JP2576888B2 - マイグレーション防止剤及び電子回路 - Google Patents

マイグレーション防止剤及び電子回路

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、マイグレーション防止剤と、このマイグレ
ーション防止剤が構成要素中に含有されて信頼性が向上
している電子回路とに関する。詳しくは、電子素子や電
子部品等における故障発生の大きな要因の一つとなって
いる金属イオンのマイグレーション現象を防止する効果
を有するマイグレーション防止剤と、電子回路の寿命を
延長することを目的として、電子回路用基板、導電性ペ
ースト、接着剤、カバーレイ等の絶縁性被覆材等の電子
回路構成要素に、上記のマイグレーション防止剤が含有
されている電子回路とに関する。
〔従来の技術〕
電子素子や電子部品等において、水の存在の下に、絶
縁された金属導電体間に電圧が印加されると、導電体を
構成している金属がイオン化して、この金属イオンが、
絶縁材料の表面または内部を通過して、負の電位にある
導体に向かって移動し、負の電位にある導電体上に析出
する現象がしばしば発生する。
この現象は、マイグレーション現象と称されており、
プリント配線板、LSI回路、厚膜回路、薄膜回路、コン
デンサ等、種々の電子素子や電子部品等の中で発生し、
これらの部材や装置等の信頼性を損なう原因の一つにな
っており、更に、最近の電子素子や電子部品の高集積化
にともなって要求される配線の細線化、配線間隔の減少
化、及び、スルーホールの細孔化等にともなって、この
マイグレーション現象が発生する頻度は増加する傾向に
ある。
マイグレーション現象を発生する金属は、銀、銅、ス
ズ、鉛、金、白金、パラジウム、アルミニウム等であ
り、電子回路の導電体として使用される殆どすべての金
属を含む。これらの金属の中には、水が存在し、かつ、
電圧が印加された状態においては、必ずイオン化してマ
イグレーションを発生する種類の金属と、上記条件に加
えて、ハロゲン等の不純物イオンが加わった場合に、イ
オン化してマイグレーションを発生する種類の金属とが
ある。
マイグレーション現象は一般的に下記のように進行す
る。
(a) 銀、金、鉛等(ハロゲンの存在を必要とせず、
水のみの存在の下にマイグレーション現象が発生する金
属) 1.水の解離 H2OH++OH- 2.陽極をなす金属の酸化溶解 2M+H2OM2O+H2 3.酸化物の解離 M2O+H2O2MOH 2M++2OH- 4.金属イオンの移動 5.陰極上への金属の析出 M++e-M (b) 金、銀、パラジウム、銅等(水分およびハロゲ
ンの存在下でマイグレーション現象が発生する金属) 1.水の解離 H2OH++OH- 2.陽極をなす金属の酸化溶解 M+Cl-MCl+e- 3.酸化物の解離 MClM++Cl- 4.金属イオンの移動 5.陰極上への金属の析出 M++e-M 上記の説明(a)、(b)において、Mは銀を例とし
ているが、他の金属の場合も同様のメカニズムを経るも
のと推定されている。
上記の反応が進行すると、析出金属が樹枝状をなし
て、陰極から陽極方向に成長し、遂には両電極間を短絡
して、両電極間が導通するに至る。
なお、ここで、短絡とは両極自身が直接接続される場
合のみならず、上記の樹枝状析出金属によって両極間の
距離が減少し、しかも、両極近辺に電荷キャリヤ(イオ
ンは正孔)が供給されうる場合も含む(一般的には、抵
抗値が106Ω以下となり、300μA程度またはそれ以上の
電流が流れる場合も含む)。
かかるマイグレーション現象を防止するために、従
来、次のような手法が試みられてきた。
イ.電子素子や電子部品が水と接触しないようにする。
ロ.プリント配線板の導体として使用される金属がイオ
ン化することを防止する。
ハ.イオン化したとしても、発生したイオンが移動しな
いように、これを還元する。
ニ.発生したイオンを沈澱形成剤等を使用して不溶化す
る。
