JP2564613Y2 - トラフ式水耕栽培装置およびそれに使用されるトラフ - Google Patents

トラフ式水耕栽培装置およびそれに使用されるトラフ

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JP2564613Y2
JP2564613Y2 JP1993050746U JP5074693U JP2564613Y2 JP 2564613 Y2 JP2564613 Y2 JP 2564613Y2 JP 1993050746 U JP1993050746 U JP 1993050746U JP 5074693 U JP5074693 U JP 5074693U JP 2564613 Y2 JP2564613 Y2 JP 2564613Y2
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均 田本
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神戸企業株式会社
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案はトラフ式水耕栽培装置お
よびそれに使用されるトラフに係り、詳しくは、養液が
流通し同一面で平行に配列されている複数本のトラフの
それぞれにストリップを介して支持した多数の植鉢によ
り葉菜類を栽培する際に、成長の促進を図るために温冷
風や炭酸ガスなどを葉部へ集中して吹き流すことができ
るようにしたトラフ式水耕栽培装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】レタス,ほうれん草,サラダ菜,ちんげ
ん菜などの葉菜類を短期間に収穫するため、温度調節機
能を持たせた温室において水耕栽培されることが多い。
その場合、例えば特開昭57−177627号公報に記
載されているように、多数設けた孔に植鉢が嵌め込まれ
るストリップを移動可能に挿通させると共に、底部に養
液を流通させるようにしたトラフを採用した装置が使用
されることがある。このようなトラフ式水耕栽培装置に
おいては、複数本のトラフが平行にかつ同一面でやや傾
斜して配列される。各トラフに幼苗を植えつけるとき、
トラフの端部から終端までにストリップを繰り出す際
に、植鉢をストリップの孔に嵌めながら送り出される。
一方、成育すれば、トラフの終端からストリップを引き
出す際に終端から出たストリップ上の植鉢を取り去り、
茎の下部で植鉢を切り落とすと葉菜類を収穫することが
できるようになっている。
【0003】このように、トラフを多数配列した温室で
は、作業者が腰をかがめることなく植付作業や収穫作業
を可能にするために、トラフは架台上に配置される。し
たがって、新鮮な養液を各トラフに流通させると共に、
その循環も立体的にすることができるので、極めて都合
がよい。それのみならず、例えば特開平3−12791
9号公報に記載されているように、温室の空調をするた
めの調温ダクトがトラフの延びる方向に対して直交する
ようにトラフ下方の空間に配置されることがある。これ
は、温室内を空調するだけでなく空気に適度な流れを与
えて葉菜類の葉面に当て、炭酸同化作用を促進させるた
めでもある。この調温ダクトは、室温が所望外に高くな
るときは、温室の一角に設けたクールシェル装置から送
風機によって供給される冷風を発生させ、低くなるとき
にはヒータなどから供給される温風を供給することがで
きる。そのために、調温ダクトとして例えばビニールシ
ートを輪状にしたものが採用され、冷風や温風が供給さ
れると円筒状に膨らみ、その上部の側面などからトラフ
に向けて上昇させることができるような幾つかの吹出孔
が設けられている。なお、調温ダクトから出た上昇風は
平行して並ぶトラフの間を抜けるが、その際に葉面に6
0cm/秒程度の風となってそよぎ、葉面に対して穏や
かな流れとなる風量に調節される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】ところで、トラフは高
さが5cmで幅が5cmないし6cmといった程度のも
のであり、葉菜類によって異なるが、トラフに挿通され
るストリップに設けた植鉢のための孔の間隔が例えば1
5cmといったように設けられる。これは、収穫間近い
状態においても隣りあう葉菜類が干渉しない間隔となっ
