JP2585321B2 - 溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法 - Google Patents
溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、直接焼入れ−焼きもどし処理による厚鋼板
の製造方法に係り、特に溶接性に優れた一般用途の引張
強さ60kgf/mm2以上の高強度高靭性鋼板の製造方法に関
するものである。
の製造方法に係り、特に溶接性に優れた一般用途の引張
強さ60kgf/mm2以上の高強度高靭性鋼板の製造方法に関
するものである。
<従来の技術> 直接焼入れ−焼もどし処理により製造された鋼剤は、
通常の再加熱焼入れ−焼もどし処理により製造した鋼材
に比べて、オーステナイト中に十分添加元素が固溶しか
つ均質化され、また加工歪の導入などにより高強度が得
られやすいことが知られている。
通常の再加熱焼入れ−焼もどし処理により製造した鋼材
に比べて、オーステナイト中に十分添加元素が固溶しか
つ均質化され、また加工歪の導入などにより高強度が得
られやすいことが知られている。
しかしながら、直接焼入れ−焼もどし鋼材は、一般に
オーステナイト粒が粗大であり、また不適当な加工組織
の導入とあいまって低温靭性が低下してしまう欠点もあ
わせもっている。
オーステナイト粒が粗大であり、また不適当な加工組織
の導入とあいまって低温靭性が低下してしまう欠点もあ
わせもっている。
この直接焼入れ−焼もどし鋼材の低温靭性の改善を目
的に、これまでいくつかの技術が提案され、また試みら
れてもいる。
的に、これまでいくつかの技術が提案され、また試みら
れてもいる。
例えば、特開昭61−48517号公報においては、B添加
成分系鋼で、Ti,N,B量を微量コントロールし、かつ950
℃以下Ar3点以上の温度範囲での圧下量を設定すること
で、TiN,TiC,AlNの析出による靭性劣化を防止し、かつ
オーステナイトの微細化およびBによる焼入性の確保で
高靭性化を達成できることが提案されている。また、特
開昭61−295320号公報においては、Nb,B量の微量コント
ロールと950℃〜水冷開始温度までの圧下量の設定によ
り、オーステナイト粒の成長抑制と微細化、かつBの焼
入性の確保で高強度高靭性化を達成することが提案され
ている。これらはBの有効利用(焼入性の確保)を基本
とし、微量添加元素(Ti,Nb)のコントロールと未再結
晶オーステナイト域での細粒化効果をその骨子としたも
のである。
成分系鋼で、Ti,N,B量を微量コントロールし、かつ950
℃以下Ar3点以上の温度範囲での圧下量を設定すること
で、TiN,TiC,AlNの析出による靭性劣化を防止し、かつ
オーステナイトの微細化およびBによる焼入性の確保で
高靭性化を達成できることが提案されている。また、特
開昭61−295320号公報においては、Nb,B量の微量コント
ロールと950℃〜水冷開始温度までの圧下量の設定によ
り、オーステナイト粒の成長抑制と微細化、かつBの焼
入性の確保で高強度高靭性化を達成することが提案され
ている。これらはBの有効利用(焼入性の確保)を基本
とし、微量添加元素(Ti,Nb)のコントロールと未再結
晶オーステナイト域での細粒化効果をその骨子としたも
のである。
しかし、具体的展開においては、B添加系鋼であるた
め、鋼塊製造時のスラブ表面割れに留意しなければなら
ず、また未再結晶オーステナイト域圧延のためAr3点が
推定した値より上昇し、フェライトが析出し、また、B
の焼入性が不安定となり高強度が得られなくなってしま
うなど安定生産上の問題点も残存する。さらに低成分化
に伴い、溶接性は上昇するとしているが、B添加系成分
であるため仮付け時の割れなど溶接性に一部問題が残
る。
め、鋼塊製造時のスラブ表面割れに留意しなければなら
ず、また未再結晶オーステナイト域圧延のためAr3点が
推定した値より上昇し、フェライトが析出し、また、B
の焼入性が不安定となり高強度が得られなくなってしま