ホ.発生したイオンをキレート剤等やコンプレックス形
成剤等を使用して固定する。
ヘ.電子素子や電子部品を構成する部材の表面にある水
酸基を失活させる。
しかし、これらの従来技術に係るマイグレーション防
止手段には、それぞれ、下記の制限や欠点がともなう。
イの手段は絶縁物表面や基板全体を撥水性の材料例え
ばフッ素樹脂等でコーティングするものであるが、プリ
ント配線板の導体部分の露出を完全に防止することは事
実上不可能であるから、その効果は従来技術の中では比
較的有効ではあるが、それにもかゝわらず、満足すべき
程度に有効であるとは云い難い。
ロの手段は、導体金属のイオン化電位を高くするため
に、プリント配線板の導体金属を合金化するものであ
り、例えば、電極の銀を銀−パラジウムに代える手法が
ある。しかし、充分な効果を得るためには、バラジウム
の含有率を十分高くする必要があり、経済的負担が大き
くなる欠点がある。その他、電極材としての銀やアルミ
ニウムに銅を添加する手法も検討されているが、まだ十
分な効果を得るには至っていない。
ハの手段は、アルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロ
ール、ヒドラジン等の還元剤をプリント配線板に塗布す
る塗料等に添加するものであるが、これらの添加剤は化
学的に不安定であり、熱や光によって分解しやすい欠点
を有する。
ニの手段は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン
酸等の沈澱形成剤は、ハの場合と同様に、添加するもの
である。しかし、近年、アルミニウムの配線腐食には遊
離した状態の有機酸が関与しているとの報告があり、実
現の可能性が未確認の手段であると云わざるを得ない。
ホの手段は、トリアジン類、ベンジジン、卵アルブミ
ン酸等の、キレート形成やコンプレックス形成を行う有
機物を添加する手法である。しかし、これらの化合物が
有する官能基は、約100℃を超えると分解し失活するも
のが大部分である。したがって、通常の使用条件では問
題がないにしても、高集積化に起因して内部発熱のみで
温度の絶対値が100℃を超える場合や、周囲温度が高い
場合等使用条件が厳しい場合には、適切な手法とは云い
難い。
ヘの手段は、基板の材料であるガラス繊維や、基板の
塗料のフィラーとして用いられる石英等を、シランカッ
プリング剤で処理する手法であるが、消極的手法である
と云わざるを得ない。
〔発明が解決しようとする課題〕
水の存在の下に、絶縁された金属導体間に電圧が印加
されたとき発生するマイグレーション現象は、電子素子
や電子部品の故障の原因となっており、この現象の発生
を防止する手段の開発が真剣に求められてきた。
この要請に応えて、本発明の発明者らは、無機イオン
交換体を基板等に含有させることにより、マイグレーシ
ョンを防止する手段を案出した。
しかし、セラミック基板等、その製造過程において高
温の処理を受ける物においては、予め基板内またはその
原材料中に含有させておいた無機イオン交換体が熱によ
りイオン捕捉能を失活してしまうという欠点があった。
本発明の目的は、かゝる欠点をともなうことなく、高
温工程を受ける場合でも失活せず有効に機能し信頼性の
高いマイグレーション防止剤を提供することと、このマ
イグレーション防止剤が含有されており、水分と高温の
下に使用されてもマイグレーション現象が発生せず、信
頼性の高い電子回路を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的は、式HZr2(PO43をもって表され、か
つ、空間群Rである三次元骨格構造を有する結晶性
化合物をマイグレーション防止剤として利用する(請求
項1に対応)ことと、このマイグレーション防止剤を、
電子回路用基板、導電性ペースト、接着剤、カバーレイ
等の絶縁性被覆材等に含有させておき、かかる材料を使
用して製造した電子回路(請求項2に対応)とによって
達成される。
