JP2593477B2 - 自動車のスリップ制御装置 - Google Patents

自動車のスリップ制御装置

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JP2593477B2 JP62171289A JP17128987A JP2593477B2 JP 2593477 B2 JP2593477 B2 JP 2593477B2 JP 62171289 A JP62171289 A JP 62171289A JP 17128987 A JP17128987 A JP 17128987A JP 2593477 B2 JP2593477 B2 JP 2593477B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、駆動輪への付与トルクを制御することによ
り、駆動輪の路面に対するスリップが過大になるのを防
止するようにした自動車のスリップ制御装置に関するも
のである。
(従来技術) 駆動輪の路面に対するスリップが過大になることを防
止するのは、自動車の推進力を効果的に得る上で、また
スピンを防止する等の安全性の上で効果的である。そし
て、駆動輪のスリップが過大になるのを防止するには、
スリップの原因となる駆動輪への付与トルクを減少させ
ればよいことになる。
この種のスリップ制御を行うものとしては、従来、特
開昭58−16948号公報、あるいは特開昭60−56662号公報
に示すものがある。この両公報に開示されている技術
は、共に、駆動輪への付与トルクを低下させるのに、ブ
レーキによる駆動輪への制動力付与と、エンジンそのも
のの発生トルク低減とを利用して行うようになってい
る。より具体的には、特開昭58−16948号公報のものに
おいては、駆動輪のスリップが小さいときは駆動輪の制
動のみを行う一方、駆動輪のスリップが大きくなったと
きは、この駆動輪の制動に加えて、エンジンの発生トル
クを低下させるようになっている。また、特開昭60−56
662号公報のものにおいては、左右の駆動輪のうち片側
のみのスリップが大きいときは、このスリップの大きい
片側の駆動輪のみに対して制動を行う一方、左右両側の
駆動輪のスリップが共に大きいときは、両側の駆動輪に
対して制動を行うと共に、エンジンの発生トルクを低下
させるようにしている。このように、上記両公報に開示
されているものは、ブレーキによる駆動輪への制動を主
として利用し、補助的にエンジンの発生トルクを低下さ
せるものとなっている。
上述したブレーキ(制動力調整)によるスリップ制御
とエンジン(発生トルク調整)によるスリップ制御とは
一長一短があるが、ブレーキを利用したスリップ制御の
長所として、左右駆動輪のスリップ制御を互いに独立し
て行なえるという点がある。すなわち、エンジンは左右
駆動輪に対して共通として只1つ存在する一方、ブレー
キは左右駆動輪に対して個々独立して設けられているの
が一般的であるためである。
(発明が解決しようとする問題点) ところで、エンジン(パワーソース)での発生トルク
は、差動装置を介して左右駆動輪に分配、供されるのが
一般的である。しかしながら、左右駆動輪をブレーキを
利用して個々独立してスリップ制御する場合に、この差
動装置の存在がスリップ制御を良好に行なうという上で
問題になる、ということが判明した。
この点を詳述すると、いま例えば右駆動輪のみに大き
なスリップが発生する一方、左駆動輪には大きなスリッ
プが発生していない場合を考える。このとき、右駆動輪
に対しては、スリップ制御によって制動力が付与され
て、そのスリップが小さくされる。この右駆動輪への制
動力付与と同時に、差動装置によって、右駆動輪へ加え
られた制動力に相当するトルクが、左駆動輪へ伝達され
る。これにより、今度は左駆動輪に大きなスリップが発
生し、この結果、左駆動輪にスリップ制御による制動力
が付与されることになる。そして、左駆動輪への制動力
付与により、今度は右駆動輪への付与トルクが増大して
しまうことになる。このようにして、差動装置を仲介と
して、左右駆動輪に交互に制動力が付与される現象を生
じてしまう。このような現象の発生を抑えることはスリ
ップの収束を速やかに行なう上で重要となる。
したがって、本発明の目的は、パワーソースでの発生
トルクを差動装置を介して左右駆動輪へ伝達するように
した自動車を前提として、スリップ制御の際に、差動装
置を仲介とした左右駆動輪間での好ましくないトルクの
伝達を防止し得るようにした自動車のスリップ制御装
置、を提供することにある。
(問題点を解決するための手段、作用) 前述の目的を達成するため、本発明においては、左右
駆動輪間でスリップの差が大きいときは、スリップの大
きい駆動輪に対してのみならずスリップの小さい方の駆
動輪に対しても制動力を付与するようにしてある。換言
すれば、差動装置を仲介して大きなトルクが伝達される
であろうことを、左右駆動輪間のスリップの大きさの差
を見ることによって知得するようにしてある。そして、
スリップ差が大きい場合には、スリップの小さい方の駆
動輪がスリップ制御が不用とされるような状態でも、当
該スリップの小さい方の駆動輪に対しても制動力を付与
することにより、差動装置を仲介として大きなトルクが
左右駆動輪間で往き来するのが防止される。
具体的には、次のような構成としてある。すなわち、
第18図にブロック図的に示すように、 パワーソースでの発生トルクを差動装置を介して左右
駆動輪へ伝達するようにした自動車において、 左駆動輪用ブレーキの制動力を調整する左制動力調整
手段と、 右駆動輪用ブレーキの制動力を調整する右制動力調整
手段と、 左右駆動輪の路面に対するスリップの大きさを個々独
立して検出するスリップ検出手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、左右駆動輪
のスリップ差が小さいときは、左駆動輪のスリップの大