ている。したがって、隣りあうトラフの間隔は10cm
程度とされ、一つの植鉢に着目すると前後左右に均等の
間隔が確保されるように配慮されている。このようなト
ラフ相互の間隔は、例えば特開昭55−24000号公
報に記載されているように、葉菜類の成長につれて拡大
していくような特殊な場合を除いて固定した一定のもの
とされる。すなわち、平行して並べたトラフの間隔を変
更する機構は温室内の設備を複雑化させたり動力設備が
必要となるからであり、設備の簡素化が要求される場合
には架台に載せられたトラフの位置は常に維持される。
このような場合に、葉菜類の成長が進んでいないときす
なわち葉面がトラフ間の空間に張り出していないとき、
調温ダクトから吹き出された空気の流れはトラフ間を葉
面に多く当たることなく、トラフ間の約10cmの隙間
の中央を上昇してしまう。その結果、葉面に供給される
新鮮な空気が少なくなり、所期の目的の達成が減殺され
る欠点がある。一方、葉菜類が成長して葉面が広がって
くると、調温風は葉面に当たることになるが、植鉢から
出ている茎の部分すなわち葉菜類の根元近傍への供給が
妨げられ、その部分で空気の淀みが生じて過湿化すると
いった問題がある。ましてや、光合成の促進のために炭
酸ガスを供給するような場合でも同様の現象が生じ、結
局は、用をなさずに飛散するか過剰な供給量が余儀なく
されたりする難点がある。
【0005】本考案は上述の事情に鑑みなされたもの
で、その目的は、調温ダクトから吹き出されてくる温冷
風を葉菜類の葉部などに直接かつ十分に接触させるべく
効果的な送気形態を可能にすること、これによって光合
成の活発化を促し、また、根元での過湿化を防止して最
適な育成環境を実現することができるトラフ式水耕栽培
装置およびそれに使用されるトラフを提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本考案は、多数設けた孔
のそれぞれに植鉢を嵌め込む水平な姿勢のストリップが
上部に挿通されると共に、前記植鉢の下方の底部に養液
を流通させる複数本のトラフが平行にかつ同一面に配列
されている水耕栽培施設に適用される。その特徴とする
ところは、図1を参照して、一定間隔をおいて配置され
る各トラフ1,1の両外側面にトラフ1の延びる方向に
沿って上方へ開口する連続した受け溝5,5が形成され
る。一方、隣りあうトラフ1,1の対向する面における
受け溝5,5には、左右に設けた脚部13B,13Bを
嵌着させる渡し材12が掛け渡され、その渡し材12の
中央部位には、トラフ1の下方から上昇する調温風16
を各トラフ方向へ偏流させるバッフル部14がトラフ1
の長手方向に延びて形成されている。なお、図3に示す
ように、渡し材12の架橋材13の中央部位に、任意距
離を隔てた受け溝に配置するための左右幅変更用の伸縮
自在部18を形成しておくとよい。
【0007】図5および図6に示すように、バッフル部
34,44は、上方に開いたアングル形状にしてもよ
い。図7および図8に示すように、バッフル部24,4
4には炭酸ガスなどを供給する送気用パイプ20を取り
付けておくことができる。この場合には、送気用パイプ
20にトラフ方向へ炭酸ガスなどを噴出させるガス孔2
0aが設けられる。また、図9を参照して、渡し材52
の中央に送気用パイプ20を嵌着させる凹部53aが形
成され、ガス孔20aは送気用パイプ20の側方に配置
したバッフル部54の下方に位置されるようにしておい
てもよい。
【0008】本考案に係るトラフは、多数設けた孔のそ
れぞれに植鉢を嵌め込む水平な姿勢のストリップが上部
に挿通されると共に、前記植鉢の下方の底部に養液を流
通させる複数本のトラフが平行にかつ同一面に配列され
ている水耕栽培施設で使用されるトラフであって、その
特徴とするところは、図1に示したごとく、各トラフ
1,1の両外側面に、トラフの延びる方向に沿って上方
へ開口する連続した受け溝5,5が形成されていること
である。
【0009】
【作用】養液2が流通するトラフの隣りあう間に渡し材
12が配置され、各トラフ1の側面に形成した受け溝
5,5に脚部13B,13Bが嵌着される。その渡し材
12には架橋材13にバッフルプレート14が載せられ
たり、渡し材として一体に形成されたバッフル部があ
る。多数のトラフ1,1の下方の調温ダクト11から調
