JP2611165B2 - インキおよびインキの製造法 - Google Patents

インキおよびインキの製造法

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茂 岡田
芳男 西山
建輔 長谷川
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大蔵省印刷局長
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、印刷インキ組成物およびその製造法に関す
るものである。
従来の技術 一般に、印刷インキは合成樹脂、乾性油および高沸点
石油系溶剤等を組み合わせたインキビヒクルと顔料並び
に乾燥剤からなり、印刷後低粘度の石油系溶剤だけが主
に紙中に浸透し、合成樹脂分と乾性油が顔料をくるんだ
まま紙上に残って、連続した硬い皮膜を作って迅速にセ
ットするクイックセットタイプのインキが用いられてい
る。
しかし平版印刷物のような紙上インキ皮膜厚さが1μ
m前後のものであっても時として印刷後のインキのセッ
トが十分でなく、印刷物を積み重ねることによりインキ
の裏移りを生じ印刷物の裏面を汚すことがある。このた
めスプレーでパウダーを印刷物表面に散布し、インキと
用紙との接触面積を減少させ裏移りを防いている。さら
に凹版印刷物のような紙上インキ皮膜厚さが数10μmに
も達する印刷物では、裏移りを防ぐためロウ引きした間
紙を印刷物の間に挿入しているのが現状である。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、このような裏移りの問題を無くすことを目
的とした印刷インキで、セットが速く、裏移りを生じな
い特性を有するとともに、機上安定性に優れた特徴を兼
ね備えたものである。すなわち、印刷機上では安定であ
るが、加熱しそれが冷却する過程において印刷物上のイ
ンキ中の溶剤が紙中に浸透、あるいはインキ表面に遊離
して蒸発することにより急速にセットし、凹版印刷物で
あっても裏移りを生じさせない印刷インキである。
問題点を解決するための手段 本発明における印刷インキの特徴はそのインキ組成と
製造法にある。このインキの顔料は親油性を有するタイ
プの着色顔料と親水性を有するタイプの着色顔料または
体質顔料であり、溶剤は親油性を有するタイプの高沸点
石油系溶剤と主に親水性を有するタイプのグリコール系
溶剤で常温では相溶性がなく、常温より高温で相溶性を
生じるもので、それら顔料と溶剤に親油性を有するタイ
プの合成樹脂ワニスを組み合わせたインキである。合成
樹脂ワニスは、酸化重合型の高分子樹脂ワニスすなわ
ち、乾性油または半乾性油を基にして製造した樹脂(油
変性アルキド樹脂等)やロジン変性フェノール樹脂を乾
性油で溶解したものなどを用いる。
このインキは印刷時に高沸点石油系溶剤とグリコール
系溶剤が相溶する温度以上に版面温度を上昇させると合
成樹脂ワニスとの溶解性が増加し、流動性が良好になっ
て転移性を向上させる。そして高沸点石油系溶剤とグリ
コール系溶剤とが分離する温度まで下降させることによ
りグリコール系溶剤がインキ中から離脱し易くなり紙中
への浸透並びに蒸発によってインキの凝集力が増加して
セットする。また、版面温度を上昇させることが困難な
印刷方式であっても印刷後に印刷物を加熱し、冷却する
ことにより十分なセットが得られる。
次に本発明の印刷インキの製造法について説明する。
合成樹脂ワニス、高沸点石油系溶剤および親油性を有す
るタイプの着色顔料を混練した後、親水性を有するタイ
プの着色顔料または体質顔料およびグリコール系溶剤と
を加えて、さらに高沸点石油系溶剤とグリコール系溶剤
が相溶性を生じない温度で混練する。この方法によりグ
リコール系溶剤はインキ中より遊離しやすくなり、また
親水性の着色顔料または体質顔料と合成樹脂ワニスおよ
び高沸点系石油溶剤との親和性も阻害され、溶剤の離脱
が容易になる。
発明の効果 本発明の印刷インキは機上安定性が良好であるととも
に、再現性の優れた高品質の印刷物を得ることができ
る。また、紙上インキ皮膜厚さの特に大きい凹版印刷物
においても裏移りがなく、間紙を必要としないので作業
性に優れ、能率の向上を図ることができる。
<実施例> 主に凹版印刷に用いられるインキの製造方法について
述べる。
溶剤は親油性を有するタイプの高沸点石油系溶剤と主
に親水性を有するタイプのグリコール系溶剤で常温では
相溶性がなく、常温より高温で相溶性を生じるものを用
いるが、具体例としては高沸点石油系溶剤(商品名アイ
ソパーH)とグリコール系溶剤(ジエチレングリコール
モノエチルエーテル)との等量の組合せで、約34℃で相
溶性を生じる。また、高沸点石油系溶剤(商品名アイソ
パーH)と高沸点石油系溶剤(商品名0号ソルベント
