JP2580838B2 - 車両の出力制御方法 - Google Patents

車両の出力制御方法

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JP2580838B2 JP2127019A JP12701990A JP2580838B2 JP 2580838 B2 JP2580838 B2 JP 2580838B2 JP 2127019 A JP2127019 A JP 2127019A JP 12701990 A JP12701990 A JP 12701990A JP 2580838 B2 JP2580838 B2 JP 2580838B2
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【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は車両の出力制御方法に関し、特に旋回中の車
両に発生する横向きの加速度である横加速度に応じて車
両の出力制御を行なう場合に適用して有用なものであ
る。
〈従来の技術〉 旋回路を走行中の車両には、その走行方向と直角な方
向の横加速度に対応した遠心力が発生するため、旋回路
に対する車両の走行速度が高すぎる場合には、タイヤの
グリップ力の限界を越えて車体が横滑りを起こす虞があ
る。
このような場合、機関の出力を適正に下げて旋回路に
対応した旋回半径で車両を安全に走行させるためには、
特に旋回路の出口が確認できないような場合、或いは旋
回路の曲率半径が次第に小さくなっているような場合、
極めて高度な運転技術が要求される。
いわゆるアンダーステアリング傾向を有する一般的な
車両においては、車両に加わる横加速度の増大に伴って
操舵量を漸増させる必要があるが、この横加速度が各車
両に特有の或る値を越えると、操舵量が急増して先にも
述べたように安全な旋回走行が困難となったり、或いは
不可能となる特性を持っている。特に、アンダーステア
リング傾向の強いフロントエンジン前輪駆動形式の車両
においては、この傾向が顕著となることは周知の通りで
ある。
このようなことから、車両の横加速度を検出し、車両
が旋回困難或いは旋回不能となる旋回限界の前に、運転
者によるアクセルペダルの踏み込み量とは関係無く、強
制的に機関の出力を低下させるようにした出力制御装置
が考えられ、運転者が必要に応じてこの出力制御装置を
利用した走行(以下旋回制御モードと称す)と、アクセ
ルペダルの踏み込み量に対応して機関の出力を制御する
通常の走行とを選択できるようにしたものが発表されて
いる。
このような観点に基づいた車両の出力制御に関するも
のの一種として、車両の横加速度を検出し、この車両が
旋回困難或いは旋回不可能となる前に運転者によるアク
セルペダルの踏み込み量とは関係なく、横加速度の大き
さに応じて強制的に機関の出力を低下させる出力制御装
置が知られている。
即ち、この種の出力制御装置は、運転者による操作と
は独立に機関の駆動トルクを低減させるトルク低減手段
と、横加速度に応じて前記機関の目標駆動トルクを設定
し且つ前記機関の駆動トルクがこの目標駆動トルクとな
るように前記トルク低減手段の作動を制御する旋回制御
ユニットとを具えている。
〈発明が解決しようとする課題〉 上記出力制御装置における旋回制御モードの選択時
に、横加速度の発生が検出された場合は常に、旋回制御
により機関の駆動トルクが低減される。
一方、低車速の場合には、旋回制御を行なうまでもな
く、運転者の操舵技術だけでも充分良好な旋回ができる
ばかりでなく、混んだ交差点での右左折の場合には、運
転者のアクセル操作に対応する加速が得られた方が良い
場合がある。
本発明は、上記従来技術に鑑み、旋回制御モードの選
択時における低車速での旋回時における操縦性を良好に
確保し得る車両の出力制御方法を提供することを目的と
する。
〈課題を解決するための手段〉 上記目的を達成するための本発明は、運転者による操
作とは独立に機関の駆動トルクを低減可能なトルク低減
手段と、操舵輪の舵角を検出する舵角検出手段と、車両
の速度を検出する車速検出手段と、これら舵角検出手段
及び車速検出手段からの検出信号に基づき前記車両に発
生すると推定される目標横加速度を演算する目標横加速
度演算手段と、前記目標横加速度に基づき前記車両が前
記舵角で旋回可能な目標前後加速度を演算する目標前後
加速度演算手段と、前記目標前後加速度を得るために必
要な基準駆動トルクを演算する基準駆動トルク演算手段
と、アクセルペダルの踏み込み量に応じて要求駆動トル
クを求める要求駆動トルク設定手段と、出力制御中には
常に前記基準駆動トルク及び前記要求駆動トルクに基づ
き目標駆動トルクを設定する目標駆動トルク演算手段
と、前記駆動トルクが前記目標駆動トルクとなるように
前記トルク低減手段の作動を制御する旋回制御ユニット
を備え、 前記車両が所定値以下の速度で走行しているときには
前記旋回制御ユニットによる前記トルク低減手段の制御
を中断するようにしたことを特徴とする。
なお、機関の駆動トルクを低下させるトルク低減手段
としては、点火時期を遅らせたり吸入空気量や燃料供給
量を少なくしたり、或いは燃料供給を中止したりするこ
とが一般的であるが、特殊なものとしては機関の圧縮比
を下げるようにしたもの等も採用することができる。
〈作用〉 上記構成によれば、旋回中の車両に発生する横向きの
加速度である横加速度を、実際に車両に作用する横加速
度を検出するよりも速く、ハンドルを切ると同時に車両
の速度および舵角に基づき車両に発生すると推定される
目標横加速度として演算し、この目標横加速度に基づき
車両がその舵角で旋回可能な目標前後加速度を求め、そ
の目標前後加速度となるような基準駆動トルクを求め、
またアクセルペダルの踏み込み量に応じた要求駆動トル
クを設定し、高速旋回時のような出力制御中には常にこ
れら基準駆動トルク及び要求駆動トルクに基づき求めら
れた目標駆動トルクとなるようにトルク低減手段を制御
することができる。更に、本発明によれば、車両の旋回
中であっても低車速時には旋回制御ユニットによるトル
ク低減手段の制御が中断されるので、運転者のアクセル
操作に応じた駆動トルクで機関が駆動される。
〈実施例〉 本発明による車両の出力制御方法を実現する装置を前
進4段後進1段の自動変速機を組み込んだ前輪駆動形式
の車両に応用した一実施例の概念を表す第1図及びその
車両の概略構造を表す第2図に示すように、機関11の出
力軸12には油圧式自動変速機13の入力軸14が接続してい
る。この油圧式自動変速機13は、運転者による図示しな
いセレクトレバーの選択位置と車両の運転状態とに応じ
て機関11の運転状態を制御する電子制御ユニット(以
下、これをECUと記載する)15からの指令に基づき、油
圧制御装置16を介して所定の変速段を自動的に選択する
ようになっている。この油圧式自動変速機13の具体的な
構成や作用等については、例えば特開昭58−54270号公
報や特開昭61−31749号公報等では既に周知の通りであ
り、油圧制御装置16内には油圧式自動変速機13の一部を
構成する複数の摩擦係合要素の係合操作と開放操作とを
行うための図示しない一対のシフト制御用電磁弁が組み
込まれ、これらシフト制御用電磁弁に対する通電のオ
ン,オフ操作をECU15により制御することにより、前進
4段後進1段の内の任意の変速段への変速動作を滑らか
に達成するものである。
機関11の燃焼室17に連結された吸気管18の途中には、
この吸気管18によって形成される吸気通路19の開度を変
化させ、燃焼室17内に供給される吸入空気量を調整する
スロットル弁20を組み込んだスロットルボディ21が介装
されている。第1図及び筒状をなすこのスロットルボデ
ィ21の部分の拡大断面構造を表す第3図に示すように、
スロットルボディ21にはスロットル弁20を一体に固定し
たスロットル軸22の両端部が回動自在に支持されてい
る。吸気通路19内に突出するこのスロットル軸22の一端
部には、アクセルレバー23とスロットルレバー24とが同
軸状をなして嵌合されている。
前記スロットル軸22とアクセルレバー23の筒部25との
間には、ブシュ26及びスペーサ27が介装され、これによ
ってアクセルレバー23はスロットル軸22に対して回転自
在となっている。更に、スロットル軸22の一端側に取り
付けた座金28及びナット29により、スロットル軸22から
アクセルレバー23が抜け外れるのを未然に防止してい
る。又、このアクセルレバー23と一体のケーブル受け30
には、運転者によって操作されるアクセルペダル31がケ
ーブル32を介して接続しており、アクセルペダル31の踏
み込み量に応じてアクセルレバー23がスロットル軸22に
対して回動するようになっている。
一方、前記スロットルレバー24はスロットル軸22と一
体に固定されており、従ってこのスロットルレバー24を
操作することにより、スロットル弁20がスロットル軸22
と共に回動する。又、アクセルレバー23の筒部25にはカ
ラー33がこれと同軸一体に嵌着されており、前記スロッ
トルレバー24の先端部には、このカラー33の一部に形成
した爪部34に係止し得るストッパ35が形成されている。
これら爪部34とストッパ35とは、スロットル弁20が開く
方向にスロットルレバー24を回動させるか、或いはスロ
ットル弁20が閉まる方向にアクセルレバー23を回動させ
た場合に相互に係止するような位置関係に設定されてい
る。
前記スロットルボディ21とスロットルレバー24との間
には、スロットルレバー24のストッパ35をアクセルレバ
ー23と一体のカラー33の爪部34に押し付けてスロットル
弁20を開く方向に付勢するねじりコイルばね36が、スロ
ットル軸22に嵌合された筒状をなす一対のばね受け37,3
8を介し、このスロットル軸22と同軸状をなして装着さ
れている。又、スロットルボディ21から突出するストッ
パピン39とアクセルレバー23との間にも、前記カラー33
の爪部34をスロットルレバー24のストッパ35に押し付け
てスロットル弁20を閉じる方向に付勢し、アクセルペダ
ル31に対してディテント感を付与するためのねじりコイ
ルばね40が前記カラー33を介してアクセルレバー23の筒
部25にスロットル軸22と同軸状をなして装着されてい
る。
前記スロットルレバー24の先端部には、基端をアクチ
ュエータ41のダイヤフラム42に固定した制御棒43の先端
部が連結されている。このアクチュエータ41内に形成さ
れた圧力室44には、前記ねじりコイルばね36と共にスロ
ットルレバー24のストッパ35をカラー33の爪部34に押し
付けてスロットル弁20を開く方向に付勢する圧縮コイル
ばね45が組み込まれている。そして、これら二つのばね
36,45のばね力の和よりも、前記ねじりコイルばね40の
ばね力のほうが大きく設定され、これによりアクセルペ
ダル31を踏み込まない限り、スロットル弁20は開かない
ようになっている。
前記スロットルボディ21の下流側に連結されて吸気通
路19の一部を形成するサージタンク46には、接続配管47
を介してバキュームタンク48が連通しており、このバキ
ュームタンク48と接続配管47との間には、バキュームタ
ンク48からサージタンク46への空気の移動のみ許容する
逆止め弁49が介装されている。これにより、バキューム
タンク48内の圧力はサージタンク46内の最低圧力とほぼ
等しい負圧に設定される。
これらバキュームタンク48内と前記アクチュエータ41
の圧力室44とは、配管50を介して連通状態となってお
り、この配管50の途中には非通電時閉塞型の第一のトル
ク制御用電磁弁51が設けられている。つまり、このトル
ク制御用電磁弁51には配管50を塞ぐようにプランジャ52
を弁座53に付勢するばね54が組み込まれている。
又、前記第一のトルク制御用電磁弁51とアクチュエー
タ41との間の配管50には、スロットル弁20よりも上流側
の吸気通路19に連通する配管55が接続している。そし
て、この配管55の途中には非通電時開放型の第二のトル
ク制御用電磁弁56が設けられている。つまり、このトル
ク制御用電磁弁56には配管55を開放するようにプランジ
ャ57を付勢するばね58が組み込まれている。
前記二つのトルク制御用電磁弁51,56には、前記ECU15
がそれぞれ接続し、このECU15からの指令に基づいてト
ルク制御用電磁弁51,56に対する通電のオン,オフがデ
ューティ制御されるようになっており、本実施例ではこ
れら全体で本発明のトルク低減手段を構成している。
例えば、トルク制御用電磁弁51,56のデューティ率が
0%の場合、アクチュエータ41の圧力室44がスロットル
弁20よりも上流側の吸気通路19内の圧力とほぼ等しい大
気圧となり、スロットル弁20の開度はアクセルペダル31
の踏み込み量に一対一で対応する。逆に、トルク制御用
電磁弁51,56のデューティ率が100%の場合、アクチュエ
ータ41の圧力室44がバキュームタンク48内の圧力とほぼ
等しい負圧となり、制御棒43が第1図中、左斜め上方に
引き上げられる結果、スロットル弁20はアクセルペダル
31の踏み込み量に関係なく閉じられ、機関11の駆動トル
クが強制的に低減させられた状態となる。このようにし
て、トルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を調整す
ることにより、アクセルペダル31の踏み込み量に関係な
くスロットル弁20の開度を変化させ、機関11の駆動トル
クを任意に調整することができる。
又、本実施例ではスロットル弁20の開度をアクセルペ
ダル31とアクチュエータ41とで同時に制御するようにし
たが、吸気通路19内に二つのスロットル弁を直列に配列
し、一方のスロットル弁をアクセルペダル31にのみ接続
すると共に他方のスロットル弁をアクチュエータ41にの
み接続し、これら二つのスロットル弁をそれぞれ独立に
制御すること等も可能である。
一方、前記吸気管18の下流端側には、機関11の燃焼室
17内へ図示しない燃料を吹き込む燃料噴射装置の燃料噴
射ノズル59が機関11の各気筒(本実施例では、四気筒の
内燃機関を想定している)に対応してそれぞれ設けら
れ、ECU15によりデューティ制御される電磁弁60を介し
て燃料が燃料噴射ノズル59に供給される。つまり、電磁
弁60の開弁時間を制御することで、燃焼室17に対する燃
料の供給量が調整され、所定の空燃比となって燃焼室17
内で点火プラグ61により点火されるようになっている。
前記ECU15には、機関11に取り付けられて機関回転数
を検出するためのクランク角センサ62と、前記油圧式自
動変速機13の出力軸63の回転数を検出して駆動輪である
左右一対の前輪64,65の平均周速を算出するための前輪
回転センサ66と、スロットルボディ21に取り付けられて
スロットルレバー24の開度を検出するスロットル開度セ
ンサ67と、スロットル弁20の全閉状態を検出するアイド
ルスイッチ68の他、吸気管18の先端部のエアクリーナ69
内に組付けられて機関11の燃焼室17へと流れる空気量を