温風16が吹き出され、それがトラフ1,1間の隙間1
0を経て上昇しようとする。その調温風16はバッフル
プレート14などによって上昇が阻まれ、バッフルプレ
ート14とトラフ1との間の空気流通隙間15の方向へ
偏流される。その変向された調温風16はトラフ1に向
かう流れとなり、葉菜9の葉面に当たる。葉面は穏やか
な調温風16によって揺れ、空気の停滞が回避される。
新鮮な調温風16による光合成が達成され、葉菜類の育
成も速くなる。植鉢4の近傍は特に空気が淀みやすい
が、そのようなことも解消され、根元での腐敗の発生も
可及的に抑制される。トラフが任意距離を隔てて配置さ
れている場合には、図3のような中央部位に左右幅変更
用の伸縮自在部18が形成された架橋材13を使用し
て、また、図4に示された折り畳み角度変更可能なバッ
フル部24を使用して調温風16の偏流が図られる。
【0010】図5や図6に示すように、バッフル部3
4,44が上方に開いたアングル形状になっていると、
調温風16の偏流が円滑となり、そのアングル形状を大
きく選定すると調温風16が強く葉菜9に当たる。バッ
フル部24,44に図7や図8に示す送気用パイプ20
を取り付ければ、炭酸ガスなどをガス孔20aから吹き
出させて、効率よく炭酸ガスを供給することができる。
また、図9のように、渡し材52を構成する架橋材13
の中央に送気用パイプ20を嵌着させる凹部53aを形
成しておき、ガス孔20aをバッフル部54の下方に位
置させれば、偏流された調温風16に炭酸ガスなどを随
伴させることができ、無用の放散が減少する。
【0011】一方、トラフ自体は上記したような受け溝
5,5を両側面に備えており、いずれの形態の渡し材で
あっても、その脚部13B,13Bを嵌着させて調温風
16の偏流を促し、従来ではトラフ間を単に上昇するに
留まった調温風16の無用の放散や過大な量の消費が回
避されるようになる。
【0012】
【考案の効果】本考案のトラフ式水耕栽培装置によれ
ば、トラフ間に渡し材を配置して上昇する調温風を偏流
させ、トラフ上に並ぶ葉菜類に効率よく当てることがで
きる。これによって葉菜類の葉面には新鮮な空気が供給
され、その光合成を促進して短期間における育成栽培が
実現される。また、根元での空気の停滞も可及的に少な
くなり、トラフを流通する養液に基づく過湿状態が解消
され、腐敗などの発生も極めて少なくなる。渡し材に幅
変更用の伸縮自在部が中央部位に形成されている場合に
は、トラフの間隔が変更されても、また、異なるトラフ
間隔に適用されるときでも、渡し材が任意幅となって、
調温風の偏流を実現することができる。
【0013】バッフル部が上方に開いたアングル形状と
なっていると、上昇する調温風の整流効果が高まり、葉
菜類への供給がより一層効果的となる。バッフル部に送
気用パイプが取り付けられた場合には、そのガス孔から
炭酸ガスなどを噴出させて、葉菜類の光合成を促進する
ことができる。渡し材に送気用パイプを嵌着させる凹部
を中央に形成し、そのガス孔がバッフル部の下方に位置
しておくようにすると、偏流された調温風に炭酸ガスな
どを伴わせ、炭酸ガスなどを集中して供給でき、その消
費効率が向上する。ガス孔からの噴出が強い場合には、
偏流された調温風に勢いをつけることになり、葉菜類の
方向への吹きつけ効果が向上する。
【0014】トラフの両外側面にトラフの延びる方向に
沿って上方へ開口する連続した受け溝を形成させておく
と、上記した渡し材の装着が可能となり、トラフ間を単
に素通りするように上昇していた従来の栽培に比べて、
調温風の偏流制御が可能となるトラフが実現される。ト
ラフの断面形状は受け溝の形成によっても連続して一定
であり、アルミ材などで引抜成形することができ、その
製作が容易で安価なトラフの供給ができるようになる。
【0015】
【実施例】以下に、本考案のトラフ式水耕栽培装置およ
びそれに使用されるトラフを、その実施例を示した図面
に基づいて詳細に説明する。図1は、図示しない温室内
に平行にかつ同一面にやや傾斜して配列されている複数
本のトラフのうち、隣りあう二本のトラフ1,1の断面
図である。この各トラフ1は、例えば幅が6cm程度で
高さが5cmといったやや横長い矩形断面であり、上部
は幅は2.5cm程度に開放されている。このトラフ1
には、その底部に養液2を流通させる部分と、ストリッ
プ3に支持された植鉢4を収容する空間と、ストリップ
