JP2608935B2 - ネコ感染性腹膜炎に対しネコを保護するワクチン - Google Patents

ネコ感染性腹膜炎に対しネコを保護するワクチン

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明はネコ感染性腹膜炎(felin infectious perit
onitis)(FIP)ウイルスに対しネコを免疫化するのに
有用なワクチンの製法の関する。さらに詳しくは、本発
明はネコを効果的にFIPから保護する弱毒化された温度
感受性ワクチンに関する。
発明の背景 ネコ感染性腹膜炎(FIP)は飼っているネコおよび野
生のネコ双方の疾患である。該ウイルスは動物の多くの
内部器官を侵し、ほとんど常に死に至らしめる。該ウイ
ルスはかなりの伝染性であり、子ネコならびに成長した
ネコを侵す。
該FIPウイルスはホルジネックおよびオステルハウス
(Horzinek and Osterhause)、アーカイブズ・オブ・
バイロロジー(Arch.Virol.)、59:1(1979)によって
コロナウイスル属と同定された。FIPウイルスはブタの
伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、イヌの腸コロナウイル
スおよびヒトの呼吸器系コロナウイルスの類縁である。
また、主として腸で複製し、軽い下痢症を引き起こすだ
けのネコ腸コロナウイルス(FECV)がある。ルッツら
(Lutz,et al.)、ジャーナル・オブ・スモール・アニ
マル・プラクティス(J.Small Animal Practice)、27:
108(1986)。
FIPはコロナウイルスによって引き起こされることは
公知であるが、いかにして感染がネコの間で伝わるのか
およびその病因はまだよく理解されていない。該疾患の
病因は非常に複雑で、研究によると、宿主、ウイルスお
よび環境の因子が該疾患の形態および進行で役割を演じ
ていると示される。ペデルセンら(Pedersen,et a
l.)、小動物のウイルス病(Viral Diseases of Small
Animals)、第34回年次シンボジウム、7:1001(198
5)。
FIPは異なる2つの形態:線維性腹腔浸出によって特
徴づけられる湿潤および浸出形ならびに浸出がほとんど
ないかもしくは全くない器官の肉芽性炎によって特徴づ
けられる乾燥または柔軟形で起こり得る。ルッツら(Lu
tz,et al.)、前掲。
ネコの他のコロノウイルス感染、例えば抗原的にFIP
ウイルスに類縁のFECVがあるから、FIPの病因は特徴づ
けるのが困難であった。その結果、該疾患の診断につい
ての血清学テストは特異性を欠き、初期の研究の解釈は
混乱していた。ペデルセンら(Pedersen,et al.)、フ
ェリン・プラクティス(Feline Practice)13:13(198
3)。
最近に至るまで、FIPに対する保護活性免疫化は不可
能であった。対照的に、ワクチン接種したネコは病気に
より罹りやすかった。ペデンセンら(Pedersen,et a
l.)。アメリカン・ジャーナル・オブ・ベテリナリ・リ
サーチズ(Am.J.Vet.,Res.)44:229(1983);ウェイス
ら(Weiss,et al.)、コンプ・イムン・ミクロバイオル
・インフェクト(Comp.Immun.Microbiol.Infect.)4:17
5(1981);ウェイスら(Weiss,et al.)、41:663(198
0)。
ネコは口鼻経路によって感染する。FIPウイルスは上
気道管および腸の上皮細胞で増殖する。臨床的には、は
っきりとしたFIPは粘膜障壁を通過し、免疫介在病を引
き起こした後に起こる。ルッツら(Lutz,et al.)、前
