JP2558179B2 - クラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水中の全有機ハロゲン化合物の除去方法 - Google Patents

クラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水中の全有機ハロゲン化合物の除去方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はクラフトパルプ漂白工程排水からの全有機ハ
ロゲン化合物の除去方法に関する。更に詳しくは、クラ
フトパルプの漂白に塩素、ハイポクロライト、二酸化塩
素などを用いる漂白工程を有するクラフトパルプ漂白工
程排水中の全有機塩素化合物の除去方法に関する。
[従来の技術] クラフトパルプ化工程からの排水、特に漂白クラフト
パルプを製造している工場排水中には、塩素、ハイポク
ロライト、二酸化塩素などを用いるため、その排水中に
は有機ハロゲン化合物(有機塩素化合物)が含まれてい
る。このような塩素漂白設備を有する紙パルプ工場排水
の化学成分及びその排水の流れる河川、海域への影響に
ついては現在のところ十分には分かっていないが、今後
有機ハロゲン化合物の影響がはっきりしてきた場合に
は、全く塩素系の漂白剤を使用しない漂白法、あるいは
効率的な外部処理による河川への有機ハロゲン化合物の
流出を最低限におさえる方法が必要となる。
全有機ハロゲン化合物の発生量を少なくするための対
策としてパルプ蒸解時間の延長、酸素漂白の導入、塩素
に比べ有機ハロゲン化合物の生成が少ない二酸化塩素の
添加率を増やす等が実施されている。
また、排水中の有機ハロゲン化合物の処理法として、
限外濾過膜の利用、活性汚泥などの生物処理が良い等の
提案があるが、いずれの方法も多額の設備投資が必要で
あり、また運転経費が嵩み、既存設備では簡単に適用で
きないという問題点を有していた。
[発明が解決しようとする課題] かかる現状に鑑み、本発明者らは安価で且つ容易なク
ラフトパルプ排水中の有機ハロゲン化合物を除去する方
法を鋭意検討した結果、クラフトパルプ漂白工程の塩素
処理水と鉄屑を接触させ、鉄イオンを溶解せしめた排水
に、アルカリを添加してpHを8.0以上とすることが極め
て効果的であることを見出し、本発明に到達した。
従って、本発明の目的は安価で且つ容易な、クラフト
パルプ排水中の全有機ハロゲン化合物を除去する方法を
提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明はクラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水と鉄
屑を接触させ、鉄イオンを溶解せしめた排水にアルカリ
を添加してpHを8.0以上とすることを特徴とするクラフ
トパルプ漂白工程の塩素処理排水中の全有機ハロゲン化
合物の除去方法に関する。
本発明で対象とする排水にはクラフトパルプ漂白工程
の塩素処理排水の他にハイポクロライト処理排水、二酸
化塩素処理排水を含めても良い。鉄屑としてはダライ粉
といった旋盤屑などが利用可能である。
塩素処理排水と、鉄屑を接触させた時のpHは2.0以下
が望ましく、排水のpHが2.0以上の時には適時、硫酸、
塩酸等でpH調整する必要がある。
接触時間は、塩素排水のpH等とも関係するが排水中へ
の鉄イオンの溶出が100〜200ppmであることが好まし
い。アルカリ源としては、クラフトパルプ漂白工程のア
ルカリ処理排水も利用可能であり、また消石灰、炭酸カ
ルシウム、炭酸ソーダ、苛性ソーダ等が使用可能であ
る。
処理設備としては、クラリファイヤー、シックナーと
いった通常の排水処理用の設備が利用可能である。従来
のCOD(化学的酸素要求量)、色度、SS(懸濁物質)等
の除去を目的とした、凝集沈殿処理のpH域5.0〜7.5では
全有機ハロゲン化合物の除去は皆無ではないが除去率は
非常に悪い。しかし本発明の処理pHを8.0以上、望まし
くは10以上とすることにより極めて効果的に全有機ハロ
ゲン化合物が除去されることが判明した。以下、実施例
に基づき本発明を更に詳しく説明する。
実施例1 針葉樹クラフトパルプの塩素処理時の排水をダライ粉
1kgを入れた501ポリバケツに入れ、鉄イオンの溶出を行
った。
塩素処理排水のpHが2.3であったため、少量の硫酸を
添加してpH1.9とし、5分間に1回攪拌棒で攪拌し、20
分間保持した。この鉄イオンを溶出させた塩素処理排水
中の鉄イオンは、120ppmであった。またこの塩素処理排
水の全有機ハロゲン化合物は74ppmであり、CODは360ppm
であった。全有機ハロゲン化合物は三菱化成社製、測定
機TOX−10を用い、またCODはJIS法(JIS0102)によって
行った。
この鉄イオン溶出排水を用いて下記のテストを行っ
た。テストはジャーテスターを使用し、排水500mlを採
取し、これに消石灰を添加して所定のpHとし、10分間攪
拌後、静澄化した上澄水の全有機ハロゲン化合物および
CODを測定した。結果を第1表に示す。
pH5.2〜7.6といった領域の、テストNo.1〜3では全有
機ハロゲン化合物の除去率は非常に悪いが、本発明のpH
8.0以上の領域、テストNo.4〜7では全有機ハロゲン化
合物は極めて効果的に除去が可能である。従来の排水処
理のpH領域5.0〜7.5の領域でも本発明のpH8.0以上の領
域でもCODの除去率は全有機ハロゲン化合物の除去率に
比べ、それ程高くないことが分かる。
実施例2 針葉樹クラフトパルプの塩素処理時の排水をダライ粉
1kgを入れた501ポリバケツに入れ、実施例1と同様に鉄
イオンの溶出を行った。保持時間を30分とし、この時塩
素処理排水中に溶出している鉄イオンは170ppmであっ
た。
この排水にクラフトパルプ漂白時のアルカリ処理排水
を混合し、この混合排水を用いてジャーテスターによる
全有機ハロゲン化合物の除去性についてテストした。供
試排水の全有機ハロゲン化合物は、41ppmであり、CODは
407ppmであった。
テストはジャーテスターを使用し、混合排水500mlを
採取し、これに消石灰を添加して、所定のpHとし10分間
攪拌後、静澄化した上澄水の全有機ハロゲン化合物およ
びCODを測定した。結果を第2表に示す。
従来行われている凝集沈澱のpH域5.0〜7.5(テストN
o.8〜11)では、全有機ハロゲン化合物の除去率は低い
が、本発明のpH8.0以上の領域(テストNo.12〜15)では
全有機ハロゲン化合物の除去率が極めて高いことが判明
した。
[発明の効果] 本発明によりクラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水
中の全有機ハロゲン化合物を安価にまた極めて効率よく
除去できることが可能になった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】クラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水
    と、鉄屑を接触させ、鉄イオンを溶解せしめた排水に、
    アルカリを添加してpHを8.0以上とすることを特徴とす
    るクラフトパルプ漂白工程の塩素処理排水中の全有機ハ
    ロゲン化合物の除去方法。
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