JP2560164B2 - ポリビニルアルコールキセロゲルの製造方法及びこれを用いた眼内レンズ - Google Patents

ポリビニルアルコールキセロゲルの製造方法及びこれを用いた眼内レンズ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は眼内レンズ用のポリビニ
ルアルコール(以下PVAと略記する)キセロゲルの製
造方法、このキセロゲルを用いた眼内レンズ前駆体及び
眼内レンズ、並びにそれらの製造方法に関する。特に本
発明は、生体適合性に優れた特性を有し、切削・研磨加
工性に優れた眼内レンズ製造用に適したPVAキセロゲ
ルに関する。
【0002】
【従来の技術】眼内レンズは、白内障のため水晶体を摘
出した目の視力回復手段として用いられるものであり、
現在種々の材質のものが知られている。このうち、PV
Aを用いる眼内レンズの製造方法としては、例えば、特
開平1−295808号公報に開示された方法がある。
この方法は、PVAを混合溶媒に溶解して得られた濃度
2〜30重量%のPVA溶液を眼内レンズ形状の鋳型内
に注入後、常温以下の温度(例えば−20℃)で結晶化
させて眼内レンズを得る、いわゆるキャスト法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法により得られる眼内レンズの面精度は十分満足でき
るものではなかった。
【0004】すなわち、上記の方法におけるPVA濃度
は、キャスト法に用いるには大きく、そのためPVA溶
液の粘度も大きくなる。その結果、PVA溶液の流動性
が低くなり、眼内レンズとして要求される精度の極めて
高い成形面を鋳型面から写し取ることはできない。ま
た、上記の方法では、PVA溶液が急激な冷却を受ける
ため、得られるPVAゲル眼内レンズと鋳型との収縮差
が大きくなる。その結果、得られる眼内レンズの成形面
の面精度は、眼内レンズとして十分満足できるものでは
なくなる。
【0005】さらに、上記の方法では、PVA溶液を常
温以下の温度で結晶化させるのみで、その後、PVAゲ
ルの結晶化度が高められていない。そのため、上記方法
により得られるPVAゲルに対して切削・研磨等の通常
の機械加工を施すことが困難であった。
【0006】ところで、特開昭63−23126号に、
PVAゲルの結晶化度をアニール処理することにより高
められることが示唆されている。しかし、PVAゲルの
脱溶媒が難しく、脱溶媒が不完全なゲルをアニール処理
すると発泡してしまい、透明性が損なわれてしまう。
【0007】そこで本発明の目的は、切削・研磨加工が
可能な高硬度のPVAキセロゲルの製造方法を提供する
ことである。
【0008】さらに本発明の目的は、十分な面精度を有
する眼内レンズとその前駆体及びそれらの製造方法を提
供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、水と有機溶媒
の混合溶媒中、常温以下の温度で結晶化させたポリビニ
ルアルコールゲルを、ポリビニルアルコールと非相溶性
であり、かつ上記混合溶媒と相溶性の溶媒と混合するこ
とにより、ゲル中に含まれる前記混合溶媒をゲル中から
除去して得られたポリビニルアルコールキセロゲルを、
アニール処理することを特徴とするポリビニルアルコー
ルキセロゲルの製造方法に関する。
【0010】さらに本発明は、光学部及び1又は2以上
の支持部からなる眼内レンズ前駆体であって、上記光学
部が前記製造方法により得られたポリビニルアルコール
キセロゲルからなることを特徴とする眼内レンズ前駆体
及びこの前駆体を水和膨潤させた眼内レンズに関する。
【0011】なお、本発明の「眼内レンズ前駆体」は、
通常、単に「眼内レンズ」と呼ばれることもある。しか
し、本明細書においては、「眼内レンズ前駆体」は、基
本的に、眼内レンズの形状に成形されているが、未含水
