JP2564897B2 - 高臨界電流密度を有する超電導線材およびコイルの製造法 - Google Patents

高臨界電流密度を有する超電導線材およびコイルの製造法

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JP2564897B2 JP63168335A JP16833588A JP2564897B2 JP 2564897 B2 JP2564897 B2 JP 2564897B2 JP 63168335 A JP63168335 A JP 63168335A JP 16833588 A JP16833588 A JP 16833588A JP 2564897 B2 JP2564897 B2 JP 2564897B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、安定した高臨界電流密度を有する超電導
線材およびコイルの製造法に関するものである。
〔従来の技術〕
一般に、Yを含む希土類元素(以下、この元素をRで
示す)、アルカリ土類金属、Cuおよび酸素からなるペロ
ブスカイト構造を有する化合物(以下、この化合物を超
電導セラミックスという)は、液体窒素で冷却可能な77
゜Kにおいて超電導現象を示すことが知られている。
上記超電導セラミックスの粉末を用いて超電導セラミ
ックス線材またはコイルを製造する方法としては、原料
粉末として、いずれも平均粒径:10μm以下のR2O3
末、アルカリ土類金属の炭酸塩粉末、およびCuO粉末を
用意し、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、混
合し、大気中または酸素雰囲気中で、温度:850〜950℃
にて焼成し、ペロブスカイト構造を有する超電導セラミ
ックスを製造し、これを平均粒径:10μm以下に粉砕し
て超電導セラミックス粉末とし、この超電導セラミック
ス粉末をAgチューブに充填し、このチューブの両端を封
じたのち、スエージング加工、溝ロール加工、またはダ
イス加工等の伸線加工を施して、直径:5mm以下のAg複合
ワイヤとし、さらに上記Ag複合ワイヤを巻いてコイルと
し、最終的に上記伸線加工したAg複合ワイヤまたはコイ
ルを大気中または酸素雰囲気中で、温度:900〜930℃で
熱処理し、ついで徐冷することにより超電導線材および
コイルを製造していた。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、上記伸線加工して得られたAg複合ワイヤま
たはコイルを大気中または酸素雰囲気中において温度:9
00〜930℃の熱処理を施すと、上記Ag複合ワイヤまたは
コイルの外被のAgチューブは収縮しないが、充填されて
いる超電導セラミックス粉末は焼結収縮し、得られた超
電導線材またはコイルの外被のAgチューブと上記焼結収
縮した充填超電導セラミックスの間に間隙が生じ、さら
に焼結収縮した充填超電導セラミックスにも亀裂が発生
することがあった。そのために、上記従来法で得られた
超電導線材は、臨界電流密度も低く同時に電流の流れが
安定しないという問題点が生じていた。上記問題点を従
来法により作成した超電導線材の一部断面図である第2
図にもとづいて一層具体的に説明する。伸線加工された
Ag複合ワイヤを大気中または酸素雰囲気中、温度:900〜
930℃で熱処理すると、上記Agチューブに充填されてい
る超電導セラミックス粉末は焼結収縮し、第2図に示さ
れているように、Agチューブ1と焼結収縮した超電導セ
ラミックス2の間に間隙3が発生する。上記間隙3はAg
チューブ1から超電導セラミックス2への電流の流れを
不安定化させ、さらに上記超電導セラミックス2の焼結
収縮時に発生した亀裂4は超電導セラミックス2におけ
る超電導電流の電流密度を低下させる。すなわち、上記
第2図の如き間隙3および亀裂4を有する超電導線材
は、安定した高臨界電流密度が得られないという問題点
があった。
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者等は、かかる問題点を解決すべく研
究を行なった結果、 上記伸線加工して得られたAg複合ワイヤまたは上記Ag
複合ワイヤを巻いて得られたコイルを、酸素分圧:10-2a
tm以下の不活性ガス雰囲気中で温度:930〜950℃に保持
したのち、温度:930℃まで降温し、ついで温度:930℃か
ら大気中または酸素雰囲気中に徐冷すると、 上記Ag複合ワイヤまたはコイルに充填されている超電
導セラミックス粉末は焼結された超電導セラミックスと
なり、上記超電導セラミックスに亀裂が発生せず、また
