JP2617700B2 - 細胞接着活性コア配列の繰り返し構造からなるポリペプチド - Google Patents

細胞接着活性コア配列の繰り返し構造からなるポリペプチド

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞接着活性蛋白質の
接着コア・アミノ酸配列の繰り返し構造からなるポリペ
プチドおよび該ポリペプチドの癌転移抑制剤その他の医
薬としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】フィブロネクチン、ラミニンおよびビト
ロネクチン等は、細胞と間質結合組織との接着に関与
し、動物細胞の細胞機能に関連した多彩な生理活性を持
つ蛋白質であり、細胞接着活性蛋白質と総称される。例
えば、フィブロネクチンは肝臓で合成され、ヒト血漿中
に約0.3mg/mlの濃度で存在する糖蛋白質である。
【0003】フィブロネクチンは、分子量約250Kの
ポリペプチドA鎖と約240KのB鎖がカルボキシル末
端近くでジスルフィド結合し、二量体を形成している。
フィブロネクチンの一次構造は、コーンブリットら(K
ornblihtt,A.R.et al: EMBO
Journal,,1755(1985))により
分子クローニング技術を用いて決定されている。また、
ラミニンの一次構造は佐々木ら(Sasaki,M.e
t al: Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,84,935,1987; Sasaki,
M.et al: J.Biol.Chem.,26
,17111(1987))により、そしてビトロネ
クチンは鈴木ら(Suzuki,S.et al: E
MBO Journal,,2519(1985))
によってそれぞれ決定されている。
【0004】そして、細胞接着活性に関与する結合部位
の研究も行われ、フィブロネクチンを蛋白質分解酵素で
限定分解して得られる断片のヘパリン、コラーゲン、細
胞および細菌への結合の研究から、それぞれA鎖、B鎖
の両鎖とも結合部位が決定されている(Yamada,
K.M.: Ann.Rev.Biochem.,
,761(1983))。さらに、その細胞結合部の
コア配列はArg−Gly−Asp(RGD)であるこ
とが1984年に解明された(Pierschbach
er,M.D.et al: Nature,309
30(1984))。このRGD配列は、ビトロネクチ
ンなど他の接着性蛋白質にも存在していることが明らか
になっている。また、ラミニン分子中の細胞接着部位の
コア配列はTyr−Ile−Gly−Ser−Argで
あることも解明されている(Graf,J.et a
l: Cell,48,989(1987))。
【0005】フィブロネクチンやラミニンは上記コア配
列を介して、被接着細胞のレセプターと接合し、その情
報を接着細胞に伝達しており、また、ヘパリン、コラー
ゲン、フィブリン等の生体高分子との結合能を有し、細
胞と間質結合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与し
ていると考えられている(Yamada,K.M.:A
nn.Rev.Biochem.,52,761(19
83))。
【0006】このように、細胞接着活性蛋白質は、種々
の生物活性を有するため、医薬等への応用が研究されて
いる。例えば、血漿中のフィブロネクチン量が低下する
と網内皮系の機能が低下する。このような場合として
は、外科手術や外傷による敗血症、播種性血管内血液凝
固、火傷、重症感染症や外科的ショック等が挙げられ
る。それらの症状の改善のために、フィブロネクチンの
投与が有効であると考えられている。また、フィブロネ
クチンは繊維芽細胞やマクロファージの遊走能を刺激す
ることから、創傷の治癒や免疫能の機能の調整への応用
が考えられている。特に、創傷の治癒促進効果を利用し
た角膜障害への局所治療は既に試みられている(Fuj
ikawa,L.S.et al: Lab.Inve
st.,45,120(1981))。
【0007】一方、ラミニンはコラーゲンIV型、ヘパリ
ン硫酸、プロテオグリカンや細胞に対して結合能を有す
る。また、ラミニンは神経細胞に作用して、神経突起伸
長を促進する効果があり、その生体内での作用が注目さ
れている。
【0008】更に、細胞接着活性蛋白質は、癌転移に関
係する物質としても注目されている。癌転移の一連の段
階では、癌細胞は種々の宿主細胞や生体高分子と接触す
る。この時、フィブロネクチンやラミニンのような細胞
接着分子が存在すると、該細胞は多細胞塊を形成し、癌
細胞の増殖や生存をより容易にする。事実、ラミニンを
癌細胞と混合して動物に投与すると、癌転移が増強する
ことが認められている。
【0009】ところが、ラミニン由来のプロテアーゼ分
解フラグメントは、逆に癌転移阻害活性を有することが