掲、ウェイスら(Weiss,et al.)、アメリカン・ジャー
ナル・オブ・ベテリナリ・リサーチズ(Am.J.Vet.Re
s.)、42:382(1981)。
鼻粘膜免疫応答の刺激はワクチンの鼻孔内投与によっ
て最もよくなされる。ビーネンストックら(Bienenstoc
k,et al.)、イミュノロジー(Immunology)41:249(19
80);ムレイ(Murray)、ザ・ベテリナリ・レコード
(The Veterinary Record)、11月10日:500(1973)。
また、抗−FIPウイルスIgA抗体を分泌するように刺激さ
れた粘膜B−リンパ球は腸粘膜に移動し、局所的腸免疫
を与える。ムレイ(Murray)、前掲。
発明の開示 本発明の1の具体例はひどい副作用なくしてネコにお
いてFIPウイルスによる感染に対する免疫を誘導できる
経口は鼻孔内投与用FIPワクチンである。かかるワクチ
ンは温度感受性(ts)FIPウイルスの有効量よりなる。
本発明のもう1つの具体例において、罹患細胞内での
高継代によってFIPウイルスを弱毒化し;弱毒化されたF
IPウイルスを突然変異誘発剤に暴露し;該突然変異誘発
剤への暴露の後今や温度感受性となった弱毒化FIPウイ
ルスを培養し;弱毒化FIPウイルスを収集することを特
徴とするFIPウイルに対するスワクチンの製法が提供さ
れる。
本発明のさらにもう1つの具体例において、弱毒化さ
れた温度感受性FIPウイルスを経口または鼻孔内経路に
より投与することを特徴とするネコをFIPウイルスに対
して免疫化する方法が提供される。
本発明のもう1つの具体例において、ワクチンの生産
で有用なFIPウイルスが提供される。かかるFIPウイルス
は弱毒化されておりかつ温度感受性である。
本発明のもう1つの具体例において、温度感受性FIP
ウイルスの102ないし107TCID50を含有し、ネコへの鼻孔
内または経口投与に適した0.5ないし1.5mlの液体よりな
ることを特徴とするFIPウイルスによる感染に対し免疫
を誘導するワクチン投与単位が提供される。
本発明のなおさらにもう1つの具体例において、ts−
FIPウイルスの有効量およびもう1つの病原生物もしく
はウイルスによる感染に対し保護する1もしくはそれ以
上の他の抗原の有効量よるなることを特徴とするひどい
副作用なくしてFIPウイルスおよび1もしくはそれ以上
の他の病原生物もしくはウイルスによる感染に対しネコ
において免疫を誘導することができる経口または鼻孔内
投与用混合ワクチンが提供される。
有効なFIPウイルスは、感染が粘膜障壁を越えるのを
防ぐための強力な免疫応答および感染が該粘膜を越えた
場合にウイルスが広がるのを直ち阻止する細胞性免疫
(CMI)応答を刺激すべきである。本発明の温度感受性F
IPウイルス(ts−FIPウイルス)は鼻孔内投与または経
口投与できる。本発明の好ましい具体例において、ts−
FIPウイルスは鼻孔内投与される。ts−FIPウイルスを鼻
孔内投与された場合、鼻咽頭領域内における温度で増殖
するその能力のため、ts−FIPウイルスは容易に増殖
し、CMI応答および局所免疫応答を刺激する。加えて、t
s−FIPウイルスは、全身ワクチン接種したネコまたはビ
ルレントFIPウイルスに感染したネコにおいて検知され
ない抗原投与によりFIPウイルスに対するCMI応答を刺激
する。
本発明のワクチンを製造するのに用いるFIPウイルス
は該ウイルスに感染した動物の器官または組織、好まし
くは肝臓から単離する。器官または組織をすりつぶし、
実験動物、好ましくは特異的病原のない(SPF)ネコに
経口投与する。
感染器官の数回のin vivo継代、好ましくは感染脾臓