検出するカルマン渦流量計等のエアフローセンサ70と、
機関11に組付けられてこの機関11の冷却水温を検出する
水温センサ71と、排気管72の途中に組付けられて排気通
路73内を流れる排気ガスの温度を検出する排気温センサ
74とイグニッションキースイッチ75とが接続している。
そして、これらクランク角センサ62及び前輪回転セン
サ66及びスロットル開度センサ67及びアイドルスイッチ
68及びエアフローセンサ70及び水温センサ71及び排気温
センサ74及びイグニッションキースイッチ75からの出力
信号がそれぞれECU15に送られるようになっている。
又、機関11の目標駆動トルクを算出するトルク演算ユ
ニット(以下、これをTCLと呼称する)76には、前記ス
ロットル開度センサ67及びアイドルスイッチ68と共にス
ロットルボディ21に取り付けられてアクセルレバー23の
開度を検出するアクセル開度センサ77と、従動輪である
左右一対の後輪78,79の回転速度をそれぞれ検出する後
輪回転センサ80,81と、車両82の直進状態を基準として
旋回時における操舵軸83の旋回角を検出する操舵角セン
サ84と、操舵軸83と一体の操舵ハンドル85の360度毎の
正常位相(車両82がほぼ直進状態となるような位相がこ
れに含まれる)を検出する操舵軸基準位置センサ86とが
接続し、これらセンサ77,80,81,84,86からの出力信号が
それぞれ送られる。
ECU15とTCL76とは、通信ケーブル87を介して結ばれて
おり、ECU15からは機関回転数や油圧式自動変速機13の
出力軸63の回転数及びアイドルスイッチ68からの検出信
号等の機関11の運転状態の情報がTCL76に送られる。逆
に、TCL76からはこのTCL76にて演算された目標駆動トル
ク及び点火時期の遅角割合に関する情報がECU15に送ら
れる。
本実施例では、駆動輪である前輪64,65の前後方向の
スリップ量が予め設定した量よりも大きくなった場合
に、機関11の駆動トルクを低下させて操縦性を確保する
と共にエネルギーロスを防止する制御(以下、これをス
リップ制御と呼称する)を行った場合の機関11の目標駆
動トルクと、旋回制御を行った場合の機関11の目標駆動
トルクとをTCL76にてそれぞれ演算し、これら二つの目
標駆動トルクから最適な最終目標駆動トルクを選択し、
機関11の駆動トルクを必要に応じて低減できるようにし
ている。又、アクチュエータ41を介したスロットル弁20
の全閉操作によっても、機関11の出力低減が間に合わな
い場合を考慮して点火時期の目標遅角量を設定し、機関
11の駆動トルクを迅速に低減できるようにしている。
このような本実施例による制御の大まかな流れを表す
第4図に示すように、本実施例ではスリップ制御を行っ
た場合の機関11の目標駆動トルクTOSと、旋回制御を行
った場合の機関11の目標駆動トルクTOCとをTCL76にて常
に並行して演算し、これら2つの目標駆動トルクTOS,T
OCから最適な最終目標駆動トルクTOを選択し、機関11の
駆動トルクを必要に応じて低減できるようにしている。
具体的には、イグニッションキースイッチ75のオン操
作により本実施例の制御プログラムが開始され、M1にて
まず操舵軸旋回位置初期値δm(o)の読み込みや各種フラ
グのリセット或いはこの制御のサンプリング周期である
15ミリ秒毎の主タイマのカウント開始等の初期設定が行
われる。
そして、M2にて各種センサからの検出信号に基づいて
TCL76は車速V等を演算し、これに続いて操舵軸83の中
立位置δをM3にて学習補正する。この車両82の操舵軸
83の中立位置δは、ECU15やTCL76中の図示しないメモ
リに記憶されていないため、前記イグニッションキース
イッチ75のオン操作の度に初期値δm(o)が読み込まれ、
車両82が後述する直進走行条件を満たした場合にのみ学
習補正され、イグニッションキースイッチ75がオフ状態
となるまでこの初期値δm(o)が学習補正されるようにな
っている。
次に、TCL76はM4にて前輪回転センサ66からの検出信
号と後輪回転センサ80,81からの検出信号とに基づいて
機関11の駆動トルクを規制するスリップ制御を行う場合
の目標駆動トルクTOSを演算し、M5にて後輪回転センサ8
0,81からの検出信号と操舵角センサ84からの検出信号と
に基づいて機関11の駆動トルクを規制する旋回制御を行
った場合の機関11の目標駆動トルクTOCを演算する。
そして、M6にてTCL76はこれらの目標駆動トルクTOS
TOCから最適な最終目標駆動トルクTOを主として安全性
を考慮して後述する方法により選択する。更に、急発進
時や路面状況が通常の乾燥路から凍結路に急変するよう
な場合には、アクチュエータ41を介したスロットル弁20
の全閉操作によっても機関11の出力低減が間に合わない
虞があるので、M7にて前輪64,65のスリップ量sの変化
率Gsに基づいて基本遅角量pBの補正を行うための遅角割
合を選択し、これら最終目標駆動トルクTO及び基本遅角
量pBの遅角割合に関するデータをM8にてECU15に出力す
る。
そして、運転者が図示しない手動スイッチを操作して
スリップ制御や旋回制御を希望している場合には、ECU1
5は機関11の駆動トルクがこの最終目標駆動トルクTO
なるように、一対のトルク制御用電磁弁51,56のデュー
ティ率を制御し、更に基本遅角量pBの遅角割合に関する
データに基づき、このECU15内で目標遅角量pOを算出
し、点火時期Pを必要に応じて目標遅角量pOだけ遅ら
せ、これによって車両82を無理なく安全に走行させるよ
うにしている。
なお、運転者が図示しない手動スイッチを操作してス
リップ制御や旋回制御を希望していない場合には、ECU1
5は一対のトルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0
%側に設定する結果、車両82は運転者のアクセルペダル
31の踏み込み量に対応した通常の運転状態となる。
このように、機関11の駆動トルクをM9にて主タイマの
サンプリング周期である15ミリ秒毎のカウントダウンが
終了するまで制御し、これ以降はM2からM10までのステ
ップを前記イグニッションキースイッチ75がオフ状態に
なるまで繰り返すのである。
ところで、M5のステップにて旋回制御を行って機関11
の目標駆動トルクTOCを演算する場合、TCL76は一対の後
輪回転センサ80,81の検出信号に基づいて車速Vを下式
(1)により演算すると共に操舵角センサ84からの検出
信号に基づいて前輪64,65の舵角δを下式(2)より演
算し、この時の車両82の目標横加速度GYOを下式(3)
よりそれぞれ求めている。
但し、VRL,VRRはそれぞれ左右一対の後輪78,79の周
速度(以下、これを後輪速と呼称する)、ρは操舵歯
車変速比、δは操舵軸83の旋回角、lは車両82のホイ
ールベース、Aは後述する車両82のスタビリティファク
タである。
この(3)式から明らかなように、車両82の整備時に
前輪64,65のトーイン調整を行った場合や図示しない操
舵歯車の磨耗等の経年変化等によって、操舵軸83の中立
位置δが変わってしまうと、操舵軸83の旋回位置δ
と操舵輪である前輪64,65の実際の舵角δとの間にずれ
が発生する。この結果、車両82の目標横加速度GYOを正
確に算出することができなくなる虞がり、旋回制御を良
好に行うことが困難となる。しかも、本発明ではM4のス
テップでのスリップ制御の際に、後述するコーナリング
ドラッグ補正手段が、操舵軸83の旋回角δに基づいて
機関11の基準駆動トルクを補正していること等から、ス
リップ制御も良好に行えなくなる虞がある。このような
ことから、操舵軸83の中立位置δをM3のステップにて
学習補正する必要がある。
この操舵軸83の中立位置δを学習補正する手順を表
す第5図に示すように、TCL76はH1にて旋回制御中フラ
グFCがセットされているか否かを判定する。そして、こ
のH1のステップにて車両82が旋回制御中であると判断し
た場合には、機関11の出力が操舵軸83の中立位置δ
学習補正することにより急変し、乗り心地を悪化させる
虞等があるので、操舵軸83の中立位置δの学習補正を
行わない。
一方、H1のステップにて車両82が旋回制御中ではない
と判断した場合には、操舵軸83の中立位置δの学習補
正を行っても不具合は生じないので、TCL76は後輪回転
センサ80,81からの検出信号に基づき、H2にて中立位置
δの学習及び後述する旋回制御のための車速Vを前記
(1)式により算出する。次に、TCL76はH3にて後輪速V
RL,VRRの差(以下、これを後輪速差と呼称する)|VRL
−VRR|を算出した後、TCL76はH4にて操舵軸基準位置セ
ンサ86により操舵軸83の基準位置δNが検出された状態
で中立位置δの学習補正が行われたか否か、つまり操
舵軸83の基準位置δNが検出された状態での舵角中立位
置学習済フラグFHNがセットされているか否かを判定す
る。
イグニッションキースイッチ75のオン操作直後は、舵
角中立位置学習済フラグFHNがセットされていない、即
ち中立位置δの学習が初回であるので、H5にて今回算
出された操舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操舵軸
旋回位置δm(n-1)と等しいか否かを判定する。この際、
運転者の手振れ等による影響を受けないように、操舵角
センサ84による操舵軸83の旋回検出分解能を例えば5度
前後に設定しておくことが望まましい。
このH5のステップにて今回算出された操舵軸旋回位置
δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置δm(n-1)と等し
いと判断した場合には、H6にて車速Vが予め設定した閾
値VAより大きいか否かを判定する。この操作は、車両82
がある程度の高速にならないと、操舵に伴う後輪速差|
VRL−VRR|等が検出できないために必要なものであり、
前記閾値VAは車両82の走行特性等に基づいて実験等によ
り、例えば毎時10kmの如く適宜設定される。
そして、H6のステップにて車速Vが閾値VA以上である
と判定した場合には、TCL76はH7にて後輪速差|VRL−V
RR|が予め設定した、例えば毎時0.3kmの如き閾値VX
りも小さいか否か、つまり車両82が直進状態にあるかど
うかを判定する。ここで、閾値VXを毎時0kmとしないの
は、左右の後輪78,79のタイヤの空気圧が等しくない場
合、車両82が直進状態であるにもかかわらず、左右一対
の後輪78,79の周速度VRL,VRRが相違して車両82が直進
状態ではないと判定してしまうのを避けるためである。
なお、左右の後輪78,79のタイヤの空気圧が等しくな
い場合、前記後輪速差|VRL−VRR|は車速Vに比例して
大きくなる傾向を持つので、この閾値VXを例えば第6図
に示すようにマップ化しておき、このマップから車速V
に基づいて閾値VXを読み出すようにしても良い。
このH7のステップにて後輪速差|VRL−VRR|が閾値VX
以下であると判断したならば、H8にて操舵軸基準位置セ
ンサ86が操舵軸83の基準位置δNを検出しているか否か
を判定する。そして、このH8のステップにて操舵軸基準
位置センサ86が操舵軸83の基準位置δを検出してい
る、即ち車両82が直進状態であると判断した場合には、
H9にてTCL76内に内蔵された図示しない第一の学習用タ
イマのカウントを開始する。
次に、TCL76はH10にてこの第一の学習用タイマのカウ
ント開始から0.5秒経過したか否か、即ち車両82の直進
状態が0.5秒継続したかどうかを判定し、この第一の学
習用タイマのカウント開始から0.5秒経過していない場
合には、H11にて車速Vが前記閾値VAより大きいか否か
を判定する。このH11のステップにて車速Vが閾値VA
り大きいと判断した場合には、H12にて後輪速差|VRL
VRR|が毎時0.1kmの如き閾値VB以下であるか否かを判定
する。このH12のステップにて後輪速差|VRL−VRR|が
前記閾値VB以下である、即ち車両82が直進状態であると
判断したならば、H13にてTCL76内に内蔵された図示しな
い第二の学習用タイマのカウントを開始する。
そして、H14にてこの第二の学習用タイマのカウント
開始から5秒経過したか否か、即ち車両82の直進状態が
5秒継続したかどうかを判定し、第二の学習用タイマの
カウント開始から5秒経過していない場合には、前記H2
のステップに戻ってこのH2のステップからH14のステッ
プまでの操作が繰り返される。
この反復操作の途中のH8のステップにて操舵軸基準位
置センサ86が操舵軸83の基準位置δを検出していると
判断し、H9のステップにて前記第一の学習用タイマのカ
ウントを開始し、H10にてこの第一の学習用タイマのカ
ウント開始から0.5秒経過した、即ち車両82の直進状態
が0.5秒継続したと判断した場合には、H15にて操舵軸83
の基準位置δNが検出された状態での舵角中立位置学習
済フラグFHNをセットし、H16にて更に操舵軸83の基準位
置δが検出されない状態での舵角中立位置学習済フラ
グFHがセットされているか否かを判定する。又、前記H1
4のステップにて第二の学習用タイマのカウント開始か
ら5秒経過したと判断した場合にも、このH16のステッ
プに移行する。
以上の操作では、まだ操舵軸83の基準位置δが検出
されない状態での舵角中立位置学習済フラグFHがセット
されていないので、このH16のステップでは操舵軸83の
基準位置δが検出されない状態での舵角中立位置学習
済フラグFHがセットされていない、即ち操舵軸83の基準
位置δが検出された状態での中立位置δの学習が初
回であると判断し、H17にて現在の操舵軸旋回位置δ
m(n)を新たな操舵軸83の中立位置δM(n)と見なし、これ
をTCL76内のメモリに読み込むと共に操舵軸83の基準位
置δが検出されない状態での舵角中立位置学習済フラ
グFHをセットする。
このようにして、操舵軸83の新たな中立位置δM(n)
設定した後、この操舵軸83の中立位置δを基準として
操舵軸83の旋回角δを算出する一方、H18にて学習用
タイマのカウントがクリアされ、再び舵角中立位置学習
が行われる。
なお、前記H5のステップにて今回算出された操舵軸旋
回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置δm(n-1)
と等しくないと判断した場合や、H11のステップにて車
速Vが閾値VA以上ではない、即ちH12のステップにて算
出される後輪速差|VRL−VRR|に信頼性がないと判断し
た場合、或いはH12のステップにて後輪速差|VRL−VRR
|が閾値VBよりも大きいと判断した場合には、いずれも
車両82が直進状態ではないことから、前記H18のステッ
プに移行する。
又、前記H7のステップにて後輪速差|VRL−VRR|が閾
値VXよりも大きいと判断した場合や、H8のステップにて
操舵軸基準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δNを検