うなど安定生産上の問題点も残存する。さらに低成分化
に伴い、溶接性は上昇するとしているが、B添加系成分
であるため仮付け時の割れなど溶接性に一部問題が残
る。
また、B無添加鋼での類似技術としては、特開昭61−
23715号公報にみられるように、TiあるいはZr添加を必
要とし、Ar3+150℃以下Ar3以上の温度範囲の圧下量の
設定、さらに圧延後120秒以内にAr3−30℃以上の温度か
ら焼入れる技術が公知である。その技術要件は、比較的
高成分で、未再結晶オーステナイト域圧下を適用し、焼
入性と細粒化の確保、さらに加工歪の凍結を目的とした
焼入れ時間の設定にある。なおTi(Zr)添加は溶接部の
靭性確保(TiN or ZrNによる粒成長抑制)のため添加が
なされたものである。
23715号公報にみられるように、TiあるいはZr添加を必
要とし、Ar3+150℃以下Ar3以上の温度範囲の圧下量の
設定、さらに圧延後120秒以内にAr3−30℃以上の温度か
ら焼入れる技術が公知である。その技術要件は、比較的
高成分で、未再結晶オーステナイト域圧下を適用し、焼
入性と細粒化の確保、さらに加工歪の凍結を目的とした
焼入れ時間の設定にある。なおTi(Zr)添加は溶接部の
靭性確保(TiN or ZrNによる粒成長抑制)のため添加が
なされたものである。
しかし、本技術においては、Ti(Zr)添加のため上述
のスラブ表面割れ、またフェライト析出を抑制するため
の厳密な製造条件の管理、さらに加工歪の凍結のために
は比較的速い焼入れ冷却速度としなければならず、厚鋼
板の製造に不向きな問題点が多々ある。
のスラブ表面割れ、またフェライト析出を抑制するため
の厳密な製造条件の管理、さらに加工歪の凍結のために
は比較的速い焼入れ冷却速度としなければならず、厚鋼
板の製造に不向きな問題点が多々ある。
さらに、特公昭61−60891号公報においては、C,Si,Mn
系で加熱温度と圧延条件の厳密なコントロールそして短
時間の焼もどし処理で60kgf/mm2級鋼の製造を提案して
いるが、厚鋼板製造には現実的でなく、また溶接部の強
度,靭性の確保に難があると考えられる。
系で加熱温度と圧延条件の厳密なコントロールそして短
時間の焼もどし処理で60kgf/mm2級鋼の製造を提案して
いるが、厚鋼板製造には現実的でなく、また溶接部の強
度,靭性の確保に難があると考えられる。
<発明が解決しようとする問題点> 本発明は、スラブ製造時の表面割れや溶接時の割れを
心配することなく、かつ現実的な製造条件で比較的容易
に低コストで厚鋼板が製造でき、しかも溶接部の靭性は
吸収エネルギー(vE0)で15kgf・m/mm2以上を保証で
き、かつ母材の引張り強さが60kgf/mm2以上で遷移温度
(vTrs)が−60℃以下の高張力高靭性厚鋼板の製造方法
を提供するものである。
心配することなく、かつ現実的な製造条件で比較的容易
に低コストで厚鋼板が製造でき、しかも溶接部の靭性は
吸収エネルギー(vE0)で15kgf・m/mm2以上を保証で
き、かつ母材の引張り強さが60kgf/mm2以上で遷移温度
(vTrs)が−60℃以下の高張力高靭性厚鋼板の製造方法
を提供するものである。
<問題解決のための手段> 本発明は C:0.06〜0.15wt%,Si:0.05〜0.50wt%, Mn:0.6〜2.5wt%,Mo:0.03〜0.15wt%, V:0.02〜0.08wt%,Al:0.015〜0.100wt%, P:0.015wt%以下 を基本成分とし、さらに必要に応じて Ni:1.0wt%以下,Cu:1.0wt%以下, Cr:1.0wt%以下 の1種又は2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなる鋼を、1050〜1250℃の温度範囲に加熱,均熱
後、(Ar3+100)℃までの累積圧下率を50%以上とし、
かつ(Ar3+100)℃から圧延仕上げ温度である(Ar3−3
0)〜(Ar3+50)℃の温度範囲で30%以上の圧延を施