報告されている(Barsky,S.H.et al:
J.Clin.Invest.,74,843(19
84)。同様に、フィブロネクチンの接着コアであるト
リペプチドArg−Gly−Asp(Humphrie
s,M.J.et al: Science,233
467(1986))やラミニンの接着コアであるペン
タペプチドTyr−Ile−Gly−Ser−Arg
(Iwamoto,Y.et al: Scienc
e,238,1132(1987))も癌の転移を抑制
することが確認されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、フィブ
ロネクチンやラミニン等の細胞接着性蛋白質は、様々な
生物活性を有しており、その関連物質を医薬として応用
する技術の開発が望まれていた。特に、フィブロネクチ
ンやラミニン等の接着コア配列の癌転移抑制作用は、医
薬としての応用価値の高いものと考えられるが、該コア
配列の細胞接着活性が充分でないため、それらの癌転移
抑制作用は実際の医療に応用するためには充分満足でき
るものではなく、この点で、更に高い活性を持つ物質の
開発が望まれていた。しかしながら、細胞接着性蛋白質
は天然物質であるからその供給に制限があり、しかも糖
蛋白質であるから、合成法や遺伝子工学的に効率良く生
産するのも非常に困難である。
【0011】そこで、本発明者らは、細胞接着性蛋白質
の持つ種々の生物活性を充分に保持し、合成も容易で且
つ生体に重大な副作用を示さない新規な化合物を求めて
鋭意研究を行った結果、上記コア配列に比して癌転移阻
害活性が極めて大きいポリペプチド化合物を見出し、本
発明を完成した。本発明の新規化合物は、癌転移阻害活
性の他にも、免疫調整活性、創傷治癒効果、血小板凝集
抑制効果、神経疾患治癒効果も有することが見出され
た。
【0012】従って、本発明の目的の一つは、より簡便
な手段で生産可能な、細胞接着性蛋白質様の各種活性を
有する、比較的低分子の新規ポリペプチド化合物を提供
することである。
【0013】本発明はさらに、癌転移阻害活性の高い新
規ポリペプチド化合物を提供することを目的とする。
【0014】本発明はさらに、上記新規ポリペプチド化
合物を含有する医薬組成物の提供も目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明のポリペプチド
は、細胞接着活性蛋白質の接着コア・アミノ酸配列の繰
り返し構造からなることを特徴とする。本発明の好まし
いポリペプチド化合物は、次式: (Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)n (式中、nは2ないし20の数を表す。)で表される。
その中でも、分子量が約5000ないし約15000、
特に約10000であるものが、生物活性が充分大き
く、かつ水性の溶媒に対する溶解性も大きいことから好
ましい。
【0016】製造方法 本発明の化合物は、慣用方法で合成された相当する短鎖
ペプチド例えば、Tyr−Ile−Gly−Ser−A
rgを、ジフェニルフォスフォリル・アジド(DPP
A)による連続的重合化法(Nishi,N.et a
l: Int.J.Biol.Macromol.,
,53(1980); Nishi,N.et a
l: Int.J.Peptide Protein
Res.,30,275,1987)で重合させて製造
することができる。
【0017】さらに、遺伝子工学的手法で本発明の化合
物を製造することも可能であろう。
【0018】本発明のポリペプチド化合物には、L−型
アミノ酸からなるもの、およびD−型アミノ酸からなる
ものいずれも含まれる。また、本発明の化合物は、医薬
品として用いるために、薬学的に許容される塩、例えば
塩酸塩、硫酸塩等の無機酸との塩や、酢酸塩、トリフル
オロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸との塩にして
も良く、そのような塩への変換は、慣用手段で行う事が
できる。
【0019】作用 本発明のポリペプチド化合物は、細胞接着性蛋白質のコ
ア配列を繰り返して有し、該コア配列を介して細胞接着
性蛋白質と同様の機序で細胞に接着する。そのため、細
胞接着性蛋白質のアゴニストまたはアンタゴニストとし
て種々の生物活性を示す。特に、細胞接着性蛋白質のコ
ア配列に比べて6〜10倍強い癌転移阻害作用を有す
る。その他にも、免疫調整作用、創傷治癒作用、毛細血
管中で起こる癌細胞による血小板凝集の抑制作用、神経
疾患治癒作用等の広範な生物活性が認められている。ま
た、本発明のポリペプチド化合物は、マウスを用いて調
べたところ、毒性は全く認められていない。
【0020】従って、本発明のポリペプチド化合物は、
その少なくとも一種を、場合により慣用の担体または医
薬用助剤とともに、癌転移抑制剤、創傷治癒剤、免疫調
整剤、血小板凝集抑制剤または神経疾患治癒剤として患