状態で水和膨潤されていない状態のもの、すなわち水和
膨潤によって眼内レンズとなる前段階のものを意味す
る。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいては、先ず、水と有機溶媒との混合溶媒にPVAを
溶解してPVA溶液を調製する。
【0013】PVAとしては、ケン化度95モル%以
上、好ましくは97モル%以上、とくに99モル%以上
のものが望ましい。これより低いケン化度ではゲル強度
が軟弱になる傾向がある。PVAの平均重合度は粘度平
均で1000〜2000が好ましく、特に1750前後のものが
望ましい。1000未満のものでは、得られるゲルの強度が
低下し、2000を超えるものでは、PVAの溶解が難し
く、またPVA溶液の粘度が大きくなるため、例えば、
結晶化容器内に注入する操作が難しくなる。さらに結晶
化、脱溶媒及びアニール処理を経て得られたものの機械
加工性も悪くなる傾向がある。
【0014】PVAを溶解するために用いられる有機溶
媒としては、水と親和性が良くて任意の割合でよくまざ
るものであればとくに限定されない。好ましい有機溶媒
の例としては、ジメチルスルホキシド、グリセリン、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレ
ングリコール、ジメチルホルムアミド、メチルアルコー
ル、エチルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラ
ン、アミノエタノール、フェノール、イソプロピルアル
コール、N−メチル−2−ビニルピロリドン、1,3−
ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。こ
れら溶媒は二種以上の混合物であっても良い。上記有機
溶媒のなかでも特に、PVAに対する溶解度や水との混
合割合と凝固点降下の関係等から、ジメチルスルホキシ
ドを使用するのが望ましい。
【0015】有機溶媒と水との混合割合は任意に選択出
来る。通常水対有機溶媒の比は90:10〜10:90
(重量比)から選ばれるが、70:30〜30:70
(重量比)がゲルの強度と透明度の点で望ましい。
【0016】PVA溶液の濃度としては、目的とする強
度と含水率に応じて10〜40重量%の範囲にするのが
好ましい。このような濃度の溶液の調製は、一般にPV
Aを加熱溶解させることによって行うことができる。そ
のための方法としては、単に攪拌下での加熱でも良い
し、あるいはオートクレープや電子レンジを使用して溶
解させても良い。
【0017】次に完全に溶解させたPVA溶液をPVA
ゲルの結晶化容器に注入する。結晶化容器としては、例
えば後の加工等の容易さを考慮してディスク形状、プレ
ート形状、ボタン形状又はブロック形状等のPVAゲル
成形体が得られるものを用いることが適当である。
【0018】例として図1に示すような治具1を用いる
こともできる。治具1は、2枚のプラスチック製平板1
1及び12を上下に重ね合わせたものである。平板11
は、図2に示すように、所望する眼内レンズ前駆体より
も、それに切削・研磨加工を施すに適当な範囲内で大き
い、例えば円筒状の貫通部13を有する。また、平板1
1の下表面21及び平板12の上表面22は、実質的に
すきまなく重ね合わせることができる程度に平坦に加工
されていることが好ましい。そして、平板11に形成さ
れた貫通部13の壁面14と平板12の上表面22とに
より形成された空間部にPVA溶液を注入する。また図
3に示すように、貫通部33を平板31に複数設けるこ
とにより、同時に複数のPVAゲルディスクを作成する
ことが可能となる。そのため、平板31には複数個の貫
通部33を形成する方がより好ましい。
【0019】次に、前記結晶化容器内に注入されたPV
A溶液を、常温以下の温度に放置することにより、結晶