きさに応じて前記左制動力調整手段を制御すると共に、
右駆動輪のスリップの大きさに応じて前記右制動力調整
手段を制御して、左右駆動輪のスリップが過大になるの
を防止する第1スリップ制御手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、左右駆動輪
のスリップ差が大きいときは、大きいスリップの駆動輪
に対しては該大きいスリップに応じて該大きいスリップ
の駆動輪に対応した制動力調整手段を制御すると共に、
小さいスリップの駆動輪に対しては前記第1スリップ制
御手段により付与される制動力よりも大きな制動力を付
与するように該小さいスリップの駆動輪に対応した制動
力調整手段を制御する第2スリップ制御手段と、 を備えた構成としてある。
(発明の効果) 本発明にあっては、基本的には、つまり左右駆動輪の
スリップ差が小さいときには、左右駆動輪のスリップ制
御を、左右駆動輪の個々のスリップの大きさに応じて左
右個々独立して制御する第1スリップ制御として行うこ
とにより、スリップの小さい駆動輪による推進力を有効
に利用して、加速性および走行性を十分確保する上で好
ましいものとなる。そして、左右駆動輪のスリップ差が
大きくなったときは、大きいスリップの駆動輪について
は上記第1スリップ制御と同じようにスリップ制御して
大きいスリップを防止しつつ、小さいスリップの駆動輪
については、上記第1スリップ制御のときよりも大きい
制動力を付与することにより、差動装置を介して左右駆
動輪間でのトルク伝達による大きいスリップ発生を未然
に防止して、このときも加速性および走行性を満足させ
ることができる。
(実施例) 以下本発明の実施例を添付した図面に基づいて説明す
る。
全体構成の概要 第1図において、自動車1は、従動輪となる左右前輪
2、3と、駆動輪となる左右後輪4、5との4つの車輪
を備えている。自動車1の前部には、パワーソースとし
てのエンジン6が搭載され、このエンジン6で発生した
トルクが、クラッチ7、変速機8、プロペラシャフト
9、デファレンシャルギア10を経た後、左右のドライブ
シャフト11L、、11Rを介して、駆動輪としての左右の後
輪4、5に伝達される。このように、自動車1は、FR式
(フロントエンジン・リアドライブ)のものとされてい
る。
パワーソースとしてのエンジン6は、その吸気通路12
に配設したスロットルバルブ13によって、負荷制御すな
わち発生トルクの制御が行なわれるものとされている。
より具体的には、エンジン6はガソリンエンジンとされ
て、その吸入空気量の変化によって発生トルクが変化す
るものとされ、吸入空気量の調整が、上記スロットルバ
ルブ13によって行われる。そして、スロットルバルブ13
は、スロットルアクチュエータ14によって、電磁気的に
開閉制御されるようになっている。なお、スロットルア
クチュエータ14としては、例えばDCモータ、ステップモ
ータ、油圧等の流体圧によって駆動されて電磁気的に駆
動制御される適宜のものによって構成し得る。
各車輪2〜5には、それぞれブレーキ21、22、23ある
いは24が設けられ、各ブレーキ21〜24は、それぞれディ
スクブレーキとされている。このディスクブレーキは、
既知のように、車輪と共に回転するディスク25と、キャ
リパ26とを備えている。このキャリパ26は、ブレーキパ
ッドを保持すると共に、ホイールシリンダを備え、ホイ
ールシリンダに供給されるブレーキ液圧の大きさに応じ
た力でブレーキパッドをディスク25に押し付けることに
より、制動力が発生される。
ブレーキ液圧発生源としてのマスタシリンダ27は、2
つの吐出口27a、27bを有するタンデム型とされている。
吐出口27aより伸びるブレーキ配管28は、途中で2本の
分岐管28aと28bとに分岐され、分岐管28aが右前輪用ブ
レーキ22(のホイールシリンダ)に接続され、分岐管28
bが左後輪用ブレーキ23に接続されている。また、吐出
口27bより伸びるブレーキ配管29が、途中で2本の分岐
管29aと29bとに分岐され、分岐管29aが左前輪用ブレー
キ21に接続され、分岐管29bが右後輪用ブレーキ24に接
続されている。このように、ブレーキ配管系が、いわゆ
る2系統X型とされている。そして、駆動輪となる後輪
用のブレーキ23、24に対する分岐管28b、29bには、制動
力調整手段としての電磁式液圧制御バルブ30あるいは31
が接続されている。勿論、マスタシリンダ27に発生する
ブレーキ液圧は、運転者Dによるブレーキペダル32の踏
込み量(踏込力)に応じたものとなる。
ブレーキ液圧制御回路 第2図に示すように、前記液圧制御バルブ30、31は、
それぞれ、シリンダ41と、シリンダ41内に摺動自在に嵌
挿されたピストン42とを有する。このピストン42によっ
て、シリンダ41内が、容積可変室43と制御室44とに画成
されている。この容積可変室43は、マスタシリンダ27か
らブレーキ23(24)に対するブレーキ液圧の通過系路と
なっている。したがって、ピストン42の変位位置を調整
することにより、当該容積可変室43の容積が変更され
て、ブレーキ23(24)に対するブレーキ液圧を発生し得
ると共に、この発生したブレーキ液圧を増減あるいは保
持し得ることになる。
ピストン42は、リターンスプリング45により容積可変
室43の容積が大きくなる方向に常時付勢されている。ま
た、ピストン42には、チェックバルブ46が一体化されて
いる。このチェックバルブ46は、ピストン42が容積可変
室43の容積を小さくする方向へ変位したときに、当該容
積可変室43への流入口側を閉塞する。これにより、容積
可変室43で発生されるブレーキ液圧は、ブレーキ23(2
4)側へのみ作用して、従動輪としての前輪2、3のブ
レーキ21、22には作用しないようになっている。
ピストン42の変位位置の調整は、前記制御室44に対す
る制御液圧を調整することにより行われる。この点を詳