者に投与することが可能である。その投与量は、0.2
μg /kg〜400mg/kgの範囲で、症状、年令、体重等
に基づいて決定される。
【0021】本発明のポリペプチドは、ペプチド系医薬
に一般に使用されている投与方法、即ち非経口投与方
法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与等によっ
て投与するのが好ましい。そのような注射用製剤を製造
する場合、本発明のポリペプチドを例えば、後記実施例
で示すようにPBSまたは生理食塩水に溶解して、注射
用製剤としてもよく、あるいは0.1N程度の酢酸水等
に溶解した後、凍結乾燥製剤としてもよい。このような
製剤には、グリシンやアルブミン等の慣用の安定化剤を
添加してもよく、血中半減期を延長させる等の目的のた
めに、コラーゲンやリポゾームを担体として用いてもよ
い。
【0022】さらに、本発明のポリペプチドは、例えば
リポゾーム中に包容したマイクロカプセル剤とすれば、
経口投与剤とすることも可能であり、座剤、舌下錠、点
鼻スプレー剤等の形にすれば、消化管以外の粘膜から吸
収させることも可能である。
【0023】生物活性試験 次に、本発明の化合物の生物活性を、薬理試験等の結果
に基づいて説明する。
【0024】(1) 標的細胞への接着能 済木らの方法(Saiki,I.et al; Can
cer Immunol.,Immunother.,
22,125(1986))に従い、本発明の化合物の
標的細胞への接着能を検討した。即ち、後記合成例1で
合成した、(Arg−Gly−Asp)nの構造を持つ
分子量約5000の本発明のポリペプチドおよび、合成
例3で合成したArg、GlyおよびAspの各アミノ
酸のランダムな配列を持つ平均分子量約5000の比較
用ポリペプチド(Arg,Gly,Asp)n を用
い、これらの化合物の標的細胞への接着能を、マウスの
B16−BL6メラノーマ細胞で検討した。
【0025】先ず、試験すべきポリペプチド20μg /
mlまたは、陽性対照としてマウスのフィブロネクチン
(生化学工業より購入)5μg /mlでマイクロカルチャ
ーウエルを予めコートし、その後に放射活性ヨード化化
合物〔125I〕IUdRで標識されたB16−BL6メ
ラノーマ(2×104 )を1ウエルあたり0.05mlに
なるように加えて、37℃で20分間培養し、培養ウエ
ルに吸着した細胞数を放射活性の測定により決定した。
陰性対照としては、1%の牛血清アルブミン(BSA)
を用いた。尚、B16−BL6メラノーマの標識は、
0.3μCi/mlの〔125I〕IUdR(200mCi
/mmol,New England Nuclear,B
oston,Mass.,USA)を添加した5%FB
Sを含むMEM培地で、24時間対数増殖期にある細胞
を培養することにより行った。
【0026】標識された細胞は、生理食塩水で2回洗浄
し、0.02%EDTAに1分間懸濁した後細胞を集め
た。その後、細胞は血清を含まないMEM培地に懸濁し
て、単細胞懸濁液として上述の実験に用いた。培養ウエ
ルに吸着しない細胞をPBSで4回洗浄して除いた後、
培養ウエルに吸着した細胞は0.1N NaOHを0.
1ml添加することにより溶解させた。培養ウエルに吸着
した細胞数は、細胞溶解物の放射活性を測定することに
より計測した。
【0027】第1表に結果を示す。この結果から明らか
なように、本発明のPoly(Arg−Gly−As
p)とフィブロネクチンはB16−BL6メラノーマ細
胞の吸着を促進したが、ランダム配列のPoly(Ar
g,Gly,Asp)およびBSAの処理によっては殆
ど細胞は吸着されなかった。この結果は、本発明のポリ
ペプチドがフィブロネクチンと同等の細胞接着活性を有
していることを示している。
【0028】
【表1】 第1表には、Poly(Arg−Gly−Asp)とフ
ィブロネクチンの細胞接着の特異性の検討結果も示され
ている。即ち、上記の実験と同様にして調製した培養ウ
エルに2×104 のB16−BL6細胞を入れ、それを
合成ペプチド100または500μg /mlのArg−G
ly−Asp、100または500μg/mlのPoly
(Arg−Gly−Asp)または500μg /mlのH
is−Gly−Glyの存在下で37℃で20分間培養
した。その結果、Arg−Gly−AspまたはPol
y(Arg−Gly−Asp)の存在下で細胞を培養す
ると、フィブロネクチンの細胞への接着能は阻害される
が、His−Gly−Glyの存在下ではそのような阻
害は第1表の結果からは認められなかった。
【0029】また、フィブロネクチンの細胞接着能は、
合成トリペプチドArg−Gly−Aspにより用量依
存的に阻害され、さらに5mMEDTAによっても阻害さ
れた。これらの結果は、Poly(Arg−Gly−A
sp)の細胞への接着は、カルシウムやマグネシウムの
ような二価金属イオンと、Arg−Gly−Asp配列
