとdC末端cDNA(1μg)2.5μlとを融合用
緩衝液[1M NaCl、200mM トリス−HCl
(pH7.6)、10mM EDTA]5μl中で混合
し、そして最終容量50μlまで水を加えた。混合物を
80℃にて3分間および45℃にて更に2時間加熱した
後、溶液の温度を4℃まで降下させ、これを1晩静置し
た。ここでも、この融合により生成された極めて僅かの
組換DNA分子のみが、SGHに関連するcDNA挿入
物を含有することを理解すべきである。(図1)。
【0046】4.ヒブリドによるイー・コリK12 M
C1061のトランスフェクション上記で融合させたd
G末端pBR322とdC末端DNAとをコロジオン袋
(UH100−25)中で1/10の融合用緩衝液(上
記)に対し、4℃で2時間透析して、全ての低分子量の
ものを除去した。次いで、この混合物を200μlのイ
ー・コリK12 MC1061[予めジー・エム・ブエ
ル等、ジャーナル・バイオロジカル・ケミストリー、第
254巻、第9279〜83頁(1979)に実質的に
記載されたように作成]へ加えた。プラスミドpBR3
22は、テトラサイクリン耐性を暗号化する遺伝子とア
ンピシリン耐性を暗号化する遺伝子とを含むので(図
1)、また後者の遺伝子はcDNAがPstI部位に挿
入されると失活されるので、PstI部位にDNA挿入
物を有する組換DNA分子で形質転換された集落を、こ
のように形質転換されていない集落から選別することが
できる(図1)。1ngのcDNAから約10000個
の形質転換された集落を単離した。これら集落は、ポリ
+ RNAにおけるRNAの混合物の完全もしくは部分
コピーを示す種々の組換DNA分子を包含する(図
1)。これら分子の大部分はSGH関連DNA挿入物を
含有しない。
【0047】SGH−cDNAを含有するクローンの選別 特定組換DNA分子を含有するクローン、すなわちSG
H関連DNA挿入物を含有するクローンにつき、クロー
ンの保存物を選別するには幾つかの方法がある。最初の
クローン選別法において、牛成長ホルモンを暗号化する
cDNAの400bpPstI断片を使用した[たとえ
ば、ミラー等、ジャーナル・バイオロジカル・ケミスト
リー、第255巻、第7521−24頁(1980)]
(図2)。この配列も、1982年8月16日付けでア
メリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託さ
れ、ATCC番号39173を付与されたpBGH−
(Met−Ala)のPstI制限によって得ることが
できる。
【0048】上記と同様に調製されたクローンの保存物
につきヒブリド化選択を行うため、この試料を使用した
(図2)。先ず、この試料をエム・グルンシュタインお
よびデイー・デイー・ホグネスにより「コロニ−ヒブリ
ド化:特定遺伝子を含有するクローン化DNAの単離方
法」、プロシーデイング・ナショナル・アカデミー・サ
イエンス・USA、第72巻、第3961−65頁(1
975)に記載されているようにこの試料を標識し、次
いでこれを使用して下記するようにSGH−Msp断片
試料を用いてクローンの保存物を選別した。
【0049】ヒブリド化陽性クローンの1種から、挿入
cDNA断片を有する組換DNA分子を単離し、前記断
片はSGHのアミノ酸配列の1部を暗号化するヌクレオ
チド配列決定により決定した[報告された部分アミノ酸
配列(上記)との比較による](図2)。
【0050】次いで、この陽性cDNAの200bp断
片を調製し(Mspによる分解、図2参照)かつこれを
標識し(グルンシュタインおよびホグネス、上記)、1
0000個のクローンの保存物に対するヒブリド化試料
として使用した(図2)。ヒブリド化するため、100
00個の集落をニトロセルロースフィルタ(ミリポア
社)に移し、これらフィルタを37℃にて1晩培養し
た。これら集落を0.5MのNaOHで7分間溶解させ
た後、フィルタを1Mのトリス−HCl(pH7.5)
と0.6MのNaCl(それぞれ3分間2回)で中和
し、そしてフィルタを2X SSC[0.15M Na
Cl−0.015Mクエン酸ナトリウム(pH7)]中
に浸漬した。フィルタを空気乾燥した後、これを80℃
にて減圧オーブン内で2時間加熱し、次いでこれらを4
X SSC(上記)、10Xデンハルト溶液および0.