3を挿通させる溝部が形成されている。すなわち、本例
におけるトラフ式水耕栽培装置においては、多数設けた
孔のそれぞれに植鉢4を嵌め込む水平な姿勢のストリッ
プ3が上部に挿通されると共に、植鉢4の下方の底部に
沿って養液2を流通させることができるようになってい
る。このようなトラフ1は、その両外側面にトラフの延
びる方向に沿って上方へ開口する連続した受け溝5,5
が形成され、後述する渡し材12の脚部を嵌着させて、
その渡し材12を隣りあうトラフ1,1間に掛け渡すこ
とができるようになっている。トラフ単体は例えば7m
といった短いものから40mといった極めて長いものま
で種々選択される長尺物であるが、上記の受け溝5やト
ラフ1の内部構造も下面に形成された補強リブ6も含め
て、長手方向に途切れることなく同一断面形状に維持さ
れている。それゆえに、一本のトラフはアルミニウムの
引抜成形品や硬質プラスチックの押出成形品として能率
よく製作することができるものとなっている。
【0016】トラフ1の構造をもう少し詳しく述べる
と、ストリップ3を挿通させる空間を形成すると共に支
持するために左右から水平に張り出した支持突片7,7
と上片8,8とが形成される。支持突片7は、ストリッ
プ3の端部を支えることができれば十分であるので上片
8よりは短い。しかし、植付作業や収穫作業の際にスト
リップ3を摺動させることになるので、摩擦力を軽減す
るためその先端部分が丸められ、また、ストリップ3の
損傷も少なくなるように配慮されている。上片8,8の
間隔は前述したとおりの例えば2.5cmの開口をな
し、葉菜9が大きく成長しても茎とは干渉しないように
なっている。この上片8はストリップ3を挿通させる際
のストリップの変形を抑制するためと、植鉢4の転倒を
防止するように機能する。なお、移動するストリップ3
の損傷を軽減すると共に、根元の葉が広がり触れても傷
をつけることが少なくなるように、支持突片7と同じく
その先端部分が丸められている。ちなみに、養液2の流
通する底部の隅も丸められており、収穫時にストリップ
3を移動させるとき、はびこった根で底面が擦られ、そ
の際に底部に残存する根の切れ端や壁面に付着する藻や
水草の除去のための掻き出しも容易となるようになって
いる。
【0017】一方、ストリップ3は一本のトラフ1に挿
通されるので、少なくともトラフ1と同じ長さのものが
使用される。ストリップ3には植生する葉菜の種類に応
じて植鉢4を嵌める孔3aが一定間隔で配列され、幼苗
を植え付けた植鉢4を全孔に入れたり、大きく茂る葉菜
の場合には一つおきに嵌められる。通常設けられる孔3
a,3aの間隔は7.5cmであったり15cmであっ
たりする。このストリップ3は厚さが2mmないし3m
mのプラスチックで製作される。したがって、植付作業
においてストリップ3を繰り出すときや収穫作業におい
てストリップを引き寄せる場合には巻き取ることができ
る。そして、植付作業と収穫作業の際の巻き取りを容易
とするため、ストリップ3は例えばトラフ1よりもやや
長いものとなっている。
【0018】ストリップ3に嵌める植鉢4は、高さが3
cm程度で通常の植木鉢と同様に上部の開口が広くなる
ように下窄まりであり、その開口した径は2.5cm程
度される。そして、上部の周囲には鍔4aが形成され、
その外径は3.5cm程度とされる。植鉢4は例えば
0.2mmないし0.3mmといった薄いものであり、
例えばポリエチレンシートを加熱プレス成形すれば簡単
に得られる。なお、植鉢4の底部には側面に跨がるよう
に例えば一本のスリット4bが入れられ、ひる石粒の中
から養液2に向かって根が伸び出ることができるように
なっている。前述したトラフ1の上部に形成される上片
8,8は、この植鉢4の鍔4aの上方に位置して上記し
た寸法関係となっているので、葉菜類が大きく成長して
植鉢が倒れそうになっても、その鍔4aが上片8の端部
下面で押さえられ、葉菜9が倒れるようなことはない。
なお、養液2は図示しないポンプなどで汲み揚げられ、
緩やかに傾斜したトラフ1の高い方から供給され、ほぼ
水位を一定にした状態で低い方へ流れる。トラフ1の端
からは養液がそのまま流し落とされるようになっていた
り、トラフ端に堰を設けている場合にはホースなどを介
して養液タンクへ戻され、肥料を補給するなりエアレー
ションされるなどした後に、再度トラフへ循環される。
