JP2600108B2 - 高透過率球状電極およびエネルギー分析装置 - Google Patents

高透過率球状電極およびエネルギー分析装置

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JP2600108B2
JP2600108B2 JP6196110A JP19611094A JP2600108B2 JP 2600108 B2 JP2600108 B2 JP 2600108B2 JP 6196110 A JP6196110 A JP 6196110A JP 19611094 A JP19611094 A JP 19611094A JP 2600108 B2 JP2600108 B2 JP 2600108B2
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electrodes
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明 黒河
信吾 一村
一紘 吉原
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工業技術院長
科学技術庁金属材料技術研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、荷電粒子のエネルギー
分光、エネルギー分析に関し、特にエネルギーフィルタ
リングに用いる有孔球状電極およびかかる有孔球状電極
を具えたエネルギー分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】有孔球状電極を用いたエネルギー分析装
置としては図5のような装置(例えば、文献J. J. Lan
der 他: Rev. Sci. Instrum. 33(1962), pp.782-783 ま
たはC.W. Caldwell, Jr: Rev. Sci. Instrum. 36(196
5), pp.1500-1501 など)が知られている。この種の装
置では異径の同心球状の有孔電極を同心上に配置し、そ
の同心点に試料を置く。図5は4枚の球状電極を持つ低
エネルギー荷電粒子回折法(LEED)用分析装置の原理図
である。半径の異なる球状電極1、2、3、4が離間し
て同心上に配置され、最外側には荷電粒子検出用蛍光ス
クリーン5が配置されている。この例では球状電極1お
よび4は接地され、電極2〜4には阻止電位用可変電源
6から阻止電位としての静電ポテンシャルが与えられ
る。一方、蛍光スクリーン5には加速電源7から加速電
位が与えられる。従って、各電極は同心点に置かれた試
料8の表面から放射状に放出される荷電粒子に対してハ
イパスフィルターとして働き、電極を透過した電子の総
量を蛍光スクリーン5に流れ込む電流として測定するこ
とで、試料面から出る電子のエネルギー分布を得ること
ができる。図中9および10は阻止電極2および3の阻
止電位を超えるだけの十分に大きなエネルギーを持つ荷
電粒子の軌道、11は阻止電極2および3の阻止電位を
超えるだけの十分に大きなエネルギーを持たない荷電粒
子の軌道を示す。電極は球状であるため、荷電粒子の放
出の角度分布も同時に得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来この種の電極とし
ては金属メッシュが用いられ、これは球状への曲げ加工
が容易であるという利点を有している。
【0004】しかし、従来の金属メッシュで球状電極を
複数枚作成しエネルギー分析系を構成した場合には以下
のような問題があった。
【0005】第1に、各電極の孔の角度配置が全く考慮
されていないために、荷電粒子の透過率が下がる。図6
は従来のメッシュを電極として2枚(内側電極12、外
側電極13)用いたときの電子の軌道をシミュレーショ
ンしたものである。同心点14から電子が放出されるも
のとした。内側電極12および同心点14の電位はグラ
ンド、外側電極13の電位は2kV、電子のエネルギー
は1.9keVである。内側電極12、外側電極13の
半径はそれぞれ18mmおよび25mmである。内側電
極の孔12Aの同心点14からの見かけの角度は8度で
ある。外側電極13には内側電極12と同等の密度で同
形の孔13Aが設けられている。電子の軌道を符号15
として示す。図示するように、孔12Aと13Aは位相
が合っていないため、エネルギー的には阻止電界を通り
抜けられる荷電粒子にも、内側電極は透過しても外側電
極を透過できなない場合が場所によって存在する。
【0006】第2に、メッシュを透過した荷電粒子の強
度は角度分布を持つが、その角度分布はメッシュの重な
りによる干渉縞によって変調されたものとなる。図7は
