JP2601346B2 - 断熱ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、副燃焼室を有し、該副燃焼室及び主燃焼室
が外部から断熱されている断熱ディーゼルエンジンの燃
料噴射ノズルに関する。

（従来の技術） 従来の副燃焼室を有するディーゼルエンジンの燃料噴
射ノズルは、副燃焼室内の旋回流方向に燃料を噴射し、
旋回流中を貫通して大半の燃料を副燃焼室内壁まで到達
させる。そして、旋回流の遠心分離作用により旋回流外
周、すなわち副燃焼室内壁面に供給される吸気により該
壁面から順次蒸発する燃料を燃焼させ、燃焼における火
炎ゾーンの旋回流軸方向に２次空気を導入する燃焼室形
状としている。よって、噴射された燃料が壁面に到達せ
ずに液体状態のまま旋回流中に拡散すると燃料蒸気と吸
気とが適正に混合せず正常な燃焼が望めないため、燃料
噴射ノズルは燃料を一方向に集中して噴射する構造とな
っている。

（発明が解決しようとする課題） このような従来と同一の発想からなる燃料噴射ノズル
を旋回流軸とシリンダ軸とが一致する断熱エンジンに使
用すると、該断熱エンジンは燃焼室が外部に対して断熱
されており、内部温度が通常のエンジンより高温度にな
るため、噴射された燃料が内壁面に到達せず短時間に、
燃料表面から蒸発した燃料蒸気に着火し、内部の未蒸発
燃料の燃焼を阻害する。また、壁面に到達した燃料は、
高温度の内壁面からの熱伝達により急速に蒸発するた
め、燃料蒸気に対する吸気の供給量が局部的に偏在ある
いは不足し、燃焼速度が遅延するという問題点がある。

本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、燃焼室
内が高温度となる断熱エンジンの燃焼室内へ噴射される
燃料を適正に蒸発させ、燃料蒸気と吸気とを速やかに混
合し燃焼速度を遅延させない断熱ディーゼルエンジンの
燃料噴射ノズルを提供しようとするものである。

（課題を解決するための手段） 本発明によれば、シリンダ内に吸入された吸気が旋回
流となって流入し、該流入方向と同一方向の旋回流を形
成する副燃焼室を有する断熱ディーゼルエンジンの燃料
噴射ノズルにおいて、副燃焼室内での旋回流方向に沿
い、かつ旋回面に対し所定角度の方向へ燃料を噴射する
主噴射孔と、該主噴射孔の噴射方向に対し所定角度旋回
流の中心側で、かつ旋回面に対し上記所定角度とは反対
側の方向へ燃料を噴射する副噴射孔とを有することを特
徴とする断熱ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルを提
供できる。

（作用） 本発明の断熱ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルで
は、副燃焼室内の旋回流方向及び該旋回流方向より中心
側の複数方向へ燃料を噴射し、副燃焼室内全体で燃料を
蒸発させるので燃料蒸気と吸気とが適正に混合し、燃焼
速度が遅延しない。