または肝臓の5回の継代の後、FIPウイルスを単離す
る。当該分野で公知の標準法を用いてFIPウイルスを感
染器官から単離し、ネコ細胞と一緒に共培養する。FIP
ウイルスは、いずれの源、例えばデイビス(Davis)、
米国特許第4303644号およびフィシュマンら(Fishman,e
t al.)、米国特許第4571386号によって教示されるごと
き脾臓、腸間膜リンパ節、内皮細胞または胚細胞培養物
からのネコ細胞と一緒でも容易に増殖する。本発明の好
ましい具体例において、FIPウイルスを疾患組織から単
離し、ネコ腎臓細胞と一緒に共培養する。
ウイルスをin vitro増殖に適合させるために、疾患組
織から抽出したウイルスをネコ細胞と一緒に共培養す
る。in vitro増殖は多核細胞と共にコロナウイスルに典
型的な他の公知の細胞変性効果(cpe)の形成によって
証明される。ウイルスを弱毒化されるまで継代し、次い
で温度感受性とするために突然変異させる。当該分野に
おいては、弱毒化はウイルスがもはや病気を引き起こさ
ないように修飾されたことを意味する。最後に、弱毒化
された温度感受性ウイルスを経口または鼻孔内経路いず
れかを通じてネコに投与する。
好ましい具体例においては、FIPウイルスをネコ腎臓
細胞内で高継代、例えば少なくとも60回の継代、好まし
くは95〜100回の継代によって弱毒化する。温度感受性F
IPウイルスを得るには、高継代数の培養物流動物を、約
31℃における増殖によるウイルス力価が39℃におけるよ
りも大であって少なくとも1×102TCID50、好ましくは
約1×105TCID50なるまで突然変異誘発剤、例えば化学
的なものまたは照射;好まくは紫外線照射に暴露する
(TCID50はウイルスに暴露された培養細胞の50%におい
て細胞変性効果を生じる組織培養感染用量である)。
最適なウイルス活性を得るためには、ウイルス流動体
を5分毎に採集し、−7℃貯蔵する。各5分試料の10倍
系列希釈物(10゜ないし10-7)を密集性ネコ腎臓細胞単
層上でウイルス活性についてテストする。最適試料、好
ましくは5分試料を選択し、31℃にて種々の希釈にて増
殖させる。単一プラークを含有するウェルからのウイル
ス流動体を収集する。
第1表は31℃におけるFIPウイルス(DF2−FIPウイル
ス)のビルレント株の紫外線照射の効果を示す。FIPウ
イルスは10分間紫外線への暴露の後完全に不活性され
た。
5分間の紫外線照射に暴露した1:16希釈におけるFIP
ウイルス流動体はウイルスプラークを含有していた。単
一のプラークを多数のウェルで増殖させる。
個々の単一プラークを31℃、37℃および39℃にて24ウ
ェルプレートでの10倍希釈物(10-3ないし10-8)で力価
を測定した(第2表)。
ウイルスを増殖させる最適条件は許容温度において増
殖するその能力に基づく。39℃においてTCID50は31℃に
おけるTCID50よりも少なくとも約1×102ユニット小さ
く、好ましくは少なくとも1×105ユニット小さい。
本発明の弱毒化された温度感受性FIPウイルスはネコ
をFIPウイルスから保護するために該動物に投与でき
る。安全であって、すなわちひどい副作用を引き起こさ
ず、かつ効果的、すなわち投与により保護の細胞免疫お
よび局所免疫応答を誘導する用量を選択する。
FIPワクチンは鼻孔内または経口投与できる。投与の
好ましい態様は、典型的な用量が0.5ないし1.5ml容量中
102ないし107のTCID50である鼻孔内投与である。
該用量は単一用量としてまたは時間をかけてのいくつ
かの希釈用量として投与できる。0.5mlの半分(0.25m
l)を例えばスプレーまたは絞り出し容器によって、あ
るいは滴びんによって動物の各鼻孔に投与する、単体0.