2枚の平板メッシュ電極16、17を用いて分析器を構
成したときの荷電粒子が透過できる領域を模式的に示し
たものである。球状メッシュを作成するときはこの平面
メッシュをさらに球状に曲げ加工するため、干渉縞は図
7に示したよりもさらに複雑で予測は全くつかず、作成
毎に干渉縞形状は全く異なる。そのため、メッシュを利
用した分析装置では、装置毎に角度分布が異なり、測定
結果の単純比較が困難であった。
【0007】第3に、多数枚のメッシュからなる分析器
では、荷電粒子がメッシュと衝突することで2次電子・
2次イオンの生成が起こり、本来の荷電粒子と区別が付
かないため雑音の原因となっていた。
【0008】本発明は上記従来の問題を解決し、荷電粒
子の透過率を改善し、かつ荷電粒子の角度分布の再現の
よい電極および分析装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の高透過率球状電極は、それぞれ複数の孔を
有し半径の異なる球状の複数の阻止電極が同心球状に配
置され、前記複数の阻止電極の複数の孔はその中心が対
応する各電極の孔毎に同心点からの同一放射線上に設け
られていることを特徴とする。
【0010】前記複数の阻止電極の複数の孔の前記同心
点からの見かけ角度が等しいかまたは外側の電極ほど大
きくする。
【0011】さらに、本発明のエネルギー分析装置は、
それぞれ複数の孔を有し半径の異なる半球状の複数の阻
止電極が同心球状に配置され、前記複数の阻止電極の複
数の孔はその中心が対応する各電極の孔毎に同心点から
の同一放射線上に設けられている高透過率球状電極を具
えたことを特徴とする。
【0012】本発明においては、各球状電極の孔は全て
予め設計された位置に設けられる。各電極には全て同じ
極角、方位角上に孔が配置され、同心点から見たとき
に、最も内側の電極の孔のみが見え、外側の電極の孔の
縁は見えない。
【0013】本発明を適用できるエネルギー分析器は、
4枚の有孔電極を用いた低エネルギー荷電粒子回折法
(LEED)用分析装置をはじめとする減速電界用の球状電
極を持つ角度分布・エネルギー分布の双方を観測する分
析装置である。
【0014】
【作用】本発明によれば、1枚目の球状電極を通り抜け
た荷電粒子はそれ以降の電極の孔をを確実に潜り抜ける
ことができるため、複数の有孔電極を組み合わせた分析
器では荷電粒子の透過率が従来例より向上する。また、
球状電極の枚数が多いほど、透過率の改善の度合は大き
い。
【0015】さらに、電極の孔の位置を、作成する分析
器で全て同じとすれば、荷電粒子が通り抜けられる角度
分布も同じとなり、従来不可能であった同じ角度分布を
再現する分析器を任意数作成することも可能となる。
【0016】
【実施例】図1は本発明の高透過率球状電極の原理図で
ある。この図では、内側の球状電極21と外側の球状電
極22の2枚の電極のみを示している。分析すべき荷電
粒子は同心点23から放射状に出る。21Aおよび22
Aはそれぞれ電極21および22に設けられた孔であ
る。孔22Aの中心は、孔21Aの中心を同心点23と
結ぶ線上にある。また、同心点23からの孔22Aの見
かけ角度は孔21Aの見かけ角度と等しいかそれより大
きい。すなわち、各電極の対応する孔は同じ方位角上に
あり、同心点からの孔の極角は各電極とも等しいか、外
側の電極ほど大きい。従って、同心点から見たときに、
最も内側の球状電極の孔のみが見え、それ以外の電極の
孔の縁は見えない。
【0017】球状電極21および22の材料として、ス
テンレス鋼SUS304の厚さ100μmの板を用い
た。目的とする半径の上下の型を用意し、プレスによっ
て、ステンレス鋼板を球状に成形した。次いで、成形さ
れたステンレス鋼板をプレス型とともに真空炉に入れて
焼き鈍し、歪み取りを行った。こうして、2枚の球状電
極、例えばそれぞれ半径22mmおよび29mmの電極
を精度10μmで作成した。次に球の中心を出し、型に
固定したまま機械加工によって、穿孔した。穿孔位置は
外側電極と内側電極とで同じ極角と方位角上に孔が配列
されるように選んだ。また外側電極の穿孔は、その径が
内側電極の穿孔径と等しいか、それより大きくなるよう
にした。
【0018】図2は本発明の高透過率電極を同心点から
見たときの孔の配置模様を模式的に示したものである。
【0019】図3は、本発明の高透過率電極を2枚(内
側電極21、外側電極22)使用したときの電子の軌道
をシミュレーションしたものである。同心点23から電
子が放出されるものとした。内側電極21および同心点
23の電位はグランド、外側電極22の電位は2kV、
電子のエネルギーは1.9keVである。内側電極2
1、外側電極22の半径はそれぞれ18mmおよび25
