JP2569965B2 - 駆動輪の差動制限装置 - Google Patents

駆動輪の差動制限装置

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JP2569965B2
JP2569965B2 JP2417280A JP41728090A JP2569965B2 JP 2569965 B2 JP2569965 B2 JP 2569965B2 JP 2417280 A JP2417280 A JP 2417280A JP 41728090 A JP41728090 A JP 41728090A JP 2569965 B2 JP2569965 B2 JP 2569965B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路面状況に基づく左右
一対の駆動輪の周速度の差に応じてこれら駆動輪に対す
る差動拘束トルクを任意に変更し得る駆動輪の差動制限
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車輪を介して路上を走行する形
式の車両においては、機関と左右一対の駆動輪との間に
差動装置を介在させ、車両の旋回時における駆動輪の周
速度差を許容できるようにしている。
【0003】このため、路面状況が左右で大きく相違し
ているような箇所、例えば一方が凍結路等のような低摩
擦係数の路面であって、他方が乾燥アスファルト等のよ
うな高摩擦係数の路面を車両が走行するような場合、機
関の駆動力が差動装置の働きによって専ら路面抵抗の少
ない駆動輪側へ伝えられてしまう結果、一方の駆動輪の
みが空転して車両の走行が不可能となる虞がある。
【0004】このような不具合を防止するため、従来で
は差動装置の機能を拘束して左右一対の駆動輪を直結状
態に保持する差動拘束装置や、差動装置に一定の差動拘
束トルクを持たせて左右一対の駆動輪の周速度差を一定
以下に抑えるようにした差動制限装置等を差動装置に組
み込むことが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】差動拘束装置を組み込
んだ車両の場合、運転者の判断によって差動装置の機能
を解除したり、逆に差動装置の機能を働かせるように差
動拘束装置を適宜操作する必要があり、操作が面倒であ
って、この差動拘束装置の操作にある程度の熟練度が要
求される。
【0006】一方、差動制限装置を組み込んだ車両の場
合、従来の差動制限装置の差動拘束トルクは路面状態に
関係なく一定のため、路面状況によっては不適切な差動
拘束トルクとなる場合がある。特に、低摩擦係数の路面
を走行することを考慮して差動制限装置に大きな差動拘
束トルクを持たせると、一般的な路面での旋回時に車両
が曲がり難くなる等の不具合が発生する。
【0007】
【発明の目的】本発明は、路面状況に基づく左右一対の
駆動輪の周速度の差に応じてこれら駆動輪に対する差動
拘束トルクを任意に変更することにより、車両の旋回性
を損なうことなく常に適切な差動拘束トルクを発生させ
得る駆動輪の差動制限装置を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による駆動輪の差
動制限装置は、左右輪に対する差動拘束トルクを任意に
調整し得る拘束トルク調整用クラッチと、前記左右輪
速度をそれぞれ検出する車輪速センサと、上記車輪速セ
ンサにて算出された各車輪速の差に基づいて前記拘束ト
ルク調整用クラッチの差動拘束トルクを算出する差動拘
束トルク算出部と、車両の発進状態を判定する発進状態
推定手段と、この発進状態推定手段にて推定された前記
車両の発進状態に基づいて前記差動拘束トルク算出部に
て算出された差動拘束トルクを修正する発進修正演算部
と、この発進修正演算部からの出力に応じた差動拘束ト
ルクをえるよう前記拘束トルク調整用クラッチの差動拘
束トルクを制御する電子制御ユニットとを具えたもので
ある。
【0009】
【作用】車輪速センサが左右輪の速度をそれぞれ検出す
ると、検出された各車輪速の差に基づき、差動拘束トル
ク算出部が拘束トルク調整用クラッチの差動拘束トルク
を算出する。一方、発進状態推定手段が車両の発進状態
を判定すると、発進修正演算部ではこの車両の発進状態
に基づいて差動拘束トルク算出部にて算出された差動拘
束トルクを修正する。そして、この発進修正演算部にて
修正された差動拘束トルクに応じた差動拘束トルクをう
るように電子制御ユニットは拘束トルク調整用クラッチ
の動作を制御し、駆動輪に対する差動拘束トルクが適切
に調整される。
【0010】
【実施例】本発明による駆動輪の差動制限装置を機関の
出力制御装置が搭載された前輪駆動形式の車両に応用し
た一実施例の概念を表す図1及びその車両の概略構造を
表す図2に示すように、機関11の出力軸12には油圧
式自動変速機13の入力軸14が接続している。この油
圧式自動変速機13は、運転者による図示しないセレク
トレバーの選択位置と車両の運転状態とに応じて機関1
1の運転状態を制御する電子制御ユニット(以下、これ
をECUと記載する)15からの指令に基づき、油圧制
御装置16を介して所定の変速段を自動的に選択するよ
うになっている。この油圧式自動変速機13の具体的な
構成や作用等については、例えば特開昭58−5427
0号公報や特開昭61−31749号公報等で既に周知
の通りであり、油圧制御装置16内には油圧式自動変速
機13の一部を構成する複数の摩擦係合要素の係合操作
と開放操作とを行うための図示しない一対のシフト制御
用電磁弁が組み込まれ、これらシフト制御用電磁弁に対
する通電のオン,オフ操作をECU15により制御する
ことにより、本実施例では前進4段後進1段の内の任意
の変速段への変速動作を滑らかに達成するものである。
【0011】前記油圧式自動変速機13の出力軸63と
左右一対の駆動輪である前輪64,65との間には、差
動拘束トルクを任意に変更し得る拘束トルク調整用クラ
ッチ89を組み込んだ差動装置90が介在している。本
実施例では、この拘束トルク調整用クラッチ89として
電磁クラッチを採用し、この電磁クラッチに対する通電
量を変えることによってクラッチ結合力、即ち差動拘束
トルクを任意に変更できるようにしているが、この他、
流体圧等を利用して結合力を任意に変更可能なクラッチ
等を採用することも当然可能である。
【0012】従って、路面状況に応じて拘束トルク調整
用クラッチ89に対する通電量を連続的に変更すること
により、この時の通電量と差動拘束トルクとの関係を表
す図3に示すように、前輪64,65の差動拘束トルク
を連続的に変化させ、前輪64,65の回転差を最適に
制御することができる。
【0013】本実施例では、運転者の操舵力を軽減する
ため、パワーステアリング装置を操舵機構に組み込んで
おり、このパワーステアリング装置の概念を表す図4に
示すように、前記左右一対の前輪64,65は、操舵ハ
ンドル85に接続する図示しないラックピニオン機構
と、このラックピニオン機構に接続するパワーアクチュ
エータ91とで構成されたパワーステアリング装置92
にタイロッド93を介してそれぞれ連結されている。前
記パワーアクチュエータ91には、操舵ハンドル85の
操作に伴ってこのパワーアクチュエータ91に対する圧
油の流れを切り換える操舵弁94を介して油圧ポンプ9
5が接続している。又、機関11によって駆動されるこ
の油圧ポンプ95と前記パワーアクチュエータ91とに
は、圧油を貯溜するリザーバタンク96が接続してい
る。
【0014】従って、操舵ハンドル85が運転者によっ
て旋回操作されると、操舵弁94を介してパワーアクチ
ュエータ91に対する油圧ポンプ95からの圧油の流れ
が切り換わり、操舵ハンドル85の操舵方向に対応する
操舵力がパワーアクチュエータ91を介してラックピニ
オン機構に伝達される結果、軽い操舵力で前輪64,6
5が操舵されるようになっている。
【0015】機関11の燃焼室17に連結された吸気管
18の途中には、この吸気管18によって形成される吸
気通路19の開度を変化させ、燃焼室17内に供給され
る吸入空気量を調整するスロットル弁20を組み込んだ
スロットルボディ21が介装されている。図1及び筒状
をなすこのスロットルボディ21の部分の拡大断面構造
を表す図5に示すように、スロットルボディ21にはス
ロットル弁20を一体に固定したスロットル軸22の両
端部が回動自在に支持されている。吸気通路19内に突
出するこのスロットル軸22の一端部には、アクセルレ
バー23とスロットルレバー24とが同軸状をなして嵌
合されている。
【0016】前記スロットル軸22とアクセルレバー2
3の筒部25との間には、ブシュ26及びスペーサ27
が介装され、これによってアクセルレバー23はスロッ
トル軸22に対して回転自在となっている。更に、スロ
ットル軸22の一端側に取り付けた座金28及びナット
29により、スロットル軸22からアクセルレバー23
が抜け外れるのを未然に防止している。又、このアクセ
ルレバー23と一体のケーブル受け30には、運転者に
よって操作されるアクセルペダル31がケーブル32を
介して接続しており、アクセルペダル31の踏み込み量
に応じてアクセルレバー23がスロットル軸22に対し
て回動するようになっている。
【0017】一方、前記スロットルレバー24はスロッ
トル軸22と一体に固定されており、従ってこのスロッ
トルレバー24を操作することにより、スロットル弁2
0がスロットル軸22と共に回動する。又、アクセルレ
バー23の筒部25にはカラー33がこれと同軸一体に
嵌着されており、前記スロットルレバー24の先端部に
は、このカラー33の一部に形成した爪部34に係止し
得るストッパ35が形成されている。これら爪部34と
ストッパ35とは、スロットル弁20が開く方向にスロ
ットルレバー24を回動させるか、或いはスロットル弁
20が閉まる方向にアクセルレバー23を回動させた場
合に相互に係止するような位置関係に設定されている。
【0018】前記スロットルボディ21とスロットルレ
バー24との間には、スロットルレバー24のストッパ
35をアクセルレバー23と一体のカラー33の爪部3
4に押し付けてスロットル弁20を開く方向に付勢する
ねじりコイルばね36が、スロットル軸22に嵌合され
た筒状をなす一対のばね受け37,38を介し、このス
ロットル軸22と同軸状をなして装着されている。又、
スロットルボディ21から突出するストッパピン39と
アクセルレバー23との間にも、前記カラー33の爪部
34をスロットルレバー24のストッパ35に押し付け
てスロットル弁20を閉じる方向に付勢し、アクセルペ
ダル31に対してディテント感を付与するためのねじり
コイルばね40が前記カラー33を介してアクセルレバ
ー23の筒部25にスロットル軸22と同軸状をなして
装着されている。
【0019】前記スロットルレバー24の先端部には、
基端をアクチュエータ41のダイヤフラム42に固定し
た制御棒43の先端部が連結されている。このアクチュ
エータ41内に形成された圧力室44には、前記ねじり
コイルばね36と共にスロットルレバー24のストッパ
35をカラー33の爪部34に押し付けてスロットル弁
20を開く方向に付勢する圧縮コイルばね45が組み込
まれている。そして、これら二つのばね36,45のば
ね力の和よりも、前記ねじりコイルばね40のばね力の
ほうが大きく設定され、これによりアクセルペダル31
を踏み込まない限り、スロットル弁20は開かないよう
になっている。
【0020】前記スロットルボディ21の下流側に連結
されて吸気通路19の一部を形成するサージタンク46
には、接続配管47を介してバキュームタンク48が連
通しており、このバキュームタンク48と接続配管47
との間には、バキュームタンク48からサージタンク4
6への空気の移動のみ許容する逆止め弁49が介装され
ている。これにより、バキュームタンク48内の圧力は
サージタンク46内の最低圧力とほぼ等しい負圧に設定
される。
【0021】これらバキュームタンク48内と前記アク
チュエータ41の圧力室44とは、配管50を介して連
通状態となっており、この配管50の途中には非通電時
閉塞型の第一のトルク制御用電磁弁51が設けられてい
る。つまり、このトルク制御用電磁弁51には配管50
を塞ぐようにプランジャ52を弁座53に付勢するばね
54が組み込まれている。
【0022】又、前記第一のトルク制御用電磁弁51と
アクチュエータ41との間の配管50には、スロットル
弁20よりも上流側の吸気通路19に連通する配管55
が接続している。そして、この配管55の途中には非通
電時開放型の第二のトルク制御用電磁弁56が設けられ
ている。つまり、このトルク制御用電磁弁56には配管
55を開放するようにプランジャ57を付勢するばね5
8が組み込まれている。
【0023】前記二つのトルク制御用電磁弁51,56
には、前記ECU15がそれぞれ接続し、このECU1
5からの指令に基づいてトルク制御用電磁弁51,56
に対する通電のオン,オフがデューティ制御されるよう
になっている。
【0024】例えば、トルク制御用電磁弁51,56の
デューティ率が0%の場合、アクチュエータ41の圧力
室44がスロットル弁20よりも上流側の吸気通路19
内の圧力とほぼ等しい大気圧となり、スロットル弁20
の開度はアクセルペダル31の踏み込み量に一対一で対
応する。逆に、トルク制御用電磁弁51,56のデュー
ティ率が100%の場合、アクチュエータ41の圧力室
44がバキュームタンク48内の圧力とほぼ等しい負圧
となり、制御棒43が図1中、左斜め上方に引き上げら
れる結果、スロットル弁20はアクセルペダル31の踏
み込み量に関係なく閉じられ、機関11の駆動トルクが
強制的に低減させられた状態となる。このようにして、
トルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を調整す
ることにより、アクセルペダル31の踏み込み量に関係
なくスロットル弁20の開度を変化させ、機関11の駆
動トルクを任意に調整することができる。
【0025】又、本実施例ではスロットル弁20の開度
をアクセルペダル31とアクチュエータ41とで同時に
制御するようにしたが、吸気通路19内に二つのスロッ
トル弁を直列に配列し、一方のスロットル弁をアクセル
ペダル31にのみ接続すると共に他方のスロットル弁を
アクチュエータ41にのみ接続し、これら二つのスロッ
トル弁をそれぞれ独立に制御すること等も可能である。
【0026】一方、前記吸気管18の下流端側には、機
関11の燃焼室17内へ図示しない燃料を吹き込む燃料
噴射装置の燃料噴射ノズル59が機関11の各気筒(本
実施例では、四気筒の内燃機関を想定している)に対応
してそれぞれ設けられ、ECU15によりデューティ制
御される電磁弁60を介して燃料が燃料噴射ノズル59
に供給される。つまり、電磁弁60の開弁時間を制御す
ることで、燃焼室17に対する燃料の供給量が調整さ
れ、所定の空燃比となって燃焼室17内で点火プラグ6
1により点火されるようになっている。
【0027】前記ECU15には、機関11に取り付け
られて機関回転数NE を検出するためのクランク角セン
サ62と、駆動輪である左右一対の前輪64,65の周
速度(以下、これを前輪速と呼称する)VFL,VFRをそ
れぞれ検出する一対の前輪回転センサ66,97と、ス
ロットルボディ21に取り付けられてスロットルレバー
24の開度(以下、これをスロットル開度と呼称する)
θT を検出するスロットル開度センサ67と、スロット
ル弁20の全閉状態を検出するアイドルスイッチ68の
他、吸気管18の先端部のエアクリーナ69内に組付け
られて機関11の燃焼室17へと流れる空気量を検出す
るカルマン渦流量計等のエアフローセンサ70と、機関
11に組付けられてこの機関11の冷却水温を検出する
水温センサ71と、排気管72の途中に組付けられて排
気通路73内を流れる排気ガスの温度を検出する排気温
センサ74と、イグニッションキースイッチ75と、前
記パワーアクチュエータ91の図示しない左右一対の圧
力室にそれぞれ取り付けられてパワーステアリング装置
92の作動圧(以下、これをパワステ圧と呼称する)P
S を検出するための一対の圧力センサ98,99とが接
続している。
【0028】そして、これらクランク角センサ62及び
前輪回転センサ66,97及びスロットル開度センサ6
7及びアイドルスイッチ68及びエアフローセンサ70
及び水温センサ71及び排気温センサ74及びイグニッ
ションキースイッチ75及び圧力センサ98,99から
の出力信号がそれぞれECU15に送られるようになっ
ている。
【0029】又、機関11の目標駆動トルクを算出する
駆動力制御ユニット(以下、これをTCLと呼称する)
76には、前記スロットル開度センサ67及びアイドル
スイッチ68と共にスロットルボディ21に取り付けら
れてアクセルレバー23の開度(以下、これをアクセル
開度と呼称する)θA を検出するアクセル開度センサ7
7と、従動輪である左右一対の後輪78,79の周速度
(以下、これを後輪速と呼称する)VRL,VRRをそれぞ
れ検出する後輪回転センサ80,81と、車両82の直
進状態を基準として旋回時における操舵軸83の旋回角
(以下、これを操舵軸旋回角と呼称する)δHを検出す
る操舵角センサ84と、操舵軸83と一体の操舵ハンド
ル85の360度毎の正常位相(車両82がほぼ直進状
態となるような位相がこれに含まれる)δN を検出する
操舵軸基準位置センサ86とが接続し、これらセンサ7
7,80,81,84,86からの出力信号がそれぞれ
TCL76に送られる。
【0030】ECU15とTCL76とは、通信ケーブ
ル87を介して結ばれており、ECU15からは機関回
転数NE やアイドルスイッチ68からの検出信号等の機
関11の運転状態の情報の他に、前輪速VFL,VFRや路
面の摩擦係数(以下、これを路面μと呼称する)等の情
報がTCL76に送られる。逆に、TCL76からはこ
のTCL76にて演算された目標駆動トルクTO や車両
82の走行速度(以下、これを車速と呼称する)Vの他
に、操舵軸旋回角δH 及び点火時期の遅角割合に関する
情報等がECU15に送られる。
【0031】本実施例では、駆動輪である前輪66,9
7の周速度差(前輪速差)の絶対値|VFL−VFR|に基
づいて拘束トルク調整用クラッチ89の差動拘束トルク
F を設定する制御(以下、これを差動拘束トルク制御