請求項2に記載する電子回路は、具体的には、電子素
子や電子部品に用いられる種々のリジッド印刷配線板用
の基板に、ハイブリッドIC用の基板に、フラットメンブ
レンスイッチ等に用いられるフレキシブル伊那津配線板
用の基板に、また、電子回路の導体材料である銀ペース
ト、銅ペースト、銀パラジウムペースト、ニッケルペー
スト等の金属を含む導電性ペーストに、更には、その上
をカバーする接着剤とポリエステルやポリイミド等のフ
ィルムからなるカバーレイ、液状レジスト、及び、保護
コーティング用の塗料等の絶縁性保護材料に、HZr2(PO
43なる組成で表された空間群Rの構造をもつ化合
物を含有させて製造した電子回路である。
更に、本発明(請求項1に対応)のマイグレーション
防止剤は、高温においてもマイグレーション防止効果が
失活しないので、セラミック基板など、その製造過程で
高温の処理を行なう物についても予め基板内やその原料
に添加しておいて、マイグレーション防止剤として利用
することができることは特筆すべきことである。
本発明(請求項2に対応)に係る電子回路の構成材料
のそれぞれについて説明する。
イ.電子回路用の基板としては、リジッド印刷配線板用
の基板、ハイブリッドIC用の基板、メンブレンスイッチ
等に用いられるフレキシブル印刷配線板用の基板等とし
て通常使用されている電子回路用基板ならいづれでもよ
く、熱硬化性樹脂積層基板(紙−エポキシ樹脂、紙−フ
ェノール樹脂、ガラス−フェノール樹脂、ガラス−エポ
キシ樹脂、不織布−フェノール樹脂、不織布−エポキシ
樹脂等)、セラミック基板(アルミナ、炭化硅素等)、
熱可塑性基板(ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスル
ファイド樹脂、ポリエーテルサルファン樹脂等)、ポリ
イミド等プラスチックスの基板、及び、これらの多層板
等が使用可能である。
ロ.導電性ペーストとしては、電子回路の導体の材料と
して通常使用されている導電性ペーストでよく、例え
ば、銀ペースト、銅ペースト、銀パラジウムペースト等
の金属を含むペースト(厚膜ペースト、導電性接着剤等
とも云われる)が使用可能である。
ハ.接着剤としては、ベースフィルムであるポリイミド
フィルム、ポリエステルフィルム等に接着剤を塗布して
なるカバーレイ用の接着剤や銅張り基板において電子回
路用の基板と銅板とを張り付けるための接着剤等として
使用される。
ニ.絶縁性被覆材としては、リジッド印刷配線板のオー
バーコート材や多層印刷配線板の内部回路間の絶縁材料
に用いられる熱硬化性樹脂塗料(エポキシ樹脂塗料、フ
ェノール樹脂塗料等)や熱可塑性樹脂塗料(ポリエステ
ル樹脂塗料等)や紫外線硬化性樹脂塗料(アクリル系樹
脂塗料等)が使用可能であり、さらに、セラミックス系
の材料としてオーバーグレースガラスが使用可能であ
る。また、絶縁性被覆材のうち、カバーレイとしては、
ベースフィルムであるポリイミドフィルム、ポリエステ
ルフィルム等にエポキシ系接着剤等を塗布したフィルム
及び液状レジスト等が使用可能である。
本発明に係るHZr2(PO43なる組成をもって表される
空間群Rの構造を有する化合物を、上記の基板、導
電性ペースト、接着剤、絶縁性被覆材等に添加させる方
法は一般的な方法で良いが、上記の電子回路構成材料の
それぞれについて、添加方法は下記に説明する。
イ.基板に対しては、基板構成樹脂中への分散、基板構
成基質としての紙中への含浸、ガラス布等中への塗布、
セラミック基板の原料であるアルミナ粉末との混合等が
挙げられる。
ロ.導電性ペーストに対しては、導電性ペーストの構成
金属粉、構成樹脂、または、溶剤等の必要成分と混練す
る方法、導電性ペーストそのものと混練する方法等が挙
げられる。
ハ.接着剤の場合は、単に分散させることによって使用
可能である。
ニ.カバーレイに対しては、ベースフィルム及び接着剤
からなるカバーレイの場合であれば、その構成成分であ
るベースフィルムの原料に混合した後フィルム化した