し、圧延完了後直ちに3〜15℃/Sの冷却速度で150℃以
下の温度まで冷却した後、Ac1点以下の温度で焼もどす
ことを特徴とする溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製
造方法である。
物からなる鋼を、1050〜1250℃の温度範囲に加熱,均熱
後、(Ar3+100)℃までの累積圧下率を50%以上とし、
かつ(Ar3+100)℃から圧延仕上げ温度である(Ar3−3
0)〜(Ar3+50)℃の温度範囲で30%以上の圧延を施
し、圧延完了後直ちに3〜15℃/Sの冷却速度で150℃以
下の温度まで冷却した後、Ac1点以下の温度で焼もどす
ことを特徴とする溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製
造方法である。
<作 用> 本発明者らは再結晶オーステナイト域での大圧下が、
微細かつ整粒オーステナイト粒の析出により有効である
ことを知見し、さらに未再結晶域圧延によりオーステナ
イト粒の一層の微細化をはかれば、スラブ割れや溶接割
れを起こし易いTiやBの添加を避けた成分系でも、フェ
ライト+ベイナイト組織で十分な強度と靭性を有し、製
造条件の緩和も可能であり、溶接部の靭性を害する島状
マルテンサイトの析出もしない成分系があることを見い
出した。
微細かつ整粒オーステナイト粒の析出により有効である
ことを知見し、さらに未再結晶域圧延によりオーステナ
イト粒の一層の微細化をはかれば、スラブ割れや溶接割
れを起こし易いTiやBの添加を避けた成分系でも、フェ
ライト+ベイナイト組織で十分な強度と靭性を有し、製
造条件の緩和も可能であり、溶接部の靭性を害する島状
マルテンサイトの析出もしない成分系があることを見い
出した。
以下に、まず化学成分の限定理由を述べる。
Cは、安価で所定の強度を確保できるため、0.06wt%
以上必要であるが、0.15wt%を超えると母材の靭性およ
び溶接性の靭性が劣化するため0.06〜0.15wt%の範囲と
する。
以上必要であるが、0.15wt%を超えると母材の靭性およ
び溶接性の靭性が劣化するため0.06〜0.15wt%の範囲と
する。
Siは、製鋼時の脱酸剤として、また固溶強化による強
度確保のため0.05wt%以上が必要であるが、0.50wt%を
超えると、鋼板と溶接部の靭性が劣化するため、0.05〜
0.50wt%の範囲とする。
度確保のため0.05wt%以上が必要であるが、0.50wt%を
超えると、鋼板と溶接部の靭性が劣化するため、0.05〜
0.50wt%の範囲とする。
Mnは、焼入性を上げ強度の確保のため、0.60wt%以上
必要であるが、2.5wt%を超えると鋼板加工性や溶接時
の低温割れに不利となるため、0.60〜2.5wt%の範囲と
する。
必要であるが、2.5wt%を超えると鋼板加工性や溶接時
の低温割れに不利となるため、0.60〜2.5wt%の範囲と
する。
Moは、本発明において重要な役割をもつ元素であり、
第1図に示すごとく、本発明範囲のC量と圧延条件(ス
ラブ加熱温度1150℃,990℃以上の圧下率55%,900〜750
℃の圧下率36%,圧延仕上げ温度750℃,冷却速度10℃/
S)の場合、0.03wt%以上で強度確保に有効である。し
かし、0.15wt%を超えると鋼板靭性が低下し、また溶接
部に島状マルテンサイトの析出が増加し靭性が劣化する
ため、0.03〜0.15wt%の範囲とする。
第1図に示すごとく、本発明範囲のC量と圧延条件(ス
ラブ加熱温度1150℃,990℃以上の圧下率55%,900〜750
℃の圧下率36%,圧延仕上げ温度750℃,冷却速度10℃/
S)の場合、0.03wt%以上で強度確保に有効である。し
かし、0.15wt%を超えると鋼板靭性が低下し、また溶接
部に島状マルテンサイトの析出が増加し靭性が劣化する
ため、0.03〜0.15wt%の範囲とする。
Vは、焼入れ性を向上し、かつ焼もどし軟化抵抗を増
大させるので強度確保のため0.02wt%以上が必要である