述すると、リザーバ47より伸びる供給管48が途中で2本
に分岐されて、一方の分岐管48Rがバルブ30の制御室44
に接続され、また他方の分岐管48Lがバルブ31の制御室4
4に接続されている。供給管48には、ポンプ49、リリー
フバルブ50が接続され、またその分岐管48L(48R)には
電磁開閉弁からなる供給バルブSV3(SV2)が接続されて
いる。各制御室44は、さらに排出管51Rあるいは51Lを介
してリザーバ47に接続され、排出管51L(51R)には、電
磁開閉弁からなる排出バルブSV4(SV1)が接続されてい
る。
この液圧制御バルブ30(31)を利用したブレーキ時
(スリップ制御時)には、チェックバルブ46の作用によ
り、基本的には、ブレーキペダル32の操作によるブレー
キは働かないことになる。ただし、液圧制御バルブ30
(31)で発生されるブレーキ液圧が小さいとき(例えば
減圧中)は、ブレーキペダル32の操作によるブレーキが
働くことになる。勿論、液圧制御バルブ30(31)でスリ
ップ制御用のブレーキ液圧が発生していないときは、マ
スタシリンダ27とブレーキ23(24)は連通状態となるた
め、ブレーキペダル32の操作に起因して通常のブレーキ
作用が行われることになる。
各バルブSV1〜SV4は、後述するブレーキ用コントロー
ルユニットUBによって開閉制御がなされる。ブレーキ2
3、24へのブレーキ液圧の状態と各バルブSV1〜SV4との
作動関係をまとめて、次表に示してある。
コントロールユニットの構成概要 第1図において、Uはコントロールユニットであり、
これは大別して、前述したブレーキ用コントロールユニ
ットUBの他、スロットル用コントロールユニットUTお
よびスリップ制御用コントロールユニットUTとから構
成されている。コントロールユニットUBは、コントロ
ールユニットUSからの指令信号に基づき、前述したよ
うに各バルブSV1〜SV4の開閉制御を行う。また、スロッ
トル用コントロールユニットUTは、コントロールユニ
ットUSからの指令信号に基づき、スロットルアクチュ
エータ14の駆動制御を行う。
スリップ制御用コントロールユニットUSは、デジタ
ル式のコンピュータ、より具体的にはマイクロコンピュ
ータによって構成されている。このコントロールユニッ
トUSには、各センサ(あるいはスイッチ)61、62、64
〜68からの信号が入力される。センサ61は、スロットル
バルブ13の開度を検出するものである。センサ62はクラ
ッチ7が締結されているか否かを検出するものである。
センサ64は従動輪としての左前輪2の回転数すなわち車
速を検出するものである。センサ65、66は駆動輪として
の左右後輪4、5の回転数を検出するものである。セン
サ67は、アクセル69の操作量すなわちアクセル開度を検
出するものである。センサ68はハンドル70の操作量すな
わち舵角を検出するものである。上記センサ64、65、66
はそれぞれ例えばピックアップを利用して構成され、セ
ンサ61、67、68は例えばポテンショメータを利用して構
成され、センサ62は例えばON、OFF的に作動するスイッ
チによって構成される。
なお、コントロールユニットUSは、基本的にCPU、RO
M、RAM、CLOCKを備えており、その他、出入力インタフ
ェイスを備えると共に、入力信号、出力信号に応じてA/
DあるいはD/A変換器をも有するが、これ等の点について
はマイクロコンピュータを利用する場合における通常の
ものと変るところがないので、その詳細な説明は省略す
る。なお、以下の説明におけるマップ等は、制御ユニッ
トUSのROMに記憶されているものである。
さて次に、コントロールユニットUの制御内容につい
て順次説明するが、以下の説明で用いるすべり率Sは、
次式(1)によって定義するものとする。
WD:駆動輪(4、5)の回転数 WL:従動輪(2)の回転数(車速) スロットル制御 コントロールユニットUTは、目標スロットル開度と
なるようにスロットルバルブ13(スロットルアクチュエ
ータ14)をフィードバック制御するものとなっている。
このスロットル制御の際、スリップ制御を行わないとき
は、運転者Dによって操作されたアクセル69の操作量に
1:1に対応した目標スロットル開度となるように制御
し、このときのアクセル開度とスロットル開度との対応
関係の一例を、第12図に示してある。また、コントロー
ルユニットUTは、スリップ制御の際には、第12図に示
す特性にしたがうことなく、コントロールユニットUS
で演算された目標スロットル開度Tnとなるようにスロッ
トル制御を行う。
コントロールユニットUTを用いたスロットルバルブ1
3のフィードバック制御は、実施例では、エンジン6の
応答速度の変動を補償するため、PI−PD制御によって行
うようにしてある。すなわち、駆動輪のスリップ制御の
際には、現在のすべり率が目標すべり率に一致するよう
に、スロットルバルブ13の開度をPI−PD制御する。より
具体的には、スリップ制御の際の目標スロットル開度Tn
は、次式(2)によって演算される。
WL:従動輪(2)の回転数 WD:駆動輪(4、5)の回転数 KP:比例定数 KI:積分定数 FP:比例定数 FD:微分定数 SET:目標すべり率(スロットル制御用) 上記式(2)のように、スロットル開度Tnは、所定の
目標すべり率SETとなるように駆動輪の回転数をフィー
ドバック制御している。換言すれば、前記(1)式から
明らかなように、スロットル開度は、目標駆動輪回転数
WETが次の(3)式 になるように制御される。
上述したコントロールユニットUTを用いたPI−PD制
御を、ブロック線図として第3図に示してあり、この第
3図に示す「S′」は「演算子」である。また、各サフ
ィクス「n」、「n−1」は現時およびその1回前のサ
ンプリング時における各信号の値を示す。
ブレーキ制御 スリップ制御時においては、コントロールユニットU
Bを用いた左右の駆動輪4、5の回転(スリップ)を、
