JP2604272Y2 - 代掻同時植付機における防泥装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、圃場を耕起し、その表
層を浅く代掻しながら代掻した部分に苗を植付ける代掻
同時植付機における防泥装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、作物を収穫した状態の圃場を深層
まで耕起すると共に耕起層全体を代掻する方式、及び穀
稈を収穫した後の圃場に不耕起状態で苗を植付ける方
式、並びに上記圃場の狭い幅だけ耕耘し、この耕耘した
部分に苗を植付ける植付機は既に知られている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】前記既知の植付方式の
うち、第１の方式は耕起層全体を代掻するため多大の労
力を要すると共に深層まで練り合わされて土壌中に空隙
がなくなり、しかも、代掻した後に植付装置により別途
植付作業をしなければならなかった。また、第２の方式
は、植付時の圃場に、収穫時のコンバインのクローラ
跡、窪み等があって均平性に欠け、かつ、古株や雑草が
多いので、著しい深植え、又は浅植えになって浮き苗や
成育不良が発生する。更に、第３の方式は、植付条列の
耕起部分の土壌に粘着性がないので植付けた苗の起立保
持が困難であった。このような課題を解決することを目
的として耕起した圃場の表層全面を代掻ローターにより
浅く代掻し、この代掻部分に、整地フロートを有する植
付装置により苗を植付ける代掻同時植付装置を既に提案
した。そして、この代掻同時植付機により代掻しながら
苗植付を行ったところ、前記代掻ローターが多量の泥水
を後方へ掻き出し、この泥水が後方の植付装置にかかる
ので、植付装置の作動を悪化させると共に整地フロート
上に泥土が堆積してその前部が下降して、整地性能が低
下すると共にそれを泥土圧感知に用いた場合、感知機能
も低下した。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本考案は、走行車の後部
に、複数の植付体を横方向に所定の植付条間隔をおいて
具備していて下部に複数の整地フロートを配設してなる
植付装置を装着し、該植付装置の前部には上下方向に回
動可能で、圃場表層全面を代掻する代掻ローターを横方
向に軸架し、該代掻ローターの後部を前記整地フロート
の前部に向けて垂下した防泥カバーにより覆い、前記代
掻ローターの下降時に、前記防泥カバーの下端が圃場面
より上方で、且つ前記整地フロート前端上面より下方に
位置するように構成したことにより代掻ローターが、後
方へ掻き出す大量の泥水を防泥カバーで受け止めて整地
フロート下方等へ誘導案内するようにして前述の課題を
解決した。

【０００５】

【作用】収穫済の圃場を耕起した後湛水し、複数の代掻
ローターを、横方向にして耕起されている土壌の表層に
侵入させた状態で回転させながら進行させると、前記代
掻ローターは、その下面で表層の泥水を後方へ掻き出し
ながら代掻して泥土状となし、後方植付装置の各植付体
は所定の条間で苗を植え付ける。そして、前記代掻ロー
ターが後方へ掻き出した泥水は防泥カバーにより受け止
められて整地フロート下方等へ誘導案内され、後方及び
上方へ飛散するのが防止されて、それにより後方の植付
体に泥土が付着したり、整地フロート上面に泥土が堆積
したりするのを防止することができる。

【０００６】

【実施例】本考案の一実施例を図面について説明する
と、走行車１は前輪２，２と後輪３，３とからなる走行
装置を有し、エンジン４の動力はミッションケース５に
より走行装置と機体後部のＰＴＯ軸とに分配され、前記
機体の後方には、トップリンク６とロアリンク７，７と
を介して植付装置８を昇降可能に連結し、この植付装置
８はその入力軸をミッションケース５から後方へ突出し
たＰＴＯ軸に自在継ぎ手及び中間軸を介して連動連結さ
れていて、伝動ケース１０と、該伝動ケース１０から両
側方へ延出したパイプフレーム内の横軸を介して伝動す
る複数の植付伝動ケース１２・・と、植付伝動ケース１
２・・により駆動される複数の植付体１４・・と、各植
付伝動ケース１２・・の下部に配設された整地フロート
１６・・と、横方向に往復動する苗載台１５とにより構
成されている。