出していないと判断したならば、H19にて前記第一の学
習用タイマのカウントをクリアし、前記H11のステップ
に移行するが、前記H6のステップにて車速Vが閾値VA
下であると判断した場合にも、車両82が直進状態である
と判断できないので、このH11のステップに移行する。
一方、前記H4のステップにて操舵軸83の基準位置δ
が検出された状態での舵角中立位置学習済フラグFHN
セットされている、即ち中立位置δの学習が二回目以
降であると判断した場合には、H20にて操舵軸基準位置
センサ86が操舵軸83の基準位置δを検出しているか否
かを判定する。そして、このH20のステップにて操舵軸
基準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δを検出して
いると判断した場合には、H21にて車速Vが予め設定し
た閾値VAより大きいか否かを判定する。
このH21のステップにて車速Vが閾値VA以上であると
判断した場合には、TCL76はH22にて後輪速差|VRL−VRR
|が前記閾値VXよりも小さいか否か、つまり車両82が直
進状態にあるかどうかを判定する。そして、このH22の
ステップにて後輪速差|VRL−VRR|が閾値VXよりも小さ
いと判断したならば、H23にて今回算出された操舵軸旋
回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置δm(n-1)
と等しいか否かを判定する。このH23のステップにて今
回算出された操舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操
舵軸旋回位置δm(n-1)と等しいと判断したならば、H24
にて前記第一の学習用タイマのカウントを開始する。
次に、TCL76はH25にてこの第一の学習用タイマのカウ
ント開始から0.5秒経過したか否か、即ち車両82の直進
状態が0.5秒継続したかどうかを判定し、第一の学習用
タイマのカウント開始から0.5秒経過していない場合に
は、前記H2のステップに戻り、前記H2〜H4,H20〜H25の
ステップを繰り返す。逆に、このH25のステップにて第
一の学習用タイマのカウント開始から0.5秒経過したと
判断した場合には、前記H16のステップに移行する。
なお、前記H20のステップにて操舵軸基準位置センサ8
6が操舵軸83の基準位置δを検出していないと判断し
た場合や、H21のステップにて車速Vが閾値VA以上では
ない、即ちH22のステップにて算出される後輪速差|VRL
−VRR|に信頼性がないと判断した場合、或いはH22のス
テップにて後輪速差|VRL−VRR|が閾値VXよりも大きい
と判断した場合や、H23のステップにて今回算出された
操舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置
δm(n-1)と等しくないと判断した場合には、いずれも前
記H18のステップに移行する。
前記H16のステップにて舵角中立位置学習済フラグFH
がセットされている、つまり中立位置δの学習が二回
目以降であると判断した場合、TCL76はH26にて現在の操
舵軸旋回位置δm(n)が前回の操舵軸83の中立位置δ
M(n-1)と等しい、即ち δm(n)=δM(n-1) であるかどうかを判定する。そして、現在の操舵軸旋回
位置δm(n)が前回の操舵軸83の中立位置δM(n-1)と等し
いと判定したならば、そのままH18のステップに移行
し、次の舵角中立位置学習が行われる。
前記H26のステップにて現在の操舵軸旋回位置δm(n)
が操舵系の遊び等が原因となって前回の操舵軸83の中立
位置δM(n-1)と等しくないと判断した場合、本実施例で
は現在の操舵軸旋回位置δm(n)をそのまま新な操舵軸83
の中立位置δM(n)と判断せず、これらの差の絶対値が予
め設定した補正制限量Δδ以上相違している場合には、
前回の操舵軸旋回位置δm(n-1)に対してこの補正制限量
Δδを減算或いは加算したものを新たな操舵軸83の中立
位置δM(n)とし、これをTCL76内のメモリに読み込むよ
うにしている。
つまり、TCL76はH27にて現在の操舵軸旋回位置δm(n)
から前回の操舵軸83の中立位置δM(n-1)を減算した値が
予め設定した負の補正制限量−Δδよりも小さいか否か
を判定する。そして、このH27のステップにて減算した
値が負の補正制限量−Δδよりも小さいと判断した場合
には、H28にて新たな操舵軸83の中立位置δM(n)を、前
回の操舵軸83の中立位置δM(n-1)と負の補正制限量−Δ
δとから δM(n)=δM(n-1)−Δδ と変更し、一回当たりの学習補正量が無条件に負側へ大
きくならないように配慮している。
これにより、何らかの原因によって操舵角センサ84か
ら異常な検出信号が出力されたとしても、操舵軸83の中
立位置δが急激には変化せず、この異常に対する対応
を迅速に行うことができる。
一方、H27のステップにて減算した値が負の補正制限
量−Δδよりも大きいと判断した場合には、H29にて現
在の操舵軸旋回位置δm(n)から前回の操舵軸83の中立位
置δM(n-1)を減算した値が正の補正制限量Δδよりも大
きいか否かを判定する。そして、このH29のステップに
て減算した値が正の補正制限量Δδよりも大きいと判断
した場合には、H30にて新たな操舵軸83の中立位置δ
M(n)を前回の操舵軸83の中立位置δM(n-1)と正の補正制
限量Δδとから δM(n)=δM(n-1)+Δδ と変更し、一回当たりの学習補正量が無条件に正側へ大
きくならないように配慮している。
これにより、何らかの原因によって操舵角センサ84か
ら異常な検出信号が出力されたとしても、操舵軸83の中
立位置δが急激には変化せず、この異常に対する対応
を迅速に行うことができる。
但し、H29のステップにて減算した値が正の補正制限
量Δδよりも小さいと判断した場合には、H31にて現在
の操舵軸旋回位置δm(n)を新たな操舵軸83の中立位置δ
M(n)としてそのまま読み出す。
このように、本実施例では操舵軸83の中立位置δ
学習補正する際、後輪速差|VRL−VRR|のみを利用する
他に、操舵軸基準位置センサ86からの検出信号を併せて
利用する方法を採用し、車両82が発進してから比較的早
い内に操舵軸83の中立位置δを学習補正することがで
きる上、操舵軸基準位置センサ86が何らかの原因で故障
しても後輪速差|VRL−VRR|のみで操舵軸83の中立位置
δを学習補正することができ、安全性に優れている。
従って、前輪64,65を旋回状態のままにして停車中の
車両82が発進した場合、この時の操舵軸83の中立位置δ
の変化状態の一例を表す第7図に示すように、操舵軸
83の中立位置δの学習制御が初回の時、前述したM1の
ステップにおける操舵軸旋回位置の初期値δm(o)からの
補正量は非常に大きなものとなるが、二回目以降の操舵
軸83の中立位置δは、H17,H19のステップにおける操
作により、抑えられた状態となる。
このようにして操舵軸83の中立位置δを学習補正し
た後、前輪回転センサ66からの検出信号と後輪回転セン
サ80,81からの検出信号とに基づいて機関11の駆動トル
クを規制するスリップ制御を行う場合の目標駆動トルク
TOSを演算する。
ところで、タイヤと路面との摩擦係数は車両82に加わ
る車速Vの変化率(以下、これを前後加速度と呼称す
る)GXと等価であると見なすことができるので、本実施
例ではこの前後加速度GXを後輪回転センサ80,81からの
検出信号に基づいて算出し、この前後加速度GXの最大値
に対応する機関11の基準駆動トルクTBを、前輪回転セン
サ66から検出される前輪速VFと前記車速Vに対応する目
標前輪速VFOとの偏差(以下、これをスリップ量と呼称
する)sに基づいて補正し、目標駆動トルクTOSを算出
している。
この機関11の目標駆動トルクTOSを算出するための演
算ブロックを表す第8図に示すように、まずTCL76はス
リップ制御用の車速VSを後輪回転センサ80,81からの検
出信号に基づいて算出するが、本実施例では低車速選択
部101にて二つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方の値を
スリップ制御用の第一の車速VSとして選択し、高車速選
択部102にて二つの後輪速VRL,VRRの内の大きな方の値
をスリップ制御用の第二の車速VSとして選択し、その上
で切り換えスイッチ103により二つの選択部101,102の内
のいずれの出力を取り込むかを更に選択するようになっ
ている。
なお、本実施例では低車速選択部101にて選択される
第一の車速VSは、二つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方
の値VLに前記(1)式により算出される車速Vに対応す
る重み付けの係数KVを乗算部104にて乗算し、これと二
つの後輪速VRL,VRRの内の大きい方の値VHに(1−KV
を乗算部105にて乗算したものとを加算することにより
求めている。
即ち、スリップ制御により実際に機関11の駆動トルク
が低減されている状態、つまりスリップ制御中フラグFS
がセットの状態では、切り換えスイッチ103により二つ
の後輪速VRL,VRRの内の小さい方の値を車速VSとして選
択し、運転者がスリップ制御を希望していても機関11の
駆動トルクが低減されていない状態、つまりスリップ制
御中フラグFSがリセットの状態では、二つの後輪速
VRL,VRRの内の大きな方の値を車速VSとして選択するよ
うになっている。
これは、機関11の駆動トルクが低減されていない状態
から、機関11の駆動トルクが低減される状態へ移行し難
しくすると同時に、この逆の場合での移行も難しくする
ためである。例えば、車両82の旋回中における二つの後
輪速VRL,VRRの内の小さい方の値を車速VSとして選択し
た場合、前輪64,65にスリップが発生していないにも係
わらずスリップが発生していると判断し、機関11の駆動
トルクが低減されてしまうような不具合を避けるため
と、車両82の走行安全性を考慮して、一旦、機関11の駆
動トルクが低減された場合に、この状態が継続されるよ
うに配慮したためである。
又、低車速選択部101にて車速VSを算出する場合、二
つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方の値VLに重み付けの
係数KVを乗算部104にて乗算し、これと二つの後輪速
VRL,VRRの内の大きい方の値VHに(1−KV)を乗算部10
5にて乗算したものとを加算するのは、例えば交差点等
での右左折の如き曲率半径の小さな旋回路を走行する際
に、前輪64,65の周速度の平均値と二つの後輪速VRL,V
RRの内の小さい方の値VLとが大きく相違してしまう結
果、フィードバックによる駆動トルクの補正量が大きす
ぎてしまい、車両82の加速性が損なわれる虞があるため
である。
なお、本実施例では前記重み付けの係数KVを後輪78,7
9の周速度の平均値である前記(1)式の車速Vに基づ
いて第9図に示す如きマップから読み出すようにしてい
る。
このようにして算出されるスリップ制御用の車速VS
基づいて前後加速度GXを算出するが、まず今回算出した
車速VS(n)と一回前に算出した車速VS(n-1)とから、現在
の車両82の前後加速度GX(n)を微分演算部106にて下式の
ように算出する。
但し、Δtは本制御のサンプリング周期である15ミリ
秒、gは重力加速度である。
そして、算出された前後加速度GX(n)が0.6g以上とな
った場合には、演算ミス等に対する安全性を考慮してこ
の前後加速度GX(n)の最大値が0.6gを越えないように、
クリップ部107にて前後加速度GX(n)を0.6gにクリップす
る。更に、フィルタ部108にてノイズ除去のためのフィ
ルタ処理を行って修正前後加速度GXFを算出する。
このフィルタ処理は、車両82の前後加速度GX(n)がタ
イヤと路面との摩擦係数と等価であると見なすことがで
きることから、車両82の前後加速度GX(n)の最大値が変
化してタイヤのスリップ率Sがタイヤと路面との摩擦係
数の最大値と対応した目標スリップ率SO或いはその近傍
から外れそうになった場合でも、タイヤのスリップ率S
をタイヤと路面との摩擦係数の最大値と対応した目標ス
リップ率SO或いはその近傍でこれよりも小さな値に維持
させるように、前後加速度GX(n)を修正するためのもの
であり、具体的には以下の通りに行われる。
今回の前後加速度GX(n)がフィルタ処理された前回の
修正前後加速度GXF(n-1)以上の場合、つまり車両82が加
速し続けている時には、今回の修正前後加速度GXF(n)として遅延処理によりノイズ除去を行い、修正前後加速
度GXF(n)を比較的早く前後加速度GX(n)に追従させて行
く。
今回の前後加速度GX(n)が前回の修正前後加速度G
XF(n-1)未満の場合、つまり車両82が余り加速していな
い時には主タイマのサンプリング周期Δt毎に以下の処
理を行う。
スリップ制御中フラグFSがセットされていない、つま
りスリップ制御による機関11の駆動トルクを低減してい
ない状態では、車両82が減速中にあるので GXF(n)=GXF(n-1)−0.002 として修正前後加速度GXF(n)の低下を抑制し、運転者に
よる車両82の加速要求に対する応答性を確保している。
又、スリップ制御により機関11の駆動トルクを低減し
ている状態でスリップ量sが正、つまり前輪64,65のス
リップが多少発生している時にも、車両82は減速中であ
ることから安全性に問題がないので、 GXF(n)=GXF(n-1)−0.002 として修正前後加速度GXF(n)の低下を抑制し、運転者に
よる車両82の加速要求に対する応答性を確保している。
更に、スリップ制御により機関11の駆動トルクを低減
している状態で前輪64,65のスリップ量sが負、つまり
車両82が減速している時には、修正前後加速度GXFの最
大値を保持し、運転者による車両82の加速要求に対する
応答性を確保する。
同様に、スリップ制御による機関11の駆動トルクを低
減している状態で油圧制御装置16による油圧式自動変速
機13のシフトアップ中には、運転者に対する加速感を確
保する必要上、修正前後加速度GXFの最大値を保持す
る。
そして、フィルタ部108にてノイズ除去された修正前
後加速度GXFは、トルク換算部109にてこれをトルク換算
するが、このトルク換算部109にて算出された値は、当
然のことながら正の値となるはずであるから、クリップ
部110にて演算ミスを防止する目的でこれを0以上にク
リップした後、走行抵抗算出部111にて算出された走行
抵抗TRを加算部112にて加算し、更に操舵角センサ84か
らの検出信号に基づいてコーナリングドラッグ補正量算
出部113にて算出されるコーナリングドラッグ補正トル
クTCを加算部114にて加算し、下式(4)に示す基準駆
動トルクTBを算出する。
TB=GFO・Wb・r+TR+TC …(4) ここで、Wbは車体重量、rは前輪64,65の有効半径で
ある。