【0019】ところで、トラフの隣りあう間隔は葉菜9
の茂り方に応じて一定の隙間10があけられる。その一
方、トラフ1,1の下方には例えばトラフの延びる方向
に対して直角をなすビニールの調温ダクト11が配置さ
れ、空調装置からの冷風もしくは温風などの調温空気が
温室内に供給される。この調温風16は葉菜9の葉面に
当てて光合成を促進させるために供給されるものであ
り、葉面が少し揺れる程度の風が発生するような空気量
となっている。しかし、上記したトラフ1,1間の隙間
10から調温風がそのまま吹き上がることになると、葉
面に触れることなく無駄に調温風が消費されることにな
る。そこで、以下のような構成のバッフル部を備えた渡
し材がトラフ間に掛け渡される。
【0020】渡し材12は、隣りあうトラフ1,1の対
向する面に設けられた受け溝5,5に嵌着させるもので
あり、左右に張り出す架橋材13の腕部13A,13A
の先端に脚部13B,13Bが形成されている〔図2
(a)参照〕。この渡し材12の最も単純なものは、プ
ラスチックの少し厚い短冊状の板の両端を曲げた架橋材
13と、それに載せられる平らなバッフルプレート14
からなる。その架橋材13は任意もしくは例えば40c
m程度の間隔で掛け渡され、その上にバッフルプレート
14を載せればよい。架橋材13は10cm適度の幅を
有し、トラフの延びる方向においては3cmないし4c
m程度の長さとしておけばよい。その架橋材13の中央
部位には、幅が5cm適度のプラスチックもしくは合板
などのバッフルプレート14が載せられ、適宜の方法で
固縛されたり、単に載せただけの恰好とされる。このよ
うなバッフルプレート14はトラフ1,1間を上昇する
調温風16を変向させるバッフル部として機能すること
になる。
【0021】なお、バッフルプレート14の重みで架橋
材13が撓むことがあっても、架橋材13の脚部13
B,13Bが受け溝5,5に嵌まっているので特に問題
はないが、大きく撓むような場合には、図2の(a)の
仮想線で示すようにトラフ方向へ延びるリブ13aを一
体的に形成させておけばよい。もちろん、脚部13Bの
長さや受け溝5の深さは適宜選択され、脚部13Bの全
部を受け溝5に入れる場合には腕部13Aの下面が受け
溝5の上縁で支えられ、脚部13Bの下半部を受け溝5
に入れるだけの場合は、脚部13Bの剛性のみで支えら
れる。上記の受け溝5の開口は例えば4mm幅程度であ
り、架橋材13の厚みを2mm程度としておけばよい
が、プラスチック成形する場合などでは脚部やその近傍
のみをやや厚くしておくこともできる。また、図2の
(b)のように脚部13Bを外向きのU字状に曲げたり
内向きに曲げてもよい。曲がり部分がある場合には、そ
の弾発力などを利用して受け溝5の内面にしっかりと固
定することもできる。図2の(c)のように、脚部13
Bを二又状とすることもできる。いずれにしても、使用
しないときにはトラフ1,1から取り外されるが、その
操作においても何らの支障はない。
【0022】このような架橋材13とバッフルプレート
14からなるトラフ式水耕栽培装置用の渡し材12にお
いては、まず、栽培すべき葉菜9の種類に応じて、その
茂り量や広がり方を予測して、多数のトラフ1,1が架
台上に所望する間隔で配置される。そして、適宜の間隔
で図1に示したトラフの受け溝5,5に架橋材13,1
3を配置する。その作業において、作業者がそれぞれの
位置で架橋材13を受け溝5,5に嵌め込めばよいが、
受け溝5は連続しているので、一箇所で数本の架橋材1
3,13を嵌め込み、そこから、架橋材13を受け溝
5,5に沿ってトラフ1の延びる方向へずらすこともで
きる。トラフの間隔は前述したごとく10cm程度であ
り、各トラフ間に作業者が入ることは不可能であるが、
トラフの数本おきに作業通路が確保されておれば、そこ
から手を延ばしたり、竿などを用して架橋材13を所望
する位置に配置することができる。たとえ架橋材13,
13を均等な間隔で配置することができなくても、バッ
フルプレート14を載せて支持できれば十分である。バ
ッフルプレートも適宜な長さであり、例えば2m程度の
ものを順次載せていけばよい。プラスチック製のバッフ
ルプレートであれば、例えば30mといった長い帯体に
しておき、その両端を二人の作業者が持って順次掛けて
いくことができる。
【0023】バッフルプレート14の両横はトラフ1の