【０００７】また、前記整地フロート１６は、それぞれ
その上方にある植付伝動ケース１２，１２に、後部が上
下傾動自在に枢支され、前部はく字状リンクで昇降可能
に連結し、更に、中央の整地フロート１６は、接地圧感
知フロートをも兼ねていて複数のリンクを介して植付装
置８を昇降させるための油圧シリンダの制御バルブに連
動連結してあるので植付装置８の接地高さを略一定に
し、整地フロート１６はその前部両側を外側方へ延出さ
せてあり、このように構成することにより車輪跡はもと
より中間部まで略全幅に亙る田面の凹凸を良好に均平す
ることができ、かつ、雑草の発生を押さえると同時に除
草剤の効果を高めることができ、前記各植付体１４・・
は整地フロート１６の側方へ延出した部分が整地した部
位に苗を植付ける。

【０００８】更に、左右両側の前記植付伝動ケース１２
・・の側面に固定した左右のブラケット１９ａ，１９ａ
には、前方へ向かうステー１９・・を枢支ボルト１９ｂ
と調節ボルト１９ｃとにより上下回動調節可能に連結
し、それらのステー１９・・の前端部には、代掻軸２０
を支承するための軸受２３，２３を取付けてあり、代掻
ローター２１・・は横方向に複数個連設されており、そ
れらの代掻ローター２１は、鋼製シリンダの外周に、ジ
グザグ状に屈曲したラグ状（又は蛇行状）の突条２２・
・を有するゴム層を熔着することにより構成し、該突条
２２は、く字状に折曲したものを断続的に配列したも
の、若しくは左右に傾斜したものを交互に断続的に配列
したもの等でも良く、また、突条２２・・の間隔は、相
隣る突条２２の折曲部が横方向において多少ラップする
程度になっている。更に、外側の代掻ローター２１の両
端部は、最外側の植付条から多少突出するようになって
おり、前記軸受２３の内輪の内周面は六角筒状になって
いる。

【０００９】更にまた、中央寄りで相隣る代掻ローター
２１，２１の間には、ギヤケース２５を介装してあり、
このギヤケース２５は入力軸２４と、横方向の中間軸
と、軸孔が六角孔に形成された筒軸からなる横方向の出
力軸とを軸受を介して支承しており、入力軸２４と中間
軸は傘歯車により連動し、中間軸と出力軸は平歯車によ
り連動し、前記ミッションケース５から後方へ突出した
ＰＴＯ軸は中間軸及び伸縮可能な自在継ぎ手９を介して
植付装置８の入力軸を駆動し、駆動軸２８に取付けたス
プロケット３０は減速装置２９の入力軸に取付けたスプ
ロケットを駆動し、運転席３１の後方側部に設けた変速
レバー３２を操作するとギヤチェンジされて減速装置２
９の出力軸３５を変速し、この出力軸３５は伸縮可能な
自在継手３３を介して前記ギヤケース２５の入力軸２４
を駆動する。その際、前記代掻ローター２１の回転方向
は車輪と同一方向であって周速は走行速度の１．２〜
１．５倍程度の範囲で火山灰土のような崩壊し易い土壌
の圃場では低速で、粘土質の土壌のように固い圃場では
高速にすることが望ましい。また、運転席３１の側部下
方に配設した施肥ポンプ３６も前記駆動軸２８により駆
動される。

【００１０】前記代掻ローター２１の端板はいずれも中
心部に六角孔を有しており、代掻ローター２１・・を組
み付ける時は、六角軸からなる代掻軸２０をギヤケース
２５の出力軸の軸孔に挿通し、この代掻軸２０に代掻ロ
ーター２１の軸孔及び軸受２３・・を配設位置順に順次
嵌装して装架し、代掻軸２０の両端部にナット４５， ４
５をねじ込んで最外側の代掻ローター２１，２１の外側
の端板を止着し、ステー１９，１９をブラケット１９
ａ，１９ａに螺着するか、又は、ステー１９，１９をブ
ラケット１９ａ，１９ａに装着した状態で側方から代掻
軸２０を各軸孔に挿通して組み立てても良く、代掻ロー
ター２１・・を交換、又は修理するような場合は、代掻
軸２０を側方へ抜き出すことにより容易に分解すること
ができる。なお、前記整地フロート１６の前部両側の左
右へ膨出した部分の下面に、前部が上方へ向けて湾曲し
た橇状の整地板４６を、上記膨出部の下部両側のリブに
鋲又は螺子により固定して相隣る整地フロート１６，１
６間、及び外側を整地するようにしてある。なお、前記
出力軸の軸孔、及び代掻軸２０等を六角形状をなすもの
として説明したが、他の多角形状にしても同効作用を得
ることができることは勿論である。

