JP2502983B2 - 自動車のスリップ制御装置 - Google Patents

自動車のスリップ制御装置

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JP2502983B2
JP2502983B2 JP61177775A JP17777586A JP2502983B2 JP 2502983 B2 JP2502983 B2 JP 2502983B2 JP 61177775 A JP61177775 A JP 61177775A JP 17777586 A JP17777586 A JP 17777586A JP 2502983 B2 JP2502983 B2 JP 2502983B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、駆動輪への付与トルクを制御することによ
り、駆動輪の路面に対するスリップが過大になるのを防
止するようにした自動車のスリップ制御装置に関するも
のである。
(従来技術) 駆動輪の路面に対するスリップが過大になることを防
止するのは、自動車の推進力を効果的に得る上で、また
スピンを防止する等の安全性の上で効果的である。そし
て、駆動輪のスリップが過大になるのを防止するには、
スリップの原因となる駆動輪への付与トルクを減少させ
ればよいことになる。
この種のスリップ制御を行うものとしては、従来、特
開昭58−16948号公報、あるいは特開昭60−56662号公報
に示すものがある。この両公報に開示されている技術
は、共に、駆動輪への付与トルクを低下させるのに、ブ
レーキによる駆動輪への制動力付与と、エンジンそのも
のの発生トルク低減とを利用して行うようになってい
る。より具体的には、特開昭58−16948号公報のものに
おいては、駆動輪のスリップが小さいときは駆動輪の制
動のみを行う一方、駆動輪のスリップが大きくなったと
きは、この駆動輪の制動に加えて、エンジンの発生トル
クを低下させるようになっている。また、特開昭60−56
662号公報のものにおいては、左右の駆動輪のうち片側
のみのスリップが大きいときは、このスリップの大きい
片側の駆動輪のみに対して制動を行う一方、左右両側の
駆動輪のスリップが共に大きいときは、両側の駆動輪に
対して制動を行うと共に、エンジンの発生トルクを低下
させるようにしている。このように、上記両公報に開示
されているものは、ブレーキによる駆動輪への制動を主
として利用し、補助的にエンジンの発生トルクを低下さ
せるものとなっている。
(発明が解決しようとする問題点) 前述した制動力調整によるスリップ制御と発生トルク
調整によるスリップ制御とは、それぞれ一長一短があ
る。すなわち、制動力を利用する場合は、応答性の点で
優れている反面、ショックを生じ易くて運転フィーリン
グの面で問題がある他、エネルギの効果的な利用あるい
はブレーキの信頼性確保の面で不利となる。一方、発生
トルク調整によるスリップ制御は、滑らかなトルク変動
が得られて運転フィーリングの上で、また無駄なトルク
を発生させないことによるエネルギ効率の面で有利な反
面、応答性の点で問題がある。
上述のような観点から、少なくとも駆動輪のスリップ
が大きいときには、ブレーキによる制動力付与とエンジ
ンからの発生トルク低下との両方を用いてスリップ制御
を行なうことは、このスリップの速やかな収束を得る上
で極めて好ましく、これに加えて応答性、運転フィーリ
ング、エネルギ効率、ブレーキの信頼性確保を適切にバ
ランスさせることも可能となる。
ところで、スリップ制御は、駆動輪のスリップが過大
になるのを防止するためであり、このスリップが小さく
なり過ぎることは、加速性確保等の点からも極力回避す
ることが望まれる。特に、自動車の走行負荷、例えば積
載重量や走行路の勾配などは、この加速性に大きな影響
を与えるものとなる。すなわち、走行負荷が大きい状態
でひとたび加速が落ち込むと、エンジンの応答遅れのた
めなかなか加速度が回復しないということになる。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもの
で、駆動輪への制動力付与とエンジン等のパワーソース
そのものの発生トルク低減との両方を用いて駆動輪のス
リップ制御を行う場合に、走行負荷に対処しつつ加速性
の面でも十分に満足し得るようにした自動車のスリップ
制御装置を提供することを目的とする。
(問題点を解決するための手段、作用) 前述の目的を達成するため、本発明においては、走行
負荷が大きいときは、ブレーキによるスリップ制御の比
率を高めるような補正を行うようにしてある。すなわ
ち、ブレーキによるスリップ制御の比率を高めるという
ことは、パワーソースでの発生トルクをブレーキで抑制
する度合がより強くなるということ、換言すればスリッ
プ制御中にパワーソースはかなりの余裕をもってトルク
を発生しているということであり、このことは、ブレー
キが解除された際に、上記余裕トルクを利用して速やか
な加速が得られることになる。
具体的には、第20図に示すように、 駆動輪への付与トルクを制御することにより駆動輪の
路面に対するスリップが過大になるのを防止するように
した自動車のスリップ制御装置において、 トルク発生源となるパワーソースの発生トルクを調整
する発生トルク調整手段と、 駆動輪用ブレーキの制動力を調整する制動力調整手段
と、 駆動輪の路面に対するスリップ状態を検出するスリッ
プ検出手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、駆動輪のス
リップが所定値以上のときは前記発生トルク調整手段と
制動力調整手段とを作動させることによるパワーソース
の発生トルク低下と駆動輪への制動力付与とによりスリ
ップ制御を行うスリップ制御手段と、 自動車の走行負荷を検出する走行負荷検出手段と、 走行負荷の大きいときには、前記スリップ制御手段に
よるスリップ制御を、前記ブレーキによるスリップ制御
の比率が高まる方向に補正する補正手段と、 を備えた構成としてある。
(実施例) 以下本発明の実施例を添付した図面に基づいて説明す
る。
全体構成の概要 第1図において、自動車1は、駆動輪となる左右前輪
2、3と、従動輪となる左右後輪4、5との4つの車輪
を備えている。自動車1の前部には、パワーソースとし
てのエンジン6が搭載され、このエンジン6で発生した
トルクが、クラッチ7、変速機8、デファレンシャルギ
ア9を経た後、左右のドライブシャフト10、11を介し
て、駆動輪としての左右の前輪2、3に伝達される。こ