側部との間に空気流通隙間15が例えば左右それぞれに
2.5cm程度の幅で確保される。調温ダクト11から
吹き出した調温風16はトラフ1の下面に当たった後に
側面を上昇しながらトラフ自体を冷却したり暖めたりす
る。一方、トラフ間を直接上昇する調温風16はバッフ
ルプレート14に邪魔された恰好となって左右へ分流
し、かつ、バッフルプレート14に案内されそれぞれの
トラフ1の方向へ矢印17,17のように偏流される。
なお、架橋材13の存在する空間では調温風の流通が阻
止されるかのように見えるが、その長さは短くて葉面に
空気を送ることに何らの障害となることはない。その調
温空気は葉菜9の葉面に適度な風速でそよぎ、葉面での
空気の移動を促す。新鮮な空気によって葉面での光合成
が促進される。また、その光合成の際に発生する熱の放
散も助長する。葉面が大きく茂っている場合には植鉢4
の近傍すなわち根元で淀む空気も横向き風によって払い
のけられ、トラフ1内の養液2から蒸発する水分による
過湿状態も解消される。
【0024】上記した渡し材12は渡し幅が固定的であ
り、そのときのトラフ間隔にのみ適用されることにな
る。葉菜9の種類が異なりトラフ間隔が違えられる場合
には、異なる幅の渡し材が使用される。一般的には、そ
の温室で栽培される葉菜類が一度決められた後に変更さ
れることは少ないからである。しかし、いかなるトラフ
間隔にも共通して使用することができるようにしたい場
合には、図3の(a)のように、幅変更用の雌雄嵌合形
式の伸縮自在部18を架橋材13の中央部位に形成して
おけばよい。この場合には架橋材それ自体が左右二つの
部材13M,13Nから構成され、嵌合する継手の懐の
深さを大きくしておくとバッフルプレートを載せたとき
に折れ曲がるおそれも少なくなる。また、同様の趣旨で
図3の(b)のように、伸縮自在部18にスリット19
を形成し、他方の部材に取り付けたボルト21を入れて
ナットで固定するなどの固縛手段を用いて幅変更すると
いうこともできる。いずれの例においても、架橋材13
の上面に少し段差が生じてバッフルプレートを載せたと
きの姿勢が若干傾くが、調温風16を偏流させるにおい
ては大勢に影響はない。例えば、従来技術のところで触
れた特公昭63−60971号公報に記載されたよう
に、成長につれて大きくなる葉に合わせてトラフの間隔
を変更するような場合には、図3お(a)のような伸縮
自在部18を形成した渡し材12を使用すると、間隔変
更の都度渡し材を交換することなく幅変更に追従させる
ことができる。
【0025】上記したバッフルプレート14は架橋材1
3,13と別体であるが、図4に示す渡し材22のよう
に、架橋部23とバッフル部24とを一体としておくこ
ともできる。この場合には一枚の長いアルミニウムなど
の金属薄帯材やプラスチック帯材を切断曲げ成形すれ
ば、いかなる長さのものにもすることができる。もちろ
ん、バッフルプレートに代わるバッフル部24の幅も調
温風16を偏流させるに十分なものとされる。ちなみ
に、図中に仮想線で示したように、バッフル部24をト
ラフ1の延びる方向に平行な折れ線の入ったアコーデオ
ン形式の山谷を形成しておくと、前述した伸縮自在部1
8を架橋材13に形成させた場合と同じ効果を発揮させ
ることができる。上記したいずれの材料を使用する場合
でも、腕部13Aと脚部13Bとがバッフル部24に連
なっているので、渡し材22に特別な補強を施す必要は
少なくなる。図4に実線で示した渡し材22とする場合
には、図示したように巻き取ることができるようにする
ことも可能であり、トラフ間に配置する作業や片づけ作
業においての取り扱いが容易となる。
【0026】図5は、架橋材33とバッフルプレート3
4とからなる渡し材32であり、そのバッフルプレート
34はV形のアングル状に成形され、架橋材33に形成
した凹みに嵌めるようにして載せられる。したがって、
上方に開いたアングル形状のバッフルプレート34によ
って調温風の整流効果が発揮されて偏流を円滑にする利
点がある。その状態は図1の例から容易に想像できるで
あろう。もちろん、アングルの開口幅を大きくして、そ
の先端をトラフ1の方向へ大きく延ばしておけば、調温
風16を葉菜9に集中して当てることができる。このよ
うなガイド機能を持ったバッフル部として、図6の
(a)に示すようなバッフル部44を架橋部43と一体