5ml中の105.5TCID50ウイルスの単一用量が好ましい。実
験の結果、効果的なワクチンを単一用量として投与で
き、2回の用量が好ましいことが示された。
FIPワクチンは直接投与できる。すなわち、ウイルス
を細胞培養流動体中で増殖させ、次いで該培養流動体を
投与用担体として用いることができる、該培養流動体は
標準法によって希釈または濃縮して所望の濃度の弱毒化
ts−FIPウイルスを得ることができる。別法として、例
えばスクロール密度勾配遠心法によって細胞培養物から
弱毒化した温度感受性ウイルスを抽出し、適当な担体、
例えば水、サーライン、コレラトキシド、または卵アル
ブミンと、あるいはアジュバント、例えばクイール(Qu
il)A、アルデヒドゲルまたは油性エマルジョンと混合
することによって、ts−FIPウイルスの医薬上許容され
る製剤を得ることができる。
好ましい具体例において、ウイルスを培養物流動体中
にて投与し、単一用量の一部を調製する。無毒性のts−
FIPウイルスは単一用量の量で凍結乾燥し、使用まで貯
蔵することができる。凍結乾燥粉として貯蔵する場合、
投与に先立ち、ネコにおける直接鼻孔内投与に適した
水、サーライン、培養物流動体または他の適当な担体で
ワクチンを復元できる。
抗体応答は測定は、酵素免疫法(ELISA)および血清
ウイルス中和(VN)試験のごとき標準法を用いて行い、
かつ個々の動物からの血液試料で行うことができる。測
定はワクチン接種および抗原投与により試料について最
適に行うことができる。ペデルセンら(pedersen,et a
l.)、ザ・コンペンジウム・オン・コンティニーイン・
エデュケイション(The Comoendium on Continuing Edu
cation)、:1001(1985)に記載されているリンパ球
幼若化法を用いてワクチン接種および抗原投与による細
胞媒介(リンパ球)応答を示す。
本発明のさらなる態様はts−FIPウイルスおよび1も
しくはそれ以上の公知ネコウイルスのワクチン量よりな
る混合ワクチンの製法および使用である。例えば、混合
ワクチンは、ts−FIPウイルス成分および呼吸器系感染
の原因であるとして公知の1もしくはそれ以上のネコウ
イルス、例えばカルチウイルス、ネコヘルペス(鼻気管
炎)ウイルスよるなる経口または鼻孔内投与用として調
製できる。
FIPウイルスおよび1もしくはそれ以上の他の病原生
物もしくはウイルスによる感染に対しネコにおいて免疫
を誘導できる他の混合ワクチンはts−FIPウイルス成分
および他の非呼吸器系類縁ウイルス成分もしくは病原生
物、例えばネコジステンパー(パンロイコペニア(panl
eukopenia))、クラミジア、ネコ白血病を用いて調製
できる。サブユニットワクチンも調製できる。ts−FIP
ウイルスは、非経口または鼻孔内投与用に、殺したもし
くは弱毒化した病原、例えばネコジステンパーウイル
ス、カルチウイルス、ネコヘルペスウイルス等のサブユ
ニット成分と組み合わすことができる。ts−FIPウイル
スは、また、非経口投与用に、ネコ白血病ウイルスワク
チンと組み合わすこともできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する
のが本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例 実施例1:効能試験1 リバティイ・ラブズ(Libery Labs)(リバティイ(L
iberty)、ニュージャージー州)からの14匹のSPF雄ネ
コ(26月令)を第1のワクチン接種−抗原投与試験で用
いた。ワクチン接種したネコを1の隔離室中に、非ワク
チン接種ネコをもう1つの隔離室中に保持した。
3週間離して、3回、10匹のネコをts−FIPウイルス
で鼻孔内(IN)ワクチン接種した。5匹のネコには31℃
におけるウイルス力価が105.5TCID50/mlのts−FIPウイ
ルスをワクチン接種し、5匹には31℃におけるウイルス
力価が103.5TCID50/mlのウイルスをワクチン接種した。
2週間後、10匹のワクチン接種体および4匹の対照に対
し、ビルレントFIPウイルスの1:600希釈物(FIPウイル