り、前述のように接着剤中に分散する方法が挙げられ、
また、液状レジストによりカバーレイを形成させる場合
は、液状レジスト中に分散する方法が挙げられる。
リジッド印刷配線板のオーバーコート材や多層印刷配
線板の内部回路間の絶縁材料に用いられる絶縁性被覆材
や、オーバーグレースガラスに対しては、オーバーコー
ト材の構成樹脂中に分散する方法、絶縁材料構成樹脂中
に分散する方法、オーバーグレースガラス中に分散する
方法等を実施した後硬化させる方法等が挙げられる。
HZr2(PO43の組成をもって表される空間群R
構造を有する化合物を、電子回路用の基板、導電性ペー
スト、並びに、ベースフィルムと接着剤からなるカバー
レイ、液状レジストにより形成させたカバーレイ、オー
バーコート材、多層印刷配線板の内部回路間の絶縁材料
及びオーバーグレースガラス等の絶縁性被覆材に含有さ
せる量は特に限定はないが、前記電子回路の構成材料の
特性を阻害しない範囲が好ましく、より好ましくは、い
ずれの場合も含有させる材料(例えば基板構成樹脂)に
対して0.1〜25重量%が好ましく、より好ましくは、0.1
〜10重量%である。
HZr2(PO43の組成をもって表される化合物の粒度
は、イオン捕捉速度や目的とする捕捉イオンとの接触の
可能性を大きくするために、細かいことが望ましく、好
ましい平均粒度は10μm以下であり、より好ましくは5
μm以下である。
〔作用〕
本発明は、式HZr2(PO43をもって表される空間群R
なる三次元骨格構造を有する結晶性化合物が、A
g+、Cu+、Cu2+、Pb2+、Au3+等のマイグレーション現象
を発生する金属イオンに対して有する高い選択的イオン
吸着性を活用したものであり、上記結晶性化合物を、電
子回路を構成する基板、導電性ペースト、接着剤、絶縁
性被覆材等に添加したものである。
本発明の要旨に係るHZr2(PO43なる組成をもって表
される空間群Rの構造を有する化合物によるイオン
捕捉作用を下記について説明する。
金属イオンをM+をもって表すと、この金属イオンM+
が、金属酸化物M2Oを解離して同時に発生している水
酸基OH-と同時にHZr2(PO43なる組成をもって表され
る空間群Rの構造を有する化合物と、下記のように
反応して、イオン交換が行われる。
HZr2(PO43+M++OH-→ MZr2(PO43+H2O 上記の金属イオンM+を捕捉する反応は、イオン交換
反応であるが、HZr2(PO43なる組成で表される空間群
の構造を有する化合物の特徴として逆反応は発生
しにくく、捕捉したイオンを脱離する逆反応を発生させ
るには、特殊な条件が必要な場合が多く、一般に一度捕
捉されたイオンは遊離しにくい。
これは、HZr2(PO43の結合が、MZr2(PO43になっ
た後の結合は共有結合性が強いためと思われる。
式HZr2(PO43をもって表される化合物はリン酸ジル
コニウムと云う一般的な名称でも表現される。しかし、
一般にリン酸ジルコニウムはZr(HPO42・nH2Oをもっ
て表され(通常n=1)、Na+イオンを例とすると、次
式をもって示すように、イオン交換反応は行われる。
Zr(HPO42・nH2O+Na+→ Zr(NaPO42・nH2O+H+ しかし、一般のリン酸ジルコニウムは、下式をもって
表される脱水反応、特に、580℃程度の今度において発
生する脱水反応により、イオン交換席を喪失し、イオン
交換能を失う。まづ、230℃において、 Zr(HPO42・nH2O−nH2O→ Zr(HPO42 なる脱水反応が発生し、つゞいて、580℃において、 Zr(HPO42−nH2O→ZrP27 なる脱水反応が発生して、ピロリン酸ジルコニウムに転
換されるが、このピロリン酸ジルコニウムは、全くイオ
ン交換能を有しない。従って、一般のリン酸ジルコニウ
ムは、電気回路の製造工程において高温工程が使用され
る場合には、マイグレーション防止性能を失活する恐れ
があり、特に、セラミック基板は、850℃以上の高温工