Agチューブと超電導セラミックスの間に間隙が生じるこ
とがなく、安定した高臨界電流密度を有する超電導線材
またはコイルを得ることができるという知見を得たので
ある。
この発明は、かかる知見にもとづいてなされたもので
あって、 超電導セラミックス粉末を充填してなるAg複合ワイヤ
またはそのコイルを、 酸素分圧:10-2atm以下の不活性ガス雰囲気中で温度:9
30〜950℃に保持したのち、温度:930℃まで降温し、 ついで、温度:930℃から大気中または酸素雰囲気中に
徐冷する高臨界電流密度を有する超電導線材およびコイ
ルの製造法に特徴を有するものである。
この発明の製造法により得られた超電導線材は第1図
の一部断面図に示されるように、Agチューブ1内の超電
導セラミックス2には球状ポア5が発生するが、亀裂は
発生せず、さらにAgチューブ1と超電導セラミックス2
の間にも間隙は発生しないのである。
つぎに、この発明の製造法における条件限定理由につ
いて述べる。
上記Ag複合ワイヤを温度:930〜950℃に保持すると上
記Ag複合ワイヤに充填されている超電導セラミックス粉
末は焼結され、さらに軟化すると同時に球状ポアが発生
する。上記球状ポアの発生により上記超電導セラミック
ス粉末の見掛け上の焼結収縮率は小さくなり、上記見掛
け上の焼結収縮率が小さくなると、Agチューブと超電導
セラミックスの間の間隙は発生せず、さらに上記超電導
セラミックスの亀裂発生が防止されるものと考えられ
る。上記保持温度が930℃未満では球状ポアが発生せ
ず、従来のように超電導線材に充填されている超電導セ
ラミックスに亀裂が生じ、Agチューブとの間の間隙が発
生するので好ましくなく、一方、保持温度が950℃を越
えるとAgの融点に近ずくのでAgチューブが溶融し、超電
導線材の溶断が生じるので好ましくない。したがって、
上記保持温度は930〜950℃に定めた。
上記温度:930〜950℃でAg複合ワイヤを保持すること
ができるのは、Agチューブに酸素が固溶されていないこ
とが必要である。すなわち、Agの融点は960.5℃である
が、酸素を固溶したAgの融点は960.5℃より低下し、酸
素を固溶量が多くなるほどAgの融点は低下する。たとえ
ば、大気中で上記Ag複合ワイヤを処理するときのAgチュ
ーブの融点は酸素の固溶により約940℃となっており、
酸素雰囲気中で上記Ag複合ワイヤを処理する時のAgチュ
ーブの融点は一層多量の酸素を固溶するために約930℃
となっている。すなわち、雰囲気に酸素があると上記93
0〜950℃の温度範囲ではAgチューブは溶断するのであ
る。
したがって、Agチューブの融点を低下させないために
雰囲気を不活性ガスとし、この不活性ガス雰囲気の酸素
分圧を10-2atm以下に可及的に低くする必要がある。
一方、上記AG複合ワイヤまたはコイルを酸素分圧:10
-2atm以下の不活性ガス雰囲気中、温度:930〜950℃に保
持すると、上記Ag複合ワイヤに充填されている超電導セ
ラミックス粉末、例えばYBa2Cu3O7−δ粉末の酸素は放
出され、上記δは大きくなり、上記超電導セラミックス
粉末は焼結し、軟化すると同時に球状ポアが発生し第1
図に示される超電導セラミックス2となる。すなわち、
上記酸素分圧:10-2atm以下の不活性ガス雰囲気中、温
度:930〜950℃に保持して得られた超電導セラミックス
2は球状ポア5の発生により収縮は防止されるけれども
酸素が不足するのである。そのために不活性ガス雰囲気
中で保持したのち、温度:930℃まで降温せしめ、温度:9
30℃になった時点で雰囲気を大気または酸素雰囲気に変
更し、この大気または酸素雰囲気で930℃から室温で徐
冷する過程で酸素を補給するのである。
上記酸素分圧:10-2atm以下の不活性ガス雰囲気中、温
度:930〜950℃に保持する時間は8〜24時間が好まし
く、また大気中または酸素雰囲気中で温度:930℃から徐
冷するための冷却速度は50〜100℃/時間が好ましい。
上記徐冷は、温度:930℃から連続的に室温まで徐冷す
る必要はなく、途中で一定温度保持したのち室温まで徐
冷することもできる。
〔実 施 例〕
つぎに、この発明を実施例にもとづいて具体的に説明
する。
原料粉末として、いずれも平均粒径:6μmのY2O3
末、BaCO3粉末、およびCuO粉末を用意し、これら原料粉
末を、Y2O3:15.13%、BaCO3:52.89%、CuO:31.98%(以
上重量%)の割合で配合し、混合し、この混合粉末を、
大気中、温度:900℃、10時間保持の条件で焼成し、平均
粒径:2.8μmに粉砕してYBa2Cu3O7の組成を有するペロ