ス−DF2、継代10回、抗原投与力価=102.68TCID50/ml)
1mlを経口抗原投与した。
ELISA法によって、オステルハウスら(Osterhause,et
al.)、ベテルナリ・クアテルリィ(Veterinary Quate
rly)、:59(1979)、FIPウイルスに対するIgG血清学
的応答を測定した。VN力価(ぺデルセンら(Pedersen,e
t al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ベテリナリ
・リサーチ(Am.J.Vet.Res.)44:229(1983))、も測
定した。
ts−FIPウイルスワクチン接種体のIgG ELISA法力価を
第4表に示す。ワクチン接種ネコのプレワクチン接種力
価はそれらを隔離ケージから取り出した日についてのも
のであった。対照ネコは隔離ケージから取り出した15日
後、プレワクチン接種ELISA法力価15を有していた。対
照ネコのFIPウイルスに対するIgG応答は、実験で用いた
SPFネココロニーに固有のネコ腸コロナウイルス(FEC
V)への交差反応活性の抗体によるものである。その結
果、ワクチン接種ネコのIgG応答はFECVならびにワクチ
ンウイルスによるものである。
IgG ELSA法力価とは対照的に、ワクチン接種前に陰性
であった(第5表)ウリルス中和力価は、各ワクチン接
種の後増加した。抗原投与後、抗体力価測定用に血清を
収集しなかった。ワクチン接種ネコおよび対照ネコはFI
Pウイルスに対する交差反応性抗体応答を生じたので、
両群のFECVでのプレ暴露は、もしあったとしても、抗原
投与に対して少ししか効果がない。4匹にうち3匹の非
ワクチン接種対照ネコはFIPに罹り、死亡した。第4番
目のネコ、LK2は9匹の保護されたワクチン接種体のい
ずれよりも3倍大きい13の離床スコア(数がより大きい
症状がよりひどく、死亡のスコアは50である)を有して
いた。
実施例2:効能試験2 リバティイ・ラブズ(Liberty Labs)からの12匹のコ
ロナウイルス陰性SPF雄ネコ(12月令)を第2のワクチ
ン接種−抗原投与試験で用いた。すべてのネコを隔離ケ
ージに入れた(ケージ当たりネコ3匹)。
6匹のネコを、3週間離して3回、ts−FIPウイルス
でINワクチン接種した。3匹のネコをts−FIPウイルス
で2回INワクチン接種し、1回は経口で行った。ts−FI
Pウイルス力価は105.5TCID50/mlであった。3匹の非ワ
クチン接種対照はワクチン接種体とは別のケージ中で保
持した。
ビルレンFIPウイルスの1:600希釈物(FIPウイルスを
−DF2、継代10回、抗原投与力価=102.15TCID50/ml)1m
lを9匹のワクチン接種体をおよび3匹の対照に経口抗
原投与した。
ts−FIPウイルスワクチン接種体および非ワクチン接
種体の血清IgG抗−FIPウイルス抗体応答を第6表に示
す。第1および第2のワクチン接種によりIgG抗体力価
の最大増加が見られた。3回目のINワクチン接種ネコに
おいて力価の増加は生じず、保護を誘起するのに1また
はせいぜい2つの用量で十分であることが確認された。
IgG抗体力価は抗原投与により急激に増加した。ウイル
ス中和抗体力価は各3回のワクチン接種および抗原投与
により増加した(第7表)。
3匹の非ワクチン接種対照のうち2匹はFIPに罹り、
死亡した。すべてのワクチン接種ネコは生存した。2匹
のワクチン接種ネコ、SN1およびSY1では一時的な血液疾
患、初期的デフル体(Doehle Bodies)、低充填細胞容
量および体温の上昇があった。しかしながら、それらは
まさに起こりつつある死の適切な表示たる黄疸のいずれ
の微候も示さなかった。
実施例3:効能試験3 リバティイ・ラブズからの18匹のコロナウイルス陰性
SPF雄ネコ(12月令)を用いた。すべてのネコを隔離ケ
ージ(ケージ当たりネコ2匹)に入れた。6匹のネコを
3週間離して2回ts−FIPウイルスでIN接種した。6匹
のネコを1回INワクチン接種した。ts−FIPウイルス力
価は105.5TCID50/mlであった。さらに6匹のネコをコン
カナバリンA(ConA)アジュバントのts−FIPウイルス