化させてPVAゲルを得る。その場合、温度が低ければ
低いほど短時間で結晶化が完了すると同時に、微結晶の
サイズも小さくなるので透明性が更によくなる。従っ
て、−10℃以下、特に−20℃前後で約1〜24時間
放置して結晶化を行うのが好ましい。
【0020】次いで、結晶化完了後のPVAゲルを脱溶
媒処理液中に浸漬し、PVAの溶解に用いた前述の混合
溶媒をゲル中から除去する。
【0021】混合溶媒の除去は、乾燥だけでは実質的に
不充分であり、本発明では、脱溶媒処理を行い、次いで
乾燥処理を行う。
【0022】脱溶媒処理液は、PVAとは非相溶性であ
り、即ちPVAに対しての貧溶媒であり、かつ前記混合
溶媒と相溶性の溶媒である。PVAとの相溶、非相溶性
は、溶解性パラメーター(SP値、δ値)を用いて評価
することができる。PVAのSP値(δ2 )は23.4
であるため、この値に近いSP値(δ1 )を有する溶媒
はPVAと相溶性であり、逆に23.4との差が大きい
SP値(δ1 )を有する溶媒は、PVAと非相溶性であ
ると推測される。それ故、SP値(δ1 )23.4の水
はPVAと相溶性である。
【0023】本発明で用いる脱溶媒処理液は、前述した
ようにPVAとは非相溶性であり、かつPVAゲル中の
混合溶媒とは相溶性の溶媒であるため、10〜15のS
P値(δ1 )を有する有機溶媒が、PVAから前記混合
溶媒を除去しやすいという観点から好ましい。そのよう
な脱溶媒処理液として好ましい例としては、エタノール
(SP値(δ1 ):12.8)、メタノール(SP値
(δ1 ):14.5)、ジメチルホルムアミド(SP値
(δ1 ):12.1)などが挙げられる。また、これら
の溶媒は二種以上混合して用いてもよい。本発明におい
ては、エタノールが特に好ましい。
【0024】これらの有機溶媒中にPVAゲルを浸漬
し、脱溶媒することにより、後述する乾燥処理の工程に
おいて、PVAゲルの表面及び内部から前記の混合溶媒
及び脱溶媒処理液の除去を完全に行うことが可能とな
る。尚、上記脱溶媒は、貧溶媒であるエタノール等の中
に混合溶媒をその内部に包含したPVAゲルを入れると
PVA分子鎖が縮み、しかもゲル中の混合溶媒はエタノ
ール等と相溶性であるためにゲルの外部に溶出し、ゲル
が収縮して起こるものと考えられる。
【0025】次に、前記処理により脱溶媒されたPVA
ゲルを乾燥処理することにより、PVAゲルの表面及び
内部から有機溶媒の放出・除去を完結させる。その乾燥
処理手段としては、風乾だけでもよいが、真空乾燥を併
用することにより、乾燥時間を短くすることができる。
30〜60℃中で真空乾燥するのが好ましい。この乾燥
処理中に結晶化が若干進むため、機械的強度や透明性が
それだけ向上し、また温度を上げることによってもさら
に結晶化度を高めることもできる。
【0026】次に、前記の乾燥処理されたPVAゲルに
対してアニール処理を行う。アニール処理は、油浴中又
は熱風乾燥機中において100〜150℃の条件下で行
うのが好ましい。100℃未満では結晶化が進行しにく
く、150℃を超えるとキセロゲルが黄変することがあ
る。熱酸化の防止と熱伝導効率の良さから、シリコーン
油を浴液とする油浴中でのアニール処理が望ましい。ア
ニール処理を行うのは、PVAキセロゲルの結晶化度を
高めるためであり、その結果、軟化点、硬度等の機械加
工性に関する物性が向上し、切削・研磨加工が容易に行
えるようになる。
【0027】以上の各工程を経ることによりPVAキセ
ロゲルが得られる。
【0028】なお、PVAゲルの結晶化度が高くなると
含水率は逆に低くなる。一方、眼内レンズの厚さの範囲
は、それを眼内の所定の位置に移植した場合の人体工学
的な制約から、必然的に定まる。また、眼内レンズの屈
折率は、眼内レンズに要求される光学的特性により、そ
の範囲が定まる。それ故、眼内レンズに必要とされる厚