と呼称する)を行う一方、前輪64,65の前後方向の
スリップ量sが予め設定した量よりも大きくなった場合
に、機関11の駆動トルクを低下させて操縦性を確保す
ると共にエネルギーロスを防止する制御(以下、これを
スリップ制御と呼称する)を行った場合の機関11の目
標駆動トルクTOSと、旋回中の車両に発生する横向きの
加速度(以下、これを横加速度と呼称する)GY が予め
設定された値以上となった場合に、機関11の駆動トル
クを低下させて車両82が旋回路から逸脱しないように
する制御(以下、これを旋回制御と呼称する)を行った
場合の機関11の目標駆動トルクTOCとをTCL76に
てそれぞれ演算し、これら二つの目標駆動トルクTOS
OCから最適な最終目標駆動トルクTO を選択し、機関
11の駆動トルクを必要に応じて低減できるようにして
いる。又、アクチュエータ41を介したスロットル弁2
0の全閉操作によっても、機関11の出力低減が間に合
わない場合を考慮して点火時期の目標遅角量po を設定
し、機関11の駆動トルクを迅速に低減できるようにし
ている。
【0032】このような本実施例による制御の大まかな
流れを表す図6に示すように、本実施例ではスリップ制
御を行った場合の機関11の目標駆動トルクTOSと、旋
回制御を行った場合の機関11の目標駆動トルクTOC
をTCL76にて常に並行して演算し、これら2つの目
標駆動トルクTOS,TOCから最適な最終目標駆動トルク
O を選択し、機関11の駆動トルクを必要に応じて低
減する一方、車両82の走行状態や路面μに応じて拘束
トルク調整用クラッチ89の差動拘束トルクTF を変更
するようにしている。
【0033】具体的には、イグニッションキースイッチ
75のオン操作により本実施例の制御プログラムが開始
され、M1にてまず操舵軸旋回位置初期値δm(0)の読み
込みや各種フラグのリセット或いはこの制御のサンプリ
ング周期である15ミリ秒毎の主タイマのカウント開始
等の初期設定が行われる。
【0034】そして、M2にて各種センサからの検出信
号に基づいてTCL76は車速V等を演算し、これに続
いて操舵軸83の中立位置δM をM3にて学習補正す
る。この車両82の操舵軸83の中立位置δM は、EC
U15やTCL76中の図示しないメモリに記憶されて
いないため、前記イグニッションキースイッチ75のオ
ン操作の度に初期値δm(0)が読み込まれ、車両82が後
述する直進走行条件を満たした場合にのみ学習補正さ
れ、イグニッションキースイッチ75がオフ状態となる
までこの初期値δm(0)が学習補正されるようになってい
る。
【0035】次に、TCL76はM4にて前輪回転セン
サ66,97からの検出信号と後輪回転センサ80,8
1からの検出信号とに基づいて機関11の駆動トルクを
規制するスリップ制御を行う場合の目標駆動トルクTOS
を演算し、M5にて後輪回転センサ80,81からの検
出信号と操舵角センサ84からの検出信号とに基づいて
機関11の駆動トルクを規制する旋回制御を行った場合
の機関11の目標駆動トルクTOCを演算する。
【0036】そして、M6にてTCL76はこれらの目
標駆動トルクTOS,TOCから最適な最終目標駆動トルク
O を主として安全性を考慮して後述する方法により選
択する。更に、急発進時や路面状況が通常の乾燥路から
凍結路に急変するような場合には、アクチュエータ41
を介したスロットル弁20の全閉操作によっても機関1
1の出力低減が間に合わない虞があるので、M7にて前
輪64,65のスリップ量sの変化率Gs に基づいて基
本遅角量pB の補正を行うための遅角割合を選択する。
【0037】次いで、M8にてECU15は前輪回転セ
ンサ66,97からの検出信号等に基づいて拘束トルク
調整用クラッチ89の差動拘束トルクTF を設定する差
動拘束トルク制御を行った後、M9にてこれら最終目標
駆動トルクTO 及び基本遅角量pB の遅角割合に関する
データをECU15に出力する一方、差動拘束トルクT
F に対応する通電量が読み出される。
【0038】そして、運転者が図示しない手動スイッチ
を操作してスリップ制御や旋回制御を希望している場合
には、ECU15は機関11の駆動トルクがこの最終目
標駆動トルクTO となるように、一対のトルク制御用電
磁弁51,56のデューティ率を制御し、更に基本遅角
量pB の遅角割合に関するデータに基づき、このECU
15内で目標遅角量pO を算出し、点火時期Pを必要に
応じて目標遅角量pO だけ遅らせる一方、差動拘束トル
クTF に対応する通電量をECU15から拘束トルク調
整用クラッチ89に与え、これによって車両82を無理
なく安全に走行させるようにしている。
【0039】なお、運転者が図示しない手動スイッチを
操作してスリップ制御や旋回制御を希望していない場合
には、ECU15は一対のトルク制御用電磁弁51,5
6のデューティ率を0%側に設定する結果、車両82は
運転者のアクセルペダル31の踏み込み量に対応した通
常の運転状態となる。この場合、本実施例では差動拘束
トルク制御をスリップ制御に連動させるようにしている
ため、拘束トルク調整用クラッチ89の差動拘束トルク
F が0となって、差動装置90がそのまま機能するこ
ととなる。
【0040】このように、機関11の駆動トルクをM1
0にて主タイマのサンプリング周期である15ミリ秒毎
のカウントダウンが終了するまで制御し、これ以降はM
2からM11までのステップを前記イグニッションキー
スイッチ75がオフ状態になるまで繰り返すのである。
【0041】ところで、M5のステップにて旋回制御を
行って機関11の目標駆動トルクT OCを演算する場合、
TCL76は一対の後輪回転センサ80,81の検出信
号に基づいて車速Vを下式(1) により演算すると共に操
舵角センサ84からの検出信号に基づいて前輪64,6
5の舵角δを下式(2) より演算し、この時の車両82の
目標横加速度GYOを下式(3) よりそれぞれ求めている。 V=(VRL+VRR)/2 ・・・(1) δ=δH /ρH ・・・(2) GYO=δ/ω・(A+1/V2 ) ・・・(3) 但し、ρH は操舵歯車変速比、ωは車両82のホイー
ルベース、Aは後述する車両82のスタビリティファク
タである。
【0042】この(3) 式から明らかなように、車両82
の整備時に前輪64,65のトーイン調整を行った場合
や図示しない操舵歯車の磨耗等の経年変化等によって、
操舵軸83の中立位置δM が変わってしまうと、操舵軸
83の旋回位置δm と操舵輪である前輪64,65の実
際の舵角δとの間にずれが発生する。この結果、車両8
2の目標横加速度GYOを正確に算出することができなく
なる虞があり、旋回制御を良好に行うことが困難とな
る。しかも、本発明ではM4のステップでのスリップ制
御の際に、後述するコーナリングドラッグ補正手段が、
操舵軸83の旋回角δH に基づいて機関11の基準駆動
トルクを補正しており、同様に後述する路面μ推定手段
が操舵軸83の旋回角δH に基づいて路面μを推定して
いること等から、スリップ制御や差動拘束トルク制御も
良好に行えなくなる虞がある。このようなことから、操
舵軸83の中立位置δM をM3のステップにて学習補正
する必要がある。
【0043】この操舵軸83の中立位置δM を学習補正
する手順を表す図7及び図8及び図9に示すように、T
CL76はH1にて旋回制御中フラグFC がセットされ
ているか否かを判定する。そして、このH1のステップ
にて車両82が旋回制御中であると判断した場合には、
機関11の出力が操舵軸83の中立位置δM を学習補正
することにより急変し、乗り心地を悪化させる虞等があ
るので、操舵軸83の中立位置δM の学習補正を行わな
い。
【0044】一方、H1のステップにて車両82が旋回
制御中ではないと判断した場合には、操舵軸83の中立
位置δM の学習補正を行っても不具合は生じないので、
TCL76は後輪回転センサ80,81からの検出信号
に基づき、H2にて中立位置δM の学習及び後述する旋
回制御のための車速Vを前記(1) 式により算出する。次
に、TCL76はH3にて後輪速VRL,VRRの差(以
下、これを後輪速差と呼称する)|VRL−VRR|を算出
した後、TCL76はH4にて操舵軸基準位置センサ8
6により操舵軸83の基準位置δN が検出された状態で
中立位置δM の学習補正が行われたか否か、つまり操舵
軸83の基準位置δN が検出された状態での舵角中立位
置学習済フラグFHNがセットされているか否かを判定す
る。
【0045】イグニッションキースイッチ75のオン操
作直後は、舵角中立位置学習済フラグFHNがセットされ
ていない、即ち中立位置δM の学習が初回であるので、
H5にて今回算出された操舵軸旋回位置δm(n)が前回算
出された操舵軸旋回位置δm(n-1)と等しいか否かを判定
する。この際、運転者の手振れ等による影響を受けない
ように、操舵角センサ84による操舵軸83の旋回検出
分解能を例えば5度前後に設定しておくことが望まし
い。
【0046】このH5のステップにて今回算出された操
舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置δ
m(n-1)と等しいと判断した場合には、H6にて車速Vが
予め設定した閾値VA より大きいか否かを判定する。こ
の操作は、車両82がある程度の高速にならないと、操
舵に伴う後輪速差|VRL−VRR|等が検出できないため
に必要なものであり、前記閾値VA は車両82の走行特
性等に基づいて実験等により、例えば毎時10kmの如く
適宜設定される。
【0047】そして、H6のステップにて車速Vが閾値
A 以上であると判定した場合には、TCL76はH7
にて後輪速差|VRL−VRR|が予め設定した、例えば毎
時0.3kmの如き閾値VX よりも小さいか否か、つまり
車両82が直進状態にあるかどうかを判定する。ここ
で、閾値VX を毎時0kmとしないのは、左右の後輪7
8,79のタイヤの空気圧が等しくない場合、車両82
が直進状態であるにもかかわらず、左右一対の後輪7
8,79の周速度VRL,VRRが相違して車両82が直進
状態ではないと判定してしまうのを避けるためである。
【0048】なお、左右の後輪78,79のタイヤの空
気圧が等しくない場合、前記後輪速差|VRL−VRR|は
車速Vに比例して大きくなる傾向を持つので、この閾値
X を例えば図10に示すようにマップ化しておき、こ
のマップから車速Vに基づいて閾値VX を読み出すよう
にしても良い。
【0049】このH7のステップにて後輪速差|VRL
RR|が閾値VX 以下であると判断したならば、H8に
て操舵軸基準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δ
N を検出しているか否かを判定する。そして、このH8
のステップにて操舵軸基準位置センサ86が操舵軸83
の基準位置δN を検出している、即ち車両82が直進状
態であると判断した場合には、H9にてTCL76内に
内蔵された図示しない第一の学習用タイマのカウントを
開始する。
【0050】次に、TCL76はH10にてこの第一の
学習用タイマのカウント開始から0.5秒経過したか否
か、即ち車両82の直進状態が0.5秒継続したかどう
かを判定し、この第一の学習用タイマのカウント開始か
ら0.5秒経過していない場合には、H11にて車速V
が前記閾値VA より大きいか否かを判定する。このH1
1のステップにて車速Vが閾値VA より大きいと判断し
た場合には、H12にて後輪速差|VRL−VRR|が毎時
0.1kmの如き閾値VB 以下であるか否かを判定する。
このH12のステップにて後輪速差|VRL−VRR|が前
記閾値VB 以下である、即ち車両82が直進状態である
と判断したならば、H13にてTCL76内に内蔵され
た図示しない第二の学習用タイマのカウントを開始す
る。
【0051】そして、H14にてこの第二の学習用タイ
マのカウント開始から5秒経過したか否か、即ち車両8
2の直進状態が5秒継続したかどうかを判定し、第二の
学習用タイマのカウント開始から5秒経過していない場
合には、前記H2のステップに戻ってこのH2のステッ
プからH14のステップまでの操作が繰り返される。
【0052】この反復操作の途中のH8のステップにて
操舵軸基準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δN
を検出していると判断し、H9のステップにて前記第一
の学習用タイマのカウントを開始し、H10にてこの第
一の学習用タイマのカウント開始から0.5秒経過し
た、即ち車両82の直進状態が0.5秒継続したと判断
した場合には、H15にて操舵軸83の基準位置δN
検出された状態での舵角中立位置学習済フラグFHNをセ
ットし、H16にて更に操舵軸83の基準位置δN が検
出されない状態での舵角中立位置学習済フラグFH がセ
ットされているか否かを判定する。又、前記H14のス
テップにて第二の学習用タイマのカウント開始から5秒
経過したと判断した場合にも、このH16のステップに
移行する。
【0053】以上の操作では、まだ操舵軸83の基準位
置δN が検出されない状態での舵角中立位置学習済フラ
グFH がセットされていないので、このH16のステッ
プでは操舵軸83の基準位置δN が検出されない状態で
の舵角中立位置学習済フラグFH がセットされていな
い、即ち操舵軸83の基準位置δN が検出された状態で
の中立位置δM の学習が初回であると判断し、H17に
て現在の操舵軸旋回位置δm(n)を新たな操舵軸83の中
立位置δM(n)と見なし、これをTCL76内のメモリに
読み込むと共に操舵軸83の基準位置δN が検出されな
い状態での舵角中立位置学習済フラグFH をセットす
る。
【0054】このようにして、操舵軸83の新たな中立
位置δM(n)を設定した後、この操舵軸83の中立位置δ
M を基準として操舵軸83の旋回角δH を算出する一
方、H18にて学習用タイマのカウントがクリアされ、
再び舵角中立位置学習が行われる。
【0055】なお、前記H5のステップにて今回算出さ
れた操舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回
位置δm(n-1)と等しくないと判断した場合や、H11の
ステップにて車速Vが閾値VA 以上ではない、即ちH1
2のステップにて算出される後輪速差|VRL−VRR|に
信頼性がないと判断した場合、或いはH12のステップ
にて後輪速差|VRL−VRR|が閾値VB よりも大きいと
判断した場合には、いずれも車両82が直進状態ではな
いことから、前記H18のステップに移行する。
【0056】又、前記H7のステップにて後輪速差|V
RL−VRR|が閾値VX よりも大きいと判断した場合や、
H8のステップにて操舵軸基準位置センサ86が操舵軸
83の基準位置δN を検出していないと判断したなら
ば、H19にて前記第一の学習用タイマのカウントをク
リアし、前記H11のステップに移行するが、前記H6
のステップにて車速Vが閾値VA 以下であると判断した
場合にも、車両82が直進状態であると判断できないの
で、このH11のステップに移行する。
【0057】一方、前記H4のステップにて操舵軸83
の基準位置δN が検出された状態での舵角中立位置学習
済フラグFHNがセットされている、即ち中立位置δM
学習が二回目以降であると判断した場合には、H20に
て操舵軸基準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δ
N を検出しているか否かを判定する。そして、このH2
0のステップにて操舵軸基準位置センサ86が操舵軸8
3の基準位置δN を検出していると判断した場合には、
H21にて車速Vが予め設定した閾値VA より大きいか
否かを判定する。
【0058】このH21のステップにて車速Vが閾値V
A 以上であると判断した場合には、TCL76はH22
にて後輪速差|VRL−VRR|が前記閾値VX よりも小さ
いか否か、つまり車両82が直進状態にあるかどうかを
判定する。そして、このH22のステップにて後輪速差
|VRL−VRR|が閾値VX よりも小さいと判断したなら
ば、H23にて今回算出された操舵軸旋回位置δm(n)
前回算出された操舵軸旋回位置δm(n-1)と等しいか否か
を判定する。このH23のステップにて今回算出された
操舵軸旋回位置δm(n)が前回算出された操舵軸旋回位置
δm(n-1)と等しいと判断したならば、H24にて前記第
一の学習用タイマのカウントを開始する。
【0059】次に、TCL76はH25にてこの第一の
学習用タイマのカウント開始から0.5秒経過したか否
か、即ち車両82の直進状態が0.5秒継続したかどう
かを判定し、第一の学習用タイマのカウント開始から
0.5秒経過していない場合には、前記H2のステップ
に戻り、前記H2〜H4,H20〜H25のステップを
繰り返す。逆に、このH25のステップにて第一の学習
用タイマのカウント開始から0.5秒経過したと判断し
た場合には、前記H16のステップに移行する。
【0060】なお、前記H20のステップにて操舵軸基
準位置センサ86が操舵軸83の基準位置δN を検出し
ていないと判断した場合や、H21のステップにて車速
Vが閾値VA 以上ではない、即ちH22のステップにて
算出される後輪速差|VRL−VRR|に信頼性がないと判
断した場合、或いはH22のステップにて後輪速差|V
RL−VRR|が閾値VX よりも大きいと判断した場合や、
H23のステップにて今回算出された操舵軸旋回位置δ
m(n)が前回算出された操舵軸旋回位置δm(n-1)と等しく
ないと判断した場合には、いずれも前記H18のステッ
プに移行する。
【0061】前記H16のステップにて舵角中立位置学
習済フラグFH がセットされている、つまり中立位置δ
M の学習が二回目以降であると判断した場合、TCL7
6はH26にて現在の操舵軸旋回位置δm(n)が前回の操
舵軸83の中立位置δM(n-1)と等しい、即ち δm(n)=δM(n-1) であるかどうかを判定する。そして、現在の操舵軸旋回
位置δm(n)が前回の操舵軸83の中立位置δM(n-1)と等
しいと判定したならば、そのままH18のステップに移
行し、次の舵角中立位置学習が行われる。
【0062】前記H26のステップにて現在の操舵軸旋
回位置δm(n)が操舵系の遊び等が原因となって前回の操
舵軸83の中立位置δM(n-1)と等しくないと判断した場