で皮下(SC)ワクチン接種し、INワクチン接種体とは別
のケージ中で保持した。6匹の非ワクチン接種対照ネコ
はワクチン接種体とは別のケージ中にて保持した。
3週間後、12匹のワクチン接種体および6匹の対照
に、ビルレントFIPウイルスの1:600希釈物(FIPウイル
ス−DF2、継代10回、抗原投与力価=102.61TCID50/ml)
1mlを経口にて抗原投与した。
第8表はts−FIPウイルスのINおよび皮下ワクチン接
種ネコおよび非ワクチン接種ネコのELISA IgG力価を示
す。2回INワクチン接種したネコ、および1回ワクチン
接種したネコさえ抗原投与時のSCワクチン接種したネコ
よりも高い平均力価を有していた。また、ts−FIPウイ
ルスワクチンのIN2容量を摂取したネコは抗原投与に先
立ち単一のIN用量を摂取したネコよりも高いVN力価を有
していた(第9表)。IN投与のts−FIPウイルスの1用
量さえ、SC投与の2用量よりも高いVN力価を刺激した。
2回INワクチン接種した6匹のネコのうち5匹からの
抹消血液リンパ球は抗原投与に先立つリンパ球幼若化試
験においてFIPウイルスに対して応答した。IN1回ワクチ
ン接種の3匹のネコ、および皮下2回ワクチン接種のた
だ1匹のネコは同様の応答を示した。
5匹のうち2匹の、抗原投与に先立ちリンパ球幼若化
応答を示した2用量INワクチン接種体と、応答しなかっ
た2用量INワクチン接種体は抗原投与後に強い幼若化応
答を示した。IN1回ワクチン接種の1匹のネコからリン
パ球のみが抗原投与によるFIPウイルスに応答し、SC2回
ワクチン接種のネコからのリンパ球は応答しなかった。
IN2回ワクチン接種のすべての6匹のネコはFIPウイル
ス抗原投与からしっかりと保護されていた。IN1回ワク
チン接種の6匹のネコ(UX6)のうち1匹はFIPを指示す
る血液疾患を示したものの、生き残った。対照的に、非
ワクチン接種ネコ4匹のうちの2匹および皮下ワクチン
接種ネコ6匹のうちの5匹はFIPに罹り、死亡した。生
き残った対照ネコ(HI2)2匹のうち1匹はFIPを示唆す
る血液疾患を示した。ほとんどの皮下ワクチン接種ネコ
は非ワクチン接種ネコよりも早くFIPに罹った。
実施例4:混合ワクチンの調製 カリチウイルスおよびネコヘルペス(鼻器官炎)ウイ
ルスと組み合わたts−FIPウイルスよりなる鼻孔内投与
用混合ワクチンを製造することができる。該混合ワクチ
ンは、以下の: ネコヘルペスウイルス(TCID50=107.2)0.5ml カリチウイルス(TCID50=107.9)0.50ml ts−FIPウイルス(TCID50=105.5)0.5ml 安定剤(NZ−アミン、ゼラチンまたはスクロース)0.8m
l を組み合わせることができる。
混合ワクチンは出荷および貯蔵のために凍結乾燥する
ことができる。使用に先立ち、例えば水、サーラインま
たは他の経口もしくは鼻孔内投与に適した賦形剤中1.0m
lまで水分補給できる。
実施例5:サブユニットワクチンの調製 ts−FIPウイルスの免疫原性サブユニットは、ウイル
スそのままあるいはネコジステンパーウイルス、カリチ
ウイルス、ネコヘルペスウイルスおよびクラミジアワク
チンのサブユニット成分と組み合わせ、非経口投与また
は鼻孔内投与できる。このタイプの混合サブユニットワ
クチンは以下の: ts−FIPウイルス(TCID50=105.5)0.2ml ネコヘルペスウイルス(TCID50=107.2)0.5ml ネコジステンパーウイルス(TCID50=106.0)0.25ml カリチウイルス(TCID50=107.9)0.25ml ネコ白血病ウイルス(gp70蛋白の500−3000μg)0.5ml クラミジア(TCID50=106.5)0.25ml を組み合わせることができる。
各種ネコウイルスの濃度は効果的な免疫応答を生じる
として公知の量である。成分を投与に適した小容量とす
るために、好ましくは前記推奨容量で濃縮ウイルスを調
製する。
実施例6:2成分サブユニットワクチン 非経口投与用2成分サブユニットワクチンは免疫原性
ネコ白血病ウイルスワクチンと組み合わせて、ts−FIP
ウイルスの免疫原性サブユニットを用いて調製できる。