の存在に依存した特異的なメカニズムによることを示し
ている。即ち、Poly(Arg−Gly−Asp)は
フィブロネクチンと同じレセプターを介して細胞と接着
していることを示唆している。
【0030】上記の実験から、本発明のポリペプチド化
合物が持つ、フィブロネクチンのアゴニストまたはアン
タゴニストとしての活性を、医薬として応用する可能性
が示された。
【0031】(2) 癌転移阻止作用 a) 次に、コア配列Arg−Gly−Aspの繰り返
し構造を持つ本発明の化合物の癌転移阻止作用について
検討した。分子量約5000の合成ポリペプチドPol
y(Arg−Gly−Asp)、トリペプチドArg−
Gly−Aspおよび分子量約5000のPoly(A
rg,Gly,Asp)を各々500μg と、非常に転
移性の強い癌細胞としてB16−BL6メラノーマ細胞
(上記(1) で示した対数増殖期のもの5×104 )を各
々PBS中で混合後、その0.2mlを1群5匹のC57
BL/6の雄マウスに静脈注射した。投与14日後にマ
ウスの肺の癌コロニー数を数えて、対照のPBS投与群
と比較した。その結果を第2−1表の実験1に示す。こ
の結果によれば、Poly(Arg−Gly−Asp)
の投与により、肺への癌転移は顕著に抑制された。これ
に対して、Arg−Gly−AspおよびPoly(A
rg,Gly,Asp)の投与ではそのような転移の抑
制は認められなかった。さらに、同表に示すように、A
rg−Gly−Aspの場合、Poly(Arg−Gl
y−Asp)と同等の顕著な転移抑制効果を得るには、
約6倍に相当する3000μg の投与量が必要であっ
た。
【0032】b) 次に、Arg−Gly−Aspの繰
り返し配列を持ち、分子量が1500および5000の
二種のPoly(Arg−Gly−Asp)−1500
およびPoly(Arg−Gly−Asp)−5000
の癌転移抑制活性を検討した。それぞれの化合物100
0μg を上記実験1と同様の方法でマウスに投与したと
き、その効果を検討した。第2−1表の実験2に示す結
果によれば、両化合物のいずれも、対照のPBS投与群
に比べて顕著な転移抑制効果を示した。
【0033】また、Poly(Arg−Gly−As
p)−5000をB16−BL6細胞と混合せずに、B
16−BL6細胞を投与した5分後にマウスに静脈投与
しても、やはり高い転移抑制効果が得られた。この結果
は、本発明の化合物を静脈注射等の適当な方法で投与し
て、癌の転移抑制効果が得られることを示している。
【0034】
【表2】 c) 次に、ラミニンの細胞接着のコア配列Tyr−I
le−Gly−Ser−Argの繰り返し構造を持つ、
分子量約10000のポリペプチド化合物Poly(T
yr−Ile−Gly−Ser−Arg)(後記合成例
4で合成した)についても、癌の転移阻止作用を検討し
た。即ち、上記化合物の5、20または100μg を、
それぞれ5×104 のB16−BL6細胞または3×1
4 のルイス肺癌細胞(3LL)細胞と混合した後、前
記b)に示したのと同様の方法でマウスC57BL/6
に投与して癌の転移抑制作用を調べた。その結果を第2
−2表に示す。同表から明らかなとおり、Poly(T
yr−Ile−Gly−Ser−Arg)の投与により
肺への癌の転移は顕著に抑制された。これに対して、ペ
ンタペプチドTyr−Ile−Gly−Ser−Arg
を100μg 投与しても殆ど転移抑制効果は認められ
ず、同表には示されていないが、有意な効果を得るには
200μg 以上の投与が必要であった。この結果から、
ペンタペプチドの繰り返し配列を有する本発明のポリペ
プチドは、元のペンタペプチドに比べ、約10倍の癌転
移抑制活性を持つことが確認された。
【0035】
【表3】 (3) 癌細胞の肺での滞留の抑制効果 上記(2) と同様の実験により、本発明の化合物が癌細胞
の肺での滞留を抑制することを確認した。対数増殖期の
B16−BL6細胞を〔125I〕−IUdRで標識し、
この標識細胞(2×104/マウス) と分子量5000のPo
ly(Arg−Gly−Asp)(500μg /マウ
ス)とを含む0.2mlの液をC57BL/6マウスの尾
静脈より投与した。投与後30分と24時間後に各マウ
スより、肝臓、腎臓、脾臓、肺および血液を採取し、そ
の放射活性を測定した。PBSを対照として用いた。結
果を第3表に示す。血液を含め、検討した他の臓器では
対照群とPoly(Arg−Gly−Asp)との間に
顕著な差異は認められなかったが、肺においてはPol
y(Arg−Gly−Asp)投与群の方が顕著に放射
活性は低く、肺での癌細胞の滞留が顕著に抑制されてい
ることが確認された。
【0036】
【表4】 (4) 自然転移モデルによる癌転移抑制効果 さらに、本発明の化合物が癌の転移を抑制することを自
然転移モデルによって確認した。即ち、B16−BL6
細胞を1群5匹のC57BL/マウスの足蹠に移植し、