左右独立に所定の目標すべき率SBTになるようにフィー
ドバック制御する。換言すれば、ブレーキ制御は次式
(4)で設定される駆動輪回転数WBTになるようにフィ
ードバック制御を行なう。
このブレーキの目標すべり率SBTは、本実施例では後
述するようにエンジンの目標すべり率SBTよりも大きく
設定してある。換言すれば、本実施例のスリップ制御
は、所定SET(WET)になるようエンジン出力を増減す
ると共に、それよりも大きなSBT(WBT)になるようブ
レーキによるトルク増減作用を行なうことにより、ブレ
ーキの使用頻度を少なくしている。そして、本実施例で
は、上記(4)式を満足するようなフィードバック制御
を、安定性に優れたI−PD制御によって行うようにして
ある。より具体的には、ブレーキ操作量(バルブ30、31
におけるピストン44の操作量)Bnは、次式(5)によっ
て演算される。
KI:積分係数 KD:比例係数 FD:微分係数 上記Bnが0より大きいとき(「正」のとき)がブレー
キ液圧の増圧であり、0以下のときが減圧となる。この
ブレーキ液圧の増減は、前述したようにバルブSV1〜SV4
の開閉を行なうことによりなされる。また、ブレーキ液
圧の増減速度の調整は、上記バルブSV1〜SV4の開閉時間
の割合(デューティ比)を調整(デューティ制御)する
ことによりなされるが、上記(5)式により求められた
Bnの絶対値に比例したデューティ制御とされる。したが
って、Bnの絶対値は、ブレーキ液圧の変化速度に比例し
たものとなり、逆に増減速度を決定するデューティ比が
Bnを示すものともなる。
上述したコントロールユニットUBによるI−PD制御
を、ブロック線図として第4図に示してあり、この第4
図に示す「S′」は「演算子」である。
スリップ制御の全体概要 コントロールユニットUによるスリップ制御の全体的
な概要について、第5図を参照しつつ説明する。なお、
この第5図中に示す符号、数値の意味することは、次の
通りである。
S=0.2:スリップ制御開始時のすべり率(SS) S=0.17:ブレーキによる目標すべり率(SBT) S=0.09:ブレーキによるスリップ制御を中止するとき
のすべり率(SBC) S=0.06:エンジンによる目標すべり率(SET) なお、上記数値は、実際にアイスバーンをスパイクタ
イヤによって走行して得たデータに基づいて示してあ
る。そして、ブレーキによるスリップ制御中止時点のす
べり率S=0.09は、実施例では不変としてある。一方、
ブレーキによる目標すべり率SBTおよびエンジンによる
目標すべり率SET、さらにはスリップ制御の開始時のす
べり率SSは、路面状況等によって変化されるものであ
り、第5図ではその一例として「0.17」、「0.06」ある
いは「0.2」を示してある。そして、スリップ制御開始
時のすべり率S=0.2は、スパイクタイヤを用いたとき
に得られる最大グリップ力発生時点のすべり率を用いて
ある(第13図実線参照)。このように、スリップ制御開
始時のすべり率を0.2と大きくしてあるのは、この最大
グリップ力が得られるときの実際のすべり率が求められ
るようにするためであり、この最大グリップ力発生時の
すべり率に応じて、エンジンおよびブレーキによる目標
すべり率SET、SBTが補正される。なお、第13図実線
は、スパイクタイヤのときのグリップ力と横力との大き
さ(路面に対する摩擦係数として示す)が、すべり率と
の関係でどのように変化するかを示してある。また、第
13図破線は、ノーマルタイヤのときのグリップ力と横力
との関係を示してある。
以上のことを前提として、時間の経過と共に第5図に
ついて説明する。
t0〜t1 すべり率Sがスリップ制御開始条件となるS=0.2を
越えていないので、スリップ制御は行われない。すなわ
ち、駆動輪のスリップが小さいときは、スリップ制御し
ないことにより、加速性を向上させることができる(大
きなグリップ力を利用した走行)。勿論、このときは、
アクセル開度に対するスロットル開度の特性は、第12図
に示すように一律に定まる。
t1〜t3 スリップ制御が開始されると共に、すべり率がブレー
キによるスリップ制御中止ポイント(S=0.09)以上の
ときである。このときは、すべり率が比較的大きいの
で、エンジンによる発生トルク低下とブレーキによる制
動とにより、スリップ制御が行われる。また、エンジン
の目標すべり率(S=0.06)よりもブレーキの目標すべ
り率(S=0.17)の方が大きいため、大きなスリップ時
(S>0.17)はブレーキが加圧されるが、小さなスリッ
プ時(S<0.17)では、ブレーキは加圧されずに、エン
ジンのみの制御でスリップが収束するように制御され
る。
t3〜t4 エンジンのみによるスリップ制御が行なわれる。
t4以降 運転者Dによりアクセル69が全閉されたため、スリッ
プ制御が中止される。このとき、スロットルバルブ13の
開度を運転者Dの意志に委ねても、十分にトルクが減少
しているため、再スリップの危険はない。なお、スリッ
プ制御の中止は、実施例では、このアクセルの全閉の
他、スリップ制御による目標スロットル開度が、運転者
により操作されるアクセル開度に対応した第12図により
定まるスロットル開度よりも小さくなったときにも行な
うようにしてある。
ここで、左右駆動輪(4と5)のスリップ差が大きい
ときで、かつ、いずれか一方の駆動輪に対してスリップ
制御による制動力付与を行うような状況にあるときは、
両方の駆動輪に対して制動力が付与される。すなわち、
第17図に示すように、いま右駆動輪5に大きなスリップ
が発生(Sが0.2よりも大)したとすると、スリップ制
御により右駆動輪5に制動力が付与されると同時に、左
駆動輪4に対しても所定の大きさの制動力が付与され
る。この結果、左駆動輪4の過大なスリップ発生が防止
されつつ、右駆動輪の過大なスリップが速やかに収束さ
れる。ちなみに、左駆動輪4に対して制動力を付与しな
