JP2569741C - - Google Patents

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JP2569741C
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は透過散乱型の調光装置、およびその製造方法に関するものである。 [従来の技術] 近年H.G.Craighead らがAppl.Phys.Lett.,40(1)22(1982)に開示したように、
液晶の屈折率異方性を生かして、樹脂の硬化物のマトリックス中に液晶物質を分
散させた液晶フィルムを一対の電極付き基板間に挟持した液晶光学素子が注目さ
れている。これらは具体的には、液晶物質を多孔体に含浸させたり、液晶物質を
マイクロカプセル中に封入したりした液晶フィルムを使用し、電圧印加の有無に
より液晶の屈折率を変化させ、マトリックスを構成する多孔体やマイクロカプセ
ル外壁との屈折率を調節することにより、透過散乱を制御するものである。 この液晶フィルムは、偏光板を用いることなく原理的にDS(動的散乱)モード
、PC(相転移)モードが持つ欠点を克服することが可能であり、有用な方法であ
る。 これらは、他にJ.L.Fergasonらがポリビニルアルコールを使ってマイクロカプ
セル化したネマチック液晶の液晶フィルムにより(特表昭58-501631 号)、また
K.N.Pearlmanらは種々のラテックス取り込み液晶の液晶フィルムにより(特開昭
60-252687 号)、またJ.W.Doane らは、エポキシ樹脂中に液晶を分散硬化させた
液晶フィルムにより(特表昭61-502128 号)作製している。 [発明の解決しようとする課題] これらの方法により作製された液晶フィルムを用いた液晶光学素子においては
、電圧を印加するために、電極付き基板に液晶フィルムを挟持する必要がある。 電極付き基板には、光を透過させるために、ガラスやプラスチックフィルム等の
基板の上に、ITO(酸化インジウム−酸化錫)、SnO2(酸化錫)などの金属酸化
物や、金、銀などの金属の薄膜を設けたものが用いられることが多い。 特に、基板としては、生産性、加工性などの点より、ポリエステル、ポリアリ
レート、ポリエーテルスルホン等の透明高分子フィルムを用いることが好ましく
、また、電極としては、光の透過時に高い透過率を発現させるために、基板への
着色が少ないITO,SnO2などの金属酸化物の薄膜が好ましい。 ITO などの金属酸化物薄膜をポリエステルなどの透明高分子フィルム上に形成
する方法には、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど種々の方法が
あり、得られるITO の性質はその形成法により異なる。 一方、先に示した液晶光学素子においては、電極に液晶や液晶を取り囲む他の
有機物が直接接する構造を有している。そのため、耐蝕性が充分でないITO を電
極として使用した場合、素子の長期的な使用により電極に変化が生じ、電極の抵
抗が増加して素子に充分な電圧が印加されなくなったり、電極の着色が増加する
などして素子の性能を低下させるといった問題点が生じていた。 このため、液晶光学素子においては、先に示したような液晶を含む樹脂の硬化
物を、耐蝕性が高く、液晶や液晶を取り囲む他の有機物に直接接した状態におい
ても電極に変化を生じさせず、長期的に素子の特性が維持される電極材料と組合
わせることが望まれている。 [課題を解決するための手段] 本発明は前述の課題を解決すべくなされたものであり、液晶と光硬化性化合物
と光重合開始剤とを含む溶液に光露光が行われて得られる硬化物の屈折率が、使
用する液晶物質の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)又は液晶物質がランダムに
配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するように選ばれた硬化物マトリッ