移植後一定期間内に分子量約5000のPoly(Ar
g−Gly−Asp)100μg または50μg を、移
植癌部に直接単回または複数回局所投与した。移植癌は
21日目に切除し、その2週間後にマウスを解剖し、肺
への癌の転移を調べた。その結果を第4表に示す。癌移
植後1または7日目に化合物100μg を単回投与する
ことにより、または7、10、13、および16日目に
50μg づつ複数回投与することにより、移植癌自体の
増殖は抑制されなかったものの、肺への癌の転移は顕著
に抑制された。
【0037】これに対して、無秩序なアミノ酸配列を持
つPoly(Arg,Gly,Asp)100μg を7
日目に投与しても、肺への癌の転移抑制活性は認められ
なかった。
【0038】
【表5】 (5) 癌細胞による血小板凝集を抑制する効果 さらに、癌細胞によって誘発される血小板凝集へのPo
ly(Arg−Gly−Asp)の影響を検討した。C
57BL/6マウスより血液を採取し、それを160×
gで15分間遠心して、血小板リッチな分画(PRP)
を得た。対照としては血液を1000×gで10分間遠
心分離した血小板微量分画(PPP)を用いた。分子量
5000のPoly(Arg−Gly−Asp)を前記
のPRPまたはPPP分画(5×105 /μl )250
μl に加えて5〜7分間前培養した液を、生理食塩水に
懸濁したB16−BL6細胞(約106 /ml)に加えた
後、37℃で1000rpm で攪拌しながら、デュアル・
アグリゴメータ(DualAggregometer)
モデル440(Chrono−Log,USA)で凝集
を観察した。比較対照として、Poly(Arg−Gl
y−Asp)の代わりにPoly(Arg,Gly,A
sp)を用いた。第1図〜第3図に結果を示す。各図は
それぞれ、B16−BL6メラノーマ細胞を添加した時
点(図中、矢印)の7分前にヘパリン化PRPを、 PBSで処理した場合・・・・・・・・第1図 Pol
y(Arg,Gly,Asp) 100μg /mlで処理した場合・・・・第2図 Pol
y(Arg−Gly−Asp) 100μg /mlで処理した場合・・・・第3図の凝集を
表す。本発明の化合物Poly(Arg−Gly−As
p)は血小板の凝集を完全に抑制した(第3図)が、比
較対照のPoly(Arg,Gly,Asp)は殆ど抑
制効果を示さなかった(第2図)。
【0039】(6) 毒性 上記(1) 〜(5) の試験において、分子量5000または
1500のPoly(Arg−Gly−Asp)および
分子量10000のPoly(Tyr−Ile−Gly
−Ser−Arg)は、宿主マウスの赤血球細胞や脾臓
および胸腺細胞に対する細胞毒性や、血清蛋白質に対す
る好ましくない凝集作用を有しないことが確認された。
【0040】
【実施例】合成例 次に、本発明の化合物の製造例を記載する。アミノ酸誘
導体はペプチド研究所より購入した。ペプチド合成は液
相法により行い、純度の推定および目的物の同定は、薄
層クロマトグラフィー(展開溶媒:(A)n−ブタノー
ル:酢酸:水=4:1:5の上層部,(B)n−ブタノ
ール:ピリジン:酢酸:水=15:10:3:12,
(C)アンモニア水飽和n−ブタノール等)、元素分
析、赤外吸収スペクトルで行った。規則配列並びにラン
ダム配列のポリペプチド合成は、DPPA(Diphe
nylphosphoryl azide)を用いる方
法により行い、側鎖官能基の保護基(MtsおよびBz
l基)はメタンスルホン酸−アニソールまたはトリフル
オロメタンスルホン酸−チオアニソールで除去し、最後
にアルギニン側鎖のグアニド基をイオン交換樹脂(アン
バーライト IRA−400)で塩酸塩に変換した。保
護基の除去は、赤外吸収スペクトルにより確認し、大ま
かな分子量は、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウ
ム)存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(ゲル
濃度13%)で推定した。
【0041】合成例1 (分子量約5000のポリペプ
チド) (1) t−ブトキシカルボニルグリシル−β−ベンジル−
L−アスパラギン酸(Boc−Gly−Asp(OBz
l)−OH (I) t−ブトキシカルボニルグリシン(5.3g,30mmo
l)を精製THF(100ml)に溶解し、−15℃でト
リエチルアミン(4.6ml,33mmol)およびイソブチ
ルクロロホルメート(4.33ml,33mmol)を加え、
その温度で10分間攪拌する。この混合酸無水物溶液
に、β−ベンジル−L−アスパラギン酸(8.0g,3
6mmol)およびトリエチルアミン(5.02ml,36mm
ol)を水に溶かし0℃に冷却した溶液を加え、0℃で1
時間そして室温で15時間攪拌する。減圧濃縮によりT
HFを留去し、冷10%クエン酸を加えると沈澱が生成