い場合は、第16図に示すように、スリップ制御によって
右駆動輪5に対して付与された制動力に相当するトルク
が差動装置10を介して左駆動輪4にそのまま作用して、
当該左駆動輪4に極めて大きなスリップが発生してしま
う。
スリップ制御の詳細(フローチャート) 次に、第6図〜第11図のフローチャートを参照しつ
つ、スリップ制御の詳細について説明する。なお、以下
の説明でPあるいはNはステップを示す。
第6図(メイン) P2でシステムのイニシャライズが行われた後、P3にお
いてアクセル69が全閉であるか否かが判別される。この
P3でNOと判別されたときは、P4において、現在のスロッ
トル開度がアクセル開度よりも大きいか否かが判別され
る。このP4でNOと判別されたときは、P5において、現在
スリップ制御中であるか否かが判別されるが、この判別
は、スリップ制御フラグがセットされているか否かをみ
ることによって行なわれる。このP5でNOと判別されたと
きは、P6において、スリップ制御を行なうようなスリッ
プが発生したか否かが判別される。この判別は、後述す
る左右後輪4、5についてのスリップフラグのうち少な
くとも一方がセットされているか否かをみることによっ
て行なわれる。このP6でNOと判別されたときは、P7に移
行して、スリップ制御が中止される(通常の走行)。
前記P6でYESと判別されたときは、P8に移行して、ス
リップ制御フラグがセットされる。引き続き、P9におい
て、エンジン(スロットル)用の目標すべり率SETの初
期値(実施例では0.06)がセットされ、またP10におい
てブレーキ用の目標すべり率SBTの初期値(実施例では
0.17)がセットされる。この後は、それぞれ後述するよ
うに、スリップ制御のために、P11でのブレーキ制御お
よびP12でのエンジン制御がなされる。なお、P9、P10で
の初期値の設定は、前回のスリップ制御で得られた最大
加速度GMAXに基づいてなされる。
前記P5においてYESと判別されたときは、前述したP11
へ移行して、引き続きスリップ制御がなされる。
前記P4でYESと判別されたときは、スリップ制御は不
用になったときであり、P14に移行する。このP14ではス
リップ制御フラグがリセットされた後、P7に移行してス
リップ制御が中止される。
前記P3でYESと判別されたときは、P13においてブレー
キを解除した後、P14以降の処理がなされる。
第7図、第8図 第7図のフローチャートは、第6図のメインフローチ
ャートに対して、例えば14msec毎に割込みされる。
先ず、P21において、各センサ61、62、64〜68からの
各信号がデータ処理用として入力される。次いで、P22
で後述するスリップ検出の処理がなされた後、P23での
スロットル制御がなされる。
P23でのスロットル制御は、第8図に示すフローチャ
ートにしたがってなされる。先ず、P26において、現在
低車速であるか否かが判別される。この判別は、現在の
車速があらかじめ定めた設定車速(例えば15km/h)より
も小さいか否かをみることによって行なわれる。このP2
6の判別でYESのとき、すなわち低車速のときは、エンジ
ン6の発生トルク調整によるスリップ制御は行なわれな
いので、P29に移行して、スロットル開度が第12図に示
すマップにしたがうようにセットする(通常走行用のセ
ット)。
上記P26の判別がNOのときは、P27において、スリップ
制御フラグがセットされているか否か、すなわち現在ス
リップ制御を行っているか否かが判別される。このP27
でYESのときは、P28に移行して、スロットルバルブ13の
制御が、スリップ制御用として、すなわち第12図に示す
特性に従わないで、所定の目標すべり率SETを実現する
ような制御が選択される。また、P27においてNOと判別
されたときは、P29において、スロットルバルブ13の開
閉制御を、運転者Dの意志に委ねるものとして(第12図
に示す特性に従う)選択される。このP28、P29の後は、
P30において、目標スロットル開度を実現させるための
制御がなされる。
第9図(スリップ検出処理) この第9図のフローチャートは、第7図のP22に対応
したものである。このフローチャートは、スリップ制御
の対象となるようなスリップが発生したか否かおよび左
右駆動輪4と5とのスリップの差が大きいか否かを検出
するためのものである。
先ず、P33で、クラッチ7が完全に接続されているか
否かが判別される。このP33でYESと判別されたときは、
P34において、ハンドル舵角に応じて、スリップ判定用
の補正値αが算出される(第14図参照)。この後P35に
おいて、左駆動輪としての左後輪4のすべり率が、所定
の基準値0.2に上記P34でのαを加えた値(0.2+α)よ
りも大きいか否かが判別される。このP35での判別で、Y
ESのときは、左後輪4がスリップ状態にあるとしてその
スリップフラグがセットされる。逆に、P35でNOと判別
されたときは、左後輪4のスリップフラグがリセットさ
れる。なお、上記補正値αは、旋回時における内外輪の
回転差(特に駆動輪と従動輪との回転差)を考慮して設
定される。
P36はあるいはP37の後は、P38、P39、P40において、
右後輪5についてのスリップフラグのセット、あるいは
リセットが、P35、P36、P37と同様にして行われる。
P39あるいはP40の後は、P41〜P45の処理によって、左
右駆動輪4と5とのスリップの大きさの差が所定値以上
であるか否かの検出が行われる。そして、実施例では、
このスリップの差が大きいか否かの検出は、左右駆動輪
の4と5との回転数を比較して、一方の回転数が他方の
回転数よりも5割以上大きいか否かをみることによって
行うようにしてある。
以上のことを前提として、先ず、P41において、右駆
動輪5の回転数が左駆動輪4の回転数よりも大きいか否
かが判別される。このP41の判別でYESのときは、P42に
おいて、右駆動輪5の回転数が左駆動輪4の回転数の1.