1%SDS中で65℃にて2時間2回浸漬した。次い
で、25000P32カウント/フィルタの上記200b
p試料(2分間煮沸しかつ急速に冷却する)および4X
SSCと10Xデンハルト溶液と0.1%SDSとを
加え、これらフィルタを65℃にて12〜14時間ヒブ
リド化させ、これらを4XSSC、10Xデンハルト溶
液および0.1%SDSにて65℃で2時間洗浄し、さ
らにこれらを2X SSCにて65℃で30分間洗浄
し、そして乾燥させた。X線フィルムに1日間露出させ
た後、前記試料にヒブリド化されたDNA挿入物を含有
する約100個の集落を同定した。
【0051】これら陽性クローンの40種を選択して制
限分析および寸法決定に使用した(PvuI/Bgl
I)(図3)。この分析から、これらクローンの1種が
約750pbのDNA挿入物を有することが確認され
た。このクローンをイー・コリK12MC1061[p
BR322(Pst/SGH−9D)]と命名し、その
組換DNA分子をpBR322(Pst)/SGH−9
Dと命名し、さらにその挿入物をSGH−9Dと命名し
た。この名称は、クローンがpBR322およびSGH
−9Dよりなる組換DNA分子で形質転換されたイー・
コリK12MC1061からなることを示し、挿入物S
GH−9DはpBR322におけるPstI部位に存在
する(図3)。
【0052】挿入物SGH−9Dのヌクレオチド配列決定 SGHを暗号化するDNA配列およびその推定信号配列
は約648ヌクレオチドからなることが予想されたの
で、制限地図化およびヌクレオチド配列決定による分析
のため挿入物SGH−9Dを選択した。
【0053】図3は、SGH−9Dのヌクレオチド配列
を決定するために使用した方法を示している。DNAを
配列決定するため、エー・エム・マキサムおよびダブリ
ュー・ギルバートにより実質的に記載された方法を使用
した[「DNAの新規な配列決定方法」、プロシーディ
ング・ナショナル・アカデミー・サイエンス・USA、
第74巻、第560−64頁(1977)]。挿入物S
GH−9Dの全長を両ストランドから配列決定し、標識
末端(図3における黒点)として作用する殆どの制限部
位をこれらを離間する断片によって配列決定した。この
ように得られたヌクレオチド配列を図4乃至図5に示
す。
【0054】図4および図5を参照して、5′末端にお
ける11G残基および10A残基(恐らくmRNAのポ
リA末端を反映する)および次いで3′末端における
24C残基により挿入物を整列させた。対照のため、挿
入物をdG末端に続く最初のヌクレオチドからポリ
残基の前の最後のヌクレオチドまで番号を付した。
【0055】SGHにつき報告された部分アミノ酸配列
と比較して判るように、ヌクレオチド1−570はSG
Hを暗号化し、ヌクレオチド571−573は停止コド
ンである。したがって、SGHは190個のアミノ酸の
蛋白質であることが判る。さらに、この配列から判るよ
うに、豚前成長ホルモンが存在する。しかしながら、S
GHの推定信号もしくは予備配列の正確な長さまたは組
成はまだ決定していない。何故なら、SGH−9Dは豚
前成長ホルモンの5′暗号化および非暗号化末端の全部
を含まないと思われるからである。推定信号配列の最初
の3個のアミノ酸を酸−1、−2および−3として記載
した(図4および図5)。SGH−9Dは、ポリA+
基が存在するため3′非暗号化領域の全部を含まないと
思われる。
【0056】勿論、全5′暗号化および非暗号化領域を
含有するクローンの選択および豚前成長ホルモンの完全
予備配列の同定は、本発明の範囲を逸脱することなく当
業者によりなしうることが了解されよう。たとえば、同
定された陽性クローンは上記と同様に挿入SGH−9D
の5′末端から採取された試料を用いて選別することが
できる。たとえば、この種の試料はSGH−9DをNa
Iによって分解しかつヌクレオチド−5および−60
の間の断片を単離することによって調製することができ
る(図4)。次いで、この断片を前記と同様に標識し、
そしてこれをSGHのより完全な5′部分を含有するク
ローンを選択するために使用することができる。このク
ローンは、SGH−9Dの完全3′端部を含まなけれ
ば、当業界で周知されているように共通の制限部位を介
してSGH−9Dの全部もしくは1部と組合わせて、S
GHの全暗号化および非暗号化領域からなる単一DNA