該混合サブユニットワクチンは以下の: ts−FIPウイルス(TCID50=105.5)0.4ml ネコ白血病ウイルスサブユニット(25−1000μg)0.4m
l アジュバント(水酸化アルミニウム、サポニン)0.2ml を組み合わせることができる。
実施例7:ワクチンの2部位投与 ts−FIPウイルスワクチンはカルチウイルス、ネコヘ
ルペスウイルス、ネコジステンパーウイルス、ネコ白血
病ウイルスおよびクラミジア(ネコ肺炎)混合ワクチン
の非経口投与の時に鼻孔内投与することができる(鼻孔
当たり0.5ml)。各種成分の濃度は実施例4に記載の通
りであるが、ts−FIPは他のウイルス成分とは別に鼻孔
内投与することができる。

Claims (28)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】31℃において、39℃におけるよりも、少な
    くとも1×102倍ないし1×105倍大きいTCID50を示す弱
    毒化された、温度感受性ネコ感染性腹膜炎(FIP)ウイ
    ルスの有効量よりなることを特徴とするひどい副作用な
    くしてネコにおいてFIPウイルスによる感染に対し免疫
    を誘導できる経口または鼻孔内投与用FIPワクチン。
  2. 【請求項2】該温度感受性弱毒化FIPウイルスが、31℃
    において、39℃におけるよりも、少なくとも1×105
    大きいTCID50を示す請求項1記載のワクチン。
  3. 【請求項3】該FIPウイルスが、感染ネコの組織または
    器官から単離したビルレントFIPウイルスを、罹患細胞
    中で少なくとも約60回継代することによって弱毒化さた
    ものである請求項1記載のワクチン。
  4. 【請求項4】ビルレントFIPウイルスの継代を30℃およ
    び35℃の間の温度でネコ腎臓細胞中で行う請求項3記載
    のワクチン。
  5. 【請求項5】該弱毒化FIPウイルスを突然変異誘発剤に
    暴露することによって温度感受性とする請求項3または
    4記載のワクチン。
  6. 【請求項6】該突然変異誘発剤が紫外線ある請求項5記
    載のワクチン。
  7. 【請求項7】該突然変異誘発を、該弱毒差化FIPウイル
    スを紫外線に3ないし5分間暴露することによって行う
    請求項6記載のワクチン。
  8. 【請求項8】温度感受性弱毒化FIPイウイルスが、1ml当
    たり102ないし107TCID50の濃度で存在する請求項7記載
    のワクチン。
  9. 【請求項9】温度感受性弱毒化FIPウイルスが、1m1当た
    り105.5TCID50の濃度で存在する請求項8記載のワクチ
    ン。
  10. 【請求項10】a)FIPウイルスのビルレント株を培養
    し; b)罹患細胞中で高継代して工程a)のFIPウイルスを
    弱毒化し; c)工程b)の該弱毒化されたFIPウイルスを突然変異
    誘発剤に暴露して突然変異した弱毒化FIPウイルスを作
    り; d)工程c)の突然変異した弱毒化FIPウイルスから、3
    1℃において、39℃におけるより、少なくとも1×102
    ないし1×105倍大きいTCID50を示す温度感受性の弱毒
    性FIPウイルスを選択的に培養し;次いで e)工程d)の温度感受性の弱毒化FIPウイルスを収集
    する; ことを特徴とするひどい副作用なくしてネコにおいてFI
    Pウイルスによる感染に対し免疫を誘導できる経口また
    は鼻孔内投与用FIPウイルスの製法。
  11. 【請求項11】工程d)の該温度感受性弱毒FIPウイル
    スが、31℃において、39℃におけるよりも、少なくとも
    1×105倍大きくTCID50を示す請求項10記載のワクチン
    の製法。
  12. 【請求項12】工程a)のFIPウイルスのビルレント株
    が、感染ネコの組織または器官から単離したものである
    請求項10記載のワクチンの製法。
  13. 【請求項13】工程b)において、FIPウイルスのビル
    レント株を、ネコ腎臓細胞中で少なくとも約60回継代し
    て弱毒化する請求項10記載のワクチンの製法。