合、本実施例では現在の操舵軸旋回位置δm(n)をそのま
ま新たな操舵軸83の中立位置δM(n)と判断せず、これ
らの差の絶対値が予め設定した補正制限量Δδ以上相違
している場合には、前回の操舵軸旋回位置δm(n-1)に対
してこの補正制限量Δδを減算或いは加算したものを新
たな操舵軸83の中立位置δM(n)とし、これをTCL7
6内のメモリに読み込むようにしている。
【0063】つまり、TCL76はH27にて現在の操
舵軸旋回位置δm(n)から前回の操舵軸83の中立位置δ
M(n-1)を減算した値が予め設定した負の補正制限量−Δ
δよりも小さいか否かを判定する。そして、このH27
のステップにて減算した値が負の補正制限量−Δδより
も小さいと判断した場合には、H28にて新たな操舵軸
83の中立位置δM(n)を、前回の操舵軸83の中立位置
δM(n-1)と負の補正制限量−Δδとから δM(n)=δM(n-1)−Δδ と変更し、一回当たりの学習補正量が無条件に負側へ大
きくならないように配慮している。
【0064】これにより、何らかの原因によって操舵角
センサ84から異常な検出信号が出力されたとしても、
操舵軸83の中立位置δM が急激には変化せず、この異
常に対する対応を迅速に行うことができる。
【0065】一方、H27のステップにて減算した値が
負の補正制限量−Δδよりも大きいと判断した場合に
は、H29にて現在の操舵軸旋回位置δm(n)から前回の
操舵軸83の中立位置δM(n-1)を減算した値が正の補正
制限量Δδよりも大きいか否かを判定する。そして、こ
のH29のステップにて減算した値が正の補正制限量Δ
δよりも大きいと判断した場合には、H30にて新たな
操舵軸83の中立位置δM(n)を前回の操舵軸83の中立
位置δM(n-1)と正の補正制限量Δδとから δM(n)=δM(n-1)+Δδ と変更し、一回当たりの学習補正量が無条件に正側へ大
きくならないように配慮している。
【0066】これにより、何らかの原因によって操舵角
センサ84から異常な検出信号が出力されたとしても、
操舵軸83の中立位置δM が急激には変化せず、この異
常に対する対応を迅速に行うことができる。
【0067】但し、H29のステップにて減算した値が
正の補正制限量Δδよりも小さいと判断した場合には、
H31にて現在の操舵軸旋回位置δm(n)を新たな操舵軸
83の中立位置δM(n)としてそのまま読み出す。
【0068】このように、本実施例では操舵軸83の中
立位置δM を学習補正する際、後輪速差|VRL−VRR
のみを利用する他に、操舵軸基準位置センサ86からの
検出信号を併せて利用す方法を採用し、車両82が発進
してから比較的早い内に操舵軸83の中立位置δM を学
習補正することができる上、操舵軸基準位置センサ86
が何らかの原因で故障しても後輪速差|VRL−VRR|の
みで操舵軸83の中立位置δM を学習補正することがで
き、安全性に優れている。
【0069】従って、前輪64,65を旋回状態のまま
にして停車中の車両82が発進した場合、この時の操舵
軸83の中立位置δM の変化状態の一例を表す図11に
示すように、操舵軸83の中立位置δM の学習制御が初
回の時、前述したM1のステップにおける操舵軸旋回位
置の初期値δm(0)からの補正量は非常に大きなものとな
るが、二回目以降の操舵軸83の中立位置δM は、H1
7,H19のステップにおける操作により、抑えられた
状態となる。
【0070】このようにして操舵軸83の中立位置δM
を学習補正した後、前輪回転センサ66からの検出信号
と後輪回転センサ80,81からの検出信号とに基づい
て機関11の駆動トルクを規制するスリップ制御を行う
場合の目標駆動トルクTOSを演算する。
【0071】ところで、タイヤと路面との摩擦係数は車
両82に加わる車速Vの変化率(以下、これを前後加速
度と呼称する)GX と等価であると見なすことができる
ので、本実施例ではこの前後加速度GX を後輪回転セン
サ80,81からの検出信号に基づいて算出し、この前
後加速度GX の最大値に対応する機関11の基準駆動ト
ルクTB を、前輪回転センサ66から検出される前輪速
F と前記車速Vに対応する目標前輪速VFOとの偏差
(以下、これをスリップ量と呼称する)sに基づいて補
正し、目標駆動トルクTOSを算出ている。
【0072】この機関11の目標駆動トルクTOSを算出
するための演算ブロックを表す図12及び図13に示す
ように、まずTCL76はスリップ制御用の車速VS
後輪回転センサ80,81からの検出信号に基づいて算
出するが、本実施例では低車速選択部101にて二つの
後輪速VRL,VRRの内の小さい方の値をスリップ制御用
の第一の車速VS として選択し、高車速選択部102に
て二つの後輪速VRL,VRRの内の大きな方の値をスリッ
プ制御用の第二の車速VS として選択し、その上で切り
換えスイッチ103により二つの選択部101,102
の内のいずれの出力を取り込むかを更に選択するように
なっている。
【0073】なお、本実施例では低車速選択部101に
て選択される第一の車速VS は、二つの後輪速VRL,V
RRの内の小さい方の値VL に前記(1) 式により算出され
る車速Vに対応する重み付けの係数KV を乗算部104
にて乗算し、これと二つの後輪速VRL,VRRの内の大き
い方の値VH に (1−KV ) を乗算部105にて乗算し
たものとを加算することにより求めている。
【0074】即ち、スリップ制御により実際に機関11
の駆動トルクが低減されている状態、つまりスリップ制
御中フラグFS がセットの状態では、切り換えスイッチ
103により二つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方の
値を車速VS として選択し、運転者がスリップ制御を希
望していても機関11の駆動トルクが低減されていない
状態、つまりスリップ制御中フラグFS がリセットの状
態では、二つの後輪速VRL,VRRの内の大きな方の値を
車速VS として選択するようになっている。
【0075】これは、機関11の駆動トルクが低減され
ていない状態から、機関11の駆動トルクが低減される
状態へ移行し難くすると同時に、この逆の場合での移行
も難しくするためである。例えば、車両82の旋回中に
おける二つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方の値を車
速VS として選択した場合、前輪64,65にスリップ
が発生していないにも係わらずスリップが発生している
と判断し、機関11の駆動トルクが低減されてしまうよ
うな不具合を避けるためと、車両82の走行安全性を考
慮して、一旦、機関11の駆動トルクが低減された場合
に、この状態が継続されるように配慮したためである。
【0076】又、低車速選択部101にて車速VS を算
出する場合、二つの後輪速VRL,VRRの内の小さい方の
値VLに重み付けの係数KV を乗算部104にて乗算
し、これと二つの後輪速VRL,VRRの内の大きい方の値
H に(1−KV ) を乗算部105にて乗算したものと
を加算するのは、例えば交差点等での右左折の如き曲率
半径の小さな旋回路を走行する際に、前輪速VFL,VFR
の平均値(VFL+VFR)/2と二つの後輪速VRL,VRR
の内の小さい方の値VL とが大きく相違していまう結
果、フィードバックによる駆動トルクの補正量が大きす
ぎてしまい、車両82の加速性が損なわれる虞があるた
めである。
【0077】なお、本実施例では前記重み付けの係数K
V を後輪速VRL,VRRの平均値である前記(1) 式の車速
Vに基づいて図14に示す如きマップから読み出すよう
にしている。
【0078】このようにして算出されるスリップ制御用
の車速VS に基づいて前後加速度GX を算出するが、ま
ず今回算出した車速VS(n)と一回前に算出した車速V
S(n-1)とから、現在の車両82の前後加速度GX(n)を微
分演算部106にて下式のように算出する。 GX(n)={Vs(n)−Vs(n-1)}/3.6・Δt・g 但し、Δtは本制御のサンプリング周期である15ミリ
秒、gは重力加速度である。
【0079】そして、算出された前後加速度GX(n)
0.6g以上となった場合には、演算ミス等に対する安
全性を考慮してこの前後加速度GX(n)の最大値が0.6
gを越えないように、クリップ部107にて前後加速度
X(n)を0.6gにクリップする。更に、フィルタ部1
08にてノイズ除去のためのフィルタ処理を行って修正
前後加速度GXFを算出する。
【0080】このフィルタ処理は、車両82の前後加速
度GX(n)がタイヤと路面との摩擦係数と等価であると見
なすことができることから、車両82の前後加速度G
X(n)の最大値が変化してタイヤのスリップ率Sがタイヤ
と路面との摩擦係数の最大値と対応した目標スリップ率
O 或いはその近傍から外れそうになった場合でも、タ
イヤのスリップ率Sをタイヤと路面との摩擦係数の最大
値と対応した目標スリップ率SO 或いはその近傍でこれ
よりも小さな値に維持させるように、前後加速度GX(n)
を修正するためのものであり、具体的には以下の通りに
行われる。
【0081】今回の前後加速度GX(n)がフィルタ処理さ
れた前回の修正前後加速度GXF(n-1) 以上の場合、つま
り車両82が加速し続けている時には、今回の修正前後
加速度GXF(n) を GXF(n) =28・Σ{GX(n)−GXF(n-1) }/256 として遅延処理によりノイズ除去を行い、修正前後加速
度GXF(n) を比較的早く前後加速度GX(n)に追従させて
行く。
【0082】今回の前後加速度GX(n)が前回の修正前後
加速度GXF(n-1) 未満の場合、つまり車両82が余り加
速していない時には主タイマのサンプリング周期Δt毎
に以下の処理を行う。
【0083】スリップ制御中フラグFS がセットされて
いない、つまりスリップ制御による機関11の駆動トル
クを低減していない状態では、車両82が減速中にある
ので GXF(n) =GXF(n-1) −0.002 として修正前後加速度GXF(n) の低下を抑制し、運転者
による車両82の加速要求に対する応答性を確保してい
る。
【0084】又、スリップ制御により機関11の駆動ト
ルクを低減している状態でスリップ量sが正、つまり前
輪64,65のスリップが多少発生している時にも、車
両82は減速中であることから安全性に問題がないの
で、 GXF(n) =GXF(n-1) −0.002 として修正前後加速度GXFの低下を抑制し、運転者によ
る車両82の加速要求に対する応答性を確保している。
【0085】更に、スリップ制御により機関11の駆動
トルクを低減している状態で前輪64,65のスリップ
量sが負、つまり車両82が減速している時には、修正
前後加速度GXFの最大値を保持し、運転者による車両8
2の加速要求に対する応答性を確保する。
【0086】同様に、スリップ制御による機関11の駆
動トルクを低減している状態で油圧制御装置16による
油圧式自動変速機13のシフトアップ中には、運転者に
対する加速感を確保する必要上、修正前後加速度GXF
最大値を保持する。
【0087】そして、フィルタ部108にてノイズ除去
された修正前後加速度GXFは、トルク換算部109にて
これをトルク換算するが、このトルク換算部109にて
算出された値は、当然のことながら正の値となるはずで
あるから、クリップ部110にて演算ミスを防止する目
的でこれを0以上にクリップした後、走行抵抗算出部1
11にて算出された走行抵抗TR を加算部112にて加
算し、更に操舵角センサ84からの検出信号に基づいて
コーナリングドラッグ補正量算出部113にて算出され
るコーナリングドラッグ補正トルクTC を加算部114
にて加算し、下式(4) に示す基準駆動トルクTB を算出
する。 TB =GFO・Wb ・r+TR +TC ・・・(4) 但し、Wb は車体重量、rは前輪64,65の有効半
径である。
【0088】前記走行抵抗TR は車速Vの関数として算
出することができるが、本実施例では図15に示す如き
マップから求めている。この場合、平坦路と登坂路とで
は走行抵抗TR が異なるので、マップには図中、実線に
て示す平坦路用と二点鎖線にて示す登坂路用とが書き込
まれ、車両82に組み込まれた図示しない傾斜センサか
らの検出信号に基づいて、いずれか一方を選択するよう
にしているが、下り坂等を含めて更に細かく走行抵抗T
R を設定することも可能である。
【0089】又、本実施例では前記コーナリングドラッ
グ補正トルクTC を図16に示す如きマップから求めて
おり、これによって実際の走行状態と近似した機関11
の基準駆動トルクTB を設定することができ、旋回直後
の機関11の基準駆動トルクTB が大きめになっている
ことから、旋回路を抜けた後の車両82の加速フィーリ
ングが向上する。
【0090】なお、前記(4) 式により算出される基準駆
動トルクTB に対し、本実施例では可変クリップ部11
5にて下限値を設定することにより、この基準駆動トル
クTB から後述する最終補正トルクTPID を減算部11
6にて減算した値が、負となってしまうような不具合を
防止している。この基準駆動トルクTB の下限値は、図
17に示す如きマップに示すように、スリップ制御の開
始時点からの経過時間に応じて段階的に低下させるよう
にしている。
【0091】一方、TCL76は前輪回転センサ66,
97からの検出信号に基づいて実際の前輪速VF となる
左右の前輪速VFL,VFRの平均値(VFL+VFR)/2を
算出し、先にも述べたようにこの前輪速VF とスリップ
制御用の車速VS に基づいて設定される目標前輪速VFO
に基づいて設定される補正トルク算出用目標前輪速VFS
との偏差であるスリップ量sを用い、前記基準駆動トル
クTB のフィードバック制御を行うことによって、機関
11の目標駆動トルクTOSを算出する。
【0092】ところで、車両82の加速時に機関11で
発生する駆動トルクを有効に働かせるためには、図18
中の実線で示すように、走行中の前輪64,65のタイ
ヤのスリップ率Sが、このタイヤと路面との摩擦係数の
最大値と対応する目標スリップ率SO 或いはその近傍で
これよりも小さな値となるように調整し、エネルギーの
ロスを避けると共に車両82の操縦性能や加速性能を損
なわないようにすることが望ましい。
【0093】ここで、タイヤのスリップ率Sは、 S=(VF −V)/V であり、目標スリップ率SO は路面の状況に応じて0.
1〜0.25程度の範囲に振れることが知られている。
従って、車両82の走行中には路面に対して10%程度
のスリップ量sを駆動輪である前輪64,65に発生さ
せることが望ましい。以上の点をを勘案して目標前輪速
FOを乗算部117にて下式の通りに設定する。 VFO=1.1・V
【0094】そして、TCL76は加速度補正部118
にて図19に示す如きマップから前述した修正前後加速
度GXFに対応するスリップ補正量VK を読み出し、これ
を加算部119にて基準トルク算出用目標前輪速VFO
加算する。このスリップ補正量VK は、修正前後加速度
XFの値が大きくなるにつれて段階的に増加するような
傾向を持たせているが、本実施例では走行試験等に基づ
いてこのマップを作成している。
【0095】これにより、補正トルク算出用目標前輪速
FSが増大し、加速時におけるスリップ率Sが図18中
の実線で示す目標スリップ率SO 或いはその近傍でこれ
よりも小さな値となるように設定される。
【0096】一方、旋回中におけるタイヤと路面との摩
擦係数と、このタイヤのスリップ率Sとの関係を図18
中の一点鎖線で示すように、旋回中におけるタイヤと路
面との摩擦係数の最大値となるタイヤのスリップ率は、
直進中におけるタイヤと路面との摩擦係数の最大値とな
るタイヤの目標スリップ率SO よりも相当小さいことが
判る。従って、車両82が旋回中にはこの車両82が円
滑に旋回できるように、目標前輪速VFOを直進時よりも
小さく設定することが望ましい。
【0097】そこで、旋回補正部120にて図20の実
線で示す如きマップから前記目標横加速度GYOに対応す
るスリップ補正量VKCを読み出し、これを減算部121
にて基準トルク算出用目標前輪速VFOから減算する。但
し、イグニッションキースイッチ75のオン操作の後に
行われる最初の操舵軸83の中立位置δM の学習が行わ
れるまでは、操舵軸83の旋回角δH の信頼性がないの
で、後輪速VRL,VRRにより車両82に実際に作用する
横加速度GY に基づいて図20の破線で示す如きマップ
から前記スリップ補正量VKCを読み出す。
【0098】ところで、前記目標横加速度GYOは操舵角
センサ84からの検出信号に基づいて前記(2) 式により
舵角δを算出し、この舵角δを用いて前記(3) 式により
求めると共に操舵軸83の中立位置δMを学習補正して
いる。
【0099】従って、操舵角センサ84又は操舵軸基準
位置センサ86に異常が発生すると、目標横加速度GYO
が全く誤った値となることが考えられる。そこで、操舵
角センサ84等に異常が発生した場合には、後輪速差|
RL−VRR|を用いて車両82に発生する実際の横加速
度GY を算出し、これを目標横加速度GYOの代わりに用
いる。
【0100】具体的には、この実際の横加速度GY は後
輪速差|VRL−VRR|と車速VとからTCL76内に組
み込まれた横加速度演算部122にて下式(5) のように
算出され、これをフィルタ部123にてノイズ除去処理
した修正横加速度GYFが用いられる。 GY =|VRL−VRR|・V/3.62 ・b・g ・・・(5) 但し、bは後輪78,79のトレッドであり、前記フィ
ルタ部123では今回算出した横加速度GY(n)と前回算
出した修正横加速度GYF(n-1) とから今回の修正横加速
度GYF(n) を下式に示すデジタル演算によりローパス処
理を行っている。 GYF(n) =Σ20・{GY(n)−GYF(n-1) }/256
【0101】前記操舵角センサ84或いは操舵軸基準位
置センサ86に異常が発生したか否かは、例えば図21
に示す断線検出回路等によりTCL76にて検出するこ
とができる。つまり、操舵角センサ84及び操舵軸基準
位置センサ86の出力を抵抗Rにてプルアップすると共
にコンデンサCで接地しておき、その出力をそのままT
CL76のA0端子に入力して各種制御に供する一方、
コンパレータ88を通してA1端子に入力させている。
このコンパレータ88の負端子には基準電圧として4.