ブスカイト構造の超電導セラミックス粉末を製造した。
一方、内径:8mm×肉厚:1mm×長さ:200mmのAgチューブ
を用意し、上記超電導セラミックス粉末を上記Agチュー
ブに充填してAg複合ワイヤを作製し、このAg複合チュー
ブの両端をプレス加工により封じたのち伸線加工し、外
径:2mmの超電導セラミックス粉末充填Ag複合ワイヤを4
本作製した。
実施例 1 上記Ag複合ワイヤを、酸素分圧:5×10-3atmのArガス
雰囲気中、温度:940℃、12時間保持したのち、温度:930
℃まで冷却し、上記温度:930℃において、雰囲気を上記
酸素分圧:5×10-3atmのArガス雰囲気から1atmの酸素雰
囲気に変更し、上記温度:930℃から冷却速度:60℃/時
間で温度:500℃まで徐冷し、上記500℃で12時間保持し
たのち、冷却速度:100℃/時間で室温まで徐冷した。こ
の熱処理パターンを第3図に示す。このようにして得ら
れた超電導線材の超電導特性を測定し、その結果を第1
表に示した。
比較例 1 比較のために、上記Ag複合ワイヤを酸素雰囲気中、温
度:920℃、24時間保持の条件で熱処理し従来法による超
電導線材を作製し、上記従来法による超電導線材の超電
導特性を測定し、その結果を第1表に示した。
実施例 2 上記Ag複合ワイヤを巻線してAg複合ワイヤのコイルを
作製し、このコイルを、酸素分圧:2×10-3atmのN2ガス
雰囲気中、温度:945℃、8時間保持したのち、温度:930
℃まで冷却し、上記温度:930℃において、雰囲気を上記
酸素分圧:2×10-3atmのN2ガス雰囲気から大気雰囲気に
変更し、上記温度:930℃から冷却速度:60℃/時間で室
温まで徐冷した。この熱処理パターンを第4図に示す。
このようにして得られた超電導コイルの超電導特性を
測定し、その結果を第1表に示した。
比較例 2 比較のために、上記Ag複合ワイヤを巻線してAg複合ワ
イヤのコイルを作製し、比較例1と同一の条件にて熱処
理して従来法による超電導コイルを作製し、この従来法
による超電導コイルの超電導特性を測定して、その結果
を第1表に示した。
〔発明の効果〕 第1表の結果から、本発明により作製された実施例の
超電導線材およびコイルの超電導特性は、従来法による
比較例の超電導線材およびコイルより優れていることが
わかる。
したがって、この発明は、酸素を含有しない不活性ガ
ス雰囲気中、温度:930〜950℃に保持するという簡単な
工程を挿入することにより高臨界電流密度を有する超電
導線材およびコイルを容易に製造することができ、産業
上すぐれた効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】 第1図は、この発明の方法により得られた超電導線材の
一部断面図、 第2図は、従来法により得られた超電導線材の一部断面
図、 第3図は、実施例1の熱処理パターン、 第4図は、実施例2の熱処理パターン、 1:Agチューブ 2:超電導セラミックス、3:間隙 4:亀裂、5:球状ポア

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Yを含む希土類元素、アルカリ土類金属、
    Cuおよび酸素からなるペロブスカイト構造を有する化合
    物(以下、超電導セラミックスという)粉末をAgチュー
    ブに充填し、このAgチューブの両端を封じたのち、伸線
    加工してAg複合ワイヤとし、上記Ag複合ワイヤを熱処理
    して超電導線材を製造する方法において、 上記Ag複合ワイヤを、酸素分圧:10-2気圧以下の不活性
    ガス雰囲気中、温度:930〜950℃に保持したのち、温度:
    930℃まで降温し、 ついで、大気中または酸素雰囲気中で温度:930℃から徐
    冷することを特徴とする高臨界電流密度を有する超電導
    線材の製造法。
  2. 【請求項2】上記超電導セラミックス粉末をAgチューブ
    に充填し、このAgチューブの両端を封じたのち、伸線加
    工してAg複合ワイヤとし、上記Ag複合ワイヤをコイルに
    加工し、上記コイルを熱処理して超電導コイルを製造す
    る方法において、 上記Ag複合ワイヤのコイルを、酸素分圧:10-2気圧以下
    の不活性ガス雰囲気中、温度:930〜950℃に保持したの
    ち、温度:930℃まで降温し、 ついで、大気中または酸素雰囲気中で温度:930℃から徐
    冷することを特徴とする高臨界電流密度を有する超電導
    コイルの製造法。
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