【００１１】そして、前述の各代掻ローター２１・・の
上面から後面は、代掻ローター２１の下降時に、その下
端が圃場面より上方で、後方の整地フロート１６・・の
前部立上部の上端より下方まで垂下した複数の防泥カバ
ー２６・・により覆ってあり、両側の防泥カバー２６，
２６の内端、及び中央の３個の代掻ローターに亙る長い
防泥カバー２６の両端には、それぞれ代掻ローター２１
・・に対して外側後方へ向けて折曲した取付片２６ａ，
２６ｂを設け、外側の防泥カバー２６，２６の取付片２
６ａ，２６ａを左右の前記ステー１９，１９の前部外側
面に重合し、中央の防泥カバー２６の両端の取付片２６
ｂ，２６ｂを前記ステー１９，１９の前部内側面に重合
し、各ステー１９・及びその両側面に重合した取付片２
６ａ，２６ｂをボルト２７及びナットにより着脱可能に
締着してあり、これらの取付片２６ａ，２６ｂの取付孔
を円弧状の長孔にしておくと、前記防泥カバー２６・・
を代掻軸２０を中心として上下に回動調節して螺着する
ことができる。また、防泥カバー２６の下部にゴム垂れ
を取付けると泥水が後方へ飛散するのを完全に防止しな
がら均平することができる。

【００１２】また、前記施肥ポンプ３６の吸入口を、肥
料タンク３７の底部にサクションホース３８を介して接
続し、複数の吐出口はそれぞれ別のホース３９・・によ
り植付装置８に付設した複数の施肥ノズル４０・・に接
続してあり、前記ホース３９に中途部にはロアリンク７
に装着したインジケーター４１及び条止め用のレバー付
きバルブ４２が介装してある。

【００１３】次に代掻及び植付について説明すると、前
年に稲を刈取った後、秋にトラクタに装着したロータリ
ー耕耘装置等により耕起するか、作業の都合では翌年に
なってから耕起する。これにより収穫時のコンバインの
クローラ跡や他の凹凸が解消され、収穫時にカッターに
より細断散布された切藁が雑草と共に鋤き込まれる。そ
して、植付直前に前記耕起した圃場に湛水して２〜３日
経過させることにより土壌が膨軟になったならば、代掻
同時植付機を圃場に導入し、植付装置８、代掻ローター
２１を駆動しながら走行させると、代掻ローター２１は
回転しながら土中に浅く侵入した状態で進行し、その
際、代掻ローター２１の各突条２２・・は泥土を一側へ
向かう傾斜部で斜め一側方へ押し、それに続く他側に向
かう傾斜部は、泥土を斜め他側方へ押し出し、このよう
な逆向きの側方押し出しが反復されるので、耕土は浅い
範囲内で良く代掻されると共に雑草、切藁及び古株等が
泥土中に押し込まれ、同時にほぼ均平され、それに続い
て前記整地フロート１６・・及び整地板４６が更に圃場
面の所定幅全体を高度に仕上均平する。

【００１４】前述の代掻行程において、代掻幅は実質的
な植付幅よりも両側にそれぞれ広くなるので、次の行程
では代掻部分の側部が一部ラップすることとなり、往復
代掻を反復した場合、行程間に未代掻部分が残ると、そ
の部分に雑草が早期に繁茂すると共に圃場面に凹凸が残
るが、前後の代掻行程で側部をラップさせることによ
り、上記の不具合を解消することができる。また、代掻
した部分よりも深い層は耕耘状態のまま残る。