にした渡し材42としておくこともできる。そして、図
6の(b)のように、アングル部に連なる平坦部44
A,44Aを左右に形成しておくと、アングルの成形に
寸法的な制限を受けるような場合でも偏流効果を助長さ
せることができる。図6のいずれの例においても、図4
のように巻き取るということは実質的に容易でないが、
次に述べる送気用パイプ20を装着する場合には便利で
ある。
【0027】ところで、トラフ間を吹き上げる空気に調
温が図られるだけでなく、温室内に積極的に炭酸ガスな
どを供給して炭酸同化を促進させたい場合がある。その
場合に、炭酸ガスを調温風16に混合しておくこともで
きるが、別途設置された炭酸ガスボンベにホースで繋が
れた送気用パイプをトラフに平行して配置しておくこと
もできる。図7は、送気用パイプ20を図4の渡し材2
2の上に配置した例である。送気用パイプ20の径は3
cm前後の塩化ビニールパイプなどが使用され、金具2
7でもって渡し材22の上面に固定される。その送気用
パイプ20の側面には一列もしくは上下二例を形成して
トラフ1の延びる方向へ或る間隔で炭酸ガスなどを吹き
出させるためのガス孔20a,20aが設けられる。図
示から分かるように、ガス孔20aはバッフル部24の
上部の空気が停滞しているところから噴出される。した
がって、吹き出された炭酸ガスが直ちに調温風16で上
昇してしまうことはなく、しかも、偏流された調温風1
6に伴流する恰好となって葉菜9に向かう矢印25の方
向へ送り出され、機能しないままに温室に拡散するとい
ったことはなくなる。しかも、炭酸ガスが強く噴出され
るか間歇的に吹き出される場合には、その勢いでもって
空気流通隙間15,15を流過する調温風を変向させる
ようにも機能する。なお、このような送気用パイプ20
を図2の(b)などに示した架橋材13に載せることも
できる。その場合には、送気用パイプ20の径にもよる
が、送気用パイプ自体をバッフルプレートとして機能さ
せることができる。
【0028】図8は上で少し触れたが、アングル形状の
バッフル部44(図6の(a)参照)に送気用パイプ2
0を載せた例であり、同様に図5に示したバッフルプレ
ート34に載せることもできる。また、架橋材に円弧状
の凹部を形成しておき、送気用パイプ20を嵌めたり
(図示せず)、やや幅の狭い円弧凹部に緊密に嵌着させ
ることもできる。後者の場合には、送気用パイプに予め
架橋材を嵌め込んでおき、送気用パイプをトラフ間に配
置するとき、架橋材を受け溝に嵌めるようにすれば、作
業の手間を少なくすることができる。なお、図9のよう
に、円弧状の凹部53aを有する架橋材53,53に送
気用パイプ20を嵌着させた左右部位にバッフルプレー
ト54が取り付けられたり、予め一体となったバッフル
部を形成した渡し材52としておくこともできる。この
ような場合には、送気用パイプ20のガス孔20a,2
0aをバッフルプレート54などで形成されるバッフル
部の下方に開口させておくと、バッフル部で偏流される
調温風に混合して炭酸ガスを植鉢方向へ送り出すことが
できる。
【0029】いずれの例においても、調温ダクトから吹
き出される調温風を葉菜類の葉部などに直接かつ十分に
接触させるべく効果的な送気形態が実現され、冷風もし
くは温風といった人為的に作られた調温空気の無用の放
散や浪費を抑制し、光合成に寄与させることができる。
そして、とりわけ、横風の発生により空気の淀みのある
根元での過湿化も抑制され、腐敗などの発生しにくい最
適な育成環境を実現して水耕栽培することができるよう
になる。なお、このようなことを実現するために、図1
に示した受け溝5,5の存在するトラフを採用すること
が極めて便利であることが分かる。受け溝は従来から存
在するような断面形状の左右側面に溝を形成させるべく
突起を成形したものであり、極めて簡単なものである。
しかし、その溝が連続していて渡し材の脚を任意に位置
させることができること、また、架橋材を単独でトラフ
間に配置するときはずらすなどのスライド的な移動形態
の採用で配置作業が軽減されて作業能率の向上が図られ
ること、さらには、断面が長手方向において一定である
ので、引抜成形や押出成形などが容易で、長尺なトラフ
の製作がコストアップになるということが回避されると
いった多大の利点を備えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 隣りあうトラフ間に渡し材を配置して調温風