配列を生成させることができる。
【0057】勿論、SGH−9Dにつき図4および図5
に図示したポリペプチドの構造は、生体内酵素との相互
作用、たとえばグリコシル化により生体内で生ずる蛋白
質に対する改変を考慮していない。したがって、この構
造は豚中で生成されるSGHとは同一でないと理解され
るが、生成促進性生物学的特性が同一でないにしても極
めて類似していると了解される。図4および図5に図示
した蛋白質構造は、遺伝子レベルまたはアミノ酸自身に
おける他の改変、たとえば突然変異、単一もしくは多重
の塩基交換、削除、挿入もしくは転換、化学的誘導化ま
たはこれら構造の活性断片の選択がSGHの活性を示さ
ない化合物を生成することを意味しない。さらに、コン
ピュータによりSGH−9Dのヌクレオチド配列を分析
し制限エンドヌクレアーゼ部位の幾つかの本体および位
置を決定した。この分析の結果を図6に示す。
【0058】SGH様ポリペプチドの合成 蛋白質の生産レベルは、2つの主要な因子により支配さ
れる:すなわち、細胞内の遺伝子のコピー数、ならびに
これら遺伝子コピーが転写かつ翻訳される効率である。
転写および翻訳の効率(これは一緒になって発現を構成
する)は、一般に所望の暗号化配列の前方に位置するヌ
クレオチド配列に依存する。これらのヌクレオチド配列
または発現制御配列は、特にRNAポリメラーゼが相互
作用して転写を開始する位置(プロモータ配列)と、リ
ボソームがmRNA(転写の生成物)と結合して相互作
用し翻訳を開始する位置とを規定する。必ずしも全ての
発現制御配列が同じ効率を持って機能するとは限らな
い。したがって、所望の蛋白質に対して特異的な暗号化
配列をそれらの隣接するヌクレオチド配列から分離して
これらを他の発現制御配列に融合させ、より高いレベル
の発現を生ぜしめるのが有利である。これが達成された
後、新たに作成されたDNA断片を複数コピーのプラス
ミドまたはバクテリオファージ誘導体中へ挿入して、細
胞内の遺伝子コピー数を増加させ、かつそれによりさら
に発現蛋白質の収量を向上させることができる。
【0059】従って、本発明の方法にしたがいSGH様
ポリペプチドを生産する際、多種類の宿主−発現制御配
列ベクターの組合せを使用することができる。たとえ
ば、有用なベクターは染色体、非染色体および合成のD
NA配列の断片、例えばcolEI、pCRI、pBR
322およびそれらの誘導体を含むイー・コリからの各
種公知の細菌性プラスミド、より広範な宿主範囲のプラ
スミド、たとえばRP4、ファージDNA、たとえばフ
ァージλの多数の誘導体ならびに上記の組合せから誘導
されるベクター、たとえばpBR322の1部、ファー
ジλの1部および合成部分を含むベクターから構成する
ことができる。有用な宿主は、たとえばイー・コリK1
2MC1061、イー・コリHB101、イー・コリX
1776、イー・コリX2282、イー・コリMRCI
の菌株およびシュードモナス、枯草菌、高熱細菌および
その他の細菌類のような細菌性宿主、酵母およびその他
の真菌類、動物もしくは植物宿主、たとえば動物(ひと
を含む)もしくは植物細胞の培養物、或いはその他の宿
主を包含する。有用な発現制御配列は、イー・コリの乳
糖オペロンのオペレータ、プロモータおよびリボソーム
結合および相互作用配列(たとえばシャイン−ダルガル
ノ配列のような配列を含む)(「lac系」)、イー・
コリのトリプトファン合成酵素系の対応する配列(「
rp系」)、ファージλの主オペレータおよびプロモー
タ領域(OL L およびOR I R )、ファージfdコ
ート蛋白質の制御領域、或いは原始核もしくは成熟核細
胞およびそのウイルスの発現を制御しまたは促進するそ
の他の配列、或いはこれらの各種の組合せを包含する。
【0060】勿論、必ずしも全ての宿主−発現制御配列
−ベクター組合せが、特定のDNA暗号化配列につき同
等の効率を有するとは限らない。しかしながら、本発明
で説明したように、生物安全性、特定の作成につき本発
明のSGH暗号化DNA配列に使用しうる部位、発現す
べきSGH様ポリペプチドの寸法、宿主細胞酵素による
蛋白質分解に対するこれらポリペプチドの感受性、精製
の際に除去するのが困難な宿主細胞蛋白質によるこれら
ポリペプチドの汚染、SGHおよびSGH様暗号化配列
の発現特性、たとえばDNA配列の構造ならびに発現制