5倍よりも大きいか否かが判別される。このP42の判別で
YESのときは、右駆動輪5のスリップが左駆動輪4のス
リップよりも所定以上大きいことを示すフラグF・Rが
1にセットされる。また、P42の判別でNOのときは、そ
のまま制御が終了する。
前記P41の判別でNOのときは、P44、P45において、前
記P42、P43と同様の処理が行われる。すなわち、左駆動
輪4の回転数が右駆動輪5の回転数の1.5倍よりも大き
いときに、フラグF・Lが1にセットされ(P44からP4
5)、そうでないときはこのフラグF・Lがセットされ
ることなく制御が終了する。
前記P33において、NOと判別されたときは、そのまま
制御が終了する。
第10図(エンジン制御) この第10図に示すフローチャートは、第6図のP12対
応している。
P61において、スリップが収束状態へ移行したか否か
(第5図のt2時点を通過したときか否か)が判別され
る。このP61でNOのときは、P62において、左後輪4のす
べり率Sが0.2よりも大きいか否かが判別される。P62で
NOのときは、P63で右後輪5のすべり率Sが0.2よりも大
きいか否かが判別される。このP63でNOのときは、P64に
おいて、左右後輪4、5のうち片側のみブレーキ制御中
か、すなわちスプリット路を走行しているときであるか
否かが判別される。P64でYESのときは、P65において、
左右後輪4、5のうちすべり率の低い方の駆動輪に合せ
て、現在のすべり率が算出される(セレクトロー)。逆
に、P64でNOのときは、P66において左右後輪4、5のう
ち、すべり率の大きい方の駆動輪に合せて、現在のすべ
り率が算出される(セレクトハイ)。なお、P62、P63で
NOのときも、P66に移行する。
上記P66でのセレクトハイは、すべり易い方の駆動輪
のすべりを抑制すべく現在のすべり率を算出することに
より、ブレーキの使用をより一層回避し得るものとな
る。逆に、上記P65でのセレクトローは、例えば左右駆
動輪が接地する路面の摩擦係数が異なるようなスプリッ
ト路を走行する場合に、ブレーキによってすべり易い方
の駆動輪のスリップを抑制しつつ、すべり難い側の駆動
輪のグリップ力を生かした走行が行なえることとなる。
なお、このセレクトローの場合は、ブレーキの酷使を避
けるため、例えば一定時間に限定したり、あるいはブレ
ーキが過熱した場合にこのセレクトローを中止させるよ
うなバックアップ手段を講じておくとよい。
P65、P66の後は、P67において、スロットルバルブ13
の目標開度Tnが、スリップ制御(フィードバック制御)
用として算出される。勿論、このときは、スロットルバ
ルブ13の目標スロットル開度(Tn)は、P65、P66で設定
されたあるいは後述するP69で変更された目標すべり率
SETを実現すべく設定される。
一方、P61でYESのときは、P68へ移行して、自動車1
の最大加速度GMAXが計測される(第5図t2時点)。次
いで、P69において、P68でのGMAXより路面の摩擦係数
を推定して、エンジン(スロットル)、ブレーキによる
スリップ制御の目標すべり率SET、SBTをどのように変
更するかについては後述する。
第11図(ブレーキ制御) この第11図に示すフローチャートは、第6図のP11に
対応している。
この第11図では左右駆動輪4と5とを個々独立してス
リップ制御する場合の他、左右駆動輪4と5とのスリッ
プ差が大きいときにスリップが小さい方の駆動輪に対し
ても制動力を付与するためのものを含んでいる。このス
リップの小さい方の駆動輪に付与する制動力の大きさ
を、実施例では、低車速時(発進時を想定)と高車速時
(通常走行時を想定)とに分けて設定するようにしてあ
る。より具体的には、低車速時(5km/h以下)にはスリ
ップの小さい方の駆動輪に対する制動力を、スリップ制
御されるスリップの大きい方の駆動輪に付与される制動
力と同じ大きさとなるようにしてある。また、高車速時
には、スリップの小さい方の駆動輪に付与する制動力
を、車速に対応した値、すなわちブレーキ用目標すべり
率SBTを0に設定するようにしてある(従動輪と同じ回
転数となるようにする)。
以上のことを前提として、先ずN1〜N17について説明
する。
N1〜N13の処理は、スリップの小さい方の駆動輪に対
して付与すべき制動力を、低車速時と高車速時とに応じ
た値として設定するためのものである。すなわち、先ず
N1において、現在の車速が5km/hよりも大きいか否かが
判別される。このN1の判別でNOのときは、N2、N3におい
て、左右ブレーキの操作量(制動力=操作速度)Bn・
R、Bn・Lが算出される、このN2、N3で算出されるブレ
ーキ操作量は、対応する駆動輪の現在のすべり率Sを基
に、前記P82(P88)と同様にして行われる。この後、N4
において、前述したフラグF・Rが1にセットされてい
るか否かが判別される。このN4の判別でYESのとき、す
なわち、右駆動輪5のスリップが左駆動輪4のスリップ
よりも所定以上大きいときは、N5において、スリップの
大きい方の駆動輪(この場合は右駆動輪5)におけるブ
レーキ操作量Bn・Rが、スリップが小さい方の駆動輪
(この場合は左駆動輪4)に対するブレーキ操作量Bn・
Lとして設定される。N5の後は、N6において、前記フラ
グF・Lが1にセットされているか否かが判別される。
このN6の判別でYESのときは、上記N5と同様の観点か
ら、スリップの大きい方の駆動輪(この場合は左駆動輪
4)のブレーキ操作量Bn・Lが、スリップの小さい方の
駆動輪(この場合は右駆動輪5)のブレーキ操作用Bn・
Rとして設定される。上記N4でNOの場合はN5の処理が行