のように、自動車1は、FF式(フロントエンジン・フロ
ントドライブ)のものとされている。
パワーソースとしてのエンジン6は、その吸気通路12
に配設したスロットルバルブ13によって、負荷制御すな
わち発生トルクの制御が行なわれるものとされている。
より具体的には、エンジン6はガソリンエンジンとされ
て、その吸入空気量の変化によって発生トルクが変化す
るものとされ、吸入空気量の調整が、上記スロットルバ
ルブ13によって行われる。そして、スロットルバルブ13
は、スロットルアクチュエータ14によって、電磁気的に
開閉制御されるようになっている。なお、スロットルア
クチュエータ14としては、例えばDCモータ、ステップモ
ータ、油圧等の流体圧によって駆動されて電磁気的に駆
動制御されるもの等適宜のものによって構成し得る。
各車輪2〜5には、それぞれブレーキ21、22、23ある
いは24が設けられ、各ブレーキ21〜24は、それぞれディ
スクブレーキとされている。このディスクブレーキは、
既知のように、車輪と共に回転するディスク25と、キャ
リパ26とを備えている。このキャリパ26は、ブレーキパ
ッドを保持すると共に、ホイールシリンダを備え、ホイ
ールシリンダに供給されるブレーキ液圧の大きさに応じ
た力でブレーキパッドをディスク25に押し付けることに
より、制動力が発生される。
ブレーキ液圧発生源としてのマスタシリンダ27は、2
つの吐出口27a、27bを有するタンデム型とされている。
吐出口27aより伸びるブレーキ配管28は、途中で2本の
分岐管28aと28bとに分岐され、分岐管28aが右前輪用ブ
レーキ22(のホイールシリンダ)に接続され、分岐管28
bが左後輪用ブレーキ23に接続されている。また、吐出
口27bより伸びるブレーキ配管29が、途中で2本の分岐
管29aと29bとに分岐され、分岐管29aが左前輪用ブレー
キ21に接続され、分岐管29bが右後輪用ブレーキ24に接
続されている。このように、ブレーキ配管系が、いわゆ
る2系統X型とされている。そして、駆動輪となる前輪
用のブレーキ21、22に対する分岐管28a、29aには、制動
力調整手段としての電磁式液圧制御バルブ30あるいは31
が接続されている。勿論、マスタシリンダ27に発生する
ブレーキ液圧は、運転者Dによるブレーキペダル32の踏
込み量(踏込力)に応じたものとなる。
ブレーキ液圧制御回路 第2図に示すように、前記液圧制御バルブ30、31は、
それぞれ、シリンダ41と、シリンダ41内に摺動自在に嵌
挿されたピストン42とを有する。このピストン42によっ
て、シリンダ41内が、容積可変室43と制御室44とに画成
されている。この容積可変室43は、マスタシリンダ27か
らブレーキ21(22)に対するブレーキ液圧の通過系路と
なっている。したがって、ピストン42の変位位置を調整
することにより、当該容積可変室43の容積が変更され
て、ブレーキ21(22)に対するブレーキ液圧を発生し得
ると共に、この発生したブレーキ液圧を増減あるいは保
持し得ることになる。
ピストン42は、リターンスプリング45により容積可変
室43の容積が大きくなる方向に常時付勢されている。ま
た、ピストン42には、チェックバルブ46が一体化されて
いる。このチェックバルブ46は、ピストン42が容積可変
室43の容積を小さくする方向へ変位したときに、当該容
積可変室43への流入口側を閉塞する。これにより、容積
可変室43で発生されるブレーキ液圧は、ブレーキ21(2
2)側へのみ作用して、従動輪としての後輪4、5のブ
レーキ23、24には作用しないようになっている。
ピストン42の変位位置の調整は、前記制御室44に対す
る制御液圧を調整することにより行われる。この点を詳
述すると、リザーバ47より伸びる供給管48が途中で2本
に分岐されて、一方の分岐管48Rがバルブ30の制御室44
に接続され、また他方の分岐管48Lがバルブ31の制御室4
4に接続されている。供給管48には、ポンプ49、リリー
フバルブ50が接続され、またその分岐管48L(48R)には
電磁開閉弁からなる供給バルブSV3(SV2)が接続されて
いる。各制御室44は、さらに排出管51Rあるいは51Lを介
してリザーバ47に接続され、排出管51L(51R)には、電
磁開閉弁からなる排出バルブSV4(SV1)が接続されてい
る。
この液圧制御バルブ30(31)を利用したブレーキ時
(スリップ制御時)には、チェックバルブ46の作用によ
り、基本的には、ブレーキペダル32の操作によるブレー
キは働かないことになる。ただし、液圧制御バルブ30
(31)で発生されるブレーキ液圧が小さいとき(例えば
減圧中)は、ブレーキペダル32の操作によるブレーキが
働くことになる。勿論、液圧制御バルブ30(31)でスリ
ップ制御用のブレーキ液圧が発生していないときは、マ
スタシリンダ27とブレーキ21(22)は連通状態となるた
め、ブレーキペダル27の操作に起因して通常のブレーキ
作用が行われることになる。
各バルブSV1〜SV4は、後述するブレーキ用コントロー
ルユニットUBによって開閉制御がなされる。ブレーキ2
1、22へのブレーキ液圧の状態と各バルブSV1〜SV4との
作動関係をまとめて、次表に示してある。
コントロールユニットの構成概要 第1図において、Uはコントロールユニットであり、
これは大別して、前述したブレーキ用コントロールユニ
ットUBの他、スロットル用コントロールユニットUTおよ
びスリップ制御用コントロールユニットUSとから構成さ
れている。コントロールユニットUBは、コントロールユ
ニットUSからの指令信号に基づき、前述したように各バ
ルブSV1〜SV4の開閉制御を行う。また、スロットル用コ
ントロールユニットUTは、コントロールユニットUSから
の指令信号に基づき、スロットルアクチュエータ14の駆
動制御を行う。
スリップ制御用コントロールユニットUSは、デジタル
式のコンピュータ、より具体的にはマイクロコンピュー
タによって構成されている。このコントロールユニット
USには、各センサ(あるいはスイッチ)61〜68からの信
号が入力される。センサ61は、スロットルバルブ13の開
度を検出するものである。センサ62はクラッチ7が締結
されているか否かを検出するものである。センサ63は変
速機8の変速段を検出するものである。センサ64、65は
駆動輪としての左右前輪2、3の回転数を検出するもの
である。センサ66は従動輪としての左後輪4の回転数す
なわち車速を検出するものである。センサ67は、アクセ
ル69の操作量すなわちアクセル開度を検出するものであ
る。センサ68はハンドル70の操作量すなわち蛇角を検出
