JP2573818B2 - プロパルギルアルコール類と第三級ジアミン類との結晶性錯化合物 - Google Patents

プロパルギルアルコール類と第三級ジアミン類との結晶性錯化合物

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JP2573818B2 JP7028043A JP2804395A JP2573818B2 JP 2573818 B2 JP2573818 B2 JP 2573818B2 JP 7028043 A JP7028043 A JP 7028043A JP 2804395 A JP2804395 A JP 2804395A JP 2573818 B2 JP2573818 B2 JP 2573818B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロパルギルアルコー
ル類と第三級ジアミン類との結晶性錯化合物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
次式(I):
【0003】
【化3】
【0004】(式中、R1 及びR2 は、互いに異なり、
それぞれハロゲンもしくは低級アルキルで置換されてい
てもよいフェニル基又は炭素数1〜8のアルキル基を表
す。)で示されるプロパルギルアルコール類は光学活性
ヘキサ−2,4−ジイン−1,6−ジオール類の原料と
して重要な化合物である。光学活性ヘキサ−2,4−ジ
イン−1,6−ジオール類は特異な包接現象を利用した
広範囲な化合物の光学分割剤である。特に、医薬、農薬
等の原料の光学分割にその利用が期待されている(J. A
mer. Chem. Soc., 105巻 5151頁 1983年、Tetrahedro
n Letters,22巻4669頁 1981年、Chemistry Letters, 8
85頁 1985年、特開昭60−169434号公報)。
【0005】前記プロパルギルアルコール類と結晶性錯
化合物を形成するものとしては、従来天然物であるブル
シン、スパルテインが知られている。該プロパルギルア
ルコール類とこれらの天然物との結晶性錯化合物を用い
て光学活性なプロパルギルアルコール類の光学分割が実
施されている。しかしながら、前記式(I)で示される
化合物の化学的な精製を工業的な規模で実施するために
ブルシンやスパルテインのような高価な天然物を用いる
ことは経済的に不可能であり、より安価かつ工業的に実
施容易な精製法が必要である。
【0006】また、前記式(I)で示される化合物の光
学的な分割は前述した天然物を用いて行われているが、
いずれを用いても一方の対掌体しか高純度に得られてい
ない。もう一方の対掌体と前記天然物との錯化合物は結
晶性に乏しく精製が難しいため、通常光学純度が60〜
80%程度の光学活性体しか得られていなかった。光学
純度の低い前記式(I)で示される化合物を用いてヘキ
サ−2,4−ジイン−1,6−ジオール類を製造すると
目的の光学活性なヘキサ−2,4−ジイン−1,6−ジ
オール類の他に光学不活性なメソ体が生成する。このメ
ソ体を除去するには、通常の方法では困難であり、数回
の再結晶を必要とする。従って、純度の高いヘキサ−
2,4−ジイン−1,6−ジオール類の両方の対掌体を
製造することは実質的に極めて困難であった。また、前
記式(I)で示されるプロパルギルアルコール類は通常
室温付近で液体もしくは極めて室温に近い融点を持つ化
合物であり結晶化による精製は損失がおおきく実際的で
はない。蒸留による精製は該プロパルギルアルコール類
が熱的に安定でないため採用ができない。そのため該化
合物の化学的な精製法としては通常カラムクロマトグラ
フィー等の実験室的な方法が採られている。
【0007】本発明は化学的及び光学的に純粋でないプ
ロパルギルアルコール類を第三級ジアミン類と結晶性錯
化合物を形成することにより、安価、容易かつ工業的規
模で化学的及び光学的に精製されたプロパルギルアルコ
ール類とすることができる、式(I)と第三級アミン類
の結晶性錯化合物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、次式(I):
【0009】
【化4】
【0010】(式中、R1 及びR2 は、互いに異なり、
それぞれハロゲンもしくは低級アルキルで置換されてい
てもよいフェニル基又は炭素数1〜8のアルキル基を表
す。)で示されるプロパルギルアルコール類と、 次式(II):
【0011】
【化5】
【0012】(式中、R3 は水素原子、メチル基又はフ
ェニル基を表し、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基
を表し、R6 及びR7 は低級アルキル基を表し、R8
水素原子又はメチル基を表し、R9 〜R12は低級アルキ
ル基を表し、R13は水素原子又は低級アルキル基を表
す。)で示される第三級ジアミン類との結晶性錯化合物
に関する。
【0013】前記式(I)において、R1 及びR2 は、
互いに相異なる置換基を表す。かかる置換基は、形成さ
れた結晶性錯化合物から該化合物(I)を遊離させる際
の酸性条件下(通常は希酸を用いる。)において安定な
ものであれば如何なるものでもよく、例えば、メチル
基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基等の炭素数1
〜8のアルキル基;フェニル基、2−クロロフェニル
基、2−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、
3−クロロフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−フ
ルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモ
フェニル基、4−フルオロフェニル基、2−メチルフェ
ニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル
基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフ
ェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメ
チルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5
−ジメチルフェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0014】前記式(II)で示される第三級ジアミン類
としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.