われず、また、N6の判別でNOのときはN7での処理が行わ
れない。
一方、前記N1の判別でYESのときは、N8に移行して、
前記フラグF・Lが1にセットされているか否かが判別
される。このN8での判別でYESのときは、スリップの小
さい方の駆動輪(この場合は右駆動輪5)のブレーキ用
目標すべり率SBT・Rが車速(従動輪回転数)に対応し
た値(零)に設定される。
この後、N10において、上記SBT・Rに応じて右ブレ
ーキの操作量Bn・Rが設定される。また、N8の判別でNO
のときは、N9を経ることなく、N10に移行する(スリッ
プ差が小さいときの値として右ブレーキ操作量Bn・Rが
設定される−SBT=0.17に対応して設定)。
N10の後は、N11〜N13の処理によって、フラグF・R
のセット状態に応じて、左ブレーキ操作量Bn・Lが、前
記N8〜N10と同様にして設定される。
N7あるいはN13の後は、共に、N14へ移行する。このN1
4では、右駆動輪5の現在のすべり率Sが、ブレーキ制
御を中止するSBC=0.09に相当する値よりも大きいか否
かが判別される、このN14の判別でNOのときは、N15にお
いて、左駆動輪4の現在のすべり率Sが上記SBC=0.09
に相当する値よりも大きいか否かが判別される。このN1
5の判別でNOのときは、N16において各フラグF・RとF
・Lとが共に0にリセットされた後、N17において左右
のブレーキ共に解除される。
前記N14あるいはN15のいずれか一方の判別がYESのと
きは、N18において、Bn・R、Bn・Lが出力される。
左右駆動輪のスリップ差が大きいときの制御となる前
記各ステップN5、N7、N9、N12の処理によって、小さい
スリップの駆動輪への制動力が、スリップ差が小さいと
きの制動力よりも大きく設定されることになる。
目標すべり率SET、SBTの変更(P69) 前記P69において変更されるエンジンとブレーキとの
目標すべり率SET、SBTは、P68で計測された最大加速
度GMAXに基づいて、例えば第15図に示すように変更さ
れる。この第15図から明らかなように、原則として、最
大加速度GMAXが大きいほど、目標すべり率SET、SBT
を大きくするようにしてある。そして、目標すべり率S
ET、SBTには、それぞれリミット値を設けるようにして
ある。
ここで、目標すべり率SET、SBTとの設定関係が、自
動車1の走りの感覚にどのように影響するかについて説
明する。
駆動輪のグリップ力 SETとSBTとを全体的に第15図上下方向にオフセット
させる。そして、グリップ力を大きくするには、上方向
へのオフセットを行う。すなわち、スパイクタイヤの特
性として、第13図に示すように、すべり率0.2〜0.3位ま
では摩擦係数μは増加方向にあるため、すべり率0.2〜
0.3以下の範囲で使用する限り上述のことが言える。
加速感 加速感は、SETとSBTとの「差」を変えることによっ
て変化し、この「差」が小さいほど加速感が大きくな
る。すなわち、実施例のように、SETをSBTよりも小さ
い値として設定した場合、すべり率が大きいときはブレ
ーキ制御が主として働き、すべり率が小さいときはエン
ジン制御が主として働くことになる。したがって、SET
とSBTとの「差」を小さくした場合、ブレーキ制御とエ
ンジン制御とがほぼ同配分で働く方向に近づいてくる。
つまり、ブレーキによりエンジンの発生トルクをしぼっ
て駆動輪を駆動している状態となり、加速のためにトル
クを急速に増加させた場合は、ブレーキをゆるめるだけ
で駆動輪へのトルクが応答遅れなく増大する。
加速のなめらかさ SBTを大きく、すなわちSETに比して相対的により大
きくする。このことは、エンジン制御の優先度を高める
ことにより、エンジン制御の利点である滑らかなトルク
変化をより効果的に発生させ得ることを意味する。
コーナリング中の安定性 SETを小さく、すなわちSETとSBTに比して相対的に
より小さくする。このことは、第13図から明らかなよう
に、最大グリップ力発生時点となるすべり率S=0.2〜
0.3以下の範囲では、目標すべり率を下げることによ
り、駆動輪のグリップ力を小さくする一方、横力を極力
大きくして、曲げる力を増大させることになる。
上述した〜の特性(モード)の選択は、例えば運
転者Dの好みによって、マニュアル式に選択させるよう
にすることもできる(モード選択)。
以上説明した実施例においては、目標すべり率とし
て、エンジン用のSETよりもブレーキ用のSBTの方を大
きく設定してあるので、小さなスリップ状態におけるブ
レーキ制御が行なわれないためその使用頻度を少なくす
ることができると共に、大きなスリップ発生時において
もブレーキ制御の負担が小さくなる。加えて、SBTとS
ETとの間にブレーキによるスリップ制御を中止するポイ
ント(SBC)を設けてあるため、ブレーキ制御中止時に
おいてはブレーキ圧が十分低下しているため、急激なト
ルク変動がおこりにくいものとなる。
以上実施例について説明したが、本発明はこれに限ら
ず例えば次のような場合をも含むものである。
ブレーキ制御とエンジン制御とによる目標すべり率と
の大小関係を実施例とは逆の関係にしてもよく、また各
々同一としてもよい。勿論、ブレーキのみを利用したス
リップ制御を行なうものであってもよい。
エンジン6の発生トルク調整としては、エンジンの発
生出力に最も影響を与える要因を変更制御するものが好
ましい。すなわち、いわゆる負荷制御によって発生トル
クを調整するものが好ましく、オットー式エンジン(例
えばガソリンエンジン)にあっては混合気量を調整する
ことにより、またディーゼルエンジンにあっては燃料噴
射量を調整することが好ましい。しかしながら、この負