前記走行抵抗TRは車速Vの関数として算出することが
できるが、本実施例では第10図に示す如きマップから求
めている。この場合、平坦路と登坂路とでは走行抵抗TR
が異なるので、マップには図中、実線にて示す平坦路用
と二点鎖線にて示す登坂路用とが書き込まれ、車両82に
組み込まれた図示しない傾斜センサからの検出信号に基
づいて、いずれか一方を選択するようにしているが、下
り坂等を含めて更に細かく走行抵抗TRを設定することも
可能である。
又、本実施例では前記コーナリングドラッグ補正トル
クTCを第11図に示す如きマップから求めており、これに
よって実際の走行状態と近似した機関11の基準駆動トル
クTBを設定することができ、旋回直後の機関11の基準駆
動トルクTBが大きめになっていることから、旋回路を抜
けた後の車両82の加速フィーリングが向上する。
なお、前記(4)式により算出される基準駆動トルク
TBに対し、本実施例では可変クリップ部115にて下限値
を設定することにより、この基準駆動トルクTBから後述
する最終補正トルクTPIDを減算部116にて減算した値
が、負となってしまうような不具合を防止している。こ
の基準駆動トルクTBの下限値は、第12図に示す如きマッ
プに示すように、スリップ制御の開始時点からの経過時
間に応じて段階的に低下させるようにしている。
一方、TCL76は前輪回転センサ66からの検出信号に基
づいて実際の前輪速VFを算出し、先にも述べたようにこ
の前輪速VFとスリップ制御用の車速VSに基づいて設定さ
れる目標前輪速VFOに基づいて設定される補正トルク算
出用目標前輪速VFSとの偏差であるスリップ量sを用
い、前記基準駆動トルクTBのフィードバック制御を行う
ことによって、機関11の目標駆動トルクTOSを算出す
る。
ところで、車両82の加速時に機関11で発生する駆動ト
ルクを有効に働かせるためには、第13図中の実線で示す
ように、走行中の前輪64,65のタイヤのスリップ率S
が、このタイヤと路面との摩擦係数の最大値と対応する
目標スリップ率SO或いはその近傍でこれよりも小さな値
となるように調整し、エネルギーのロスを避けると共に
車両82の操縦性能や加速性能を損なわないようにするこ
とが望ましい。
ここで、目標スリップ率SOは路面の状況に応じて0.1
〜0.25程度の範囲に振れることが知られており、従って
車両82の走行中には路面に対して10%程度のスリップ量
sを駆動輪である前輪64,65に発生させることが望まし
い。以上の点を勘案して目標前輪速VFOを乗算部117にて
下式の通りに設定する。
VFO=1.1・V そして、TCL76は加速度補正部118にて第14図に示す如
きマップから前述した修正前後加速度GXFに対応するス
リップ補正量VKを読み出し、これを加算部119にて基準
トルク算出用目標前輪速VFOに加算する。このスリップ
補正量VKは、修正前後加速度GXFの値が大きくなるにつ
れて段階的に増加するような傾向を持たせているが、本
実施例では走行試験等に基づいてこのマップを作成して
いる。
これにより、補正トルク算出用目標前輪速VFSが増大
し、加速時におけるスリップ率Sが第13図中の実線で示
す目標スリップ率SO或いはその近傍でこれよりも小さな
値となるように設定される。
一方、旋回中におけるタイヤと路面との摩擦係数と、
このタイヤのスリップ率Sとの関係を第13図中の一点鎖
線で示すように、旋回中におけるタイヤと路面との摩擦
係数の最大値となるタイヤのスリップ率は、直進中にお
けるタイヤと路面との摩擦係数の最大値となるタイヤの
目標スリップ率SOよりも相当小さいことが判る。従っ
て、車両82が旋回中にはこの車両82が円滑に旋回できる
ように、目標前輪速VFOを直進時よりも小さく設定する
ことが望ましい。
そこで、旋回補正部120にて第15図の実線で示す如き
マップから前記目標横加速度GYOに対応するスリップ補
正量VKCを読み出し、これを減算部121にて基準トルク算
出用目標前輪速VFOから減算する。但し、イグニッショ
ンキースイッチ75のオン操作の後に行われる最初の操舵
軸83の中立位置δの学習が行われるまでは、操舵軸83
の旋回角δの信頼性がないので、後輪78,79の周速度V
RL,VRRにより車両82に実際に作用する横加速度GYに基
づいて第15図の破線で示す如きマップから前記スリップ
補正量VKCを読み出す。
ところで、前記目標横加速度GYOは操舵角センサ84か
らの検出信号に基づいて前記(2)式により舵角δを算
出し、この舵角δを用いて前記(3)式により求めると
共に操舵軸83の中立位置δを学習補正している。
従って、操舵角センサ84又は操舵軸基準位置センサ86
に異常が発生すると、目標横加速度GYOが全く誤った値
となることが考えられる。そこで、操舵角センサ84等に
異常が発生した場合には、後輪速差|VRL−VRR|を用い
て車両82に発生する実際の横加速度GYを算出し、これを
目標横加速度GYOの代わりに用いる。
具体的には、この実際の横加速度GYは後輪速差|VRL
−VRR|と車速VとからTCL76内に組み込まれた横加速度
演算部122にて下式(5)のように算出され、これをフ
ィルタ部123にてノイズ除去処理した修正横加速度GYF
用いられる。
但し、bは後輪78,79のトレッドであり、前記フィル
タ部123では今回算出した横加速度GY(n)と前回算出した
修正横加速度GYF(n-1)とから今回の修正横加速度GYF(n)
を下式に示すデジタル演算によりローパス処理を行って
いる。
前記操舵角センサ84或いは操舵軸基準位置センサ86に
異常が発生したか否かは、例えば第16図に示す断線検出
回路等によりTCL76にて検出することができる。つま
り、操舵角センサ84及び操舵軸基準位置センサ86の出力
を抵抗Rにてプルアップすると共にコンデンサCで接地
しておき、その出力をそのままTCL76のA0端子に入力し
て各種制御に供する一方、コンパレータ88を通してA1端
子に入力させている。このコンパレータ88の負端子には
基準電圧として4.5ボルトの規定値を印加してあり、操
舵角センサ84が断線すると、A0端子の入力電圧が規定値
を超えてコンパレータ88がオンとなり、A1端子の入力電
圧が継続してハイレベルHとなる。そこで、A1端子の入
力電圧が一定時間、例えば2秒間ハイレベルHであれ
ば、断線と判断してこれら操舵角センサ84或いは操舵軸
基準位置センサ86の異常発生を検出するようにTCL76の
プログラムを設定してある。
上述した実施例では、ハードウェアにて操舵角センサ
84等の異常を検出するようにしたが、ソフトウェアにて
その異常を検出することも当然可能である。
例えば、この異常の検出手順の一例を表す第17図に示
すようにTCL76はまずW1にて前記第16図に示した断線検
出による異常の判定を行い、異常ではないと判断した場
合には、W2にて前輪回転センサ66及び後輪回転センサ8
0,81に異常があるか否かを判定する。このW2のステップ
にて各回転センサ66,80,81に異常がないと判断した場合
には、W3にて操舵軸83が同一方向に一回転以上、例えば
400度以上操舵したか否かを判定する。このW3のステッ
プにて操舵軸83が同一方向に400度以上操舵したと判断
した場合には、W4にて操舵軸基準位置センサ86から操舵
軸83の基準位置δを知らせる信号があったか否かを判
断する。
そして、このW4のステップにて操舵軸83の基準位置δ
を知らせる信号がないと判断した場合、操舵軸基準位
置センサ86が正常であるならば、操舵軸83の基準位置δ
を知らせる信号が少なくとも一回はあるはずなので、
W4にて操舵角センサ84が異常であると判断し、ステップ
W9にて異常発生中フラグFWをセットする。
前記W3のステップにて操舵軸83が同一方向に400度以
上操舵されていないと判断した場合、或いはW4のステッ
プにて操舵軸83の基準位置δを知らせる信号が操舵軸
基準位置センサ86からあったと判断した場合には、W5に
て中立位置δの学習が済んでいるか否か、即ち二つの
舵角中立位置学習済フラグFHN,FHの内の少なくとも一
方がセットされているか否かを判定する。
そしてこのW5のステップにて操舵軸83の中立位置δ
の学習が済んでいると判断した場合には、W6にて後輪速
差|VRL−VRR|が例えば毎時1.5kmを超え、W7にて車速
Vが例えば毎時20kmと毎時60kmとの間にあり、且つW8に
てこの時の操舵軸83の旋回角δの絶対値が例えば10度
未満である、即ち車両82がある程度の速度で旋回中であ
ると判断した場合には、操舵角センサ84が正常に機能し
ているならば、前記旋回角δの絶対値が10度以上にな
るはずであるから、操舵角センサ84が異常であると判断
して、ステップW9にて異常発生中フラグFwをセットす
る。
なお、目標横加速度GYOに対応する前記スリップ補正
量VKCは、運転者の操舵ハンドル85の切り増しが考えら
れるので、この目標横加速度GYOが小さな領域では、修
正横加速度GYFに対応するスリップ補正量VKCよりも小さ
めに設定している。又、車速Vが小さな領域では、車両
82の加速性を確保することが望ましく、逆にこの車速V
がある程度の速度以上では、旋回のし易さを考慮する必
要があるので、第15図から読み出されるスリップ補正量
VKCに車速Vに対応した補正係数を第18図に示すマップ
から読み出して乗算することにより、修正スリップ補正
量VKFを算出している。
これにより、補正トルク算出用目標前輪速VFOが減少
し、旋回時におけるスリップ率Sが直進時における目標
スリップ率SOよりも小さくなり、車両82の加速性能が若
干低下するものの、良好な旋回性が確保される。
これら目標横加速度GYO及び実際の横加速度GYの選択
手順を表す第19図に示すように、TCL76はT1にてスリッ
プ補正量VKCを算出するための横加速度として前記フィ
ルタ部123からの修正横加速度GYFを採用し、T2にてスリ
ップ制御中フラグFSがセットされているか否かを判定す
る。
このT2のステップにてスリップ制御中フラグFSがセッ
トされていると判断したならば、前記修正横加速度GYF
をそのまま採用する。これは、スリップ制御中にスリッ
プ補正量VKCを決める基準となる横加速度を、修正横加
速度GYFから目標横加速度GYOへ変えた場合に、スリップ
補正量VKCが大きく変化して車両82の挙動が乱れる虞が
あるためである。
前記T2のステップにてスリップ制御中フラグFSがセッ
トされていないと判断したならば、T3にて二つの舵角中
立位置学習済FHN,FHの内のいずれか一方がセットされ
ているか否かを判定する。ここで、二つの舵角中立位置
学習済フラグFHN,FHがいずれもセットされていないと
判断した場合には、やはり前記修正横加速度GYFをその
まま採用する。又、このT3のステップにて二つの舵角中
立位置学習済フラグFHN,FHの内のいずれかがセットさ
れていると判断したならば、T4にてスリップ補正量VKC
を算出するための横加速度として前記目標横加速度GYO
を採用する。
以上の結果、補正トルク算出用目標前輪速VFSは下式
の通りとなる。
VFS=VFO+VK−VF 次に、前輪回転センサ66の検出信号からノイズ除去な
どを目的としたフィルタ処理により得た実前輪速VFと、
前記補正トルク算出用目標前輪速VFSとの偏差であるス
リップ量sを減算部124にて算出する。そして、このス
リップ量sが負の設定値以下、例えば毎時−2.5km以下
の場合には、スリップ量sとして毎時−2.5kmをクリッ
プ部125にてクリップし、このクリップ処理後のスリッ
プ量sに対して後述する比例補正を行い、この比例補正
における過制御を防止して出力のハンチングが発生しな
いようにしている。
又、このクリップ処理前のスリップ量sに対して後述
する積分定数ΔTiを用いた積分補正を行い、更に微分補
正を行って最終補正トルクTPIDを算出する。
前記比例補正としては、乗算部126にてスリップ量s
に比例係数KPを掛けて基本的な補正量を求め、更に乗算
部127にて油圧式自動変速機13の変速比ρによって予
め設定された補正係数ρKPを乗算して比例補正トルクTP
を得ている。なお、比例係数KPはクリップ処理後のスリ
ップ量sに応じて第20図に示すマップから読み出すよう
にしている。
又、前記積分補正としてスリップ量sのゆるやかな変
化に対応した補正を実現するため、積分演算部128にて
基本的な補正量を算出し、この補正量に対して乗算部12
9にて油圧式自動変速機13の変速比ρに基づいて予め
設定された補正係数ρKIを乗算し、積分補正トルクTI
得ている。この場合、本実施例では一定の微小積分補正
トルクΔTIを積分しており、15ミリ秒のサンプリング周
期毎にスリップ量sが正の場合には前記微小積分補正ト
ルクΔTIを加算し、逆にスリップ量sが負の場合には微
小積分補正トルクΔTIを減算している。
但し、この積分補正トルクTIには車速Vに応じて可変
の第21図のマップに示す如き下限値TILを設定してお
り、このクリップ処理により車両82の発進時、特に登り
坂での発進時には大きな積分補正トルクTIを働かせて機
関11の駆動力を確保し、車両82の発進後に車速Vが上昇
してからは、逆に補正が大きすぎると制御の安全性を欠
くので、積分補正トルクTIが小さくなるようにしてい
る。又、制御の収束性を高めるために積分補正トルクTI
に上限値、例えば0kgmを設定し、このクリップ処理によ
って積分補正トルクTIは第22図に示すように変化する。
このようにして算出された比例補正トルクTPと積分補
正トルクTIとを加算部130にて加算し、比例積分補正ト
ルクTPIを算出する。
なお、前記補正係数ρKP,ρKIは油圧式自動変速機13
の変速比ρに関連付けて予め設定された第23図に示す
如きマップから読み出すようにしている。
又、本実施例では微分演算部131にてスリップ量sの
変化率Gsを算出し、これに微分係数KDを乗算部132にて
掛け、急激なスリップ量sの変化に対する基本的な補正
量を算出する。そして、これにより得られた値にそれぞ
れ上限値と下限値との制限を設け、微分補正トルクTD
極端に大きな値とならないように、クリップ部133にて
クリップ処理を行い、微分補正トルクTDを得ている。こ
のクリップ部133は、車両82の走行中に車輪速VF,VRL
VRRが路面状況や車両82の走行状態等によって、瞬間的
に空転或いはロック状態となることがあり、このような
場合にスリップ量sの変化率Gsが正或いは負の極端に大
きな値となり、制御が発散して応答性が低下する虞があ
るので、例えば下限値を−55kgmにクリップすると共に
上限値を55kgmにクリップし、微分補正トルクTDが極端
に大きな値とならないようにするためのものである。
しかるのち、加算部134にてこれら比例積分補正トル
クTPIと微分補正トルクTDとを加算し、これにより得ら
れる最終補正トルクTPIDを減算部116にて前述の基準駆
動トルクTBから減算し、更に乗算部135にて機関11と前
輪64,65の車軸89,90との間の総減速比の逆数を乗算する
ことにより、下式(6)に示すスリップ制御用の目標駆