御配列に関する開始および停止コドンの位置、ならびに
当業者により認識されたその他の因子を考慮して、適当
な組合せを選択することができる。
【0061】さらに、DNA配列および発現制御配列を
ベクター中へ挿入するには、各種の方法が当業界で知ら
れている。これらは、たとえば直接結合、合成リンカ
ー、エキソヌクレアーゼおよびポリメラーゼ結合した修
復反応に続く結合、或いはDNAポリメラーゼおよび適
当な単一鎖雛型によるDNA鎖の延長に続く結合を包含
する。本発明のSGH様ポリペプチドを合成するには、
これらのいずれを選択してもよい。
【0062】さらに、選択された宿主−発現制御配列−
ベクター組合せで発現される実際のDNA配列は、成熟
SGHとは同一でない生産物を生成しうることを了解す
べきである。たとえば、発現されるDNA配列は、成熟
SGH+メチオニンまたはSGHの推定信号配列の1部
もしくは全部、或いはSGHに関連のない他のアミノ酸
を暗号化することもある。或いは、発現DNA配列はS
GHの1部のみ或いはメチオニンもしくはその他のアミ
ノ酸を共に暗号化することもある。いずれの場合も本発
明に包含される。たとえば、豚前成長ホルモン、もしく
はf−met−SGHを暗号化するヌクレオチド配列で
形質転換された宿主は、そのSGH様化合物を単独で生
産することができ、或いは他のアミノ酸に融合すること
もでき、さらに成熟SGH生成物を分泌することもでき
る。必要なことは、発酵培養物から単離した後に或いは
たとえば開裂、合成結合またはその他周知の方法のよう
な慣用の処理の後に得られる生産物がSGHの成長促進
性生物学的活性を示すことだけである。※ f−me
tもしくはその他の非SGH関連アミノ酸またはSGH
自身の非活性必須アミノ酸は、生産物を使用する前に化
学的または酵素的に除去しうることを了解すべきであ
る。さらに、これらは発現の際に宿主細胞により開裂す
ることもできる。
【0063】本発明の合成において、豚成長ホルモン用
ポリペプチドを発現するため次の構造を選択した:SG
H−Δ7。この組換DNA分子は図7に示したように作
成した。
【0064】先ず、イー・コリK12λ(pBGH−Δ
9(Ser))[ゲーリー・ブエルの寄贈物であり、1
982年8月16日付けでアメリカン・タイプ・カルチ
ャー・コレクションに寄託し、寄託番号39174が付
与された]からpBGH−Δ9(Ser)を単離し、そ
の場合実質的にアール・デイー・クライン等、プラスミ
ド、第3巻、第88−91頁(1980)に記載された
プラスミド単離法を使用した。次いで、このプラスミド
を制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびBamHI
によって開裂させ、そしてEcoRI−BamHI断片
(断片A)を単離した(図7)。さらに、同じプラスミ
ドをEcoRIおよびHgiA1で開裂させ、そして約
88塩基対のEcoRI−HgiA1断片(断片B)を
単離した(図7)。さらに、同じプラスミドをPvuII
およびBamHIで開裂させ、そして約103塩基対の
PvuII−BamHI断片(断片C)を単離した(図
7)。
【0065】次いで、上記のpSGH−9DをHgi
1およびPvuIIにより実質的に同じ条件下で制限し、
そしてHgiA1部位(GTGCT↓C)からPvuII
部位(CAG↓CTG)まで延在するSGH暗号化配列
のその部分を単離した(図7および図8)。次いで、こ
の断片をpBGH−Δ9(Ser)から予め作成した3
種の断片(A、BおよびC)と結合させ、その際標準条
件とT4DNAリガーゼとを16℃にて1晩使用した。
【0066】pBGH−Δ9(Ser)およびpSGH
−9DのBGH暗号化配列と遺伝子暗号の退化との間に
は類似性が存在するので、上記の結合から生ずる組換D
NA分子はf−Met開始の後にその最初の7個のアミ
ノ酸を喪失するSGH様ポリペプチドを暗号化する(図
7および図8)。
【0067】この分子を特性化するSGH暗号化配列
は、pSGH−9DにおけるSGHを暗号化するものと
は異なる3個のヌクレオチドを有する(図4および図
5)。これらの差のうち2つは、BGH暗号化配列とS
GH暗号化配列との間の差から生ずる(AおよびC、図
8)。第3の差は、pBGH−Δ9(Ser)を生成さ
せるために使用した特定の構造に起因する(C、図