mmである。内側電極の孔21Aおよび外側電極の孔2
2Aの同心点23からの見かけの角度は8度である。電
子の軌道を符号24として示す。従来例と異なり、内側
の球状電極21を通り抜けた荷電粒子は、外側の球状電
極に衝突することなく、荷電粒子の放射軌道は遮られな
い。従って、阻止電位を超えるエネルギーを持っていろ
荷電粒子はそれ以降の有孔電極の孔を潜り抜ける。また
外側の電極の孔を若干大きくすることで、レンズの効果
によって軌道が曲がっても電子が衝突しない構造にでき
る。さらに、従来例と異なり、複雑な干渉を起こすこと
もない。
【0020】電極の数は3枚またはそれ以上でもよく、
分析装置としては、図5に示した従来例と同様に、各電
極に阻止電位を与えるための電源、荷電粒子検出用蛍光
スクリーンおよび加速電源等を具えればよい。
【0021】図4は、球状電極の数と透過率の関係を示
したものであり、従来のメッシュ型と本発明の高透過率
球状電極を比較したものである。ここで電極1枚あたり
の透過率は80%とし、電極1枚の透過率を1とした。
図示するように、電極枚数が多くなるほど本発明の効果
は大きくなる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば次
のような効果が得られる。
【0023】(1)1枚目の球状電極を通り抜けた荷電
粒子はそれ以降の電極の孔を確実に潜り抜けることがで
きるため、複数の電極を組み合わせた分析器では荷電粒
子の透過率が向上する。
【0024】(2)球状電極の枚数が多いほど、透過率
の改善の度合は大きい。
【0025】(3)電極の孔の位置を、作成する分析器
で全て同じとすれば、荷電粒子が通り抜けられる角度分
布も同じとなり、従来不可能であった同じ角度分布を再
現する分析器を任意数作成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高透過率球状電極の原理図である。
【図2】本発明の高透過率球状電極を同心点から見たと
きの孔の配置を示す模式図である。
【図3】本発明の高透過率球状電極を2枚使用したとき
の電子の軌道をシミュレーションした図である。
【図4】球状電極の数と透過率の関係を、本発明と従来
例とを比較して示した図である。
【図5】4枚の球状電極をを持つ低エネルギー荷電粒子
回折法(LEED)用分析装置の原理図である。
【図6】従来のメッシュ電極を2枚用いた時の電子の軌
道をシミュレーションした図である。
【図7】従来の平板メッシュ電極を2枚用いて分析器を
構成したとき、荷電粒子が透過できる領域を示す模式図
である。
【符号の説明】
5 荷電粒子検出用蛍光スクリーン 6 阻止電位用可変電源 7 加速電源 8 試料 9、10、11 電子の軌道 12 内側電極 13 外側電極 12A、13A 孔 14 同心点 15 電子の軌道 16、17 メッシュ電極 21 内側球状電極 22 外側球状電極 21A、22A 孔 23 同心点 24 電子の軌道
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 江塚 政弘 (56)参考文献 特開 昭57−72073(JP,A) 特開 昭63−231855(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 それぞれ複数の孔を有し半径の異なる球
    状の複数の阻止電極が同心球状に配置され、前記複数の
    阻止電極の複数の孔はその中心が対応する各電極の孔毎
    に同心点からの同一放射線上に設けられていることを特
    徴とする高透過率球状電極。
  2. 【請求項2】 前記複数の阻止電極の複数の孔の前記同
    心点からの見かけ角度が等しいかまたは外側の電極ほど
    大きいことを特徴とする請求項1に記載の高透過率球状
    電極。
  3. 【請求項3】 それぞれ複数の孔を有し半径の異なる半
    球状の複数の阻止電極が同心球状に配置され、前記複数
    の阻止電極の複数の孔はその中心が対応する各電極の孔
    毎に同心点からの同一放射線上に設けられている高透過
    率球状電極を具えたことを特徴とするエネルギー分析装
    置。
JP6196110A 1994-07-28 1994-07-28 高透過率球状電極およびエネルギー分析装置 Expired - Lifetime JP2600108B2 (ja)

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JPH0846004A JPH0846004A (ja) 1996-02-16
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