JP2558858B2 - 中空部材の鍛造装置及びその方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、スーパーアロイ又はチタニウム合金等の
高張力部材を使用した中空部材の鍛造に関するものであ
り、特に、この発明は、複数の鍛造工程においてプレス
機からワークピースを取り除く必要のないダイ構造を使
用する中空部材の鍛造方法及びその装置に関するもので
ある。

［従来の技術］ 一般に、ガスタービンエンジンにおいては、種々の構
造を有する中空部材が使用されている。これらガスター
ビンエンジンの各構成部品は、その使用下での温度及び
作用応力に対抗できる、例えば、スーパーアロイ又はチ
タニウム合金等の高張力、耐熱部材を用いて製作するこ
とが望ましい。また、使用温度又はその作用応力に対し
て十分に耐久性ある構成部品を製作するためには、鋳造
よりもむしろ熱間加工により製作することが好ましい。
しかし、この材料は、コスト面又はその加工性において
大きな問題がある。したがって、できる限り最終製品に
近い、つまり、仕上げ加工の不要な形状に成形可能な鍛
造方法が望まれている。

これらスーパーアロイ又はチタニウム合金に適用可能
な鍛造方法としては、米国特許第3,519,503号、第3,69
8,219号、第4,265,105号及び第4,312,211号等に開示し
たものがある。

［発明が解決しようとする課題］ 現在の鍛造技術においては、例えば、シャフト等のタ
ービンエンジンの均一形状の中空部材から成る構成部品
等は、製作上に種々の問題があり、その技術開発が望ま
れている。

したがって、この発明は、スーパーアロイ又はチタニ
ウム合金等の高張力合金よりシャフト等の中空部材を製
作する鍛造方法を提供することを目的とする。さらに、
この発明は、鍛造工程において、プレス機からワークピ
ースを取り除く必要のないダイ構造及び特有のプレスを
使用して中空部材を形成する方法を提供することを目的
とする。

［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決するためにこの発明によれば、ポンチ
体とダイとの間に被成形物を配置して鍛造することによ
り中空部材を形成する鍛造装置であって、前記ポンチ、
ダイ及び被成形物を所定温度まで加熱する加熱手段を有
し、前記ポンチ体は、所定形状の中空キャビティを有す
るとともに該キャビティ内を摺動可能な摺動体を備え、
該摺動体はポンチの一端面とともに前記被成形物を鍛造
する略平坦なポンチ面を形成して第１ポンチとして機能
するとともに、開口した中空キャビティを形成するよう
に摺動して第２ポンチとして機能し、前記ダイは前記第
１ポンチとともに前記被成形物を鍛造して中間体を形成
する凹部を有し、該凹部は前記第２ポンチが進入した時
に所望する形状の中空部材を形成するように前記中間体
の前記中空キャビティ内への流動を規制する凸状のマン
ドレルを備えた中空部材を形成する鍛造装置が提供され
る。

また、前記ポンチ、摺動体及びダイを酸化から保護す
る手段を設けることが好ましい。

さらに、この発明の第２の発明によれば、低強度及び
高延性を有するように形成された被成形物としてのスー
パーアロイ又はチタニウム合金をポンチ及びダイ間に配
して中空部材を形成する鍛造方法であって、略平坦なポ
ンチ面を有するポンチと、前記ダイに形成された前記ポ
ンチと嵌合する凹部及び該凹部内に設けられた凸状マン
ドレル間に前記被成形物を配するとともに、前記凹部の
略中心付近から外側へ放射状に流動するように該被成形
物を鍛造して中間物を形成し、前記凹部周辺から前記マ
ンドレルに沿って所定形状の中空部を有するポンチ中空
部内へ放射状に流動するように前記中間物を鍛造して所
望する中空部材を形成する鍛造方法が提供される。

［作 用］ 上記した課題を解決する手段は以下のように作用す
る。

ダイとポンチ間に被成形物を配置し、これらの少なく
ともいずれか一方を他方に対して押圧して鍛造し、ダイ
凹部内において中間物を成形する。次に、さらに、ポン
チをダイ凹部に押圧挿入して中間物をポンチに成形され
た中間部内へ流動させる。この時、ダイ凹部内に設けら
れた所定形状の凸状マンドレルが所定形状の中空部を形
成するように中間物のポンチ中空部内への流動を規制す
る。

［実 施 例］ 以下、この発明の実施例を説明する。

この発明に係る鍛造方法においては、まず、低強度と
高延性を有する材料が必要とされる。この材料の成形に
関しては、米国特許第3,519,503号に開示されているも
のがあり、好適な形状でダイを介してパウダービレット
成形体を押し出し成形し、その材料の標準再結晶温度以
下約450゜F以内で約4:1好ましくは6:1の圧下を施す。こ
の工程により、非常に微粒子な材料が得られる。この平
均粒子サイズは約35ミクロンである。特に、再結晶温度
以下約350゜F以内での鍛造は、低強度及び高延性特性を
もたらす。