さと屈折率とを考慮すると、PVAゲルの含水率は20
〜60%に調整されるのが好ましい。従って、PVAゲ
ルの結晶化度は、キセロゲルの機械加工性に加えて上前
記含水率範囲を満足するように調整されるのが好まし
い。従って、アニール処理条件も、それに合わせて適宜
設定されるのが好ましい。
【0029】本発明は、光学部及び少なくとも1つ、通
常は2つの支持部からなり、上記光学部が前記PVAキ
セロゲルからなる眼内レンズ前駆体を包合する。
【0030】次に、前記のPVAキセロゲルから眼内レ
ンズ前駆体を製造する方法について説明する。
【0031】一体成形の支持部と光学部とを有する眼内
レンズ(以下、ワンピース眼内レンズという)の形状の
眼内レンズ前駆体を得ようとする場合、先ず、ミーリン
グマシン(フライス旋盤)を用いて、前記キセロゲルを
眼内レンズの略平面形状を有するように切り抜き加工す
る。次いで、その上面と下面をNC旋盤(数値制御旋
盤)を用いて旋削し、その後、タンブル研磨(バレル研
磨)を行うことにより、ワンピース眼内レンズ前駆体が
得られる。その後、支持部のみをホットプレスを用いて
アニール処理することにより、支持部に所望の柔軟性、
形状記憶性をもたせることも可能である。
【0032】非一体成形の眼内レンズ(以下、ツーピー
ス眼内レンズという)の形状の眼内レンズ前駆体を得よ
うとする場合、前記キセロゲルを旋盤加工することによ
り光学部を作成した後、その表面を研磨することにより
良好な光学面に仕上げる。研磨には、例えばオリーブ油
等の疎水性の強い液体中に研磨剤を分散させたものが用
いられる。その後、前記光学部に、光学部と一体となる
ように支持部を付設する。支持部としては、直径0.1
0〜0.30mmのPVA繊維又はポリプロピレン繊維が
好ましく用いられる。光学部に支持部を付設する方法と
しては、例えば、熱融着、レーザー融着等の公知の方法
が使用可能である。
【0033】次いで、前述のように作成された眼内レン
ズ前駆体は、含水されて水和膨潤することにより、眼内
レンズとして完成される。その1つの態様としては、膨
潤化処理液中に前記眼内レンズ前駆体を浸漬して含水さ
せ、水和膨潤した眼内レンズを眼内の所定の位置に移植
するものである。膨潤化処理液としては、例えば生理食
塩水、等張緩衝液、人工房水液、眼内灌流液等を使用す
ることができる。
【0034】別の態様は、眼に形成された切開口より眼
内へ前記の眼内レンズ前駆体を挿入し、眼内の所定の位
置にそれを設置して、眼内に存在する液体(主に、房水
等の水性体液等)により含水されて水和膨潤することも
できる。眼内の体液により直接水和膨潤させて処方され
た通りの眼内レンズを眼内の所定の位置に移植するもの
である。この第2の態様においては、前記眼内レンズ前
駆体は眼内で12〜16時間経過した後、平衡含水状態
に達し、安定した眼内レンズとなる。そして、この第2
の態様によれば、含水前の小さい寸法の状態の眼内レン
ズ前駆体で眼内へ挿入できるため、切開口を通常の2/
3〜5/6程度に小さくすることが可能である。
【0035】なお、本発明の眼内レンズ及び眼内レンズ
前駆体は、眼内へ挿入・移植される前に、滅菌処理を施
されるのが好ましい。本発明により得られるPVAのワ
ンピース眼内レンズ及びその眼内レンズ前駆体、並びに
支持部としてPVA繊維を用いたツーピース眼内レンズ
及びその眼内レンズ前駆体は、真空中又は水中、あるい
は窒素又はアルゴン等の不活性気体雰囲気中において、
例えばコバルト60等の放射線物質から発生するγ線、
又は加速による電子線を照射することによって滅菌処理
を行なうことができる。特にγ線滅菌は、例えばガス滅
菌法に比べて、透過力がはるかに強く、眼内レンズ又は
眼内レンズ前駆体全体に均一な滅菌効果が得られるとと
もに、眼内レンズ又は眼内レンズ前駆体を密封した状態