クス中に液晶物質が分散保持されたフィルム状液晶層を一対の電極付き基板間に
挟持してなる液晶光学素子を用いた調光装置において、使用する一対の電極付き
基板の一方もしくは両方の基板上に形成された電極が、酸化インジウム系の電極
であり、その全部もしくは一部が結晶化され、その結晶化された電極付き基板が
、電極付きプラスチックフィルム基板とされ、その端子が駆動回路に接続され、 電圧の印加によって、光の透過状態が透明状態と散乱状態との間で制御可能とさ
、前記液晶光学素子は、60℃での電圧印加状態に2000時間放置された後
の表面抵抗の経時的変化が初期値の1.2倍以下であることを特徴とする調光装
置、及び、前記液晶光学素子の両面に、前記液晶光学素子よりも大きい保護板
夫々周囲に保護板同士が対向するように配置され、保護板接着性材料層で接着
されたことを特徴とする上記の調光装置、及び、電圧印加時に透明状態になり、
電圧無印加時に散乱状態になる液晶光学素子が用いられたことを特徴とするそれ
らの調光装置、及び、液晶と光硬化性化合物と光重合開始剤とを含む溶液に光露
光を行って得られる硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)、異
常光屈折率(ne)又は液晶物質がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれか
と一致するように選ばれた硬化物マトリックス中に液晶物質が分散保持されたフ
ィルム状液晶層を一対の電極付き基板間に挟持してなる液晶光学素子を用いた調
光装置の製造方法において、使用する一対の電極付き基板の一方もしくは両方の
基板上に形成する電極を、酸化インジウム系の電極とし、その全部もしくは一部
を結晶化し、その結晶化された電極付き基板を、電極付きプラスチックフィルム
基板とし、その電極付基板間に液晶物質と硬化性化合物との混合物を挟持して
硬化性化合物を硬化させて、樹脂のマトリックス中に液晶物質が分散しているフ
ィルム状液晶層を形成し、その端子を、駆動回路に接続し、電圧の印加によって
、光の透過状態を透明状態と散乱状態との間で制御可能にし、前記液晶光学素子
は、60℃での電圧印加状態に2000時間放置された後の表面抵抗の経時的変
化が初期値の1.2倍以下であることを特徴とする調光装置の製造方法を提供す
るものである。 本発明では、フィルム状液晶層を挟持する電極付基板として、その全部もし
くは一部が結晶化している酸化インジウム系の電極付基板を用いる。これによ
り、基板の電極が液晶物質と接しているにもかかわらず、長期にわたり優れた耐
久性を有する液晶光学素子を容易に得ることができ、そして調光装置を構成する
。 この電極付基板としては、通常酸化インジウム系の透明電極付透明基板で
あって、その全部もしくは一部が結晶化しているものが使用できる。具体的には ITO(In2O3-SnO2)の透明電極付プラスチックフィルム基板の透明基板が使
用できる。もっとも、反射型液晶光学素子、調光鏡のような用途の場合には一方
の電極を反射電極としたり、一方の基板を不透明な基板や金属基板としてもよい
。さらに、この透明電極に金属の細線等の低抵抗リードを積層したり、配線した
りしてもよい。 フィルム状液晶層は、液晶物質が、樹脂マトリックス中に分散した構造を有し
、電圧の印加によって、その光の透過状態を透明状態と散乱状態との間で制御可
能なものが使用できる。 これには、液晶物質がマイクロカプセルに封入されたものや、網目状の樹脂の
多孔質マトリックス中に液晶物質が含浸されたような構造のものがある。 これは、液晶物質の屈折率と樹脂マトリックスの屈折率との組み合わせにより
、両者の屈折率が一致した時には透過状態となり、異なった時には散乱状態とな
る液晶光学素子であり、液晶物質の屈折率を電圧の印加と非印加によって変化さ
せる。 即ち、得られる樹脂硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)、