する。酢酸エチルでこの沈澱物を2回抽出し、抽出液を
合わせた後、この酢酸エチル抽出液を1/5倍量の5%
クエン酸で5回および1/10倍量の水で10回洗浄す
る。無水硫酸ナトリウムで溶液を脱水し、濃縮乾固す
る。エーテルに溶かし、n−ヘキサンで沈澱させる操作
を3回行い乾燥する。これにより、表題化合物が6.9
g得られた。
【0042】(2) グリシル−β−ベンジル−L−アスパ
ラテート塩酸塩(HCl・H−Gly−Asp(OBz
l)−OH) (II) 上記(1) で得られた化合物(I)(3.2g)を精製ジ
オキサン80mlに溶解し、4N HCl/ジオキサン8
0mlを加えて室温で1時間攪拌する。濃縮乾固した後、
乾燥エーテルを加えて結晶化させ、遠心分離して目的物
を集め、乾燥エーテルで数回洗い乾燥する。これによ
り、2.4gの表題化合物が得られた。
【0043】(3) α−t−ブトキシカルボニル−Nω
−メシチレンスルホニル−L−アルギニルグリシル−β
−ベンジル−L−アスパラテート(Boc−Arg(M
ts)−Gly−Asp(OBzl)−OH)(III)α−t−ブトキシカルボニル−Nω−メシチレンスル
ホニル−L−アルギニン(3.4g,7.4mmol)を精
製THF(70ml)に溶解し、−15℃でトリエチルア
ミン(1.13ml,8.1mmol)およびイソブチルクロ
ロフォルメート(1.07ml,8.1mmol)を加え、そ
の温度で10分間攪拌する(混合酸無水物生成)。上記
(2) の化合物(II)(2.4g,約8.0mmol)および
トリエチルアミン(2.68ml,19.2mmol)をTH
F(70ml)、DMF(50ml)、水(10ml)の混合
溶媒に溶かし、5℃に冷却する。この溶媒を上記混合酸
無水物溶液に加え、5℃で1時間、室温で15時間攪拌
する。減圧濃縮でTHFおよび水を留去し、残渣のDM
F溶液に5%クエン酸を加え、生成する沈澱をデカンテ
ーションで分離する。5%クエン酸および水で充分に洗
って乾燥する。エーテルで2回洗浄した後、残渣をメタ
ノール−エーテルで再沈澱し、デカンテーションで分離
する。エーテルで処理すると、粉末になるので、遠心
し、エーテルで洗い、乾燥する。これにより、表題の化
合物が3.9g得られた。
【0044】(4) ω−メシチレンスルホニル−L−ア
ルギニルグリシル−β−ベンジル−L−アスパラテート
塩酸塩(HCl・H−Arg(Mts)−Gly−As
p(OBzl)−OH) (IV) 化合物(III)(1.5g,2.1mmol)を精製ジオキ
サン(30ml)に溶かし、4N HCl/ジオキサン
(30ml)を加えて1時間攪拌する。濃縮乾固し、乾燥
エーテルを加えて結晶化させ、遠心分離し、乾燥エーテ
ルで数回洗い乾燥する。これにより、表題の化合物が
1.3g得られた。
【0045】(5) L−アルギニルグリシルアスパラギン
酸・塩酸塩(2HCl・H−Arg−Gly−Asp−
OH) (V) 化合物(III)(300mg)をメタンスルホン酸(4m
l)−アニソール(1ml)混合物に溶解し、室温で1.
5時間攪拌する。乾燥エーテルを加え、沈澱をデカンテ
ーションで分離し、さらに乾燥エーテルでよく洗い、乾
燥する。これを少量の水に溶かし、アンバーライト(A
mberlite)IRA−400(Cl型)に通し、
目的化合物を含むフラクションを濃縮乾固し、残渣をメ
タノール−エーテルで処理して結晶させる。遠心分離
し、エーテルで洗い乾燥する。これにより表題の化合物
を117mg得た。
【0046】(6) ポリ(Nω−メシチレンスルホニル−
L−アルギニルグリシル−β−ベンジル−L−アスパラ
テート)(Poly(Arg(Mts)−Gly−As
p(OBzl)) (VI) 化合物(IV)(400mg,0.58mmol)を精製DMS
O(1.2ml)に溶かし、DPPA(0.19ml,0.
87mmol)およびトリエチルアミン(0.285ml,
2.03mmol)を加え、5〜8℃で1時間そして室温で
2日間攪拌する。同量のDPPAおよびトリエチルアミ
ンを加え、さらに2日間重合反応を進める。水でポリマ
ーを沈澱させ、遠心分離し、水およびメタノールでよく
洗い、乾燥させる。これにより、表題化合物が295mg
得られた。
【0047】(7) ポリ(L−アルギニルグリシル−L−
アスパラギン酸塩酸塩)(Poly(Arg−Gly−
Asp)HCl) (VII) 化合物(VI)(100mg)をメタンスルホン酸(2ml)
−アニソール(0.4ml)混合物で処理し、側鎖保護基
を除去し、イオン交換樹脂で塩酸塩に変換する。操作法
は化合物(V)の合成法と同様である。表題の化合物が
60mg得られた。この化合物の分子量は、約5000で
あった。
【0048】合成例2 (ランダム配列の比較化合物) (1) コポリ(Nω−メシチレンスルホニル−L−アルギ
ニン,グリシン,β−ベンジル−L−アスパルテート)
(Copoly(Arg(Mts),Gly,Asp