あるいはまた、約−270US標準シブ（Sieve）又はそれ
以上細かい微粉度を有するパウダーを閉塞された容器内
に入れ、再結晶温度以下において均衡に熱間プレスして
必須な特性である高延性と低強度を有する微粒子結晶の
材料を形成することができる。また、押し出し加工作業
は、例えば、米国特許第4,574,015号及び第4,579,602号
に開示されているような材料を用いて鋳造により行うこ
とができる。

この発明が適用可能な典型的な材料としては、表１に
示したものがあり、その基準成分を示す。また、表２に
おいてはこれら材料の再結晶温度を示す。

鍛造に際しては、まず、被成形物として円筒形のビレ
ット10を使用する。このビレットは、第１図に示す配置
によりポンチ20及びダイ30により加工される。ポンチ20
は、そのポンチ内に形成された中空のキャビティ26内に
おいて摺動可能な摺動体22を有している。この摺動体22
は、ポンチ面24と同一平面上に位置することができるよ
うに構成されている。つまり、摺動体22をポンチ面22と
同一平面上に固定することにより、このポンチ面ととも
に、平坦な面を形成することができる。したがって、一
般的な平面状のダイと同様な鍛造が可能になる。また、
この摺動部22は、キャビティ26内へ引き上げられること
により、ポンチ20は、中心に開口したキャビティを有す
るポンチとして機能することができる。ダイはその中心
部においてマンドレル32を有しており、このマンドレル
の直径はポンチのキャビティ直径より小さくなってい
る。すなわち、このマンドレルの直径は、最終製品の中
空部の内径を決定するものであり、一方、ポンチのキャ
ビティ直径は、製品の外径を決定する。

上記したポンチ及びダイ構造によれば、鍛造中に金属
の流れを逆転させる成形作業をポンチ及びダイを取り替
えることなく一回のプレス作業において行なうことがで
きる。ただし、上記した実施例に限られるものではな
く、平坦な端面を有するポンチと中空部を有する二つの
ポンチを使用することも十分可能である。

次に、図面に基づいて鍛造工程を説明する。

第１図は、ポンチ20とダイ30の間にビレット10を配置
させた状態を示している。このポンチ20は、摺動体22を
その底部まで十分に延ばして固定し、平坦なポンチ面24
を形成するとともに、ビレット10の一端が摺動体22の底
部に位置するように配置されている。次に、ポンチ20が
ダイ30上に下降すると、低強度及び高延性特性を有する
ビレットワークピース10が矢印Ａで示す方向へ流動す
る。つまり、半径方向外側へ押し出されて、ダイ30に形
成された凹部内に入り、ディスク状の中間物40が成形さ
れる。この中間物40の中心部には、第２図に示すよう
に、マンドレル32の上面及び摺動体の底面によって圧下
される肉厚の薄い領域が形成される。

次に、第３図に示すように、摺動体22は固定が解除さ
れ、（すなわち、自在な動きが許容されて）ポンチ20内
上方に引き上げられて、キャビティ26が開口されるとと
もに中空のポンチ20がダイ30内に押し込まれる。この
時、中間物40は矢印Ｂで示すようにキャビティ内へ押し
込まれる。つまり、マンドレル32周辺の上方に流動し、
ワークピースに中空キャビティが形成されることにな
る。このマンドレル32は、図示するように、中間物40の
流動をより容易に許容するように円錐台の形状となって
いるが、テーパ面を有さない円筒形状とすることも可能
である。

したがって、最終製品は上端に肉厚の薄いウェブを有
して一端を閉じた中空円筒型となり、その外径寸法はポ
ンチ20のキャビティ26の寸法と同等の寸法となるととも
に、その中空キャビティ内径はマンドレル32の上面外径
と同等となる。

上記した成形工程は、高温において成形する必要があ
り、さらに、低強度及び高延性を有する部材を成形する
ために高圧力が付加されるため、実際的なダイ材料とし
てはTZMモリブデン等のモリブデンをベースとしたもの
等が有用であり公知である。このようなモリブデンをベ
ースとした材料は、非常に酸化に影響を受けやすく、し
たがって、鍛造作業は高真空状態又は不活性あるいは保
護雰囲気の下で行う必要がある。さらに、ポンチ及びダ
イに対してワークピースが摩損したり固着したりするた
めに、押し出し時にはワークピース、ポンチ及びダイ間
に潤滑油を必要とする。好適な潤滑油としては、窒化ホ
ウ素等があり、ダイ、ポンチ及びワークピース上に水溶
性の窒化ホウ素懸濁液をスプレーによて塗布することが
可能である。さらに、この潤滑油に関しては米国特許第
３、780、553号に開示されているものがある。