異常光屈折率(ne)又は液晶がランダムに配向している時の屈折率(nx)のいずれか
と一致するように選ばれた硬化性を有する化合物及び液晶物質の溶解物である溶
を一対の基板間に保持し、硬化性化合物を硬化させて液晶物質と樹脂硬化物と
の相分離を固定化して独立した液泡中に液晶が封入されたマイクロカプセル状の
ものや、液泡自体が連通している多孔質マトリックス状のものがある。特に、樹
脂硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)または異常光屈折率(n
e)のどちらかと一致するように選ばれるようにする方が透明状態での均一性が良
いため好ましい。 さらに、この液晶中に2色性色素、単なる色素、顔料等を添加しても良いし、
硬化性化合物として着色したものを使用しても良い。 このような液晶物質が樹脂マトリックスに分散された液晶を使用することによ
り、大面積にしても、上下の透明電極が短絡する危険性がなく、かつ、通常のツ
イストネマチック型の表示素子のように配向や基板間隙を厳密に制御する必要も
なく、大面積を有する液晶光学素子による調光装置を極めて生産性良く製造でき る。 さらに、調製する硬化性化合物と液晶物質との混合物が均一に溶解している物
を使用するので、2枚の電極付き基板の接着も同時に可能となるという利点も有
する。 具体的には、電極付プラスチックフィルム基板に液晶物質と硬化性化合物と
の混合物を供給し、これに対向する基板を重ね合わせ、これを硬化させるように
すればよい。 なお、硬化時に溶媒を蒸発させる必要がある場合には、一方の基板上に液晶物
質と硬化性化合物との混合物を供給し、対向する基板を重ね合せる前に硬化させ
、その後、必要に応じて硬化したフィルム状液晶層の表面に接着材を塗布し、対
向する基板を重ね合せればよい。このため、溶媒を必要としないタイプのものが
好ましい。本発明では、液晶物質と硬化性化合物との溶液から硬化に伴い樹脂の
マトリックスと液晶物質とが自然に相分離するような組成物を用いる 本発明では、この液晶光学素子の両面に保護板を接着することが好ましい。こ
のため、液晶光学素子の基板自体はプラスチックフィルム基板を使用する。これ
は、両面には保護板が接着される場合には、液晶光学素子自体にはあまり剛性を
要求されないこと、厚さが薄くなり積層が容易なこと及び大面積の液晶光学素子
が製造しやすいためである。 また、基板の端子を容易に形成できるものでもあり、大面積の液晶光学素子か
ら必要な大きさの素子を切り出して使用することもできるためでもある。 基板間ギャップは、2〜100 μm にて動作することができるが、印加電圧、オ
ン・オフ時のコントラストを配慮すれば、5〜40μm に設定することが適当であ
る。 この保護板を用いる場合の保護板としては、強度が高く、透過性が良いものが
好ましく、具体的には、アクリル板、ポリカーボネート板、透明塩化ビニル板等
の有機材料板、ガラス板、石英板等の無機材料板等がある。特に、大面積の素子
では、耐擦傷性、耐薬品性、剛性等の点からみて、ガラス板の使用が好ましい。 もちろん、これらの保護板は、必要に応じて表面に耐擦傷性コーティング層、
反射防止層、着色層、飛散防止層を設けたり、保護板自体を強化ガラス板、着色 プラスチック板、積層ガラス板にしたりしてもよい。 特に、液晶光学素子として電極付プラスチックフィルム基板間にフィルム状
液晶層を挟持した液晶光学素子を使用し、この液晶光学素子を2枚のガラス体の
間に、熱または光により接着力を発揮するシート状接着材を介して挟持し、加熱
または光照射にによりそのシート状接着材を硬化させて液晶光学素子とガラス体
とを接着して一体化することにより、加工時に所望のサイズに切断できるので作
業性が良く、かつ合せガラス状で耐久性が高いという液晶光学素子を容易に得る
ことができる。 この保護板を接着するための接着材としては熱硬化型、2液混合硬化型、光硬
化型等種々の接着材が使用可能であるが、シート状接着材が積層作業が容易で生
産性が良い。特に、積層作業中はベトつかなく、加熱または光照射時にはじめて