が0.08wt%を超えると溶接部の靭性が劣化するため0.02
〜0.08wt%の範囲とする。
大させるので強度確保のため0.02wt%以上が必要である
が0.08wt%を超えると溶接部の靭性が劣化するため0.02
〜0.08wt%の範囲とする。
Alは、脱酸作用があり0.015wt%以上必要であるが、
0.100wt%を超えると鋼板靭性と溶接部靭性が劣化する
ため0.015〜0.100wt%の範囲とする。
0.100wt%を超えると鋼板靭性と溶接部靭性が劣化する
ため0.015〜0.100wt%の範囲とする。
Pは、母材および溶接部靭性を劣化させ、また焼もど
し脆化を助長するため、0.015wt%以下とする。
し脆化を助長するため、0.015wt%以下とする。
さらに、上記成分に加えて、鋼板および溶接部の強
度,靭性の改善を目的とし、下記成分を1種又は2種以
上添加できる。
度,靭性の改善を目的とし、下記成分を1種又は2種以
上添加できる。
Niは、鋼板および溶接部の強度,靭性の向上に効果が
あるが、経済性の点から1.0wt%以下とする。
あるが、経済性の点から1.0wt%以下とする。
Cuは、鋼板の強度上昇に効果があるが、多過ぎると熱
間加工性および溶接性が低下するため、その上限を1.0w
t%とする。
間加工性および溶接性が低下するため、その上限を1.0w
t%とする。
Crは、鋼板および溶接部の強度上昇に効果があるが、
多すぎると溶接性の低下およびSR割れ感受性を高めるた
め、その上限を1.0wt%とする。
多すぎると溶接性の低下およびSR割れ感受性を高めるた
め、その上限を1.0wt%とする。
次に、加熱,圧延条件の限定理由について述べる。
直接焼入れ−焼もどし鋼材の靭性向上には細粒化の効
果が有効である。ここで、圧延前の鋼片加熱温度とし
て、高すぎると初期粒が極めて粗大となり、後の圧延に
よっても十分細粒化できない。また、低すぎると添加元
素の固溶や均質なオーステナイト組織を得ることが困難
となることから、1050〜1250℃の範囲とする。この場
合、各添加元素が固溶し均質化する低温側の加熱温度が
望ましい。
果が有効である。ここで、圧延前の鋼片加熱温度とし
て、高すぎると初期粒が極めて粗大となり、後の圧延に
よっても十分細粒化できない。また、低すぎると添加元
素の固溶や均質なオーステナイト組織を得ることが困難
となることから、1050〜1250℃の範囲とする。この場
合、各添加元素が固溶し均質化する低温側の加熱温度が
望ましい。
次に、加熱温度以下(Ar3+100)℃以上までの高温再
結晶域での圧下は、圧延,再結晶の繰り返しでオーステ
ナイト粒の微細,整粒化に非常に有効であるが、累積圧
下率が50%未満では、微細,整粒化が十分でなく、その
後の圧延によっても混粒的な伸長オーステナイト粒とな
り鋼板靭性のバラつきの原因となるため、50%以上の累
積圧下率が必要である。
結晶域での圧下は、圧延,再結晶の繰り返しでオーステ
ナイト粒の微細,整粒化に非常に有効であるが、累積圧
下率が50%未満では、微細,整粒化が十分でなく、その
後の圧延によっても混粒的な伸長オーステナイト粒とな
り鋼板靭性のバラつきの原因となるため、50%以上の累
積圧下率が必要である。
さらに、(Ar3+100)℃以下から、圧延仕上げ温度で
ある(Ar3−30)〜(Ar3+50)℃までの未再結晶域(一
部,二相域)においては、伸長オーステナイトを有効に
生成し、かつ変形帯の導入によって、さらなる微細化を
達成するため、その累積圧下率の下限を30%とした。ま
た、圧下率は大きい程靭性向上に効果があるので、圧下
率の上限は圧延可能の範囲とする。
ある(Ar3−30)〜(Ar3+50)℃までの未再結晶域(一
部,二相域)においては、伸長オーステナイトを有効に
生成し、かつ変形帯の導入によって、さらなる微細化を
達成するため、その累積圧下率の下限を30%とした。ま
た、圧下率は大きい程靭性向上に効果があるので、圧下
率の上限は圧延可能の範囲とする。