するものである。上記センサ64、65、66はそれぞれ例え
ばピックアップを利用して構成され、センサ61、63、6
7、68は例えばポテンショメータを利用して構成され、
センサ62は例えばON、OFF的に作動するスイッチによっ
て構成される。
以上に加えて、走行負荷を検出するセンサ71からの信
号がコントロールユニットUSに入力される。このセンサ
71は、例えば、走行路の勾配を検出するもの、積載荷重
を検出するものとして構成し得る。この走行負荷の大小
判別値としては、その他、変速機8からの出力トルクを
例えばスロットル開度とエンジン回転数とギア比とによ
り求める一方、現在の加速度を検出して、この加速度を
出力トルクで除した値とすることもできる。勿論、走行
負荷は、上述したもののいずれか1つあるいは任意の組
合せによって検出することもできる。
なお、コントロールユニットUSは、基本的にCPU、RO
M、RAM、CLOCKを備えており、その他、出入力インタフ
ェイスを備えると共に、入力信号、出力信号に応じてA/
DあるいはD/A変換器をも有するが、これ等の点について
はマイクロコンピュータを利用する場合における通常の
ものと変るところがないので、その詳細な説明は省略す
る。なお、以下の説明におけるマップ等は、制御ユニッ
トUSのROMに記憶されているものである。
さて次に、コントロールユニットUの制御内容につい
て順次説明するが、以下の説明で用いるすべり率Sは、
次式(1)によって定義するものとする。
WD:駆動輪(2、3)の回転数 WL:従動輪(4)の回転数(車速) スロットル制御 コントロールユニットUTは、目標スロットル開度とな
るようにスロットルバルブ13(スロットルアクチュエー
タ14)をフィードバック制御するものとなっている。こ
のスロットル制御の際、スリップ制御を行わないとき
は、運転者Dによって操作されたアクセル69の操作量に
1:1に対応した目標スロットル開度となるように制御
し、このときのアクセル開度とスロットル開度との対応
関係の一例を、第12図に示してある。また、コントロー
ルユニットUTは、スリップ制御の際には、第12図に示す
特性にしたがうことなく、コントロールユニットUSで演
算された目標スロットル開度Tnとなるようにスロットル
制御を行う。
コントロールユニットUTを用いたスロットルバルブ13
のフィードバック制御は、実施例では、エンジン6の応
答速度の変動を補償するため、PI−PD制御によって行う
ようにしてある。すなわち、駆動輪のスリップ制御の際
には、現在のすべり率が目標すべり率に一致するよう
に、スロットルバルブ13の開度をPI−PD制御する。より
具体的には、スリップ制御の際の目標スロットル開度Tn
は、次式(2)によって演算される。
WL :従動輪(4)の回転数 WD :駆動輪(2、3)の回転数 KP :比例定数 KI :積分定数 FP :比例定数 FD :微分定数 SET:目標すべり率(スロットル制御用) 上記式(2)のように、スロットル開度Tnは、所定の
目標すべり率SETとなるように駆動輪の回転数をフィー
ドバック制御している。換言すれば、前記(1)式から
明らかなように、スロットル開度は、目標駆動輪回転数
WETが次の(3)式 になるように制御される。
上述したコントロールユニットUTを用いたPI−PD制御
を、ブロック線図として第3図に示してあり、この第3
図に示す「S′」は「演算子」である。また、各サフィ
クス「n」、「n−1」は現時およびその1回前のサン
プリング時における各信号の値を示す。
ブレーキ制御 スリップ制御時においては、コントロールユニットUB
を用いた左右の駆動輪2、3の回転数(スリップ)を、
左右独立に所定の目標すべり率SBTになるようにフィー
ドバック制御する。換言すれば、ブレーキ制御は次式
(4)で設定される駆動輪回転数WBTになるようにフィ
ードバック制御を行なう。
このブレーキの目標すべり率SBTは、本実施例では後
述するようにエンジンの目標すべり率SETよりも大きく
設定してある。換言すれば、本実施例のスリップ制御
は、所定SET(WET)になるようエンジン出力を増減する
と共に、それよりも大きなSBT(WBT)になるようブレー
キによるトルク増減作用を行なうことにより、ブレーキ
の使用頻度を少なくしている。そして、本実施例では、
上記(4)式を満足するようなフィードバック制御を、
安定性に優れたI−PD制御によって行うようにしてあ
る。より具体的には、ブレーキ操作量(バルブ30、31に
おけるピストン44の操作量)Bnは、次式(5)によって
演算される。
KI:積分係数 KD:比例係数 FD:微分係数 上記Bnが0より大きいとき(「正」のとき)がブレー
キ液圧の増圧であり、0以下のときが減圧となる。この
ブレーキ液圧の増減は、前述したようにバルブSV1〜SV4
の開閉を行なうことによりなされる。また、ブレーキ液
圧の増減速度の調整は、上記バルブSV1〜SV4の開閉時間
の割合(デューティ比)を調整(デューティ制御)する
ことによりなされるが、上記(5)式により求められた
Bnの絶対値に比例したデューティ制御とされる。したが
って、Bnの絶対値は、ブレーキ液圧の変化速度に比例し
たものとなり、逆に増減速度を決定するデューティ比が
Bnを示すものともなる。
上述したコントロールユニットUBによるI−PD制御
を、ブロック線図として第4図に示してあり、この第4
図に示す「S′」は「演算子」である。
スリップ制御の全体概要 コントロールユニットUによるスリップ制御の全体的
な概要について、第5図を参照しつつ説明する。なお、
この第5図中に示す符号、数値の意味することは、次の
通りである。
S/C:スリップ制御領域 E/G:エンジンによるスリップ制御 B/R:ブレーキによるスリップ制御 F/B:フィードバック制御 O/R:オープンループ制御 R/Y:リカバリ制御 B/A:バックアップ制御 A/S:緩衝制御 S=0.2:スリップ制御開始時のすべり率 (SS) S=0.17:ブレーキによる目標すべり率 (SBT) S=0.09:ブレーキによるスリップ制御を中止するとき
のすべり率 (SBC) S=0.06:エンジンによる目標すべり率 (SET) S=0.01〜0.02:緩衝制御を行う範囲のすべり率 S=0.01以下:バックアップ制御を行なう範囲のすべり
率 なお、上記数値は、実際にアイスバーンをスパイクタ
イヤによって走行して得たデータに基づいて示してあ
る。そして、緩衝制御A/Sを行うS=0.01と0.02、また
ブレーキによるスリップ制御中止時点のすべり率S=0.