2〕オクタン(トリエチレンジアミン)、2−メチル−
1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,
3−ジメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕
オクタン、2,6−ジメチル−1,4−ジアザビシクロ
〔2.2.2〕オクタン、2−フェニル−1,4−ジア
ザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、N,N´−ジメチ
ルピペラジン、N,N´−ジエチルピペラジン、N,N
´−ジイソプロピルピペラジン、2−メチル−N,N´
−ジメチルピペラジン、N,N,N´,N´−テトラメ
チルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラエ
チルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメ
チル−1,2−プロパンジアミン、N,N,N´,N´
−テトラエチル−1,2−プロパンジアミン、N,N,
N´,N´−テトラメチル−1,2−ブタンジアミン、
オクタヒドロジピロロ〔1,2−a;1´,2´−d〕
ピラジン、N−〔(N´−メチル−2−ピロリジニル)
メチル〕ピペリジン等が挙げられる。
【0015】前記式(I)の化合物と前記式(II)の化
合物を反応させる場合に、その割合はモル比で(I):
(II)=1:1.5〜1:0.4の範囲内であることが
好ましい。反応は通常、メタノール、エタノール、プロ
パノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノ
ール等のアルコール系溶媒;エチルエーテル、ジオキサ
ン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;シクロヘ
キサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジク
ロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒等の溶媒中で
行う。
【0016】反応は室温で速やかに進行し、加熱、冷却
の必要は特にない。反応濃度に特に制限はないが、通
常、前記式(I)の化合物と前記式(II)の化合物の重
量の和と等量〜10倍量の溶媒を用いることが好まし
い。反応後、室温に放置、好ましくは0℃付近まで冷却
することにより、結晶を析出させることができる。前記
式(I)の化合物の光学的な精製を行うためには、原料
の光学純度により、析出結晶の量を制限する必要があ
る。
【0017】こうして得られた結晶はろ過等の方法によ
り単離することができる。この錯化合物の組成比は、立
体的に嵩高い前記式(II)の化合物を用いない場合に
は、通常前記式(I)の化合物2分子に対して前記式
(II)の化合物1分子である。得られた錯化合物から前
記式(I)の化合物を遊離させるには、錯化合物を適当
な非水溶性有機溶媒に溶解又は懸濁させ、これに希酸を
加えればよい。その結果、有機溶媒中に精製された前記
式(I)の化合物が抽出される。用いる非水溶性有機溶
媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、ジ
クロロメタン、クロロホルム、シクロヘキサン等が挙げ
られ、また、希酸としては希塩酸、希硫酸、希リン酸等
が挙げられる。酸の使用量は錯化合物に含まれる、ジア
ミン類の1倍当量〜10倍当量であることが好ましい。
反応は室温で速やかに進行し加熱の必要はなく、通常3
0分以内で完結する。反応の濃度に特に制限はない。
【0018】こうして得られた前記式(I)の化合物を
含む有機溶媒から、蒸留等の通常の方法で有機溶媒を除
くと、精製された前記式(I)の化合物が単離される。
この操作のみで十分に純度は高く、他の精製の必要は全
くない。光学的な精製を行う場合でも同様に行える。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限する
ものではない。
【0020】実施例1 (±)1−(2−クロロフェニル)−1−フェニルプロ
パルギルアルコール(以下「化合物(A)」という)
7.5g、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オク
タン 3.5gをイソプロパノール7ml中で室温下撹拌
すると、すぐに無色固体が析出した。この固体をろ別
し、少量のイソプロパノールで洗浄した後、乾燥した。
収量8.0g。プロトンNMRの測定結果からこの化合
物は、化合物(A)と1,4−ジアザビシクロ〔2.