8)。これらのヌクレオチドの差はいずれも、pSGH
−Δ7の挿入DNA配列により暗号化されるSGH様ポ
リペプチドのアミノ酸配列を変化させない。
【0068】次いで、競合イー・コリK12λ(ワルタ
ー・ファイエルスの寄贈物)200μlを10μlの
0.1M MgCl2 の存在下で形質転換させ、その際
これら細胞を氷中で15分間急冷し、42℃で2分間培
養しかつ室温で10分間培養した。2mlのL−ブロス
を加えた後、細胞を37℃にて1時間増殖させ、200
μl部分を50μg/mlのアンピシリンが補充された
L−ブロスを含有するペトリ皿に接植した。37℃で1
6時間集落を増殖させ、そしてアンピシリン耐性の24
種のクローンをランダムに選択した。
【0069】これらクローンのそれぞれの培養物を、5
0μg/mlのアンピシリンが補充されたL−ブロス5
ml中で37℃にて12時間増殖させ、そしてクライン
等(上記)により記載されたミニ調製法により各培養物
の細胞1mlからプラスミドDNAを精製した。次い
で、EcoRI−BamHI制限およびポリアクリルア
ミドゲル分別によって24種のプラスミドにおけるEc
RI−BamHI挿入物を寸法決定した。適当な寸法
の挿入物を有する9個の断片を選択した。次いで、ジー
・エヌ・ブエル等、ジャーナル・バイオロジカル・ケミ
ストリー・第254巻、第9279−83頁(197
9)に実質的に記載されたように、イー・コリMC10
61をpSGH−Δ7と命名したこれらクローンの1種
により形質転換させた。さらに、これら細胞をpcI8
57(ダブリュー・ファイエルスの寄贈物)により形質
転換させた。 集落をアンピシリン(50μg/m
l)およびカナマイシン(40μg/ml)が補充され
たL−ブロス中で30℃にて16時間増殖させることに
よりpSGH−Δ7およびpcI857で形質転換され
た細胞を選択した。※ pcI857は感温性PL リプ
レッサおよびカナマイシン耐性を暗号化する遺伝子を有
する小型プラスミドである。
【0070】次いで、アンピシリン耐性かつカナイマイ
シン耐性の集落をランダムに吊上げ、そしてこれらを前
記と同様にアンピシリンおよびカナイマイシンが補充さ
れたL−ブロス5ml中で30℃にて1晩増殖させた。
次いで、培養物を25mlのL−ブロスで42℃にて希
釈し、そしてこれら細胞を42℃で2時間増殖させた
(O.D.=1)。
【0071】形質転換された細胞により生産されたSG
H様ポリペプチドを単離するため、細胞1mlを採取
し、これを遠心分離し(8000rpm、4min)、
50μlのレムリ緩衝液(1% SDS)[レムリ、ネ
イチャー誌、第227巻、第681頁以降(197
0)]を加え、混合物を15分間煮沸し、そして再び細
胞を遠心分離して(8000rpm、4min)細胞の
残骸を除去した。標準BGHに対するうさぎ抗血清を使
用するSGH競合放射免疫分析により上澄液を分析し
た。収率:SGH活性(mg/l)32;細胞1個当り
のSGH様分子1.6×106
【0072】
【発明の効果】したがって、本発明のDNA配列および
組換DNA分子は、SGH様ポリペプチドの生産を高収
率で可能にする。さらに、本発明の配列、分子および方
法は、慣用の方法を使用する精製の後に豚における一般
的同化作用剤としてこれら動物における成長速度、体重
増加および肉生産を特に増加させるのに有用な新規なS
GH様ポリペプチドの生産を可能にする。
【0073】本発明によるSGH様ポリペプチドの生産
方法の上記具体例は標準SGHに比較してその最初の7
個のアミノ酸を喪失しかつf−Metを有するSGH様
ポリペプチドを与えるが、当業者はその他の作成を用い
て本発明の範囲を逸脱することなくその他のSGH様ポ
リペプチドを生成させることもできる。たとえば、AT
G開始コドンまたはATG開始コドンとその他のコドン
を標準SGHの最初のアミノ酸を暗号化するTTCコド
ンに直接に融合させるような作成を行うこともできる。
この種の作成は、f−Metに融合された、または他の
アミノ酸を介してf−Metに融合された成熟SGHの
生産を可能にする。 しかしながら、本発明のSGH
様ポリペプチドを生産するには、ずっと高い収率が得ら
れるためpSGH−Δ7をイー・コリHB101におい
て使用するのが好ましい。※ 成熟SGHの一部でない
任意のアミノ酸或いはSGH自身の非活性必須アミノ酸