(OBzl)) (VIII)ω−メシチレンスルホニル−L−アルギニン(356
mg,1.0mmol)、グリシン(75mg,1.0mmol)お
よびβ−ベンジル−L−アスパルテート(223mg,
1.0mmol)の混合物を精製DMSO(2.0ml)中、
DPPA(0.97ml,4.5mmol)およびトリエチル
アミン(1.05ml,7.5mmol)で重合させる。操作
法は化合物(VI)の合成と同様である。
【0049】(2) コポリ(L−アルギニン塩酸塩、グリ
シン、L−アスパラギン酸)(Copoly(Arg,
Gly,Asp)HCl) (IX) 化合物(VIII)(100mg)をメタンスルホン酸(2m
l)−アニソール(0.4ml)の混合物で処理して、側
鎖保護基を除去し、イオン交換樹脂で塩酸塩に変換し
た。操作法は化合物(V)の合成法と同様である。これ
により、表題化合物が50mg得られた。この化合物の分
子量は、約5000であった。
【0050】合成例3 (分子量約1500のポリペプ
チド)ポリ(L−アルギニル−グリシル−L−アスパラギン
酸)塩酸塩(Oligo(Arg−Gly−Asp)・
HCl) (X) 化合物(VI)合成の重合反応を90分間で停止させ、側
鎖保護オリゴペプチドを得たのち、化合物(VII)合成
と同様の操作で目的物を得た。この化合物の平均分子量
は、約1500であった。
【0051】合成例4 (分子量約10000のポリペ
プチド) (1) ω−メシチレンスルホニル−L−アルギニン−O
−メチルエステル塩酸塩(HCl−Arg(Mts)−
OMe) (XI)ω−t−ブトキシカルボニル−Nω−メシチレンスル
ホニル−L−アルギニン(Boc−Arg(Mts)−
OH)2.10gを乾燥ジオキサン(31ml)に溶解
し、4N HCl−ジオキサン(31ml)を加え、室温
で1時間攪拌する。この溶液を減圧濃縮して乾固した
後、乾燥エーテルを加えて結晶化させ、遠心分離操作で
目的物を収集し、乾燥エーテルで更に数回洗浄した後、
デシケーター中で乾燥する。これにより、Boc基が除
去されたHCl・H−Arg(Mts)−OHが1.1
g得られた。これを、MeOH(10.6ml))に対し
てSOCl2 (2.9ml)を徐々に加えて−10℃で1
0分間攪拌して調整した溶液に加え、15時間攪拌した
後、濃縮乾固し、乾燥エーテルで結晶化させ、遠心分離
し、乾燥エーテルで更に数回洗浄し乾燥する。これによ
り、HCl・H−Arg(Mts)−OMeが0.94
g得られた。
【0052】(2) ω−t−ブトキシカルボニル−β−
ベンジル−L−セリル−Nω−メシチレンスルホニル−
L−アルギニンメチルエステル(Boc−Ser(Bz
l)−Arg(Mts)−OMe) (XII) Boc−Ser(Bzl)−OH(0.69g,2.3
mmol)およびHCl−Arg(Mts)−OMe(0.
94g,2.3mmol)を精留DMF(16.3ml)−ジ
オキサン(16.3ml)に溶解し、0℃で10分間攪拌
した後、DPPA(0.76ml,2.76mmol)および
TEA(0.74ml,7.36mmol)を加え、室温で2
4時間攪拌する。この溶液を減圧濃縮してジオキサンを
留去し、残渣に食塩水を加えることにより生成した沈澱
をデカンテーションで分離した後、水で洗い残渣を酢酸
エチルで抽出する。抽出液を5%クエン酸、水および重
曹でよく洗浄し、芒硝(Na2 SO4 )で脱水した後、
濃縮乾固し、乾燥する。
【0053】(3) Boc・Gly−Ser(Bzl)−
Arg(Mts)−OMe(XIII) 生成物(XII)(1.03g)を乾燥ジオキサン(2
5.3ml)に溶解し、4N−HCl/ジオキサン(2
5.3ml)を加え、室温で1時間攪拌する。この溶液を
濃縮乾固し、乾燥エーテルを加えて結晶化させ、遠心分
離の後、乾燥エーテルで更に数回洗浄し乾燥する。これ
により、HCl・H−Ser(Bzl)−Arg(Mt
s)−OMeが0.68g(1.2mmol)得られた。こ
れをBoc−Gly−OH(0.26g,1.5mmol)
とともに、精留DMF(9.4ml)/ジオキサン(9.
4ml)に溶解し、0℃で10分間攪拌した後、DPPA
(0.5ml,1.8mmol)およびトリエチルアミン
(0.49ml,4.8mmol)を加え、室温で24時間攪
拌する。得られた溶液は化合物(XII)と同様の過程に
より減圧濃縮、食塩水の添加、生成した沈澱の洗浄およ
び乾燥を行い、酸性アルカリ性物質を除去することによ
り、Boc−Gly−Ser(Bzl9)−Arg(M
ts)−OMeを0.48g得た。
【0054】(4) Boc−Ile−Gly−Ser(B
zl)−Arg(Mts)−OMe(XIV) 生成物(XIII)から化合物(XI)と同様の方法でBoc
基を除去して、HCl・H−Gly−Ser(Bzl)
−Arg(Mts)−OMeを0.40g(0.63mm
ol)得た。これを等モルのBoc−Ile−OH(0.