09は、実施例ではそれぞれ不変としてある。一方、ブレ
ーキによる目標すべり率SBTおよびエンジンによる目標
すべり率SET、さらにはスリップ制御の開始時のすべり
率SSは、路面状況等によって変化されるものであり、第
5図ではその一例として「0.17」、「0.06」あるいは
「0.2」を示してある。そして、スリップ制御開始時の
すべり率S=0.2は、スパイクタイヤを用いたときに得
られる最大グリップ力発生時点のすべり率を用いてある
(第13図実線参照)。このように、スリップ制御開始時
のすべり率を0.2と大きくしてあるのは、この最大グリ
ップ力が得られるときの実際のすべり率が求められるよ
うにするためであり、この最大グリップ力発生時のすべ
り率に応じて、エンジンおよびブレーキによる目標すべ
り率SET、SBTが補正される。なお、第13図実線は、スパ
イクタイヤのときのグリップ力と横力との大きさ(路面
に対する摩擦係数として示す)が、すべり率との関係で
どのように変化するかを示してある。また、第13図破線
は、ノーマルタイヤのときのグリップ力と横力との関係
を示してある。
以上のことを前提として、時間の経過と共に第5図に
ついて説明する。
t0〜t1 すべり率Sがスリップ制御開始条件となるS=0.2を
越えていないので、スリップ制御は行われない。すなわ
ち、駆動輪のスリップが小さいときは、スリップ制御し
ないことにより、加速性を向上させることができる(大
きなグリップ力を利用した走行)。勿論、このときは、
アクセル開度に対するスロットル開度の特性は、第12図
に示すように一律に定まる。
t1〜t2 スリップ制御が開始されると共に、すべり率がブレー
キによるスリップ制御中止ポイント(S=0.09)以上の
ときである。このときは、すべり率が比較的大きいの
で、エンジンによる発生トルク低下とブレーキによる制
動とにより、スリップ制御が行われる。また、エンジン
の目標すべり率(S=0.06)よりもブレーキの目標すべ
り率(S=0.17)の方が大きいため、大きなスリップ時
(S>0.17)はブレーキが加圧されるが、小さなスリッ
プ時(S<0.17)では、ブレーキは加圧されずに、エン
ジンのみの制御でスリップが収束するように制御され
る。
t2〜t4(リカバリ制御) スリップが収束(S<0.2)してから所定時間(例え
ば170msec)の間、スロットルバルブ13は所定開度に保
持される(オープンループ制御)。このとき、S=0/2
(t2)時点での最大加速度GMAXが求められて、このGMAX
より路面の最大μ(駆動輪の最大グリップ力)が推定さ
れる。そして、駆動輪の最大グリップ力を発生するよう
に、スロットルバルブ13が上述のように所定時間保持さ
れる。この制御は、スリップの収束が急速に起こるため
フィードバック制御では応答が間に合わず、スリップ収
束直後に車体加速度Gが落ち込むことを防止するために
なされる。このため、スリップの収束が予測されると
(S=0.2より低下)、上述のようにあらかじめ所定ト
ルクを確保して、加速性が向上される。
上記最大グリップ力を発生し得るような駆動輪への付
与トルクを実現するための最適スロットル開度TVoは、
エンジン6のトルクカーブおよび変速比から理論的に求
まるが、実施例では、例えば第15図に示すようなマップ
に基づいて決定するようにしてある。このマップは実験
的手法によって作成してあり、GMAXが0.15以下と0.4以
上のときは、GMAXの計測誤差を勘案して所定の一定値と
なるようにしてある。なお、この第12図に示すマップ
は、ある変速段(例えば1速)のときを前提としてお
り、他の変速段のときは最適スロットル開度TVoを補正
するようにしてある。
t4〜t7(バックアップ制御、緩衝制御) すべり率Sが異常に低下したときに対処するために、
バックアップ制御がなされる(オープンループ制御)。
すなわち、S<0.01となったときは、フィードバック制
御をやめて、段階的にスロットルバルブ13を開いてい
く。そして、すべり率が0.01と0.02との間にあるとき
は、次のフィードバック制御へと滑らかに移行させるた
め、緩衝制御が行われる(t4〜t5およびt6〜t7)。この
バックアップ制御は、フィードバック制御やリカバリ制
御でも対処し得ないときに行われる。勿論、このバック
アップ制御は、フィードバック制御よりも応答速度が十
分に速いものとされる。
このバックアップ制御におけるスロットル開度の増加
割合は、実施例では、スロットル開度のサンプリングタ
イム14msec毎に、前回のスロットル開度に対して0.5%
開度分だけ上乗せするものとしてある。
また、上記緩衝制御においては、第16図に示すよう
に、フィードバック制御演算によって得られるスロット
ル開度T2と、バックアップ制御演算によって得られるス
ロットル開度T1とを、現在のすべり率Soによって比例配
分することにより得られるスロットル開度Toとするよう
にしてある。
t7〜t8 t7までの制御を行うことによって、エンジンのみによ
るスリップ制御へと滑らかに移行する。
t8以降 運転者Dによりアクセル69が全閉されたため、スリッ
プ制御が中止される。このとき、スロットルバルブ13の
開度を運転者Dの意志に委ねても、十分にトルクが減少
しているため、再スリップの危険はない。なお、スリッ
プ制御の中止は、実施例では、このアクセルの全閉の
他、スリップ制御による目標スロットル開度が、運転者
により操作されるアクセル開度に対応した第12図により
定まるスロットル開度よりも小さくなったときにも行な
うようにしてある。
ここで、走行負荷の大きいときは、ブレーキ制御の比
率を高めるため、実施例では、第18図に示すように、ブ
レーキ制御の目標すべり率SBTを小さくする方向に補正
するようにしてある。このようにSBTを小さくすること
により、SBTとSETとの「差」が小さくなり、この結果、
現在のすべり率が同じであっても、そのときのブレーキ
による制動力は大きなものとなり、この制動力が大きく
なった分エンジン6で発生している余裕トルクが大きく
なる。したがって、スリップが小さくなってブレーキが
解除されると、エンジン6の上記余裕トルクによって速