動トルクTOSを算出する。
但し、ρは差動歯車減速比、ρはトルクコンバー
タ比であり、油圧式自動変速機13がアップシフトの変速
操作を行う際には、その変速終了後に高速段側の変速比
ρが出力されるようになっている。つまり、油圧式自
動変速機13のアップシフトの変速操作の場合には、変速
信号の出力時点で高速段側の変速比ρを採用すると、
上記(6)式からも明らかなように、変速中に目標駆動
トルクTOSが増大して機関11が吹き上がってしまうた
め、変速開始の信号を出力してから変速操作が完了す
る、例えば1.5秒間は、目標駆動トルクTOSをより小さく
できる低速段側の変速比ρが保持され、変速開始の信
号を出力してから1.5秒後に高速段側の変速比ρが採
用される。同様な理由から、油圧式自動変速機13のダウ
ンシフトの変速操作の場合には、変速信号の出力時点で
低速段側の変速比ρが直ちに採用される。
前記(6)式で算出された目標駆動トルクTOSは当然
のことながら正の値となるはずであるから、クリップ部
136にて演算ミスを防止する目的で目標駆動トルクTOS
0以上にクリップし、スリップ制御の開始或いは終了を
判定するための開始・終了判定部137での判定処理に従
って、この目標駆動トルクTOSに関する情報がECU15に出
力される。
開始・終了判定部137は下記(a)〜(e)に示す全
ての条件を満足した場合にスリップ制御の開始と判断
し、スリップ制御中フラグFSをセットすると共に低車速
選択部101からの出力をスリップ制御用の車速VSとして
選択するように切り換えスイッチ103を作動させ、目標
駆動トルクTOSに関する情報をECU15に出力し、スリップ
制御の終了を判断してスリップ制御中フラグFSがリセッ
トとなるまでは、この処理を継続する。
(a)運転者は図示しない手動スイッチを操作してスリ
ップ制御を希望している。
(b)運転者の要求している駆動トルクTdは車両82を走
行させるに必要な最小の駆動トルク、例えば4kgm以上で
ある。
なお、本実施例ではこの要求駆動トルクTdをクランク
角センサ62からの検出信号により算出された機関回転数
NEと、アクセル開度センサ76からの検出信号により算出
されたアクセル開度θとに基づいて予め設定された第
24図に示す如きマップから読み出している。
(c)スリップ量sは毎時2km以上である。
(d)スリップ量sの変化率Gaは0.2g以上である。
(e)実前輪速VFを微分演算部138にて時間微分した実
前輪加速度GFは0.2g以上である。
一方、前記開始・終了判定部137がスリップ制御の開
始を判定した後、下記(f),(g)に示す条件の内の
いずれかを満足した場合には、スリップ制御終了と判断
してスリップ制御中フラグFSをリセットし、ECU15に対
する目標駆動トルクTOSの送信を中止すると共に高車速
選択部102からの出力をスリップ制御用の車速VSとして
選択するように切り換えスイッチ103を作動させる。
(f)目標駆動トルクTOSは要求駆動トルクTd以上であ
り、且つスリップ量sは一定値、例えば毎時−2km以下
である状態が一定時間、例えば0.5秒以上継続してい
る。
(g)アイドルスイッチ68がオフからオンに変わった状
態、つまり運転者がアクセルペダル31を開放した状態が
一定時間、例えば0.5秒以上継続している。
前記車両82には、スリップ制御を運転者が選択するた
めの図示しない手動スイッチが設けられており、運転者
がこの手動スイッチを操作してスリップ制御を選択した
場合、以下に説明するスリップ制御の操作を行う。
このスリップ制御の処理の流れを表す第25図に示すよ
うに、TCL75はS1にて上述した各種データの検出及び演
算処理により、目標駆動トルクTOSを算出するが、この
演算操作は前記手動スイッチの操作とは関係なく行われ
る。
次に、S2にてまずスリップ制御中フラグFSがセットさ
れているか否かを判定するが、最初はスリップ制御中フ
ラグFSがセットされていないので、TCL76はS3にて前輪6
4,65のスリップ量sが予め設定した閾値、例えば毎時2k
mよりも大きいか否かを判定する。
このS3のステップにてスリップ量sが毎時2kmよりも
大きいと判断すると、TCL76はS4にてスリップ量sの変
化率Gsが0.2gよりも大きいか否かを判定する。
このS4のステップにてスリップ量変化率Gsが0.2gより
も大きいと判断すると、TCL76はS5にて運転者の要求駆
動トルクTdが車両82を走行させるために必要な最小駆動
トルク、例えば4kgmよりも大きいか否か、つまり運転者
が車両82を走行させる意志があるか否かを判定する。
このS5のステップにて要求駆動トルクTdが4kgmよりも
大きい、即ち運転者は車両82を走行させる意志があると
判断すると、S6にてスリップ制御中フラグFSをセット
し、S7にてスリップ制御中フラグFSがセットされている
か否かを再度判定する。
このS7のステップにてスリップ制御中フラグFSがセッ
ト中であると判断した場合には、S8にて機関11の目標駆
動トルクTOSとして前記(6)式にて予め算出したスリ
ップ制御用の目標駆動トルクTOSを採用する。
又、前記S7のステップにてスリップ制御中フラグFS
リセットされていると判断した場合には、S9にてTCL76
は目標駆動トルクTOSとして機関11の最大トルクを出力
し、これによりECU15がトルク制御用電磁弁51,56のデュ
ーティ率を0%側に低下させる結果、機関11は運転者に
よるアクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルク
を発生する。
なお、S3のステップにて前輪64,65のスリップ量sが
毎時2kmよりも小さいと判断した場合、或いはS4のステ
ップにてスリップ量変化率Gsが0.2gよりも小さいと判断
した場合、或いはS5のステップにて要求駆動トルクTd
4kgmよりも小さいと判断した場合には、そのまま前記S7
のステップに移行し、S9のステップにてTCL76は目標駆
動トルクTOSとして機関11の最大トルクを出力し、これ
によりECU15がトルク制御用電磁弁51,56のデューティ率
を0%側に低下させる結果、機関11は運転者によるアク
セルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発生す
る。
一方、前記S2のステップにてスリップ制御中フラグFS
がセットされていると判断した場合には、S10にて前輪6
4,65のスリップ量sが前述した閾値である毎時−2km以
下且つ要求駆動トルクTdがS1にて算出された目標駆動ト
ルクTOS以下の状態が0.5秒以上継続しているか否かを判
定する。
このS10のステップにてスリップ量sが毎時2kmよりも
小さく且つ要求駆動トルクTdが目標駆動トルクTOS以下
の状態が0.5秒以上継続している、即ち運転者は車両82
の加速を既に希望していないと判断すると、S11にてス
リップ制御中フラグFSをリセットし、S7のステップに移
行する。
前記S10のステップにてスリップ量sが毎時2kmよりも
大きいか、或いは要求駆動トルクTdが目標駆動トルクT
OS以下の状態が0.5秒以上継続していない、即ち運転者
は車両82の加速を希望していると判断すると、TCL76はS
12にてアイドルスイッチ68がオン、即ちスロットル弁20
の全閉状態が0.5秒以上継続しているか否かを判定す
る。
このS12のステップにてアイドルスイッチ68がオンで
あると判断した場合、運転者がアクセルペダル31を踏み
込んでいないことから、S11のステップに移行してスリ
ップ制御中フラグFSをリセットする。逆に、アイドルス
イッチ68がオフであると判断した場合、運転者はアクセ
ルペダル31を踏み込んでいるので、再びS7のステップに
移行する。
なお、運転者がスリップ制御を選択する手動スイッチ
を操作していない場合、TCL76は前述のようにしてスリ
ップ制御用の目標駆動トルクTOSを算出した後、旋回制
御を行った場合の機関11の目標駆動トルクを演算する。
ところで、車両82の横加速度GYは後輪速差|VRL−VRR
|を利用して前記(5)式により実際に算出することが
できるが、操舵軸旋回角δHを利用することによって、
車両82に作用する横加速度GYの値の予測が可能となるた
め、迅速な制御を行うことができる利点を有する。
そこで、この車両82の旋回制御に際し、TCL76は操舵
軸旋回角δHと車速Vとから、車両82の目標横加速度GYO
を前記(3)式により算出し、車両82が極端なアンダー
ステアリングとならないような車体前後方向の加速度、
つまり目標前後加速度GXOをこの目標横加速度GYOに基づ
いて設定する。そして、この目標前後加速度GXOと対応
する機関11の目標駆動トルクTOCを算出する。
この旋回制御の演算ブロックを表す第26図に示すよう
に、TCL76は車速演算部140にて一対の後輪回転センサ8
0,81の出力から車速Vを前記(1)式により演算すると
共に操舵角センサ84からの検出信号に基づいて前輪64,6
5の舵角δを前記(2)式より演算し、目標横加速度演
算部141にてこの時の車両82の目標横加速度GYOを前記
(3)式より算出する。この場合、車速Vが小さな領
域、例えば毎時15km以下の時には、運転者の操舵技術だ
けでも充分良好な旋回ができるばかりでなく、旋回制御
を行うよりも旋回制御を禁止した方が、例えば交通量の
多い交差点での右左折等の際に充分な加速を得られるの
で、安全性の点で都合の良い場合が多いことから、本実
施例では補正係数乗算部142にて第27図に示す如き補正
係数KYを車速Vに応じて目標横加速度GYOに乗算してい
る。
ところで、操舵軸中立位置δの学習が行われていな
い状態では、舵角δに基づいて目標横加速度GYO
(3)式より算出することは信頼性の点で問題があるの
で、操舵軸中立位置δの学習が行われるまでは、旋回
制御を開始しないことが望ましい。しかし、車両82の走
行開始直後から屈曲路を走行するような場合、車両82が
旋回制御を必要とする状態となるが、操舵軸中立位置δ
の学習開始条件がなかなか満たさないため、この旋回
制御が開始されない不具合を発生する虞がある。そこ
で、本実施例では操舵軸中立位置δの学習が行われる
までは、切り換えスイッチ143にて前記(5)式に基づ
くフィルタ部123からの修正横加速度GYFを用いて旋回制
御を行えるようにしている。つまり、二つの舵角中立位
置学習済フラグFHN,FHのいずれもがリセットされてい
る状態では、切り換えスイッチ143により修正横加速度G
YFを採用し、二つの舵角中立位置学習済フラグFHN,FH
の内の少なくとも一方がセットされたならば、切り換え
スイッチ143により補正係数乗算部142からの目標横加速
度GYOが選択される。
又、前述したスタビリティファクタAは、周知のよう
に車両82の懸架装置の構成やタイヤの特性或いは路面状
況等によって決まる値である。具体的には、定常円旋回
時にて車両82に発生する実際の横加速度GYと、この時の
操舵軸83の操舵角比δ/δHO(操舵軸83の中立位置δ
を基準として横加速度GYが0近傍となる極低速走行状
態での操舵軸83の旋回角δHOに対して加速時における操
舵軸83の旋回角δの割合)との関係を表す例えば第28
図に示すようなグラフにおける接線の傾きとして表現さ
れる。つまり、横加速度GYが小さくて車速Vが余り高く
ない領域では、スタビリティファクタAがほぼ一定値
(A=0.002)となっているが、横加速度GYが0.6gを越
えると、スタビリティファクタAが急増し、車両82は極
めて強いアンダーステアリング傾向を示すようになる。
以上のようなことから、乾燥状態の舗装路面(以下、
これを高μ路と呼称する)に対応する第28図を基にした
場合には、スタビリティファクタAを0.002に設定し、
(3)式により算出される車両82の目標横加速度GYO
0.6g未満となるように、機関11の駆動トルクを制御す
る。
なお、凍結路等のような滑りやすい路面(以下、これ
を低μ路と呼称する)の場合には、スタビリティファク
タAを例えば0.005前後に設定すれば良い。この場合、
低μ路では実際の横加速度GYよりも目標横加速度GYO
方が大きな値となるため、目標横加速度GYOが予め設定
した閾値、例えば(GYF−2)よりも大きいか否かを判
定し、目標横加速度GYOがこの閾値よりも大きい場合に
は、車両82が低μ路を走行中であると判断し、必要に応
じて低μ路用の旋回制御を行えば良い。具体的には、前
記(5)式に基づいて算出される修正横加速度GYFに0.0
5gを加えることにより予め設定した閾値よりも目標横加
速度GYOが大きいか否か、つまり低μ路では実際の横加
速度GYよりも目標横加速度GYOの方が大きな値となるた
め、目標横加速度GYOがこの閾値よりも大きいか否か判
定し、目標横加速度GYOが閾値よりも大きい場合には、
車両82が低μ路を走行中であると判断するのである。
このようにして目標横加速度GYOを算出したならば、
予めこの目標横加速度GYOの大きさと車速Vとに応じて
設定された車両82の目標前後加速度GXOを目標前後加速
度算出部144にてTCL76に予め記憶された第29図に示す如
きマップから読み出し、この目標前後加速度GXOに対応
する機関11の基準駆動トルクTBを基準駆動トルク算出部
145にて下式(7)により算出する。
但し、TLは車両82の横加速度GYの関数として求められ
る路面の抵抗であるロードロード(Road−Load)トルク
であり、本実施例では、第30図に示す如きマップから求
めている。
ここで、操舵軸旋回角δHと車速Vとによって、機関1
1の目標駆動トルクを求めるだけでは、運転者の意志が
全く反映されず、車両82の操縦性の面で運転者に不満の
残る虞がある。このため、運転者が希望している機関11
の要求駆動トルクTdをアクセルペダル31の踏み込み量か
ら求め、要求駆動トルクTdを勘案して機関11の目標駆動
トルクを設定することが望ましい。
そこで、本実施例では基準駆動トルクTBの採用割合を
決定するため、乗算部146にて基準駆動トルクTBに重み
付けの係数αを乗算して補正基準駆動トルクを求める。
この重み付けの係数αは、車両82を旋回走行させて経験
的に設定するが、高μ路では0.6程度前後の数値を採用
する。
一方、クランク角センサ55により検出される機関回転
数NEとアクセル開度センサ77により検出されるアクセル
開度θとを基に運転者が希望する要求駆動トルクTd
前記第24図に示す如きマップから求め、次いで乗算部14
7にて前記重み付けの係数αに対応した補正要求駆動ト
ルクを要求駆動トルクTdに(1−α)を乗算することに
より算出する。例えば、α=0.6に設定した場合には、
基準駆動トルクTBと要求駆動トルクTdとの採用割合が6
対4となる。
従って、機関11の目標駆動トルクTOCは加算部148にて
下式(8)によりて算出される。
TOC=α・TB+(1−α)・Td …(8) ところで、15ミリ秒毎に設定される機関11の目標駆動
トルクTOCの増減量が非常に大きな場合には、車両82の
加減速に伴うショックが発生し、乗り心地の低下を招来