接着性を生じるシート状接着材が積層作業の作業性が良く好ましい。 加熱により接着性を生じるシート状接着材としては、代表的なものとして、ポ
リビニルブチラールがあり、通常の合せガラスの製造と同様に、液晶光学素子と
保護板とをポリビニルブチラールシートを介して積層し、減圧下で脱泡して、そ
の後加熱加圧することにより容易に脱泡し、一体化できる。 光照射により接着性を生じるシート状接着材を使用した場合には、積層してお
いた後、加圧しながら紫外線等の光を照射して接着一体化さればよい。 この接着に際し、保護板の面積を液晶光学素子の面積よりも大きくして、少な
くとも2辺で保護板同志を直接接着するようにすることが好ましい。特に、4辺
で保護板同志を直接接着するようにすることにより、液晶光学素子と保護板相互
の接着力が向上するとともに、液晶光学素子側面の保護にもなり、液晶光学素子
の信頼性が向上する。 これにより、2枚の保護板をはがすような力が働いた場合にも、液晶光学素子
の基板間での剥離を防止できる。 特に、保護板の接着材として、耐湿性に優れた材料を使用することにより、屋
外使用や高湿度雰囲気下での使用の用途に適している。 前述のポリビニルブチラールの場合には、この保護板が直接接着される部分の
幅が 5〜30mm程度とされることによって、接着強度、耐湿性ともに満足できる。 このように液晶光学素子を保護板の間に完全に埋め込んでしまう場合には、液
晶光学素子の基板上の電極がその側方に延長された端子に接続された液晶光学素
子を用い、接着して一体化した際に、延長された端子の端部のみが一対の透明板
の端部から露出するようにされることにより、前述の利点を生かしつつ、駆動回
路との導電接続も容易にできる。 具体的には、液晶光学素子の基板上の電極に線状、板状の金属片を接着、また
は基板に孔を開けて嵌込み接続固定して液晶光学素子の側方に取り出されていれ
ば良い。この突起状の端子は、保護板の外まで延長されて、外部の駆動回路に接
続されれば良い。 この外部へ接続される端子の厚さは、端子の幅にもよるが、接着された保護板
間の間隔の80%以下とされる。これは端子の厚みが厚すぎると端子の取り出し部
分からの湿気、水分の侵入を防ぐ効果が低下するためである。 本発明に用いられる液晶光学素子を製造するには、所望の形状の基板を 2枚準
備して、これを組合せて液晶光学素子を製造してもよいし、連続プラスチックフ
ィルム基板を使用し、後で切断する方式で製造してもよい。 さらに、この液晶光学素子は、耐久性を向上させるために、フィルム状液晶層
の側面や端子面等の電極の露出面に、樹脂による絶縁膜を形成しても良い。 本発明における液晶光学素子は、この外、カラーフィルター、赤外線カットフ
ィルター、紫外線カットフィルターを積層したり、裏面に鏡を積層したり、一部
の電極にパターニングを行い表示に使用したり、この液晶光学素子を組み合わせ
て巨大な表示に使用したりする等種々の応用が可能なものである。 本発明の調光装置の液晶光学素子は、その端子を、駆動回路に接続し、電圧を
印加した際に透過状態となり、電圧を印加しない際に散乱状態となるようにした
調光装置として好適である。 この場合、駆動回路としては、交流の10〜 100V程度の電圧が印加できるもの
が使用できる。このため、家庭用のAC50Hz、60Hzの 100Vをそのまま使用するこ
とも可能である。 [作用] ここで、4種のITO の薄膜を電極としてポリエステルフィルム上に形成した透 明電極付き基板(A,B,C,D)を用い、液晶と樹脂硬化物を挟持した透過散
乱型液晶光学素子を作製し、長期的な使用によるITO 電極抵抗の変化を評価する
ため、60℃および80℃の恒温槽中に、素子の電圧を印加した状態および電圧不印
加の状態で放置した。 60℃での電圧印加状態および80℃での不印加状態で、それぞれ2000時間放置し
た素子について経時的な電極抵抗の変化および着色について調べたところ、用い
た4種のITO 付きポリエステルフィルムの内、Aのみが抵抗の変化が初期値の1.