（実施例） 以下、本発明の一実施例を図面に従って詳細に説明す
る。

第１図は、本発明による燃料噴射ノズルを装備したエ
ンジンの構成を示すブロック図である。尚、該エンジン
は２サイクルエンジンとして以下に説明する。

本発明による燃料噴射ノズル１は、燃料の噴射タイミ
ング及び噴射量が可変である燃料ポンプ11と接続されて
おり、副燃焼室２内部の旋回流方向へ燃料を噴射する位
置に配設されている。該副燃焼室２には副燃焼室２を介
して排気を排出するための排気口が設けられており、該
排気口は排気バルブ22により開閉される。また、該副燃
焼室２の内面は耐熱断熱材のセラミックス等からなるス
リーブ21で被覆されている。該スリーブ21と副燃焼室２
の下部に連結するシリンダ３の内壁を被覆するシリンダ
スリーブ31との間は断熱ガスケットを介して接続してい
る。該シリンダスリーブ31の下部には吸気口（図示せ
ず）が周設されており、該吸気口は吸入された吸気がシ
リンダ３の円周方向に旋回するように傾斜して開口して
いる。尚、副燃焼室２内部にはピストン４の上昇と共に
吸気の旋回流が保持され、かつ加速されながら導入され
る。該流入の際には中心部の流入速度が大であるため一
旦副燃焼室２上部に配設された排気バルブ22に衝突し副
燃焼室２内壁に沿って降下する。よって、副燃焼室２内
部には水平方向の旋回流と該旋回流を旋回方向に対して
自転させる２次空気との複合流が発生する。前記シリン
ダ３内部にはピストン４が配設されており、該ピストン
４のピストンヘッド面は副燃焼室２と同様に耐熱断熱材
のセラミックス等からなる被覆層41により被覆されてい
る。

第２図は、本発明による燃料噴射ノズルを含むＩ−Ｉ
断面図である。

燃料噴射ノズル１内部にはニードル12が設置されてお
り、該ニードル12にはスプリングにより常時図における
右方向への力が作用し、燃料が燃料噴射ノズル１から噴
射されることを阻止している。また、燃料噴射ノズル１
の先端には旋回流方向に向い、かつ図において所定角度
上方の壁面に燃料を噴射する主噴射孔13と、該主噴射孔
13の噴射方向より中心方向で、かつ所定角度下方へ燃料
を噴射する副噴射孔14が穿設されている。

燃料ポンプ11から燃料が供給されると、該燃料の圧力
によりニードル12は図において左方向へ移動され、燃料
は燃料噴射ノズル１の先端部へ流入する。該先端部には
主噴射孔13及び副噴射孔14が開口しているので、燃料は
旋回流方向の壁面及び中心方向へと噴射される。前記複
合流中へ燃料を噴射すると中心部へ噴射された燃料は下
方から押し上げられ固定火炎となり、外周部の旋回部で
は主噴射孔13からの燃料が上方から下方へと移動され副
燃料室２内部に均一に分散する。そして、中心部へは主
燃焼室からの空気が流入するため燃焼は円滑に継続され
る。よって、従来の単噴射孔の燃料噴射ノズルと比較し
て、微細な粒子として燃料を噴射することができるの
で、噴射された燃料は未蒸発部分を残さず完全に蒸発す
る。また、副燃焼室内全域で蒸発するので、局部的に燃
料が過多になることがなく直ちに適正な空燃比状態とな
ることができる。

以上本発明について説明したが、本発明の精神から逸
れないかぎりで、種々の異なる実施例は容易に構成でき
るから、本発明は前記特許請求の範囲において記載した
限定以外、特定の実施例に制約されるものではない。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、シリンダ軸の
軸芯回りに旋回する吸入スワールと同一方向に旋回する
副燃焼室内の旋回流方向で、かつ所定角度（15°〜30
°）上方及び該旋回流方向より中心側で、かつ所定角度
（15°〜30°）下方の複数方向へ燃料を噴射し、副燃焼
室内全体で燃料を蒸発させるので燃料蒸気と吸気とが適
正に混合し、燃焼速度が遅延しない断熱ディーゼルエン
ジンの燃料噴射ノズルを提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明による燃料噴射ノズルを装備したエン
ジンの構成を示すブロック図、第２図は、本発明による
燃料噴射ノズルを含むＩ−Ｉ断面図である。 １……燃料噴射ノズル、２……副燃焼室、３……シリン
ダ、４……ピストン、13……主噴射孔、14……副噴射
孔。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダ内に吸入された吸気が旋回流とな
   って流入する副燃焼室を有する断熱ディーゼルエンジン
   の燃料噴射ノズルにおいて、副燃焼室内での旋回流方向
   に沿って燃料を噴射する主噴射孔と、該主噴射孔の噴射
   方向に対し所定角度旋回流の中心側へ燃料を噴射する副
   噴射孔とを有することを特徴とする断熱ディーゼルエン
   ジンの燃料噴射ノズル。