5ボルトの規定値を印加してあり、操舵角センサ84が
断線すると、A0端子の入力電圧が規定値を超えてコン
パレータ88がオンとなり、A1端子の入力電圧が継続
してハイレベルHとなる。そこで、A1端子の入力電圧
が一定時間、例えば2秒間ハイレベルHであれば、断線
と判断してこれら操舵角センサ84或いは操舵軸基準位
置センサ86の異常発生を検出するようにTCL76の
プログラムを設定してある。
【0102】上述した実施例では、ハードウェアにて操
舵角センサ84等の異常を検出するようにしたが、ソフ
トウェアにてその異常を検出することも当然可能であ
る。
【0103】例えば、この異常の検出手順の一例を表す
図22に示すようにTCL76はまずW1にて前記図2
1に示した断線検出による異常の判定を行い、異常では
ないと判断した場合には、W2にて前輪回転センサ66
及び後輪回転センサ80,81に異常があるか否かを判
定する。このW2のステップにて各回転センサ66,8
0,81に異常がないと判断した場合には、W3にて操
舵軸83が同一方向に一回転以上、例えば400度以上
操舵したか否かを判定する。このW3のステップにて操
舵軸83が同一方向に400度以上操舵したと判断した
場合には、W4にて操舵軸基準位置センサ86から操舵
軸83の基準位置δN を知らせる信号があったか否かを
判断する。
【0104】そして、このW4のステップにて操舵軸8
3の基準位置δN を知らせる信号がないと判断した場
合、操舵軸基準位置センサ86が正常であるならば、操
舵軸83の基準位置δN を知らせる信号が少なくとも一
回はあるはずなので、W4にて操舵角センサ84が異常
であると判断し、異常発生中フラグFW をセットする。
【0105】前記W3のステップにて操舵軸83が同一
方向に400度以上操舵されていないと判断した場合、
或いはW4のステップにて操舵軸83の基準位置δN
知らせる信号が操舵軸基準位置センサ86からあったと
判断した場合には、W6にて操舵軸中立位置δM の学習
が済んでいるか否か、即ち二つの舵角中立位置学習済フ
ラグFHN,FH の内の少なくとも一方がセットされてい
るか否かを判定する。
【0106】そしてこのW6のステップにて操舵軸83
の中立位置δM の学習が済んでいると判断した場合に
は、W7にて後輪速差|VRL−VRR|が例えば毎時1.
5kmを超え、W8にて車速Vが例えば毎時20kmと毎時
60kmとの間にあり、且つW9にてこの時の操舵軸83
の旋回角δH の絶対値が例えば10度未満である、即ち
車両82がある程度の速度で旋回中であると判断した場
合には、操舵角センサ84が正常に機能しているなら
ば、前記旋回角δH の絶対値が10度以上になるはずで
あるから、W10にて操舵角センサ84が異常であると
判断する。
【0107】なお、目標横加速度GYOに対応する前記ス
リップ補正量VKCは、運転者の操舵ハンドル85の切り
増しが考えられるので、この目標横加速度GYOが小さな
領域では、修正横加速度GYFに対応するスリップ補正量
KCよりも小さめに設定している。又、車速Vが小さな
領域では、車両82の加速性を確保することが望まし
く、逆にこの車速Vがある程度の速度以上では、旋回の
し易さを考慮する必要があるので、図20から読み出さ
れるスリップ補正量VKCに車速Vに対応した補正係数を
図23に示すマップから読み出して乗算することによ
り、修正スリップ補正量VKFを算出している。
【0108】これにより、補正トルク算出用目標前輪速
FOが減少し、旋回時におけるスリップ率Sが直進時に
おける目標スリップ率SO よりも小さくなり、車両82
の加速性能が若干低下するものの、良好な旋回性が確保
される。
【0109】これら目標横加速度GYO及び実際の横加速
度GY の選択手順を表す図24に示すように、TCL7
6はT1にてスリップ補正量VKCを算出するための横加
速度として前記フィルタ部123からの修正横加速度G
YFを採用し、T2にてスリップ制御中フラグFSがセッ
トされているか否かを判定する。
【0110】このT2のステップにてスリップ制御中フ
ラグFS がセットされていると判断したならば、前記修
正横加速度GYFをそのまま採用する。これは、スリップ
制御中にスリップ補正量VKCを決める基準となる横加速
度を、修正横加速度GYFから目標横加速度GYOへ変えた
場合に、スリップ補正量VKCが大きく変化して車両82
の挙動が乱れる虞があるためである。
【0111】前記T2のステップにてスリップ制御中フ
ラグFS がセットされていないと判断したならば、T3
にて二つの舵角中立位置学習済フラグFHN,FH の内の
いずれか一方がセットされているか否かを判定する。こ
こで、二つの舵角中立位置学習済フラグFHN,FH がい
ずれもセットされていないと判断した場合には、やはり
前記修正横加速度GYFをそのまま採用する。又、このT
3のステップにて二つの舵角中立位置学習済フラグ
HN,FH の内のいずれかがセットされていると判断し
たならば、T4にてスリップ補正量VKCを算出するため
の横加速度として前記目標横加速度GYOを採用する。
【0112】以上の結果、補正トルク算出用目標前輪速
FSは下式の通りとなる。 VFS=VFO+VK −VKF
【0113】次に、前輪回転センサ66の検出信号から
ノイズ除去などを目的としたフィルタ処理により得た実
前輪速VF と、前記補正トルク算出用目標前輪速VFS
の偏差であるスリップ量sを減算部124にて算出す
る。そして、このスリップ量sが負の設定値以下、例え
ば毎時−2.5km以下の場合には、スリップ量sとして
毎時−2.5kmをクリップ部125にてクリップし、こ
のクリップ処理後のスリップ量sに対して後述する比例
補正を行い、この比例補正における過制御を防止して出
力のハンチングが発生しないようにしている。
【0114】又、このクリップ処理前のスリップ量sに
対して後述する積分定数ΔTi を用いた積分補正を行
い、更に微分補正を行って最終補正トルクTPID を算出
する。
【0115】前記比例補正としては、乗算部126にて
スリップ量sに比例係数KP を掛けて基本的な補正量を
求め、更に乗算部127にて油圧式自動変速機13の変
速比ρm によって予め設定された補正係数ρKPを乗算し
て比例補正トルクTP を得ている。なお、比例係数KP
はクリップ処理後のスリップ量sに応じて図25に示す
マップから読み出すようにしている。
【0116】又、前記積分補正としてスリップ量sのゆ
るやかな変化に対応した補正を実現するため、積分演算
部128にて基本的な補正量を算出し、この補正量に対
して乗算部129にて油圧式自動変速機13の変速比ρ
m に基づいて予め設定された補正係数ρKIを乗算し、積
分補正トルクTI を得ている。この場合、本実施例では
一定の微小積分補正トルクΔTI を積分しており、15
ミリ秒のサンプリング周期毎にスリップ量sが正の場合
には前記微小積分補正トルクΔTI を加算し、逆にスリ
ップ量sが負の場合には微小積分補正トルクΔTI を減
算している。
【0117】但し、この積分補正トルクTI には車速V
に応じて可変の図26のマップに示す如き下限値TIL
設定しており、このクリップ処理により車両82の発進
時、特に登り坂での発進時には大きな積分補正トルクT
I を働かせて機関11の駆動力を確保し、車両82の発
進後に車速Vが上昇してからは、逆に補正が大きすぎる
と制御の安定性を欠くので、積分補正トルクTI が小さ
くなるようにしている。又、制御の収束性を高めるため
に積分補正トルクTI に上限値、例えば0kgm を設定
し、このクリップ処理によって積分補正トルクTI は図
27に示すように変化する。
【0118】このようにして算出された比例補正トルク
P と積分補正トルクTI とを加算部130にて加算
し、比例積分補正トルクTPIを算出する。
【0119】なお、前記補正係数ρKP,ρKIは油圧式自
動変速機13の変速比ρm に関連付けて予め設定された
図28に示す如きマップから読み出すようにしている。
【0120】又、本実施例では微分演算部131にてス
リップ量sの変化率Gs を算出し、これに微分係数KD
を乗算部132にて掛け、急激なスリップ量sの変化に
対する基本的な補正量を算出する。そして、これにより
得られた値にそれぞれ上限値と下限値との制限を設け、
微分補正トルクTD が極端に大きな値とならないよう
に、クリップ部133にてクリップ処理を行い、微分補
正トルクTD を得ている。このクリップ部133は、車
両82の走行中に車輪速VF ,VRL,VRRが路面状況や
車両82の走行状態等によって、瞬間的に空転或いはロ
ック状態となることがあり、このような場合にスリップ
量sの変化率Gs が正或いは負の極端に大きな値とな
り、制御が発散して応答性が低下する虞があるので、例
えば下限値を−55kgm にクリップすると共に上限値を
55kgm にクリップし、微分補正トルクTD が極端に大
きな値とならないようにするためのものである。
【0121】しかるのち、加算部134にてこれら比例
積分補正トルクTPIと微分補正トルクTD とを加算し、
これにより得られる最終補正トルクTPID を減算部11
6にて前述の基準駆動トルクTBから減算し、更に乗算
部135にて機関11と前輪64,65の車軸89,9
0との間の総減速比の逆数を乗算することにより、下式
(6) に示すスリップ制御用の目標駆動トルクTOSを算出
する。 TOS=(TB −TPID )/ρm ・ρd ・ρT ・・・(6) 但し、ρd は差動歯車減速比、ρT はトルクコンバー
タ比であり、油圧式自動変速機13がアップシフトの変
速操作を行う際には、その変速終了後に高速段側の変速
比ρm が出力されるようになっている。つまり、油圧式
自動変速機13のアップシフトの変速操作の場合には、
変速信号の出力時点で高速段側の変速比ρm を採用する
と、上記(6) 式からも明らかなように、変速中に目標駆
動トルクTOSが増大して機関11が吹け上がってしまう
ため、変速開始の信号を出力してから変速操作が完了す
る、例えば1.5秒間は、目標駆動トルクTOSをより小
さくできる低速段側の変速比ρm が保持され、変速開始
の信号を出力してから1.5秒後に高速段側の変速比ρ
m が採用される。同様な理由から、油圧式自動変速機1
3のダウンシフトの変速操作の場合には、変速信号の出
力時点で低速段側の変速比ρm が直ちに採用される。
【0122】前記(6) 式で算出された目標駆動トルクT
OSは当然のことながら正の値となるはずであるから、ク
リップ部136にて演算ミスを防止する目的で目標駆動
トルクTOSを0以上にクリップし、スリップ制御の開始
或いは終了を判定するための開始・終了判定部137で
の判定処理に従って、この目標駆動トルクTOSに関する
情報がECU15に出力される。
【0123】開始・終了判定部137は下記(a) 〜(e)
に示す全ての条件を満足した場合にスリップ制御の開始
と判断し、スリップ制御中フラグFS をセットすると共
に低車速選択部101からの出力をスリップ制御用の車
速VS として選択するように切り換えスイッチ103を
作動させ、目標駆動トルクTOSに関する情報をECU1
5に出力し、スリップ制御の終了を判断してスリップ制
御中フラグFS がリセットとなるまでは、この処理を継
続する。 (a) 運転者は図示しない手動スイッチを操作してスリッ
プ制御を希望している。 (b) 運転者の要求している駆動トルクTd は車両82を
走行させるのに必要な最小の駆動トルク、例えば4kgm
以上である。
【0124】なお、本実施例ではこの要求駆動トルクT
d をクランク角センサ62からの検出信号により算出さ
れた機関回転数NE と、アクセル開度センサ76からの
検出信号により算出されたアクセル開度θA とに基づい
て予め設定された図29に示す如きマップから読み出し
ている。 (c) スリップ量sは毎時2km以上である。 (d) スリップ量sの変化率Gs は0.2g以上である。 (e) 実前輪速VF を微分演算部138にて時間微分した
実前輪加速度GF は0.2g以上である。
【0125】一方、前記開始・終了判定部137がスリ
ップ制御の開始を判定した後、下記(f) ,(g) に示す条
件の内のいずれかを満足した場合には、スリップ制御終
了と判断してスリップ制御中フラグFS をリセットし、
ECU15に対する目標駆動トルクTOSの送信を中止す
ると共に高車速選択部102からの出力をスリップ制御
用の車速VS として選択するように切り換えスイッチ1
03を作動させる。 (f) 目標駆動トルクTOSは要求駆動トルクTd 以上であ
り、且つスリップ量sは一定値、例えば毎時−2km以下
である状態が一定時間、例えば0.5秒以上継続してい
る。 (g) アイドルスイッチ68がオフからオンに変わった状
態、つまり運転者がアクセルペダル31を開放した状態
が一定時間、例えば0.5秒以上継続している。
【0126】前記車両82には、スリップ制御を運転者
が選択するための図示しない手動スイッチが設けられて
おり、運転者がこの手動スイッチを操作してスリップ制
御を選択した場合、以下に説明するスリップ制御の操作
を行う。なお、本実施例ではこのスリップ制御の一部と
して本発明の差動拘束トルク制御を行うようにしてお
り、従ってスリップ制御中の場合のみ後述する差動拘束
トルク制御がなされるようになっている。
【0127】このスリップ制御の処理の流れを表す図3
0に示すように、TCL75はS1にて上述した各種デ
ータの検出及び演算処理により、目標駆動トルクTOS
算出するが、この演算操作は前記手動スイッチの操作と
は関係なく行われる。
【0128】次に、S2にてまずスリップ制御中フラグ
S がセットされているか否かを判定するが、最初はス
リップ制御中フラグFS がセットされていないので、T
CL76はS3にて前輪64,65のスリップ量sが予
め設定した閾値、例えば毎時2kmよりも大きいか否かを
判定する。
【0129】このS3のステップにてスリップ量sが毎
時2kmよりも大きいと判断すると、TCL76はS4に
てスリップ量sの変化率Gs が0.2gよりも大きいか
否かを判定する。
【0130】このS4のステップにてスリップ量変化率
s が0.2gよりも大きいと判断すると、TCL76
はS5にて運転者の要求駆動トルクTd が車両82を走
行させるために必要な最小駆動トルク、例えば4kgm よ
りも大きいか否か、つまり運転者が車両82を走行させ
る意志があるか否かを判定する。
【0131】このS5のステップにて要求駆動トルクT
d が4kgm よりも大きい、即ち運転者は車両82を走行
させる意志があると判断すると、S6にてスリップ制御
中フラグFS をセットし、S7にてスリップ制御中フラ
グFS がセットされているか否かを再度判定する。
【0132】このS7のステップにてスリップ制御中フ
ラグFS がセット中であると判断した場合には、S8に
て機関11の目標駆動トルクTOSとして前記(6) 式にて
予め算出したスリップ制御用の目標駆動トルクTOSを採
用する。
【0133】又、前記S7のステップにてスリップ制御
中フラグFS がリセットされていると判断した場合に
は、S9にてTCL76は目標駆動トルクTOSとして機
関11の最大トルクを出力し、これによりECU15が
トルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0%側
に低下させる結果、機関11は運転者によるアクセルペ
ダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発生する。
【0134】なお、S3のステップにて前輪64,65
のスリップ量sが毎時2kmよりも小さいと判断した場
合、或いはS4のステップにてスリップ量変化率Gs
0.2gよりも小さいと判断した場合、或いはS5のス
テップにて要求駆動トルクTd が4kgm よりも小さいと
判断した場合には、そのまま前記S7のステップに移行
し、S9のステップにてTCL76は目標駆動トルクT
OSとして機関11の最大トルクを出力し、これによりE
CU15がトルク制御用電磁弁51,56のデューティ
率を0%側に低下させる結果、機関11は運転者による
アクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを
発生する。
【0135】一方、前記S2のステップにてスリップ制
御中フラグFS がセットされていると判断した場合に
は、S10にて前輪64,65のスリップ量sが前述し
た閾値である毎時−2km以下且つ要求駆動トルクTd
S1にて算出された目標駆動トルクTOS以下の状態が
0.5秒以上継続しているか否かを判定する。
【0136】このS10のステップにてスリップ量sが
毎時2kmよりも小さく且つ要求駆動トルクTd が目標駆
動トルクTOS以下の状態が0.5秒以上継続している、
即ち運転者は車両82の加速を既に希望していないと判
断すると、S11にてスリップ制御中フラグFS をリセ
ットし、S7のステップに移行する。
【0137】前記S10のステップにてスリップ量sが
毎時2kmよりも大きいか、或いは要求駆動トルクTd
目標駆動トルクTOS以下の状態が0.5秒以上継続して
いない、即ち運転者は車両82の加速を希望していると
判断すると、TCL76はS12にてアイドルスイッチ
68がオン、即ちスロットル弁20の全閉状態が0.5
秒以上継続しているか否かを判定する。
【0138】このS12のステップにてアイドルスイッ
チ68がオンであると判断した場合、運転者がアクセル
ペダル31を踏み込んでいないことから、S11のステ
ップに移行してスリップ制御中フラグFS をリセットす
る。逆に、アイドルスイッチ68がオフであると判断し
た場合、運転者はアクセルペダル31を踏み込んでいる
ので、再びS7のステップに移行する。
【0139】なお、運転者がスリップ制御を選択する手
動スイッチを操作していない場合、TCL76は前述の
ようにしてスリップ制御用の目標駆動トルクTOSを算出
した後、旋回制御を行った場合の機関11の目標駆動ト
ルクを演算する。
【0140】ところで、車両82の横加速度GY は後輪
速差|VRL−VRR|を利用して前記(5) 式により実際に
算出することができるが、操舵軸旋回角δH を利用する
ことによって、車両82に作用する横加速度GY の値の
予測が可能となるため、迅速な制御を行うことができる
利点を有する。
【0141】そこで、この車両82の旋回制御に際し、
TCL76は操舵軸旋回角δH と車速Vとから、車両8
2の目標横加速度GYOを前記(3) 式により算出し、車両
82が極端なアンダーステアリングとならないような車
体前後方向の加速度、つまり目標前後加速度GXOをこの
目標横加速度GYOに基づいて設定する。そして、この目