2 倍以下であり、他のものは2倍から10倍にITO の表面抵抗が上昇していた。 また、電極の着色の進行においても同様に、Aのみが 1%以内の透過率の低下
であったのに対してB、C、Dは 2〜 6%の低下を示していた。 そこで、次に、それぞれのITO についてX線回折スペクトルを採取したところ
、Aのみに31°付近で回折ピークが観測され、他のB,C,Dについてはそのよ
うな特徴的な回折ピークは認められなかった(第1図−a〜d)。Aに見られる
X線回折スペクトルにおける31°付近のピークは、ITO の(222)面による回折線
である(ASTM card 6-0416)。用いたITO 付きポリエステルフィルムの内、Aのみ
が結晶性のITO であり、B,C,DはアモルファスのITO であることがわかった
。 一般に、素子の長期的な性能の変化を通常使用する温度以上の温度域での変化
より推定することがしばしば行われている。即ち、上記のX線回折スペクトルの
ように、X線回折スペクトルからその全部又は一部が結晶化していることが分か
る程度に結晶化しているITO を電極として用いることにより、長期的な使用にお
いても性能の変化が小さく、信頼性の高い液晶光学素子を得ることができる。 以上のように、X線回折スペクトルにより特徴的なピークが観察される結晶性
ITO を電極に用いる液晶光学素子は、長期的な使用によってもITO 電極抵抗の上
昇や着色が少なく、長寿命で信頼性の高いものである。 [実施例] 以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。 実施例1 アクリル系光重合性化合物2部に液晶(BDH社製「E-8」)3部を溶解し、光重 合開始剤(メルク社製「ダロキュア−1116」)0.04部、および20μm のスペーサ
ー0.01部を加えたもの(組成物1)を、X線回折スペクトルにより特徴的なピー
クが観察される結晶性のITO を電極として設けた2枚のポリエステルフィルム(
帝人社製「A-125」)の基板間に挟み込み、紫外線照射装置により2分間光露光
して、アクリル系光重合性化合物を光硬化させた。 得られた素子は、基板間に電圧を印加しない状態では全面散乱状態を示し、こ
れにAC50Hz、100Vの電圧を印加したところ、全面透明状態となり、この時の透過
率を視感感度の透過率計で測定したところ80.2%であった。また、この素子より
ITO付きポリエステルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の
表面抵抗を測定したところ 180Ω/□であった。 次に、ここで得られた素子にAC50Hz、100Vの電圧を印加した状態で、60℃に保
った恒温槽中に2000時間放置した後取り出し、AC50Hz、100Vの電圧を印加して同
様に透過率を測定したところ79.8%であった。また、この素子よりITO 付きポリ
エステルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の表面抵抗を測
定したところ 210Ω/□であった。 比較例1 実施例1で示した組成物1を、X線回折スペクトルにより特徴的なピークが観
察されないアモルファスのITO を電極として設けた2枚のポリエステルフィルム
(ダイセル化学工業社製「セレックK-EC」)の間に挟み込み、同様にして素子を
得た。 これにAC50Hz、100Vの電圧を印加した時の透過率は78.5%であった。得られた
素子の一部より取り出した ITO付きポリエステルフィルム基板上のITO の表面抵
抗は450 Ω/□であった。 次に、得られた素子に実施例1と同様に電圧を印加した状態で、60℃に保った
恒温槽中に2000時間放置した後取り出し、AC50Hz、100Vの電圧を印加して同様に
透過率を測定したところ73.7%であった。また、この素子から ITO付きポリエス
テルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の表面抵抗を測定し
たところ 730Ω/□であった。 実施例2 アクリル系光重合性化合物1部に液晶(ロッシュ社製「ROTN4931」)2部を溶
解し、光重合開始剤としてベンゾインイソプロピルエーテル0.05部および20μm
のスペーサー0.01部を加えたもの(組成物2)を、結晶性のITO を電極として設
けた2枚のポリエステルフィルム(ユニチカ社製「TP-125」)の基板間に挟み込
、紫外線照射装置により 1.5分間光露光して、アクリル系光重合性化合物を光
硬化させた。 得られた素子は、基板間に電圧を印加しない状態では全面散乱状態を示し、こ