やかに加速が行われることになる。勿論、このブレーキ
制御の比率を高めるには、上述のようにSBTとSETとの
「差」を小さくすればよいので、SBTを小さくすること
とSETを大きくすることとのいずれか一方または両方を
行うようにしてもよい。
スリップ制御の詳細(フローチャート) 次に、第6図〜第11図のフローチャートを参照しつ
つ、スリップ制御の詳細について説明するが、実施例で
は、自動車1がぬかるみ等にはまり込んだスタック中
に、ブレーキ制御を利用して当該ぬかるみ等から脱出す
るためのスタック制御をも行なうようになっている。な
お、以下の説明でPはステップを示す。
第6図(メイン) P1でシステムのイニシャライズが行われた後、P2にお
いて、現在スタック中(ぬかるみ等にはまり込んで動き
がとれなくなったような状態)であるか否かが判別され
る。この判別は、後述するスタックフラグがセットされ
ているか否かをみることによって行われる。P2の判別で
NOのときは、P3においてアクセル69が全閉であるか否か
が判別される。このP3でNOと判別されたときは、P4にお
いて、現在のスロットル開度がアクセル開度よりも大き
いか否かが判別される。このP4でNOと判別されたとき
は、P5において、現在スリップ制御中であるか否かが判
別されるが、この判別は、スリップ制御フラグがセット
されているか否かをみることによって行なわれる。この
P5でNOと判別されたときは、P6において、スリップ制御
を行なうようなスリップが発生したか否かが判別され
る。この判別は、後述する左右前輪2、3についてのス
リップフラグがセットされているか否かをみることによ
って行なわれる。このP6でNOと判別されたときは、P7に
移行して、スリップ制御が中止される(通常の走行)。
前記P6とYESと判別されたときは、P8に移行して、ス
リップ制御フラグがセットされる。引き続き、P9におい
て、エンジン(スロットル)用の目標すべり率SETの初
期値(実施例では0.06)がセットされ、またP10におい
てブレーキ用の目標すべり率SBTの初期値(実施例では
0.17)がセットされる。この後は、それぞれ後述するよ
うに、スリップ制御のために、P11でのブレーキ制御お
よびP12でのエンジン制御がなされる。なお、P9、P11で
の初期値の設定は、前回のスリップ制御で得られた最大
加速度GMAXに基づいて、後述するP76と同様の観点から
なされる。
前記P5においてYESと判別されたときは、前述したP11
へ移行して、引き続きスリップ制御がなされる。
前記P4でYESと判別されたときは、スリップ制御は不
要になったときであり、P14に移行する。このP14ではス
リップ制御フラグがリセットされる。次いで、P15でエ
ンジン制御を中止し、P16でのブレーキ制御がなされ
る。なお、このP16でのブレーキ制御では、スタック中
に対処したものとしてなされる。
前記P3でYESと判別されたときは、P13においてブレー
キを解除した後、P14以降の処理がなされる。
前記P2でYESと判別されたときは、P15以降の処理がな
される。
第7図、第8図 第7図のフローチャートは、第6図のメインフローチ
ャートに対して、例えば14msec毎に割込みされる。
先ず、P21において、各センサ61〜68からの各信号が
データ処理用として入力される。次いで、P22で後述す
るスリップ検出の処理がなされた後、P23でのスロット
ル制御がなされる。
P23でのスロットル制御は、第8図に示すフローチャ
ートにしたがってなされる。先ず、P24において、スリ
ップ制御フラグがセットされているか否か、すなわち現
在スリップ制御を行っているか否かが判別される。この
P24でYESのときは、スロットルバルブ13の制御が、スリ
ップ制御用として、すなわち第12図に示す特性に従わな
いで、所定の目標すべり率SETを実現するような制御が
選択される。また、P24においてNOと判別されたとき
は、P26において、スロットルバルブ13の開閉制御を、
運転者Dの意志に委ねるものとして(第12図に示す特性
に従う)選択される。このP25、P26の後は、P27におい
て、目標スロットル開度を実現させるための制御がなさ
れる(後述するP68、P70、P71に従う制御あるいは第12
図の特性に従う制御)。
第9図(スリップ検出処理) この第9図のフローチャートは、第7図のP22に対応
したものである。このフローチャートは、スリップ制御
の対象となるようなスリップが発生したか否か、および
スタックしているか否かを検出するためのものである。
先ず、P31で、クラッチ7が完全に接続されているか
否かが判別される。このP31でYESと判別されたときは、
スタック中ではないときであるとして、P32においてス
タックフラグがリセットされる。次いで、P33におい
て、現在車速が低速すなわち例えば6.3km/hよりも小さ
いか否かが判別される。
P33でNOと判別されたときは、P34において、ハンドル
蛇角に応じて、スリップ判定用の補正値αが算出される
(第14図参照)。この後P35において、左駆動輪として
の左前輪2のすべり率が、所定の基準値0.2に上記P34で
のαを加えた値(0.2+α)よりも大きいか否かが判別
される。このP35での判別で、YESのときは、左前輪2が
スリップ状態にあるとしてそのスリップフラグがセット
される。逆に、P35でNOと判別されたときは、左前輪3
のスリップフラグがリセットされる。なお、上記補正値
αは、旋回時における内外輪の回転差(特に駆動輪と従
動輪との回転差)を考慮して設定される。
P36あるいはP37の後は、P38、P39、P40において、右
前輪3についてのスリップフラグのセット、あるいはリ
セットが、P35、P36、P37と同様にして行われる。
前記P33でYESと判別されたときは、低速時であり、車
速を利用したすなわち前記(1)式に基づくすべり率の
算出に誤差が大きくなるので、スリップ状態の判定を、
駆動輪の回転数のみによって検出するようにしてある。
すなわち、P41において、左前輪2の回転数が、車速10k
m/h相当の回転数よりも大きいか否かが判別される。こ
のP41でYESと判別されたときは、P42において左前輪2