することから、機関11の目標駆動トルクTOCの増減量が
車両82の乗り心地の低下を招来する程大きくなった場合
には、この目標駆動トルクTOCの増減量を規制すること
が望ましい。
そこで、本実施例では変化量クリップ部149にて今回
算出した目標駆動トルクTOC(n)と前回算出した目標駆動
トルクTOC(n-1)との差の絶対値|ΔT|が増減許容量TK
りも小さい場合には、算出された今回の目標駆動トルク
TOC(n)をそのまま採用するが、今回算出した目標駆動ト
ルクTOC(n)と前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との
差ΔTが負の増減許容量TKよりも大きくない場合には、
今回の目標駆動トルクTOC(n)を下式により設定する。
TOC(n)=TOC(n-1)−TK つまり、前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)に対す
る下げ幅を増減許容量TKで規制し、機関11の駆動トルク
低減に伴う減速ショックを少なくする。又、今回算出し
た目標駆動トルクTOC(n)と前回算出した目標駆動トルク
TOC(n-1)との差ΔTが増減許容量TK以上の場合には、今
回の目標駆動トルクTOC(n)を下式により設定する。
TOC(n)=TOC(n-1)+TK つまり、今回算出した目標駆動トルクTOC(n)と前回算
出した目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが増減許容量
TKを越えた場合には、前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1)に対する上げ幅を増減許容量TKで規制し、機関1
1の駆動トルク増大に伴う加速ショックを少なくする。
そして、旋回制御の開始或いは終了を判定するための
開始・終了判定部150での判定処理に従って、この目標
駆動トルクTOCに関する情報がECU15に出力される。
開始・終了判定部150は、下記(a)〜(d)に示す
全ての条件を満足しが場合に旋回制御の開始と判断し、
旋回制御中フラグFCをセットすると共に目標駆動トルク
TOCに関する情報をECU15に出力し、旋回制御の終了を判
断して旋回制御中フラグFCがリセットとなるまでは、こ
の処理を継続する。
(a)目標駆動トルクTOCが要求駆動トルクTdから閾
値、例えば2kgmを減算した値に満たない。
(b)運転者は図示しない手動スイッチを操作して旋回
制御を希望している。
(c)アイドルスイッチ68がオフ状態である。
(d)旋回のための制御系が正常である。
一方、前記開始・終了判定部150が旋回制御の開始を
判定した後、下記(e)及び(f)に示す条件の内のい
ずれかを満足した場合には、旋回制御終了と判断して旋
回制御中フラグFCをリセットし、ECU15に対する目標駆
動トルクTOCの送信を中止する。
(e)目標駆動トルクTOSが要求駆動トルクTd以上であ
る。
(f)旋回のための制御系に故障や断線等の異常があ
る。
ところで、アクセル開度センサ77の出力電圧とアクセ
ル開度θとの間には、当然のことながら一定の比例関
係があり、アクセル開度θが全閉の場合にアクセル開
度センサ77の出力電圧が例えば0.6ボルトとなるよう
に、スロットルボディ21に対してアクセル開度センサ77
が組付けられる。しかし、車両82の点検整備等でスロッ
トルボディ21からアクセル開度センサ77を取り外し、再
組付けを行った場合にこのアクセル開度センサ77を元の
取り付け状態に正確に戻すことは実質的に不可能であ
り、しかも経年変化等でスロットルボディ21に対するア
クセル開度センサ77の位置がずれてしまう虞もある。
そこで、本実施例ではアクセル開度センサ77の全閉位
置を学習補正するようにしており、これによってアクセ
ル開度センサ77からの検出信号に基づいて算出されるア
クセル開度θの信頼性を確保している。
このアクセル開度センサ77の全閉位置の学習手順を表
す第31図に示すように、アイドルスイッチ68がオン状態
且つイグニッションキースイッチ75がオンからオフ状態
になった後、一定時間、例えば2秒間のアクセル開度セ
ンサ77の出力を監視し、この間のアクセル開度センサ77
の出力の最低値をアクセル開度θの全閉位置として取
り込み、ECU15に組み込まれた図示しないバックアップ
付きのRAMに記憶しておき、次回の学習までこのアクセ
ル開度センサ77の出力の最低値を基準としてアクセル開
度θを補正する。
但し,車両82に搭載した図示しない蓄電池を取り外し
た場合には、前記RAMの記憶が消去されてしまうので、
このような場合には第32図に示す学習手順が採用され
る。
つまり、TCL76はA1にてアクセル開度θの全閉値θ
ACが前記RAMに記憶されているか否かを判定し、このA1
のステップにてアクセル開度θの全閉値θACがRAMに
記憶されていないと判断した場合には、A2にて初期値θ
A(O)をRAMに記憶させる。
一方、このA1のステップにてアクセル開度θの全閉
値θACがRAMに記憶されていると判断した場合には、A3
にてイグニッションキースイッチ75がオン状態であるか
否かを判定する。このA3のステップにてイグニッション
キースイッチ75がオン状態からオフ状態に変化したと判
断した場合には、A4にて図示しない学習用タイマのカウ
ントを開始させる。そして、この学習用タイマのカウン
ト開始後にA5にてアイドルスイッチ68がオン状態か否か
を判定する。
このA5のステップにてアイドルスイッチ68がオフ状態
であると判断したならば、A6にて前記学習用タイマのカ
ウントが設定値、例えば2秒に達したか否かを判定し、
再びこのA5のステップに戻る。又、A5のステップにてア
イドルスイッチ68がオン状態であると判断した場合に
は、A7にてアクセル開度センサ77の出力を所定の周期で
読み取り、A8にて今回のアクセル開度θA(n)が今までの
アクセル開度θの最小値θALよりも小さいか否かを判
定する。
ここで、今回のアクセル開度θA(n)が今までのアクセ
ル開度θAの最小値θALよりも大きいと判断した場合に
は、今までのアクセル開度θの最小値θALをそのまま
保持し、逆に今回のアクセル開度θA(n)が今までのアク
セル開度θの最小値θALよりも小さいと判断した場合
には、A9にて今回のアクセル開度θA(n)を新たな最小値
θALとして更新する。この操作をA6のステップにて前記
学習用タイマのカウントが設定値、例えば2秒に達する
まで繰り返す。
学習用タイマのカウントが設定値に達したならば、A1
0にてアクセル開度θの最小値θALが予め設定したク
リップ値、例えば0.3ボルトと0.9ボルトとの間にあるか
否かを判定する。そして、このアクセル開度θの最小
値θALが予め設定したクリップ値の範囲に収まっている
と判断した場合には、A11にてアクセル開度θの初期
値θA(O)或いは全閉値θACを前記最小値θALの方向に一
定値、例えば0.1ボルト近づけたものを今回の学習によ
るアクセル開度θの全閉値θAC(n)とする。つまり、
アクセル開度θの初期値θA(O)或いは全閉値θACがそ
の最小値θALよりも大きな場合には、 θAC(n)=θA(O)−0.1 又は、 θAC(n)=θA(n-1)−0.1 と設定し、逆にアクセル開度θの初期値θA(O)或いは
全閉値θACがその最小値θALよりも大きな場合には、 θAC(n)=θA(O)+0.1 又は、 θAC(n)=θAC(n-1)+0.1 と設定する。
前記A10のステップにてアクセル開度θの最小値θ
ALが予め設定したクリップ値の範囲から外れていると判
断した場合には、A12にて外れている方のクリップ値を
アクセル開度θの最小値θALとして置き換え、前記A1
1のステップに移行してアクセル開度θの全閉値θAC
を学習補正する。
このように、アクセル開度θの最小値θALに上限値
と下限値とを設定することにより、アクセル開度センサ
77が故障した場合でも誤った学習を行う虞がなく、一回
当たりの学習補正量を一定値に設定したことにより、ノ
イズ等の外乱に対しても誤った学習を行うことがなくな
る。
上述した実施例では、アクセル開度センサ77の全閉値
θACの学習開始時期をイグニッションキースイッチ75が
オン状態からオフ状態へ変化した時点を基準にしたが、
図示しない座席に組み込まれた着座センサを用い、イグ
ニッションキースイッチ75がオン状態でも運転者が座席
を離れたことを着座センサによる座席の圧力変化や位置
変位等を利用して検出し、前記A4のステップ以降の学習
処理を開始するようにしても良い。又、図示しないドア
ロック装置が車両82の外側から操作されたことを検出し
たり、或いはキーエントリシステムによりドアロック装
置が操作されたことを検出した時点にてアクセル開度セ
ンサ77の全閉値θACの学習を開始することも可能であ
る。この他に、油圧式自動変速機13の図示しないシフト
レバーの位置がニュートラル位置か或いはパーキング位
置であって(手動変速機を搭載した車両の場合にはニュ
ートラル位置)、手動ブレーキが操作され、しかも空気
調和装置がオフ状態である、つまりアイドルアップ状態
ではない場合に、学習処理を行うようにしても良い。
前記車両82には、旋回制御を運転者が選択するための
図示しない手動スイッチが設けられており、運転者がこ
の手動スイッチを操作して旋回制御を選択した場合、以
下に説明する旋回制御の操作を行うようになっている。
この旋回制御用の目標駆動トルクTOCを決定するため
の制御の流れを表す第33図に示すように、C1にて上述し
た各種データの検出及び演算処理により、目標駆動トル
クTOCが算出されるが、この操作は前記手動スイッチの
操作とは関係なく行われる。
次に、C2にて車両82が旋回制御中であるかどうか、つ
まり旋回制御中フラグFCがセットされているかどうかを
判定する。最初は旋回制御中ではないので、旋回制御中
フラグFCがリセット状態であると判断し、C3例えば(Td
−2)以下か否かを判定する。つまり、車両82の直進状
態でも目標駆動トルクTOCを算出することができるが、
その値は運転者の要求駆動トルクTdよりも大きいのが普
通である。しかし、この要求駆動トルクTdが車両82の旋
回時には一般的に小さくなるので、目標駆動トルクTOC
が閾値(Td−2)以下となった時を旋回制御の開始条件
として判定するようにしている。
なお、この閾値を(Td−2)と設定したのは、制御の
ハンチングを防止するためのヒステリシスとしてであ
る。
C3のステップにて目標駆動トルクTOCが閾値(Td
2)以下であると判断すると、TCL76はC4にてアイドル
スイッチ68がオフ状態か否かを判定する。
このC4のステップにてアイドルスイッチ68がオフ状
態、即ちアクセルペダル31が運転者によって踏み込まれ
ていると判断した場合、C5にて旋回制御中フラグFCがセ
ットされる。次に、C6にて二つの舵角中立位置学習済フ
ラグFHN,FHの内の少なくとも一方がセットされている
か否か、即ち操舵角センサ84によって検出される舵角δ
の信憑性が判定される。
C6のステップにて二つの舵角中立位置学習済フラグF
HN,FHの内の少なくとも一方がセットされていると判断
すると、C7にて旋回制御中フラグFCがセットされている
か否かが再び判定される。
以上の手順では、C5のステップにて旋回制御中フラグ
FCがセットされているので、C7のステップでは旋回制御
中フラグFCがセットされていると判断され、C8にて先の
算出値、即ちC1のステップでの目標駆動トルクTOCがそ
のまま採用される。
一方、前記C6のステップにて舵角中立位置学習済フラ
グFHN,FHのいずれもがセットされていないと判断した
場合にも、C17にて旋回制御中フラグFCがセットされて
いるか否かが再び判定される。このC17のステップにて
旋回制御中フラグFCがセットされていると判断した場
合、前記C8のステップに移行するが、(2)式にて算出
される舵角δの信憑性がないので、(5)式に基づく修
正横加速度GYFを用いて(8)式の目標駆動トルクTOC
このC8のステップでの算出値として採用される。
前記C17のステップにて旋回制御中フラグFCがセット
されていないと判断した場合には、(8)式にて算出さ
れた目標駆動トルクTOCを採用せず、TCL76は目標駆動ト
ルクTOCとして機関11の最大トルクをC9にて出力し、こ
れによりECU15がトルク制御用電磁弁51,56のデューティ
率を0%側に低下させる結果、機関11は運転者によるア
クセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発生
する。
又、前記C3のステップにて目標駆動トルクTOCが閾値
(Td−2)以下でないと判断すると、旋回制御に移行せ
ずにC6或いはC7のステップからC9のステップに移行し、
TCL76は目標駆動トルクTOCとして機関11の最大トルクを
出力し、これによりECU15がトルク制御用電磁弁51,56の
デューティ率を0%側に低下させる結果、機関11は運転
者によるアクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動ト
ルクを発生する。
同様に、C4のステップにてアイドルスイッチ68がオン
状態、即ちアクセルペダル31が運転者によって踏み込ま
れていないと判断した場合にも、TCL76は目標駆動トル
クTOCとして機関11の最大トルクを出力し、これによりE
CU15がトルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0%
側に低下させる結果、機関11は運転者によるアクセルペ
ダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発生して旋回
制御には移行しない。
前記C2のステップにて旋回制御中フラグFCがセットさ
れていると判断した場合には、C10にて今回算出した目
標駆動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1)との差ΔTが予め設定した増減許容量TKよりも
大きいか否かを判定する。この増減許容量TKは乗員に車
両82の加減速ショックを感じさせない程度のトルク変化
量であり、例えば車両82の目標前後加速度GXOを毎秒0.1
gに抑えたい場合には、前記(7)式を利用して となる。
前記C10のステップにて今回算出した目標駆動トルクT
OCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが
予め設定した増減許容量TKよりも大きくないと判断され
ると、C11にて今度は目標駆動トルクTOCと前回算出した
目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが負の増減許容量TK
よりも大きいか否かを判定する。
C11のステップにて今回算出した目標駆動トルクTOC
前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが負の