を葉菜方向へ偏流させているトラフ式水耕栽培装置の部
分拡大図。
【図2】 (a)は架橋材とバッフルプレートとからな
る渡し材の斜視図、(b)は脚部の形状の異なる例を示
す架橋材の斜視図、(c)は他の脚部構造を備えた架橋
材の正面図。
【図3】 幅変更用の伸縮自在部が中央部位に形成され
ている架橋材であって、(a)は雌雄嵌合形式の斜視
図、(b)はスリットを介して固定する形式の斜視図。
【図4】 架橋材とバッフルプレートとが一体になった
渡し材の斜視図。
【図5】 上方に開いたアングル形状のバッフルプレー
トを使用した渡し材の斜視図。
【図6】 (a)はアングル形状のバッフル部が架橋材
と一体となっている渡し材の斜視図、(b)はアングル
部に連なって平坦なバッフル部の形成された渡し材の斜
視図。
【図7】 架橋材の上部に送気用パイプを配置した場合
の正面図。
【図8】 架橋材の中央部位にアングル状の凹みを形成
し、それに送気用パイプを載せた配置図。
【図9】 架橋材の中央部位に円弧状の凹みを形成し、
バッフルプレートよりも下方にガス孔を開口させた場合
の斜め下方から見た斜視図。
【符号の説明】
1…トラフ、2…養液、3…ストリップ、3a…孔、4
…植鉢、5…受け溝、9…葉菜、10…隙間、11…調
温ダクト、12…渡し材、13B…脚部、14…バッフ
ルプレート、16…調温風、18…伸縮自在部、20…
送気用パイプ、20a…ガス孔、22…渡し材、24…
バッフル部、32…渡し材、34…バッフルプレート、
42…渡し材、44…バッフル部、52…渡し材、53
a…凹部、54…バッフルプレート(バッフル部)。

Claims (6)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数設けた孔のそれぞれに植鉢を嵌め込
    む水平な姿勢のストリップが上部に挿通されると共に、
    前記植鉢の下方の底部に養液を流通させる複数本のトラ
    フが平行にかつ同一面に配列されている水耕栽培施設に
    おいて、 一定間隔をおいて配置される前記各トラフの両外側面に
    は、該トラフの延びる方向に沿って上方へ開口する連続
    した受け溝が形成され、 隣りあうトラフの対向する面における上記受け溝には、
    左右に設けた脚部を嵌着させる渡し材が掛け渡され、 該渡し材の中央部位には、トラフの下方から上昇する調
    温風を各トラフ方向へ偏流させるバッフル部がトラフの
    長手方向に延びて形成されていることを特徴とするトラ
    フ式水耕栽培装置。
  2. 【請求項2】 前記渡し材は、任意距離を隔てた受け溝
    に配置するための幅変更用の伸縮自在部が中央部位に形
    成されていることを特徴とする請求項1に記載されたト
    ラフ式水耕栽培装置。
  3. 【請求項3】 前記バッフル部は、上方に開いたアング
    ル形状となっていることを特徴とする請求項1に記載さ
    れたトラフ式水耕栽培装置。
  4. 【請求項4】 前記バッフル部には炭酸ガスなどを供給
    する送気用パイプが取り付けられ、該送気用パイプに
    は、前記トラフ方向へ炭酸ガスなどを噴出させるガス孔
    が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求
    項3のいずれかに記載されたトラフ式水耕栽培装置。
  5. 【請求項5】 前記渡し材には前記送気用パイプを嵌着
    させる凹部が中央に形成され、前記ガス孔は上記送気用
    パイプの側方に配置したバッフル部の下方に位置してい
    ることを特徴とする請求項4に記載されたトラフ式水耕
    栽培装置。
  6. 【請求項6】 多数設けた孔のそれぞれに植鉢を嵌め込
    む水平な姿勢のストリップが上部に挿通されると共に、
    前記植鉢の下方の底部に養液を流通させる複数本のトラ
    フが平行にかつ同一面に配列されている水耕栽培施設に
    おけるトラフの構造において、 上記各トラフの両外側面には、該トラフの延びる方向に
    沿って上方へ開口する連続した受け溝が形成されている
    ことを特徴とする水耕栽培用トラフ。
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