【００１５】このような代掻の直後に、前記植付装置８
の植付体１４・・は、整地フロート１６・・の前部の張
出部及び整地板４６・・が整地均平した部分に植付け、
植付けられる苗の側部では、回転ディスクが形成した施
肥溝に、施肥ポンプ３６により圧送されて前記施肥ノズ
ル４０から吐出されるペースト状肥料が施肥される。な
お、肥料はペースト状肥料に限られるものではなく、粒
状肥料とする場合もある。前述の浅代掻の際、雑草、古
株又は切藁等が泥土中に押し込まれているので、植付を
良好に行うことができると共に雑草の成育を抑制するこ
とができ、しかも、浅い代掻層より下層は耕耘状態にな
っていて小さな多数の空隙を保有しているので根への酸
素の供給及び根の伸長が良くなり、苗の成育も助長され
る。

【００１６】そして、代掻ローター２１を回転駆動して
表層代掻を行っている間、代掻ローター２１は高速回転
しながら大量の泥水を掻き出すと共に跳ね飛ばすが、こ
の泥水は防泥カバー２６により受け止められて上方へは
勿論のこと後方へ跳ね出さず、整地フロート１６下方等
へ誘導案内するので、泥水の後方への抜けが良好で、従
来装置のように後方の植付体１４・・に泥水がかかって
泥土が付着して植付に支障を来すようなことがなく、ま
た、整地フロート１６・・及び整地板４６・・上に泥土
が堆積することがなく、植付体１４・・は常時円滑な植
付作動をなし、整地フロート４６・・の前部が重くなっ
て整地性能が低下したり、中央の整地フロート１６の接
地圧感知性能が低下したりすることがない。

【００１７】

【考案の効果】本考案は、走行車１の後部に、複数の植
付体１４・・を横方向に所定の植付条間隔をおいて具備
していて下部に複数の整地フロート１６・・を配設して
なる植付装置８を装着し、該植付装置８の前部には上下
方向に回動可能で、圃場表層全面を代掻する代掻ロータ
ー２１・・を横方向に軸架し、該代掻ローター２１・・
の後部を前記整地フロート１６・・の前部に向けて垂下
した防泥カバー２６により覆い、前記代掻ローター２１
の下降時に、前記防泥カバー２６の下端が圃場面より上
方で、且つ前記整地フロート１６前端上面より下方に位
置するように構成したので、代掻ローター２１が耕起圃
場の表層全面を代掻する際に後方へ掻き出して飛散する
大量の泥水を防泥カバー２６が確実に受け止め、整地フ
ロート１６下方等へ誘導案内するので、泥水の後方への
抜けが良好で、従来装置のように、泥土が後方の植付体
１４に付着してそれが作動不良になること、及び整地フ
ロート１６上に泥土が堆積してその前部が異常に重くな
って整地性能、又は接地圧感知性能が低下するのを確実
に防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】代掻植付機の側面図である。

【図２】要部の一部を破断した平面図である。

【図３】同上側面図である。

【符号の説明】

１ 走行車 ８ 植付装置 １４ 植付体 １６ 整地フロート ２１ 代掻ローター ２２ 突条 ２５ ギヤケース ２６ 防泥カバー３７ 肥料タンク ４０ 施肥ノズル ４６ 整地板

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 西田 秀彦 (56)参考文献 実開 平２−137811（ＪＰ，Ｕ) 実願 平１−42876号（実開 平２− 137811号）の願書に添付した明細書及び 図面の内容を撮影したマイクロフィルム （ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A01C 11/00 302 A01B 49/04 A01C 15/00

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 走行車１の後部に、複数の植付体１４・
   ・を横方向に所定の植付条間隔をおいて具備していて下
   部に複数の整地フロート１６・・を配設してなる植付装
   置８を装着し、該植付装置８の前部には上下方向に回動
   可能で、圃場表層全面を代掻する代掻ローター２１・・
   を横方向に軸架し、該代掻ローター２１・・の後部を前
   記整地フロート１６・・の前部に向けて垂下した防泥カ
   バー２６により覆い、前記代掻ローター２１の下降時
   に、前記防泥カバー２６の下端が圃場面より上方で、且
   つ前記整地フロート１６前端上面より下方に位置するよ
   うに構成したことを特徴とする代掻同時植付機における
   防泥装置。