のスリップフラグがセットされる。逆に、P41でNOと判
別されたときは、P43において左前輪2のスリップフラ
グがリセットされる。
P42、P43の後は、P44、P45、P46において、右前輪3
についてのスリップフラグがセットあるいはリセット
が、上記P41〜P43の場合と同様にして行われる。
前記P31において、NOと判別されたときは、スタック
中である可能性が考えられるときである(スタック中
は、運転者Dは半クラッチを使用しながらぬかるみ等か
ら脱出しようとする)。このときは、P51に移行して、
駆動輪としての左右前輪2と3との回転数の平均値が小
さいか否かが判別される(例えば車速に換算して2km/h
以下であるか否かが判別される)。P51でNOと判別され
たときは、P52において、現在スタック制御中であるか
否かが判別される。P52でNOと判別されたときは、P53に
おいて、右前輪3の回転数が、左前輪2の回転数よりも
大きいか否かが判別される。P53でYESと判別されたとき
は、右前輪3の回転数が左前輪2の回転数の1.5倍より
も大きいか否かが判別される。このP54でYESと判別され
たときは、P56でスタックフラグがセットされる。逆にP
54でNOと判別されたときは、スタック中ではないとし
て、前述したP32以降の処理がなされる。
また、前記P53でNOと判別されたときは、P55におい
て、左前輪2の回転数が、右前輪3の回転数の1.5倍よ
りも大きいか否かが判別される。このP55でYESのととき
はP56へ、またNOのときはP32へ移行する。
P56の後は、P57において、車速が6.3km/hよりも大き
いか否かが判別される。このP57でYESとされたときは、
前輪2、3の目標回転数を、車速を示す従動輪回転数の
1.25倍となるようにセットされる(すべり率0.2に相
当)。また、P57でNOのときは、P59において、前輪2、
3の目標回転数が、10km/hに一律にセットされる。P51
でYESのときは、P60においてブレーキがゆっくりと解除
される。
第10図(エンジン制御) この第10図に示すフローチャートは、第6図のP12対
応している。
P61において、スリップが収束状態へ移行したか否か
(第5図のt2時点を通過したときか否か)が判別され
る。このP61でNOのときは、P62において、左前輪2のす
べり率Sが0.2よりも大きいか否かが判別される。P62で
NOのときは、P63で右前輪3のすべり率Sが0.2よりも大
きいか否かが判別される。このP63でNOのときは、P64に
おいて、左右前輪2、3のうちの片側のみブレーキ制御
中か、すなわちスプリット路を走行しているときである
か否かが判別される。P64でYESのときは、P65におい
て、左右前輪2、3のうちすべり率の低い方の駆動輪に
合せて、現在のすべり率が算出される(セレクトロ
ー)。逆に、P64でNOのときは、左右前輪2、3のう
ち、すべり率の大きい方の駆動輪に合せて、現在のすべ
り率が算出される(セレクトハイ)。なお、P62、P63で
NOのときも、P66に移行する。
上記P65でのセレクトハイは、すべり易い方の駆動輪
のすべりを抑制すべく現在のすべり率を算出することに
より、ブレーキの使用をより一層回避し得るものとな
る。逆に、上記P65でのセレクトローは、例えば左右駆
動輪が接地する路面の摩擦係数が異なるようなスプリッ
ト路を走行する場合に、ブレーキによってすべり易い方
の駆動輪のスリップを抑制しつつ、スリップ難い側の駆
動輪のグリップ力を生かした走行が行なえることとな
る。なお、このセレクトローの場合は、ブレーキの酷使
を避けるため、例えば一定時間に限定したり、あるいは
ブレーキが過熱した場合にこのセレクトローを中止させ
るようなバックアップ手段を講じておくとよい。
P65、P66の後は、P67において、現在のすべり率Sが
0.02よりも大きいか否かが判別される。このP67でYESの
ときは、P68において、スロットルバルブ13が、スリッ
プ制御のためにフィードバック制御される。勿論、この
ときは、スロットルバルブ13の目標スロットル開度(T
n)は、P65、P66で設定されたあるいは後述するP76で変
更された目標すべり率SETを実現すべく設定される。
P67でNOのときは、P69において、現在のすべり率Sが
0.01よりも大きいか否かが判別される。このP69でYESの
ときはP70において、前述した緩衝制御がなされる。ま
た、P69でNOのときは、P71において、前述したバックア
ップ制御がなされる。
一方、P61でYESのときは、P72へ移行して、スリップ
収束後所定時間(リカバリ制御を行う時間で、実施例で
は前述したように170msec)経過したか否かが判別され
る。P72でNOのときは、リカバリ制御を行うべく、P73以
降の処理がなされる。すなわち、先ず、P73で、自動車
1の最大加速度GMAXが計測される(第5図t2時点)。次
いで、P74において、このGMAXが得られるような最適ス
ロットル開度Tvoが設定される(第15図参照)。さら
に、P75において、変速機8の現在の変速段に応じて、P
74での最適スロットル開度Tvoが補正される。すなわ
ち、変速段の相違によって、駆動輪への付与トルクも異
なるため、P74ではある基準の変速段についての最適ス
ロットル開度Tvoを設定して、P75でこの変速段の相違を
補正するようにしてある。この後は、P76において、P73
でのGMAXより路面の摩擦係数を推定して、エンジン(ス
ロットル)、ブレーキによるスリップ制御の目標すべり
率SET、SBTを共に変更する。なお、この目標すべり率SE
T、SBTをどのように変更するのについては後述する。
前記P72でYESのときは、リカバリ制御終了ということ
で、前述したP62以降の処理がなされる。
第11図(ブレーキ制御) この第11図に示すフローチャートは、第6図のP11お
よびP16に対応している。
先ず、P80において、ブレーキ制御の目標すべり率SBT
が、走行負荷が大きくなるほど小さくなる方向に補正さ
れた後(第19図参照)、P81へ移行する。
P81においては、現在スタック中であるか否かが判別