次に、好適な具体例を説明する。

まず、高さ６インチ、直径４インチの円筒形のビレッ
トとしてIN100の超化塑性ワークピースを使用し、TZMモ
リブデンから成るダイ上に配置する。このダイは直径が
６インチ、深さが８インチの凹部を有するとともに、こ
の凹部には直径が２インチ、高さが２インチの突出した
マンドレルをその中央部に形成した構成となっている。
また、ポンチは直径６インチのTZMモリブデンから構成
されており、ダイ凹部と嵌合するように構成されてい
る。さらに、このポンチは直径４インチの中空キャビテ
ィを有しており、このキャビティ内を摺動可能な直空４
インチの摺動体を備えている。この摺動体は、キャビテ
ィ開口部まで引き下げて固定することにより平坦なポン
チ面を形成するように構成されている。また、キャビテ
ィ上部まで引き上げることにより開口したキャビティを
有するポンチとして機能する。

ワークピース、ポンチ及びダイは、1900゜Fから2000
゜Fまで加熱して真空内において加熱及び鍛造を行う。

最初に、摺動体は平坦なポンチ面を形成するように固
定する。次に、ワークピースをマンドレル上方からダイ
内に流動させて中間体を形成するようにダイ凹部に対し
て押し込む。その後、摺動体を引き上げてキャビティを
形成するとともに、ポンチをさらにダイ内に押し込む。
これにより中間体は、マンドレル周辺からポンチのキャ
ビティ内に流動して所望する中空部を有する中空部材を
形成する。その結果、内径２インチ、外形４インチ、に
肉厚１インチ及び高さ６いての円筒体が得られる。

上記した実施例及び図面等に基づいてこの発明の説明
を行ってきたが、発明の真の精神及びその範囲内に存在
する変形例は、すべて特許請求の範囲に含まれるもであ
る。

［発明の効果］ この発明の特有の効果としては、ポンチ内に開口した
中空部を形成するとともに、この中空部内に摺動可能な
摺動体を設けることにより開口部を閉塞して平坦なポン
チ面を形成するとともに、摺動体を引き上げることによ
り開口した中空部を有するポンチとして機能することが
できる。一方、ダイには凹部を形成するとともに、その
凹部内に凸部を形成し、鍛造工程において中空部材を成
形するように被成形物のキャビティ内への流動を許容す
るように機能するために、所望する形状の中空部を有す
る中空部材を鍛造することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、摺動体とともにフラットな底面を形成可能な
ポンチ及びダイ間に配置したビレットを示す説明図であ
る。 第２図は、第１鍛造工程後の中間製品を示す説明図であ
る。 第３図は、第２鍛造工程を示す説明図である。 第４図は、鍛造工程終了後の鍛造装置及び最終製品を示
す説明図である。

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ポンチ体とダイとの間に被成形物を配置し
   て鍛造することにより中空部材を形成する鍛造装置であ
   って、前記ポンチ、ダイ及び被成形物を所定温度まで加
   熱する加熱手段を有し、前記ポンチ体は、所定形状の中
   空キャビティを有するとともに該キャビティ内を摺動可
   能な摺動体を備え、該摺動体はポンチの一端面とともに
   前記被成形物を鍛造する略平坦なポンチ面を形成して第
   １ポンチとして機能するとともに、開口した中空キャビ
   ティを形成するように摺動して第２ポンチとして機能
   し、前記ダイは前記第１ポンチとともに前記被成形物を
   鍛造して中間体を形成する凹部を有し、該凹部は前記第
   ２ポンチが進入した時に所望する形状の中空部材を形成
   するように前記中間体の前記中空キャビティ内への流動
   を規制する凸状のマンドレルを備えたことを特徴とする
   中空部材を形成する中空部材の鍛造装置。
2. 【請求項２】前記ポンチ、摺動体及びダイを酸化から保
   護する手段を設けたことを特徴とする請求項第１項記載
   の中空部材の鍛造装置。
3. 【請求項３】低強度及び高延性を有するように形成され
   た被成形物としてのスーパーアロイ又はチタニウム合金
   をポンチ及びダイ間に配して中空部材を形成する鍛造方
   法であって、略平坦なポンチ面を有するポンチと、前記
   ダイに形成された前記ポンチと嵌合する凹部及び該凹部
   内に設けられた凸状マンドレル間に前記被成形物を配す
   るとともに、前記凹部の略中心付近から外側へ放射状に
   流動するように該被成形物を鍛造して中間物を形成し、
   前記凹部周辺から前記マンドレルに沿って所定形状の中
   空部を有するポンチ中空部内へ放射状に流動するように
   前記中間物を鍛造して所望する中空部材を形成すること
   を特徴とする中空部材の鍛造方法。