標前後加速度GXOと対応する機関11の目標駆動トルク
OCを算出する。
【0142】この旋回制御の演算ブロックを表す図31
及び図32に示すように、TCL76は車速演算部14
0にて一対の後輪回転センサ80,81の出力から車速
Vを前記(1) 式により演算すると共に操舵角センサ84
からの検出信号に基づいて前輪64,65の舵角δを前
記(2) 式より演算し、目標横加速度演算部141にてこ
の時の車両82の目標横加速度GYOを前記(3) 式より算
出する。この場合、車速Vが小さな領域、例えば毎時2
3km以下の時には、旋回制御を行うよりも旋回制御を禁
止した方が、例えば交通量の多い交差点での右左折等の
際に充分な加速を得られるので、安全性の点で都合の良
い場合が多いことから、本実施例では補正係数乗算部1
42にて図33に示す如き補正係数KY を車速Vに応じ
て目標横加速度GYOに乗算している。
【0143】ところで、操舵軸中立位置δM の学習が行
われていない状態では、舵角δに基づいて目標横加速度
YOを(3) 式より算出することは信頼性の点で問題があ
るので、操舵軸中立位置δM の学習が行われるまでは、
旋回制御を開始しないことが望ましい。しかし、車両8
2の走行開始直後から屈曲路を走行するような場合、車
両82が旋回制御を必要とする状態となるが、操舵軸中
立位置δM の学習開始条件がなかなか満たさないため、
この旋回制御が開始されない不具合を発生する虞があ
る。そこで、本実施例では操舵軸中立位置δM の学習が
行われるまでは、切り換えスイッチ143にて前記(5)
式に基づくフィルタ部123からの修正横加速度GYF
用いて旋回制御を行えるようにしている。つまり、二つ
の舵角中立位置学習済フラグFHN,FH のいずれもがリ
セットされている状態では、切り換えスイッチ143に
より修正横加速度GYFを採用し、二つの舵角中立位置学
習済フラグFHN,FH の内の少なくとも一方がセットさ
れたならば、切り換えスイッチ143により補正係数乗
算部142からの目標横加速度GYOが選択される。
【0144】又、前述したスタビリティファクタAは、
周知のように車両82の懸架装置の構成やタイヤの特性
或いは路面状況等によって決まる値である。具体的に
は、定常円旋回時にて車両82に発生する実際の横加速
度GY と、この時の操舵軸83の操舵角比δH /δ
HO(操舵軸83の中立位置δM を基準として横加速度G
Y が0近傍となる極低速走行状態での操舵軸83の旋回
角δHOに対して加速時における操舵軸83の旋回角δH
の割合)との関係を表す例えば図34に示すようなグラ
フにおける接線の傾きとして表現される。つまり、横加
速度GYが小さくて車速Vが余り高くない領域では、ス
タビリティファクタAがほぼ一定値(A=0.002)
となっているが、横加速度GY が0.6gを越えると、
スタビリティファクタAが急増し、車両82は極めて強
いアンダーステアリング傾向を示すようになる。
【0145】以上のようなことから、乾燥状態の舗装路
面(以下、これを高μ路と呼称する)に対応する図34
を基にした場合には、スタビリティファクタAを0.0
02に設定し、(3) 式により算出される車両82の目標
横加速度GYOが0.6g未満となるように、機関11の
駆動トルクを制御する。
【0146】なお、凍結路等のような滑りやすい路面
(以下、これを低μ路と呼称する)の場合には、スタビ
リティファクタAを例えば0.005前後に設定すれば
良い。この場合、低μ路では実際の横加速度GY よりも
目標横加速度GYOの方が大きな値となるため、目標横加
速度GYOが予め設定した閾値、例えば(GYF−2)より
も大きいか否かを判定し、目標横加速度GYOがこの閾値
よりも大きい場合には、車両82が低μ路を走行中であ
ると判断し、必要に応じて低μ路用の旋回制御を行えば
良い。具体的には、前記(5) 式に基づいて算出される修
正横加速度GYFに0.05gを加えることにより予め設
定した閾値よりも目標横加速度GYOが大きいか否か、つ
まり低μ路では実際の横加速度GY よりも目標横加速度
YOの方が大きな値となるため、目標横加速度GYOがこ
の閾値よりも大きいか否かを判定し、目標横加速度GYO
が閾値よりも大きい場合には、車両82が低μ路を走行
中であると判断するのである。
【0147】このようにして目標横加速度GYOを算出し
たならば、予めこの目標横加速度GYOの大きさと車速V
とに応じて設定された車両82の目標前後加速度GXO
目標前後加速度算出部144にてTCL76に予め記憶
された図35に示す如きマップから読み出し、この目標
前後加速度GXOに対応する機関11の基準駆動トルクT
B を基準駆動トルク算出部145にて下式(7) により算
出する。 TB =(GXO・Wb ・r+TL )/ρm ・ρd ・ρT ・・・(7) 但し、TL は車両82の横加速度GY の関数として求
められる路面の抵抗であるロードロード(Road-Load)ト
ルクであり、本実施例では、図36に示す如きマップか
ら求めている。
【0148】ここで、操舵軸旋回角δH と車速Vとによ
って、機関11の目標駆動トルクを求めるだけでは、運
転者の意志が全く反映されず、車両82の操縦性の面で
運転者に不満の残る虞がある。このため、運転者が希望
している機関11の要求駆動トルクTd をアクセルペダ
ル31の踏み込み量から求め、この要求駆動トルクTd
を勘案して機関11の目標駆動トルクを設定することが
望ましい。
【0149】そこで、本実施例では基準駆動トルクTB
の採用割合を決定するため、乗算部146にて基準駆動
トルクTB に重み付けの係数αを乗算して補正基準駆動
トルクを求める。この重み付けの係数αは、車両82を
旋回走行させて経験的に設定するが、高μ路では0.6
程度前後の数値を採用する。
【0150】一方、クランク角センサ55により検出さ
れる機関回転数NEとアクセル開度センサ77により検
出されるアクセル開度θA とを基に運転者が希望する要
求駆動トルクTd を前記図35に示す如きマップから求
め、次いで乗算部147にて前記重み付けの係数αに対
応した補正要求駆動トルクを要求駆動トルクTd に(1
−α)を乗算することにより算出する。例えば、α=
0.6に設定した場合には、基準駆動トルクTB と要求
駆動トルクTd との採用割合が6対4となる。
【0151】従って、機関11の目標駆動トルクTOC
加算部148にて下式(8) により算出される。 TOC=α・TB +(1−α)・Td ・・・(8)
【0152】ところで、15ミリ秒毎に設定される機関
11の目標駆動トルクTOCの増減量が非常に大きな場合
には、車両82の加減速に伴うショックが発生し、乗り
心地の低下を招来することから、機関11の目標駆動ト
ルクTOCの増減量が車両82の乗り心地の低下を招来す
る程大きくなった場合には、この目標駆動トルクTOC
増減量を規制することが望ましい。
【0153】そこで、本実施例では変化量クリップ部1
49にて今回算出した目標駆動トルクTOC(n) と前回算
出した目標駆動トルクTOC(n-1) との差の絶対値|ΔT
|が増減許容量TK よりも小さい場合には、算出された
今回の目標駆動トルクTOC(n) をそのまま採用するが、
今回算出した目標駆動トルクTOC(n) と前回算出した目
標駆動トルクTOC(n-1) との差ΔTが負の増減許容量T
K よりも大きくない場合には、今回の目標駆動トルクT
OC(n) を下式により設定する。 TOC(n) =TOC(n-1) −TK
【0154】つまり、前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1) に対する下げ幅を増減許容量TK で規制し、機
関11の駆動トルク低減に伴う減速ショックを少なくす
る。又、今回算出した目標駆動トルクTOC(n) と前回算
出した目標駆動トルクTOC(n-1) との差ΔTが増減許容
量TK 以上の場合には、今回の目標駆動トルクTOC(n)
を下式により設定する。 TOC(n) =TOC(n-1) +TK
【0155】つまり、今回算出した目標駆動トルクT
OC(n) と前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1) との差
ΔTが増減許容量TK を越えた場合には、前回算出した
目標駆動トルクTOC(n-1) に対する上げ幅を増減許容量
K で規制し、機関11の駆動トルク増大に伴う加速シ
ョックを少なくする。
【0156】そして、旋回制御の開始或いは終了を判定
するための開始・終了判定部150での判定処理に従っ
て、この目標駆動トルクTOCに関する情報がECU15
に出力される。
【0157】開始・終了判定部150は、下記(a) 〜
(d) に示す全ての条件を満足した場合に旋回制御の開始
と判断し、旋回制御中フラグFC をセットすると共に目
標駆動トルクTOCに関する情報をECU15に出力し、
旋回制御の終了を判断して旋回制御中フラグFC がリセ
ットとなるまでは、この処理を継続する。 (a) 目標駆動トルクTOCが要求駆動トルクTd から閾
値、例えば2kgm を減算した値に満たない。 (b) 運転者は図示しない手動スイッチを操作して旋回制
御を希望している。 (c) アイドルスイッチ68がオフ状態である。 (d) 旋回のための制御系が正常である。
【0158】一方、前記開始・終了判定部150が旋回
制御の開始を判定した後、下記(e) 及び(f) に示す条件
の内のいずれかを満足した場合には、旋回制御終了と判
断して旋回制御中フラグFC をリセットし、ECU15
に対する目標駆動トルクTOCの送信を中止する。 (e) 目標駆動トルクTOSが要求駆動トルクTd 以上であ
る。 (f) 旋回のための制御系に故障や断線等の異常がある。
【0159】ところで、アクセル開度センサ77の出力
電圧とアクセル開度θA との間には、当然のことながら
一定の比例関係があり、アクセル開度θA が全閉の場合
にアクセル開度センサ77の出力電圧が例えば0.6ボ
ルトとなるように、スロットルボディ21に対してアク
セル開度センサ77が組付けられる。しかし、車両82
の点検整備等でスロットルボディ21からアクセル開度
センサ77を取り外し、再組付けを行った場合にこのア
クセル開度センサ77を元の取り付け状態に正確に戻す
ことは実質的に不可能であり、しかも経年変化等でスロ
ットルボディ21に対するアクセル開度センサ77の位
置がずれてしまう虞もある。
【0160】そこで、本実施例ではアクセル開度センサ
77の全閉位置を学習補正するようにしており、これに
よってアクセル開度センサ77からの検出信号に基づい
て算出されるアクセル開度θA の信頼性を確保してい
る。
【0161】このアクセル開度センサ77の全閉位置の
学習手順を表す図37に示すように、アイドルスイッチ
68がオン状態且つイグニッションキースイッチ75が
オンからオフ状態になった後、一定時間、例えば2秒間
のアクセル開度センサ77の出力を監視し、この間のア
クセル開度センサ77の出力の最低値をアクセル開度θ
A の全閉位置として取り込み、ECU15に組み込まれ
た図示しないバックアップ付のRAMに記憶しておき、
次回の学習までこのアクセル開度センサ77の出力の最
低値を基準としてアクセル開度θA を補正する。
【0162】但し、車両82に搭載した図示しない蓄電
池を取り外した場合には、前記RAMの記憶が消去され
てしまうので、このような場合には図38及び図39に
示す学習手順が採用される。
【0163】つまり、TCL76はA1にてアクセル開
度θA の全閉値θACが前記RAMに記憶されているか否
かを判定し、このA1のステップにてアクセル開度θA
の全閉値θACがRAMに記憶されていないと判断した場
合には、A2にて初期値θA(0)をRAMに記憶させる。
【0164】一方、このA1のステップにてアクセル開
度θA の全閉値θACがRAMに記憶されていると判断し
た場合には、A3にてイグニッションキースイッチ75
がオン状態であるか否かを判定する。このA3のステッ
プにてイグニッションキースイッチ75がオン状態から
オフ状態に変化したと判断した場合には、A4にて図示
しない学習用タイマのカウントを開始させる。そして、
この学習用タイマのカウント開始後にA5にてアイドル
スイッチ68がオン状態か否かを判定する。
【0165】このA5のステップにてアイドルスイッチ
68がオフ状態であると判断したならば、A6にて前記
学習用タイマのカウントが設定値、例えば2秒に達した
か否かを判定し、再びこのA5のステップに戻る。又、
A5のステップにてアイドルスイッチ68がオン状態で
あると判断した場合には、A7にてアクセル開度センサ
77の出力を所定の周期で読み取り、A8にて今回のア
クセル開度θA(n)が今までのアクセル開度θA の最小値
θALよりも小さいか否かを判定する。
【0166】ここで、今回のアクセル開度θA(n)が今ま
でのアクセル開度θA の最小値θALよりも大きいと判断
した場合には、今までのアクセル開度θA の最小値θAL
をそのまま保持し、逆に今回のアクセル開度θA(n)が今
までのアクセル開度θA の最小値θALよりも小さいと判
断した場合には、A9にて今回のアクセル開度θA(n)
新たな最小値θALとして更新する。この操作をA6のス
テップにて前記学習用タイマのカウントが設定値、例え
ば2秒に達するまで繰り返す。
【0167】学習用タイマのカウントが設定値に達した
ならば、A10にてアクセル開度θ A の最小値θALが予
め設定したクリップ値、例えば0.3ボルトと0.9ボ
ルトとの間にあるか否かを判定する。そして、このアク
セル開度θA の最小値θALが予め設定したクリップ値の
範囲に収まっていると判断した場合には、A11にてア
クセル開度θA の初期値θA(0)或いは全閉値θACを前記
最小値θALの方向に一定値、例えば0.1ボルト近づけ
たものを今回の学習によるアクセル開度θA の全閉値θ
AC(n) とする。つまり、アクセル開度θA の初期値θ
A(0)或いは全閉値θACがその最小値θALよりも大きな場
合には、 θAC(n) =θAC(0) −0.1 又は、 θAC(n) =θAC(n-1) −0.1 と設定し、逆にアクセル開度θA の初期値θA(0)或いは
全閉値θACがその最小値θALよりも大きな場合には、 θAC(n) =θAC(0) +0.1 又は、 θAC(n) =θAC(n-1) +0.1 と設定する。
【0168】前記A10のステップにてアクセル開度θ
A の最小値θALが予め設定したクリップ値の範囲から外
れていると判断した場合には、A12にて外れている方
のクリップ値をアクセル開度θA の最小値θALとして置
き換え、前記A11のステップに移行してアクセル開度
θA の全閉値θACを学習補正する。
【0169】このように、アクセル開度θA の最小値θ
ALに上限値と下限値とを設定することにより、アクセル
開度センサ77が故障した場合でも誤った学習を行う虞
がなく、一回当たりの学習補正量を一定値に設定したこ
とにより、ノイズ等の外乱に対しても誤った学習を行う
ことがなくなる。
【0170】上述した実施例では、アクセル開度センサ
77の全閉値θACの学習開始時期をイグニッションキー
スイッチ75がオン状態からオフ状態へ変化した時点を
基準にしたが、図示しない座席に組み込まれた着座セン
サを用い、イグニッションキースイッチ75がオン状態
でも運転者が座席を離れたことを着座センサによる座席
の圧力変化や位置変位等を利用して検出し、前記A4の
ステップ以降の学習処理を開始するようにしても良い。
又、図示しないドアロック装置が車両82の外側から操
作されたことを検出したり、或いはキーエントリーシス
テムによりドアロック装置が操作されたことを検出した
時点にてアクセル開度センサ77の全閉値θACの学習を
開始することも可能である。この他に、油圧式自動変速
機13の図示しないシフトレバーの位置がニュートラル
位置か或いはパーキング位置(手動変速機を搭載した車
両の場合にはニュートラル位置)であって、手動ブレー
キが操作され、しかも空気調和装置がオフ状態である、
つまりアイドルアップ状態ではない場合に学習処理を行
うようにしても良い。
【0171】前記車両82には、旋回制御を運転者が選
択するための図示しない手動スイッチが設けられてお
り、運転者がこの手動スイッチを操作して旋回制御を選
択した場合、以下に説明する旋回制御の操作を行うよう
になっている。
【0172】この旋回制御用の目標駆動トルクTOCを決
定するための制御の流れを表す図40及び図41に示す
ように、C1にて上述した各種データの検出及び演算処
理により、目標駆動トルクTOCが算出されるが、この操
作は前記手動スイッチの操作とは関係なく行われる。
【0173】次に、C2にて車両82が旋回制御中であ
るかどうか、つまり旋回制御中フラグFC がセットされ
ているかどうかを判定する。最初は旋回制御中ではない
ので、旋回制御中フラグFC がリセット状態であると判
断し、C3にて例えば(Td −2)以下か否かを判定す
る。つまり、車両82の直進状態でも目標駆動トルクT
OCを算出することができるが、その値は運転者の要求駆
動トルクTd よりも大きいのが普通である。しかし、こ
の要求駆動トルクTd が車両82の旋回時には一般的に
小さくなるので、目標駆動トルクTOCが閾値(Td
2)以下となった時を旋回制御の開始条件として判定す
るようにしている。
【0174】なお、この閾値を(Td −2)と設定した
のは、制御のハンチングを防止するためのヒステリシス
としてである。
【0175】C3のステップにて目標駆動トルクTOC
閾値(Td −2)以下であると判断すると、TCL76
はC4にてアイドルスイッチ68がオフ状態か否かを判
定する。
【0176】このC4のステップにてアイドルスイッチ
68がオフ状態、即ちアクセルペダル31が運転者によ
って踏み込まれていると判断した場合、C5にて旋回制
御中フラグFC がセットされる。次に、C6にて二つの
舵角中立位置学習済フラグFHN,FH の内の少なくとも
一方がセットされているか否か、即ち操舵角センサ84
によって検出される舵角δの信憑性が判定される。
【0177】C6のステップにて二つの舵角中立位置学
習済フラグFHN,FH の内の少なくとも一方がセットさ
れていると判断すると、C7にて旋回制御中フラグFC
がセットされているか否かが再び判定される。
【0178】以上の手順では、C5のステップにて旋回
制御中フラグFC がセットされているので、C7のステ
ップでは旋回制御中フラグFC がセットされていると判
断され、C8にて先の算出値、即ちC1のステップでの
目標駆動トルクTOCがそのまま採用される。
【0179】一方、前記C6のステップにて舵角中立位
置学習済フラグFHがセットされていないと判断する