ここで、従来技術では高強度鋼板を製造する場合、圧
延仕上げ温度をAr3以上とし、フェライト析出を極力避
ける条件が設定されている。しかし、本発明において
は、一部フェライトが析出しても圧延によってフェライ
ト中に加工歪が蓄積され、かつフェライト中にMo炭化物
が析出するため強度低下は少なく、また十分粒が微細化
されているため加工歪や炭化物析出による靭性低下も少
ないので、圧延仕上げ温度は(Ar3−30)〜(Ar3+50)
℃の温度域でよい。なお、仕上げ温度が低すぎるとフェ
ライト率が多くなりすぎ強度低下や集合組織が発達し鋼
板の異方性が強くなること、また高すぎると伸長オース
テナイト粒が十分形成されないことから上述の温度範囲
とした。
延仕上げ温度をAr3以上とし、フェライト析出を極力避
ける条件が設定されている。しかし、本発明において
は、一部フェライトが析出しても圧延によってフェライ
ト中に加工歪が蓄積され、かつフェライト中にMo炭化物
が析出するため強度低下は少なく、また十分粒が微細化
されているため加工歪や炭化物析出による靭性低下も少
ないので、圧延仕上げ温度は(Ar3−30)〜(Ar3+50)
℃の温度域でよい。なお、仕上げ温度が低すぎるとフェ
ライト率が多くなりすぎ強度低下や集合組織が発達し鋼
板の異方性が強くなること、また高すぎると伸長オース
テナイト粒が十分形成されないことから上述の温度範囲
とした。
次に、焼入れ時の冷却速度を15〜3℃/Sとしたのは、
本発明に規定する化学成分鋼がベイナイト単相あるいは
フェライト+ベイナイト組織鋼となる焼入れ冷却速度の
範囲であり、これより速すぎるとマルテンサイト主体と
なり、また遅すぎると上部ベイナイト主体となりいずれ
も靭性が劣化してしまうからである。なお、通常の水冷
において15〜3℃/Sの冷却速度とは25〜80mm厚の鋼板を
焼入れた場合に相当する。
本発明に規定する化学成分鋼がベイナイト単相あるいは
フェライト+ベイナイト組織鋼となる焼入れ冷却速度の
範囲であり、これより速すぎるとマルテンサイト主体と
なり、また遅すぎると上部ベイナイト主体となりいずれ
も靭性が劣化してしまうからである。なお、通常の水冷
において15〜3℃/Sの冷却速度とは25〜80mm厚の鋼板を
焼入れた場合に相当する。
さらに、150℃以下まで焼入れを行うのは、ベイナイ
ト変態が350℃近傍で生じるので、この温度以下にまで
冷却することで十分な硬化組織を得るためである。加え
て、フェライト析出により第二相に成分が濃縮し、変態
点の低下も生じうること、また製造上の管理のし易さか
ら150℃以下とした。
ト変態が350℃近傍で生じるので、この温度以下にまで
冷却することで十分な硬化組織を得るためである。加え
て、フェライト析出により第二相に成分が濃縮し、変態
点の低下も生じうること、また製造上の管理のし易さか
ら150℃以下とした。
その後、残留応力の低減,延靭性の向上を目的とし
た、Ac1以下の焼もどしを実施する。
た、Ac1以下の焼もどしを実施する。
以上、本発明の骨子としては、スラブ加熱温度の設定
と再結晶域での十分な圧下により、細整粒オーステナイ
ト組織とし、引続き未再結晶域圧下により伸展微細オー
ステナイト粒と変形帯を導入した組織にした後、焼入れ
し、ベイナイト主体あるいはフェライト+ベイナイト組
織を現出することにある。そして、所望する高強度化の
ためには、C量の設定とMo量の微量添加コントロールで
可能となり、あわせて、溶接部の靭性も島状のマルテン
サイトが析出しない成分範囲のため優れたものとなる。
と再結晶域での十分な圧下により、細整粒オーステナイ
ト組織とし、引続き未再結晶域圧下により伸展微細オー
ステナイト粒と変形帯を導入した組織にした後、焼入れ
し、ベイナイト主体あるいはフェライト+ベイナイト組
織を現出することにある。そして、所望する高強度化の
ためには、C量の設定とMo量の微量添加コントロールで
可能となり、あわせて、溶接部の靭性も島状のマルテン
サイトが析出しない成分範囲のため優れたものとなる。
