JP2557272B2 - 整形木材の製法 - Google Patents

整形木材の製法

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は整形木材の製法に関し、木材を加熱処理し軟
化した材を圧縮して所望の形状に整形して得た整形木材
を乾燥し、または二次加熱して材の持つ成長応力や圧縮
応力を除去し、形状を固定する製法であり、また、材の
表面や内部にまで所望の模様を加飾する製法である。
「従来の技術」 (ア)スギ・ヒノキなどの針葉樹材は40〜50%を占める
セルロース、25〜30%のリグニン及び15〜20%のヘミセ
ルロースで構成され、これらの材に前もって水を与えた
後、マイクロ波照射または高周波印加による誘電加熱を
行い、その電気エネルギー内部摩擦により80〜130℃の
熱に変えることで材を可塑化し、トーネット治具で可塑
化した材を圧縮し曲げ加工を施し、次いで曲げた材を乾
燥することによって、曲げた状態を固定し通直材を弯曲
材としている。
(イ)木材の膨張収縮を抑えるために、その原因となる
OH基を他の物質に置換して寸法安定性の向上を図る化学
反応による改良木材がある。
(ウ)木材に合成樹脂を注入し強度性能の向上を図る合
成樹脂を利用する改良木材がある。
(エ)木材は当初は不定型な丸太の状態で供給され、製
材によって角材に整形している。また、大径材から四法
柾目柱材を製材している。
(オ)スギ・ヒノキの優良吉野材と20〜25年生の小径材
の材質調査と、製材品の形質及び強度試験を行った結
果、吉野優良材では平均年輪幅は3.0mm、比重は0.35、
曲げヤング率の平均値は101X103Kgf/cm2であり、小径材
から採取した7cm芯持ち正割り材では平均年輪幅4.4mm、
比重は0.35であったが分布の幅が大きい。また、曲げヤ
ング率は66Kgf/cm2であり、吉野優良材に比べ低い。ま
た、間伐材(未熱材)は曲げ加工性に優れているが曲げ
た状態を固定するための乾燥工程で損傷を生じることが
多い。
(カ)木材の有する工業材料としての欠点は、材質が脆
弱なものがあり、且つ、不均一なものがあるとともに木
理が不揃いで、美観に欠けるものが多く、形状が円柱状
でしかも不定形であるため製材等の加工を別途必要と
し、更に木材は、一般に狂いやすい、燃えやすい、腐り
やすいという三大欠点を有するが、半面加工しやすく、
軽くて強く熱や電気を伝えにくい、湿度を調節し結露を
生じない、色艶・木目・木肌等の外観が美しい、入手し
やすく安価であるという他の非木質材料では代えること
のできない天然の構造材料としての優れた特性を併せ持
っている。
「発明が解決しようとする課題」 (ア)通直材を弯曲材とする技術は公知であるが、丸太
から塑性加工によって多角形木材を整形する技術はな
い。
(イ)化学反応によって寸法安定性を向上させることは
できるが、半面吸湿性が損なわれ結露を生じやすいなど
木材の長所を減じる。
(ウ)合成樹脂の注入によって強度性能は向上するが重
量が増加し、また表面の美観が損なわれることがある。
(エ)小・中径材から四方柾目柱材を製材することはで
きない。また銘木とされる四方柾目材、板目材を小・中
径材から生産することはできない。当初、供給される丸
太の形状が不定形であるため、加工工程が煩雑であると
共に歩留まりが低い。
(オ)スギ・ヒノキの小・中径材は未熟材であり、物理
的・強度的性質に難点があるうえ、材質のバラツキが大
きすぎ、また小・中径であるため加工歩留まりが低く、
また、このような低質並材の用途が少ない。
(カ)熱可塑化した木材を圧縮することで所望の新規な
整形加工を施した整形木材や、従来スギ・ヒノキが使用
されなかった家具材、工業材料等の分野にまで用途を広
げること、及び従来は大径材からしか製材できなかった
四方柾目材を小・中径材から塑性加工によって生産し、
しかも住宅建築において価値の高い、芯持ち材で採れる
ようにし、同様に均一な四方板目材が生産できるように
すると共に、加工歩留りの向上、作業性の向上、工場騒
音の除去・軽減及び廃材の除去を図り、木材を天然の構
造材料としての特性をできるだけ温存しながら、その形
状や材質を改良し、木材の工業材料としての用途を拡大
することを目的とする。
「作用」 種々の含水率の木材を80〜140℃程度に加熱すると、
木材の主要構成要素であるリグニン及びヘミセルロース
が軟化し、木材は熱可塑化される。
次いで熱可塑化した木材を、その材温を保持しながら
圧縮すると、容易に細胞が変形して細胞空隙が縮小し繊
維を緻密にして強度が増加し、材質が均一となると共に
所望形状にできる。このときの加圧力は木材の材質や含
水率あるいは加熱処理の程度により3〜130Kg/cm2の範
囲である。
木材がクリープ回復を起こし原形に復元するのを防止
し、所望形状に固定するため、圧縮整形の状態のままで
材を乾燥するか、あるいは圧縮整形後冷却したのち再び
加熱処理する方法をとる。
以上の各工程を経て得られた木材は圧縮され強度性能
が向上すると共に、表面が硬くなり傷がつきにくくな
る。圧縮によって比重が増加するが、天然素材としての
木材の前記特有の性質は残されている。
「実施例」 1.前もって飽水状態にした含水率200%の樹皮付きのス
ギ丸太または剥皮したスギ丸太(長さ100cm、径13cm)
を、マイクロ波照射により加熱して、材内温度を110℃
とした。
簡易圧締器を用い、材の長さ方向に直角に側面四方向
から同時に圧力11Kg/cm2で圧締して、9cm角の正角に整