増減許容量TKよりも大きいと判断すると、今回算出した
目標駆動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1)との差の絶対値|ΔT|が増減許容量TKよりも小
さいので、C1のステップにて算出された目標駆動トルク
TOCをC8のステップでの算出値として採用する。
又、C11のステップにて今回算出した目標駆動トルクT
OCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが
負の増減許容量TKよりも大きくないと判断すると、C12
にて今回の目標駆動トルクTOCを下式により修正し、こ
れをC8のステップでの算出値として採用する。
TOC=TOC(n-1)−TK つまり、前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)に対す
る下げ幅を増減許容量TKで規制し、機関11の駆動トルク
低減に伴う減速ショックを少なくするのである。
一方、前記C10のステップにて今回算出した目標駆動
トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との
差ΔTが増減許容量TK以上であると判断されると、C13
にて今回の目標駆動トルクTOCを下式により修正し、こ
れをC8のステップでの算出値として採用する。
TOC=TOC(n-1)+TK つまり、駆動トルクの増大の場合も前述の駆動トルク
減少の場合と同様に、今回算出した目標駆動トルクTOC
と前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)との差ΔTが増
減許容量TKを越えた場合には、前回算出した目標駆動ト
ルクTOC(n-1)に対する上げ幅を増減許容量TKで規制し、
機関11の駆動トルク増大に伴う加速ショックを少なくす
るのである。
以上のようにして目標駆動トルクTOCが設定される
と、TCL76はC14にてこの目標駆動トルクTOCが運転者の
要求駆動トルクTdよりも大きいか否かを判定する。
ここで、旋回制御中フラグFCがセットされている場
合、目標駆動トルクTOCは運転者の要求駆動トルクTd
りも大きくないので、C15にてアイドルスイッチ68がオ
ン状態か否かを判定する。
このC15のステップにてアイドルスイッチ68がオン状
態でないと判断されると、旋回制御を必要としている状
態であるので、前記C6のステップに移行する。そして、
C7のステップにて旋回制御中フラグFCがセットされてい
ると判断するか、或いはC17のステップにて旋回制御中
フラグFCがセットされていると判断すると、C1又はC12
又はC13のステップにて採用された算出値が旋回制御用
の目標駆動トルクTOCとして選択される。
又、前記C14のステップにて目標駆動トルクTOCが運転
者の要求駆動トルクTdよりも大きいと判断した場合、車
両82の旋回走行が終了した状態を意味するので、TCL76
はC16にて旋回制御中フラグFCをリセットする。同様
に、C15のステップにてアイドルスイッチ68がオン状態
であると判断されると、アクセルペダル31が踏み込まれ
ていない状態であるので、C16のステップに移行して旋
回制御中フラグFCがリセットする。
このC16にて旋回制御中フラグFCがリセットされる
と、TCL76は目標駆動トルクTOCとして機関11の最大トル
クをC9にて出力し、これによりECU15がトルク制御用電
磁弁51,56のデューティ率を0%側に低下させる結果、
機関11は運転者によるアクセルペダル31の踏み込み量に
応じた駆動トルクを発生する。
なお、上述した旋回制御の手順を簡素化するために運
転者の要求駆動トルクTdを無視することも当然可能であ
り、この場合には目標駆動トルクとして前記(7)式に
より算出可能な基準駆動トルクTBを採用すれば良い。
又、本実施例のように運転者の要求駆動トルクTdを勘案
する場合でも、重み付けの係数αを固定値とするのでは
なく、制御開始後の時間の経過と共に係数αの値を漸次
減少させたり、或いは車速Vに応じて漸次減少させ、運
転者の要求駆動トルクTdの採用割合を徐々に多くするよ
うにしても良い。同様に、制御開始後のしばらくの間は
係数αの値を一定値にしておき、所定時間の経過後に漸
次減少させたり、或いは操舵軸旋回量δHの増大に伴っ
て係数αの値を増加させ、特に曲率半径が次第に小さく
なるような旋回路に対し、車両82を安全に走行させるよ
うにすることも可能である。
上述した実施例では、高μ路用の目標駆動トルクを算
出するようにしたが、この高μ路と低μ路とに対応する
旋回制御用の目標駆動トルクをそれぞれ算出し、これら
の目標駆動トルクから最終的な目標駆動トルクを選択す
るようにしても良い。又、上述した演算処理方法では、
機関11の急激な駆動トルクの変動による加減速ショック
を防止するため、目標駆動トルクTOCを算出するに際し
て増減許容量TKによりこの目標駆動トルクTOCの規制を
図っているが、この規制を目標前後加速度GXOに対して
行うようにしても良い。
この旋回制御用の目標駆動トルクTOCを算出したの
ち、TCL76はこれら二つの目標駆動トルクTOS,TOCから
最適な最終目標駆動トルクTOを選択し、これをECU15に
出力する。この場合、車両82の走行安全性を考慮して小
さな数値の方の目標駆動トルクを優先して出力する。但
し、一般的にはスリップ制御用の目標駆動トルクTOS
旋回制御用の目標駆動トルクTOCよりも常に小さいこと
から、スリップ制御用、旋回制御用の順に最終目標駆動
トルクTOを選択すれば良い。
この処理の流れを表す第34図に示すように、M11にて
スリップ制御用の目標駆動トルクTOSと旋回制御用の目
標駆動トルクTOCとを算出した後、M12にてスリップ制御
中フラグFSがセットされているか否かを判定し、このス
リップ制御中フラグFSがセットされていると判断したな
らば、最終目標駆動トルクTOとしてスリップ制御用の目
標駆動トルクTOSをM13にて選択し、これをECU15に出力
する。
一方、前記M12のステップにてスリップ制御中フラグF
Sがセットされていないと判断したならば、M14にて旋回
制御中フラグFCがセットされているか否かを判定し、こ
の旋回制御中フラグFCがセットされていると判断したな
らば、最終目標駆動トルクTOとして旋回制御用の目標駆
動トルクTOCをM15にて選択し、これをECU15に出力す
る。
又、前記M14のステップにて旋回制御中フラグFCがセ
ットされていないと判断したならば、TCL76はM16にて機
関11の最大トルクを最終目標駆動トルクTOとしてECU15
に出力する。
以上のようにして最終目標駆動トルクTOを選択する一
方、アクチュエータ41を介したスロットル弁20の全閉操
作によっても機関11の出力低減が間に合わない急発進時
や路面状況が通常の乾燥路から凍結路に急変するような
場合、TCL76はECU15にて設定される点火時期Pの基本遅
角量PBに対する遅角割合を設定し、これをECU15に出力
している。
前記基本遅角量PBは、機関11の運転に支障を来さない
ような遅角の最大値であり、機関11の吸気量と機関回転
数NEとに基づいて設定される。又、前記遅角割合とし
て、本実施例では基本遅角量PBを0にする0レベルと、
基本遅角量PBを3分の2に圧縮するIレベルと、基本遅
角量PBをそのまま出力するIIレベルと、基本遅角量PB
そのまま出力すると共にスロットル弁20を全閉操作する
IIIレベルとの四つが設定されており、基本的にはスリ
ップ量sの変化率Gsが大きくなるに従って、大きな遅角
量となるような遅角割合を選択している。
この遅角割合を読み出す手順を表す第35図に示すよう
に、TCL76はまずP1にて点火時期旋回制御中フラグFP
リセットし、P2にてスリップ制御中フラグFSがセットさ
れているか否かを判定する。このP2のステップにてスリ
ップ制御中フラグFSがセットされていると判断すると、
P3にて点火時期制御中フラグFPをセットし、P4にてスリ
ップ量sが毎時0km未満か否かを判定する。又、前記P2
のステップにてスリップ制御中フラグFSがセットされて
いないと判断すると、前記P4のステップに移行する。
このP4のステップにてスリップ量sが毎時0km未満で
ある、即ち機関11の駆動トルクを上げても問題ないと判
断すると、P5にて遅角割合を0レベルにセットし、これ
をECU15に出力する。逆に、このP4のステップにてスリ
ップ量sが毎時0km以上であると判断した場合には、P6
にてスリップ量変化率Gsが2.5g以下であるか否かを判定
し、このP6のステップにてスリップ量変化率Gsが2.5g以
下であると判断した場合には、P7にて遅角割合がIIIレ
ベルであるか否かを判定する。
又、前記P6のステップにてスリップ量変化率Gsが2.5g
を超える、即ち急激に前輪64,65がスリップしていると
判断した場合には、P8にて最終目標駆動トルクTOが4kgm
未満であるか否かを判定し、この最終目標駆動トルクTO
が4kgm未満である、即ち機関11の駆動トルクを急激に抑
制する必要があると判断した場合には、P9にて遅角割合
をIIIレベルに設定して前記P7のステップに移行する。
逆に、P8のステップにて最終目標駆動トルクTOが4kgm以
上であると判断した場合には、そのままP7のステップに
移行する。
このP7のステップにて遅角割合がIIIレベルであると
判断したならば、P10にてスリップ量変化率Gsが0gを超
えるか否かを判定する。ここで、スリップ量変化率Gs
0gを超えている、即ちスリップ量sが増加する傾向にあ
ると判断した場合には、P11にて点火時期制御中フラグF
Pがセットされているか否かを判定するが、P10のステッ
プにてスリップ量変化率Gsが0g以下である、即ちスリッ
プ量sが減少傾向にあると判断した場合には、P12にて
このスリップ量sが毎時8kmを超えているか否かを判定
する。
このP12のステップにてスリップ量sが毎時8kmを超え
ていると判断した場合には、前記P11のステップに移行
し、逆にスリップ量sが毎時8km以下であると判断した
場合には、P13にて遅角割合をIIIレベルからIIレベルへ
切替え、P14にてスリップ量変化率Gsが0.5g以下である
か否かを判定する。同様に、前記P7のステップにて遅角
割合がIIIレベルではないと判断した場合にも、このP14
のステップに移行する。
このP14のステップにてスリップ量変化率Gsが0.5g以
下である、即ちスリップ量sの変化が余り急激ではない
と判断した場合には、P15にて遅角割合がIIレベルであ
るか否かを判定する。又、P14のステップにてスリップ
量変化率Gsが0.5g以下ではないと判断した場合には、P1
6にて遅角割合をIIレベルに設定し、P15のステップに移
行する。
そして、このP15のステップにて遅角割合がIIレベル
であると判断した場合には、P16にてスリップ量変化率G
sが0gを越えるか否かを判定し、逆に遅角割合がIIレベ
ルではないと判断した場合には、P17にてスリップ量変
化率Gsが0.3g以下であるか否かを判定する。前記P16の
ステップにてスリップ量変化率Gsが0gを越えていない、
即ちスリップ量sが減少傾向にあると判断した場合に
は、P18にてこのスリップ量sが毎時8kmを越えているか
否かを判定する。そして、このP18のステップにてスリ
ップ量sが毎時8km以下であると判定した場合には、P19
にて遅角割合をIIレベルからIレベルへ切替え、前記P1
7のステップに移行する。又、前記P16のステップにてス
リップ量変化率Gsが0g以上である、即ちスリップ量sが
増加傾向にあると判断した場合、及びP18のステップに
てスリップ量sが毎時8kmを越えている、即とスリップ
量sが大きいと判断した場合には、それぞれ前記P11の
ステップに移行する。
前記P17のステップにてスリップ量変化率Gsが0.3g以
下である、即ちスリップ量sが殆ど増加傾向にないと判
断したならば、P20にて遅角割合がIレベルであるか否
かを判定する。逆に、P17のステップにてスリップ量変
化率Gsが0.3gを越えている、即ちスリップ量sが多少な
りとも増加傾向にあると判断した場合には、P21にて遅
角割合をIレベルに設定する。
そして、P20にて遅角割合がIレベルであると判断し
た場合には、P22にてスリップ量変化率Gsが0gを越えて
いるか否かを判定し、これが0g以下である、即ちスリッ
プ量sが減少傾向にあると判断した場合には、P23にて
スリップ量sが毎時5km未満であるか否かを判定する。
このP23のステップにてスリップ量sが毎時5km未満であ
る、即ち前輪64,65が殆どスリップしていないと判断し
たならば、P24にて遅角割合を0レベルに設定し、これ
をECU15に出力する。又、P20のステップにて遅角割合が
Iレベルではないと判断した場合や、P22のステップに
てスリップ量変化率Gaが0gを越えている、即ちスリップ
量sが増加傾向にあると判断した場合、或いはP23のス
テップにてスリップ量sが毎時5km以上である、即ちス
リップ量sが比較的多いと判断した場合には、それぞれ
前記P11のステップに移行する。
一方、このP11のステップにて点火時期制御中フラグF
Pがセットされていると判断したならば、P25にて最終目
標駆動トルクTOが10kgm未満であるか否かを判定する。
又、P11のステップにて点火時期制御中フラグFPがセッ
トされていないと判断した場合には、P26にて遅角割合
を0レベルに設定してからP25のステップに移行する。
そして、このP25にて最終目標駆動トルクTOが10kgm以
上である、即ち機関11が多少大きめな駆動力を発生して
いると判断した場合には、P27にて遅角割合がIIレベル
であるか否かを判定し、この遅角割合がIIレベルである
と判断した場合には、P28にて遅角割合をIレベルに落
とし、これをECU15に出力する。
前記P25のステップにて最終目標駆動トルクTOが10kgm
未満であると判断した場合や、P27のステップにて遅角
割合がIIレベルではないと判断した場合には、P29にて
油圧式自動変速機13が変速中か否かを判定する。そし
て、油圧式自動変速機13が変速中であると判断した場合
には、P30にて遅角割合がIIIレベルであるか否かを判定
し、このP30のステップにて遅角割合がIIIレベルである
と判断した場合には、P31にて遅角割合をIIレベルに落
とし、これをECU15に出力する。又、P29のステップにて
油圧式自動変速機13が変速中ではないと判断した場合、
或いはP30のステップにて遅角割合がIIIレベルではない
と判断した場合には、それぞれP32にて先に設定された
遅角割合をそのままECU15に出力する。
例えば、P9のステップにてIIIレベルの遅角割合が設
定された場合、スリップ量変化率Gsが0gを越えていると
共にスリップ量sが毎時8kmを超えている、即ちスリッ
プ量sの増加割合が急激であり、最終目標駆動トルクTO
が10kgm未満であって点火時期の遅角操作だけでは前輪6