H)とグリコール系溶剤(ジエチレングリコールモノエ
チルエーテル)との等量の組合せでは、約49℃で相溶性
を生じる。さらに、高沸点石油系溶剤(商品名0号ソル
ベントH)とグリコール系溶剤(ジエチレングリコール
モノエチルエーテル)との等量の組合せでは、約62℃で
相溶性を生じる。このように溶剤の組合せとその量によ
って相溶する温度を変化させることができる。
実施例1 フタロシアニンブルー9部、油変性アルキド樹脂(商
品名アラキード310)19部、高沸点石油系溶剤(商品名
アイソパーH)5部、高沸点石油系溶剤(商品名0号ソ
ルベントH)2部を3本ロールミルにて混練し、これに
グロスホワイト60部、グリコール系溶剤(ジエチレング
リコールモノエチルエーテル)4.8部、乾燥剤0.2部を加
えて常温で混練すると凹版印刷に適する流動性に優れた
印刷インキとなる。
実施例2 フタロシアニンブルー6部、ロジン変性フェノール樹
脂(商品名KG846)とあまに油を160℃で等量混合したワ
ニス22部、高沸点石油系溶剤(商品名アイソパーH)8
部を8本ロールミルにて混練し、これにグロスホワイト
56部、グリコール系溶剤(ジエチレングリコールモノエ
チルエーテル)7.8部、乾燥剤、0.2部を加えて常温で混
練すると凹版印刷に適する流動性に優れた印刷インキと
なる。
実施例3 フタロシアニンブルー9.9部、パーマネントレッド2B
3部、油変性アルキド樹脂(商品名アラキード310)1
9.4部、高沸点石油系溶剤(商品名アイソパーH)6.6部
を3本ロールミルにて混練し、これにグロスホワイト4
0.7部、鉄黒13.8部、グリコール系溶剤(ジエチレング
リコールモノエチルエーテル)6.4部、乾燥剤0.2部を加
えて常温で混練すると凹版印刷に適する低粘度で非常に
流動性に優れた印刷インキとなり、平版印刷にも使用が
可能である。
上記実施例1、2、3のインキを個々に用いて凹版印
刷機により版面温度、約70℃で印刷した後、常温に戻す
と印刷物を数千枚積み重ねても全く裏移りを生じなかっ
た。また、インキの転移性も良好であり盛りが豊かで再
現性に優れ、耐薬品性も良好な高品質の印刷物が得ら
れ、非画線部の余剰インキはきれいに拭き取ることがで
き、ローラに拭き取られたインキもローラを洗浄する水
性ワイピング液によく分散した。
さらに、これらのインキを凹版印刷機により常温で印
刷した後印刷物表面が約70℃に達するようにヒーターで
加熱し常温に戻すと、印刷物を数千枚積み重ねても裏移
りを生じず、高品質の印刷物が得られた。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】顔料、合成樹脂ワニス、溶剤、その他添加
    剤よりなり、親油性の顔料と親水性の顔料を該顔料成
    分、親油性の合成樹脂ワニスを該合成樹脂ワニス成分、
    並びに常温ではほとんど相溶性がなく、常温より高温で
    相溶性を生じる親油性の溶剤と親水性の溶剤を該溶剤成
    分とすることを特徴とする常温では安定であるが加熱し
    それが冷却する過程において印刷物が急速にセットし裏
    移りを防止することを特徴とするインキ。
  2. 【請求項2】親油性の顔料、親油性の合成樹脂ワニス、
    親油性の溶剤を混練した後、親水性の顔料、親水性の溶
    剤を加えて混練することを特徴とする、顔料、合成樹脂
    ワニス、溶剤、その他添加剤よりなり、親油性の顔料と
    親水性の顔料を該顔料成分、親油性の合成樹脂ワニスを
    該合成樹脂ワニス成分、並びに常温ではほとんど相溶性
    がなく、常温より高温で相溶性を生じる親油性の溶剤と
    親水性の溶剤を該溶剤成分とする常温では安定であるが
    加熱しそれが冷却する過程において印刷物が急速にセッ
    トし裏移りを防止するインキの製造法。
  3. 【請求項3】親油性の溶剤として高沸点石油系溶剤、親
    水性の溶剤としてグリコール系溶剤を使用することを特
    徴とする特許請求の範囲第(1)項記載のインキ。
  4. 【請求項4】沸点が95℃から300℃の石油系飽和炭化水
    素類、沸点が135℃から256℃のエチレングリコールエー
    テル類、油変性アルキド樹脂またはロジン変性フェノー
    ル樹脂、親油性の顔料、親水性の顔料からなる特許請求
    の範囲第(1)項記載のインキ。
  5. 【請求項5】親油性の顔料、油変性アルキド樹脂または
    ロジン変性フェノール樹脂、石油系飽和炭化水素類を混
    練した後、親水性の顔料、エチレングリコールエーテル
    類を加えて常温で混練することを特徴とする特許請求の
    範囲第(2)項記載のインキの製造法。
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