形した。
次いで圧締状態のまま、材温を下げて一次固定した
後、天然乾燥して含水率18%の目的とする柱材を得た。
得られた材を室内に放置して、寸法変化の状態を測定
した結果は表1の通りであり、乾燥固定すれば、その後
の寸法変化は殆どない。
2.前もって飽水状態にした含水率200%の樹皮付きの、
または剥皮したスギ丸太(長さ50cm、径13cm)を、マイ
クロ波照射により加熱して、材内温度を110℃とした。
簡易圧締器を用い、材の長さ方向に直角に側面4方向か
ら同時に圧力11Kg/cm2で圧締して9cm角の正角に整形し
た。次いで圧締状態のまま放置し、材温を下げて一時固
定した後120℃で4時間再加熱し、次いで温度40℃・相
対湿度60%と、温度40℃・相対湿度95%の条件下に3日
間サイクルで放置し45日後に含水率18%の目的とする柱
材を得た。尚、寸法の測定方法は第1図に示すように材
(1)を長手方向に4等分に分断したNo.1、No.2、No.3
及びNo.4の各位置において、且つ、それらの側端面のA
−A、B−B、C−C、X−X、Y−Y及びZ−Zにお
いて各寸法を測定した。
無処理材の寸法変化率は第2図及び表2に示す通りで
あり、再加熱処理材の寸法変化率は第3図に、寸法変化
率と含水率の変化は表3に、無処理材と再加熱処理材の
含水率の変化は第4図に示す通りであった。
3.実施例1.と同様の方法で得たスギ柱材の年輪は、外形
と同じく正角状に変形しているので、四隅を長さ方向に
切削すると、それぞれの面には木目が平行した柾目面が
表われる。このようにして得られた柾目面を新たな四面
とする四方柾目の柱材が得られた。
4.含水したヒノキ丸太(長さ100cm径10cm)を、マイク
ロ波照射により加熱して、材内温度を100℃とした。
簡易圧締器を用い、材の長さ方向に直角に側面四方向
から、同時に圧力15Kg/cm2で圧締して7.5cmX8.0cm角の
正角に整形した。この時、丸太の圧締面にプラスチック
ス製の入り絞り模様のついた当て板を当てて、整形と同
時に表面に加飾した。
形状を固定するために、圧締状態のまま、温度30℃で
5日間除湿乾燥して含水率20%の表面に絞り模様を加飾
した柱材を得た。
得られた整形材を室内に放置して寸法変化の状態を測
定した結果は表4の通りである。
5.実施例4.と同様の方法で得たヒノキ表面加飾材の加飾
面をプレーナーで切削すると木理の入り組んだ杢模様が
表われる。このような方法で表面が杢模様をなす柱材を
得た。
「発明の効果」 (ア)スギ・ヒノキの小・中径材を製材等の方法による
ことなく柱材に整形できるためスギ・ヒノキの小・中径
材から、住宅建築において価値の高い芯持ち材である四
方柾目柱材や、銘木とされる四方柾目柱材・杢目柱材を
容易に得られる。
また正角の柱材に限らず所望の多角形の材を切削によ
らずに圧締方向を変えることで容易に得られる。
また、従来人工的に絞り模様を付した製品は丸太に限
られていたが、本発明方法によれば角材や板材等に活用
できる。
更に樹皮付きのままでスギ丸太を80〜140℃で加熱す
ると、樹皮と木質部分との物性の違いから可塑性が異な
り樹皮は殆ど軟化しないのに対して木質部はゴム化して
角材等に容易に整形できる。その結果、整形後には樹皮
の自然な凹凸模様が角材表面にレプリカのように写しだ
され、これによって得られた模様は従来の人工的な絞り
模様に比べより自然であり、また、樹皮が持つ模様が整
形木材の表面のみならず内部の年輪にも達していて樹芯
まで年輪が褶曲し、該整形木材の表面をプレナ等で切削
し上げすると褶曲の程度や年輪幅、あるいは早・晩材幅
などの違いによって、様々な杢模様が表われ、特に年輪
幅がある程度の小ささで揃っており、褶曲の模様が細か
な時には、切削された材面に笹目と珍重される杢模様が
得られた。
また、単に丸太から角材に整形したのみの整形木材で
も整形前の丸太の円周よりも整形後の角材の総辺長の方
が短いために、表層の年輪には褶曲が生じて様々な杢模
様が表われた。
(イ)材の一部分だけにも整形が可能なため、自由な形
状に整形できる。
(ウ)製材をすることなく丸太から角材が生産できるの
で、加工歩留まりが著しく向上すると共に作業性が向上
し、また製材時に伴うような騒音を除去し、且つ、製材
時に生じる廃材を除去できる。
(エ)製材後に曲がってしまった製材品を通直に修正で
きる。
(オ)木材が有する天然の構造材料としての特性である
吸湿性と放湿性が残存し、結露を生じず、室内の湿度調
節機能がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による寸法変化率の測定方法を示す斜視
図、第2図は無処理材の寸法変化率の経過を示す折れ線
グラフ図、第3図は再加熱処理材の寸法変化率の経過を
示す折れ線グラフ図、第4図は再加熱処理材及び無処理
材の含水率の経過を示す折れ線グラフ図である。 1……供試木材

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】木材を加熱処理し、軟化した材を四方向か
    ら同時に圧縮して整形し、冷却したうえ形状を保持しな
    がら再度加熱処理し所望の形状に固定する整形木材の製
    法。
JP2098620A 1990-04-13 1990-04-13 整形木材の製法 Expired - Lifetime JP2557272B2 (ja)

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