2.2〕オクタンの2:1の錯化合物であることが判明
した。融点126〜129℃。 NMR(CDCl3 、δppm ) 8.05(d;1H), 7.5(m;2H), 7.3(m;6H)以上芳香環プロト
ン、5.75(br;1H,-OH), 2.82(s;1H,C≡CH),2.60(s;6H,-C
H2-) 元素分析 C:71.97%,H:5.71%,N:4.71% 計算値 C:72.35%,H:5.73%,N:4.72%
【0021】実施例2 化学的な純度80%の(±)−化合物(A) 8.0g
(不純物として15%の1,4−ビス(2−クロロフェ
ニル)−1,4−ジフェニル−ブチ−2−イン−1,4
−ジオールを含む)と1,4−ジアザビシクロ〔2.
2.2〕オクタン3.7gをイソプロパノール15ml中
に加え、65℃に加熱した。不溶物を熱時にろ過により
除き、ろ液を室温に放置すると結晶が析出した。収量
6.0g。この結晶は実施例1で得られたものと同一物
であった。この結晶3.5gをジクロロメタン15mlに
懸濁し、4N −硫酸 5mlを加え、30分撹拌した。有
機層を分離し、乾燥後、ジクロロメタンを減圧下に除く
と、2.8gの無色オイルが得られた。NMR、IR各
スペクトル及びガスクロマトグラフよりこのオイルはほ
ぼ純粋な(99%以上)(±)−化合物(A)であるこ
とが判明した。このオイルは数日室温に放置すると固化
した。融点42〜43℃。
【0022】実施例3 (+)体過剰(80%ee)の化合物(A)7.5gと
1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン 3.
5gをメタノール7ml中で室温下撹拌すると、無色結晶
が析出した。この結晶をろ別し、再びメタノール5mlで
結晶化させた。無色の結晶2.5gが得られた。NMR
スペクトルは実施例1で得られた化合物と同一であっ
た。融点138〜141℃。〔α〕D 20 =110゜(c
=1,MeOH) この化合物2.5g及びエチルエーテル10mlの混合物
に4N −硫酸 4mlを加え、30分撹拌した。有機層を
分離し、乾燥後、エチルエーテルを減圧下に除くと、
2.0gの無色オイルが得られた。実施例2と同様にし
て化合物(A)と確認できた。この化合物(A)は
〔α〕D 20 =138゜(c=1,MeOH)を示し、光
学純度は100%であった。
【0023】実施例4 (−)−化合物(A)(光学純度100%)7.5g
と、ジアミンとしてN,N,N´,N´−テトラメチル
エチレンジアミン 3.5gを用いた以外実施例1と同
様に行った。 (−)−化合物(A)・1/2N,N,N´,N´−テ
トラメチルエチレンジアミン錯体 7.8gを得た。融
点112〜114℃。 NMR 8.0(d;1H), 7.52(m;2H),7.30(m;6H)以上芳香環プロト
ン、4.25(br;1H,-OH), 2.86(s;1H, C ≡CH), 2.35(s;2
H,CH2), 2.18(s;6H,CH3)
【0024】実施例5 ジアミンとして、N,N´−ジメチルピペラジン 3.