程が使用されることが多く、この基板を用いる電気回路
においては、基板に予め一般のリン酸ジルコニウムを始
めとするイオン捕捉材を存在させることはできなかっ
た。
一方、式HZr2(PO43をもって表される化合物は、85
0℃程度においても、脱水反応を受けず、したがって、
かゝる高温においても、イオン交換能を持続しつゞけ
る。
この公知の性質の相違を確認するため、下記の確認実
験をなした。
本発明の要旨に係るHZr2(PO43の粉末と、通常のリ
ン酸ジルコニウムZr(HPO43・nH2Oの粉末とを、それ
ぞれ磁製ルツボに入れ、電気炉を使用して、850℃にお
いて1時間熱処理を加えた。これら2種類の粉末各々1g
を各々0.01N硝酸銀水溶液100ml(溶液中に存在するAgイ
オン重量は108mg)に添加して常温にて24時間撹拌し、
イオン交換反応が充分に進行した後、2種の溶液を濾過
して、2種の濾液を得た。この濾液に存在する銀イオン
重量を原子吸光法により測定した。その結果を第1表に
示す。
なお、参考までに熱をかけない場合の両化合物につい
て上記と同様おイオン交換反応を行った際の結果も併記
する。
第1表は、通常のリン酸ジルコニウムは850℃程度の
高温でイオン交換能を失うが、本発明の要旨に係るHZr2
(PO43は、850℃程度の高温においても、イオン交換
能を保持することを示す。
なお、本発明の要旨に係るHZr2(PO43と通常のリン
酸ジルコニウムの結晶構造について一言すると、前者
(HZr2(PO43)がPO4の4面体とZrO6の8面体とが互
いに頂点をすべて共有し合い、1個の4面体の周囲には
4個の8面体が、2個の8面体の周囲には6個の4面体
が、それぞれ、存在し、空間群はRであり、スケル
トン構造いわゆる三次元網目構造を有するに反し、後者
(Zr2(PO43・2H2O)は、空間群P2/nに属し、層状構
造を有するので、材料特性(イオン交換性、耐熱性)は
明らかに異なり区別されるものと考えられる。
また、本発明の要旨に係るHZr2(PO43の製造方法に
ついて付言する。
イ.Li2CO3と、ZrO2と(NH42HPO4とを、以下に示すモ
ル比に混合する。
Li:Zr:PO4=1:2:3 ロ.上記混合物を白金ルツボに入れ、200℃において数
時間加熱する。
ハ.その後、900℃において16時間加熱する。
ニ.さらに、1,200〜1,400℃において、16時間加熱す
る。
ホ.空気中で冷却した後、粉砕する。
ヘ.1,200〜1,400℃において再び16時間加熱する。
ト.空気中で冷却する。
チ.0.2MのHCl等で戦場する等して、LiZr2(PO43をHZr
2(PO43に転換する。
この製造方法とこの製造方法を使用して製造しうる組
成式HZr2(PO43をもって表される結晶性化合物が空間
群Rである三次元骨格構造を有すると云う事実が実
験的に確認されていることはMat.Res.Bull:12171(197
7)に記載されている。
〔実施例〕
以下、実施例20例を、比較例5例とともに挙げて、本
発明に係る電子回路の構成と特有の効果とを更に詳しく
説明する。なお、実施例中「%」とあるは「重量%」で
あり、「部」とあるは「重量部」である。
実施例1〜4及び比較例1 実施例1〜4は、本発明の要旨に係るHZr2(PO43
組成をもって表される空間群Rの構造を有する化合
物が電子回路用基板に添加されている例である。
HZr2(PO43の組成をもって表される空間群R
構造を有する化合物を、エポキシ当量450〜500のビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂100部に対して、0、1、
5、10、20部添加し、さらに、エポキシ硬化剤としてジ
シアンジアミド4部と、反応促進剤としてベンジルジメ
チルアミン0.4部と、溶剤(メチルエチルケトン)60部
とを、それぞれ、加え、撹拌混合して、5種類の含浸用
樹脂ワニスを製作した。
次に、厚さ0.2mmの低アルカリ電気用ガラス布に、先