  14. 【請求項14】継代を30℃にないし35℃の温度で行う請
    求項13記載のワクチンの製法。
  15. 【請求項15】工程c)において、弱毒化ウイルスを暴
    露する突然変異誘発剤が紫外線である請求項10記載のワ
    クチンの製法。
  16. 【請求項16】31℃において、39℃におけるよりも、少
    なくとも1×102倍ないし1×105倍大きいTCID50を示す
    弱毒化された、温度感受性FIPウイルスを経口もしくは
    鼻孔内経路で投与することを特徴とするひどい副作用な
    くしてネコをFIPウイルスに対して免疫する方法。
  17. 【請求項17】該温度感受性弱毒化FIPウイルスが、31
    ℃において、39℃におけるよりも、少なくとも1×105
    倍大きいTCID50を示す請求孔16記載の免疫方法。
  18. 【請求項18】31℃において、39℃におけるよりも、少
    なくとも1×102倍ないし1×105倍大きいTCID50を示
    す、ひどい副作用なくしてネコにおいてFIPウイルスに
    よる感染に対し免疫を誘導できる経口または鼻孔内投与
    用FIPワクチン製造用の弱毒化された、温度感受性FIPウ
    イルス。
  19. 【請求項19】31℃において、39℃におけるよりも、少
    なくとも1×105倍大きいTCID50を示す請求項18記載の
    ウイルス。
  20. 【請求項20】ネコ腎臓細胞を用いる培養中で、複数回
    継代することにより弱毒化した請求項18記載のウイル
    ス。
  21. 【請求項21】突然変異誘発剤に暴露することによって
    温度感受性とした請求項18記載のウイルス。
  22. 【請求項22】102ないし107TCID50の投与量でネコにお
    けるFIPウイルスに対する免疫を誘導するのに有効であ
    る請求項18記載のウイルス。
  23. 【請求項23】31℃において、39℃におけるよりも、少
    なくとも1×102倍ないし1×105倍大きいTCID50を示
    す、弱毒化された、温度感受性FIPウイルスの102ないし
    107TCID50を含有する、鼻孔内または経口投与するのに
    適した0.5ないし1.5mlの液体よりなることを特徴とする
    ひどい副作用なくしてネコにおいてFIPウイルスによる
    感染に対し免疫を誘導するワクチン単位投与形。
  24. 【請求項24】該温度感受性弱毒化ウイルスが、31℃に
    おいて、39℃におけるよりも、少なくとも1×105倍大
    きいTCID50を示す請求孔23記載のワクチン単位投与形。
  25. 【請求項25】請求項23記載のワクチン単位投与形を1
    単位またはそれ以上、鼻孔内または経口投与することを
    特徴とするひどい副作用なくしてネコにおいてFIPウイ
    ルスによる感染に対し免疫する方法。
  26. 【請求項26】31℃において、39℃におけるよりも、少
    なくとも1×102倍ないし1×105倍大きいTCID50を示
    す、弱毒化された、温度感受性FIPウイルスの有効量
    と、1つまたはそれ以上の他の病原による感染に対して
    保護する1もしくはそれ以上の抗原の有効量によりなる
    ことを特徴するひどい副作用なくしてネコにおいてFIP
    ウイルスおよび該1つのもしくはそれ以上の他の病原に
    よる感染に対し免疫を誘導できる経口もしくは鼻孔内投
    与用混合ワクチン。
  27. 【請求項27】該温度感受性弱毒化ウイルスが、31℃に
    おいて、39℃におけるよりも、少なくとも1×105倍大
    きいTCID50を示す請求項26記載の混合ワクチン。
  28. 【請求項28】請求項27項記載の混合ワクチンを経口ま
    た鼻孔内投与することを特徴とする、ひどい副作用なく
    してFIPウイルスおよび1つもしくはそれ以上の他の病
    原による感染に対しネコを免疫する方法。
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