される。P81でNOのときは、P82において、ブレーキの応
答速度Bn(SV1〜SV4の開閉制御用デューティ比に相当)
のリミット値(最大値)を、車速に応じた関数(車速が
大きい程大きくなる)として設定する。逆に、P81でYES
のときは、P83において、上記リミット値BLMを、P82の
場合よりも小さな一定値として設定する。なお、このP8
2、83の処理は、Bnとして前記(5)式によって算出さ
れたままのものを用いた場合に、ブレーキ液圧の増減速
度が速過ぎて振動発生等の原因になることを考慮してな
される。これに加えて、P83では、スタック中からの脱
出のため駆動輪への制動力が急激に変化するのが特に好
ましくないため、リミット値として小さな一定値として
ある。
P82あるいはP83の後に、P84において、すべり率S
が、ブレーキ制御の中止ポイントとなる0.09よりも大き
いか否かが判別される。P84でYESのときは、P85におい
て、右前輪用ブレーキ22の操作速度Bnが算出される(第
4図のI−PD制御におけるBnに相当)。この後、P86に
おいて、上記Bnが「0」より大きいか否かが判別され
る。この判別は、ブレーキの増圧方向を正、減圧方向を
負と考えた場合、増圧方向であるか否かの判別となる。
P86でYESのときは、P87において、Bn>BLMであるか否か
が判別される。P87でYESのときは、Bnをリミット値BLM
に設定した後、P89において、右ブレーキ22の増圧がな
される。また、P87でNOのときは、P85で設定されたBnの
値でもって、P89での増圧がなされる。
前記P86でNOのときは、Bnが「負」あるいは「0」で
あるので、P90でBnを絶対値化した後、P91〜93の処理を
経る。このP91〜P93は、右ブレーキ22の減圧を行うとき
であり、P87、P88、P89の処理に対応している。
P89、P93の後は、P94に移行して、左ブレーキ21につ
いても右ブレーキ22と同じように増圧あるいは減圧の処
理がなされる(P84〜P93に対応した処理)。
一方、P84でNOのときは、ブレーキ制御を中止すると
きなので、P95においてブレーキの解除がなされる。
なお、P85とP86との間において、駆動輪の実際の回転
数と目標回転数(実際のすべり率と目標すべり率)との
差が大きいときは、例えば前記(5)式における積分定
数KIを小さくするような補正を行なうことにより、ブレ
ーキのかけ過ぎによる加速の悪化やエンストを防止する
上で好ましいものとなる。
目標すべり率SET、SBTの変更(P76) 前記P76において変更されるエンジンとブレーキとの
目標すべり率SET、SBTは、P73で計測された最大加速度G
MAXに基づいて、例えば第17図に示すように変更され
る。この第17図から明らかなように、原則として、最大
加速度GMAXが大きいほど、目標すべり率SET、SBTを大き
くするようにしてある。そして、目標すべり率SET、SBT
には、それぞれリミット値を設けるようにしてある。
ここで、目標すべり率SET、SBTとの設定関係が、自動
車1の走りの感覚にどのように影響するかについて説明
する。
駆動輪のグリップ力 SETとSBTとを全体的に第17図上下方向にオフセットさ
せる。そして、グリップ力を大きくするには、上方向へ
のオフセットを行う。すなわち、スパイクタイヤの特性
として、第13図に示すように、すべり率0.2〜0.3位まで
は摩擦係数μは増加方向にあるため、すべり率0.2〜0.3
以下の範囲で使用する限り上述のことが言える。
加速感 加速感は、前述したように、SETとSBTとの「差」を変
えることによって変化するものであり、この点について
は既に詳述してあるのでその重複した説明は省略する。
加速のなめらかさ SBTを大きく、すなわちSETに比して相対的により大き
くする。このことは、エンジン制御の優先度を高めるこ
とにより、エンジン制御の利点である滑らかなトルク変
化をより効果的に発生させ得ることを意味する。
コーナリング中の安定性 SETを小さく、すなわちSETをSBTに比して相対的によ
り小さくする。このことは、第13図から明らかなよう
に、最大グリップ力が発生時点となるすべり率S=0.2
〜0.3以下の範囲では、目標すべり率を下げることによ
り、駆動輪のグリップ力を小さくする一方、横力を極力
大きくして、曲げる力を増大させることになる。
上述した〜の特性(モード)の選択は、例えば運
転者Dの好みによって、マニュアル式に選択させるよう
にすることができる(スイッチ71を利用したモード選
択)。
以上説明した実施例においては、目標すべり率とし
て、エンジン用のSETよりもブレーキ用のSBTの方を大き
く設定してあるので、小さなスリップ状態におけるブレ
ーキ制御が行なわれないためその使用頻度を少なくする
ことができると共に、大きなスリップ発生時においても
ブレーキ制御の負担が小さくなる。加えて、SBTとSETと
の間にブレーキによるスリップ制御を中止するポイント
(SBC)を設けてあるため、ブレーキ制御中止時におい
てはブレーキ圧が十分低下しているため、急激なトルク
変動がおこりにくいものとなる。勿論、本発明において
は、エンジンとブレーキとの各目標すべり率を同じ値と
して設定することもできる。
以上実施例について説明したが、本発明はこれに限ら
ず例えば次のような場合をも含むものである。
エンジン6の発生トルク調整としては、エンジンの
発生出力に最も影響を与える要因を変更制御するものが
好ましい。すなわち、いわゆる負荷制御によって発生ト
ルクを調整するものが好ましく、オットー式エンジン
(例えばガソリンエンジン)にあっては混合気量を調整
することにより、またディーゼルエンジンにあっては燃
料噴射量を調整することが好ましい。しかしながら、こ
の負荷制御に限らず、オットー式エンジンにあっては点
火時期を調整することにより、またディーゼルエンジン
にあっては燃料噴射時期を調整することにより行っても
よい。さらに、過給を行うエンジンにあっては、過給圧
を調整することにより行ってもよい。勿論、パワーソー
スとしては、内燃機関に限らず、電気モータであっても
よく、この場合の発生トルクの調整は、モータへの供電