で滅菌できるため極めて簡便であるという利点を有して
いる。γ線出力源としては、人工的に作られたアイソト
ープを放射線源とするものが挙げられる。具体的には、
例えば、コバルト60、セシウム137等があり、実用
的にはコバルト60の照射装置を使用するのが好まし
い。またγ線の照射線量としては、材料劣化を起こすこ
となく、確実な滅菌を行なうことが可能であることか
ら、2〜3MRadが好ましい。
【0036】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0037】実施例1(PVAキセロゲルの製造) (PVAの溶解)重合度1750、ケン化度99.9モ
ル%のPVA20gを80gの80重量%ジメチルスル
ホキシド水溶液に加え、窒素雰囲気下、140℃で2時
間、三口フラスコ内にて攪拌しながら溶解して均一な溶
液を得た。
【0038】(ディスク状PVAゲルの作成)図3に示
す様な12mmφの貫通孔を16個有する厚さ4mmの90mm
×90mmのポリプロピレン製の平板とこの平板の下にこ
れと同材質、同寸法の貫通孔を有さない平板とを重ねあ
わせ、平板のはじ(四隅)をバネクランプでとめ固定
し、これをディスク状ゲル作成用ジグとした。60〜8
0℃まで放冷した前記PVA溶液をこのジグの12mmφ
の孔に注入し、シールした後、フリーザー中にて、−2
0℃、1時間保持することによりPVA溶液を結晶化さ
せた。ついでジグのバネクランプを除き、2枚のポリプ
ロピレン製平板をはがすと12mmφの貫通孔に直径12
mm厚さ4mmのディスク状PVAゲルが作成された。この
ゲルは指などで軽く押出すことなどによって、容易にこ
のプラスチック平板より脱離出来た。
【0039】(PVAゲルの脱溶媒処理)得られたPV
Aゲルをエタノール中に浸漬して、攪拌下、3〜5日間
放置した。PVAゲル中の水/ジメチルスルホキシドの
混合溶媒はエタノール中に放出され、ゲル中から混合溶
媒は完全に除去された。
【0040】(PVAゲルの乾燥処理)脱溶媒処理によ
り水/ジメチルスルホキシドの混合溶媒の除去が完了し
たPVAゲルを、風乾一日放置後、真空乾燥機内で40
℃に保ち加熱真空乾燥を24時間行った。この真空乾燥
により、PVAゲルの表面及び内部からエタノールは完
全に放出・除去され、PVAゲルは溶媒を実質的に含ま
ないキセロゲルになった。そして、同時にゲルの結晶化
が進行した。
【0041】(アニール処理)機械加工性を向上させる
ために、結晶化度を高める目的でシリコーンオイル中で
100℃、1時間のアニール処理を行った。
【0042】アニール処理によるPVAキセロゲルの物
性変化、即ち機械切削性が向上することを確認するた
め、アニール処理前後のPVAキセロゲルの軟化点及び
デュロメータ硬度を測定した。TMA熱機械分析による
軟化点測定の結果を図4に示す。
【0043】図4の軟化点測定のチャートから明らかな
ように、アニール処理の前後で、PVAキセロゲルの軟
化点は約40℃以上も高くなった。
【0044】また、ショア式デュロメータ硬度計(Zwic
k 社製 Test Stand 7206)によりデュロメータ硬度(H
DD)を測定した(JISK7215)が、アニール処
理したPVAキセロゲルは66.3、未アニール処理
(乾燥処理後)のPVAキセロゲル(比較例1とする)
は59.2であり、アニール処理によるPVAキセロゲ
ルの硬度の向上も顕著であった。
【0045】実施例2及び実施例3 実施例1におけるアニール処理の温度条件を110℃及
び130℃とし、それ以外は実施例1と同様の方法によ
り、実施例2及び実施例3の各例のアニール処理したP
VAキセロゲルを作成した。
【0046】これら実施例2及び実施例3のPVAゲル
ディスクについて、実施例1と同様にしてデュロメータ
硬度(HDD)を測定した。
【0047】また、各PVAゲルディスクについて、等