に製作した5種類の樹脂ワニスをそれぞれ別個に含浸さ
せた。
その後、160℃で5分間乾燥し、5種類の相互に異な
るプリプレグを製作した。
これらの5種類のプリプレグを、いづれも50mm×50mm
の寸法に切断し、HZr2(PO43の組成式で表される空間
群Rの構造をもつ化合物の含有比率が相互に同じプ
リプレグを相互に6枚重ね合せて、圧力30kg/cm2・温度
160℃の条件をもって、15分間加熱プレスし、その後、
圧力70kg/cm2・温度165℃の条件をもって、1時間さら
に加熱プレスして、樹脂とガラス布基材との体積分率が
50:50であり、厚さが約1.6mmである積層板1(第1図参
照)5種類を製作した。
これらの5種の積層板1の表面に、銀ペースト(ドー
タイトXA208(藤倉化成(株)製))をスクリーン印刷
して、第1図に示すようにそれぞれの櫛歯が噛み合って
対向するように配置された2個の櫛歯状の導電パターン
A・Bが、上記のようにして製造された本発明の要旨に
係る積層板1上に形成されたサンプル基板を5種類製造
した。
第1図に示すように、この導電パターンA・B間の最
短距離は1mmである。なお、導電パターンA・Bの厚さ
は約20μmである。
これらのサンプル基板の櫛歯状の導電パターン電極A
・B間に100Vの直流電圧を印加するとともに、40℃・95
%RHの環境条件に保ち、電極A・Bの変化を顕微鏡を使
用して経時的に観察して、マイグレーション現象の発生
状態を確認した。
即ち、電極成分の銀の局部的な異常成長により、銀の
樹枝状の結晶(デンドライト)が陰極から陽極に向かっ
て伸び、最終的に電極A・B間が短絡するために要した
時間を測定した。
その結果を第2表に示す。
第2表は本発明の要旨に係るHZr2(PO43なる組成の
空間群Rの構造を有する化合物が添加された電子回
路用基板を使用して製造した電子回路には、マイグレー
ションが発生しにくいことを明らかに示す。
実施例5〜8及び比較例2 実施例5〜8は、本発明の要旨に係るHZr2(PO43
る組成の空間群Rの構造を有する化合物が接着剤に
添加されている例である。
フレキシブル印刷配線板用のカバーレイに用いられる
エポキシ接着剤100部に対し、HZr2(PO43の組成であ
らわされる空間群Rの構造を有する化合物を、0、
1、5、10、15部添加し、5種の異なる接着剤を得た。
それぞれのエポキシ接着剤をポリイミドフィルムに塗布
し、Bステージ化して、5種類のフレキシブル印刷配線
板用のカバーレイを製作した。
これとは別に、ベースフィルムにポリイミド樹脂を用
いたフレキシブル印刷配線板用銅張り板にエッチング処
理を施して、第1図に示す櫛歯状パターンと同一のパタ
ーンを有する銅電極A・Bを有するサンプル基板を5個
用意した。
前述のカバーレイ5種のそれぞれを、このサンプル基
板の表面に装着して、加熱プレス法を使用して接着し、
5種類のフレキシブル印刷配線板を得た。
マイグレーション現象の測定はこの電極A・B間に50
0Vの直流電圧を印加するとともに80℃・85%RHの環境条
件に保ち、経時的に変化する電極A・B間の絶縁抵抗値
を測定することにより行った。
その結果を第3表に示す。
但し、ここで短絡に至った時間とは、絶縁抵抗値が10
6Ω以下になった時間を云う。
第3表は本発明の要旨に係るHZr2(PO43なる組成の
空間群Rの構造を有する化合物が添加された接着剤
を使用して製造したカバーレイが装着された電子回路に
はマイグレーションが発生しにくいことを明らかに示
す。
実施例9〜12及び比較例3 実施例9〜12は、本発明の要旨に係るHZr2(PO43
る組成の空間群Rの構造を有する化合物が導電性ペ
ーストに添加されている例である。
レゾール型フェノール樹脂43部、銀粉末100部、及
び、溶剤(ブチルカルビトール)40部を加え合わせたも
のを5個調整し、これらにHZr2(PO43なる組成であら
わされる空間群Rの構造を有する化合物を、0、0.