と、(2) 式にて算出される舵角δの信憑性がないので、
(8) 式にて算出された目標駆動トルクTOCを採用せず、
TCL76は目標駆動トルクTOCとして機関11の最大
トルクをC9にて出力し、これによりECU15がトル
ク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0%側に低
下させる結果、機関11は運転者によるアクセルペダル
31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発生する。
【0180】又、前記C3のステップにて目標駆動トル
クTOCが閾値(Td −2)以下でないと判断すると、旋
回制御に移行せずにC6或いはC7のステップからC9
のステップに移行し、TCL76は目標駆動トルクTOC
として機関11の最大トルクを出力し、これによりEC
U15がトルク制御用電磁弁51,56のデューティ率
を0%側に低下させる結果、機関11は運転者によるア
クセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルクを発
生する。
【0181】同様に、C4のステップにてアイドルスイ
ッチ68がオン状態、即ちアクセルペダル31が運転者
によって踏み込まれていないと判断した場合にも、TC
L76は目標駆動トルクTOCとして機関11の最大トル
クを出力し、これによりECU15がトルク制御用電磁
弁51,56のデューティ率を0%側に低下させる結
果、機関11は運転者によるアクセルペダル31の踏み
込み量に応じた駆動トルクを発生して旋回制御には移行
しない。
【0182】前記C2のステップにて旋回制御中フラグ
C がセットされていると判断した場合には、C10に
て今回算出した目標駆動トルクTOCと前回算出した目標
駆動トルクTOC(n-1) との差ΔTが予め設定した増減許
容量TK よりも大きいか否かを判定する。この増減許容
量TK は乗員に車両82の加減速ショックを感じさせな
い程度のトルク変化量であり、例えば車両82の目標前
後加速度GXOを毎秒0.1gに抑えたい場合には、前記
(7) 式を利用して TK =0.1・Wb ・r・Δt/ρm ・ρd ・ρT となる。
【0183】前記C10のステップにて今回算出した目
標駆動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1) との差ΔTが予め設定した増減許容量TK より
も大きくないと判断されると、C11にて今度は目標駆
動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)
との差ΔTが負の増減許容量TK よりも大きいか否かを
判定する。
【0184】C11のステップにて今回算出した目標駆
動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)
との差ΔTが負の増減許容量TK よりも大きいと判断す
ると、今回算出した目標駆動トルクTOCと前回算出した
目標駆動トルクTOC(n-1) との差の絶対値|ΔT|が増
減許容量TK よりも小さいので、この場合には算出され
た今回の目標駆動トルクTOCをそのままC8のステップ
での算出値として採用する。
【0185】又、C11のステップにて今回算出した目
標駆動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクTOC
の差ΔTが負の増減許容量TK よりも大きくないと判断
すると、C12にて今回の目標駆動トルクTOCを下式に
より修正し、これをC8のステップでの算出値として採
用する。 TOC=TOC(n-1) −TK
【0186】つまり、前回算出した目標駆動トルクT
OC(n-1) に対する下げ幅を増減許容量TK で規制し、機
関11の駆動トルク低減に伴う減速ショックを少なくす
るのである。
【0187】一方、前記C10のステップにて今回算出
した目標駆動トルクTOCと前回算出した目標駆動トルク
OC(n-1) との差ΔTが増減許容量TK 以上であると判
断されると、C13にて今回の目標駆動トルクTOCを下
式により修正し、これをC8のステップでの算出値とし
て採用する。 TOC=TOC(n-1) +TK
【0188】つまり、駆動トルクの増大の場合も前述の
駆動トルク減少の場合と同様に、今回算出した目標駆動
トルクTOCと前回算出した目標駆動トルクTOC(n-1)
の差ΔTが増減許容量TK を越えた場合には、前回算出
した目標駆動トルクTOC(n-1) に対する上げ幅を増減許
容量TK で規制し、機関11の駆動トルク増大に伴う加
速ショックを少なくするのである。
【0189】以上のようにして目標駆動トルクTOCが設
定されると、TCL76はC14にてこの目標駆動トル
クTOCが運転者の要求駆動トルクTd よりも大きいか否
かを判定する。
【0190】ここで、旋回制御中フラグFC がセットさ
れている場合、目標駆動トルクTOCは運転者の要求駆動
トルクTd よりも大きくないので、C15にてアイドル
スイッチ68がオン状態か否かを判定する。
【0191】このC15のステップにてアイドルスイッ
チ68がオン状態でないと判断されると、旋回制御を必
要としている状態であるので、前記C6のステップに移
行する。
【0192】又、前記C14のステップにて目標駆動ト
ルクTOCが運転者の要求駆動トルクTd よりも大きいと
判断した場合、車両82の旋回走行が終了した状態を意
味するので、TCL76はC16にて旋回制御中フラグ
C をリセットする。同様に、C15のステップにてア
イドルスイッチ68がオン状態であると判断されると、
アクセルペダル31が踏み込まれていない状態であるの
で、C16のステップに移行して旋回制御中フラグFC
をリセットする。
【0193】このC16にて旋回制御中フラグFC がリ
セットされると、TCL76は目標駆動トルクTOCとし
て機関11の最大トルクをC9にて出力し、これにより
ECU15がトルク制御用電磁弁51,56のデューテ
ィ率を0%側に低下させる結果、機関11は運転者によ
るアクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆動トルク
を発生する。
【0194】なお、上述した旋回制御の手順を簡素化す
るために運転者の要求駆動トルクTd を無視することも
当然可能であり、この場合には目標駆動トルクとして前
記(7) 式により算出可能な基準駆動トルクTB を採用す
れば良い。又、本実施例のように運転者の要求駆動トル
クTd を勘案する場合でも、重み付けの係数αを固定値
とするのではなく、制御開始後の時間の経過と共に係数
αの値を漸次減少させたり、或いは車速Vに応じて漸次
減少させ、運転者の要求駆動トルクTd の採用割合を徐
々に多くするようにしても良い。同様に、制御開始後の
しばらくの間は係数αの値を一定値にしておき、所定時
間の経過後に漸次減少させたり、或いは操舵軸旋回量δ
H の増大に伴って係数αの値を増加させ、特に曲率半径
が次第に小さくなるような旋回路に対し、車両82を安
全に走行させるようにすることも可能である。
【0195】上述した実施例では、高μ路用の目標駆動
トルクを算出するようにしたが、この高μ路と低μ路と
に対応する旋回制御用の目標駆動トルクをそれぞれ算出
し、これらの目標駆動トルクから最終的な目標駆動トル
クを選択するようにしても良い。又、上述した演算処理
方法では、機関11の急激な駆動トルクの変動による加
減速ショックを防止するため、目標駆動トルクTOCを算
出するに際して増減許容量TK によりこの目標駆動トル
クTOCの規制を図っているが、この規制を目標前後加速
度GXOに対して行うようにしても良い。
【0196】この旋回制御用の目標駆動トルクTOCを算
出したのち、TCL76はこれら二つの目標駆動トルク
OS,TOCから最適な最終目標駆動トルクTO を選択
し、これをECU15に出力する。この場合、車両82
の走行安全性を考慮して小さな数値の方の目標駆動トル
クを優先して出力する。但し、一般的にはスリップ制御
用の目標駆動トルクTOSが旋回制御用の目標駆動トルク
OCよりも常に小さいことから、スリップ制御用, 旋回
制御用の順に最終目標駆動トルクTO を選択すれば良
い。
【0197】この処理の流れを表す図42に示すよう
に、B11にてスリップ制御用の目標駆動トルクTOS
旋回制御用の目標駆動トルクTOCとを算出した後、B1
2にてスリップ制御中フラグFS がセットされているか
否かを判定し、このスリップ制御中フラグFS がセット
されていると判断したならば、最終目標駆動トルクTO
としてスリップ制御用の目標駆動トルクTOSをB13に
て選択し、これをECU15に出力する。
【0198】一方、前記B12のステップにてスリップ
制御中フラグFS がセットされていないと判断したなら
ば、B14にて旋回制御中フラグFC がセットされてい
るか否かを判定し、この旋回制御中フラグFCがセット
されていると判断したならば、最終目標駆動トルクTO
として旋回制御用の目標駆動トルクTOCをB15にて選
択し、これをECU15に出力する。
【0199】又、前記B14のステップにて旋回制御中
フラグFC がセットされていないと判断したならば、T
CL76はB16にて機関11の最大トルクを最終目標
駆動トルクTO としてECU15に出力する。
【0200】以上のようにして最終目標駆動トルクTO
を選択する一方、アクチュエータ41を介したスロット
ル弁20の操作によっても機関11の出力低減が間に合
わない急発進時や路面状況が通常の乾燥路から凍結路に
急変するような場合、TCL76はECU15にて設定
される点火時期Pの基本遅角量pB に対する遅角割合を
設定し、これをECU15に出力している。
【0201】前記基本遅角量pB は、機関11の運転に
支障を来さないような遅角の最大値であり、機関11の
吸気量と機関回転数NE とに基づいて設定されるが、基
本的にはスリップ量sの変化率Gs が大きくなるに従っ
て、大きな遅角量となるような遅角割合を選択してい
る。この遅角割合として、本実施例では基本遅角量pB
を0にする0レベルと、基本遅角量pB を3分の2に圧
縮するIレベルと、基本遅角量pB をそのまま出力する
IIレベルと、基本遅角量pB をそのまま出力すると共に
スロットル弁20を全閉操作するIII レベルとの四つが
設定されている。即ち、このIII レベルにおけるスロッ
トル弁20の全閉操作と上述した遅角操作とを組み合わ
せることで、極めて迅速に機関11の駆動トルクを低下
させ、前輪64,65のスリップを収束させることがで
きる。
【0202】この遅角割合を読み出す手順を表す図41
及び図42に示すように、TCL76はまずP1にて点
火時期制御中フラグFP をリセットし、P2にてスリッ
プ制御中フラグFS がセットされているか否かを判定す
る。このP2のステップにてスリップ制御中フラグFS
がセットされていると判断すると、P3にて点火時期制
御中フラグFP をセットし、P4にてスリップ量sが毎
時0km未満か否かを判定する。又、前記P2のステップ
にてスリップ制御中フラグFS がセットされていないと
判断すると、前記P4のステップに移行する。
【0203】このP4のステップにてスリップ量sが毎
時0km未満である、即ち機関11の駆動トルクを上げて
も問題ないと判断すると、P5にて遅角割合を0レベル
にセットし、これを ECU15に出力する。逆に、こ
のP4のステップにてスリップ量sが毎時0km以上であ
ると判断した場合には、P6にてスリップ量変化率GS
が2.5g以下であるか否かを判定し、このP6のステ
ップにてスリップ量変化率GS が2.5g以下であると
判断した場合には、P7にて遅角割合がIII レベルであ
るか否かを判定する。
【0204】又、前記P6のステップにてスリップ量変
化率GS が2.5gを超える、即ち急激に前輪64,6
5がスリップしていると判断した場合には、P8にて最
終目標駆動トルクTO が4kgm 未満であるか否かを判定
し、この最終目標駆動トルクTO が4kgm 未満である、
即ち機関11の駆動トルクを急激に抑制する必要がある
と判断した場合には、P9にて遅角割合をIII レベルに
設定して前記P7のステップに移行する。逆に、P8の
ステップにて最終目標駆動トルクTO が4kgm 以上であ
ると判断した場合には、そのままP7のステップに移行
する。
【0205】 このP7のステップにて遅角割合がIII
レベルであると判断したならば、P10にてスリップ量
変化率GS が0gを超えるか否かを判定する。ここで、
スリップ量変化率GS が0gを超えている、即ちスリッ
プ量sが増加する傾向にあると判断した場合には、P1
1にて点火時期制御中フラグFP がセットされているか
否かを判定するが、P10のステップにてスリップ量変
化率GS が0g以下である、即ちスリップ量sが現象傾
向にあると判断した場合には、P12にてこのスリップ
量sが毎時8kmを超えているか否かを判定する。
【0206】このP12のステップにてスリップ量sが
毎時8kmを超えていると判断した場合には、前記P11
のステップに移行し、逆にスリップ量sが毎時8km以下
であると判断した場合には、P13にて遅角割合をIII
レベルからIIレベルへ切替え、P14にてスリップ量変
化率GS が0.5g以下であるか否かを判定する。同様
に、前記P7のステップにて遅角割合がIII レベルでは
ないと判断した場合にも、このP14のステップに移行
する。
【0207】このP14のステップにてスリップ量変化
率GS が0.5g以下である、即ちスリップ量sの変化
が余り急激ではないと判断した場合には、P15にて遅
角割合がIIレベルであるか否かを判定する。又、P14
のステップにてスリップ量変化率GS が0.5g以下で
はないと判断した場合には、P16にて遅角割合をIIレ
ベルに設定し、P15のステップに移行する。
【0208】そして、このP15のステップにて遅角割
合がIIレベルであると判断した場合には、P16にてス
リップ量変化率GS が0gを越えるか否かを判定し、逆
に遅角割合がIIレベルではないと判断した場合には、P
17にてスリップ量変化率GS が0.3g以下であるか
否かを判定する。前記P16のステップにてスリップ量
変化率GS が0gを越えていない、即ちスリップ量sが
減少傾向にあると判断した場合には、P18にてにてこ
のスリップ量sが毎時8kmを超えているか否かを判定す
る。そして、このP18のステップにてスリップ量sが
毎時8km以下であると判定した場合には、P19にて遅
角割合をIIレベルからIレベルへ切替え、前記P17の
ステップに移行する。又、前記P16のステップにてス
リップ量変化率GS が0g以上である、即ちスリップ量
sが増加傾向にあると判断した場合、及びP18のステ
ップにてスリップ量sが毎時8kmを越えている、即ちス
リップ量sが大きいと判断した場合には、それぞれ前記
P11のステップに移行する。
【0209】前記P17のステップにてスリップ量変化
率GS が0.3g以下である、即ちスリップ量sが殆ど
増加傾向にないと判断したならば、P20にて遅角割合
がIレベルであるか否かを判定する。逆に、P17のス
テップにてスリップ量変化率GS が0.3gを越えてい
る、即ちスリップ量sが多少なりとも増加傾向にあると
判断した場合には、P21にて遅角割合をIレベルに設
定する。
【0210】そして、P20にて遅角割合がIレベルで
あると判断した場合には、P22にてスリップ量変化率
S が0gを越えているか否かを判定し、これが0g以
下である、即ちスリップ量sが減少傾向にあると判断し
た場合には、P23にてスリップ量sが毎時5km未満で
あるか否かを判定する。このP23のステップにてスリ
ップ量sが毎時5km未満である、即ち前輪64,65が
殆どスリップしていないと判断したならば、P24にて
遅角割合を0レベルに設定し、これをECU15に出力
する。又、P20のステップにて遅角割合がIレベルで
はないと判断した場合や、P22のステップにてスリッ
プ量変化率GS が0gを越えている、即ちスリップ量s
が増加傾向にあると判断した場合、或いはP23のステ
ップにてスリップ量sが毎時5km以上である、即ちスリ
ップ量sが比較的多いと判断した場合には、それぞれ前
記P11のステップに移行する。
【0211】一方、このP11のステップにて点火時期
制御中フラグFP がセットされていると判断したなら
ば、P25にて最終目標駆動トルクTO が10kgm 未満
であるか否かを判定する。又、P11のステップにて点
火時期制御中フラグFP がセットされていないと判断し
た場合には、P26にて遅角割合を0レベルに設定して
からP25のステップに移行する。
【0212】そして、このP25にて最終目標駆動トル
クTO が10kgm 以上である、即ち機関11が多少大き
めな駆動力を発生していると判断した場合には、P27
にて遅角割合がIIレベルであるか否かを判定し、この遅
角割合がIIレベルであると判断した場合には、P28に
て遅角割合をIレベルに落とし、これをECU15に出
力する。
【0213】前記P25のステップにて最終目標駆動ト
ルクTO が10kgm 未満であると判断した場合や、P2
7のステップにて遅角割合がIIレベルではないと判断し
た場合には、P29にて油圧式自動変速機13が変速中
か否かを判定する。そして、油圧式自動変速機13が変
速中であると判断した場合には、P30にて遅角割合が
III レベルであるか否かを判定し、このP30のステッ
プにて遅角割合がIII レベルであると判断した場合に
は、P31にて遅角割合をIIレベルに落とし、これをE
CU15に出力する。又、P29のステップにて油圧式
自動変速機13が変速中ではないと判断した場合、或い
はP30のステップにて遅角割合がIII レベルではない
と判断した場合には、それぞれP32にて先に設定され
た遅角割合をそのままECU15に出力する。
【0214】例えば、P9のステップにてIII レベルの
遅角割合が設定された場合、スリップ量変化率GS が0
gを越えていると共にスリップ量sが毎時8kmを超えて
いる、即ちスリップ量sの増加割合が急激であり、最終
目標駆動トルクTO が10kgm 未満であって点火時期の
遅角操作だけでは前輪64,65のスリップを充分に抑
えることが困難であると判断した場合には、III レベル
の遅角割合が選択されてスロットル弁20の開度を強制
的に全閉状態にし、スリップの発生をその初期段階で効
率良く抑え込むようにしている。
【0215】前記ECU15は、機関回転数NE と機関
11の吸気量とに基づいて予め設定された点火時期P及
び基本となる遅角量pB に関する図示しないマップか
ら、これら点火時期P及び基本遅角量pB をクランク角