れにAC60Hz、100Vの電圧を印加したところ、全面透明状態となり、この時の透過
率を視感感度の透過率計で測定したところ75.2%であった。また、この素子より
ITO付きポリエステルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の
表面抵抗を測定したところ 330Ω/□であった。 次に、ここで得られた素子を電圧を印加しない状態で、80℃に保った恒温槽中
に1100時間放置した後取り出し、AC60Hz、100Vの電圧を印加して同様に透過率を
測定したところ74.3%であった。また、この素子より ITO付きポリエステルフィ
ルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の表面抵抗を測定したところ
370Ω/□であった。 比較例2 実施例2に示した組成物2を、X線回折スペクトルにより特徴的なピークが観
察されないアモルファスのITO を電極として設けた2枚のポリエステルフィルム
(帝人社製「C-125」)の間に挟み込み、同様にして素子を得た。 これにAC60Hz、100Vの電圧を印加した時の透過率は76.1%であった。この素子
の一部より取り出した ITO付きポリエステルフィルム基板上のITO の表面抵抗は
570Ω/□であった。 次に、得られた素子を実施例2と同様に電圧を印加しない状態で、80℃に保っ
た恒温槽中に1100時間放置した後取り出し、AC60Hz、100Vの電圧を印加して同様
に透過率を測定したところ72.4%であった。また、この素子から ITO付きポリエ
ステルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の表面抵抗を測定
したところ 860Ω/□であった。 実施例3 実施例1に示した組成物1を、X線回折スペクトルにより特徴的なピークが観
察される結晶性のITO を電極として設けたポリエステルフィルム(帝人社製「A
-125」)基板とX線回折スペクトルにより特徴的なピークが観察されないアモル
ファスのITO を電極として設けたポリエステルフィルム(ダイセル化学工業社製
「セレックK-EC」)基板との間に挟み込み、実施例1と同様にして素子を得た。 これにAC50Hz、100Vの電圧を印加した時の透過率は79.7%であった。この素子
の一部より取り出した ITO付きポリエステルフィルム基板上のITO の表面抵抗は
、結晶性のITO が 180Ω/□であり、アモルファスのITO が 450Ω/□であった
。 次に、得られた素子を実施例1と同様に電圧を印加した状態で、60℃に保った
恒温槽中に800 時間放置した後取り出し、AC50Hz、100Vの電圧を印加して同様に
透過率を測定したところ77.0%であった。また、この素子から ITO付きポリエス
テルフィルム基板の一部を取り出し、四端子法にて電極ITO の表面抵抗を測定し
たところ、結晶性のITO が 200Ω/□であり、アモルファスのITO が 660Ω/□
であった。 実施例4〜6 上記の実施例1〜3の液晶光学素子の端子に金属片を接着し、液晶光学素子よ
りも少し大き目の厚さ 3mmの2枚のガラス板の間に、夫々周囲に20mmずつ保護板
同志が対向するように配置し、それらの間に厚さ約 380μmのポリビニルブチラ
ールフィルムを積層し、保護板同志が直接対向している幅20mmの部分には同じポ
リビニルブチラールフィルムを幅20mmの枠状に切抜いたものを積層した。 次いで、この積層物をゴム袋内に入れて、内部を減圧状態とした。その後、こ
の積層物を収容したゴム袋をオートクレーブに入れ、100℃まで昇温して、予備
圧着した。その後、予備圧着した積層物をゴム袋から取り出し、直接オートクレ
ーブに入れて 135℃まで昇温加圧して、本圧着を行った。 保護板が接着一体化された液晶光学素子は、液晶光学素子全面にわたり、均一
で泡もなく、良好な外観であった。 この保護板から露出した金属片を、駆動回路(AC50Hz、100V)に接続し、調光
窓として使用した。電圧を印加しない時には散乱状態で反対側が見えなく、電圧 を印加すると透過状態となって、反対側が良く視認できた。 [発明の効果] 以上のごとく、本発明は長期的な使用によっても特性の変化の少ない液晶光学
素子を用いた調光装置を提供するものであり、使用する一対の電極付き基板の一
方もしくは両方の基板上に形成された電極に、全部もしくは部分的に結晶化した
酸化インジウム系の電極を選ぶことにより製造される。 結晶化した酸化インジウム系の電極は、フィルム状液晶層を構成する液晶物質