張緩衝液中に24時間浸漬後の重量と浸漬前の重量とを
測定して含水率を求めた。
【0048】なお含水率は、水を含んだ状態での重量に
対する含まれている水の重量比であり、次の式で表され
る。
【0049】比較のため、実施例1の製造方法におい
て、脱溶媒処理後(未乾燥処理)のPVAゲルディスク
(比較例2とする)及び前述の比較例1すなわち乾燥処
理後(未アニール処理)のPVAゲルディスクの各々に
ついても、デュロメータ硬度(HHD)及び含水率を測
定した。
【0050】以上の実施例2と3及び比較例1と2のデ
ュロメータ硬度(HHD)及び含水率を、実施例1のそ
れとともに表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】表1より明らかなように、アニール処理を
施さない比較例1及び比較例2のデュロメータ硬度はい
ずれも60以下であるのに対し、アニール処理を施した
実施例1、実施例2及び実施例3では、いずれもデュロ
メータ硬度が上昇しており、またアニール処理の温度を
上げるにしたがって、硬度の向上が顕著となった。
【0053】なお、比較例2のデュロメータ硬度47.
6という値は、本来デュロメータ硬度(HDA)で測定
するのが望ましいとされているエラストマー(軟質プラ
スチック)の数値領域に含まれている。このことより比
較例2は、硬質プラスチックではない軟質プラスチック
に属するものであり、機械加工に適さないことは明らか
である。また、デュロメータ硬度59.2の比較例1
は、眼内レンズの製造において通常用いられる方法で施
削した場合、施削そのものは可能であったが、その施削
面の状態は悪く、研磨しても適当な成形面は得られなか
った。
【0054】このことより、PVAゲルを機械加工して
眼内レンズを得るためには、少なくとも60以上のデュ
ロメータ硬度(HDD)が実用上必要となると考えられ
る。そして、そのためにはアニール処理が必須である。
【0055】実施例4(眼内レンズ前駆体(ツーピー
ス)の製造) 実施例1で得られたPVAキセロゲルディスクを、R旋
盤の切削用ジグに固定し、光学部径4.8mmのバイコン
ベックス両凸形状のレンズを切削した。ついでオリーブ
油にアルミナ等の微粒子を分散させたものを研磨剤とし
て球面研磨して良好な光学面を有する眼内レンズ光学部
を作成した。更に、得られた眼内レンズ光学部に精密ド
リリングマシンによりループホール作成後、ループ形状
に熱成形されたポリプロピレン繊維(直径0.15mm)
を挿入して、熱融着することによって支持部であるルー
プを固定した。
【0056】また、ポリプロピレン繊維のかわりにPV
A繊維(直径0.15mm)をループ形状に熱成形したも
のを同様にとりつけても、光学部と相溶性がいいため強
固に接合できた。
【0057】(ツーピース眼内レンズの製造方法)上記
で得られた眼内レンズ前駆体を等張緩衝液中に浸漬し
た。浸漬後15時間以内に平衡含水状態に達し、浸漬前
4.8mmの光学部が6.0mmまで膨張して所望の眼内レ
ンズが得られた。この眼内レンズの含水率は45%であ
った。
【0058】実施例5 (ワンピース眼内レンズ前駆体の製造)実施例1で用い
たジグの貫通孔の径を25mmとしたジグを用いて、実施
例1と同様にして、直径16mm、厚さ3mmのディスク状
PVAゲルを作成した。それを実施例1と同様に、脱溶
媒処理、乾燥処理、アニール処理の各工程を経た後、眼
内レンズの略平面形状を有するようにミーリングマシン
(フライス旋盤)を用いて切り抜き加工した。次いで、
その上面と下面をNC旋盤を用いて旋削し、その後、タ
ンブル研磨(バレル研磨)を行ってワンピース眼内レン
ズ前駆体が得られた。
【0059】(ワンピース眼内レンズの製造)上記で得
られた眼内レンズ前駆体を等張緩衝液に浸漬した。浸漬
後15時間以内に平衡含水状態に達し、浸漬前4.8mm