センサ62からの検出信号及びエアフローセンサ70か
らの検出信号に基づいて読み出し、これをTCL76か
ら送られた遅角割合に基づいて補正し、目標遅角量pO
を算出するようにしている。この場合、図示しない排気
ガス浄化触媒を損傷しないような排気ガスの上限温度に
対応して目標遅角量pO の上限値が設定されており、こ
の排気ガスの温度は排気温センサ74からの検出信号に
より検出される。
【0216】なお、水温センサ71により検出される機
関11の冷却水温が予め設定された値よりも低い場合に
は、点火時期Pを遅角することは機関11のノッキング
やストールを誘発する虞があるため、以下に示す点火時
期Pの遅角操作は中止する。
【0217】この遅角制御における目標遅角量pO の演
算手順を表す図45及び図46に示すように、まずEC
U15はQ1にて前述したスリップ制御中フラグFS
セットされているか否かを判定し、このスリップ制御中
フラグFS がセットされていると判断すると、Q2にて
遅角割合がIII レベルに設定されているか否かを判定す
る。
【0218】そして、このQ2のステップにて遅角割合
がIII レベルであると判断した場合には、Q3にてマッ
プから読み出した基本遅角量pB をそのまま目標遅角量
O として利用し、点火時期Pを目標遅角量pO だけ遅
角する。更に、最終目標駆動トルクTO の値に関係なく
スロットル弁20が全閉状態となるように、Q4にてト
ルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を100%
に設定し、強制的にスロットル弁20の全閉状態を実現
する。これにより、スリップ量変化率Gs が急激に増加
している場合でも、スリップの発生をその初期段階で効
率良く抑え込むことができる。
【0219】又、Q2のステップにて遅角割合がIII レ
ベルではないと判断した場合には、Q5にて遅角割合が
IIレベルに設定されているか否かを判定する。そして、
このQ5のステップにて遅角割合がIIレベルであると判
断した場合には、前記Q3のステップと同様にQ6にて
目標遅角量pOをマップから読み出した基本遅角量pB
をそのまま目標遅角量pO として利用し、点火時期Pを
目標遅角量pO だけ遅角する。更に、Q7にてECU1
5は目標駆動トルクTOSの値に応じてトルク制御用電磁
弁51,56のデューティ率をQ7にて設定し、運転者
によるアクセルペダル31の踏み込み量とは関係なく、
機関11の駆動トルクを低減する。
【0220】ここでECU15には機関回転数NE と機
関11の駆動トルクとをパラメータとしてスロットル開
度θT を求めるためのマップが記憶されており、ECU
15はこのマップを用いて現在の機関回転数NE とこの
目標駆動トルクTOSとに対応した目標スロットル開度θ
TOを読み出す。
【0221】次いで、ECU15はこの目標スロットル
開度θTOとスロットル開度センサ67から出力される実
際のスロットル開度θT との偏差を求め、一対のトルク
制御用電磁弁51,56のデューティ率を前記偏差に見
合う値に設定して各トルク制御用電磁弁51,56のプ
ランジャ52,57のソレノイドに電流を流し、アクチ
ュエータ41の作動により実際のスロットル開度θT
目標スロットル開度θTOにまで下がるように制御する。
【0222】なお、目標駆動トルクTOSとして機関11
の最大トルクがECU15に出力された場合、ECU1
5はトルク制御用電磁弁51,56のデューティ率を0
%側に低下させ、運転者によるアクセルペダル31の踏
み込み量に応じた駆動トルクを機関11に発生させる。
【0223】前記Q5のステップにて遅角割合がIIレベ
ルではないと判断した場合には、Q8にて遅角割合がI
レベルに設定されているか否かを判定する。このQ8の
ステップにて遅角割合がIレベルに設定されていると判
断した場合には、目標遅角量pO を下式の如く設定して
点火時期Pを目標遅角量pO だけ遅角し、更に前記Q7
のステップに移行する。 pO =pB ・2/3
【0224】一方、前記Q8のステップにて遅角割合が
Iレベルではないと判断した場合には、Q10にて目標
遅角量pO が0であるか否かを判定し、これが0である
と判断した場合には、Q7のステップに移行して点火時
期Pを遅角せず、目標駆動トルクTOSの値に応じてトル
ク制御用電磁弁51,56のデューティ率を設定し、運
転者によるアクセルペダル31の踏み込み量とは関係な
く、機関11の駆動トルクを低減する。
【0225】又、前記Q10のステップにて目標遅角量
O が0ではないと判断した場合には、Q11にて主タ
イマのサンプリング周期Δt毎に目標遅角量pO をラン
プ制御により例えば1度ずつpO =0となるまで減算さ
せて行き、機関11の駆動トルクの変動に伴うショック
を軽減した後、Q7のステップに移行する。
【0226】なお、前記Q1のステップにてスリップ制
御中フラグFS がリセットされていると判断した場合に
は、機関11の駆動トルクを低減させない通常の走行制
御となり、Q12にてpO =0として点火時期Pを遅角
させず、Q13にてトルク制御用電磁弁51,56のデ
ューティ率を0%に設定することにより、機関11は運
転者によるアクセルペダル31の踏み込み量に応じた駆
動トルクを発生させる。
【0227】このようにして、点火時期制御における目
標遅角量pO を演算した後、ECU15は拘束トルク調
整用クラッチ89の差動拘束トルクを前輪速差の絶対値
|VFR−VFL|に基づいて設定する。
【0228】この差動拘束トルク制御のための演算手順
を表す図47及び図48に示すように、ECU15は前
輪回転センサ66,97からの検出信号に基づいて前輪
速差の絶対値|VFR−VFL|を周速度差演算部151に
て算出する。この時、車両82が旋回中の場合には必然
的に前輪64,65に旋回に伴う周速度差ΔVF が発生
するので、旋回補正演算部152にてこの旋回に伴う前
輪64,65の周速度差ΔVF を前輪速差の絶対値|V
FR−VFL|から減算する必要がある。ここで、車両82
の旋回半径をCr とすると、 ΔVF =b・V/Cr となるが、 Cr =ω・(1+A・V2 )/δ である。
【0229】但し、本実施例では車速Vに対応して単位
舵角(例えば120度)当たりの前輪64,65の基準
周速度差ΔVBFを基準周速度差算出部153にてECU
15内に記憶された図49に示す如きマップから読み出
し、これを乗算部154にて舵角倍(δH /120)す
ることにより、旋回に伴う前輪64,65の周速度差Δ
F を算出している。そして、旋回補正演算部152に
て下式に示す如き修正前輪速差ΔVFFを算出し、この修
正前輪速差ΔVFFに基づき、基準差動拘束トルク算出部
155にてECU15内に記憶された図50に示す如き
マップから基準差動拘束トルクTBFを算出する。 ΔVFF=|VFR−VFL|−ΔVBF・δH /120
【0230】この場合、高μ路と低μー路とでは拘束ト
ルク調整用クラッチ89の差動拘束トルクを変える、即
ち高μ路では差動拘束トルクを強めに設定する一方、低
μ路では差動拘束トルクを弱めに設定することが望まし
い。このため、路面μに応じて基準差動拘束トルクTBF
を補正する必要があり、次に路面μ推定手段156によ
り路面μを推定する。
【0231】ところで、右側の前輪65の操舵状態を表
す図51に示すように、旋回中の前輪65に発生するコ
ーナリングフォースDF は、下式(9) の通りである。 DF ∝δF ・μ ・・・(9) 但し、δF は車両82の進行方向(車両82の前後方向
は図中、上下方向に対応する)に対する前輪65の横滑
り角、μは路面の摩擦係数である。
【0232】ここで、横滑り角δF とコーナリングフォ
ースDFとの関係を表す図52に示すように、横滑り角
δF が一定値であっても路面状況によってコーナリング
フォースDF は大きく異なるものであり、一般的には路
面μが大きいほど横滑り角δF の増加に伴って大きな値
となる。又、コーナリングフォースDF とパワステ圧P
S とは図50からも明らかなように、力学的な関係から
ほぼ比例関係にあることから、C1 を比例定数とする
と、(9) 式を変形して下式(10)の通りに表すことができ
る。 PS =C1 ・δF ・μ ・・・(10)
【0233】一方、横滑り角δF は下式(11)で表すこ
とができるから、(10)式及びこの(11)式よりパワステ圧
S と操舵軸旋回角δH との比、即ちPS /δH は下式
(12)の通りとなる。 δF =C2 ・V2 ・δH /(μ+C3 ・V2 ) ・・・(11) PS /δH =μ・C1 ・C2 ・V2 /(μ+C3 ・V2 ) ・・・(12) 但し、C2 及びC3 はそれぞれ定数である。
【0234】従って、路面μ推定手段156に出力され
るパワステ圧PS 及び操舵軸旋回角δH 及び車速Vに基
づいて、前記(12)式により路面μを算出することができ
る。
【0235】この路面μ推定手段156による演算手順
を表す図53に示すように、圧力センサ98,99から
の検出信号に基づいて算出されるパワステ圧PS は、こ
れら圧力センサ98,99により検出されるパワーアク
チュエータ91の圧力室内の圧力PLS,PRSの差圧の絶
対値であるパワステ圧PS を減算部157にて算出した
後、位相補償フィルタ158を経て路面μ演算部159
に出力される。又、操舵角センサ84からの検出信号に
基づいて算出される操舵軸旋回角δH 及び後輪回転セン
サ80,81からの検出信号に基づいて算出される車速
Vは、TCL76から通信ケーブル87を介してこの路
面μ演算部159に出力されるようになっている。
【0236】前記位相補償フィルタ158は、減算部1
57から出力されるパワステ圧PS に対応する信号中の
ノイズを除去すると共に、操舵ハンドル85の操舵過渡
期での操舵軸旋回角δH に対するパワステ圧PS の位相
進みを補償するためのものである。つまり、操舵時にお
ける操舵軸旋回角δH の変化とパワステ圧PS の変化と
の関係を表す図54に示すように、位相補償フィルタ1
58を使用しない場合には、操舵弁94の特性に起因し
て図中、実線で示すように、操舵ハンドル85の切り込
みに伴う操舵軸旋回角δH の変化に対してパワステ圧P
S が早めに大きく立ち上がり、又、操舵ハンドル85の
切り戻しに伴う操舵軸旋回角δH の変化に対してパワス
テ圧PS が早めに立ち下がる傾向を持つ。しかしなが
ら、位相補償フィルタ158を使用することにより、図
中、破線で示すように、操舵軸旋回角δH の変化に対し
て位相ずれを招来することなく、パワステ圧PS の変化
を追従させ、操舵ハンドル85の操舵過渡期におけるパ
ワステ圧PS の位相進みを除去することができる。
【0237】路面μ演算部159にて算出された路面μ
は、μ変動制限部160及び路面μの値を安定化させる
ための安定化フィルタ161を経て図47及び図48に
示す路面補正係数算出部162に出力される。ここで、
μ変動制限部160は路面μの変化率が所定の範囲内に
ある場合、路面μ演算部159にて算出された路面μを
安定化フィルタ161に出力するため、極端な変動のな
い安定した路面μが安定化フィルタ161から路面補正
係数算出部162に出力される。
【0238】この路面μの推定操作の流れを表す図55
及び図56に示すように、まずJ1にて後輪速センサ8
0,81及び操舵角センサ84及び圧力センサ98,9
9からの検出検出信号に基づいてそれぞれ算出される車
速V及び操舵軸旋回角δH 及びパワーアクチュエータ9
1の圧力室内の圧力PLS,PRSがそれぞれ読み込まれ、
次いでJ2にてこのパワーアクチュエータ91の圧力室
内の圧力PLS,PRSの差圧、即ちパワステ圧PS が算出
される。そして、パワステ圧PS に対してJ3にて前述
した位相補償フィルタ158による処理が施され、そし
て、J4にて操舵軸旋回角δH が0ではないか否か、或
いは今回算出された操舵軸旋回角δH(n)が前回算出され
た操舵軸旋回角δH(n-1)と同じか否かが判定される。
【0239】このJ4のステップにて操舵軸旋回角δH
が0である、或いは今回算出された操舵軸旋回角δH(n)
が前回算出された操舵軸旋回角δH(n-1)と同じではない
と判断した場合には、J1のステップに戻るが、このJ
4のステップにて操舵軸旋回角δH が0ではない、或い
は今回算出された操舵軸旋回角δH(n)が前回算出された
操舵軸旋回角δH(n-1)と同じであると判断した場合に
は、J5にて操舵軸旋回角δH の絶対値が予め設定した
所定値δH1(例えば10度)以上か否かが判定される。
【0240】このJ5のステップにて操舵軸旋回角δH
の絶対値が所定値δH1未満であると判断した場合には、
J1のステップに戻るが、このJ5のステップにて操舵
軸旋回角δH の絶対値が所定値δH1以上であると判断し
た場合には、J6にてパワステ圧PS と操舵軸旋回角δ
H との比、即ち、PS /δH が前記(12)により算出され
る。
【0241】しかる後、J7にてパワステ圧PS の正負
と操舵軸旋回角δH の正負とが同じか否か、つまりPS
/δH の符号が正か否かが判定される。このJ7のステ
ップにてPS /δH の符号が負であると判断した場合に
は、J3のステップでの位相補償フィルタ処理に起因し
て、パワステ圧PS と操舵軸旋回角δHとの間に位相の
反転が生じていると判断し、前記J1のステップに戻
る。又、このJ7のステップにてPS /δH の符号が正
であると判断した場合には、J8にて路面μ算出のため
の乗算係数Km が図57に示す如きマップから読み出さ
れる。このマップは車速Vに対応する乗算係数Km を規
定したものであり、予めECU15内の図示しないメモ
リに記憶されている。
【0242】ここで、前記(12)式を変形すると μ=PS ・{1+C3 ・V2 /C1 ・C2 ・V2 }/δ
H となるが、乗算係数Km は Km =1+C3 ・V2 /C1 ・C2 ・V2 に相当するものである。
【0243】従って、路面μは次式で表すことができ
る。 μ=PS ・Km /δH
【0244】次に、J9にてJ8のステップにて読み込
まれた乗算係数KmとJ6のステップにて算出されたパ
ワステ圧PS と操舵軸旋回角δH との比PS /δH とを
乗算することにより、路面μを算出する。
【0245】この後、J10にて路面μの変化率dμ/
dtの絶対値が予め設定した所定値Δμ(例えば、毎秒
0.2μ)以内にあるか否かが判定される。このJ10
のステップにて路面μの変化率dμ/dtの絶対値が所
定値Δμを越えていると判断した否の場合には、J1の
ステップに戻るが、このJ10のステップにて路面μの
変化率dμ/dtの絶対値が所定値Δμ以内にあると判
断した場合には、J9のステップにて算出された路面μ
の値を安定化させるため、J11にて安定化フィルタ処
理が行われた後、J12にて路面μが出力される。
【0246】なお、本実施例ではJ5のステップにて操
舵軸旋回角δH の絶対値が所定値δH1以上であるか否か
を判定することにより、操舵軸旋回角δH が所定値δH1
以上の場合、即ち前輪64,65が操舵されて実質的に
パワステ圧PS が立ち上がり、しかも、J7のステップ
にてパワステ圧PS の正負と操舵軸旋回角δH の正負と
が同じか否かを判定することにより、パワステ圧PS
び操舵軸旋回角δH の方向が同一の場合のみ、路面μを
算出するようにしているため、路面μを正確に推定する
ことができる。即ち、操舵弁94の特性や前輪64,6
5の操舵に伴う慣性等の影響を除去して路面μを正確に
算出することができる。一方、J4,J5,J7のステ
ップでの判定処理において、何れかが否となる場合に
は、J8のステップ以降の処理が実行されることはな
く、この場合には前回算出した路面μがそのまま出力さ
れることになる。
【0247】更に、本実施例ではJ8のステップ以降の
処理が実施されて路面μが算出されても、この路面μの
変化率dμ/dtが所定値Δμよりも大きな場合には、
J10のステップでの判定操作により、路面μの値を更
新しないようにしてあり、又、S10のステップでの判
定が正となる場合でも、安定化フィルタ処理を経て、路
面μを出力するようにしているので、出力される路面μ
が急激に変化するようなこともなく、その値は安定した
ものとなる。
【0248】なお、本実施例ではパワステ圧PS を検出
するに際し、パワーアクチュエータ91の左右の圧力室
の圧力を一対の圧力センサ98,99で検出し、この圧
力室の差圧をパワステ圧PS として算出するようにした
が、このパワステ圧PS を油圧ポンプ95の吐出側に組
み込んだ一個の圧力センサからの出力に基づいて検出す
ることも可能である。又、本実施例では路面μの情報を
差動拘束トルク制御のために利用しているが、先に説明
した旋回制御のための路面μの判定に利用することも当
然可能であり、逆に、先の旋回制御の説明箇所にて記載
した方法等で路面μを推定するようにしても良い。
【0249】このようにして路面μを推定し、ECU1
5内に記憶された図58に示す如きマップから路面μに
対応した路面補正係数KR を路面補正係数算出部162
にて読み出し、この路面補正係数KR と前記基準差動拘
束トルクTBSとを乗算部163にて乗算し、修正差動拘
束トルクTBFを算出する。
【0250】ところで、前輪速差|VFL−VFR|に基づ
いて差動拘束トルクを設定する方法では、前輪64,6
5の少なくとも一方にスリップが発生して初めて差動拘
束トルクを強め、このスリップが解消した場合に再び差
動拘束トルクを弱めるため、特に車両82の発進時に制
御のハンチングを生ずる虞がある。このため、車両82
が発進時であることをアクセル開度θAと車速Vとから
判定し、車両82の発進時における拘束トルク調整用ク
ラッチ89の差動拘束トルクを若干強めに保持しておく
ことが望ましい。
【0251】そこで、アクセル開度センサ77からの出
力信号に基づき加算拘束トルク算出部164にてECU
15内に記憶された図59に示す如きマップから基準加
算拘束トルクTSSを読み出し、車速補正係数算出部16
5にてECU15内に記憶された図60に示す如きマッ
プから車速Vに対応する車速補正係数KS を読み出し、
これを乗算部166にて基準加算拘束トルクTSSに乗算
し、更に操舵角センサ84からの検出信号に基づいて旋
回角補正係数算出部167にて図61に示す如きマップ
から旋回角補正係数KC を読み出し、これを乗算部16
8にて先の乗算部166での算出値に乗算し、加算用差
動拘束トルクTSPを得る。
【0252】このように、本実施例では車両82の発進
状態をアクセル開度θA と車速Vとから推定し、車両8
2の発進時における拘束トルク調整用クラッチ89の差
動拘束トルクを若干強めに保持するようにしたが、他の
周知の方法にて車両82の発進状態を推定することも当