電力を調整することにより行えばよい。
自動車1としては、前輪2、3が駆動輪のものに限
らず、後輪4、5が駆動輪のものであってもよくあるい
は4輪共に駆動輪とされるものであってもよい。
駆動輪のすべり状態を検出するには、実施例のよう
に駆動輪の回転数のように直接的に検出してもよいが、
この他、車両の状態に応じてこのすべり状態を予測、す
なわち間接的に検出するようにしてもよい。このような
車両の状態としては、例えば、パワーソースの発生トル
ク増加あるいは回転数増加、アクセル開度の変化、駆動
輪の回転変化の他、操舵状態(コーナリング)、車体の
浮上り状態(加速)、積載量等が考えられる。これに加
えて、大気温度の高低、雨、雪、アイスバーン等の路面
μを自動的に検出あるいはマニュアル式にインプットし
て、上記駆動輪のすべり状態の予測をより一層適切なも
のとすることもできる。
第2図のブレーキ液圧回路およびセンサ64、65、66
は、既存のSBA(アンチブレーキロックシステム)のも
のを利用し得る。
ブレーキによる制御比率を高めるには、エンジンに
よるスリップ制御を中止することにより行ってもよく、
またスリップ制御をある目標値をもって行なう場合は、
この目標値との偏差に対する制御量を変更することによ
りあるいは目標値そのものを変更することにより行なう
ようにしてもよい(制御量あるいは目標値の変更はブレ
ーキ用とエンジン用との少なくとも一方でよい)。要
は、駆動輪の回転トルク低減に寄与するエンジンの発生
トルク低下分とブレーキの制動分との比率を、走行負荷
の大きいときと小さいときで変更し得るものであれば適
宜の手法を採択し得る。
(発明の効果) 本発明は以上述べたことから明らかなように、ブレー
キによる制動力付与とパワーソースからの発生トルク低
下との両方を利用して駆動輪のスリップ制御を行う場合
に、走行負荷に対処して加速応答性の良好なものが得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す全体系統図。 第2図はブレーキ液圧の制御回路の一例を示す図。 第3図はスロットルバルブをフィードバック制御すると
きのブロック線図。 第4図はブレーキをフィードバック制御するときのブロ
ック線図。 第5図は本発明の制御例を図式的に示すグラフ。 第6図は〜第11図は本発明の制御例を示すフローチャー
ト。 第12図はスリップ制御を行なわないときのアクセル開度
に対するスロットル開度の特性を示すグラフ。 第13図は駆動輪のグリップ力と横力との関係を、すべり
率と路面に対する摩擦係数との関係で示すグラフ。 第14図はスリップ制御開始時のすべり率をハンドル舵角
に応じて補正するときの補正値を示すグラフ。 第15図はリカバリ制御時における最大加速度に対応した
最適スロットル開度を示すグラフ。 第16図は緩衝制御を行なうときのすべり率とスロットル
開度との関係を示すグラフ。 第17図は目標すべり率を決定する際に用いるマップの一
例を示すグラフ。 第18図は走行負荷の大きいときのブレーキ制御の比率を
高める補正(ブレーキ制御の目標すべり率SBTの低下)
を行っている状態を示すグラフ。 第19図は走行負荷とブレーキ用目標すべり率との関係を
示すグラフ。 第20図は本発明の全体構成図。 1:自動車 2、3:前輪(駆動輪) 4、5:後輪(従動輪) 6:エンジン(パワーソース) 7:クラッチ 8:変速機 13:スロットルバルブ 14:スロットルアクチュエータ 21〜24:ブレーキ 27:マスタシリンダ 30、31:液圧制御バルブ 32:ブレーキペダル 61:センサ(スロットル開度) 62:センサ(クラッチ) 63:センサ(変速段) 64、65:センサ(駆動輪回転数) 66:センサ(従動輪回転数) 67:センサ(アクセル開度) 68:センサ(ハンドル舵角) 69:アクセル 70:ハンドル 71:センサ(走行負荷) SV1〜SV4:電磁開閉バルブ U:コントロールユニット

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】駆動輪への付与トルクを制御することによ
    り駆動輪の路面に対するスリップが過大になるのを防止
    するようにした自動車のスリップ制御装置において、 トルク発生源となるパワーソースの発生トルクを調整す
    る発生トルク調整手段と、 駆動輪用ブレーキの制動力を調整する制動力調整手段
    と、 駆動輪の路面に対するスリップ状態を検出するスリップ
    検出手段と、 前記スリップ検出手段からの出力を受け、駆動輪のスリ
    ップが所定値以上のときは前記発生トルク調整手段と制
    動力調整手段とを作動させることによるパワーソースの
    発生トルク低下と駆動輪への制動力付与とによりスリッ
    プ制御を行うスリップ制御手段と、 自動車の走行負荷を検出する走行負荷検出手段と、 走行負荷の大きいときには、前記スリップ制御手段によ
    るスリップ制御を、前記ブレーキによるスリップ制御の
    比率が高まる方向に補正する補正手段と、 を備えていることを特徴とする自動車のスリップ制御装
    置。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項において、前記スリ
    ップ制御手段は、駆動輪のスリップが大きいときにのみ
    発生トルク低下と制動力付与とによりスリップ制御を行
    なうと共に、駆動輪のスリップが小さいときは制動力付
    与を行なうことなく発生トルクの調整のみによりスリッ
    プ制御を行なうようにされているもの。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項または第2項におい
    て、前記スリップ制御手段は駆動輪のスリップの大きさ
    が目標値となるようにスリップ制御を行なうようにさ
    れ、前記補正手段は走行負荷が大きいときにブレーキに
    よるスリップ制御の目標値を低下させるようにされてい
    るもの。
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