の光学部が6.0mmまで膨張して所望の眼内レンズが得
られた。この眼内レンズの含水率は45%であった。
【0060】(光学的特性の評価)実施例4及び実施例
5の眼内レンズについて、光学顕微鏡にて20倍に拡大
して表面状態を観察した。また、眼内レンズメーター
(ニデック社製)により、レンズパワー及び解像力を測
定した。
【0061】これら実施例の眼内レンズはいずれも極め
て良好なレンズ表面を有していることが判明した。ま
た、いずれも極めて優れた解像力が得られ、かつ所望の
レンズパワーも得られていることも判った。
【0062】これに対して、比較のため特開平1−29
5808号公報に開示されている方法により作成した眼
内レンズ(比較例3とする)では、目視においてミミズ
状のしわ、凹凸の縞模様が観察され明らかにレンズとし
ての性能に劣っていた。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、生体適合性及び機械加
工性に優れたPVAキセロゲルを提供することができ
る。さらにこのPVAキセロゲルを切削研磨することに
よって容易に、十分な面精度を有する眼内レンズを作成
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PVAゲル成形容器の斜視図である。
【図2】PVAゲル成形容器を分解した所を示す斜視図
である。
【図3】PVAゲル成形容器の多数の貫通部を有する平
板の平面図及びA−A' 断面図である。
【図4】TMA熱機械分析による軟化点測定結果であ
る。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水と有機溶媒の混合溶媒中、常温以下の
    温度で結晶化させたポリビニルアルコールゲルを、ポリ
    ビニルアルコールと非相溶性であり、かつ上記混合溶媒
    と相溶性の溶媒と混合することにより、ゲル中に含まれ
    る前記混合溶媒をゲル中から除去して得られたポリビニ
    ルアルコールキセロゲルを、アニール処理することを特
    徴とするポリビニルアルコールキセロゲルの製造方法。
  2. 【請求項2】 光学部及び1又は2以上の支持部からな
    る眼内レンズ前駆体であって、上記光学部が請求項1記
    載の製造方法により得られたポリビニルアルコールキセ
    ロゲルからなることを特徴とする眼内レンズ前駆体。
  3. 【請求項3】 眼内レンズ前駆体にγ線又は電子線を照
    射して滅菌した請求項2記載の眼内レンズ前駆体。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の製造方法により得られた
    ポリビニルアルコールキセロゲルを眼内レンズの形状に
    切削し、その表面を研磨することを含む光学部及び1又
    は2以上の支持部からなる眼内レンズ前駆体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の製造方法により得られた
    ポリビニルアルコールキセロゲルを眼内レンズ光学部の
    形状に切削し、その表面を研磨して得られた光学部に、
    眼内レンズ支持部を付設することを含む光学部及び1又
    は2以上の支持部からなる眼内レンズ前駆体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項2記載の眼内レンズ前駆体を膨潤
    化処理液で水和膨潤させた眼内レンズ。
  7. 【請求項7】 眼内レンズにγ線又は電子線を照射して
    滅菌した請求項6記載の眼内レンズ。
  8. 【請求項8】 請求項3記載の眼内レンズ前駆体を眼内
    の体液で水和膨潤させた眼内レンズ。
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