然可能である。
【0253】そして、差動拘束トルク演算部169にて
前記修正差動拘束トルクTBFと加算用差動拘束トルクT
SPとを加算して最終的な差動拘束トルクTF を下式のご
とく算出する。 TF =TBF+TSP
【0254】しかる後、制御の安全性等を考慮して差動
拘束トルク演算部169にて算出された差動拘束トルク
F とは別に、路面μに応じた最大差動拘束トルクTSL
を前記路面補正係数算出部162からの出力に基づき、
最大差動拘束トルク演算部170にて算出し、前記差動
拘束トルク演算部169にて算出された差動拘束トルク
F の最大値をクリップ処理部171にて最大差動拘束
トルクTSLに規制する。但し、本実施例では最大差動拘
束トルクTSLを拘束トルク調整用クラッチ89が直結状
態とはならないような値に設定している。
【0255】これにより、スペアタイヤを装着した状態
でこのスペアタイヤがパンクした場合、異常な前輪速差
|VFL−VFR|に基づく過大な差動拘束トルクTF が差
動拘束トルク演算部169にて算出されるが、クリップ
処理部171によって拘束トルク調整用クラッチ89が
直結状態とはならないような差動拘束トルクに抑えられ
る。
【0256】この差動拘束トルク制御のための処理の流
れを表す図62及び図63に示すように、D1にて前輪
速差の絶対値|VFR−VFL|を算出する。次いで、D2
にて車両82の旋回に伴う前輪速差ΔVF をこの前輪速
差の絶対値|VFR−VFL|から減算し、これによって算
出された修正前輪速差ΔVFFに基づき、D3にて修正差
動拘束トルクTBFを算出する。そして、D4にて今回算
出した修正差動拘束トルクTBF(n) が前回算出した修正
差動拘束トルクTBF(n-1) よりも大きいか否かを判定す
る。
【0257】このD4のステップにて今回算出した修正
差動拘束トルクTBF(n) が前回算出した差動拘束トルク
BF(n-1) 以上であると判断した場合には、D5にて修
正差動拘束トルクTBFを今回算出した修正差動拘束トル
クTBF(n) に設定し、制御の応答性を高めて車両82の
走行安全性を確保する。そして、D6にて加算用差動拘
束トルクTSPを演算する。又、D4のステップにて今回
算出した修正差動拘束トルクTBF(n) が前回算出した修
正差動拘束トルクTBF(n-1) よりも小さいと判断した場
合には、修正差動拘束トルクTBFをそのまま今回算出し
た差動拘束トルクTBF(n) に設定することによって、修
正差動拘束トルクTBFの急激な低下に伴う走行安定性の
低下が見込まれる虞があるため、D7にて修正差動拘束
トルクTBFを前回算出した修正差動拘束トルクT
BF(n-1) から予め設定した一定値ΔTBFを減算した値に
設定し直し、車両82の走行安定性を確保しつつD6の
ステップに移行する。
【0258】D6のステップにて加算用差動拘束トルク
SPを演算した後、D8にて修正差動拘束トルクTBF
加算用差動拘束トルクTSPとを加算して差動拘束トルク
F を演算し、次いでD9にて路面μに応じた最大差動
拘束トルクTSLを算出する。そして、D10にて差動拘
束トルクTF がこの最大差動拘束トルクTSLよりも小さ
いか否かを判定する。
【0259】このD10のステップにて差動拘束トルク
F が最大差動拘束トルクTSLよりも大きいと判断した
場合には、D11にて差動拘束トルクTF を最大差動拘
束トルクTSLに修正し、D12にてスリップ制御中フラ
グFS がセットされているか否かを判定する。又、D1
0のステップにて差動拘束トルクTF が最大差動拘束ト
ルクTSL以下であると判断した場合には、設定された差
動拘束トルクTF に問題がないので、この設定された差
動拘束トルクTF を修正することなくD12のステップ
に移行する。
【0260】このD12のステップにてスリップ制御中
フラグFS がセットされていると判断した場合には、D
13にて車両82に搭載されて制動時におけるタイヤと
路面とのスリップ率を最適な値に維持する図示しないス
キッド制御装置(以下、これをABSと呼称する)が機
能しているか否かを判定する。又、D12のステップに
てスリップ制御中フラグFS がセットされていないと判
断した場合には、本実施例では差動拘束トルク制御も中
止状態となるので、D14にて差動拘束トルクTF を0
に設定し直し、D13のステップに移行する。
【0261】D13のステップにてABSが作動中では
ないと判断した場合には、最終的に設定された差動拘束
トルクTF に対応する通電量を図3に示すマップから読
み出し、D15にてECU15はこの差動拘束トルクT
Fに対応する電流を拘束トルク調整用クラッチ89に通
電する。又、このD13のステップにてABSが作動中
であると判断した場合には、ABSによって前後輪6
4,65,78,79全ての回転制御がなされるため、
このABSとの制御の干渉を防止する必要上、D16に
て差動拘束トルクTF を0に設定し直し、D15のステ
ップに移行して差動装置90を完全に機能させた状態に
保持する。
【0262】なお、ABSを搭載していない車両82の
場合には、D12,D14のステップからD15のステ
ップに移行する。又、本実施例では前輪駆動形式の車両
82について説明したが、後輪駆動形式の車両に対して
も当然応用することができる。
【0263】
【発明の効果】本発明の駆動輪の差動制限装置による
と、左右輪に対する差動拘束トルクを任意に調整し得る
拘束トルク調整用クラッチと、前記左右輪の速度をそれ
ぞれ検出する車輪速センサと、上記車輪速センサにて算
出された各車輪速の差に基づいて前記拘束トルク調整用
クラッチの差動拘束トルクを算出する差動拘束トルク算
出部と、車両の発進状態を判定する発進状態推定手段
と、この発進状態推定手段にて推定された前記車両の発
進状態に基づいて前記差動拘束トルク算出部にて算出さ
れた差動拘束トルクを修正する発進修正演算部と、この
発進修正演算部からの出力に応じた差動拘束トルクをえ
るよう前記拘束トルク調整用クラッチの差動拘束トルク
を制御する電子制御ユニットとを設け、駆動輪の周速度
差の絶対値に基づき、車両の発進状態に応じて駆動輪に
対する拘束トルク調整用クラッチの差動拘束トルクを任
意に変更するようにしたので、発進時においても発進ス
リップを防止することができるよう、常に適切な差動拘
束トルクを拘束トルク調整用クラッチに与えることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による駆動輪の差動制限装置を機関の駆
動力制御装置が搭載された前輪駆動形式の車両に応用し
た一実施例の概念図である。
【図2】本実施例の概略構成図である。
【図3】拘束トルク調整用クラッチに対する通電量と差
動拘束トルクとの関係を表すグラフである。
【図4】本実施例におけるパワーステアリング装置の概
略構成図である。
【図5】本実施例によるスロットル弁の駆動機構を表す
断面図である。
【図6】本実施例による制御の全体の流れを表すフロー
チャートである。
【図7】操舵軸の中立位置学習補正の流れを表すフロー
チャートである。
【図8】操舵軸の中立位置学習補正の流れを表すフロー
チャートである。
【図9】操舵軸の中立位置学習補正の流れを表すフロー
チャートである。
【図10】車速と可変閾値との関係を表すマップであ
る。
【図11】操舵軸の中立位置を学習補正した場合の補正
量の一例を表すグラフである。
【図12】スリップ制御用の目標駆動トルクの演算手順
を表すブロック図である。
【図13】スリップ制御用の目標駆動トルクの演算手順
を表すブロック図である。
【図14】車速と補正係数との関係を表すマップであ
る。
【図15】車速と走行抵抗との関係を表すマップであ
る。
【図16】操舵軸旋回量と補正トルクとの関係を表すマ
ップである。
【図17】スリップ制御開始直後における目標駆動トル
クの下限値を規制するマップである。
【図18】タイヤと路面との摩擦係数と、このタイヤの
スリップ率との関係を表すグラフである。
【図19】目標横加速度と加速に伴うスリップ補正量と
の関係を表すマップである。
【図20】横加速度と旋回に伴うスリップ補正量との関
係を表すマップである。
【図21】操舵角センサの異常を検出するための回路図
である。
【図22】操舵角センサの異常検出処理の流れを表すフ
ローチャートである。
【図23】車速と補正係数との関係を表すマップであ
る。
【図24】横加速度の選択手順の流れを表すフローチャ
ートである。
【図25】スリップ量と比例係数との関係を表すマップ
である。
【図26】車速と積分補正トルクの下限値との関係を表
すマップである。
【図27】積分補正トルクの増減領域を表すグラフであ
る。
【図28】油圧式自動変速機の各変速段と各補正トルク
に対応する補正係数との関係を表すマップである。
【図29】機関回転数と要求駆動トルクとアクセル開度
との関係を表すマップである。
【図30】スリップ制御の流れを表すフローチャートで
ある。
【図31】旋回制御用の目標駆動トルクを演算する手順
を表すブロック図である。
【図32】旋回制御用の目標駆動トルクを演算する手順
を表すブロック図である。
【図33】車速と補正係数との関係を表すマップであ
る。
【図34】スタビリティファクタを説明するための横加
速度と操舵角比との関係を表すグラフである。
【図35】目標横加速度と目標前後加速度と車速との関
係を表すマップである。
【図36】横加速度とロードロードトルクとの関係を表
すマップである。
【図37】アクセル開度センサの全閉位置の学習補正の
手順の一例を表すグラフである。
【図38】アクセル開度センサの全閉位置の学習補正の
流れの他の一例を表すフローチャートである。
【図39】アクセル開度センサの全閉位置の学習補正の
流れの他の一例を表すフローチャートである。
【図40】旋回制御の流れを表すフローチャートであ
る。
【図41】旋回制御の流れを表すフローチャートであ
る。
【図42】最終目標トルクの選択操作の流れを表すフロ
ーチャートである。
【図43】遅角割合の選択操作の流れを表すフローチャ
ートである。
【図44】遅角割合の選択操作の流れを表すフローチャ
ートである。
【図45】機関の出力制御の手順を表すフローチャート
である。
【図46】機関の出力制御の手順を表すフローチャート
である。
【図47】差動拘束トルク制御の演算手順を表すブロッ
ク図である。
【図48】差動拘束トルク制御の演算手順を表すブロッ
ク図である。
【図49】車速と基準周速度差との関係を表すマップで
ある。
【図50】修正前輪速差と基準差動拘束トルクとの関係
を表すマップである。
【図51】右前輪の操舵状態を表す幾何概念図である。
【図52】横滑り角とコーナリングフォースとの関係を
表すグラフである。
【図53】路面μ推定手段による演算手順を表すブロッ
ク図である。
【図54】操舵軸旋回角とパワステ圧との関係を表すグ
ラフである。
【図55】路面μ推定手順を表すフローチャートであ
る。
【図56】路面μ推定手順を表すフローチャートであ
る。
【図57】車速と乗算係数との関係を表すマップであ
る。
【図58】路面μと路面補正係数との関係を表すマップ
である。
【図59】アクセル開度と加算拘束トルクとの関係を表
すマップである。
【図60】車速と車速補正係数との関係を表すマップで
ある。
【図61】操舵軸旋回角と旋回補正係数との関係を表す
マップである。
【図62】差動拘束トルク制御の手順を表すフローチャ
ートである。
【図63】差動拘束トルク制御の手順を表すフローチャ
ートである。
【符号の説明】
11は機関、12,63は出力軸、13は油圧式自動変
速機、14は入力軸、15はECU、16は油圧制御装
置、17は燃焼室、18は吸気管、19は吸気通路、2
0はスロットル弁、21はスロットルボディ、22はス
ロットル軸、23はアクセルレバー、24はスロットル
レバー、25は筒部、26はブシュ、27はスペーサ、
28は座金、29はナット、30はケーブル受け、31
はアクセルペダル、32はケーブル、33はカラー、3
4は爪部、35はストッパ、36はねじりコイルばね、
37,38はばね受け、39はストッパピン、40はね
じりコイルばね、41はアクチュエータ、42はダイヤ
フラム、43は制御棒、44は圧力室、45は圧縮コイ
ルばね、46はサージタンク、47は接続配管、48は
バキュームタンク、49は逆止め弁、50,55は配
管、51,56はトルク制御用電磁弁、52はプランジ
ャ、53は弁座、54はばね、57はプランジャ、58
はばね、59は燃料噴射ノズル、60は電磁弁、61は
点火プラグ、62はクランク角センサ、64,65は前
輪、66,97は前輪回転センサ、67はスロットル開
度センサ、68はアイドルスイッチ、69はエアクリー
ナ、70はエアフローセンサ、71は水温センサ、72
は排気管、73は排気通路、74は排気温センサ、75
はイグニッションキースイッチ、76はTCL、77は
アクセル開度センサ、78,79は後輪、80,81は
後輪回転センサ、82は車両、83は操舵軸、84は操
舵角センサ、85は操舵ハンドル、86は操舵軸基準位
置センサ、87は通信ケーブル、88はコンパレータ、
89は拘束トルク調整用クラッチ、90は差動装置、9
1はパワーアクチュエータ、92はパワーステアリング
装置、93はタイロッド、94は操舵弁、95は油圧ポ
ンプ、96はリザーバタンク、98,99は圧力センサ
である。又、101,102は選択部、103は切り換
えスイッチ、104,105,117,126,12
7,129,132,135,146、147,15
4,163,166,168は乗算部、106,13
1,138は微分演算部、107,110,125,1
33,136はクリップ部、108,123はフィルタ
部、109はトルク換算部、111は走行抵抗算出部、
112,114,119,130,134は加算部、1
13はコーナリングドラッグ補正量算出部、115は可
変クリップ部、116,121,124,157は減算
部、118は加速度補正部、120は旋回補正部、12
2は横加速度演算部、128は積分演算部、137,1
50は開始・終了判定部、140は車速演算部、141
は目標横加速度演算部、142は補正係数乗算部、14
3は切り換えスイッチ、144は目標前後加速度算出
部、145は基準駆動トルク算出部、149は変化量ク
リップ部、151は周速度差演算部、152は旋回補正
演算部、153は基準周速度差算出部、155は基準拘
束トルク算出部、156は路面μ推定手段、158は位
相補償フィルタ、159は路面μ算出部、160はμ変
動制限部、161は安定化フィルタ、162は路面補正
係数算出部、164は加算拘束トルク算出部、165は
車速補正係数算出部、167は旋回補正係数算出部、1
69は差動拘束トルク演算部、170は最大差動拘束ト
ルク演算部、171はクリップ処理部である。更に、A
はスタビリティファクタ、bは後輪のトレッド、C1
2 ,C3 は定数、Cr は車両の旋回半径、DF はコー
ナリングフォース、FC は旋回制御中フラグ、FH ,F
HNは舵角中立位置学習済フラグ、FP は点火時期制御中
フラグ、FS はスリップ制御中フラグ、FW は異常発生
中フラグ、GFは実前輪加速度、GKC,GKFは前輪加速
度補正量、Gs はスリップ量変化率、GX は前後加速
度、GXFは修正前後加速度、GXOは目標前後加速度、G
Y は横加速度、GYFは修正横加速度、GYOは目標横加速
度、gは重力加速度、KC は旋回角補正係数、KD は微
分係数、Km は乗算係数、KP は比例係数、KR は路面
補正係数、KS は車速補正係数、KV は重み付けの係
数、KY は補正係数、NE は機関回転数、Pは点火時
期、PLS,PRSは油圧室の圧力、PS はパワステ圧、p
B は基本遅角量、po は目標遅角量、rは前輪有効半
径、SO は目標スリップ率、sはスリップ量、TB は基
準駆動トルク、TBFは修正差動拘束トルク、TC はコー
ナリングドラッグ補正トルク、TD は微分補正トルク、
d は要求駆動トルク、TF は差動拘束トルク、TI
積分補正トルク、TILは積分補正トルク下限値、TK
増減許容量、TL はロードロードトルク、TO は最終目
標駆動トルク、TOCは旋回制御用目標駆動トルク、TOS
はスリップ制御用目標駆動トルク、TP は比例補正トル
ク、TPIは比例積分補正トルク、TPID は最終補正トル
ク、TR は走行抵抗、TSLは最大差動拘束トルク、TSP
は加算用差動拘束トルク、TSSは基準加算拘束トルク、
ΔTは今回と前回との目標駆動トルクの差、ΔTBFは一
定値、ΔTI は微小積分補正トルク、ΔTi は積分定
数、Δtはサンプリング周期、Vは車速、VA ,VB
X は閾値、VF は実前輪速、VFLは左前輪速、VFO
基準トルク算出用目標前輪速、VFRは右前輪速、VFS
補正トルク算出用目標前輪速、VH は大きい方の後輪
速、VK ,VKCはスリップ補正量、VKFは修正スリップ
補正量、VL は小さい方の後輪速、VRLは左後輪速、V
RRは右後輪速、VS はスリップ制御用の車速、ΔVBF
基準周速度差、ΔVF は旋回に伴う前輪速差、ΔVFF
修正前輪速差、Wb は車体重量、αは重み付けの係数、
δは前輪の舵角、δF は横滑り角、δH は操舵軸旋回
角、δH1,Δμは所定値、δM は中立位置、δm は操舵
軸旋回位置、δN は操舵軸基準位置、Δδは補正制限
量、μは摩擦係数、θA はアクセル開度、θA(0)はアク
セル開度の初期値、θACはアクセル開度の全閉値、θAL
はアクセル開度の最小値、θT はスロットル開度、θTO
は目標スロットル開度、ρd は差動歯車減速比、ρH
操舵歯車変速比、ρKIは積分補正係数、ρKPは比例補正
係数、ρm は油圧式自動変速機の変速比、ρT はトルク
コンバータ比、ωはホイールベースである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 左右輪に対する差動拘束トルクを任意に
    調整し得る拘束トルク調整用クラッチと、前記左右輪
    速度をそれぞれ検出する車輪速センサと、上記車輪速セ
    ンサにて算出された各車輪速の差に基づいて前記拘束ト
    ルク調整用クラッチの差動拘束トルクを算出する差動拘
    束トルク算出部と、車両の発進状態を判定する発進状態
    推定手段と、この発進状態推定手段にて推定された前記
    車両の発進状態に基づいて前記差動拘束トルク算出部に
    て算出された差動拘束トルクを修正する発進修正演算部
    と、この発進修正演算部からの出力に応じた差動拘束ト
    ルクをえるよう前記拘束トルク調整用クラッチの差動拘
    束トルクを制御する電子制御ユニットとを具えた駆動輪
    の差動制限装置。
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