5gを用いた以外は実施例4と同様に行った。(−)−
化合物(A)・1/2N,N´−ジメチルピペラジン錯
体 8.1gを得た。融点124〜125℃。
【0025】実施例6 (±)−化合物(A)0.485g、オクタヒドロジピ
ロロ〔1,2−a;1´,2´−d〕ピラジン 0.3
32gをイソプロパノール5mlに加え、60℃に加熱し
溶解させた。室温に放冷すると淡黄色結晶0.53gが
得られた。融点114〜117℃。 元素分析 C:73.63%、H:6.31%,N:4.36% 化合物(A)・1/2オクタヒドロジピロロ〔1,2−
a;1´,2´−d〕ピラジンとしての計算値 C:73.72%,H:6.19%,N:4.30%
【0026】実施例7 (±)1−(4−ブロモフェニル)−1−フェニルプロ
パルギルアルコール8.9gを用いた以外は実施例1と
同様に行った。1−(4−ブロモフェニル)−1−フェ
ニルプロパルギルアルコール・1/2トリエチレンジア
ミン錯体 8.2gを得た。メタノールから再結晶した
ものの融点74〜75℃。
【0027】実施例8 プロパルギルアルコール誘導体として78.4%ee
(+)1−(2−ブロモフェニル)−1−フェニルプロ
パルギルアルコール 9.0gを用いた以外は実施例3
と同様に行って1−(2−ブロモフェニル)−1−フェ
ニルプロパルギルアルコール・1/2トリエチレンジア
ミン錯化合物4.0gを得た。融点133〜136℃。
この錯化合物から実施例3と同様にしてプロパルギルア
ルコール誘導体を遊離させると、100%ee(+)1−
(2−ブロモフェニル)−1−フェニルプロパルギルア
ルコール 3.3gが得られた。〔α〕D 20 =+139
゜(c=1,MeOH)
【0028】実施例9 プロパルギルアルコール誘導体として51.8%ee
(+)1−(2−フルオロフェニル)−1−フェニルプ
ロパルギルアルコール 6.9gを用いた以外は実施例
5と同様に行って1−(2−フルオロフェニル)−1−
フェニルプロパルギルアルコール・1/2N,N´−ジ
メチルピペラジン錯化合物4.4gを得た。融点107
〜112℃。濾液から回収された(+)1−(2−フル
オロフェニル)−1−フェニルプロパルギルアルコール
は3.3gであり、その光学純度は99.4%であっ
た。
【0029】実施例10 プロパルギルアルコール誘導体として43.8%ee
(+)1−(2,4−ジメチルフェニル)−1−フェニ
ルプロパルギルアルコール 7.0gを用いた以外は実
施例3と同様に行って1−(2,4−ジメチルフェニ
ル)−1−フェニルプロパルギルアルコール・1/2ト
リエチレンジアミン錯化合物4.0gを得た。融点60
〜62℃。この錯化合物から実施例3と同様の方法で遊
離させた1−(2,4−ジメチルフェニル)−1−フェ
ニルプロパルギルアルコールは3.1gのラセミ体であ
った。結晶濾液から回収された(+)1−(2,4−ジ
メチルフェニル)−1−フェニルプロパルギルアルコー
ルは60.2%ee(収量 3.0g)であった。
【0030】実施例11 N,N´−ジイソプロピルピペラジン0.86gと3
2.3%ee(+)1−t−ブチル−1−フェニルプロパ
ルギルアルコール0.89gをメタノール5ml中で室温
下12時間撹拌すると、1−t−ブチル−1−フェニル
プロパルギルアルコール・1/2N,N´−ジイソプロ
ピルピペラジン錯化合物0.55gが沈澱した。融点7
8〜80℃。この錯化合物から実施例3と同様の方法で
遊離させた1−t−ブチル−1−フェニルプロパルギル
アルコールは光学不活性なラセミ体であった。 結晶濾
液から回収された(+)1−t−ブチル−1−フェニル
プロパルギルアルコールは46.3%ee(収量 0.4
8g)であった。
【0031】
【発明の効果】本発明の化合物を用いることにより、化
学的又は光学的に高純度のプロパルギルアルコール類を
得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07D 295/02 C07D 295/02 A 401/06 207 401/06 207 487/08 9271−4C 487/08 487/14 9271−4C 487/14 // C07B 57/00 343 7419−4H C07B 57/00 343 63/00 7419−4H 63/00 E C07C 29/88 9155−4H C07C 29/88 C07M 7:00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式(I): 【化1】 (式中、R1 及びR2 は、互いに異なり、それぞれハロ
    ゲンもしくは低級アルキルで置換されていてもよいフェ
    ニル基又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)で示さ
    れるプロパルギルアルコール類と、 次式(II): 【化2】 (式中、R3 は水素原子、メチル基又はフェニル基を表
    し、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基を表し、R6
    及びR7 は低級アルキル基を表し、R8 は水素原子又は
    メチル基を表し、R9 〜R12は低級アルキル基を表し、
    13は水素原子又は低級アルキル基を表す。)で示され
    る第三級ジアミン類との結晶性錯化合物。
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