を発現の際、或いはそれに続いて除去した後、ポリペプ
チドを使用して動物を処理しうることを了解すべきであ
る。
【0074】f−Met−成熟SGHを暗号化する構造
の有用な製造方法の1つを図9および図10に示す。こ
の具体例においては、pSGH−9DをHaeIIにより
制限し、成熟SGHのアミノ酸1を暗号化するTTCコ
ドンの前方に残存するヌクレオチドを除去し、かつ残存
する断片をAvaIにより制限してTTCで始まる成熟
SGHの5′暗号化末端を単離した。次いで、この断片
を、成熟SGHの3′暗号化末端を暗号化するpSGH
−Δ7からのAvaI−BamHI断片と組合せた。次
いで、この断片を上記したpBGH−Δ9(Ser)か
ら誘導したクローン化ベクター中へ挿入し、TTCコド
ンをATGコドンに対し鈍端化させた。したがって、こ
の構造[pSGH−(Met−Phe)]は、適当な宿
主においてf−Met−成熟SGHの生産を可能にす
る。
【0075】或いは、標準SGHからの削除を含む、或
いは標準SGHからのアミノ酸改変を含むその他の新規
のSGH様ポリペプチドを、DNAレベルに対する適当
な構造により或いはポリペプチド生成後の化学的もしく
は酵素的反応により作成することもできる。たとえば、
上記の技術を用いてΔ3−SGHを作成した。これらの
構造およびポリペプチドも本発明の一部である。
【0076】必ずしも全てこれら構造が本発明の所望S
GH様ポリペプチドの生産において同等に有効であると
は限らない。しかしながら、当業者はここに記載した方
法および分析を用いて、特定の発現系、宿主および使用
に適する構造およびポリペプチドを選択することができ
る。
【0077】精製後の上記SGH様ポリペプチドを使用
しかつ成長ホルモンを動物へ投与するために従来知られ
た手段および方法[たとえば、イー・ジェー・ターマ
ン、上記]により豚を処理して、それらの成長速度およ
び肉生産を改善した。たとえば、上記のように生成され
たSGH−Δ7は、ラットの試験における天然のSGH
と同様な体重増加活性を示した。
【0078】本発明の方法により作成された微生物およ
び組換DNA分子は1982年9月15日付けでメリー
ランド州・ロックビル在のアメリカン・タイプ・カルチ
ャー・コレクションに寄託された培養物を例とし、これ
ら培養物はSGH−AおよびBとして同定された: A:イー・コリ K12 MC1061(pSGH−9
D) B:イー・コリ K12 λ(pSGH−Δ7) これら培養物には、それぞれ寄託番号ATCC3919
1および39192が付与された。
【0079】以上、本発明の多くの具体例につき説明し
たが、この基本構成を改変して本発明の方法および構成
を利用するその他の具体例も提供することができる。し
たがって、本発明はその思想および範囲を逸脱すること
なく多くの変更および改変をなしうることが了解されよ
う。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリペプチドを暗号化する挿入DNA
配列を特徴とする組換DNA分子の混合物を製造するた
めの本発明の方法の一具体例を示す略図である。
【図2】本発明のDNA配列を選択するためのクローン
選別法の2つの例を示す略図であって、第1のものは牛
成長ホルモンからの試料へヒブリド化させてSGH関連
cDNA配列を選択するものであり、第2のものはSG
H関連cDNAの処理により作成された試料を使用する
ものである。
【図3】本発明のDNA配列SGH−9Dのヌクレオチ
ド配列を決定するために使用される配列決定法の略図で
ある。
【図4】本発明のDNA配列SGH−9Dのヌクレオチ
ド配列およびアミノ酸配列を示す配列図である。
【図5】図4に続く本発明のDNA配列SGH−9Dの
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す配列図であ
る。
【図6】図4および図5に示されたヌクレオチド配列の
コンピュータ分析により決定された制限部位の部分図で
ある。
【図7】本発明の組換DNA分子pSGH−Δ7の作成
における一具体例を示す略図である。
【図8】pSGH−Δ9(Ser)、pSGH−9Dお
よびpSGH−Δ7の適切なヌクレオチド配列およびア
ミノ酸配列を示す配列図である。
【図9】本発明の組換DNA分子pSGH−(Met−
Phe)の作成の一具体例を示す略図である。