<実施例> 真空溶解法で、第1表に示す各成分鋼塊を溶製し、所
定の条件で圧延、焼入れし15mm厚鋼板とした。これら各
種鋼板を630℃で焼もどし処理し、衝撃試験片と丸棒引
張試験片を採取し、材質特性の調査を行った。その得ら
れた結果を第2表に示す。さらに、これら鋼板を第2図
に示す要領で溶接し、溶接部より衝撃試験片を採取し、
溶接部の靭性を調査した。その結果を第2表にあわせて
示す。
定の条件で圧延、焼入れし15mm厚鋼板とした。これら各
種鋼板を630℃で焼もどし処理し、衝撃試験片と丸棒引
張試験片を採取し、材質特性の調査を行った。その得ら
れた結果を第2表に示す。さらに、これら鋼板を第2図
に示す要領で溶接し、溶接部より衝撃試験片を採取し、
溶接部の靭性を調査した。その結果を第2表にあわせて
示す。
なお、第1表中の鋼A〜Iは、TiやBを含まない成分
系であり鋼塊表面割れは全ての鋼塊でみられなかった。
系であり鋼塊表面割れは全ての鋼塊でみられなかった。
第2表からわかるように、本発明成分範囲より低成分
系の場合(A−1,A−2)は強度不良となり、また高成
分系の場合(D−1,D−2,E−1,E−2,E−3およびF−
1)は、鋼板靭性および溶接部靭性が不良となることが
わかる。
系の場合(A−1,A−2)は強度不良となり、また高成
分系の場合(D−1,D−2,E−1,E−2,E−3およびF−
1)は、鋼板靭性および溶接部靭性が不良となることが
わかる。
次に、本発明成分範囲内の成分系においては、焼入れ
冷却速度が速すぎる場合(B−1)や、圧下率配分が本
発明範囲をはずれる場合(C−3,C−4,G−2)、さらに
圧延仕上げ温度が低すぎる場合(C−5)や冷却速度が
遅すぎる場合(I−2)には鋼板の強度あるいは靭性が
不良となることがわかる。なお、溶接部の靭性は本発明
範囲の成分系であればいずれも良好な値を有することが
わかる。
冷却速度が速すぎる場合(B−1)や、圧下率配分が本
発明範囲をはずれる場合(C−3,C−4,G−2)、さらに
圧延仕上げ温度が低すぎる場合(C−5)や冷却速度が
遅すぎる場合(I−2)には鋼板の強度あるいは靭性が
不良となることがわかる。なお、溶接部の靭性は本発明
範囲の成分系であればいずれも良好な値を有することが
わかる。
以上から、本発明範囲の成分と圧延条件の組合せによ
り、鋼板の強度,靭性が優れ、かつ溶接部の靭性も良好
な厚鋼板が製造可能となることがわかる。
り、鋼板の強度,靭性が優れ、かつ溶接部の靭性も良好
な厚鋼板が製造可能となることがわかる。
<発明の効果> 以上の如く、本発明は製造 副原料コストが低い直接焼入れ−焼もどし鋼板の製造
法であり、溶接性の優れた引張強さが60kgf/mm2級以上
の高強度高靱性厚鋼板の製造を可能にしたものであり産
業上の効果は顕著なものがある。
法であり、溶接性の優れた引張強さが60kgf/mm2級以上
の高強度高靱性厚鋼板の製造を可能にしたものであり産
業上の効果は顕著なものがある。
なお、本発明鋼板の利用分野としては、原油タンク,
常温から−40℃で使用される各種圧力容器,橋梁,船
舶,海洋構造物,建機・産機,ペンストックなどがあ
る。
常温から−40℃で使用される各種圧力容器,橋梁,船
舶,海洋構造物,建機・産機,ペンストックなどがあ
る。
第1図は機械的性質におよぼすCとMo量の影響を示す
図、第2図は溶接時の開先形状と溶接条件を示す図であ
る。
図、第2図は溶接時の開先形状と溶接条件を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−235430(JP,A) 特開 昭58−34131(JP,A) 特開 昭55−76020(JP,A)
Claims (2)
- 【請求項1】C:0.06〜0.15wt%,Si:0.05〜0.50wt% Mn:0.6〜2.5wt%,Mo:0.03〜0.15wt% V:0.02〜0.08wt%,Al:0.015〜0.100wt% P:0.015wt%以下 を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、10