1、1、5、25部を加えた。
これらを三本ロールでそれぞれ10分間混練し、HZr
2(PO43なる組成を有する空間群Rの構造を有す
る化合物を含んでなる導電性ペーストを5種類製作し
た。
それぞれのペーストを、スクリーン印刷法にて、紙−
フェノール積層板に塗布し、180℃で1時間熱硬化させ
ることにより第1図に示す櫛歯状パターンと同一のパタ
ーンを有する銀電極を有するサンプル基板を5個製造し
た。
電極A・B間に100Vの直流電圧を印加するとともに40
℃・95%RHの環境に保ち、実施例1と同様の方法を使用
して短絡現象を観察した。
その結果を第4表に示す。
第4表は本発明の要旨に係るHZr2(PO43なる組成の
空間群Rの構造を有する化合物が添加された導電性
ペーストを使用して製造された電子回路にはマイグレー
ションが発生しにくいことを明らかに示す。
実施例13〜16及び比較例4 実施例13〜16は、本発明の要旨に係るHZr2(PO43
る組成の空間群Rの構造を有する化合物がオーバー
コート材に添加されている例である。
HZr2(PO43なる組成の空間群Rの構造を有する
化合物を、エポキシ樹脂に対し、0、1、5、10、20部
混合して、樹脂液5種を得た。
これとは別に、市販の銀ペーストを、ガラス−エポキ
シ樹脂積層板にスクリーン印刷法にて塗布し、所定の温
度で加熱硬化させることにより第1図に示す櫛歯状パタ
ーンと同一のパターンを有する銀電極を有するガラス−
エポキシ樹脂積層板を製造した。
上記5種の樹脂液を、これらの櫛歯状電極A・Bを有
するガラス−エポキシ樹脂積層板の表面に第1図C・D
をもって示される端子部分を除いて塗布し、加熱硬化さ
せて保護コーティングを施した。
銀のマイグレーション現象の測定は第1図に示す2つ
の櫛形電極A・Bに100Vの直流電圧を印加するとともに
40℃・95%RHの環境に保ち、電極A・B間の抵抗値の変
化を経時的に測定することにより行い、抵抗値が106Ω
まで低下した時点をもってマイグレーション発生による
故障の指標とした。
その結果を第5表に示す。
第4表は本発明の要旨に係るHZr2(PO43が添加れた
樹脂液をもって被覆された電子回路にはマイグレーショ
ンが発生しにくいことを明らかに示す。
実施例17〜20及び比較例5 実施例17〜20は、HZr2(PO43なる組成をもつ空間群
の構造をもつ化合物が多層印刷配線板の内部回路
間の絶縁材料に添加されている例である。
HZr2(PO43なる組成を有する空間群Rの構造を
もつ化合物を、エポキシ樹脂塗料100重量部に対し、
0、0.1、1、5、10重量部添加し充分に混練して5種
の異なる絶縁層形成用の塗料とした。
本実施例及び比較例のテストピースの断面図を第2図
に示す。ガラス−エポキシ積層板2の銅箔をエッチング
して銅箔よりなる配線導体層3a、3bを形成したテストピ
ースを5,000個用意した。この上に銅箔よりなる配線導
体層3bを覆うように、前述の5種のエポキシ系塗料を1
種につき1,000個ずゝスクリーン印刷し加熱硬化させて
絶縁層4を形成した。絶縁層4の膜厚は約20μmであ
る。次いで、銅粉末を含む導電性ペーストを一端が銅箔
よりなる配線導体層3aと接触するように印刷し、焼成し
て銅箔よりなる配線導体層3bと対向する第2層目の配線
導体層5を形成した。最後にエポキシ樹脂で配線導体層