【図10】図9に関連する本発明の組換DNA分子pS
GH−(Met−Phe)の作成の一具体例を示す略図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:19) (56)参考文献 1.J.CLIN.ENDOCRIN OL.METAB.,1976〜42!P. 1127−1132 2.INT.J.BIOCHEM., 1973〜4!P.421−424 3.J.BIOL.CHEM.,1970 〜245!P.3402−3406

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 豚成長ホルモンの成長促進性生物学的活
    性を示すポリペプチドであって、前記ポリペプチドは豚
    起源の他の蛋白質を本質的に含有せず、かつ (a)pSGH−9Dのアミノ酸配列【数1】 (b)pSGH−(Met−Phe)のアミノ酸配列【数2】 (c)(a)に記載されたアミノ酸配列からのアミノ末
    端欠失を特徴とするポリペプチドのアミノ酸配列よりな
    る群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチ
  2. 【請求項2】 (a)に記載されたアミノ酸配列のアミ
    ノ末端欠失が、ポリペプチドの最初の7個のアミノ酸の
    1個以上の欠失を生じる請求項1(c)に記載のポリペ
    プチド。
  3. 【請求項3】 (a)に記載されたアミノ酸配列のアミ
    ノ末端欠失が、ポリペプチドの最初の7個のアミノ酸の
    全部の欠失を生じる請求項1(c)に記載のポリペプチ
    ド。
  4. 【請求項4】 豚成長ホルモンの成長促進性生物学的活
    性を示すポリペプチドであって、SGH−Δ7のアミノ
    酸配列【数3】 を有するポリペプチド。
  5. 【請求項5】 豚成長ホルモンの成長促進性生物学的活
    性を示すポリペプチドを製造する方法であって、発現制
    御配列に作用結合された前記ポリペプチドをコードする
    DNA配列を特徴とする組換DNA分子により形質転換
    された宿主を培養する工程からなり、前記ポリペプチド
    は、 (a)pSGH−9Dのアミノ酸配列【数4】 (b)pSGH−(Met−Phe)のアミノ酸配列【数5】 (c)(a)に記載されたアミノ酸配列からのアミノ末
    端欠失を特徴とするアミノ酸配列よりなる群から選択さ
    れるアミノ酸配列を有している、ポリペプチドを製造す
    る方法。
  6. 【請求項6】 前記アミノ酸配列がポリペプチドの最初
    の7個のアミノ酸の1個以上の欠失を特徴とする請求項
    5(c)に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記アミノ酸配列がポリペプチドの最初
    の7個のアミノ酸の全部の欠失を特徴とする請求項5
    (c)に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記アミノ酸配列が、SGH−Δ7のア
    ミノ酸配列【数6】 である請求項5(c)に記載の方法。
  9. 【請求項9】 動物における成長速度、体重増加速度お
    よび産肉量を高める組成物であって、豚成長ホルモンの
    成長促進性生物学的活性を示し、かつ (a)pSGH−9Dのアミノ酸配列: 【数7】 (b)pSGH−(Met−Phe)のアミノ酸配列: 【数8】 (c)(a)に記載されたアミノ酸配列からのアミノ末
    端欠失を特徴とするアミノ酸配列 (d)(a)の豚成長ホルモンポリペプチドに比べて最
    初の7個のアミノ酸の1個以上の欠失を特徴とするポリ
    ペプチドのアミノ酸配列 (e)(a)の豚成長ホルモンポリペプチドに比べて最
    初の7個のアミノ酸の全部の欠失を特徴とするポリペプ
    チドのアミノ酸配列 (f)SGH−Δ7のDNA配列によってコードされる
    ポリペプチドのアミノ酸配列:【数9】 よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペ
    プチドを特徴とする組成物。
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