50〜1250℃の温度範囲に加熱,均熱後、(Ar3+100)℃
までの累積圧下率を50%以上とし、かつ(Ar3+100)℃
から圧延仕上げ温度である(Ar3−30)〜(Ar3+50)℃
の温度範囲で30%以上の圧延を施し、圧延完了後直ちに
3〜15℃/Sの冷却速度で150℃以下の温度まで冷却した
後、Ac1点以下の温度で焼もどすことを特徴とする溶接
性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法。 - 【請求項2】C:0.06〜0.15wt%,Si:0.05〜0.50wt% Mn:0.6〜2.5wt%,Mo:0.03〜0.15wt% V:0.02〜0.08wt%,Al:0.015〜0.100wt% P:0.015wt%以下 を基本成分とし、さらに Ni:1.0wt%以下,Cu:1.0wt%以下, Cr:1.0wt%以下 の1種又は2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなる鋼を、1050〜1250℃の温度範囲に加熱,均熱
後、(Ar3+100)℃までの累積圧下率を50%以上とし、
かつ(Ar3+100)℃から圧延仕上げ温度である(Ar3−3
0)〜(Ar3+50)℃の温度範囲で30%以上の圧延を施
し、圧延完了後直ちに3〜15℃/Sの冷却速度で150℃以
下の温度まで冷却した後、Ac1点以下の温度で焼もどす
ことを特徴とする溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製
造方法。
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JP62307495A JP2585321B2 (ja) | 1987-12-07 | 1987-12-07 | 溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法 |
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JP62307495A JP2585321B2 (ja) | 1987-12-07 | 1987-12-07 | 溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法 |
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JPH01149923A JPH01149923A (ja) | 1989-06-13 |
JP2585321B2 true JP2585321B2 (ja) | 1997-02-26 |
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JP62307495A Expired - Fee Related JP2585321B2 (ja) | 1987-12-07 | 1987-12-07 | 溶接性の優れた高強度高靭性鋼板の製造方法 |
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JP4226626B2 (ja) | 2005-11-09 | 2009-02-18 | 新日本製鐵株式会社 | 音響異方性が小さく溶接性に優れる、板厚中心部も含めて降伏応力450MPa以上かつ引張強さ570MPa以上の高張力鋼板およびその製造方法 |
KR101343747B1 (ko) * | 2008-12-26 | 2013-12-19 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 용접열 영향부 및 모재부의 내연성 균열 발생 특성이 우수한 강재 및 그 제조 방법 |
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