荷制御に限らず、オットー式エンジンにあっては点火時
期を調整することにより、またディーゼルエンジンにあ
っては燃料噴射時期を調整することにより行ってもよ
い。さらに、過給を行うエンジンにあっては、過給圧を
調整することにより行ってもよい。勿論、パワーソース
しては、内燃機関に限らず、電気モータであってもよ
く、この場合の発生トルクの調整は、モータへの供電電
力を調整することにより行えばよい。
自動車1としては、前輪2、3が駆動輪のものであっ
てもよく(FF車)あるいは4輪共に駆動輪とされるもの
(4WD車)であってもよい。
駆動輪のすべり状態を検出するには、実施例のように
駆動輪の回転数のように直接的に検出してもよいが、こ
の他、車両の状態に応じてこのすべり状態を予測、すな
わち間接的に検出するようにしてもよい。このような車
両の状態としては、例えば、パワーソースの発生トルク
増加あるいは回転数増加、アクセル開度の変化、駆動軸
の回転変化の他、操舵状態(コーナリング)、車体の浮
上り状態(加速)、積載量等が考えられる。これに加え
て、大気温度の高低、雨、雪、アイスバーン等の路面μ
を自動的に検出あるいはマニュアル式にインプットし
て、上記駆動輪のすべり状態の予測をより一層適切なも
のとすることもできる。
第2図のブレーキ液圧制御回路およびセンサ64、65、
66は、既存のABS(アンチブレーキロックシステム)の
ものを利用し得る。
実施例では、左右駆動輪のすべり率が共にSBC(=0.
17)よりも小さくなったときにそれぞれ左右のブレーキ
を解除するようにしたが、左右駆動輪のスリップ差が小
さいときは、左右の駆動輪のブレーキを個々独立して解
除するようにしてもよい。(SBCよりも小さくなった時
点でブレーキ解除)。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す全体系統図。 第2図はブレーキ液圧の制御回路の一例を示す図。 第3図はスロットルバルブをフィードバック制御すると
きのブロック線図。 第4図はブレーキをフィードバック制御するときのブロ
ック線図。 第5図は本発明の制御例を図式的に示すグラフ。 第6図〜第11図は本発明の制御例を示すフローチャー
ト。 第12図はスリップ制御を行なわないときのアクセル開度
に対するスロットル開度の特性を示すグラフ。 第13図は駆動輪のグリップ力と横力との関係を、すべり
率と路面に対する摩擦係数との関係で示すグラフ。 第14図はスリップ制御開始時のすべり率をハンドル舵角
に応じて補正するときの補正値を示すグラフ。 第15図は目標すべり率を決定する際に用いるマップの一
例を示すグラフ。 第16図は左右一方の駆動輪に大きなスリップが発生した
場合に、本発明によらない場合のスリップ収束の様子を
示すグラフ。 第17図は左右一方の駆動輪に大きなスリップが発生した
場合に、本発明による場合のスリップ収束の様子を示す
グラフ。 第18図は本発明の全体構成図。 1:自動車 2、3:前輪(従動輪) 4、5:後輪(駆動輪) 6:エンジン(パワーソース) 7:クラッチ 8:変速機 13:スロットルバルブ 14:スロットルアクチュエータ 21〜24:ブレーキ 27:マスタシリンダ 30、31:液圧制御バルブ 32:ブレーキペダル 61:センサ(スロットル開度) 62:センサ(クラッチ) 64:センサ(従動輪回転数) 65、66:センサ(駆動輪回転数) 67:センサ(アクセル開度) 68:センサ(ハンドル舵角) 69:アクセル 70:ハンドル SV1〜SV4:電磁開閉バルブ U:コントロールユニット
フロントページの続き (72)発明者 村重 和宏 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−235235(JP,A) 実開 昭62−6169(JP,U) 実開 昭60−69766(JP,U) 実開 昭62−17467(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】パワーソースでの発生トルクを差動装置を
    介して左右駆動輪へ伝達するようにした自動車におい
    て、 左駆動輪用ブレーキの制動力を調整する左制動力調整手
    段と、 右駆動輪用ブレーキの制動力を調整する右制動力調整手
    段と、 左右駆動輪の路面に対するスリップの大きさを個々独立
    して検出するスリップ検出手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、左右駆動輪の
    スリップ差が小さいときは、左駆動輪のスリップの大き
    さに応じて前記左制動力調整手段を制御すると共に、右
    駆動輪のスリップの大きさに応じて前記右制動力調整手
    段を制御して、左右駆動輪のスリップが過大になるのを
    防止する第1スリップ制御手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、左右駆動輪の
    スリップ差が大きいときは、大きいスリップの駆動輪に
    対しては該大きいスリップに応じて該大きいスリップの
    駆動輪に対応した制動力調整手段を制御すると共に、小
    さいスリップの駆動輪に対しては前記第1スリップ制御
    手段により付与される制動力よりも大きな制動力を付与
    するように該小さいスリップの駆動輪に対応した制動力
    調整手段を制御する第2スリップ制御手段と、 を備えていることを特徴とする自動車のスリップ制御装
    置。
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