4,65のスリップを充分に抑えることが困難であると判断
した場合には、IIIレベルの遅角割合が選択されてスロ
ットル弁20の開度を強制的に全閉状態にし、スリップの
発生をその初期段階で効率良く抑え込むようにしてい
る。
前記ECU15は、機関回転数NEと機関11の吸気量とに基
づいて予め設定された点火時期P及び基本となる遅角量
PBに関する図示しないマップから、これら点火時期P及
び基本遅角量PBをクランク角センサ62からの検出信号及
びエアフローセンサ70からの検出信号に基づいて読み出
し、これをTCL76から送られた遅角割合に基づいて補正
し、目標遅角量pOを算出するようにしている。この場
合、図示しない排気ガス浄化触媒を損傷しないような排
気ガスの上限温度に対応して目標遅角量pOの上限値が設
定されており、この排気ガスの温度は排気温センサ74か
らの検出信号により検出される。
なお、水温センサ71により検出される機関11の冷却水
温が予め設定された値よりも低い場合には、点火時期P
を遅角することは機関11のノッキングやストールを誘発
する虞があるため、以下に示す点火時期Pの遅角操作は
中止する。
この遅角制御における目標遅角量pOの演算手順を表す
第36図に示すように、まずECU15はQ1にて前述したスリ
ップ制御中フラグFSがセットされているか否かを判定
し、このスリップ制御中フラグFSがセットされていると
判断すると、Q2にて遅角割合がIIIレベルに設定されて
いるか否かを判定する。
そして、このQ2のステップにて遅角割合がIIIレベル
であると判断した場合には、Q3にてマップから読み出し
た基本遅角量PBをそのまま目標遅角量pOとして利用し、
点火時期Pを目標遅角量pOだけ遅角する。更に、最終目
標駆動トルクTOの値に関係なくスロットル弁20が全閉状
態となるように、Q4にてトルク制御用電磁弁51,56のデ
ューティ率を100%に設定し、強制的にスロットル弁20
の全閉状態を実現する。
又、Q2のステップにて遅角割合がIIIレベルではない
と判断した場合には、Q5にて遅角割合がIIレベルに設定
されているか否かを判定する。そして、このQ5のステッ
プにて遅角割合がIIレベルであると判断した場合には、
前記Q3のステップと同様にQ6にて目標遅角量pOをマップ
から読み出した基本遅角量PBをそのまま目標遅角量pO
して利用し、点火時期Pを目標遅角量pOだけ遅角する。
更に、Q7にてECU15は目標駆動トルクTOSの値に応じてト
ルク制御用電磁弁51,56のデューティ率をQ7にて設定
し、運転者によるアクセルペダル31の踏み込み量とは関
係なく、機関11の駆動トルクを低減する。
ここでECU15には機関回転数NEと機関11の駆動トルク
とをパラメータとしてスロットル開度θを求めるため
のマップが記憶されており、ECU15はこのマップを用い
て現在の機関回転数NEとこの目標駆動トルクTOSとに対
応した目標スロットル開度θTOを読み出す。
次いで、ECU15はこの目標スロットル開度θTOとスロ
ットル開度センサ67から出力される実際のスロットル開
度θとの偏差を求め、一対のトルク制御用電磁弁51,5
6のデューティ率を前記偏差に見合う値に設定して各ト
ルク制御用電磁弁51,56のプランジャ52,57のソレノイド
に電流を流し、アクチュエータ41の作動により実際のス
ロットル開度θが目標スロットル開度θTOにまで下が
るように制御する。
なお、目標駆動トルクTOSとして機関11の最大トルク
がECU15に出力された場合、ECU15はトルク制御用電磁弁
51,56のデューティ率を0%側に低下させ、運転者によ
るアクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを
機関11に発生させる。
前記Q5のステップにて遅角割合がIIレベルではないと
判断した場合には、Q8にて遅角割合がIレベルに設定さ
れているか否かを判定する。このQ8のステップにて遅角
割合がIレベルに設定されていると判断した場合には、
目標遅角量pOを下式の如く設定して点火時期Pを目標遅
角量pOだけ遅角し、更に前記Q7のステップに移行する。
一方、前記Q8のステップにて遅角割合がIレベルでは
ないと判断した場合には、Q10にて目標遅角量pOが0で
あるか否かを判定し、これが0であると判断した場合に
は、Q7のステップに移行して点火時期Pを遅角せず、目
標駆動トルクTOSの値に応じてトルク制御用電磁弁51,56
のデューティ率を設定し、運転者によるアクセルペダル
31の踏み込み量とは関係なく、機関11の駆動トルクを低
減する。
又、前記Q10のステップにて目標遅角量pOが0ではな
いと判断した場合には、Q11にて主タイマのサンプリン
グ周期Δt毎に目標遅角量pOをランプ制御により例えば
1度ずつpO=0となるまで減算させて行き、機関11の駆
動トルクの変動に伴うショックを軽減した後、Q7のステ
ップに移行する。
なお、前記Q1のステップにてスリップ制御中フラグFS
がリセットされていると判断した場合には、機関11の駆
動トルクを低減させない通常の走行制御となり、Q12に
てpO=0として点火時期Pを遅角させず、Q13にてトル
ク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0%に設定する
ことにより、機関11は運転者によるアクセルペダル31の
踏み込み量に応じた駆動トルクを発生させる。
〈発明の効果〉 以上実施例とともに具体的に説明したように、本発明
によれば、運転者がある車速でハンドルを切ると、実際
に車両に作用する横加速度を検出するよりも速く、ハン
ドルを切ると同時に車両の速度および舵角に基づき車両
に発生すると推定される目標横加速度として演算し、こ
の目標横加速度に基づき車両がその舵角で旋回可能な目
標前後加速度を設定し、その目標前後加速度となるよう
な基準駆動トルクを求め、またアクセルペダルの踏み込
み量に応じた要求駆動トルクを設定し、出力制御中には
常にこれら基準駆動トルク及び要求駆動トルクに基づき
目標駆動トルクを設定してトルク低減手段を制御するた
め、実際に車両に発生した横加速度を検出して制御する
ものに比較して、車両の旋回制御の応答性を大幅に向上
することができると共に、高速旋回時のような出力制御
中には常に目標駆動トルクが基準駆動トルクに加え運転
者のアクセルペダルの踏み込み量に対応する要求駆動ト
ルクが加味されるため、駆動トルクの低減量が運転者の
意向が反映された適切な量となり、運転者の意図に反し
て必要以上に駆動トルクが低減された場合のように運転
者に違和感を与えることなく、かつ車両の姿勢に影響を
与えることなく、車両の姿勢を適切に保ちながら旋回路
を安全に走行することができる。更に、本発明によれば
低速時には旋回制御ユニットによるトルク低減手段の制
御を中断するようにしたので、運転者の操舵技術だけで
充分良好な旋回ができる場合には、運転者のアクセル操
作に対応した駆動トルクにより機関が駆動され、運転者
が違和感を感じることがない良好な操縦が保証される。
特に、交通量の多い交差点での右左折の際、所望の充分
な加速を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例方法を実現する車両の出力制御
装置を前進4段後進1段の油圧式自動変速機を組み込ん
だ前輪駆動形式の車両に応用した場合の概念図、第2図
はその概略構成図、第3図はそのスロットル弁の駆動機
構を表す断面図、第4図はその制御の全体の流れを表す
フローチャート、第5図は操舵軸の中立位置学習補正の
流れを表すフローチャート、第6図は車速と可変閾値と
の関係を表すマップ、第7図は操舵軸の中立位置を学習
補正した場合の補正量の一例を表すグラフ、第8図はス
リップ制御用の目標駆動トルクの演算手順を表すブロッ
ク図、第9図は車速と補正係数との関係を表すマップ、
第10図は車速と走行抵抗との関係を表すマップ、第11図
は操舵軸旋回量と補正トルクとの関係を表すマップ、第
12図はスリップ制御開始直後における目標駆動トルクの
下限値を規制するマップ、第13図はタイヤと路面との摩
擦係数と、このタイヤのスリップ率との関係を表すグラ
フ、第14図は目標横加速度と加速に伴う速度補正量との
関係を表すマップ、第15図は横加速度と旋回に伴う速度
補正量との関係を表すマップ、第16図は操舵角センサの
異常を検出するための回路図、第17図は操舵角センサ84
の異常検出処理の流れを表すフローチャート、第18図は
車速と補正係数との関係を表すマップ、第19図は横加速
度の選択手順の流れを表すフローチャート、第20図はス
リップ量と比例係数との関係を表すマップ、第21図は車
速と積分補正トルクの下限値との関係を表すマップ、第
22図は積分補正トルクの増減領域を表すグラフ、第23図
は油圧式自動変速機の各変速段と各補正トルクに対応す
る補正係数との関係を表すマップ、第24図は機関回転数
と要求駆動トルクとアクセル開度との関係を表すマッ
プ、第25図はスリップ制御の流れを表すフローチャー
ト、第26図は旋回制御用の目標駆動トルクを演算する手
順を表すブロック図、第27図は車速と補正係数との関係
を表すマップ、第28図はスタビリティファクタを説明す
るための横加速度と操舵角比との関係を表すグラフ、第
29図は目標横加速度と目標前後加速度と車速との関係を
表すマップ、第30図は横加速度とロードロードトルクと
の関係を表すマップ、第31図はアクセル開度センサの全
閉位置の学習補正の手順の一例を表すグラフ、第32図は
アクセル開度センサの全閉位置の学習補正の流れの他の
一例を表すフローチャート、第33図は旋回制御の流れを
表すフローチャート、第34図は最終目標駆動トルクの選
択操作の流れを表すフローチャート、第35図は遅角割合
の選択操作の流れを表すフローチャート、第36図は機関
の出力制御の手順を表すフローチャートである。 又、図中の符号で11は機関、13は油圧式自動変速機、15
はECU、16は油圧制御装置、20はスロットル弁、23はア
クセルレバー、24はスロットルレバー、31はアクセルペ
ダル、32はケーブル、34は爪部、35はストッパ、41はア
クチュエータ、43は制御棒、47は接続配管、48はバキュ
ームタンク、49は逆止め弁、50,55は配管、51,56はトル
ク制御用電磁弁、60は電磁弁、61は点火プラグ、62はク
ランク角センサ、64,65は前輪、66は前輪回転センサ、6
7はスロットル開度センサ、68はアイドルスイッチ、70
はエアフローセンサ、71は水温センサ、74は排気温セン
サ、75はイグニッションキースイッチ、76はTCL、77は
アクセル開度センサ、78,79は後輪、80,81は後輪回転セ
ンサ、82は車両、83は操舵軸、84は操舵角センサ、85は
操舵ハンドル、86は操舵軸基準位置センサ、87は通信ケ
ーブル、104,105,117,135は乗算部、106,131は微分演算
部、107,110はクリップ部、108,123はフィルタ部、109
はトルク換算部、111は走行抵抗算出部、112,114,119は
加算部、113はコーナリングドラッグ補正量算出部、115
は可変クリップ部、116,121,124は減算部、118は加速度
補正部、120は旋回補正部、122は横加速度演算部であ
り、Aはスタビリティファクタ、bはトレッド、FPは点
火時期制御中フラグ、FSはスリップ制御中フラグ、GF
実前輪加速度、GKC,GKFは前輪加速度補正量、Gsはスリ
ップ量変化率、GXFは修正前後加速度、GXOは目標前後加
速度、GYOは目標横加速度、gは重力加速度、NEは機関
回転数、Pは点火時期、pBは基本遅角量、pOは目標遅角
量、rは車輪有効半径、SOは目標スリップ率、sはスリ
ップ量、TBは基準駆動トルク、TCはコーナリングドラッ
グ補正トルク、TDは微分補正トルク、Tdは要求駆動トル
ク、TIは積分補正トルク、TOは最終目標駆動トルク、T
OCは旋回制御用目標駆動トルク、TOSはスリップ制御用
目標駆動トルク、TPは比例補正トルク、TPIDは最終補正
トルク、TRは走行抵抗、Δtはサンプリング周期、Vは
車速、VFは実前輪速、VFO,VFSは目標前輪速、VK,VKC
はスリップ補正量、VRLは左後輪速、VRRは右後輪速、VS
はスリップ制御用の車速、Wbは車体重量、δは前輪の舵
角、δは操舵軸の旋回角、ρは作動歯車減速比、ρ
KIは積分補正係数、ρKPは比例補正係数、ρは油圧式
自動変速機の変速比、ρはトルクコンバータ比であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮田 安進 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動 車工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−253228(JP,A) 特開 昭62−10437(JP,A) 特開 昭62−153533(JP,A) 特開 平1−94032(JP,A) 特開 平2−27124(JP,A) 特開 平2−70939(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】運転者による操作とは独立に機関の駆動ト
    ルクを低減可能なトルク低減手段と、操舵輪の舵角を検
    出する舵角検出手段と、車両の速度を検出する車速検出
    手段と、これら舵角検出手段及び車速検出手段からの検
    出信号に基づき前記車両に発生すると推定される目標横
    加速度を演算する目標横加速度演算手段と、前記目標横
    加速度に基づき前記車両が前記舵角で旋回可能な目標前
    後加速度を演算する目標前後加速度演算手段と、前記目
    標前後加速度を得るために必要な基準駆動トルクを演算
    する基準駆動トルク演算手段と、アクセルペダルの踏み
    込み量に応じて要求駆動トルクを求める要求駆動トルク
    設定手段と、出力制御中には常に前記基準駆動トルク及
    び前記要求駆動トルクに基づき目標駆動トルクを設定す
    る目標駆動トルク演算手段と、前記駆動トルクが前記目
    標駆動トルクとなるように前記トルク低減手段の作動を
    制御する旋回制御ユニットを備え、 前記車両が所定値以下の速度で走行しているときには前
    記旋回制御ユニットによる前記トルク低減手段の制御を
    中断することを特徴とする車両の出力制御方法。
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DE69103288T DE69103288T2 (de) 1990-01-25 1991-01-25 Kurven-Regelvorrichtung und -verfahren für Kraftfahrzeuge.
KR1019910001244A KR940009019B1 (ko) 1990-01-25 1991-01-25 차량의 선회 제어장치
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