5を覆うように保護層6を印刷し、加熱硬化して多層印
刷配線板の絶縁層間のマイグレーション測定用のテスト
ピースとした。
以上のようにして作製した5種類の異なる絶縁層を有
するテストピース各1,000個合計5,000個を温度40℃・95
%RHの雰囲気中に置き、配線導体層3a側が正極となり配
線導体層3bが負極となる方法に直流電圧200Vを印加し
て、銅箔よりなる配線導体層3a・3bに挟まれた領域と銅
箔よりなる配線導体層3bと第2層目の配線導体層5とに
挟まれた領域との絶縁層の絶縁抵抗劣化を測定した。
その結果を第6表に示す。
第6表では、各例1,000個について絶縁抵抗200MΩ以
下となった例の個数を示している。この表から本発明の
要旨に係るHZr2(PO43の組成をもって表される空間群
の構造を有する化合物が添加された絶縁用塗料が
使用されている電子回路はマイグレーションの発生が防
止されていることを明らかに示す。
〔発明の効果〕
本発明(請求項1に対応)に係るマイグレーション防
止剤は、HZr2(PO43の組成をもって表される空間群R
の構造を有し、マイグレーションが発生する金属イ
オンとのイオン交換能が大きく、しかも、このイオン交
換能は高温を経験しても失活しないので、高温工程に曝
される可能性のある電子回路製造用のマイグレーション
防止剤として有効に機能する。
また、本発明(請求項2に対応)に係る電子回路は、
HZr2(PO43の組成をもって表される空間群Rの構
造を有し、マイグレーションを発生する金属イオンとの
イオン交換能が大きい化合物を含有してなる基板及び/
または導電性ペースト及び/または接着剤及び/または
絶縁性被覆材を用いて形成されており、上記のHZr2(PO
43の組成をもって表される空間群Rの構造を有す
る化合物は、マイグレーションを発生する金属イオンと
のイオン交換能が大きく、この金属イオンの金属がZr
(HPO42の水素と交換するので、本発明に係る電子回
路においては、金属のマイグレーション現象は発生しに
くい。そのため、従来よりも高い信頼性を有する電子回
路が実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例1〜16と比較例1〜4との実
験に使用された、配線パターンを有する基板の平面図で
ある。 第2図は、本発明の実施例17〜20と比較例5との実験に
使用されたテストピースの断面図である。 1……本発明の要旨に係るHZr2(PO43の組成をもって
表される空間群1の構造を有する化合物が添加され
た電子回路用基板、A・B……櫛歯状導電パターン、C
・D……櫛歯状導電パターンの端子部分、2……ガラス
−エポキシ樹脂積層板、3a、3b……第1の導体層(銅箔
よりなる配線導体層)、4……絶縁層、5……第2の導
体層、6……保護層。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式HZr2(PO43をもって表され、かつ、空
    間群Rである三次元骨格構造を有する結晶性化合物
    からなるマイグレーション防止剤。
  2. 【請求項2】請求項1記載のマイグレーション防止剤が
    構成要素中に含有されてなる電子回路。
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