や液晶物質を取り囲む他の有機物に直接接した状態においても電極に変化を生じ
させにくく、長期的に素子の特性が維持される。これにより、結晶化した酸化イ
ンジウム系の電極を電極として設けたプラスチックフィルムを基板として使用す
ることで、生産性及び現場作業性が良く、かつ、高寿命で信頼性の高い液晶光学
素子を容易に得ることができる。 さらに、その両面に保護板を接着することにより、大面積の調光装置としても
、液晶光学素子と保護板とが全面で密着していることとなり、平行光線透過率が
高く、透過率ムラが少なく、長期間にわたり、安定で信頼性の高いものとなる。 また、接着材として、シート状接着材を使用する、特に熱または光により接着
力が生じるシート状接着材を使用することにより、シート状接着材がベトいた
りすることがないので、その配置作業に支障を生じにくく、生産プロセスが容易
になり、生産性が極めて高くなる。 本発明の調光装置は、外観品位、生産性に優れた調光装置であり、大面積での
調光、表示、光シャッター等に広く利用することができ、調光窓、調光鏡、飾り
窓、大型公衆表示体、間仕切り等種々の応用が可能である。この他、本発明の効
果を損しない範囲で種々の応用が可能である。
【図面の簡単な説明】 第1図には、液晶を含む樹脂硬化物を挟持するための電極として例示した、各
種ITO 薄膜(A,B,C,D)のX線回折スペクトルを示す。第1図−a中の矢
印は、ITO 結晶による(222)面の回折線である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 (1) 液晶と光硬化性化合物と光重合開始剤とを含む溶液に光露光が行われて得ら
    れる硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)
    又は液晶物質がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するよう
    に選ばれた硬化物マトリックス中に液晶物質が分散保持されたフィルム状液晶層
    を一対の電極付き基板間に挟持してなる液晶光学素子を用いた調光装置において
    、使用する一対の電極付き基板の一方もしくは両方の基板上に形成された電極が
    、酸化インジウム系の電極であり、その全部もしくは一部が結晶化され、その結
    晶化された電極付き基板が、電極付きプラスチックフィルム基板とされ、その端
    子が駆動回路に接続され、電圧の印加によって、光の透過状態が透明状態と散乱
    状態との間で制御可能とされ、前記液晶光学素子は、60℃での電圧印加状態に
    2000時間放置された後の表面抵抗の経時的変化が初期値の1.2倍以下であ
    ことを特徴とする調光装置。 (2) 前記液晶光学素子の両面に、前記液晶光学素子よりも大きい保護板が夫々周
    囲に保護板同士が対向するように配置され、保護板接着性材料層で接着された
    ことを特徴とする請求項1記載の調光装置。 (3) 圧印加時に透明状態になり、電圧無印加時に散乱状態になる液晶光学素子
    が用いられたことを特徴とする請求項1または2記載の調光装置。 (4) 液晶と光硬化性化合物と光重合開始剤とを含む溶液に光露光を行って得られ
    る硬化物の屈折率が、使用する液晶物質の常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)又
    は液晶物質がランダムに配向した場合の屈折率(nx)のいずれかと一致するように
    選ばれた硬化物マトリックス中に液晶物質が分散保持されたフィルム状液晶層を
    一対の電極付き基板間に挟持してなる液晶光学素子を用いた調光装置の製造方法
    において、使用する一対の電極付き基板の一方もしくは両方の基板上に形成する
    電極を、酸化インジウム系の電極とし、その全部もしくは一部を結晶化し、その
    結晶化された電極付き基板を、電極付きプラスチックフィルム基 板とし、その電極付基板間に液晶物質と硬化性化合物との混合物を挟持し
    硬化性化合物を硬化させて、樹脂のマトリックス中に液晶物質が分散している
    フィルム状液晶層を形成し、その端子を、駆動回路に接続し、電圧の印加によっ
    て、光の透過状態を透明状態と散乱状態との間で制御可能にし、前記液晶光学素
    子は、60℃での電圧印加状態に2000時間放置された後の表面抵抗の経時的
    変化が初期値の1.2倍以下であることを特徴とする調光装置の製造方法。

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