14g)とともに精留DMF(5.4ml)/ジオキサン
(5.4ml)に溶解し、0℃で10分間攪拌の後、DP
PA(0.21ml)およびトリエチルアミン(0.20
ml)を加え、室温で24時間攪拌する。得られた溶液は
化合物(XII)および(XIII)と同様にして、酸性およ
びアルカリ性物質の除去を行い乾燥する。こうして、B
oc−Ile−Gly−Ser(Bzl)−Arg(M
ts)−OMeを0.28g得た。
【0055】(5) Boc−Tyr(Bzl)−Ile−
Gly−Ser(Bzl)−Arg(Mts)−OMe
(XV) 生成物(XIV)は、(1) と同様の方法でBoc基の除去
を行った。但し、ペプチド鎖の伸長と、Ile側鎖の立
体障害を考慮し、溶媒の量および反応時間を通常の2〜
3倍に増加した。即ち、 生成物(XIV)0.28g、
乾燥ジオキサン6.0ml、4N HCl/ジオキサン
6.0ml、2時間攪拌の条件を用いた。得られたペプチ
ド(HCl・H−Ile−Gly−Ser(Bzl)−
Arg(Mts)−OMe:収量0.14g,0.19
mmol)は、Boc−Tyr(Bzl)−OH0.14g
(0.19mmol)とともに精留DMF(2.8ml)/ジ
オキサン(2.8ml)に溶解し、0℃で10分間攪拌し
た後、DPPA(0.12ml)およびトリエチルアミン
(0.72ml)を加え、室温で24時間攪拌する。得ら
れた溶液は、化合物(XII)および(XIII)と同様に洗
浄し、乾燥する。これにより、Boc−Tyr(Bz
l)−Ile−Gly−Ser(Bzl)−Arg(M
ts)−OMeを0.12g得た。
【0056】(6) 生成物(XV)0.14g(0.13mm
ol)を乾燥ジオキサン(1.95ml)に溶解し、1N
NaOH(0.65ml)を加え、室温で3時間攪拌す
る。減圧濃縮によりジオキサンを除去した後、約20ml
の水を加え、若干の不溶物を濾別除去する。濾液を冷却
し10%クエン酸(0℃)を加え、沈澱を生成させる。
沈殿を濾過し少量の水で2回洗浄し、乾燥すると、Bo
c−Tyr(Bzl)−Ile−Gly−Ser(Bz
l)−Arg(Mts)−OHが0.10g得られた。
さらに、これを乾燥ジオキサン(6.0ml)、4N H
Cl/ジオキサン(6.0ml)、攪拌3時間の条件でB
oc基の除去を行って、HCl・H−Tyr(Bzl)
−Ile−Gly−Ser(Bzl)−Arg(Mt
s)−OHを0.08g得た。
【0057】(7) Poly(Tyr−Ile−Gly−
Ser−Arg)HCl(XVII) HCl・H−Tyr(Bzl)−Ile−Gly−Se
r(Bzl)−Arg(Mts)−OH60mg(0.0
61mmol)を精留DMSO(0.2ml)に溶解し、DP
PA(0.07ml)およびトリエチルアミン(0.06
ml)を加え、0℃で1時間、さらに室温で48時間攪拌
する。48時間後、同量のDPPAおよびトリエチルア
ミンを再度加え、0℃で1時間そして室温で48時間攪
拌する。得られた溶液に水を加え、数回遠心分離し、D
PPA等を除去する。これをさらに少量のMeOHを加
えて4回遠心分離し、MeOHに溶解して、低分子量ペ
プチドを除去する。再度にエーテルで1回遠心分離し、
乾燥する。側鎖保護基の除去のため、Poly(Tyr
(Bzl)−Ile−Gly−Ser(Bzl)−Ar
g(Mts))40mgをスカベンジャーであるチオアニ
ソール(1ml)とともにトリフルオロ酢酸(2ml)およ
びトリフルオロメタンスルホン酸(0.4ml)の混合溶
媒を加え、0℃で2時間攪拌する。この溶液を濃縮乾固
し、乾燥エーテルを加えて沈澱生成を行い、この沈澱を
エーテルで4回洗浄した後乾燥する。さらにこれを塩酸
塩に変換するため少量の水に溶解し、陰イオン交換樹脂
カラム(アンバーライト IRA−400:Cl型)に
通し、得られたフラクションのうち、目的物を含む画分
を濃縮乾固し、MeOH少量で残渣を析出させ、エーテ
ルで数回洗浄した後、乾燥し、Poly(Tyr−Il
e−Gly−Ser−Arg)HClを22mg得た。こ
のポリペプチドの分子量は、約10000であった。
【0058】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の繰り返し
構造を持つ新規ポリペプチド化合物は、細胞接着性蛋白
質のコア配列に比べて、細胞接着性が大きく、癌転移抑
制作用等の種々の生物活性を有し、毒性の問題も殆ど無
い。また、その構造は比較的単純であるため、合成が容
易であり、医薬として価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】PBSが、癌誘発血小板凝集に及ぼす影響を示
すグラフである。
【図2】Poly(Arg,Gly,Asp)が、癌誘
発血小板凝集に及ぼす影響を示すグラフである。
【図3】Poly(Arg−Gly−Asp)が、癌誘
発血小板凝集に及ぼす影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 戸倉 清一 北海道札幌市西区八軒5条西4丁目1番 13号

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式: (Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)n (式中、nは2ないし20の数を表す。)で表される請
    求項1記載のポリペプチドおよびその薬学的に許容され
    る塩。
  2. 【請求項2】分子量が、約10000である請求項1記
    載のポリペプチド。
  3. 【請求項3】式: (Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg)n (式中、nは2ないし20の数を表す。)で表される請
    求項1記載のポリペプチドまたはその薬学的に許容され
    る塩を有効成分として含有してなる癌転移抑制剤。
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